特許第6129139号(P6129139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129139
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】減速機の潤滑構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20170508BHJP
【FI】
   F16H57/04 J
   F16H57/04 N
   F16H57/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-221107(P2014-221107)
(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公開番号】特開2016-89860(P2016-89860A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】田原 安晃
(72)【発明者】
【氏名】野中 典昭
(72)【発明者】
【氏名】芦原 祥文
(72)【発明者】
【氏名】三上 淳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 さとり
(72)【発明者】
【氏名】小坂 大知
(72)【発明者】
【氏名】生島 嘉大
(72)【発明者】
【氏名】道下 雅也
(72)【発明者】
【氏名】梶川 敦史
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−307908(JP,A)
【文献】 特開2012−189176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の出力軸と連動して回転する第1減速ギヤ対と、該第1減速ギヤ対とはその第1減速ギヤ対の回転軸方向に変位して配置された第2減速ギヤ対をケース内に備え、前記第1減速ギヤ対は第1ドライブギヤと該第1ドライブギヤと噛み合う第1ドリブンギヤを有し、前記第2減速ギヤ対は第2ドライブギヤと該第2ドライブギヤと噛み合うとともに前記第1ドリブンギヤに比較して回転速度が遅い第2ドリブンギヤを有し、
前記ケース内に配された第1キャッチタンクと、
前記ケース内に配された第2キャッチタンクと、
前記ケースは、前記ケースの構成要素であって、前記ケースの内部を前記第1減速ギヤ対が収容される第1収容部と前記第2減速ギヤ対が収容される第2収容部に区画する区画壁を有する区画部材と、前記区画部材の一側に固定され、前記第1収容部を形成する第1側壁を有する第1分割ケース部と、前記区画部材の他側に固定され、前記第2収容部を形成する第2側壁を有する第2分割ケース部と、を備え、
前記第1側壁に立設された第1油路壁の外周面と前記第1分割ケース部の外周壁にて径方向の区画をして形成されて、前記第1収容部と連通し、前記ケースの底部に貯溜され前記第1ドリブンギヤにより掻き上げられた潤滑油を前記第1キャッチタンクへ導く第1油路と、
前記第2側壁に立設された第2油路壁の外周面と前記第2分割ケース部の外周壁にて径方向の区画をして形成されて、前記第2収容部と連通し、前記ケースの底部に貯溜され前記第2ドリブンギヤにより掻き上げられた潤滑油を前記第2キャッチタンクへ導く第2油路と、
前記区画部材に設けられて、前記第1油路と前記第2油路とを連通する連通部とを備えた減速機の潤滑構造。
【請求項2】
前記第2分割ケース部は、前記第2油路に掻き上げられた前記潤滑油を前記連通部へ案内可能な堰部を前記第2油路壁の前記外周面に有する請求項に記載の減速機の潤滑構造。
【請求項3】
前記堰部は、前記第2分割ケース部の押出しピン座である請求項に記載の減速機の潤滑構造。
【請求項4】
前記第2キャッチタンクは、前記第2油路壁の前記外周面と前記区画壁に立設されたタンク壁の外周面と、前記第2分割ケース部の前記外周壁と前記区画部材の外周壁にて径方向の区画をして形成された請求項のいずれか1項に記載の減速機の潤滑構造。
【請求項5】
前記第2キャッチタンクは、その底部に前記潤滑油を排出する排出孔を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の減速機の潤滑構造。
【請求項6】
前記駆動源は電動機であり、前記第1減速ギヤ対は前記出力軸と平行なカウンタ軸との間に設けられ、前記第2減速ギヤ対は前記カウンタ軸とそのカウンタ軸と平行でその内部に1対の車軸を回転駆動する差動機構を有したデファレンシャルケースとの間に設けられ、前記第1ドリブンギヤは前記第1減速ギヤ対の大径側であり前記カウンタ軸に固定されたカウンタドリブンギヤとし、前記第2ドリブンギヤは前記デファレンシャルケースに固定されたファイナルドリブンギヤとし、前記第2キャッチタンクは、前記第2ドライブギヤの外周側でかつ前記カウンタドリブンギヤの回転軸方向で前記カウンタドリブンギヤの収容スペースの投影面積内である位置に設けられた請求項1〜のいずれか1項に記載の減速機の潤滑構造。
