【文献】
Br. J. clin. Pharmac.,1980年,Vol. 9,pp 273-274
【文献】
J. Physiol.,2005年,Volume 567, Issue 2,pp 713-721
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
心室性頻拍、上室性頻拍、心房細動、房室結節性リエントリー性頻拍(AVNRT)、房室リエントリー性頻拍(AVRT)、および接合部頻拍からなる群から選択される頻拍を有する患者に投与する、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
1.05%(w/w)の臭化グリコピロニウム、98.8%(w/w)のラクトース、および0.15%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、または1%(w/w)の臭化グリコピロニウム、98.8%(w/w)のラクトース、および0.2%(w/w)のステアリン酸マグネシウムを含む、請求項28に記載の医薬組成物。
心拍数低下剤を必要とするまたは心拍数低下剤が必要になることが予想される患者に前記医薬組成物を投与するための指示を更に含むパッケージに収容される、請求項1〜請求項47のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一態様によれば、心拍数低下剤として使用するためのグリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が提供される。
【0018】
グリコピロラートは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症(CF)、関連する気道疾患等の状態の治療に有用な抗ムスカリン剤である。乾燥粉末吸入器を用いて投与するための乾燥粉末製剤の形態のグリコピロラート製剤の提供が知られている。しばしば、臭化グリコピロニウム等のグリコピロラートの塩が使用される。
【0019】
本発明に関連して用いられる「グリコピロラート」という用語は、グリコピロラートの塩形態または対イオン製剤、例えばグリコピロラート臭化物ならびに単離された立体異性体および立体異性体の混合物を包含することが意図される。グリコピロラートの誘導体も包含される。
【0020】
臭化グリコピロニウム等のムスカリンアンタゴニストは正常な範囲内で心拍数を上げ、頻拍を引き起こすことがよく知られている(例えば、とりわけMarkos and Snow (2006) Acta Physiol (Oxf). 186(3), 179-84参照)。更に、英国国民医薬品集(BNF)には、一過的な徐脈(その後の頻拍、動悸、および不整脈)が抗ムスカリン薬の副作用の1つであると記載されている(BNF62、Sep 2011、セクション1.2)。ムスカリンアンタゴニストは更に、新規で、またはより一般的には、頻拍性不整脈になりやすい患者において、病的な頻拍性不整脈も誘発し得る。
【0021】
更に、頻拍状態を引き起こすというムスカリンアンタゴニストの公表された役割のため、臭化グリコピロニウムの主な適応症の1つは術中徐脈である(すなわち遅い心拍数に対する治療)(BNF 62、Sep 2011、セクション15.1.3参照)。したがって、驚くべきことに、また先行技術および受け入れられている医学文献の教示とは対照的に、本発明者らは、本明細書に記載のデータが実証しているように、臭化グリコピロニウムにより心拍数を低下させることができることを確認した。
【0022】
本発明の別の態様によれば、心拍数低下剤として使用するためのグリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩を含む吸入可能な医薬組成物が提供される。
【0023】
心拍数を上げて頻拍等の状態を引き起こすことが知られている他のムスカリンアンタゴニストと異なり、吸入投与された臭化グリコピロニウムが心拍数を低下させることを、驚くべきことに実証しているデータを本明細書中に提供する。更に、臭化グリコピロニウムは術中徐脈の防止(すなわち、遅い心拍数の上昇)のために既に開示されており、この医薬は一般的には静脈内経路で送達される(BNF 62、Sep 2011、セクション15.1.3参照)。したがって、本発明の医薬は、文献に記載されているのとは異なる用途に応用されるだけでなく、別の経路で送達される。理論により限定されるものではないが、臭化グリコピロニウムの吸入は、本明細書中に示すデータで観察される心拍数低下特性を生じさせる可能性があると考えられる。
【0024】
一実施形態では、組成物は、好ましくは吸入により、頻拍等の、心拍数増加を特徴とし、且つ、心拍数を下げることが好ましい状態または障害の治療に使用される。
【0025】
本発明は、心拍数を下げることが好ましい状態または障害の処置に特に有用であると理解される。更に、本発明は心拍数上昇の防止においても有用である。したがって、一実施形態では、組成物は心拍数上昇を防止する薬剤として使用される。したがって、本発明の別の態様によれば、静脈内グリコピロラート投与またはプラセボと比較して、(例えば安静状態で)心拍数抑制剤として使用するためのグリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩を含む吸入可能な医薬組成物が提供される。一実施形態では、使用は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症(CF)、および関連する気道疾患から選択される状態等の呼吸器状態を有する患者における使用である。一実施形態では、心拍数は、少なくとも0.75時間、少なくとも1.5時間、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも20時間、または少なくとも30時間にわたり抑制される。一実施形態では、心拍数は0.75〜30時間、1.5〜30時間、5〜30時間、10〜30時間、20〜30時間にわたり抑制される。
【0026】
グリコピロラートは、グリコピロラートの塩、異性体、または誘導体、またはその混合物でもよい。一実施形態では、グリコピロラートはR,R−グリコピロラートではない。
【0027】
一実施形態では、グリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩は、臭化グリコピロニウムを含む。
【0028】
臭化グリコピロニウム(NVA−237として知られる)は2012年に上市される予定の長時間作用性ムスカリンアンタゴニストである。
【0029】
本発明は、高い心拍数すなわち頻拍を特徴とする不整脈により悪化し易い心障害のリスクを有することが確認された、または心傷害を診断されている、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症(CF)、および関連する気道疾患等の呼吸器系の状態を有する患者の治療処置に特に有用であると理解される。
【0030】
頻拍とは、安静時または睡眠時の個体の心拍数が適切な心拍数より速い、正常な安静時より速い心拍数を指す。ヒトでは、正常心拍数(脈拍)の閾値は一般的にその人の年齢に基づく。頻拍は心臓がどれだけ激しく働く必要があるかによって危険であり得る。一般的に、成人の安静時心拍は60〜100回/分である(一部の医師は90を健常限界とする)。個体が頻拍性不整脈を有する場合、心房または心室が有意に速く拍動し、これは心房および心室の両方で起こることもある。心臓の拍動が速すぎる場合、心臓のポンピング効率が低くなり、心臓自体を含む体の残りの部分への血流が減少する。正常より速い心拍は、心筋(心臓の筋肉)がより多くの酸素を必要としていることを意味し、これが持続すると、酸素が欠乏した心筋細胞の死滅により起こる心筋梗塞(心臓発作)が起こり得る。一部の頻拍患者には症状または合併症がないことがある。頻拍性不整脈は一般的に、脳卒中、心突然死、または死亡のリスク増大に関連し得る。
【0031】
