特許第6129164号(P6129164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129164流体高電圧絶縁に関連して使用される固体媒質中への電極の封入
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129164
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】流体高電圧絶縁に関連して使用される固体媒質中への電極の封入
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/16 20060101AFI20170508BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20170508BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20170508BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   H01J27/16
   H05H1/46 L
   H01J37/08
   H01J37/317 D
【請求項の数】23
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-517161(P2014-517161)
(86)(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公表番号】特表2014-523071(P2014-523071A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】US2012043548
(87)【国際公開番号】WO2012177876
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年6月21日
(31)【優先権主張番号】13/165,556
(32)【優先日】2011年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/437,599
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501419107
【氏名又は名称】エフ・イ−・アイ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・ケロッグ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・グラウペラ
(72)【発明者】
【氏名】エヌ・ウィリアム・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ダブリュー・ウトロート
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ビー・ウェルズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ビー・マギン
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0126964(US,A1)
【文献】 特表2001−523887(JP,A)
【文献】 特開平05−206072(JP,A)
【文献】 特開2005−175460(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0272592(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00 − 4/04
H01J 27/00 −27/26
H01J 37/04
H01J 37/06 −37/08
H01J 37/248
H01J 37/30 −37/36
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
H05H 1/00 − 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを収容し、誘電材料からなる壁を有するプラズマ室であり、前記壁が内面および外面を有するプラズマ室と、
前記プラズマ室の周囲に少なくとも1回巻かれた導体と、
導電材料からなり、誘電性の固体媒質によって実質的に両側を取り囲まれたシールドであり、前記誘電性の固体媒質は、前記誘電性の固体媒質によって取り囲まれた前記シールドと流体の接触ができないように前記シールドを封入しており、前記プラズマ室と前記プラズマ室の周囲に巻かれた前記導体との間に配置されたシールドと、
プラズマを高電圧に電気的にバイアスする源電極と
を有するプラズマ源と、
前記プラズマ源からの荷電粒子を試料の表面に焦束させる1つまたは複数の集束レンズと