【請求項7】
前記第1油路と前記第2油路は、前記第1減速ギヤ対の回転軸方向から見て互いに重なる位置に設けられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の減速機の潤滑構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機の潤滑構造に係り、特に駆動源の出力軸と連動して回転する第1減速ギヤ対と、該第1減速ギヤ対とはその第1減速ギヤ対の回転軸方向に配置されるとともに前記第1減速ギヤ対に比較して回転速度が遅い第2減速ギヤ対をケース内に備え、該ケース内の底部に貯留される潤滑油を、前記第1減速ギヤ対にて掻き上げて第1キャッチタクへ導き、一方前記第2減速ギヤ対にて掻き上げて第2キャッチタックへと導く様にして、キャッチタンクを2個設けることによりキャッチタンクに貯める潤滑油を増やして、前記駆動源の高速域での攪拌損失を低減できる減速機の潤滑構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前記ケース内の底部に貯留される潤滑油が、前記ケースに設けられた仕切り壁にて分けられて、それぞれ前記第1キャッチタンクと前記第2キャッチタンクへ導く構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−223376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如く、潤滑油を前記第1キャッチタンクに導く第1油路と、潤滑油を前記第2キャッチタンクに導く第2油路とは、前記ケースに設けられた仕切り壁にて隔離されているため、前記第1キャッチタンクと前記第2キャッチタンクのうち何れか一方が、潤滑油の貯留量が満杯となり潤滑油を収容しきれない状態になると、掻き上げられた潤滑油は、逆流して前記ケースの底部に戻ってしまうことにより潤滑油の掻き上げ効率が低下する。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、掻き上げられた潤滑油が導かれて貯められる2つのキャッチタンクのうちいずれか一方のキャッチタンクが、潤滑油の貯留量が満杯となり潤滑油を収容しきれない状態になっても、その収容しきれない潤滑油は、未だ貯蔵量に余裕のある他方のキャッチタンクへと導くことができる減速機の潤滑構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る減速機の潤滑構造は、駆動源の出力軸と連動して回転する第1減速ギヤ対と、該第1減速ギヤ対とはその第1減速ギヤ対の回転軸方向に変位して配置された第2減速ギヤ対をケース内に備え、前記第1減速ギヤ対は第1ドライブギヤと該第1ドライブギヤと噛み合う第1ドリブンギヤを有し、前記第2減速ギヤ対は第2ドライブギヤと該第2ドライブギヤと噛み合うとともに前記第1ドリブンギヤに比較して回転速度が遅い第2ドリブンギヤを有し、前記ケース内に配された第1キャッチタンクと、前記ケース内に配された第2キャッチタンクと、前記ケースは、前記ケースの構成要素であって、前記ケースの内部を前記第1減速ギヤ対が収容される第1収容部と前記第2減速ギヤ対が収容される第2収容部に区画する区画壁を有する区画部材と、前記区画部材の一側に固定され、前記第1収容部を形成する第1側壁を有する第1分割ケース部と、前記区画部材の他側に固定され、前記第2収容部を形成する第2側壁を有する第2分割ケース部と、を備え、
前記第1側壁に立設された第1油路壁の外周面と前記第1分割ケース部の外周壁にて径方向の区画をして形成されて、前記第1収容部と連通し、前記ケースの底部に貯溜され前記第1ドリブンギヤにより掻き上げられた潤滑油を前記第1キャッチタンクへ導く第1油路と、前記第2側壁に立設された第2油路壁の外周面と前記第2分割ケース部の外周壁にて径方向の区画をして形成されて、前記第2収容部と連通し、前記ケースの底部に貯溜され前記第2ドリブンギヤにより掻き上げられた潤滑油を前記第2キャッチタンクへ導く第2油路と、前記区画部材に設けられて、前記第1油路と前記第2油路とを連通する連通部とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
これによれば、区画部材に設けられた連通部にて、掻き上げられた潤滑油を第1キャッチタンクへ導く第1油路と掻き上げられた潤滑油を第2キャッチタンクへ導く第2油路とが連通することにより、それぞれ掻き上げられた潤滑油が導かれて貯められる第1キャッチタンクと第2キャッチタンクとの2つのキャッチタンクのうちいずれか一方のキャッチタンクが、潤滑油の貯留量が満杯となり潤滑油を収容しきれない状態になっても、その収容しきれない潤滑油は、未だ貯蔵量に余裕のある他方のキャッチタンクへと導くことができるので、潤滑油の掻き上げ効率を向上できる。