COPDにおける死亡は、呼吸器系よりも心臓が原因であることが多い(Chhabra and Gupta (2010) Indian J Chest Dis Allied Sci 52, 225-238)。冠動脈疾患およびCOPDがしばしば併存するが(33.6%;Falk et al (2008) Proc Am Thorac Soc 5(4), 543-548)、診断が不十分である。どちらの状態も、罹患集団の年齢、喫煙の一般的危険因子、および労作時呼吸困難の症状など、複数の類似点を有する。どちらの状態も、症状の急性増悪の発現により時々強調され、区別することが非常に困難である。これら2つの併存は一般的であるが、しばしば、2つのうちの一方だけが診断され、治療不十分で十分に奏功しない。より具体的には、頻拍はCOPD患者における一般的な症状であり、動悸はCOPD患者における頻拍の特徴的症状である。
【0032】
COPD患者は、低酸素症、関連する感染症、肺高血圧症、ならびに心臓の構造的変化、右心室の拡張および/または心房の拡張により、不整脈を起こし易いと考えられる。
【0033】
種々の不整脈および関連する死亡の発生率は、以下の安定疾患および急性増悪の患者の研究に示されるように、報告されているCOPD患者の研究によって大きく異なる。
【0034】
研究の1つでは、連続的心電図記録により重度のCOPD患者24名がモニタリングされた(Kleiger, RE, Senior, RM. Chest 1974; 65:483)。安定した外来患者の84パーセントで不整脈が見出され、患者の72パーセントが心室起源の不整脈を有し、52パーセントが上室起源の不整脈を有していた。別個の関連する研究は、FEV1(気道閉塞のマーカー)の低下が、安定COPD患者における新規発症心房細動の独立した前兆であることを記載している(Buck, P, Friberg, J, Scharling, H, et al. Eur Respir J 2003; 21:1012)。
【0035】
重度であるが安定なCOPDを有する低酸素症患者69名の別の報告でも同様な結果が記載されている(Shih, HT, Webb, CR, Conway, WA, et al. Chest 1988; 94:44)。上室性頻拍が69パーセントで発生したが、心房細動は8パーセントで基本リズムであった。心室性期外収縮(主に多形性)および非持続性の心室性頻拍がそれぞれ患者の83パーセントおよび22パーセントで存在した。重度のCOPDに合併する肺性心としばしば併存する下肢浮腫および高炭酸ガス血症の両方が、心室性不整脈のリスク増大に関連していた。しかし、不整脈の存在と死亡率増加とは関連していなかった。
【0036】
第3の研究では、急性COPD増悪の患者590名が評価された(Fuso, L, Incalzi, RA, Pistelli, R, et al. Am J Med 1995; 98:272)。心房細動および心室性不整脈は、死亡の独立した前兆であった(年齢および広い肺胞動脈血酸素勾配に加えて)。
【0037】
別の研究では、急性呼吸不全で入院した重度のCOPD患者70名が評価された(Hudson, LD, Kurt, TL, Petty, TL, Genton, E. Chest 1973; 63:661)。患者の47パーセントが深刻な上室性および心室性不整脈の両方を有していた。急性呼吸不全の患者では、研究期間後まで生存した心室性不整脈患者がいなかったことから、不整脈の存在が死亡率増加に関連している可能性がある。
【0038】
5226回のホルター記録を行ったCOPD患者1429名の大きなコホートでは、長時間作用性ベータアゴニストによる進行中の治療をしていない患者の40パーセントまでが心房性頻拍を有した(Hanrahan, JP, Grogan, DR, Baumgartner, RA, et al. Medicine (Baltimore) 2008; 87:319)。
【0039】
更に決定的なことに、安静時の頻拍が生存率低下の主要因子であることが研究により示されている(Burrows B, Earle RH. Prediction of survival in patients with chronic airway obstruction. Am Rev Respir Dis. 1969;99:865-71)。
【0040】
したがって、一実施形態では、グリコピロラートは呼吸器症状を有する患者において心拍数低下剤として使用される。別の実施形態では、グリコピロラートは慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症(CF)、および関連する気道疾患から選択される状態を有する患者において心拍数低下剤として使用される。更に別の実施形態では、グリコピロラートは慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者において心拍数低下剤として使用される。したがって、本発明の別の態様によれば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症(CF)、および関連する気道疾患、特に慢性閉塞性肺疾患から選択される状態等、の呼吸器状態を有する患者において心拍数低下剤として使用するためのグリコピロラートを含む吸入可能な医薬組成物が提供される。
【0041】
本明細書に記載のデータから、安静時心拍数が平均約70bpmのCOPD患者において心拍数低下作用が実証されたことが認められる。したがって、本発明は、冠動脈虚血(狭心症)、心不全、または心臓弁疾患等の死亡率を増加させ得る前述の心障害のいずれかをCOPD患者が発症する可能性を低下させることに特に有効である。したがって、一実施形態では、医薬組成物は頻拍の治療または予防に使用される。
【0042】
更に、本発明の心拍数低下剤は、前述の心臓への影響を既に有しているCOPD患者に投与され得ると理解される。したがって、別の実施形態では、患者の安静時心拍数は90bpm超、例えば100bpm超、特に110bpm超、例えば120bpm超である。
【0043】
一実施形態では、グリコピロラートは1μg超、例えば10〜500μgの量で組成物中に存在する。組成物が吸入経路で送達される場合、本明細書中で言及される量は、患者の肺に実際に送達される量ではなく、組成物中の医薬の量を指すと理解される。別の実施形態では、グリコピロラートは20〜400μgの量で組成物中に存在する。更に別の実施形態では、グリコピロラートは50〜150μg、例えば50μgまたは100μgの量で組成物中に存在する。投与量400μgで心拍数低下に最も有意な差が観察され、効果が30時間の時点で減少していたことを示すデータが本明細書中(具体的には表3)に示されている。したがって、別の実施形態では、グリコピロラートは400μgの量で組成物中に存在する。対照的に、20μgの投与量で研究期間全体(すなわち30時間)にわたるより持続的な心拍数低下が得られることを示すデータが本明細書中(具体的には表3)に示されている。例えば、10時間目において−3.4bpm、20時間目において−3.6bpm、および30時間目において−2.7bpm。したがって、別の実施形態では、グリコピロラートは20μgの量で組成物中に存在する。
【0044】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は1日1回投与される。本明細書中(特に表3)のデータから、投薬前から20時間まで(全ての用量)および投薬前から30時間まで(125μgおよび250μg以外の全ての用量)の心拍数の平均変化がプラセボより有意に高かったことを確認することができる。これらの観察結果から、吸入グリコピロラートにより約1〜1.5日にわたり持続する徐拍効果が得られることが確認された。グリコピロラートと心拍数低下を関連付ける特定の観察結果が公開されており(例えば、
