(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)成分が、脂肪族系エポキシ樹脂、チオール系エポキシ樹脂、ブタジエン系エポキシ樹脂、ポリオール変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂である、請求項1に記載の光デバイス面封止用組成物。
前記(A)成分が、フルオレン構造またはビスフェノール構造を含むハードセグメントと、炭素数2〜20のアルキレングリコール、ポリブタジエン、ブタジエン・アクリル共重合体からなる群より選ばれる化合物由来の構造または炭素数2〜20のアルキレン基を含むソフトセグメントとを有するエポキシ樹脂である、請求項1に記載の光デバイス面封止用組成物。
前記基板(H)が、アルミニウムを含む金属板であるか、エステル(共)重合体、環状オレフィン(共)重合体、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、アクリル(共)重合体およびポリカーボネートからなる群から選ばれる1種類以上を含む樹脂板である、請求項8に記載のディスプレイ。
前記基板(L)が、ガラスまたはシリコンを含む無機基板であるか、エステル(共)重合体、ポリイミド、ポリカーボネートおよびポリアミドからなる群から選ばれる一種類以上を含む樹脂板である、請求項8に記載のディスプレイ。
光デバイスが配置された一の基板と、前記光デバイス上に積層された請求項1に記載の光デバイス面封止用組成物からなる層と、他の基板とをこの順に有する積層体を得る工程と、
前記積層体を50〜110℃で加熱する工程と
を含む、ディスプレイの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.光デバイス面封止用組成物
本発明の光デバイス面封止用組成物は、好ましくは有機EL素子の面封止に用いられる組成物(有機EL素子用面封止組成物)でありうる。本発明の光デバイス面封止用組成物は、該組成物を40℃から80℃まで5℃/min.で昇温した後、80℃で30分間保持して測定した80℃における貯蔵弾性率G’(80)が、1.0×10
3〜2.0×10
6Paである。
【0014】
本発明の第一の実施形態の光デバイス面封止用組成物は、必要に応じて(A)可とう性エポキシ樹脂と、(B)硬化促進剤とを含みうる。これらの成分を含む光デバイス面封止用組成物は、(C)高分子量のエポキシ樹脂、(D)低分子量のエポキシ樹脂、(E)エポキシ基またはエポキシ基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤、(F)溶剤、および(G)その他の成分をさらに含みうる。
【0015】
また、本発明の第二の実施形態の光デバイス面封止用組成物は、必要に応じて熱可塑性エラストマーを含みうる。熱可塑性エラストマーを含む第二の実施形態の光デバイス面封止用組成物は、熱可塑性エラストマー以外の成分を含まなくてよいが、必要に応じて、前述の(A)〜(G)成分のいずれかまたは全てをさらに含んでもよい。
【0016】
また、本発明の光デバイス面封止用組成物の形状は、限定されず、液状でもシート状でもよい。本発明の光デバイス面封止用組成物がシート状である場合は、積層体であってもよい。積層体は、例えば、前記(A)と(B)とを含む層と、前記(A)や(B)を含まない層の積層体であってもよい。また、前記組成物が熱可塑性エラストマーを含む場合は、熱可塑性エラストマーからなる層と、当該層の片面または両面に配置された、熱可塑性エラストマーを含まず、エポキシ樹脂を含む層との積層体であってもよい。
【0017】
本発明の光デバイス面封止用組成物は、40℃から80℃まで5℃/min.で昇温した後、80℃で30分間保持して測定される80℃における貯蔵弾性率G’(80)が、1.0×10
3〜2.0×10
6Paである。貯蔵弾性率G’(80)が前記範囲よりも大きいと、線膨張係数に一定以上の差がある一対の基板(例えば、回路基板と表示基板)と光デバイス面封止用組成物とを用いてディスプレイを製造した場合、該組成物の硬化物または熱圧着物が、2つの基板の膨脹・収縮の差によって生じる応力を緩和できないため、ディスプレイが大きく反る恐れがある。一方、前記範囲より貯蔵弾性率G’(80)が小さいと、面封止用組成物の流動性が高くなりすぎ、有機EL素子などの光デバイスを面封止する際のハンドリング性が低下する恐れがある。また、面封止材の封止性能、特に有機EL素子などの光デバイスを劣化させる恐れがある水分などの浸入を防ぐことが難しくなり、ディスプレイの信頼性が低下する恐れがある。面封止材とは、光デバイス面封止用組成物が熱硬化性を有する場合(例えば第一の実施形態の光デバイス面封止用組成物である場合)は、前記組成物の硬化物を意味し;前記組成物が熱硬化性を有しない場合(例えば第二の実施形態の光デバイス面封止用組成物である場合)は、前記組成物自体を意味する。
【0018】
本発明の光デバイス面封止用組成物が、後述する(A)成分などを含み、熱硬化性を有する場合(例えば第一の実施形態の光デバイス面封止用組成物である場合)は、40℃から80℃まで5℃/min.で昇温した後、80℃で30分間保持することによって、熱硬化し、硬化物となる。即ち、「本発明の光デバイス面封止用組成物の、40℃から80℃まで5℃/min.で昇温した後、80℃で30分間保持して測定した80℃における貯蔵弾性率G’(80)が1.0×10
3〜2.0×10
6である」とは、本発明の組成物が熱硬化性の組成物である場合は、前記組成物を40℃から80℃まで5℃/min.で昇温した後、80℃で30分間保持して得られた硬化物の、80℃で測定した貯蔵弾性率が1.0×10
3〜2.0×10
6Paであることを意味する。
【0019】
一方、本発明の光デバイス面封止用組成物が、後述する熱可塑性エラストマーを含み、熱硬化性を有しない場合(例えば第二の実施形態の光デバイス面封止用組成物である場合)は、40℃から80℃まで5℃/min.で昇温した後、80℃で30分間保持しても熱硬化しない。そのため、後述する熱可塑性エラストマーを含む組成物自体の、80℃で測定した貯蔵弾性率が1.0×10
3〜2.0×10
6Paであることを意味する。
【0020】
80℃における貯蔵弾性率G’(80)を上記範囲とする方法としては、例えば、第一の実施形態の光デバイス面封止用組成物では、(A)可とう性エポキシ樹脂の種類とその含有量(組成物の全成分に対する含有量)を調整する方法がある。上記成分(A)の比率を増加させることで、貯蔵弾性率G’(80)を低下させることができる。
【0021】
また、第二の実施形態の光デバイス面封止用組成物では、熱可塑性エラストマーの種類を選択することによって、本発明の組成物の貯蔵弾性率G’(80)を調整することができる。
【0022】
第一の実施形態の光デバイス面封止用組成物
第一の実施形態の光デバイス面封止用組成物は、(A)可とう性エポキシ樹脂と、(B)硬化促進剤とを含みうる。
【0023】
(A)可とう性エポキシ樹脂
本発明の光デバイス面封止用組成物は、前述の貯蔵弾性率G’(80)を調整するために、可とう性エポキシ樹脂を含んでもよい。可とう性エポキシ樹脂とは、ゴム弾性と強度を兼ね備えているエポキシ樹脂である。可とう性エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂であることが好ましく、分子中にエポキシ基を2つ有する二官能エポキシ樹脂であることがより好ましい。また、後述するディスプレイの製造方法において、光デバイス面封止用組成物(有機ELディスプレイの製造に用いる場合は有機EL素子面封止用組成物ともいう)を加熱する温度領域で、可とう性を有するものが、反りが少ないディスプレイを製造するという観点からは好ましい。
【0024】
可とう性エポキシ樹脂とは、具体的には、以下のように定義されうる。
1)可とう性エポキシ樹脂70重量部、酸無水物(例えば、リカシッドMH700G(主成分:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、新日本理化(株)製))30重量部、硬化促進剤(例えば、IBMI12(1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、三菱化学社製))1重量部、硬化促進剤(例えば、2E4MZ(1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、四国化成製)1重量部を混合し、可とう性エポキシ樹脂組成物のワニスを調製する。
2)一方、ガラス板/離型フィルム/スペーサー(500μ
m厚)/離型フィルム/ガラス板スペーサーの積層体を作成し、前記積層体の中央部を1.5センチ×1.5センチの正方形
の凹みができるようにくりぬいて硬化用の器具を作成する。
3)次に、前記器具の凹みに前記ワニスを封入し、ガラス板の自重で厚みを500μ
mに調整し、80℃で1時間〜3時間、離型フィルムへのべたつきがなくなるまで加熱し硬化させる。