ケースは、区画部材と、区画部材の一側に固定され、第1収容部を形成する第1側壁を有する第1分割ケース部と、区画部材の他側に固定され、第2収容部を形成する第2側壁を有する第2分割ケース部とを備え、第1油路は、第1側壁に立設された第1油路壁の外周面と第1分割ケース部の外周壁にて径方向の区画をして形成され、第2油路は、第2側壁に立設された第2油路壁の外周面と第2分割ケース部の外周壁にて径方向の区画をして形成されている。これにより、区画部材に第1分割ケース部及び第2分割ケース部をそれぞれ合わせて固定することのみにて、第1油路と第2油路を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用された車両のリアトランスアクスルの概略構成を説明するスケルトン図である。
図2】本発明の実施の形態に係るトランスアクスルケースの第1分割ケース部の開口部側を示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るトランスアクスルケースの第2分割ケース部の開口部側を示す正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るトランスアクスルケースの区画部材の第2分割ケースとの対向側を示す正面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る第2分割ケース部単体の開口部側を示す正面図である。
図6】本発明が適用された車両のリアトランスアクスルの一部を切り欠いた縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の実施の形態について一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。又、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、本発明が適用された電気式4輪駆動車両におけるリアトランスアクスル10の構成を示すスケルトン図である。リアトランスアクスル10は、駆動源としての電動機11と、その電動機11の出力軸12とそれに平行なカウンタ軸13との間に設けられた第1減速ギヤ対14と、カウンタ軸13とそのカウンタ軸13に平行且つ電動機11と同心のデファレンシャルケース15との間に設けられた第2減速ギヤ対16と、デファレンシャルケース15内に設けられた差動機構17を有し、電動機11から第1減速ギヤ対14および第2減速ギヤ対16を介して伝達されたトルクにより一対の後方車軸18を回転駆動する差動歯車装置19とをトランスアクスルケース20(ケースに相当する)内に備えて構成される2軸型の車両用電動式駆動装置である。
【0011】
出力軸12の中央部には電動機11のロータ11aが連結され、両端側には一対の軸受21が装着されて、出力軸12は、それら一対の軸受21を介してトランスアクスルケース20により回転可能に支持されている。
【0012】
第1減速ギヤ対14は、小径側のカウンタドライブギヤ22(第1ドライブギヤに相当する)と、大径側のカウンタドリブンギヤ23(第1ドリブンギヤに相当する)とから成る。カウンタドライブギヤ22は、出力軸12の一端部の先端側に一体的に固定されている。また、カウンタドリブンギヤ23は、カウンタドライブギヤ22と噛み合う状態でカウンタ軸13の一端側に一体的に固定されている。第1減速ギヤ対14の回転軸には、出力軸12および出力軸12とは平行なるカウンタ軸13が相当するもので、従って、第1減速ギヤ対14の回転軸方向とは、出力軸12又はカウンタ軸13の軸方向を指し、図1では、左右方向が該当する。
【0013】
カウンタ軸13は、それぞれ同心に設けられた出力軸12やデファレンシャルケース15、およびそれらに固定されたカウンタドライブギヤ22や後述のファイナルドリブンギヤ26よりも車両前方側に設けられている。これにより、カウンタドリブンギヤ23は、トランスアクスルケース20内の最前方側に配置される。このカウンタ軸13の両端部には、一対の軸受24が嵌め着けられている。このカウンタ軸13は、これら一対の軸受24を介してトランスアクスルケース20により回転可能に支持されている。
【0014】
第2減速ギヤ対16は、図1に示すように第1減速ギヤ対14の回転軸方向に変位して配置されるもので、小径側のファイナルドライブギヤ25(第2ドライブギヤに相当する)と、大径側のファイナルドリブンギヤ26(第2ドリブンギヤに相当する)とから成る。ファイナルドライブギヤ25は、カウンタ軸13の他端部に一体的に固定されている。また、ファイナルドリブンギヤ26は、カウンタドライブギヤ22とは出力軸12の軸方向に変位して配置され、ファイナルドライブギヤ25と噛み合う状態でデファレンシャルケース15の外周部に嵌め着けられて一体的に固定されている。
【0015】