を備える荷電粒子ビーム・システム。
【請求項2】
前記シールドが、前記プラズマ室の前記外面に配置された、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項3】
前記シールドの前記導電材料と前記プラズマ室の前記外面の間に空隙が実質的に存在しない、請求項2に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項4】
前記シールドが、誘導場をプラズマ室まで通過させるための隙間を含み、前記誘電性の固体媒質が、前記導電材料の前記隙間の間の前記プラズマ室壁の前記外面と接触する、請求項2に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項5】
前記誘電性の固体媒質が、エポキシ、ほうろう、ガラス・フリット、樹脂またはポリマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項6】
前記誘電性の固体媒質の少なくとも一部分と接触する前記流体をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項7】
前記流体が、前記誘電性の固体媒質と前記プラズマ室の周囲に巻かれた前記導体との間に配置された、請求項6に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項8】
前記流体が、前記プラズマ室の前記外面と前記誘電性の固体媒質の間に配置された冷却流体を含む、請求項6に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項9】
前記流体が能動的に流れ出ることがない、請求項6から8のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項10】
前記流体が空気を含まない、請求項6に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項11】
前記シールドの一部分が
前記誘電性の固体媒質によって取り囲まれておらず、
電気接触を実施するために露出している、請求項1から10のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項12】
前記プラズマ室壁の前記外面と前記誘電性の固体媒質の間の空隙を埋めるために材料が提供される、請求項1から11のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項13】
前記壁の前記外面と前記誘電性の固体媒質の間の隙間を埋めるために提供された前記材料が、液体または塗布された後に硬化する液体を含む、請求項12に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項14】
荷電粒子ビーム・システム用のプラズマ源であって、
内面および外面を有する壁を有するプラズマ室と、
前記プラズマ室に高周波エネルギーを供給する導体と、
導電性シールドであり、前記導体と前記プラズマ室の前記外面との間に配置された導電性シールドと、
前記導電性シールドと前記導体の間に配置された流体と、
前記導電性シールドの両側を実質的に取り囲んでいる誘電性の固体媒質であって、この誘電性の固体媒質によって取り囲まれた前記導電性シールドと流体の接触ができないように前記導電性シールドを封入している誘電性の固体媒質
を備えるプラズマ源。
【請求項15】
前記流体が冷却系によって冷却される、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項16】
前記流体が水またはフッ素化合物を含む、請求項15に記載のプラズマ源。
【請求項17】
前記流体が、前記プラズマ室の前記外面と前記誘電性の固体媒質との間に配置された、請求項15または16に記載のプラズマ源。
【請求項18】
前記誘電性の固体媒質によって覆われている前記導電性シールドは、前記流体または空気と接触していない、請求項14−17のいずれか一項に記載のプラズマ源。
【請求項19】
荷電粒子ビーム・システムのプラズマ源に高電圧絶縁をもたらす方法であって、
プラズマを収容するプラズマ室を用意すること、
前記プラズマ室の周囲に少なくとも1回巻かれた導体を用意すること、
前記プラズマ室と前記導体の間に配置された導電性シールドを用意すること、
前記導電性シールドを、誘電性の固体媒質によって取り囲まれた前記導電性シールドと流体の接触ができないように前記導電性シールドを封入している前記誘電性の固体媒質で実質的に両側を取り囲むこと、および
プラズマを高電圧に電気的にバイアスする源電極を用意すること
を含む方法。
【請求項20】