http://www.ld99.com/reference/notes/text/Anticholineraic_drugs.html参照)、静脈内投与された時にグリコピロラートが他の薬剤の徐拍効果に逆らうことで頻拍効果を生じさせる前に逆説的な一過的心拍数低下を生じさせ得ることが示されている。しかし、本明細書中に示すデータは、単なる「一過的」徐拍効果以上のものを確認しており(徐拍効果は30時間も観察されたため)、静脈内投与とは異なり、吸入用量のいずれにおいてもその後の頻拍効果は見られなかった。
【0045】
一実施形態では、医薬組成物は1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0046】
グリコピロラートは一般的に乾燥粉末製剤の形態で慢性閉塞性肺疾患の治療のために投与されると理解される。
【0047】
本発明の組成物が乾燥粉末製剤として製剤化される場合、一実施形態では、組成物は力制御剤(force control agent)を更に含む。
【0048】
力制御剤とは、粉末製剤中の微粒子間の凝集力を減少させることにより、乾燥粉末吸入器から粉末が分配される時の脱凝集を促進する薬剤である。
【0049】
好適な力制御剤は国際公開第96/23485号および同第2005/105043号に開示されており、これらは通常、材料が常に肺に到達するであろうわけではないが、生理学的に許容される材料からなる。
【0050】
力制御剤は、アミノ酸およびそれらの誘導体ならびにペプチドおよびそれらの誘導体から選択される1以上の化合物を含んでいてもよいし、アミノ酸およびそれらの誘導体ならびにペプチドおよびそれらの誘導体から選択される1以上の化合物から成っていてもよい。好ましくはペプチドの分子量は0.25〜1000kDaである。
【0051】
アミノ酸、ペプチド、およびペプチドの誘導体は、生理学的に許容され、吸入時に活性材料の粒子の許容可能な放出または脱凝集を可能にする。力制御剤がアミノ酸を含む場合、これはロイシン、イソロイシン、リジン、バリン、メチオニン、およびフェニルアラニンのいずれかの1以上でもよい。力制御剤は、アミノ酸の塩または誘導体、例えばアスパルテームまたはアセスルファムKであってもよい。D型およびDL型のアミノ酸も用いられ得る。
【0052】
力制御剤は1以上の水溶性物質を含んでいてもよい。水溶性物質は、力制御剤が下肺に達した場合に体への力制御剤の吸収を促進する。
【0053】
力制御剤は、両性イオンでもよい双極イオンを含んでいてもよい。肺中への組成物の分散を補助するために、力制御剤として拡散剤(spreading agent)を含めることも好ましい。好適な拡散剤としては、リン脂質、例えばDPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)とPG(ホスファチジルグリセロール)の混合物、を含む公知の肺サーファクタント(例えば、ALEC(登録商標))等の界面活性剤が含まれる。その他の好適な界面活性剤としては、例えばジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)が含まれる。
【0054】
力制御剤は、ステアリン酸金属塩またはその誘導体、例えばフマル酸ステアリルナトリウムまたは乳酸ステアリルナトリウムを含んでいてもよい。好ましくは、力制御剤はステアリン酸金属塩、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、またはステアリン酸リチウムを含む。言及され得る特定の一実施形態では、添加材はステアリン酸マグネシウムであるか、ステアリン酸マグネシウムを含む。
【0055】
力制御剤は、1以上の界面活性材料、特に固体状態で界面活性である材料を含み得るまたはからなり得、材料は、水溶性または水分散性であってよく、例えばレシチン、特に大豆レシチンであってよく、実質的に非水溶性であってもよく、例えば、固体状態の脂肪酸、例えばオレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ベヘン酸、またはそれらの誘導体(例えばエステルおよび塩)、例えばベヘン酸グリセリルであってよい。そのような材料の具体例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロールが挙げられ、天然および合成の肺サーファクタントのその他の例としては、ラウリン酸およびその塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム;トリグリセリド、例えばDynsan 118およびCutina HR;および糖エステル全般が挙げられる。あるいは、力制御剤はコレステロールでもよい。
【0056】
その他の考えられる力制御剤としては、安息香酸ナトリウム、室温で固体の硬化油、タルク、二酸化チタン、二酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、およびデンプンが含まれる。また、被膜剤、脂肪酸およびその誘導体、ならびに脂質および脂質様材料も力制御剤として有用である。
【0057】
本発明における使用に特に適した力制御剤としては、ステアリン酸マグネシウム、アミノ酸、例えばロイシン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、システイン、およびこれらの誘導体、レシチン、ならびにリン脂質が含まれる。これらの力制御剤を含めることで、COPD、喘息、または嚢胞性線維症等の呼吸器系疾患を治療するためのグリコピロラートの有効性が向上することが期待される。
【0058】
本発明の組成物が乾燥粉末製剤として製剤化される場合、一実施形態では、組成物は担体を更に含む。更なる実施形態では、担体はラクトース、例えばラクトース一水和物を含む。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、力制御剤としてステアリン酸マグネシウムの非存在下でラクトースを含む。例えば、一実施形態では、本発明の好適な組成物は臭化グリコピロニウムおよびラクトース、例えば1%(w/w)の臭化グリコピロニウムおよび99%(w/w)のラクトースを含む。本発明の別のいくつかの実施形態では、組成物はグリコピロラート、ラクトース、およびステアリン酸マグネシウムを含む。例えば、一実施形態では、本発明の好適な組成物は臭化グリコピロニウム、ラクトース、およびステアリン酸マグネシウム、例えば1.05%(w/w)の臭化グリコピロニウム、98.8%(w/w)のラクトース、および0.15%(w/w)のステアリン酸マグネシウムまたは1%(w/w)の臭化グリコピロニウム、98.8%(w/w)のラクトース、および0.2%(w/w)のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0060】
力制御剤が存在する場合、担体の表面にあることに加えて、またはその代わりに、グリコピロラート粒子の表面に主に存在することが力制御剤にとって重要であると考えられる。そのためには高い剪断力での混合法が有利であることが見出された。
【0061】
グリコピロラート製剤の微粒子間の凝集力を減らすことに加え、前述の力制御剤などの添加材は、本発明において使用された時に更なる利点を示し得る。ステアリン酸マグネシウム等のいくつかの力制御剤はそれ自体が乾燥粉末製剤中への湿気の侵入を低減することが示唆されている。
【0062】
更に、多くの力制御剤は界面活性剤として作用する。これらの薬剤が肺に投与された場合、これらは肺表面に急速に広がる傾向がある。この急速な界面活性剤の分散が、製剤中のグリコピロラートの分散を補助し、これによってその治療効果を補助および増強すると推論される。
【0063】
前述より、吸入製品に適した期間(例えば、1、2、3年)にわたるグリコピロラートを含む乾燥粉末製剤の微粒子フラクションの望ましい改善は、好適なコンディショニングにより、および/または湿気からの製剤の保護により、および/または力制御剤等の添加剤の好適な取り込みにより、達成できることが分かる。
【0064】