デファレンシャルケース15の軸方向両端側の外周面には、一対の軸受27が嵌め着けられている。従って、デファレンシャルケース15及びデファレンシャルケース15に一体的に固定されたファイナルドリブンギヤ26は、これら一対の軸受27を介してトランスアクスルケース20により回転可能に支持されている。
【0016】
差動機構17は、一般周知の所謂傘歯車式のものであり、デファレンシャルケース15内においてその回転軸心上で相対向する一対のサイドギヤ28と、それら一対のサイドギヤ28間においてデファレンシャルケース15の回転軸心に直交する状態でそのデファレンシャルケース15に固設されたピニオンシャフト29により回転可能に支持されるとともに、上記一対のサイドギヤ28とそれぞれ噛み合う一対のピニオンギヤ30とを備えている。
【0017】
一対の後方車軸18は、一対のサイドギヤ28に一体的に連結されている。デファレンシャルケース15と差動機構17とを備えて構成される差動歯車装置19は、電動機11から第1減速ギヤ対14および第2減速ギヤ対16を介して伝達されたトルクにより、一対の後方車軸18の回転速度差を許容しつつそれら一対の後方車軸18を回転駆動するものである。なお、一対の後方車軸18の一方は、中空円筒状に形成された出力軸12を挿通して一対の後輪31の車両左側の一方に連結されている。
【0018】
トランスアクスルケース20は、図1に示す如く、後方車軸18の軸線方向において4分割されて構成される。トランスアクスルケース20の構成要素である区画部材20dは、筒状で、トランスアクスルケース20内を第1減速ギヤ対14が収容される第1収容部20Aと第2減速ギヤ対16が収容される第2収容部20Bに区画する区画壁20d1(図4示)を有する。トランスアクスルケース20は、さらに、区画部材20dの一側(図1の左側)に固定され、第1収容部20Aを形成する第1側壁20a1(図2示)を有する筒状の第1分割ケース部20aと、区画部材20dの他側(図1の右側)に固定され、第2収容部20bを形成する第2側壁20b1(図1示、図3示及び図5示)を有する蓋状の第2分割ケース部20bと、主として電動機11を収容する蓋状の第3分割ケース部20cとを備える。トランスアクスルケース20の構成要素である第1分割ケース部20aと、第2分割ケース部20bと、第3分割ケース部20cと、区画部材20dは、図示しないボルトによって相互に締着されることにより油密に図1に示す如く構成されている。これらの分割ケース部20a,20b,20c、区画部材20dは、鋳造軽合金例えばアルミダイカスト等により形成されている。区画部材20dには、前述した一対の軸受21の片方及び前述した一対の軸受27の片方が支持されている。
【0019】
そして、カウンタドリブンギヤ23とファイナルドリブンギヤ26は、その回転によりトランスアクスルケース20の底部に貯溜された潤滑油を掻き上げて各潤滑部位に供給するようになっている。すなわち、本実施形態のリアトランスアクスル10には、トランスアクスルケース20内の底部に貯溜される潤滑油を掻き上げて各潤滑部位に供給する掻き上げ潤滑方式が採用されている。上記潤滑部位には、例えば第1減速ギヤ対14および第2減速ギヤ対16の噛合部、差動機構17のギヤ噛合部や回転摺動部、および各軸受21,24,27などが相当する。
【0020】
ここで、トランスアクスルケース20には、車速Vが上がるにつれて上昇するカウンタドリブンギヤ23による潤滑油の攪拌抵抗を低減することを目的として、トランスアクスルケース20内の底部に貯溜される潤滑油の油面位置を下げるために、掻き上げられる潤滑油の一部を貯溜するための第1キャッチタンク32が設けられている。この第1キャッチタンク32は、図2及び図3に示すように、トランスアクスルケース20の底部の油面のレベルH1よりも高い位置で潤滑油が貯溜できるように、分割ケース部20a、20b、20c及び区画部材20dに亘って設けられている。油面のレベルH1は、停車時におけるトランスアクスルケース20の底部に貯溜される潤滑油の高さである。
【0021】
トランスアクスルケース20の上方をスペアタイヤあるいは車載蓄電池の搭載スペースとして確保するために、本実施形態では、第1キャッチタンク32は、第1減速ギヤ対14及び前記第2減速ギヤ対16とは上下方向にオーバーラップを避ける位置一例としてトランスアクスルケース20の最後方側(カウンタ軸13を含む第1減速ギヤ対14および第2減速ギヤ対16よりも車両後方側、即ち、図1では下方、図2及び図4では左方、図3及び図5では右方)に配置されている。即ち、第1キャッチタンク32を配置する位置として、第1減速ギヤ対14及び前記第2減速ギヤ対16とは上下方向にオーバーラップを避ける位置とは、たとえ第1減速ギヤ対14及び前記第2減速ギヤ対16の上方に架かるとしても、少なくとも、第1減速ギヤ対14及び前記第2減速ギヤ対16の高さ方向の最上方位置よりも上方に位置する部分には架らない区域を指す。第1減速ギヤ対14のカウンタドリブンギヤ23により掻き上げられる潤滑油の多くが図2中の矢印Aのように上方且つ後方へ飛ばされるようになっているため、第1キャッチタンク32は、掻き上げられる潤滑油を効率的に収容可能な位置すなわちトランスアクスルケース20の最後方側に配設されている。