前記誘電性の固体媒質の少なくとも一部分と接触する冷却流体を提供することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記冷却流体が、前記プラズマ室と前記誘電性の固体媒質との間に配置された、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記冷却流体が、前記誘電性の固体媒質と前記プラズマ室の周囲に巻かれた前記導体との間に配置された、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記冷却流体をポンプで送り出して前記プラズマ室を冷却することをさらに含む、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導結合プラズマ・イオン源に関し、より詳細には、プラズマ源を冷却し、同時に高電圧絶縁(high voltage isolation)をもたらす手段に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子の集束ビーム、すなわちイオンまたは電子の集束ビームを形成するために集束カラムともに使用されるとき、誘導結合プラズマ(ICP)源は他のタイプのプラズマ源よりも有利である。誘導結合プラズマ源は、幅の狭いエネルギー範囲内の荷電粒子を供給することができ、それにより、小さなスポットに荷電粒子を集束させることができる。本発明の譲受人に譲渡された米国特許第7,241,361号明細書に記載されているものなどのICP源は、一般にセラミック製のプラズマ室の周囲に巻き付けられた高周波(RF)アンテナを含む。このRFアンテナは、プラズマ室内のガスをイオン化された状態に維持するためのエネルギーを供給する。
【0003】
イオン・ビーム・プロセスに対して使用されるイオンのエネルギーは一般的に5keVから50keVの間であり、最も一般的には約30keVである。電子のエネルギーは、走査電子顕微鏡システムに対する約500eVから5keVの間から、透過型電子顕微鏡システムに対する数十万電子ボルトまでの範囲に及ぶ。荷電粒子システム内の試料は一般にグランド電位に維持され、荷電粒子源は、荷電粒子ビームを形成するのに使用する粒子に応じた正または負の大きな電位に維持される。したがって、イオン・ビーム源は一般に5kVから50kVの間に維持され、電子源は一般に500Vから5kVの間に維持される。本明細書で使用する「高電圧」は、グランド電位よりも約500V以上高い電圧またはグランド電位よりも約500V以上低い正または負の電圧を意味する。操作員の安全のため、高電圧構成要素を電気的に絶縁することが必要である。高電圧プラズマの電気絶縁は、プラズマ源設計のその他の目標を考慮すると解決が困難な設計上のいくつかの課題を提示する。
【0004】
設計上の1つの難点は、イオンがプラズマを出たときにガスを補給するために高電圧プラズマ室内にガスを導入しなければならないことによって生じる。このガスは一般に、グランド電位および大気圧よりもかなり高い圧力を有する状態で貯蔵されている。プラズマ室内のガス圧は一般に約10-3ミリバールから約1ミリバールの間である。このガスがガス源からプラズマ室内へ移動するときには、ガスの電位を高電圧プラズマの電位にしなければならず、ガス圧を低下させなければならない。このガスは、アーク放電としても知られている、システムに損傷を与えることになる気相放電を防ぐようにしてプラズマ室内に導入されなければならない。
【0005】
設計上の他の課題は、電力を効率的に伝達するために、プラズマに電力を供給する高周波コイルをプラズマのできるだけ近くに配置することである。しかしながら、コイルをプラズマと同じ高電位に維持するためには一般に、コイル用の電源を高いプラズマ電位に維持する必要があり、そうすると、電源設計が過度に複雑になり、コストが大幅に増大することになる。コイルとプラズマの間の容量結合を低減させるために、誘導結合プラズマ・イオン源が、分割されたファラデー・シールドを使用することがある。分割ファラデー・シールドはプラズマとコイルの間に配置しなければならず、一般に十分に接地される。接地されたファラデー・シールドを誘電性のプラズマ容器の近くに配置すると、ファラデー・シールドと誘電性のプラズマ室の間に空気または他の低誘電率ガスが閉じ込められている場合には、電位の急激な変化によって生じる大きな電場によっておそらく気相放電が起こるであろう。このような放電はプラズマ源に損傷を与えうる。
【0006】
さらに、プラズマ室に加えられたエネルギーは熱を発生させる。ビームの形成にはコンパクトなプラズマ源が望ましいが、プラズマ源がよりコンパクトでより強力になるほど、源は高温になり、したがって熱を効率的に放散させる必要性はより大きくなるであろう。高電圧はさらに冷却を困難にすることがあり、このことが、使用されるプラズマの密度を制限することがある。これらの相反する要件は、ICP源の設計を非常に難しいものにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,241,361号明細書