4)得られた可とう性エポキシ樹脂組成物の硬化物の、後述の「(3)貯蔵弾性率方法」に記載の方法で測定される80℃における貯蔵弾性率G’E(80)が、1.0×10
3〜2.0×10
6Paの範囲内となるエポキシ樹脂を「可とう性エポキシ樹脂」として用いることができる。
【0025】
本発明の可とう性エポキシ樹脂は、α)脂肪族系エポキシ樹脂、ブタジエン系エポキシ樹脂、チオール系エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂であるか;β)ポリオール変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂でありうる。
【0026】
α)エポキシ樹脂
脂肪族系エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチル
グリコールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル等一般に製造、販売されている二官能エポキシ樹脂があげられる。チオール系エポキシ樹脂としては、例えばジチオエーテル変性エポキシ樹脂等があげられる。ブタジエン系エポキシ樹脂の例には、ポリブタジエン変性エポキシ樹脂が含まれる。
【0027】
β)変性エポキシ樹脂
変性エポキシ樹脂は、ビスフェノールまたはビスフェノールフルオレンとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂の変性物であるか;ビスフェノールまたはビスフェノールフルオレンの変性物とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0028】
ポリオール変性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、ビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテルなどが挙げられる。
【0029】
ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂としては、ε−カプロラクトン変性のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性の(3,4−3’,4’エポキシシクロ)ヘキシル
)メチルヘキサンカルボキシレート等のε−カプロラクトン変性二官能エポキシ樹脂が挙げられる。
【0030】
ゴム変性エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールAのエピクロルヒドリンによるジグリシジルエーテル化物をブタジエン・アクリロニトリル共重合物でカルボキシル化して得られる変性物などが挙げられる。ゴム変性エポキシ樹脂の市販品の例には、EPOX−MK SR35K、EPOX−MK SR3542などが含まれる。
【0031】
ダイマー酸変性エポキシ樹脂の例には、新日鉄住金化学製YD-171およびYD-172などが含まれる。
【0032】
ウレタン変性エポキシ樹脂の例には、2分子以上のビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂など)が、ウレタンポリマーで架橋された構造を有する、ウレタン架橋ビスフェノール型エポキシ樹脂などが含まれる。ウレタン変性エポキシ樹脂の市販品の例には、(株)ADEKAのEPU-78-13S(ウレタン架橋ビスフェノール型エポキシ樹脂)などが含まれる。
【0033】
これらの中でも、ゴム弾性や強度を考慮すると、ポリオール変性エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂が好ましい。これらの可とう性エポキシ樹脂は、1種または2種類以上を併せて用いることができる。
【0034】
なかでも、十分な透湿性や透明性を有し、かつ上記貯蔵弾性率を満たす硬化物を得るためには、可とう性エポキシ樹脂は、フルオレン構造またはビスフェノール構造を含むハードセグメントと、炭素数2〜20(好ましくは炭素数2〜5)のアルキレングリコール、ポリブタジエン、ブタジエン・アクリル共重合体からなる群より選ばれる化合物由来の構造または炭素数2〜20(好ましくは炭素数2〜5)のアルキレン基を含むソフトセグメントとを有することが好ましい。
【0035】
炭素数2〜20のアルキレングリコールの例には、エチレングリコールやプロピレングリコールなどの他、エチレングリコールユニットを繰り返し単位として含むHO―(CH
2CH
2−O)m−H(mは1〜10の整数)や、プロピレングリコールユニットを繰り返し単位として含むHO―(CH
2CH(CH
3)−O)n−H(nは1〜6の整数)なども含まれる。ブタジエン・アクリル共重合体の例には、アクリロニトリルブタジエン共重合体などが含まれる。炭素数2〜20のアルキレン基の例には、ペンチレン基などが含まれる。
【0036】
ハードセグメントは、フルオレン構造またはビスフェノール構造を含むセグメントである。ソフトセグメントは、可とう性エポキシ樹脂の1分子内で、2つのハードセグメントの間に挟まれるセグメントであるか、ハードセグメントとエポキシ基との間に挟まれるセグメントである。
【0037】
例えば、下記式で表されるエポキシ樹脂では、ハードセグメントは、ビスフェノール構造(−C
6H
4−C(CH
3)
2−C
6H
4−)であり;ソフトセグメントは、ハードセグメントとエポキシ基との間に挟まれた(−OCH
2CH(CH
3)−O−)nd1や(−OCH
2CH(CH
3)−O−)nd2でありうる(nd1、nd2はそれぞれ独立に1〜6の整数である)。
【化1】
【0038】
(A)可とう性エポキシ樹脂の含有量は、組成物全体を100重量部とした場合に、10〜70重量部含むのが好ましく、20〜50重量部含むのがより好ましい。前記範囲に入ると、本発明の組成物を用いてディスプレイを作製した場合の反りが抑制されやすい。また、本発明の組成物に、後述する(C)高分子量のエポキシ樹脂を添加してシート状などに成形した場合に、シート形状を保ちやすい。また、該シート状の組成物を離型フィルム上に成形した場合、該シート状の組成物の形状を保ちながら、離型フィルムから分離しやすくなる。
【0039】
(B)硬化促進剤
本発明の光デバイス面封止用組成物が前記(A)成分を含む場合は、(B)硬化促進剤を含むのが好ましい。硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化を開始させるとともに、硬化を促進させる機能を有する。
【0040】
硬化促進剤の例には、イミダゾール化合物やアミン化合物が含まれる。イミダゾール化合物の例には、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが含まれ;アミン化合物の例には、トリスジメチルアミノメチルフェノールなどが含まれる。(B)硬化促進剤はルイス塩基化合物であってもよい。
【0041】
硬化促進剤の分子量は、70〜800であることが好ましく、80〜500であることがより好ましく、90〜250であることがさらに好ましい。(B)硬化促進剤の分子量が70未満であると、揮発性が高くなり、光デバイス面封止用組成物を熱圧着する間に、光デバイス面封止用組成物内で気泡が生じる可能性がある。一方、分子量が800超であると、光デバイス面封止用組成物を熱圧着する際の光デバイス面封止用組成物の流動性を低下させる可能性があり、さらに光デバイス面封止用組成物内での硬化促進剤の拡散性が低下し、十分な硬化性が得られない場合がある。
【0042】
(B)硬化促進剤の含有量は、本発明の組成物がエポキシ樹脂を含む場合は、含まれるエポキシ樹脂の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましい。
【0043】
(C)高分子量のエポキシ樹脂
本発明における(C)高分子量のエポキシ樹脂とは、前述の(A)可とう性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂であり、本発明の組成物が(A)成分を含む場合に、組成物をシート状にするために添加されることがある。
【0044】
(C)成分は、重量平均分子量が2×10
3〜1×10
5であるエポキシ樹脂であり、重量平均分子量は、好ましくは3×10
3〜8×10
4、さらに好ましくは4×10
3〜6×10
4である。上記重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定し得る。
装置:SHODEX製、GPC−101
展開溶媒:テトラヒドロフラン
標準ポリスチレン:VARIAN製PS−1(分子量580〜7,500,000)、VARIAN製PS−2(分子量580〜377,400)
【0045】
(C)成分を組成物中に配合することで、本発明の組成物をシート状などに成形する場合に、形状安定性が向上する。また上記重量平均分子量を有するエポキシ樹脂は、貯蔵弾性率の温度依存性が比較的低い。したがって、
上記重量平均分子量を有する(C)高分子量のエポキシ樹脂の所定量以上配合することで、温度による貯蔵弾性率G’の変化が少ない組成物を得ることができる。