【0022】
これにより、第2減速ギヤ対16のファイナルドリブンギヤ26に比較して回転速度が速くて潤滑油の掻き上げ能力に優れる(掻き上げ量が多い)カウンタドリブンギヤ23の潤滑油の掻き上げ作動が、円滑に行われるようになっている。なお、第1キャッチタンク32に貯溜された潤滑油は、その第1キャッチタンク32に設けられた図示しない潤滑油供給口から他の潤滑部位へ供給されるか、所定量以上溜まることで第1キャッチタンク32からオーバーフローされるか、あるいはトランスアクスルケース20の底部の油面位置が低下することで潤滑油に浸漬されなくなった軸受やオイルシール等の潤滑必要箇所に第1キャッチタンク32の底部に設けられた図示しない排出口からの自然流出油が供給されることによって、トランスアクスルケース20内の底部に戻されるようになっている。
【0023】
トランスアクスルケース20の第1分割ケース部20aの内部には、第1減速ギヤ対14のカウンタドリブンギヤ23により掻き上げられる潤滑油を図2中の矢印Aで示すようにキャッチタンク32へ導く第1油路33が設けられている。一方、トランスアクスルケース20の第2分割ケース部20bの内部には、第2減速ギヤ対16のファイナルドリブンギヤ26に掻き上げられる潤滑油を図3中の矢印Bで示すように第2キャッチタンク35へ導く第2油路34が設けられている。第2油路34は、図1に示すように、第1油路33とは、第1減速ギヤ対14のカウンタドリブンギヤ23の回転軸なるカウンタ軸13の軸方向に変位(即ち、図1において右方)して配置されている。なお、第2油路34の配置位置は、第1油路33とは、第1減速ギヤ対14のカウンタドライブギヤ22の回転軸なる出力軸12の軸方向に変位した位置(即ち、図1において右方)でもある。つまり、第2油路34は、第1油路33とは第1減速ギヤ対14の回転軸方向に変位して配置されている。
【0024】
図2に示す如く、第1油路33は、第1分割ケース部20aの第1側壁20a1に立設された第1油路壁20a2の外周面上に形成される。第1油路33は、第1油路壁20a2の外周面と第1分割ケース部20aの外周壁20a3にて径方向の区画をして形成され、その第1油路33はカウンタドリブンギヤ23により掻き上げられる潤滑油を第1キャッチタンク32へ導く。
【0025】
図3に示す如く、第2油路34は、第2分割ケース部20bの第2側壁20b1に立設された第2油路壁20b2の外周面上に形成される。第2油路34は、第2油路壁20b2の外周面と第2分割ケース部20bの外周壁20b3にて径方向の区画をして形成され、その第2油路34はファイナルドリブンギヤ26により掻き上げられる潤滑油を第2キャッチタンク35へ導く。第2キャッチタンク35は、掻き上げられる潤滑油を貯溜してトランスアクスルケース20内の底部に貯溜される潤滑油の油面位置を下げるために、図3乃至図5に示すように、第1キャッチタンク32と同様にトランスアクスルケース20の底部の油面のレベルH1よりも高い位置に設けられている。
【0026】
第2キャッチタンク35は、第2油路壁20b2の外周面と区画部材20dの区画壁20d1に立設されたタンク壁20d2(図4示)の外周面と、第2分割ケース部20bの外周壁20b3と区画部材20dの外周壁20d3(図4示)にて径方向の区画をして形成されている。第2キャッチタンク35は、第2分割ケース部20bの第2側壁20b1と区画部材20dの区画壁20d1にての軸方向の区画がされて形成される。第2キャッチタンク35は、その底部に潤滑油を排出する排出孔35aを有する。第2キャッチタンク35に導かれた潤滑油は、排出孔35aから自然流出し、トランスアクスルケース20内の底部に戻されるようになっている。
【0027】
第2キャッチタンク35は、図1に示す如く、ファイナルドライブギヤ25の外周側でかつカウンタドリブンギヤ23の回転軸方向でカウンタドリブンギヤ23の収容スペースの投影面積内である位置に設けられている。第2キャッチタンク35は、この様に、第1減速ギヤ対14及び第2減速ギヤ対16を備えた減速機のユニットのデッドスペースに設けることができるため、減速機のユニット体格を大きくすることなく、第1キャッチタンク32を含めたキャッチタンク全体の容量を増やすことができる。
【0028】
区画部材20dの区画壁20d1には、図4に示す如く、第1油路32と第2油路35とを連通する連通部として窓36が設けられている。第2分割ケース部20bは、図3に示す如く、第2油路34に掻き上げられた潤滑油を窓36へ案内可能な堰部37を第2油路壁20b2の外周面に有する。この堰部37は、第2分割ケース20bを鋳造する際に鋳型から抜き易くするために通常設けられる押出ピン座を利用したものである。堰部37は、第2油路34の窓36に対応した位置に近接した下流側に設けられて、図3に示す如く、第2油路34に掻き上げられた潤滑油の流れ(矢印Bにて示す)の一部を、窓36に向けて向きを変え、第1油路33と合流するように、矢印Cの如く導く作用をする。図4に示す如く、区画部材20dの区画壁20d1に立設された案内壁38は、タンク壁20d2と外周壁20d3を繋いで、矢印Cにて導かれた潤滑油を窓36へと案内する。