【特許文献2】米国特許出願第13/353,032号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、改良されたプラズマ源を提供すること、およびプラズマ荷電粒子ビーム源を有する改良された荷電粒子システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、荷電粒子ビーム・システム用の誘導結合プラズマ源の高電圧(HV)絶縁および冷却を提供する。好ましい一実施形態では、プラズマ源が、誘電性の固体媒質中に実質的に封入されたファラデー・シールドによって取り囲まれ、このことがシールドの表面での気中高電圧破壊を防ぐ。他の実施形態では、プラズマ源が、HV絶縁をもたらす静止流体によって少なくとも部分的に取り囲まれる。本明細書で使用する用語「静止流体」は、能動的に流れ出ることのない流体を意味する。
【0010】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広く概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0011】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】結合を低減させるファラデー・シールドと高電圧絶縁および冷却のための絶縁流体とを使用したプラズマ源の概略縦断面図である。
図2図1のプラズマ源の概略横断面図である。
図3】冷却および高電圧絶縁のための絶縁流体を使用するプラズマ源を使用した荷電粒子ビーム・システムを示す図である。
図4】高電圧絶縁のための静止流体および能動冷却要素を使用したプラズマ源の概略半縦断面図である。
図5】改良された電気絶縁および低減されたRF結合のための、誘電性の固体媒質中に実質的に封入されたファラデー・シールドを使用したプラズマ源の概略半縦断面図である。
図6A】ヒート・パイプ(heat pipe)冷却が組み込まれたプラズマ源の概略断面図である。
図6B】1本のヒート・パイプを示す、ヒート・パイプ冷却が組み込まれたプラズマ源の概略断面図である。
図6C】プラズマ源の周囲に分配されたいくつかのヒート・パイプの例示的な構成を示す、ヒート・パイプ冷却が組み込まれたプラズマ源の上面図である。
図6D】例示的なヒート・パイプ構成を示す、ヒート・パイプ冷却が組み込まれたプラズマ源の側面図である。
図7】封入材によって取り囲まれた分割ファラデー・シールドに接合されたプラズマ室を備えるプラズマ源の正面図である。
図8図7のプラズマ源の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
プラズマ源の設計は一般に、相反する設計要件を満たすために多くのトレードオフを必要とする。本発明の実施形態は、RFコイルとプラズマの間の優れた結合、プラズマ室の効果的な冷却、優れた容量遮蔽およびプラズマ源の高電圧絶縁をもたらすことができ、これらは全て、高密度、高電位の静止した誘導結合プラズマを生み出すことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、強い電場を有する領域から空気を追い出し、その容積を液体または他の高誘電率流体で満たすことにより、普通ならば利用できないはずの源構成を設計の際に選択する機会がシステム設計者に与えられる。
【0015】
以下の記述は、集束イオン・ビーム・システム用のプラズマ源を説明するが、本発明のプラズマ源を、電子ビーム・システムまたは他のシステムに対して使用することもできる。本明細書で使用するとき、「流体」は液体または気体を含むことができる。
【0016】
図1は、プラズマ源100の定型化された縦断面図を示す。プラズマ源100は、内壁104および外壁106を有する誘電性のプラズマ室102を含む。プラズマ室102は、導電性のベース・プレート110の上に載っている。プラズマ室102内にはプラズマ112が維持されている。引出し光学部品114が、プラズマ112から荷電粒子を引き出し、プラズマ室102の開口116およびベース・プレート110の開口118を通過させる。それらの荷電粒子は用途によってイオンまたは電子である。誘電性の外殻120、好ましくは高周波エネルギーを最小限の損失で伝達するセラミック材料またはプラスチック材料でできた誘電性の外殻120は、プラズマ室102と同心であり、外殻120とプラズマ室の外壁106との間に空間122を画定する。空間122には、分割ファラデー・シールド134が配置されており、このシールドは一般にプラズマ室102と同心である。ポンプ124が、リザーバ/冷却器127から冷却流体入口128を通して空間122に冷却流体126を送り込み、冷却流体126は出口132から流出し、外壁106からの熱伝達によってプラズマ室102を冷却する。