【0046】
(C)高分子量のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、組成物の硬化物の架橋密度等を考慮すると、500〜1×10
4g/eqとすることが好ましく、600〜9000g/eqとすることがより好ましい。
【0047】
(C)高分子量のエポキシ樹脂の好ましい例としては、低い透湿度を実現可能であること等から、主鎖にビスフェノール骨格を含む樹脂が挙げられ、より好ましくはビスフェノールとエピクロロヒドリンとをモノマー成分として含む樹脂、さらに好ましくは、そのオリゴマーである。
【0048】
(C)高分子量のエポキシ樹脂のモノマー成分の全てをビスフェノールとエピクロロヒドリンとしてもよいが;モノマー成分の一部をビスフェノールとエピクロロヒドリン以外の化合物(コモノマー成分)としてもよい。前記コモノマー成分の例には、2価以上の多価アルコール(例えば、2価のフェノールやグリコールなど)が含まれる。モノマー成分の一部をビスフェノールとエピクロロヒドリン以外の化合物(コモノマー成分)とすることで、分子量を所望の値に制御することができる。
【0049】
高分子量のエポキシ樹脂の好ましい例には、下記一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有する樹脂が含まれる。
【化2】
〔一般式(1)において、Xは、単結合、メチレン基、イソプロピリデン基、−S−または−SO
2−を表す。一般式(1)において、Xがメチレン基である構造単位はビスフェノールF型の構造単位であり;Xがイソプロピリデン基である構造単位はビスフェノールA型の構造単位である。nは、一般式(1)で表される構造単位の繰り返し数であり、2以上の整数である。〕
【0050】
一般式(1)において、Pは置換基R
1の置換数であり、0〜4の整数である。耐熱性や低透湿性の観点から、Pは0であることが好ましい。R
1は、それぞれ独立して、炭素数が1〜5のアルキル基であり、メチル基であることが好ましい。
【0051】
本発明では特に、上記一般式(1)におけるXがメチレン基であるビスフェノールF型の繰り返し構造単位、及び上記一般式(1)におけるXがイソプロピリデン基であるビスフェノールA型の繰り返し構造単位を、一分子中に含むオリゴマーが好ましい。オリゴマーが、ビスフェノールA型の繰り返し構造単位を含有することで、高分子量エポキシ樹脂組成物の粘度を高いものとし得る。一方で、オリゴマーがビスフェノールF型の繰り返し構造単位を含有することで、立体障害が小さくなる。これにより、複数のフェニレン基が配向し易くなり、光デバイス面封止用組成物の硬化物の透湿度を低いものとし得る。
【0052】
上記オリゴマー一分子中に含まれるビスフェノールA型の繰り返し構造単位の個数(A)及びビスフェノールF型の繰り返し構造単位の個数(F)の総数に対する、一分子中に含まれるビスフェールF型の繰り返し構造単位の個数(F)の割合;{(F/A+F)×100}は、50%以上であることが好ましく、55%以上がより好ましい。ビスフェノールF型の繰り返し構造単位を多く含むことで、光デバイス面封止用組成物の硬化物の透湿度を十分に低いものとし得る。
【0053】
(C)高分子量のエポキシ樹脂の含有量は、(B)硬化促進剤、後述の(D)低分子量のエポキシ樹脂、(A)可とう性エポキシ樹脂、および後述の(E)シランカップリング剤の合計100質量部に対して100〜2000質量部とすることが好ましく、より好ましくは210〜2000質量部、さらに好ましくは250〜1200質量部である。(C)高分子量のエポキシ樹脂の含有比率を上記範囲とすることで、本発明の組成物をシート状にする場合は、シート形状を保持しやすくなる。また、(C)高分子量のエポキシ樹脂の含有比率が高すぎると、有機EL素子などの光デバイスを封止する際の組成物の流動性が低くなるため、有機EL素子などの光デバイスとの間に隙間が形成される恐れがある。
【0054】
また、光デバイス面封止用組成物が、後述の(D)低分子量のエポキシ樹脂や(A)可とう性エポキシ樹脂を含有する場合、(C)高分子量のエポキシ樹脂の含有量は、(D)低分子量のエポキシ樹脂と(A)可とう性エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、50〜1200質量部であることが好ましく、より好ましくは80〜1000質量部である。(D)低分子量のエポキシ樹脂と(A)可とう性エポキシ樹脂の合計に対して(C)高分子量のエポキシ樹脂
の含有比率を上記範囲にすることで、有機EL素子を面封止する際の流動性を低下させることなく、光デバイス面封止用組成物の形状安定性を高め、低透湿度の硬化物を与えることができる。またシート状に加工する場合、(D)低分子量のエポキシ樹脂と(A)可とう性エポキシ樹脂の合計に対して(C)高分子量のエポキシ樹脂
の含有比率を100〜800質量部にすることで、シート形状を維持しやすい。
【0055】
(D)低分子量のエポキシ樹脂
本発明の光デバイス面封止用組成物は、(D)低分子量のエポキシ樹脂を含有してもよい。(D)低分子量のエポキシ樹脂とは、前述の(A)可とう性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂で重量平均分子量が100〜1200であるエポキシ樹脂であり、好ましくは重量平均分子量が200〜1100である。重量平均分子量は、前述と同様に測定される。重量平均分子量が上記範囲である(C)エポキシ樹脂を光デバイス面封止用組成物に配合することで、光デバイス面封止用組成物で有機EL素子などの光デバイスを封止する際の、光デバイス面封止用組成物の流動性を高めることができ、有機EL素子などの光デバイスに対する密着性を高めることができる。
【0056】
(D)低分子量のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、80〜300g/eqであることが好ましく、100〜200g/eqであることがより好ましい。エポキシ当量が上記範囲内である低分子量のエポキシ樹脂を、光デバイス面封止用組成物に配合することで、光デバイス面封止用組成物中の水素結合量を高め、80℃における貯蔵弾性率を所定の範囲とすることもできる。
【0057】
(D)低分子量のエポキシ樹脂は、フェノール型のエポキシ樹脂であることが好ましく、2価以上のフェノール型エポキシ化合物、またはフェノール誘導体とエピクロロヒドリンとをモノマー成分として含むオリゴマーであることがより好ましい。
【0058】
2価以上のフェノール型エポキシ化合物の例には、ビスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物などが含まれる。ビスフェノール型エポキシ化合物の例には、一般式(2)で表される化合物が含まれる。下記一般式(2)におけるX、R
1およびPは、一般式(1)におけるX、R
1およびPと同様である。
【化3】
【0059】
フェノール誘導体とエピクロロヒドリンとをモノマー成分として含むオリゴマーのフェノール誘導体の例には、ビスフェノール、水素化ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が含まれる。
【0060】
(D)低分子量のエポキシ樹脂の好ましい例には、ビスフェノール型エポキシ化合物、またはビスフェノールとエピクロロヒドリンとをモノマー成分とするオリゴマーが含まれ、より好ましくは前記一般式(1)において、繰り返し数nが2〜4であるオリゴマーである。このようなオリゴマーは、高分子量のエポキシ樹脂との親和性が高い。
【0061】
なお、(D)低分子量のエポキシ樹脂に含まれる繰り返し構造単位は、(C)高分子量のエポキシ樹脂に含まれる繰り返し構造単位と同じであっても、異なってもよい。
【0062】
(D)低分子量のエポキシ樹脂の含有量は、(C)高分子量のエポキシ樹脂、(B)硬化促進剤、および後述の(E)シランカップリング剤の合計100質量部に対して1〜100質量部であるのが好ましく、より好ましくは5〜50質量部である。(D)低分子量のエポキシ樹脂の含有比率を上記範囲とすることで、光デバイス面封止用組成物で有機EL素子などの光デバイスを封止する間の組成物の流動性を十分にすることができ、さらに光デバイス面封止用組成物が熱硬化性である場合、熱硬化性を高めることができる。
【0063】
(E)エポキシ基またはエポキシ基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤
本発明の光デバイス面封止用組成物には、1)エポキシ基を有するシランカップリング剤、または2)エポキシ基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤を含み得る。エポキシ基と反応するとは、エポキシ基と付加反応すること等をいう。シランカップリング剤を含む光デバイス面封止用組成物は、例えば有機EL用の光デバイス面封止シートに用いた場合、基板との密着性が高くなる。また、エポキシ基を有する、またはエポキシ基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤は、光デバイス面封止用組成物中にエポキシ樹脂が存在する場合に、前記樹脂と反応する。したがって、上記シランカップリング剤は、光デバイス面封止用組成物の硬化物中に低分子量成分が残らない、という点でも好ましい。