【0029】
区画部材20dに設けられた窓36を介して、掻き上げられた潤滑油を第2キャッチタンク35へ導く第2油路34が、掻き上げられた潤滑油を第1キャッチタンク32へ導く第1油路33に連通する。これにより、それぞれ掻き上げられた潤滑油が導かれて貯められる第1キャッチタンク32と第2キャッチタンク35との2つのキャッチタンク32、35のうち第2キャッチタンク35が先に潤滑油の貯留量が満杯となり潤滑油を収容しきれない状態になっても、その収容しきれない潤滑油は、窓36にて未だ貯蔵量に余裕のある第1キャッチタンク32へと、図3示の矢印Cに示す如く導くことができるので、潤滑油の掻き上げ効率を向上できる。なお、第1キャッチタンク32が先に潤滑油の貯留量が満杯となり潤滑油を収容しきれない状態になっても、その収容しきれない潤滑油は、第1油路33から窓36を介して、第2油路34へと合流し、未だ貯蔵量に余裕のある第2キャッチタンク35へと導くことができるので、潤滑油の掻き上げ効率を向上できる。
【0030】
図5に示す如く、第2分割ケース部20bの第2側壁20b1の内面側における第2油路34の背面側即ち第2油路壁20b2の下方側付近の位置から、第2側壁20b1におけるファイナルドリブンギヤ26の回転軸線側即ちデファレンシャルケース15の回転軸線側である内周部20b4に向けて延在したリブ39が設けられている。リブ39の端縁39aに対向して設けられて、リブ39にて捕捉された潤滑油が導入されるとともに潤滑油供給対象に連通する溝部40が、第2側壁20b1に設けられている。潤滑油供給対象は、ファイナルドリブンギヤ26を第2分割ケース部20bに支承する軸受27と第2分割ケース部20b内を外部から遮断するオイルシール41であり、第2側壁20b1のファイナルドリブンギヤ26の回転軸線側に設けられている。
【0031】
ファイナルドリブンギヤ26の回転方向において、リブ39よりも手前側に補助リブ39bが少なくとも1つ、図5に示す例では3つが、リブ39と並設されている。第2側壁20b1は、図6に示す如く、ファイナルドリブンギヤ26から離れるにつれて、ファイナルドリブンギヤ26の回転軸線に近づくテーパ部20b7を有するテーパ形状に形成されている。デファレンシャルケース15の一部分は、第2側壁20b1のテーパ部20b7に対向して設けられ、両者の間にテーパ状の隙間20b8(図6示)を形成されている。
【0032】
溝部40は、図5及び図6に示す如く、第2分割ケース部20bに設けられた軸受27の軸受穴20b5の内周面に凹設された溝部40aと軸受27とオイルシール41との間に形成された段差壁20b6に凹設された溝部40bを有する。軸受27の軸受穴20b5の内周面に凹設された溝部40aの部分は、リブ39より幅が広く形成されている、溝部40は、リブ39の幅方向の略中央に設けられている。溝部40は、潤滑油を潤滑油供給対象である軸受27、オイルシール41に導き、その潤滑油は、軸受27、オイルシール41を潤滑後、トランスアクスルケース20内の底部に戻されるようになっている。溝部40は、リブ39の幅方向の略中央に設けられていることにより、減速ギヤ26が例えば車両の後進時の如く、逆回転する場合にも、前進時と同様に、潤滑油をリブ39から溝部40に導入することができる。
【0033】
第2分割ケース部20bには、リブ39が設けられていることにより、ファイナルドリブンギヤ26にて掻き揚げられた潤滑油の内、掻き上げ高さが低く第2油路34に到達できなかった潤滑油は、図5示の矢印Dに示す如く、第2油路34の背面側即ち第2油路壁20b2の下方付近を通ることとなる。この矢印Dにて示される潤滑油の流れは、リブ39にて回転を規制され、リブ39に沿って軸線側に流れ、軸受27に外周側方から供給されて潤滑するとともに軸受穴20b5の内周部に形成された溝部40aに流入する。また、溝部40aに流入した潤滑油は、段差壁20b6に形成された溝部40bを通って、潤滑油供給対象の軸受27の背側(図6において右側)から軸受27に供給されて潤滑し、また潤滑油供給対象のオイルシール41に供給されて潤滑する。
【0034】