【0017】
分割ファラデー・シールド134は一般にグランド電位に固定され、したがってプラズマ領域と分割ファラデー・シールドの間で電位は急速に降下する。したがって、プラズマ領域と分割ファラデー・シールドの間にある物質は、アークの発生を阻止するのに十分な大きさの絶縁耐力を有していなければならない。冷却流体にわたる電圧降下が、動作電圧で絶縁破壊が起こるのを防ぐ十分に低いものになるように、セラミック・ハウジング102の材料に比べて十分に高い誘電率を有する冷却流体を選択することができる。液体冷却材は、電場増強(field enhancement)および気中放電の機会を提供しうる気泡または他の不純物を含まないものを選択する。わずかに導電性の冷却流体を選択することもでき、その場合には、流体がその容積内に電場を実質的に含まず、実質的に全ての電圧降下がプラズマ室102内で起こる。冷却流体はさらに、過大な量の電力を消費することになる大型のポンプを必要とする大きな流体流を必要とせずにプラズマ室102が過熱するのを防ぐことができる十分な熱容量を有しているべきである。プラズマ室の外壁106の温度は一般に約50°C以下に維持する。
【0018】
冷却流体は、水、Fluorinert(商標) FC−40などの液体を含むことが好ましい。Fluorinert(商標) FC−40は、3M Company(米ミネソタ州St.Paul)によって販売されているフルオロカーボン・ベースの安定な電気絶縁性の流体である。鉱油などの他の電気絶縁性流体を使用することもできる。蒸留水、水道水などの水を使用することができる。六フッ化硫黄などの絶縁性ガスを使用することもできる。一般に、冷却ポンプが、10ガロン/時から50ガロン/時の間の流量の冷却液体をリザーバ/冷却器127から送出する。流体126は、戻り導管133を通って出口132から冷却器/リザーバ127に戻る。あるいは、冷却流体を、機械的に送り出さない静止液体とすることもでき、これは電力のかなりの節減を可能にする。室温の水の誘電率は約80、それに対してプラズマ室のセラミック材料の誘電率は約9であり、その結果、大部分の電圧低下はセラミック中で起こる。好ましい絶縁流体は、プラズマ室を構成する誘電材料の誘電率よりも大きな誘電率を有することが好ましい。いくつかの実施形態では、絶縁流体の誘電率が5よりも大きく、より好ましくは10よりも大きく、よりいっそう好ましくは20よりも大きく、最も好ましくは約40以上である。
【0019】
典型的な一実施形態では、ポンプ124が冷却流体を再循環させる前にリザーバ/冷却器127が冷却流体を約20°Cまで冷却する。冷却流体はプラズマ室を部分的に取り囲み、プラズマ室に沿って底部から頂部へ縦に流れる。分かりやすくするため、図1は、プラズマ室102の2つの側面から空間122に入り、室102の頂部の1つの側面から空間122を出る冷却流体を示している。適当な入口、出口およびバッフル(baffle)を使用して、プラズマ室102の全側面において流体流が均一になることを保証することができることを当業者は理解するであろう。
【0020】
ファラデー・シールド134は、RFコイル136からの高周波エネルギーを通過させてプラズマに電力を供給し、同時に、高周波コイル136とプラズマ112の間の容量結合を低減させる。いくつかの実施形態では、セラミック、ガラス、樹脂、ポリマーなどの誘電性の固体媒質中にファラデー・シールド134を実質的に封入して、流体とファラデー・シールドとの間の不必要な接触および高電圧放電を排除することにより、ファラデー・シールド134を腐食および物理的な損傷から保護する。RFコイル136は中空とすることができ、コイルの内部通路137に流体冷却材を流すことによってRFコイル136を冷却することができる。プラズマ室冷却系がコイルの内部にも流体冷却材を送り込んでもよく、または独立した冷却系をコイルが有することもできる。
【0021】
シールド134の両側を冷却流体126が流れるようにファラデー・シールド134を配置することができる。いくつかの実施形態では、プラズマ室の外壁106に接してまたは殻120の内壁の表面にシールドを配置することができる。例えば、シールドは、プラズマ室の外壁106または殻の内壁120に塗布または他の方法で付着させた金属層を含むことができる。ファラデー・シールド134は電気的に接地される。一実施形態では、シールド134が、外殻120の一部分とベース・プレート110の間にファラデー・シールドのタブ138を捕捉することによって接地され、それによってしっかりした接地を保証する、溝穴が切られた金属円筒を含む。
【0022】
プラズマを生み出すガスの電位は、タンク150とプラズマの間の経路に沿ってグランド電位からプラズマ電位に変化しなければならない。好ましい一実施形態では、大部分の電圧変化が、ガス圧が比較的に高く、アークの発生が妨げられるところで起こる。