グリコピロラートを含む安定な製剤の製造プロセスの非常に重要な利点は、以前に使用されているよりも少ない投与量での投与を可能にすることである。投与量の低減は、例えば従来の製剤と比べて矛盾なく改善された微粒子フラクションおよび微粒子用量による、グリコピロラートの一定した予測可能な投与により可能になる。したがって、調剤される用量はより少ないが、投与される活性薬剤の量は同じであり、同じ治療効果が実現される。
【0065】
本発明の製剤はグリコピロラートを唯一の薬学的活性薬剤として含み得る。あるいは、製剤は、グリコピロラートに加えて1以上の更なる活性薬剤を含み得る。追加的な活性薬剤としては、例えば以下が含まれ得る:
1)ステロイド剤、例えば、アルコメタゾン、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾール、デフラザコート、ジフルコルトロン、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオメソロン、フルチカゾン、フルチカゾンプロプリオナート、フロ酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、デカン酸ナンドロロン、硫酸ネオマイシン、リメキソロン、メチルプレドニゾロン、およびプレドニゾロン;
2)抗生物質および抗細菌剤、例えば、メトロニダゾール、スルファジアジン、トリクロサン、ネオマイシン、アモキシシリン、アムホテリシン、クリンダマイシン、アクラルビシン、ダクチノマイシン、ナイスタチン、ムピロシン、およびクロルヘキシジン;
3)全身性活性薬、例えば、二硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、アポモルヒネ、およびニコチン;
4)抗ヒスタミン薬、例えば、アゼラスチン、クロルフェニラミン、アステミゾール、セチチジン、シンナリジン、デスロラタジン、ロラタジン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、ケトチフェン、プロメタジン、トリメプラジン、およびテルフェナジン;
5)抗炎症剤、例えば、ピロキシカム、ベンジダミン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、ヘパリノイド、ネドクロミル、クロモグリク酸ナトリウム、ファサファンギン、およびヨードキサミド;
6)抗ムスカリン/抗コリン剤、例えば、アトロピン、ベンザトロピン、ビペリデン、シクロペントラート、オキシブチニン、オルフェナジン塩酸塩、プロシクリジン、プロパンテリン、プロピベリン、チオトロピウム、トロピカミド、トロスピウム、臭化イプラトロピウム、GSK573719、および臭化オキシトロプリウム;
7)制吐薬、例えば、ベスタヒスチン、ドラセトロン、ナビロン、プロクロルペラジン、オンダンセトロン、トリフルオペラジン、トロピセトロン、ドンペリドン、ヒヨスチン、シンナリジン、メトクロプラミド、シクリジン、ジメンヒドリナート、およびプロメタジン;
8)ホルモン薬、例えば、プロチレリン、チロキシン、サルコトニン、ソマトロピン、テトラコサクチド、バソプレシン、またはデスモプレシン;
9)気管支拡張薬、例えば、サルブタモール、フェノテロール、ホルモテロール、インダカテロール、ビランテロール、およびサルメテロール;
10)交感神経刺激薬、例えば、アドレナリン、ノルアドレナリン、デキサンフェタミン、ジピレフィン、ドブタミン、ドペキサミン、フェニレフリン、イソプレナリン、ドーパミン、偽性エフェドリン、トラマゾリン、およびキシロメタゾリン;
11)抗真菌薬、例えば、アムホテリシン、カスポファンギン、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、フルコナゾール、ケトコナゾール、ナイスタチン、イトラコナゾール、テルビナフィン、ボリコナゾール、およびミコナゾール;
12)局所麻酔薬、例えば、アメトカイン、ブピバカイン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プリロカイン、プロキシメタカイン、ロピバカイン、チロスリシン、ベンゾカイン、およびリグノカイン;
13)疼痛管理等のための、アヘン剤、例えば、ブプレノルフィン、デキストロモラミド、ジアモルヒネ、リン酸コデイン、デキストロプロポキシフェン、ジヒドロコデイン、パパベレタム、フォルコデイン、ロペラミド、フェンタニル、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、フェナゾシン、ペチジン、およびこれらと制吐薬の組合せ;
14)鎮痛薬および偏頭痛を治療するための薬物、例えば、クロニジン、コジン、コープロクサモル(coproxamol)、デキストロプロポキシペン、エルゴタミン、スマトリプタン、トラマドール、および非ステロイド性抗炎症薬;
15)麻薬アゴニストおよびアヘン解毒薬(opiate antidote)、例えばナロキソンおよびペンタゾシン;
16)5型ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えばシルデナフィル;および
17)前記のいずれかの薬学的に許容される塩。
【0066】
一実施形態では、追加的な活性薬剤は、呼吸器系障害の治療に有用であることが知られている薬学的に活性な薬剤、例えばβ
2アゴニスト、ステロイド、抗ムスカリン薬/抗コリン薬、ホスホジエステラーゼ4阻害剤等である。一実施形態では、本発明の製剤はホルモテロールを含まない。
【0067】
言及され得る特定の一実施形態では、追加的な活性薬剤はインダカテロールを含む。インダカテロールはOnbrez(商標)として欧州で近年承認された超長時間作用性ベータアドレノレセプターアゴニストであり、ノバルティス社から販売されている。インダカテロールは慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療用に認可されており、乾燥粉末吸入器Breezhaler(商標)でエアロゾル製剤として送達される。インダカテロールと臭化グリコピロニウムの配合剤(QVA−149として知られる)が現在COPDの第III相臨床試験中であり、2013年に上市される予定である。
【0068】
別の実施形態では、追加的な薬剤はホルモテロールフマル酸塩を含む。ホルモテロールフマル酸塩とグリコピロラートの二重配合剤(PT003として知られる)が2012年にCOPDの第III相臨床試験に入る予定であり、現在、パール・セラピューティクス社(Pearl Therapeutics,Inc.)が開発中である。ホルモテロールフマル酸塩、グリコピロラート、および吸入コルチコステロイドの三重配合剤(PT010として知られる)が現在パール・セラピューティクス社により開発中である。
【0069】
別の実施形態では、追加的な薬剤は、β
2アゴニスト等のβアゴニストを含む。そのようなベータアゴニストは頻拍を引き起こすことがよく知られている(The Merck Manuals Online Medical Dictionary - Chronic Obstructive Pulmonary Disease参照)。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、呼吸器症状を有し、且つベータアゴニストで治療されている患者の同時治療に使用される。
【0070】
別の実施形態では、グリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、薬剤により誘発された頻拍を有する患者集団に投与される。
【0071】
グリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、吸入可能な薬物、より好ましくは肺障害の治療に用いられる吸入可能な薬物、より好ましくはサルブタモールによって頻拍を誘発または増悪された患者に投与される。あるいは、薬物はエフェドリン、アンフェタミン、またはコカインでもよい。好ましくは、グリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の投与は、頻拍誘発薬物の投与と別個であるか、逐次的になされる。投与が別個または逐次的である場合、好ましくは、グリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩の投与は頻拍誘発薬物から4時間以内、好ましくは頻拍誘発薬物から2時間以内、好ましくは頻拍誘発薬物から1時間以内、好ましくは頻拍誘発薬物から10分以内に行われる。
【0072】
別の実施形態では、グリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、内分泌障害、例えば褐色細胞腫または甲状腺機能亢進症等の、薬剤により誘発されていない頻拍を有する患者集団に投与される。
【0073】
好ましくは、グリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、心室性頻拍、上室性頻拍、心房細動、房室結節性リエントリー性頻拍(AVNRT)、房室リエントリー性頻拍(AVRT)、および接合部頻拍からなる群から選択される頻拍の形態を有する患者集団に投与される。
【0074】
本発明の組成物は公知の方法に従って製剤化され得ると理解される。特に、当業者は、グリコピロラートを含む安定な製剤がどのように製造され得るかを詳細に記述している国際公開第2005/105043号の内容を参照されたい。特に、少なくとも1年、例えば少なくとも2年、特に少なくとも3年の期間安定な製剤が製造され得る。
【0075】
組成物の安定性は、これらの期間にわたる粉末の一定な分散性により示され、これは例えば経時的に一貫した良好な微粒子フラクションまたは微粒子用量の点で測定され得る。安定な組成物の一実施形態では、微粒子フラクション(<5μm)は、医薬品にとっての通常の温度および湿度で貯蔵された時に、少なくとも1年、少なくとも2年、または少なくとも3年の期間にわたり一貫して約30%より多い。本発明の別の実施形態では、微粒子フラクション(<5μm)は、少なくとも1年、少なくとも2年、または少なくとも3年の期間にわたり一貫して約40%を超える。一実施形態では、微粒子フラクション(<5μm)は、25℃/60%RH、30℃/60%RH、40℃/70%RH、または40℃/75%RH等の標準的な試験条件下で製剤が貯蔵された時に、一貫して30%超または40%超である。
【0076】
安定な組成物の一実施形態では、乾燥粉末製剤の微粒子フラクションは一貫して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%である。
【0077】
安定な組成物の一実施形態では、乾燥粉末製剤の微粒子用量は、一貫して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%である。
【0078】
安定な組成物の別の実施形態では、乾燥粉末製剤は、乾燥粉末吸入器による貯蔵および/または送達用にパッケージングされ、パッケージングされた製剤は通常の温度および湿度で貯蔵された時に少なくとも1、2、または3年安定であり、すなわち、パッケージングされた製剤または製剤を含む製品は、所望の安定性を示すように制御された環境中に貯蔵する必要がない。
【0079】
従来のグリコピロラート製剤の不安定性は湿気の吸収によるものであると考えられるので、安定性を向上させるための複数の手段が提唱される。
【0080】
第1に、グリコピロラートの処理を改善することによりグリコピロラートのアモルファス含有量を低減する。グリコピロラートを微粉化(micronise)する場合、例えば粉砕を行う条件を調整してアモルファス材料の形成を防止することにより微粉化プロセスが改善され得る。更に、またはあるいは、微粉化した製品を「コンディショニング」してアモルファス材料を除去してもよい。
【0081】
あるいは、グリコピロラート粒子がアモルファス材料をほとんどまたは全く含まないようにグリコピロラート粒子を処理してもよい。そのための好適な方法は当業者に公知である。例えば、非結晶性物質含有量の低いグリコピロラート粉末は、二酸化炭素を用いた超臨界流体処理またはその他の制御された形態の結晶化もしくは沈殿、例えば、緩徐な沈殿、エマルション法、超音波結晶化等の方法を用いて作製され得る。
【0082】
第2に、粉末貯蔵時における湿気への乾燥粉末製剤の曝露を減らすことが好ましい。この点で、カプセルまたはブリスター中で貯蔵している間の湿気への製剤の曝露を減らすことが特に望ましい。
【0083】
最後に、乾燥粉末製剤における添加剤材料の含有により、粉末の分散性を高め、湿気の侵入から製剤を保護することができる。
【0084】
微粉化グリコピロラートのバッチを得、数週間密封して貯蔵した後、凝集力のある微細な粉末から固体凝集体への材料の物理的変化を観察した。
【0085】
以下のように微粉化したグリコピロラートのバッチについて行った試験を以下のセクションに要約する。
【0086】
バッチA:
0.5kg/hrで微粉化
注入圧:10bar
微粉化圧:7bar
Sympatecサイズ測定:d10 0.7μm、d50 1.8μm、d90 3.6μm
乾燥減量:0.7%
【0087】
DVSは結晶性材料を示した。貯蔵後、バルク粉末中に材料の柔らかい塊が見られ、繰り返し粒度測定により、2.6〜3.5μmのd50値が得られた。
【0088】
バッチB:
0.5kg/hrで微粉化
注入圧:10bar
微粉化圧:7bar
Sympatecサイズ測定:d10 1.0μm、d50 2.4μm、d90 4.8μm
乾燥減量:0.6%
水分活性:54%RH
【0089】
DVSはアモルファス材料が存在することを示した。貯蔵後、大きな硬い塊の材料が見られ、繰り返し粒度測定により、36〜160μmのd50値が得られた。
【0090】
バッチC:
0.4kg/hrで微粉化
注入圧:10bar
微粉化圧:9.8bar
Sympatecサイズ測定:d10 0.8μm、d50 2.3μm、d90 4.8μm
乾燥減量:0.4%
【0091】
DVSはアモルファス材料が存在することを示した。貯蔵後、バルク粉末中に大きな硬い塊の材料が見られ、繰り返し粒度測定により、51μmのd50値が得られた。
【0092】
再微粉化バッチC
0.5kg/hrで微粉化
注入圧:10bar
微粉化圧:9bar
Sympatecサイズ測定:d10 1.0μm、d50 2.4μm、d90 4.5μm
乾燥減量:0.5%
【0093】
貯蔵後、バルク粉末中に材料の柔らかい塊だけが見られた。
【0094】
この要約は、選択されたバッチの微粉化グリコピロラートが硬い凝集体を形成したことを示しており、これは、検出可能なアモルファス材料を含まなかった第1のバッチが貯蔵後に良好な粉末特性を示したことから、アモルファス材料の存在と関係があるようである。したがって、賦形剤と製剤化されるか、防湿剤(moisture protection agent)と製剤化されるか、力制御剤と製剤化されるか、そのままで製剤化されるかどうかに関わらず、硬い凝集体の形成は、表面非結晶性材料を含む微粉化粉末内で起こると考えられる。
【0095】
アモルファス材料は、このような効果が最大となるためには、表面に位置する。バルク質量に対するアモルファス材料の量は、この効果を生み出すのに十分であれば、非常に少なくてよい。非結晶性材料はその周囲から湿気を引き寄せる。湿気の供給源としては、周囲の空気またはガス、周囲の賦形剤または添加剤(例えばラクトースまたは力制御剤)、包装もしくはデバイス、例えばゼラチンもしくは他のカプセル材料、またはプラスチックが含まれる。
【0096】
試験により、添加剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を含むものを含む、従来の方法を用いて製造した全ての微粉化臭化グリコピロニウムのプロトタイプ製剤で6ヶ月の期間中にエアロゾル化パフォーマンスが劣化または悪化することが見出された。この劣化は、乾燥条件下で貯蔵された場合でも起こることが分かっている。パフォーマンスの劣化は元のパフォーマンスの約30〜50%以上であることが見出された。このような劣化は、これらの製剤を商業的利用に対して魅力的でないものにする。