また、ファイナルドリブンギヤ26の回転方向において、リブ39よりも手前側に補助リブ39bを設けることにより、ファイナルドリブンギヤ26にて掻き揚げられた潤滑油の内、掻き上げ高さが低く第2油路34に到達できなかった潤滑油を補助リブ39bにても捕捉できる。ファイナルドリブンギヤ26にて掻き上げられ、第2側壁20b1のテーパ部20b7に向かって軸線方向に飛散された潤滑油は、テーパ部20b7とデファレンシャルケース15の外周面との間に形成されたテーパ状の隙間20b8に流入する。補助リブ39bによって回転規制された潤滑油の一部は、補助リブ39b及びテーパ部20b7の壁面に沿って軸線側に流れて軸受27に外周側方から供給されて潤滑する。補助リブ39bを乗り越えてリブ39に到達した潤滑油と、最後の補助リブ39bとリブ39の間に流入した潤滑油は、リブ39にて回転を規制されリブ39に沿って軸線側に流れ、軸受27に供給されるとともに軸受穴20b5の内周部に形成された溝部40aに流入する。また、溝部40aに流入した潤滑油は、段差壁20b6に形成された溝部40bを通って、潤滑油供給対象の軸受27の背側(図6において右側)から軸受27に供給されて潤滑し、また潤滑油供給対象のオイルシール41に供給されて潤滑する。この様に、ファイナルドリブンギヤ26にて掻き上げられた潤滑油の一部は、第2キャッチタンク32及び第1キャッチタンク32を経由することなく、直接に潤滑油供給対象の軸受27、オイルシール41に供給されることにより、迅速に潤滑できる。又、リブ39及び溝部40により、ファイナルドリブンギヤ26にて掻き上げられた潤滑油が、滑油供給対象の軸受27、オイルシール41に潤滑油を供給されるため、特別に油路を形成する必要がない。
【0035】
図2及び図3に示すように、第1減速ギヤ対14のカウンタドリブンギヤ23と第2減速ギヤ対16のファイナルドリブンギヤ26とは、車両が停車した状態では、その略下半部が少なくともトランスアクスルケース20の底部に貯溜される潤滑油に浸漬される高さ位置に配設される。なお、図2及び図3中の2点鎖線にて示すレベルH1は、停車時におけるトランスアクスルケース20の底部に貯溜される潤滑油の高さを示す。又、電動機11のロータ11aも、停車時にはその略下半部が少なくともトランスアクスルケース20の底部に貯溜される潤滑油に浸漬される高さ位置に配設される。
【0036】
車両の走行が始まり、車両速度の上昇に伴い、トランスアクスルケース20の底部に貯溜される潤滑油は掻き上げられ量が増加して潤滑油の高さはレベルH1から徐々に下がり始め、車両速度が略時速50キロメートルの状態では、トランスアクスルケース20の底部に貯溜される潤滑油の高さは、図2及び図3中の2点鎖線にて示すレベルH2となり、第1減速ギヤ対14のカウンタドリブンギヤ23はその最下部も殆ど潤滑油に浸漬されない状態であるが、一方、第2減速ギヤ対16のファイナルドリブンギヤ26の下端は潤滑油に浸漬された状態が保持される。
【0037】
従って、車両速度が略時速50キロメートルの状態に至り、潤滑油の掻き上げ能力がファイナルドリブンギヤ26よりも優れたカウンタドリブンギヤ23によるトランスアクスルケース20の底部からの潤滑油の掻き上げが難しくなっても、ファイナルドリブンギヤ26による潤滑油を掻き上げ可能な状態は、維持される。構造上、ファイナルドリブンギヤ26の回転はカウンタドリブンギヤ23よりも遅いが、車両速度が略時速50キロメートルでは、ファイナルドリブンギヤ26の回転も上昇しているため、トランスアクスルケース20の底部からの潤滑油の掻き上げはファイナルドリブンギヤ26のみにても行うことが可能である。
【0038】
上述のように、本実施形態のリアトランスアクスル(減速機の潤滑構造)10によれば、駆動源11の出力軸12と連動して回転する第1減速ギヤ対14と、第1減速ギヤ対14とはその第1減速ギヤ対14の回転軸方向に変位して配置された第2減速ギヤ対14をケース20内に備え、第1減速ギヤ対14は第1ドライブギヤ22と第1ドライブギヤ22と噛み合う第1ドリブンギヤ23を有し、第2減速ギヤ対16は第2ドライブギヤ25と第2ドライブギヤ25と噛み合うとともに第1ドリブンギヤ23に比較して回転速度が遅い第2ドリブンギヤ26を有し、ケース20内に配された第1キャッチタンク32と、ケース20内に配された第2キャッチタンク35と、ケース20の構成要素であって、ケース20の内部を第1減速ギヤ対14が収容される第1収容部20Aと第2減速ギヤ対16が収容される第2収容部20bに区画する区画壁20d1を有する区画部材20dと、第1収容部20Aと連通し、ケース20の底部に貯溜され第1ドリブンギヤ23により掻き上げられた潤滑油を第1キャッチタンク32へ導く第1油路33と、第2収容部20Bと連通し、ケース20の底部に貯溜され第2ドリブンギヤ26により掻き上げられた潤滑油を第2キャッチタンク35へ導く第2油路34と、区画部材20dに設けられて、第1油路33と第2油路34とを連通する連通部36とを備える。これにより、区画部材20d1に設けられた連通部36にて、掻き上げられた潤滑油を第1キャッチタンク32へ導く第1油路33と掻き上げられた潤滑油を第2キャッチタンク35へ導く第2油路34とが連通することにより、それぞれ掻き上げられた潤滑油が導かれて貯められる第1キャッチタンク32と第2キャッチタンク35との2つのキャッチタンクのうちいずれか一方のキャッチタンクが、潤滑油の貯留量が満杯となり潤滑油を収容しきれない状態になっても、その収容しきれない潤滑油は、未だ貯蔵量に余裕のある他方のキャッチタンクへと導くことができるので、潤滑油の掻き上げ効率を向上できる。