【0064】
1)エポキシ基を有するシランカップリング剤は、グリシジル基等のエポキシ基を含むシランカップリング剤であり、その例には、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが含まれる。
【0065】
2)エポキシ基と反応可能な官能基には、1級アミノ基、2級アミノ基等のアミノ基;カルボキシル基等が含まれるほか、エポキシ基と反応可能な官能基に変換される基(例えば、メタクリロイル基、イソシアネート基など)も含まれる。このようなエポキシ基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤の例には、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−(4−メチルピペラジノ)プロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ-イソシアナトプロピルトリエトキシシランなどが含まれる。
【0066】
なお、上記シランカップリング剤と併せて、その他のシランカップリング剤も用い得る。その他のシランカップリング剤の例には、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが含まれる。これらのシランカップリング剤は、1種単独を用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
シランカップリング剤の分子量は、80〜800であることが好ましい。シランカップリング剤の分子量が800を超えると、光デバイス面封止用組成物で有機EL素子などの光デバイスを封止する際の流動性が十分でなく、密着性が低下することがある。
【0068】
シランカップリング剤の含有量は、光デバイス面封止用組成物100質量部に対して、0.0001〜30質量部であることが好ましく、0.0005〜20質量部であることがより好ましく、0.0008〜10質量部であることがさらに好ましい。
【0069】
(F)溶剤
本発明の光デバイス面封止用組成物は、前述の(A)〜(E)成分などを均一に混合する点などから、溶剤を含んでもよい。溶剤は、特に高分子量のエポキシ樹脂を均一に分散または溶解させる機能を有する。溶剤は、各種有機溶剤であってもよく、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコ−ルモノアルキルエーテル、エチレングリコ−ルジアルキルエーテル、プロピレングリコー
ルジアルキルエーテル等のエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルフォルムアルデヒド等の非プロトン性極性溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が含まれる。特に、高分子量のエポキシ樹脂を溶解し易い点から、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤(ケト基を有する溶剤)がより好ましい。
【0070】
(G)その他任意成分
本発明の光デバイス面封止用組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、その他樹脂成分、充填剤、改質剤、安定剤などの任意成分をさらに含有することができる。他の樹脂成分の例には、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジェン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマーが含まれる。これらの1種単独を、または複数種の組み合わせを含有することができる。
【0071】
充填剤の例には、ガラスビーズ、スチレン系ポリマー粒子、メタクリレート系ポリマー粒子、エチレン系ポリマー粒子、プロピレン系ポリマー粒子が含まれる。充填剤は、複数種の組み合わせであってもよい。
【0072】
改質剤の例には、重合開始助剤、老化防止剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤などが含まれる。これらは、複数種を組み合わせて使用してもよい。安定剤の例には、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤が含まれる。改質剤は、複数種の組み合わせであってもよい。
【0073】
一方、本発明の光デバイス面封止用組成物は被封止材への水分の影響を抑制する点から、水分含有量が0.1%以下であることが好ましく、0.06%以下であることがより好ましい。
【0074】
第二の実施形態の光デバイス面封止用組成物
本発明の第二の実施形態の光デバイス面封止用組成物に含まれてもよい熱可塑性エラストマーの例には、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、およびポリエステル系エラストマーなどが含まれる。なかでも、粘着性や柔軟性を調整しやすい点で、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーが好ましい。
【0075】
ポリスチレン系エラストマーには、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、他のスチレン・ジエン系ブロック共重合体およびその水素添加物(水添スチレン・ブタジエンゴム(HSBR)など)などが含まれる。スチレン系エラストマーには、JSR(株)製ダイナロン(登録商標)などが含まれる。
【0076】
ポリオレフィン系エラストマーには、結晶性を示すポリオレフィンブロックと、非結晶性を示すモノマー共重合体ブロックとのブロック共重合体が含まれる。その具体例には、オレフィン・エチレン・ブチレン・オレフィン共重合体、ポリプロピレン・ポリエチレンオキシド・ポリプロピレンブロック共重合体、ポリプロピレン・ポリオレフィン・ポリプロピレンブロック共重合体が含まれる。市販のポリオレフィン系エラストマーには、三井化学(株)製Notio(登録商標)などが含まれる。
【0077】
第二の実施形態の光デバイス面封止用組成物における熱可塑性エラストマーの含有量は、組成物全体に対して10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0078】
光デバイス面封止用組成物の硬化性
本発明の光デバイス面封止用組成物が熱硬化性である場合(例えば、第一の実施形態の光デバイス面封止用組成物である場合)、光デバイス面封止用組成物の硬化速度は、ある程度高いほうが好ましい。被熱圧着材と接着する際の作業性を高めるためである。速やかに硬化できるとは、例えば、加熱条件下(80〜100℃)において、120分以内に硬化することをいう。
【0079】
光デバイス面封止用組成物が硬化したかどうかは、光デバイス面封止用組成物をホットプレート上で熱硬化させ、ゲル化したかどうかを指触にて確認して判断すればよい。また、光デバイス面封止用組成物が硬化したかどうかは、エポキシ基の転化率から求めてもよい。エポキシ基の転化率は、硬化反応させる前と硬化反応させた後の光デバイス面封止用組成物のIRスペクトルをそれぞれ測定し、該IRスペクトルの、エポキシ基の減少率から求めることができる。光デバイス面封止用組成物の硬化性は、硬化促進剤の含有量を調節することによって制御される。
【0080】
光デバイス面封止用組成物の製造方法
本発明の光デバイス面封止用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、任意の方法で製造され得る。例えば、第一の実施形態の光デバイス面封止用組成物からなるシートは、1)(A)〜(E)成分を準備する工程と、2)(A)〜(E)成分を、(F)成分に溶解させて30℃以下で混合する工程と、3)基板上に当該混合物をシート状に塗布する工程と、4)シート状に塗布された混合物を乾燥する工程とを含む方法で製造し得る。
【0081】
2)の工程では、(A)〜(E)成分を一度に混合してもよいし、(F)成分に(A)成分を溶解および混合した後、他の成分を添加して混合してもよい。混合は、これらの成分をフラスコに装入して攪拌する方法や、三本ロールで混練する方法が含まれる。
【0082】
2)の工程で得られる混合物の、25℃での粘度は、0.01〜100Pa・sであることが好ましい。混合物の粘度を上記範囲にすることで、塗工性を高め、シートへの成形を容易にすることができる。上記粘度は、E型粘度計(東機産業製 RC−500)によって、25℃で測定される値である。混合物の粘度は、(E)成分の量等で調整し得る。