【0023】
タンク150などのガス源からプラズマ室102にガスが供給される。タンク150は一般にグランド電位に維持され、高圧のガスを含む。調整器152が、タンクを出て導管154に入るガスの圧力を低下させる。任意選択の調整可能弁156がガス管路内の圧力をさらに低下させ、または源が使用されないときには導管を完全に閉じる。ガスがプラズマ室106に到達する前に、毛管158などの流れ絞りが、ガス圧をさらに低下させる。流れ絞り158は、ガス管路とプラズマ室102の内部との間の所望のガス・コンダクタンス(gas conductance)を提供する。流れ絞り158は、プラズマ112と電気的に接触していることが好ましく、そのためプラズマと同じ電位を有することが好ましい。他の実施形態では、この流れ絞りが、プラズマ以外の電圧源から印加された電気バイアスを有することができる。絶縁シールド160が毛管158を取り囲み、絶縁シールド160の端の接地された金属製のカラー(collar)162が、その位置におけるガスの電位がゼロであることを保証する。したがって、グランド電位からプラズマ電圧への電位の変化はその全体が、ガスの圧力が比較的に高くしたがってガスがアークの発生を妨げる絶縁シールド160内で起こる。
【0024】
弁156を持たない例示的な1つの実施形態では、調整器152が、供給タンクを出たガスの圧力を150psigから5psigへ低下させる。毛管158に到達するまでガス圧は5psigのままであり、毛管158で、ガス圧は、例えば0.1トルであるプラズマ室の圧力まで低下する。電場を十分に低く保って有害な放電を防ぐため、絶縁シールド160は十分な長さを有することが好ましい。絶縁シールド160の長さは一般に少なくとも約5mmであり、より一般的には約30mmから60mmの間である。例えば、プラズマを30kVに維持する場合、長さ10mmのシールド内の電場は約3kV/mmであり、これは、大部分の用途において持続的な放電を防ぐのに十分な低い値である。局所的な電場は幾何形状に依存すること、および絶縁シールド160内において静電荷平衡に達するため最初に低電流の放電が起こることがあることを当業者は理解するであろう。いくつかの実施形態では、プラズマの前の最後の流れ絞りにガスが到達する前に弁156がガス圧をさらに低下させる。この流れ絞りを、毛管ではなく、リーク弁などの弁とすることもできる。任意のタイプのガス源を使用することができる。例えば、ガス源は、加熱されたときに、プラズマを供給するのに十分な速度でガスを発生させる液体または固体材料を含むことができる。異なるガス源の異なる出力圧力をプラズマ室内で必要な圧力まで低下させるためには、異なる構成要素が必要となることがある。
【0025】
図2は、図1のプラズマ源100の横断面図を示す。図2は、プラズマ室102の外壁106が波形であること、すなわちプラズマ室102の外壁106が一連の尾根202と谷204からなることを示している。ファラデー・シールド134は尾根202に接して配置されており、冷却流体が流れる通路206を谷204とシールド134の間に画定する。図2に示した実施形態では、ファラデー・シールド134が、プラズマ室の外壁106の上に被せられた金属スリーブを含む。次いで、金属スリーブの底部の一部分が外側へ折り曲げられて接地タブ138(図1)を形成する。接地タブ138は、プラズマ室102と接地プレート110の間に捕捉される。冷却流体126は、プラズマ室の外壁106および殻120によって画定された空間122を通って流れる。ファラデー・シールドは「分割」されている。すなわち、シールドに、RFアンテナとプラズマ112の間の誘導結合を可能にする縦方向の溝穴がある。代替実施形態では、外壁106が波形でなく、ファラデー・シールドが波形に形成される。あるいは、壁106とファラデー・シールドの両方を波形にしないこともできる。
【0026】
図3は、図1のプラズマ源を使用した荷電粒子ビームを示す。イオン・カラムの頂部に、電磁エンクロージャ304、源室306および誘導コイル308を備える誘導結合プラズマ(ICP)イオン源302が装着されており、誘導コイル308は、導電材料の1つまたは複数の巻線を含む。図3に示した実施形態では、冷却材リザーバおよび冷却器390がポンプ391に冷却材を供給し、ポンプ391が、導管392によって、源室306の周囲の領域に冷却材を供給する。冷却材は次いで、戻り導管393によって冷却材リザーバおよび冷却器390に戻る。代替実施形態では、源室306の周囲の冷却材領域が高電圧絶縁用の静止液体を含む。このような実施形態では、リザーバ/冷却器390および冷却材ポンプ391を排除することができ、またはリザーバ/冷却器390および冷却材ポンプ391を使用して、高電圧領域に入らない冷却流体を循環させることができる。他の実施形態では、後により詳細に説明するように、1つまたは複数のヒート・パイプによってプラズマ源302内の液体が冷却される。