【0039】
上述のように、本実施形態のリアトランスアクスル(減速機の潤滑構造)10によれば、ケース20は、区画部材20dと、区画部材20dの一側に固定され、第1収容部20Aを形成する第1側壁20a1を有する第1分割ケース部20aと、区画部材20dの他側に固定され、第2収容部20Bを形成する第2側壁20b1を有する第2分割ケース部20bとを備え、第1油路33は、第1側壁20a1に立設された第1油路壁20a2の外周面と第1分割ケース部20aの外周壁20a3にて径方向の区画をして形成され、第2油路34は、第2側壁20b1に立設された第2油路壁20b2の外周面と第2分割ケース部20bの外周壁20b3にて径方向の区画をして形成されている。これにより、区画部材20dに第1分割ケース部20a及び第2分割ケース部20bをそれぞれ合わせて固定することのみにて、第1油路33と第2油路34を形成できる。
【0040】
上述のように、本実施形態のリアトランスアクスル(減速機の潤滑構造)10によれば、第2分割ケース部20bは、第2油路34に掻き上げられた潤滑油を連通部36へ案内可能な堰部37を第2油路壁20b2の外周面に有する。これにより、掻き上げた潤滑油を第2油路34から第1油路33へと案内できる。
【0041】
上述のように、本実施形態のリアトランスアクスル(減速機の潤滑構造)10によれば、堰部37は、第2分割ケース部20bの押出しピン座である。これにより、第2分割ケース部20bを鋳造する際に必要とした押出ピン座を堰部37として兼用できるため、専用の堰部37を形成する必要がない。
【0042】
上述のように、本実施形態のリアトランスアクスル(減速機の潤滑構造)10によれば、第2キャッチタンク35は、第2油路壁20b2の外周面と区画壁20d1に立設されたタンク壁20d2の外周面と、第2分割ケース部20bの外周壁20b3と区画部材20bの外周壁20d3にて径方向の区画をして形成される。これにより、区画部材20dに第2分割ケース部20bを合わせて固定することのみにて、第2キャッチタンク35を形成できる。
【0043】
上述のように、本実施形態のリアトランスアクスル(減速機の潤滑構造)10によれば、第2キャッチタンク35は、その底部に潤滑油を排出する排出孔35aを有する。これにより、第2キャッチタンク35に貯留した潤滑油をケース20の底部に戻すことができる。
【0044】
上述のように、本実施形態のリアトランスアクスル(減速機の潤滑構造)10によれば、駆動源は電動機11であり、第1減速ギヤ対14は出力軸12と平行なカウンタ軸13との間に設けられ、第2減速ギヤ対16はカウンタ軸13とそのカウンタ軸13と平行でその内部に1対の車軸18を回転駆動する差動機構17を有したデファレンシャルケース15との間に設けられ、第1ドリブンギヤ23は第1減速ギヤ対14の大径側でありカウンタ軸13に固定されたカウンタドリブンギヤ23とし、第2ドリブンギヤ26はデファレンシャルケース15に固定されたファイナルドリブンギヤ26とし、第2キャッチタンク35は、第2ドライブギヤ25の外周側でかつカウンタドリブンギヤ23の回転軸方向でカウンタドリブンギヤ23の収容スペースの投影面積内である位置に設けられる。これにより、電動駆動される少なくとも1対の車軸18を有する車両に適用できる。第2キャッチタンク35は、この様に、第1減速ギヤ対14及び第2減速ギヤ対16を備えた減速機のユニットのデッドスペースに設けることができるため、減速機のユニット体格を大きくすることなく、第1キャッチタンク32を含めたキャッチタンク全体の容量を増やすことができる。
【0045】
また、複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合せることが可能であることは、明らかである。
【符号の説明】
【0046】
11・・・電動機(駆動源)、12・・・出力軸、13・・・カウンタ軸、14・・・第1減速ギヤ対、15・・・デファレンシャルケース、16・・・第2減速ギヤ対、17・・・差動機構、18・・・車軸、20・・・トランスアクスルケース(ケース)、20A・・・第1収容部、20B・・・第2収容部、20a・・・第1分割ケース部、20b・・・第2分割ケース部、20d・・・区画部材、20a1・・・第1側壁、20a2・・・第1油路壁、20a3・・・第1分割ケース部の外周壁、20b1・・・第2側壁、20b2・・・第2油路壁、20b3・・・第2分割ケース部の外周壁、20d1・・・区画壁、20d2・・・タンク壁、20d3・・・区画部材の外周壁、23・・・カウンタドリブンギヤ(第1ドリブンギヤ)、26・・・ファイナルドリブンギヤ(第2ドリブンギヤ)、32・・・第1キャッチタンク、33・・・第1油路、34・・・第2油路、35・・・第2キャッチタク、35a・・・第2キャッチタンクの排出孔、36・・・窓(連通路)、37・・・堰部
図1
図2
図3
図4
図5
図6