【0083】
3)の工程における塗布方法は、特に限定されず、例えばスクリーン印刷、ディスペンサー、各種塗布ロールを使用する方法等が挙げられる。また、基材フィルムの種類は、特に制限はなく、例えば公知の離型フィルム等を用い得る。また、混合物の塗布厚みは、目的とする光デバイス面封止用組成物の膜厚に応じて適宜選択され、乾燥後の光デバイス面封止用組成物の膜厚が、例えば1〜100μmとなるように設定し得る。
【0084】
また、4)の工程における乾燥温度および乾燥時間は、光デバイス面封止用組成物に含まれる(C)高分子量のエポキシ樹脂や(D)低分子量のエポキシ樹脂が硬化せずに、(F)溶剤を所望の量以下となるまで、乾燥除去できる程度に設定されればよい。乾燥温度は、例えば20〜70℃であり、乾燥時間は、例えば10分〜3時間程度である。具体的には、塗膜を、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、30〜60℃で10分間程度乾燥した後、さらに2時間程度真空乾燥することが好ましい。このように、真空乾燥をさらに行うことで、比較的低い乾燥温度で、前記シートに含まれる溶剤や水分を除去できる。乾燥方法は、特に限定されず、例えば熱風乾燥、真空乾燥等がある。
【0085】
また、本発明の第二の実施形態の光デバイス面封止用組成物からなるシートは、所定の熱可塑性エラストマーを含む組成物を、通常用いられる方法(例えば溶融押し出し法)で成形することで得ることができる。
【0086】
2.封止シート
本発明の光デバイス面封止用組成物を含むシートを封止シートという。例えば、本発明の封止シートは、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成された、前述の光デバイス面封止用組成物からなる層と、必要に応じて該光デバイス面封止用組成物からなる層上に形成される保護フィルムとを含む。また、後述する基材(H)や基材(L)との接着力を向上させるため、本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層の表面に、エポキシ樹脂などの熱硬化性の樹脂層をさらに設ける態様も好ましい。即ち、前記基材フィルムと保護フィルムの間に、熱硬化性の樹脂層/本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層/熱硬化性の樹脂層を配置する態様も好ましい。
【0087】
本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層の含水率は、被封止材への水分の影響を抑制する点から、0.1%以下であることが好ましく、0.06%以下であることがより好ましい。特に、有機EL素子などの光デバイスは、水分により劣化しやすいので、本発明の組成物で有機EL素子などの光デバイスをシールする場合には、できるだけ前記含水率を低減することが好ましい。光デバイス面封止用組成物の含水率は、例えば光デバイス面封止用組成物を真空下加熱乾燥すること等により低減することができる。
【0088】
本発明の光デバイス面封止用組成物の含水率は、例えば、前記シートの試料片を約0.1g計量し、カールフィッシャー水分計を用いて150℃に加熱し、その際に発生する水分量を測定することにより求めることができる(固体気化法)。
【0089】
本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層の厚みは、被封止材の種類にもよるが、例えば1〜100μmであり、好ましくは10〜30μmであり、さらに好ましくは20〜30μmである。
【0090】
本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層は、有機EL素子などの光デバイスを面封止する温度において適度な流動性を有することが好ましい。有機EL素子などの光デバイスを封止する際に、加熱により流動化したシートを素子表面の凹凸に円滑に充填して隙間を排除するためである。熱圧着時の流動性は、溶融点で判断され得る。溶融点とは、前記光デバイス面封止用組成物からなる層を加熱した際に、流動性を発現する温度であり、好ましくは30〜100℃である。なお、本発明の光デバイス面封止用組成物が前記(E)溶媒を含む場合は、前記組成物の乾燥させ(E)溶媒をほぼ除去した後の乾燥物についての溶融点のことをいう。
【0091】
溶融点は、ホットプレートにのせたガラス板上に、前記シート(厚み100μm)を押圧し、前記シートが溶融し始める設定温度を探すことにより求められる。溶融点が30℃未満では、熱転写(熱圧着)する際または熱硬化して封止する際に、光デバイス面封止用組成物からなる層の流動性が大き過ぎて垂れが生じ易くなり、硬化物の膜厚の管理が困難になる場合がある。一方、溶融点が100℃を超えると、熱転写する際の作業性が悪くなるため、光デバイス面封止用組成物からなる層と有機EL素子などの光デバイスとの間に隙間が形成され易くなる恐れがあり、また加熱により有機EL素子などの光デバイスに悪影響を与える恐れもある。
【0092】
このような本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層は、有機EL素子などの光デバイスと貼り合わせて熱圧着する際に、適度な流動性を有する。このため、本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層と有機EL素子などの光デバイスとの間に隙間が形成されるのを抑制し、良好な密着性を得ることができる。
【0093】
前記の通り、本発明の封止シートは、本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層と、基材フィルムや保護フィルムを含み得る。基材フィルムや保護フィルムの例には、公知の離型フィルムが含まれ、好ましくは水分バリア性、あるいはガスバリア性を有するフィルム等であり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートである。基材フィルムまたは保護フィルムの厚さは、フィルム材質にもよるが、有機EL素子等の被封止材への追従性を有する点などから、例えば50μm程度である。
【0094】
本発明の封止シートは、必要に応じて、ガスバリア層をさらに有してもよい。ガスバリア層は、外気中の水分等、有機EL素子などの光デバイスを劣化させる水分やガスの、ディスプレイ内への透過を抑制し得る。このようなガスバリア層は、有機EL素子などの光デバイスと接する面以外であれば、どこに配置されてもよいが、好ましくは基材フィルムと本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層との間に配置される。
【0095】
ガスバリア層を構成する材料は、特に制限されず、その例にはAl、Cr、Ni、Cu、Zn、Si、Fe、Ti、Ag、Au、Co;これら金属の酸化物;これら金属の窒化物;これら金属の酸化窒化物等が含まれる。これらの材料は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、ボトムエミッション方式の有機EL素子の封止に用いられる封止シートのガスバリア層は、光反射率の高い材料であることが好ましく、例えばAl、Cu等である。トップエミッション方式の有機EL素子の封止に用いられる封止シートのガスバリア層は、光透過率の高い材料であることが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン(COP)等である。ガスバリア層の厚みは、100〜3000μm程度とすることができる。
【0096】
ガスバリア層を有する封止シートは、基材フィルム上にガスバリア層を形成した後、本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層を形成して製造することができる。ガスバリア層の形成方法は、特に制限されず、ドライプロセスとしては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の各種PVD法と、プラズマCVD等のCVD法とが含まれ、ウエットプロセスとしては、めっき法、塗布法等が含まれる。
【0097】
前記光デバイス面封止用組成物からなる層上に、さらに保護フィルムをラミネートすることが好ましい。ラミネートは、例えばラミネーターを用いて60℃程度で行うことが好ましい。保護フィルムの厚さは、例えば20μm程度である。
【0098】
図1は、封止シートの構成の好ましい一例を示す図である。
図1に示されるように、封止シート10は、基材フィルム12と、該基材フィルム12上に形成される光デバイス面封止用組成物からなる層16と、光デバイス面封止用組成物からなる層16上に配置される保護フィルム18とを有する。
【0099】
このような封止シート10は、例えば、保護フィルム18を剥がした後、露出する光デバイス面封止用組成物からなる層16を、有機EL素子が配置された表示基板と接するように配置して有機EL素子面封止用シートとして用いることができる。