【0027】
RF同軸ケーブル342によってマッチ・ボックス(match box)341にRF電源340が接続されている。マッチ・ボックス341は、コイルの脚の延長部分343によって誘導コイル308に接続されている。誘導コイル308は源室306と同軸に装着されている。誘導コイル308と源室306内で発生したプラズマとの間の容量結合を低減させるため、任意選択で、誘導コイル308の内側に、分割ファラデー・シールド(図示せず)を、源室306と同軸に装着することができる。ICPイオン源302内で分割ファラデー・シールドを使用すると、ICPイオン源302の底部からイオン・カラム内に引き出されるイオンのエネルギーに対する誘導コイル308にわたる高電圧(一般に数百から数千ボルト)の影響は最小限になる。その結果、ビーム・エネルギーの幅がより小さくなり、基板表面または基板表面付近の焦束荷電粒子ビームの色収差が低減する。
【0028】
源室306内のプラズマの存在は、プラズマによって放出され、光ファイバ344の源に面した端部によって集められ、光ファイバ344によってプラズマ光検出ユニット345に伝送される光を使用して検出することができる。プラズマ光検出ユニット345によって生成された電気信号は、ケーブル346によってプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)347に伝達される。次いで、プラズマ光検出ユニット345によって生成されたプラズマ・オン/オフ信号は、PLC347から、プラズマ源制御ソフトウェアを実行するプラズマ源コントローラ351に、ケーブルまたはデータ・バス348を通して送られる。次いで、プラズマ源コントローラ351からの信号を、ケーブルまたはデータ・バス352を通して、集束イオン・ビーム(FIB)システム・コントローラ353に送ることができる。FIBシステム・コントローラ353はインターネット354を介して遠隔サーバ355と通信することができる。FIBシステム制御のさまざまな構成要素の相互接続のこれらの詳細は単に例示目的で示したものである。当業者によく知られている他の制御構成も可能である。
【0029】
源室306の内部に通じる入口絞り328に通じる入口ガス管路320によって源室306にガスが供給される。主としてより高圧のガスにわたって電圧低下が起こるように、絞り328は、ガス源310および調整器332の電位よりも室306内のプラズマの電位に近い電位に維持される。絶縁シールド329が、絞り328の上流のガス管路を絶縁し、絶縁シールド329の末端には接地されたカラー331がある。
【0030】
ICP源用のガス供給システム310は、ガス供給源330、高純度ガス調整器332およびニードル(調整)弁334を備える。ガス供給源330は、例えばヘリウム、酸素、キセノンまたはアルゴン供給ガスに対する場合のように、1つまたは複数の流れ調整段を有する標準ガス・ボンベを含むことができる。あるいは、室温で固体または液体である化合物に由来するガスについては、ガス供給源330が、加熱されたリザーバを含むことができる。他のタイプのガス供給源330も可能である。ガス供給源330の構成の具体的な選択は、ICP源に供給するガスのタイプに依存する。供給源330からのガスは高純度ガス調整器332を通過する。高純度ガス調整器332は、1つまたは複数の精製および圧力低下段を備えることができる。高純度ガス調整器332を出た精製されたガスは、任意選択のニードル弁334を通過する。任意選択のニードル弁334を出たガスは、ホース336を通って、ICP源の近くに装着された任意選択の第2のニードル弁338に達する。ニードル弁338を出たガスは、絞り328を介して源室306の頂部に接続した入口ガス管路320を通過する。
【0031】
ICP源302の底部では、源電極357が、イオン・ビーム引出し光学部品の一部として働き、引出し電極358およびコンデンサ359とともに機能する。源電極(図示せず)には、源エンクロージャ306内でのプラズマの開始を可能にするプラズマ点火装置360が接続されている。プラズマに点火する他の知られている手段を使用することもできる。ICP源の動作の詳細は、2007年7月10日に発行された、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,241,361号明細書に記載されている。源電極357は、点火装置360を介して、ビーム電圧電源(PS)361によって、高電圧にバイアスされる。源電極357上の電圧は、プラズマの電位、したがって一価の原子イオン種もしくは分子イオン種または電子の場合に基板表面に到達する荷電粒子のエネルギーを決定する。二価のイオン種の運動エネルギーは2倍になる。引出し電極358は、引出し電極電源363によってバイアスされ、コンデンサ359は、コンデンサ電源362によってバイアスされる。