【0097】
加湿した空気または他のガスの使用下で微粉化を行うことがアモルファス材料の生成を低減する助けになり得ることが示唆されている。国際公開第99/54048号および同第00/32165号はどちらも、高湿度下での粉砕によりアモルファス材料の生成を低減できることを開示している。国際公開第00/32313号は、アモルファス材料の形成を低減するためにヘリウムまたはヘリウムと他のガスとの混合物を用いて低温で材料を粉砕することを開示している。これらの先行技術文献のいずれも、これらの特定の条件下でのグリコピロラートの粉砕が有益であることを開示していないことに留意されたい。
【0098】
しかし、先行技術中に開示されている粉砕条件は微粉化の実施における標準ではなく、これらのプロセスの制御が困難であることが分かるであろう。このようなプロセスを商業的規模で用いることが困難であることも分かるであろう。
【0099】
最後に、このようなプロセスがグリコピロラートの具体的な問題においてアモルファス材料の生成の制御にどの程度助けとなるかも知られていない。
【0100】
前述の通り、グリコピロラートはその固有の不安定性のため、特別な問題を示す。
【0101】
安定な組成物の一実施形態によれば、グリコピロラートを含む乾燥粉末製剤は、アモルファス材料の形成を低減する条件下で行われるプロセス、好ましくは微粉化プロセスを用いて製造される。好適な微粉化条件の例としては、高い相対湿度(例えば30〜70%)または低温でヘリウムを用いた微粉化が含まれる。
【0102】
別の実施形態では、グリコピロラートを含む乾燥粉末製剤は微粉化された後、アモルファス材料の含有量を下げるか、除去するための「コンディショニング」ステップを受ける。そのようなコンディショニングステップは、硬い凝集体を形成させずにアモルファス材料の再結晶化を促進する湿気への曝露を含む。そのようなコンディショニングの例は以下に更に詳細に記載されている。
【0103】
本発明に従って使用され得る好適な乾燥粉末製剤の例としては、以下の実施例1および2のような国際公開第2008/000482号に記載されているものが含まれる。
【0104】
実施例1
37gのステアリン酸マグネシウムを1kgの結晶性臭化グリコピロニウムとTurbula(登録商標)ブレンダー中で5時間混合する。得られた混合物を、ホソカワアルピネ(登録商標)社の100AFG流動層式対向型ジェットミルを以下のパラメーターで用いて微粉化する:分級速度、13000rpm;粉砕ガス圧、3.5bar。ミルは直径1.9mmの3個のノズルを備える。
【0105】
得られた混合物の中央値粒子サイズは約3ミクロン(x90=7ミクロン、x50=3ミクロン、x10=1ミクロン)である。ステアリン酸マグネシウムは製剤原料(drug substance)表面によく分布されている。
【0106】
ラクトース担体粒子(最終組成物の99.7w/w%)を混合して吸入可能な乾燥粉末を得る。
【0107】
実施例2
製剤原料1:
50gのステアリン酸マグネシウムを1kgの結晶性臭化グリコピロニウムとTurbula(登録商標)ブレンダー中で5時間混合する。得られた混合物を、ホソカワアルピネ(登録商標)社の100AFG流動層式対向型ジェットミル(直径1.9mmの3個のノズルを備える)を以下のパラメーターで用いて微粉化する:分級速度、13000rpm;粉砕ガス圧、3.5bar。平均粒子サイズが5ミクロン未満の粒子が得られる。
【0108】
製剤原料2:
1kgの結晶臭化グリコピロニウムを、ホソカワアルピネ(登録商標)社の100AFG流動層式対向型ジェットミル(直径1.9mmの3個のノズルを備える)を以下のパラメーターで用いて微粉化する:分級速度、13000rpm;粉砕ガス圧、3.5bar。平均粒子サイズが5ミクロン未満の粒子が得られる。
【0109】
これらの製剤原料を用いて以下の製剤を製造した。
【0110】
製剤1:
ラクトース担体粒子(最終組成物の99w/w%)を製剤原料2と混合して吸入可能な乾燥粉末を得る。
【0111】
製剤2:
ラクトース担体粒子(最終組成物の98.8w/w%)およびステアリン酸マグネシウム(0.15%)を製剤原料2と混合して吸入可能な乾燥粉末を得る。
【0112】
製剤3:
ラクトース担体粒子(最終組成物の98.8w/w%)およびステアリン酸マグネシウム(0.15%)を製剤原料1と混合して吸入可能な乾燥粉末を得る。
【0113】
得られた粉末を25mgずつ、3号サイズのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルに充填する。得られたカプセルを、製造直後または種々の条件下での貯蔵後に、空気力学的粒子サイズ分布(微粒子フラクション)について調べた。
【0114】
Next Generation Impactor(NGI)粒子分級カスケードインパクターを流量85L/minで用いて、各カプセル中の粉末の微粒子フラクション(FPF)および放出投与量(emitted dose:ED)を測定する。
【0115】
本発明の別の態様によれば、頻拍の治療または予防に使用するための、前述に定義した医薬組成物を含む吸入可能な単位用量が提供される。一実施形態では、単位用量はカプセルを含む。更なる実施形態では、カプセルは不透明または透明である。更なる実施形態では、カプセルは透明である。そのような実施形態には、投与量がうまく吸入されたことを使用者に知らせるという利点がある。
【0116】
一実施形態では、カプセルはゼラチンカプセルを含む。ゼラチンカプセルは10〜15w/w%程度の水を含み、これが湿気による不安定性という問題点を作り出すのに十分な水の供給源となることが知られている。
【0117】
ゼラチンカプセルの含水量は、カプセル内容物に水が引き抜かれることで下がることが示されている。ゼラチンカプセルの水分は可塑剤として働き、水が引き抜かれて含水量が下がると、カプセルがもろくなり、穿孔等に影響を与える。
【0118】
ヒプロメロースカプセルの改善に関する論文(B. E. Jones, Drug Delivery Technology, Vol 3 No. 6, page 2, 2003)に、乾燥粉末吸入器で使用するためのゼラチンカプセルに関連する問題点が記載されている。これらの問題には、ゼラチン含水量の変化に応じた、脆性の変化およびそれによる穿孔の一定性の変化ならびに関連する分散パフォーマンスの変化が含まれる。ゼラチンが、カプセルの粉末内容物に放出され得る湿気の供給源となる可能性も、静電荷特性のばらつきと共に議論されている。
【0119】
一実施形態では、カプセルは、可塑剤として湿気を頼らないヒプロメロース(HPMC)または他のセルロースもしくはセルロース誘導体で製造される。そのようなカプセルの含水量は10%未満、または5または3w/w%未満でさえあることができ、これにより、このようなカプセルはグリコピロラートとの使用により適したものとなる。
【0120】
カプセルはまた、水以外の1以上の可塑剤、例えばPEG、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコールまたは他の同様なポリマーおよびコポリマーを含むゼラチンから製造することもでき、これにより、含水量を10%未満、または5もしくは3w/w%未満にさえ低減することができる。
【0121】
あるいは、カプセルは、10%未満または5もしくは3w/w%未満にさえ含水量を低減した合成プラスチックまたは熱可塑性プラスチック(ポリエチレンまたはポリカーボナートまたは関連するプラスチック)から製造することができる。含水量の低減した更に別のカプセルがデンプンまたはデンプン誘導体またはキトサンから製造される。
【0122】
前述のカプセルでは脆性の問題が低減される。更に、セルロースから製造したカプセル等のカプセルはより均一且つ確実に穴が開けられることが見出されており、できた穴は、よりきれいに形成され且つ球状であり、粒子の飛散(shedding)が少ない。また、粉末内容物のエアロゾル化が改善され且つより一定することが見出されている。