【0100】
本発明の封止シートは、含水率を一定以下に維持するため、シリカゲル等の乾燥剤とともに保管することが好ましい。
【0101】
3.光デバイス面封止用組成物の用途
本発明の光デバイス面封止用組成物や封止シートは、光デバイス面封止用組成物が熱硬化性を有する場合は、硬化させることにより面封止材として用いることができる。一方、光デバイス面封止用組成物が熱硬化性を有しない場合は、それ自体を面封止材として用いることができる。シールされる対象(被封止材ともいう)は、特に限定されないが、例えば光デバイスが好ましい。光デバイスの例には、有機EL素子、液晶、LEDなどが含まれ、好ましくは有機EL素子である。
【0102】
本発明の光デバイス面封止用組成物や封止シートは、光デバイスを用いたディスプレイ(特に有機ELディスプレイ)の面封止材;即ち、有機EL素子面封止用組成物または有機EL素子面封止用シートとして用いられることが好ましい。トップエミッション型の有機ELディスプレイからの光取り出し性の観点から、その面封止材には透明性が求められる。また、有機EL素子は、水分によって容易に劣化するため、その面封止材には、特に透湿度が低いことが求められる。
【0103】
本発明の光デバイス面封止用組成物の硬化物の透湿度は、60(g/m
2・24h)以下であることが好ましく、30(g/m
2・24h)以下であることがより好ましい。透湿度は、100μmの光デバイス面封止用組成物の硬化物を、JIS Z0208に準じて60℃90%RH条件で測定することにより求められる。
【0104】
また、本発明の光デバイス面封止用組成物の硬化物と被封止材との接着力は、100gf/15mm以上であることが好ましい。
【0105】
硬化物と被封止材との接着力は、以下の方法で測定される。アルミ箔とPETとを貼り合せたフィルム(製品名:アルペット)のアルミ箔側に、光デバイス面封止用組成物(厚み約15μm)を塗工・乾燥で形成する。さらに、光デバイス面封止用組成物の表面を、ガラス基板(JIS R3202準拠ガラス、100mm×25mm×2mm)に、ロールラミネーター(エム・シー・ケー社製、MRK−650Y型)を用いて、速度0.3m/min、エアーシリンダー加圧圧力0.2MPa、ローラー温度90℃上下加熱の条件で熱圧着する。この積層体を、オーブンにて80℃で30分間加熱し、光デバイス面封止用組成物を硬化させる。その後、積層体を幅15mmに切断し、ガラス基板と光デバイス面封止用組成物との90度はく離強度を、剥離試験機(装置名:STOROGRAPH E−S、レンジ50mm/min、)にて測定する。本発明では、この90度はく離強度を、上記接着力とする。
【0106】
また、本発明の光デバイス面封止用組成物の硬化物のTgは、接着力を維持する観点から40℃以上であることが好ましい。Tgが低すぎると基板との接着力が低下し、水蒸気バリア性が低下することが懸念される。硬化物のTgは、TMA(セイコーインスツルメンツ社製のTMA/SS6000)を用いて、昇温速度5℃/分の条件で線膨張係数を測定し、その変曲点から求められる。
【0107】
また、本発明の光デバイス面封止用組成物の、組成物全成分に対する溶剤の含有量が50000質量ppm以下、好ましくは30000質量ppm以下であることが好ましい。光デバイス面封止用組成物中の溶剤含有量が多いと、溶剤が被封止材に影響を与える可能性がある。光デバイス面封止用組成物中の溶剤量は、例えばIR吸収スペクトル測定装置(日本分光社製 FT/IR−4100)を用いて測定し得る。溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を含む場合を例に、溶剤量の測定方法を説明する。
【0108】
予め、ガスクロマトグラフィ/質量分析法(GC−MS)にて溶剤量を定量した標準サンプル(光デバイス面封止用組成物)を準備し、この標準サンプルに対してIR吸収スペクトル測定を行う。標準サンプルのIR吸収スペクトルから、エポキシ樹脂のC=C吸収ピーク(約1609cm
−1)に対する、MEKのC=O吸収ピーク(約1710cm
−1)の強度比を算出する。続いて、測定サンプル(光デバイス面封止用組成物)に対してIR吸収スペクトル測定を行い、エポキシ樹脂のC=C吸収ピーク(約1609cm
−1)に対するMEKのC=O吸収ピーク(約1710cm
−1)の強度比を算出する。標準サンプルのピーク強度比に対する、測定サンプルのピーク強度比の割合を求め、測定サンプル中に含まれる溶剤量を算出する。
【0109】
4.ディスプレイ
ディスプレイは、例えば有機EL素子などの光デバイスが配置された基板(表示基板)と;表示基板と対になる対向基板と;表示基板と対向基板との間に存在し、前記有機EL素子などの光デバイスを封止する面封止材とを有する。前述の通り、面封止材が、例えば有機EL素子などの光デバイスと封止基板との間に形成される空間の少なくとも一部に充填されているものを、面封止型のディスプレイという。
【0110】
以下、ディスプレイの一例として、有機ELディスプレイにおける有機EL素子の封止に、本発明の光デバイス面封止用組成物を用いる場合について説明するが、本発明のディスプレイは、有機ELディスプレイに限定されるものではない。また、トップエミッション構造における有機EL素子の封止に、本発明の光デバイス面封止用組成物を用いた場合について説明するが、本発明のディスプレイは、トップエミッション構造のものに限定されるものではない。また、本発明におけるディスプレイは、コンピューター等の出力装置だけでなく、照明などの発光装置も含む。
【0111】
図2は、トップエミッション構造であって、面封止型の有機ELディスプレイを模式的に示す断面図である。
図2に示されるように、有機ELディスプレイ20は、表示基板22と、有機EL素子24と、対向基板(透明基板)26とがこの順に積層されており、有機EL素子24の周囲と対向基板(透明基板)26との間に面封止材28が充填されている。本発明の有機ELディスプレイでは、
図2における面封止材28が、前述の本発明の光デバイス面封止用組成物の硬化物または熱圧着物となりえる。
【0112】
有機EL素子24は、表示基板22側から、カソード反射電極層30(アルミニウムや銀などからなる)、有機EL層32およびアノード透明電極層34(ITOやIZOなどからなる)が積層されている。カソード反射電極層30、有機EL層32およびアノード透明電極層34は、真空蒸着またはスパッタ等により成膜されてもよい。
【0113】
次に、有機ELディスプレイに用いられる基板について説明する。後述する基板(H)、基板(L)は、それぞれ前述の表示基板や対向基板になりえるものであるが、いずれもが本発明の有機ELディスプレイの基板に使用されている。具体的には、基板(H)が表示基板、基板(L)が対向基板という組み合わせか、基板(H)が対向基板、基板(L)が表示基板という組み合わせで、本発明の有機ELディスプレイは構成される。
【0114】
基板(H)
基板(H)は、その表面に有機EL素子が配置され得る部材である。基板(H)は、透明であっても非透明であってもよいが、基板(H)を通して有機発光層からの光を取り出すときは透明である。
【0115】
基板(H)の線膨張係数は、基板(L)の線膨張係数よりも大きく、具体的には基板(L)の線膨張係数よりも5×10
−6cm/cm/℃以上大きくてもよい。
【0116】
基板(H)の線膨張係数は、20×10
−6cm/cm/℃〜200×10
−6cm/cm/℃であってもよく、好ましくは20×10
−6cm/cm/℃〜180×10
−6cm/cm/℃でありうる。基板(H)の線膨張係数の測定は、ASTM E-831に準拠され、例えばTMA法によって測定できる。基板(H)の線膨張係数は、25〜100℃の範囲における線膨張係数の平均値とする。
【0117】
基板(H)の厚みは、5〜300μmであることが好ましい。また、基板(H)の引張弾性率は、10〜500MPaであることが好ましい。
【0118】
基板(H)の具体的な材質は、特に限定されないが、アルミニウムを含む金属(好ましくはアルミニウム)または樹脂であることが好ましく;好ましい樹脂の例には、エステル(共)重合体、環状オレフィン(共)重合体、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、アクリル(共)重合体、ポリカーボネートからなる群から選ばれる1種類以上のポリマーが含まれる。
【0119】
本発明における(共)重合体とは、ホモポリマーとコポリマーの両方を含む。具体的には、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、4−メチル−1−ペンテンのホモポリマーであるポリ4−メチル−1−ペンテンと、4−メチル−1−ペンテンと共重合可能な化合物、例えばα−オレフィンとの共重合体(コポリマー)の両方を含む。また、環状オレフィン(共)重合体は、環状オレフィンのみの重合体(ホモポリマー)と、環状オレフィンと環状オレフィンと共重合可能な重合性化合物との共重合体(コポリマー)の両方を含む。