【0123】
本発明の別の態様によれば、頻拍の治療または予防に使用するための前述に定義した医薬組成物の1以上の用量を含む吸入送達デバイスが提供される。一実施形態では、送達デバイスは吸入器である。別の実施形態では、送達デバイスは加圧定量吸入器である。定量吸入器は好ましくはリザーバー含有デバイスまたは複数単位用量含有デバイスまたは単位用量含有デバイスを含み得ると理解される。また、加圧定量吸入器は、本発明の組成物がヒドロフルオロアルカン(HFA)等の噴霧剤または本発明の組成物との使用に適した任意のそのような噴霧剤を更に含む場合に好適であろうと理解される。加圧定量吸入器(pMDI)による投与に適した本発明に係る製剤の例としては、パール・セラピューティクス社により開発されたもの、例えばPT001(COPD用のグリコピロラートHFA−MDI単剤療法)、PT003(COPD用のグリコピロラートおよびホルモテロールフマル酸塩を組み合わせたHFA−MDI製剤)、およびPT010(COPD用のHFA−MDI製剤としてのグリコピロラート、ホルモテロールフマル酸塩、および吸入コルチコステロイドの三剤組合せ)が含まれる。更なる例としては、チエシイ・ファルマセウテイシイ・エス・ペー・アー社(Chiesi Farmaceutici S.p.A)により臨床試験で用いられた100μgのグリコピロラートを含むpMDI製剤が含まれる。
【0124】
一実施形態では、送達デバイスはネブライザーである。
【0125】
別の実施形態では、送達デバイスは乾燥粉末吸入器である。好適なデバイスの例としては、限定されるものでないが、TURBUHALER(アストラゼネカ社)、CLICKHALER、DUOHALER(イノベータ・バイオメド社)、EASYHALER(オリオン社)、ACCUHALER、DISKUS、DISKHALER、ROTAHALER、GEMINI(グラクソ・スミスクライン社)、HANDIHALER、INHALATOR、AEROHALER(ベーリンガーインゲルハイム社)、TWISTHALER(シェリング・プラウ社)、AEROLIZER、BREEZHALER、SOLIS(ノバルティス社)、MONOHALER(ミアット社(Miat))、AIRMAX、CYCLOHALER(テバ社(Teva))、GENUAIR(アルミラル社(Almirall))、NEXTDPI(チエシイ社)、およびNOVOLIZER(ASTAメディカ社(ASTA Medica))が含まれる。
【0126】
一実施形態では、吸入器デバイスは、例えば、ホイルブリスター等の密封ブリスター内で、湿気の侵入を防ぐ好適な密封により製剤を湿気から保護する手段を含む。そのような実施形態は、乾燥粉末グリコピロラート製剤による湿気吸収問題を解決しようとするものである。そのようなデバイス、例えばGYROHALER(ベクチュラ社(Vectura))またはDISKUS(グラクソ・スミスクライン社)デバイスは公知である。
【0127】
これは、GYROHALERにおけるような簡便な機構でブリスターに穴を開ける場合に特に利点があると考えられる。このデバイスおよびこの技術はベクチュラ社によって開発され、粉末形態の医薬の経口または経鼻送達用吸入デバイスに関連する。粉末化された医薬は1片のブリスター中に貯蔵され、各ブリスターには穴を開けることができるフタが備わっている。吸入器を使用する場合、位置合わせされたブリスターのフタに穴を開けることにより、ブリスターを通る気流が発生してその中に含まれる用量が一緒に運ばれて、吸入器のマウスピースを介して用量分がブリスターから使用者の気道に運ばれることが可能となる。この穿孔可能なフタを備えたブリスターの機構は、ブリスターが可能な最良の密封を有することを可能にする。対照的に、ブリスターのフタを剥がして開けるDiskus等のブリスターシステムでは、剥離を可能にするための接着剤の性質に関する制限のため、最適な密封を維持することがより困難である。
【0128】
別の実施形態では、グリコピロラートを含む乾燥粉末製剤は、それ自体の含水量が10%未満、例えば5%未満、特に3%未満の材料できたパッケージ中に貯蔵される。
【0129】
好ましくはパッケージも湿気の侵入を防ぐべきであり、これにより、外部の湿気供給源から粉末が保護される。ホイルで密封されたブリスターが湿気の侵入を防ぐパッケージの例として挙げられる。
【0130】
この後者に関して、外部供給源からの湿気侵入の防止は更なるパッケージによって補助され得る。例えば、HPMCカプセルを、追加的な層のホイルパッケージ等の密封環境中に貯蔵してよい。
【0131】
別の実施形態では、乾燥粉末製剤は複数用量乾燥粉末吸入デバイスから投薬され、粉末は、用量が個々に包装されるのではなくリザーバー中に貯蔵される。そのような実施形態では、デバイスは、従来のリザーバーデバイスと比べて優れた湿気保護を提供するであろう。例えば、デバイスは以下の構成の1以上を含むであろう:密封されたリザーバー室(例えば、リザーバー室を密封するための密封用ガスケットを含む)、(リザーバー室の壁を形成するための)非常に低い湿気透過性を示すプラスチック材料、および乾燥剤。
【0132】
本発明の別の態様によれば、心拍数低下剤を必要とする、または、心拍数低下剤が必要になることが予想される患者に前記組成物を投与するための指示を更に含むパッケージ中に収容される、本明細書中で定義される医薬組成物が提供される。好ましくは、指示は、頻拍を有する、または、頻拍の予防が必要な患者に前記組成物を投与するための指示を含む。
【0133】
本発明の別の態様では、心拍数低下剤を必要とする、または、心拍数低下剤が必要になることが予想される患者に前記組成物を投与するための指示を更に含むパッケージ中に収容される、本明細書中に定義される吸入可能な単位用量が提供される。好ましくは、指示は、頻拍を有するまたは頻拍の予防が必要な患者に前記組成物を投与するための指示を含む。
【0134】
本発明の別の態様によれば、心拍数低下剤を必要とする、または、心拍数低下剤が必要になることが予想される患者に前記組成物を投与するための指示を更に含むパッケージ中に収容される、本明細書中に定義される吸入送達デバイスが提供される。好ましくは、指示は、頻拍を有するまたは頻拍の予防が必要な患者に前記組成物を投与するための指示を含む。
【0135】
本発明の別の態様によれば、頻拍等の心拍数増加を特徴とする状態または障害を治療または予防する方法であって、グリコピロラートまたはその薬学的に許容される塩を含む有効量の吸入可能な組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法が提供される。方法は、好ましくは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症(CF)、および関連する気道疾患から選択される状態等の呼吸器状態も有する患者に組成物を投与することを含む。
【0136】
以下の研究は本発明を説明するものである。
【0137】
研究方法
(a)研究デザインおよび計画
研究は、COPDの対象において、4種類の用量レベルの臭化グリコピロニウムを用いた第IIa相多施設無作為化二重盲検プラセボ対照交差用量範囲探索試験であった。研究の完了には合計40名の対象が必要であった。
【0138】
対象を無作為化し、20、125、250、および400μgの臭化グリコピロニウムの単回吸入用量を漸増で投与し、プラセボ投与を一連の5回の治験来院において無作為に行った。対象を、投薬前に無作為化して研究第1日目の治療を行った。プラセボを含む全ての用量をMiat Monohalerを用いて投与した。
【0139】
研究は、スクリーニング期間、5回の治験来院の治療期間(5〜14日の休薬期間により隔てられている)、および追跡来院(最後の治療後および研究から解放される前の7〜14日間)からなる。
【0140】
(b)研究の時期