【0120】
また、基板(H)の水蒸気バリア性や接着力を向上するため、SiO
2などの無機材料からなる膜を基板(H)に積層しても良い。
【0121】
基板(L)
有機ELディスプレイにおいて、基板(L)は、面封止材上に積層された基板である。基板(L)の線膨張係数は、基板(H)の線膨張係数より低く、より具体的には基板(H)の線膨張係数よりも、5×10
−6cm/cm/℃以上低くてもよい。基板(L)の線膨張係数は、1×10
−6cm/cm/℃〜100×10
−6cm/cm/℃の範囲にあることが好ましく、5×10
−6cm/cm/℃〜10×10
−6cm/cm/℃の範囲にあることがより好ましい。
【0122】
基板(L)の具体的な材質は、特に限定されないが、ガラス、シリコンなどの無機材料や;エステル共重合体(PET、PEN、PBTなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミドなどの樹脂であり、好ましくはガラス、シリコンなどの無機材料である。
【0123】
基板(L)の厚みは、有機ELディスプレイの薄化や耐久性の観点から、0.1〜1mmであることが好ましい。
【0124】
5.ディスプレイの製造方法
本発明の光デバイス面封止用組成物(有機EL素子に用いる場合は、有機EL素子面封止用組成物ともいう)の硬化物や前記組成物自体を面封止材とするディスプレイは、任意の方法で製造されうる。光デバイスを用いたディスプレイは、少なくとも1)例えば有機EL素子などの光デバイスが配置された基板と、前記光デバイス上に積層された本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層と、他の基板とをこの順に有する積層体を得る工程と、2)積層体を、例えば50〜110℃で加熱する工程とを経て製造されうる。
【0125】
本発明のディスプレイの製造方法において、本発明の光デバイス面封止用組成物の形態は、特に制限されず、液状であってもシート状であってもよい。また、本発明の光デバイス面封止用組成物は、熱硬化性を有していてもよいし、熱硬化性を有していなくてもよい。
【0126】
以下、熱硬化性を有する本発明の光デバイス面封止用組成物を用いて有機ELディスプレイを製造した場合について説明する。
【0127】
具体的には、1)光デバイスの一つである有機EL素子24が配置された表示基板22、本発明の光デバイス面封止用組成物、および対向基板(透明基板)26の積層体を得る工程、2A)得られた積層体の前記シート状の光デバイス面封止用組成物を熱圧着させる工程、2B)熱圧着させた前記シート状の光デバイス面封止用組成物を硬化させる工程を経て製造され得る。2A)と2B)の工程は、必要に応じて一つの工程で同時に行うこともできる。各工程は、公知の方法に準じて行えばよい。
【0128】
1)の工程では、有機EL素子24が配置された表示基板22上に、シート状の光デバイス面封止用組成物を載置(または転写)した後;該組成物上に、対になる対向基板(透明基板)26を重ね合わせて積層体を得てもよい((i)の方法)。
【0129】
この場合、保護フィルムを有する本発明の封止シートの保護フィルムを剥がして、露出した前記光デバイス面封止用組成物からなる層を有機EL素子24上に載せた後、基材フィルムを剥がして転写してもよいし;保護フィルムを有しないシート状の光デバイス面封止用組成物を直接、有機EL素子24上にロールラミネーター等により載せてもよい。
【0130】
あるいは、予め対向基板26上に、本発明の光デバイス面封止用組成物からなる層を配置したものを用意しておき;有機EL素子24が形成された表示基板22に貼り合わせて積層体を得てもよい((ii)の方法)。この方法は、例えば光デバイス面封止用組成物の基材フィルムを剥ぎ取らずに、そのまま有機ELディスプレイに組み込む場合に有効である。
【0131】
2A)の工程では、シート状の光デバイス面封止用組成物を、真空ラミネーター装置を用いて、例えば50〜110℃で熱圧着させることにより、シート状の光デバイス面封止用組成物と有機EL素子24との熱圧着、およびシート状の光デバイス面封止用組成物と表示基板22または対向基板26との熱圧着を行う。この際、有機EL素子側を予め50〜110℃に加熱し、有機EL素子24と光デバイス面封止用組成物とを貼り合わせることが好ましい。
【0132】
2B)の工程では、例えば80〜100℃の硬化温度でシート状の光デバイス面封止用組成物を完全硬化させる場合が多い。加熱硬化は、80〜100℃の温度で0.1〜2時間程度行うことが好ましい。なお、加熱硬化させる際の温度を110℃以下とするのは、有機EL素子24にダメージを与えないためである。
【0133】
本発明のディスプレイの反り抑制について
本発明のディスプレイは、基板(H)と基板(L)の線膨張係数の差が大きいにも係わらず、熱硬化性を有する面封止用組成物を熱硬化、または熱硬化性を有しない面封止用組成物を熱圧着させて面封止材を形成することにより生じるディスプレイの反りを抑制する。
【0134】
この反り抑制メカニズムを、
図3A〜Cを参照して説明する。
図3Aは、ディスプレイの製造プロセスにおける、基板(H)と、熱硬化性を有する面封止用組成物からなる層
302と、基板(L)とを有する、熱硬化前の積層体を示す図である。なお、
図3A〜Cでは、例えば有機EL素子などの光デバイスは省略されている。
【0135】
図3Aには、前述の通り、基板(H)と、面封止用組成物からなる層
302と、基板(L)とが積層された積層体が示される。面封止用組成物からなる層
302の厚みをD1とする。また、積層体の幅をL1とする。
【0136】
図3Bは、
図3Aに示された積層体を加熱して、面封止用組成物からなる層
302を硬化させる状態を示す図である。基板(H)の膨張率が大きいので、加熱中に基板(H)は膨張して、その幅がL2となる。一方で、基板(L)の膨張率は低いので、加熱中に基板(L)は膨張しにくく、その幅L1’は、L1から余り変化しない。また、熱硬化性
を有する面封止用組成物からなる層
302の厚みは、D2となり(D2<D1)、熱硬化性
を有する面封止用組成物
からなる302層の側面の長さはD3となる(D1<D3)。
【0137】
図3Cは、
図3Bにおいて加熱された従来の積層体を冷却した状態を示す図である。従来の面封止用組成物の硬化物
306は、通常、面封止する温度での貯蔵弾性率が高いため、その形状を維持しようとする。そのため、基板(H)の中央部を凹部にして、積層体に反りが生じる。このようにして、従来のディスプレイ、特に有機ELディスプレイには反りが生じることがあった。
【0138】
これに対して本発明では、40℃から80℃まで5℃/min.で昇温した後、80℃で30分間保持して測定した80℃における貯蔵弾性率G’(80)が1.0×10
3〜2.0×10
6Paである光デバイス面封止用組成物を用いる。このように、本発明の面封止用組成物の硬化物は、面封止する温度での貯蔵弾性率が低減されている。即ち、有機EL素子を面封止する温度で、組成物の硬化物(面封止材)に一定の柔軟性を付与できるため、線膨張係数が大きい基板(H)と線膨張係数の小さい基板(L)との間に生じる応力を適度に緩和することができる。それにより、得られるディスプレイが、前述のメカニズムで反るのを防ぐことができる。
【実施例】
【0139】
以下において、実施例および比較例を参照してさらに本発明を説明する。本発明の技術的範囲は、これらによって限定して解釈されない。
【0140】
1.面封止用組成物の材料
まず、実施例および比較例で使用した各成分を示す。なお、(A)成分の重量平均分子量は、前述の方法により測定した実測値を記す。また、実施例では、シート状の光デバイス面封止用組成物を用いているが、本発明の組成物は、シート状に限定されず、液状でもよい。
【0141】
原料として用いたエポキシ樹脂の貯蔵弾性率G’E(80)は、以下の方法で作製した硬化物の、後述する(3)貯蔵弾性率に記載の方法で測定される貯蔵弾性率G’E(80)である。
【0142】
(貯蔵弾性率G’E(80)の測定方法)
1)原料としてのエポキシ樹脂70重量部、酸無水物(リカシッドMH700G(主成分:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、新日本理化(株)製))30重量部、硬化促進剤(IBMI12(1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、三菱化学社製))1重量部、硬化促進剤(2E4MZ(1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール)、四国化成製)1重量部を混合しワニスを調製した。
2)一方、ガラス板/離型フィルム/スペーサー(500μ厚)/離型フィルム/ガラス板スペーサーの積層体を作製した。そして、得られた積層体の中央部を、1.5センチ×1.5センチの正方形の凹みができるようにくりぬいて、硬化用の器具を得た。
3)得られた器具の凹みに、前記1)で調製したワニスを封入し、ガラス板の自重で、ワニスの厚みを500μ