対象は最初のプレスクリーニング来院を行い、インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名し、次いで適格性を確認するためのスクリーニング来院を行った。対象がICFに署名し、肺機能検査(PFT)前の禁止期間内に如何なる気管支拡張薬も摂取していなかった場合、プレスクリーニング来院およびスクリーニング来院を一緒に行うことができた。スクリーニング来院後、対象を研究第1日目の投薬前に無作為化した。
【0141】
その後の治療期間は5回の治験来院(5〜14日間の休薬期間により隔てられている)からなり、この期間中、Miat Monohalerを用いて漸増(20、125、250、または400μg)で単回吸入用量の臭化グリコピロニウムを対象に投薬した。プラセボを治験来院のいずれかで無作為に投与し(Miat Monohaler使用)、次の来院は、プラセボの前に投与された用量の次に多い用量の臭化グリコピロニウムを用いて続けられた。
【0142】
研究の最後に、追跡来院のために最後の治療後7〜14日間診療所に通院するよう対象に求めた。その後、対象を研究から解放した。
【0143】
各対象は8〜10週間研究に関わることが要求された。
【0144】
(c)研究集団
研究される集団は、抗コリン薬治療に反応性の、軽度から中程度のCOPDと診断された40歳以上の男性または女性とした。抗コリン薬治療への反応性は、80μgの臭化イプラトロピウム投与後の、12%以上かつ少なくとも150mlのFEV
1の増加として定義される。
【0145】
(i)対象数
140名までの対象をスクリーニングするものとし、研究の完了には対象40名が必要であった。
【0146】
スクリーニングすべき対象数は、研究の参加に適格であるためには、対象が可逆性を示す必要があるとした過去の研究のスクリーニングデータに基づいて推定した。この情報は、適格な対象1名を得るために2〜4名の対象をスクリーニングする必要があることを示していた。どれだけの対象が研究終了前に研究から脱落するか不明であったので、登録する適格な対象の最大数は指定しなかった。
【0147】
(ii)選択の基準
選択基準
以下の基準に適合した対象を研究に含めた。
1.40歳以上の男性または女性である。
2.COPD(咳、痰の生成、呼吸困難、および/または疾患の危険因子への曝露歴)と診断されている。
3.少なくとも10パックイヤーの喫煙歴がある喫煙者である、または喫煙者であった。
4.気管支拡張薬前のFEV
1が予想される正常値の40〜80%である。
5.気管支拡張薬前のFEV
1/FVC比が70%未満である。
6.スペーサーを介して送達された80μgのアトロベント(臭化イプラトロピウム)投与後にFEV
1が12%以上かつ少なくとも150ml向上した。
7.研究中に長時間作用性抗コリン薬治療を保留する意思があり、かつ、保留することが可能である。
8.研究の性質を理解することが可能であり、書面によるインフォームドコンセントを提出することができる。
【0148】
除外基準
以下のいずれかの理由によって対象を研究から除外した。
1.妊娠または授乳中である。出産の可能性のある女性は、研究期間中適切な避妊法を用いる必要があり、治験薬を受ける前に妊娠検査で陰性である必要がある。
2.狭隅角緑内障、前立腺肥大症、または膀胱頸部閉塞症の病歴がある。
3.重大な心臓、腎臓、肝臓、または代謝性の疾患を伴う。
4.アトピー、アレルギー性鼻炎のエビデンスを有する、または研究者の意見で、COPDよりも優勢な喘息を有する。
5.血中好酸球細胞数>600mm
3。
6.スクリーニング前の8週間、またはスクリーニング来院前の12ヶ月のうち4週間以上、経口ステロイド薬で治療されている。
7.吸入コルチコステロイドまたは経口テオフィリンを受けたが、スクリーニング来院前4週間に安定な用量を維持しておらず、治療期間中に安定な用量を維持できなかった。
8.抗ムスカリン剤に感受性である。
9.酸素療法が必要である。
10.スクリーニング来院前の6週間に、抗生物質治療を必要とするCOPDの増悪を有したまたは上気道感染症に罹患した。
11.投薬開始前3ヶ月以内に治験薬の投与を含む他の臨床試験に参加した。
【0149】
(d)研究治療
(i)行われた治療
全ての対象が午前08:00〜10:00に投薬されるように計画された。個々の対象について、投薬は1日の同じ時間に行った(±30分)。各投薬来院時に、Miat Monohalerを用いて単回用量の臭化グリコピロニウムまたはプラセボを対象に投与した。異なる各用量(20、125、250、または400μg)を1個のカプセルに含めた。研究実施に適切な数のMiat Monohalerを施設に供給した。各来院時に新しいMiat Monohalerを用いて各用量を投与した。
【0150】
病棟では、対象が吸入するために、スタディーナースがMiat Monohaler中に各カプセルを配置した。これは吸入の直前に行われた。各カプセルについて、Miat Monohalerで2回吸入するように対象に求めた。
【0151】
(ii)治験薬の説明
臭化グリコピロニウムは、アルミニウムパウチ中に包装された3号サイズの白色不透明硬ゼラチンカプセルとして提供された。カプセル剤は20、125、250、または400μgの臭化グリコピロニウムを含む4種類の用量強度で提供された。臭化グリコピロニウムに加えて、ラクトースおよびステアリン酸マグネシウムのPowderHale(商標)製剤からなる賦形剤がカプセル製剤中に存在する。
【0153】
活性を有さないPowderHale(商標)製剤のみを含む3号サイズの白色不透明硬ゼラチンカプセルからなるそっくりなプラセボ薬(placebo−to−match product)も提供された。
【0154】
吸入用の臭化グリコピロニウムのカプセルは乾燥した場所に25℃未満で貯蔵した。
【0155】
(iii)個々の対象の投薬の選択および時期
各対象に20、125、250、および400μgで漸増させて臭化グリコピロニウムを投与し、一連の5回の治験来院中に無作為にプラセボ投薬を入れた(すなわち、1回の来院につき1回の投薬)。
【0156】
全ての対象が午前08:00〜10:00の間に治験薬を受けるように計画された。治験薬は各研究日のほぼ同じ時間(30分以内)に各対象に投与された。
【0157】
(e)研究評価
各研究日各来院時および治験薬投与前(治療前)に、適用可能な場合、心拍数(測定前の5分間対象を半仰臥位にする);血圧;呼吸数、および体温を含む全てのバイタルサインを測定した。血圧および心拍数は研究日の治療後45分、90分、5時間、10時間、20時間、および30時間後にも測定した。
【0158】
(f)計画された統計解析
統計解析は要約表およびデータ一覧を用いて報告するものとした。評価のための統計的検定は両側検定を用いて有意水準0.05で行うこととした。
【0159】
全ての解析および作表はPCプラットフォーム上でSAS(登録商標) Version6.12を用いて行うこととした。連続変数は、症例数(n)、平均値、標準偏差(SD)、最小値、中央値、最大値によって要約するものとした。中央値、最小値、および最大値は、小数点以下の桁数を、記録される結果と同じにして示すものとした。平均値は小数点以下の桁数を1桁多くし、標準偏差は小数点以下の桁数を2桁多くするものとした。カテゴリー変数は、対象の数およびパーセンテージによって要約するものとした。
【0160】
結果
本研究の結果は表2〜4に見ることができる。
【0161】
全ての対象がスクリーニング時には正常な心拍数であった。研究の結果、試験日のベースラインから投薬5時間後まで、平均心拍数の用量依存的な低下があった。
【0162】
10時間目の試験日ベースラインからの平均心拍数の低下は断続的であり、最大の低下は400μg治療群において−6.4bpmが記録された。
【0163】
20時間目の試験日ベースラインからの平均心拍数の低下も断続的であり、最大の低下は400μg治療群において−5.6bpmが記録された。
【0164】
45分〜10時間の時点(45分および10時間目を含む)において用量400μgでプラセボと比べて統計的有意性(p<0.05)が達成された。