mに調整した。ワニスを封入した器具を80℃で1時間〜3時間、離型フィルムへのべたつきがなくなるまで加熱し硬化させた。
4)得られた可とう性エポキシ樹脂組成物の硬化物の、80℃における貯蔵弾性率G’E(80)を、後述の「(3)貯蔵弾性率方法」に記載の方法で測定した。
【0143】
(A)可とう性エポキシ樹脂
EG−250(大阪ガスケミカル社製):エポキシ当量417g/eq、粘度36500mPa・s、貯蔵弾性率G’E(80)3.4×10
5Pa、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂
EG−280(大阪ガスケミカル社製):エポキシ当量467g/eq、粘度7440mPa・s、貯蔵弾性率G’E(80)1.2×10
5Pa、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂
BPO−20E(新日本理化社製):ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、分子量457、エポキシ当量310〜340g/eq、粘度3500〜5500mPa・s、貯蔵弾性率G’E(80)2.8×10
4Pa
【化4】
(上記式のn
d1とn
d2は、0以上の整数で合計が2である)
BPO−60E(新日本理化社製):ビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、分子量541、エポキシ当量345〜385g/eq、粘度800〜1600mPa・s、貯蔵弾性率G’E(80)5.4×10
4Pa
【化5】
(上記式のn
d3とn
d4は、0以上の整数で合計が6である)
【0144】
(B)硬化促進剤
IBMI12(1−イソブチル−2−メチルイミダゾール)(三菱化学社製)
【0145】
(C)高分子量のエポキシ樹脂
<ビスフェノールF型エポキシ樹脂>
jER4010(三菱化学社製):重量平均分子量39102、エポキシ当量4400g/eq
jER4005(三菱化学社製):重量平均分子量7582、エポキシ当量1070g/eq
jER4007(三菱化学社製):エポキシ当量2270g/eq
【0146】
(D)低分子量のエポキシ樹脂
<ビスフェノールF型エポキシ樹脂>
YL983U(三菱化学社製):重量平均分子量398、エポキシ当量170g/eq、貯蔵弾性率G’E(80)2.2×10
6Pa
jER807(三菱化学社製):重量平均分子量229、エポキシ当量175g/eq、貯蔵弾性率G’E(80)2.1×10
6Pa
【0147】
(E)シランカップリング剤
KBM−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 分子量236)(信越化学工業社製)
【0148】
(F)溶剤
メチルエチルケトン
【0149】
[実施例1]
フラスコに、(A)可とう性エポキシ樹脂として0.3
質量部のEG−280と、(C)高分子量エポキシ樹脂として0.6質量部のjER4010と、(D)低分子量エポキシ樹脂として0.1質量部のjER807とを投入し、これに(F)溶剤として0.67質量部のメチルエチルケトンを加えて、室温で攪拌溶解させた。この溶液に、(B)硬化
促進剤として0.06質量部のIBMI12と、(E)シランカップリング剤として0.001質量部のKBM−403とを添加して室温で攪拌し、エポキシ樹脂組成物のワニスを調製した。
【0150】
調製したワニスを、塗工機を用いて、離型処理されたPETフィルム(帝人デュポンフィルム社製ピューレックスA53、38μm)上に、乾燥厚みが約20μmになるように塗工し、真空下40℃で2時間乾燥させ、室温(約25℃)で固形の光デバイス面封止用組成物を得た。なお、前記組成物の残溶剤量は、212ppmであった。さらに、光デバイス面封止用組成物上に、保護フィルムとして離型処理したPETフィルム(帝人デュポンフィルム社製ピューレックスA31)を熱圧着し、光デバイス面封止シートを得た。なお、保護フィルムは、適宜剥がして、光デバイス面封止用組成物表面を露出させて使用する。
【0151】
[実施例2〜7、比較例1〜2]
表1に示されるような組成比率(質量比)とした以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物のワニスを調製し、光デバイス面封止シートを得た。
【0152】
[実施例8]
熱可塑性エラストマー(タフマーA4085、三井化学株式会社製)を220℃で溶融し、Tダイから押出し成形して、厚さ400μmのシートを得た。次いで、得られたシートの両面に、比較例1のシート状の光デバイス面封止用組成物(厚さ40μm)を65℃で熱圧着し、光デバイス面封止用組成物の積層シート(総厚さ:480μm)を得た。得られた積層シートを、後述する(3)貯蔵弾性率に記載の測定方法で、貯蔵弾性率G’(80)を測定した結果、1.0×10
5Pa・sであった。また、後述する(4)反り評価の方法で反り量を評価したところ、1.6mmであった。
【0153】
実施例1〜7および比較例1〜2で得られた光デバイス面封止用組成物の、MEK残存量、溶融点、硬化物のTg、硬化物の貯蔵弾性率、およびパネルの反りを、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0154】
(1)溶融点
基材フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:A53、厚み:38μm)に、前述のワニスを、乾燥後の厚みが約15μmとなるようにアプリケーターで塗工した。得られたフィルムを、イナートオーブン(30℃)中で、10分間保持し、続いて真空オーブン(40℃)中で2時間保持し、ワニス塗工膜中のMEKを乾燥除去して、光デバイス面封止用組成物からなる層が形成された封止シートを得た。
【0155】
乾燥後の封止シートを、長さ約40mm、幅約5mmの短冊状に切り出して、短冊状試験片とした。そして、ホットプレート上で加熱されたガラス板に、短冊状試験片の光デバイス面封止用組成物からなる層が密着するように配置し、短冊状試験片の長さ方向の一端を掴んで、ガラス板の表面から180℃方向に徐々に剥離させて、粘着剥離性を評価した。この操作を、ホットプレートの設定温度35℃から始め、設定温度を1℃ずつ上げながら70℃(溶融点が確認できる温度)まで行った。設定温度を1℃ずつ上げる毎に、新たな短冊状試験片を用いた。そして、剥離時の光デバイス面封止用組成物層の粘着剥離性が最も大きくなる温度を、溶融点とした。
【0156】
(2)Tg
所定のサイズに切り出したシート状の光デバイス面封止用組成物(厚さ12μm)を、2枚のガラス板で挟んだ後、100℃で30分間熱硬化して接着させた。次に、ガラス板を剥がして、シート状の光デバイス面封止用組成物の硬化物を取り出し、TMA(セイコーインスツルメンツ社製のTMA/SS6000)を用いて、昇温速度5℃/分の条件で線膨張係数を測定し、その変曲点からTgを求めた。
【0157】
(3)貯蔵弾性率
60℃に設定したホットプレートに配置したPETフィルム上で、シート状の光デバイス面封止用組成物を複数積層した後、熱圧着して、膜厚300〜500μmのシート状の光デバイス面封止用組成物を得た。得られたシート状の光デバイス面封止用組成物を、Haake社製レオメーター(RS150型)を用いて、測定周波数:1Hz、昇温速度:5℃/分、測定温度範囲:40〜80℃で測定を行い、80℃における貯蔵弾性率G’(80)の値を得た。
【0158】
(4)積層体の反り
ガラス基板(Matsunami 製カバーガラス、50×70mm、厚みNo.1(150μm))を基板(L)とした。メリネックスS(帝人デュポン株式会社製PET、100μm)を基板(H)とした。基板(L)であるガラス基材の線膨脹係数は8.5×10
−6cm/cm/℃であった。
【0159】
基板(L)(ガラス基材、厚さ150μm)/光デバイス面封止用組成物からなる層(厚さ40μm)/基板(H)(帝人デュポン株式会社製、商品名メリネックスS、厚さ100μm)を、この順で積層した積層体を得た。
【0160】
得られた積層体の厚さT1を測定した後、積層体を80℃で3時間加熱して、光デバイス面封止用組成物を熱硬化させた。その後、積層体を25℃まで冷却し、水平な板の上に積層体を載せた。50mm幅のガラス辺の一方を水平な板にテープで固定し、50mm幅ガラス辺のもう一方の2つの角と板の上面との距離を測定して、平均値T2を求めた。次に、T2からT1を引いて、反り量T3を算出した。
【表1】
【0161】
表1に示されるように、実施例1〜7の面封止用組成物は、硬化物の貯蔵弾性率G’(80)が一定以下であるため、得られる積層体の反りが少ないことがわかる。一方、比較例1および2の面封止用組成物は、硬化物の貯蔵弾性率G’(80)が高すぎるため、得られる積層体の反りが大きいことがわかる。
【0162】
本出願は、2012年2月24日出願の特願2012−038838に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。