源電極357、引出し電極358およびコンデンサ359の結合された動作は、ICP源302からイオンを引き出し、ICP源302から出たイオンを集束させてビームにする働きをし、このビームは、ビーム取込み絞り(beam acceptance aperture)364へ進む。ビーム取込み絞り364は、FIBシステム・コントローラ353によって制御されたビーム取込み絞り(beam acceptance aperture)アクチュエータ365によってイオン・カラム内に機械的に配置される。典型的な電圧設定は、電源361についてはおよそ+30kV、電源362についてはおよそ15kV、電源363についてはおよそ15kVとすることができる。
【0032】
図3に示したイオン・カラムは、試料ステージ・コントローラ337によって制御されたステージ369上に装着された基板368の表面または表面付近に、ICP源302内の仮想源の高度に縮小された(およそ1/125倍)像を形成する目的に使用される2つの静電アインツェル・レンズ(einzel lens)366および367を示す。「レンズ1」または「L1」と呼ぶ第1のアインツェル・レンズ366はビーム取込み絞り364の直下に置かれ、3つの電極を備える。第1および第3の電極は一般に接地され(0V)、中心電極370の電圧は、レンズ1(L1)電源(PS)371によって制御される。レンズ1電源371は、FIBシステム・コントローラ353によって制御される。
【0033】
イオン・カラム内の第1のアインツェル・レンズ366と第2のアインツェル・レンズ367の間に、1つまたは複数のビーム画定絞りを含むビーム画定絞りアセンブリ372が取り付けられている(図1には3つの絞りが示されている)。ビーム画定絞りアセンブリ372は一般に、開口の直径が異なるいくつかの円形の絞りを備える。これらの絞りのうちのいずれかの絞りを光軸上に配置して、基板表面におけるビーム電流および半角を制御することができる。あるいは、ビーム画定絞りアセンブリ372の複数の絞りのうちの2つ以上の絞りを同じものにし、それにより冗長性をもたらし、絞りの保守サイクル間の期間を長くすることができる。対応するレンズの調整を実施してビーム半角を制御することにより、基板表面または基板表面付近の集束イオン・ビームのビーム電流および直径を、実行するミリング操作または画像化操作の空間分解能要件に基づいて選択することができる。使用する特定の絞り(したがって基板におけるビーム半角)は、FIBシステム・コントローラ950によって制御されたビーム画定絞り(beam defining aperture)(BDA)アクチュエータ373によって、ビーム画定絞りアセンブリ372内の所望の絞りをカラムの光軸上に機械的に配置することによって決定される。
【0034】
ビーム画定絞りアセンブリ372の下に、「レンズ2」または「L2」と呼ぶ第2のアインツェル・レンズ367が示されている。第1および第3の電極は一般に接地され(0V)、中心電極374の電圧は、レンズ2(L2)電源(PS)375によって制御される。レンズ2電源375は、FIBシステム・コントローラ353によって制御される。源302と試料室378の間のどこかにカラム/室分離弁376が配置される。分離弁376は、試料からのガス放出によって、試料の導入および取出し中に、または他の理由で、試料室378内の真空レベルが不利な影響を受けている場合であっても、イオン・カラム真空室377内の真空を高レベルに維持することを可能にする。源/室ターボポンプ379は、ポンプ流送管路380を通して試料室378から排気するように構成される。ターボポンプ379はさらに、ポンプ流送管路381を通してイオン・カラム・エンクロージャ377から排気する。
【0035】
図3に示したFIBシステムの詳細は例示だけが目的であり、他の多くのFIBシステム構成が、ミリングおよび画像化のための本発明の多モード実施形態を実現することができる。例えば、図3に示したイオン・カラムは、2つの静電アインツェル・レンズを示す。あるいは、単一の静電アインツェル・レンズまたは3つ以上の静電レンズを使用してイオン・カラムを実現することもできる。他の実施形態は、磁気レンズ、または強集束構成(strong−focusing configuration)の2つ以上の静電もしくは磁気4重極の組合せを含むことがある。本発明のこの実施形態の目的上、イオン・カラムは、基板368の表面または表面付近に、仮想源(ICP源302では)の高度に縮小された像を形成することが好ましい。これらの可能な縮小方法の詳細は当業者によく知られている。
【0036】
図4は、内壁404および外壁406を有する誘電性のプラズマ室402を含むプラズマ源400の他の実施形態の半断面図を示す。図4は、アンテナ・コイル436とプラズマ室の外壁406の間の空洞410内に配置された静止流体408、ならびに殻416を示す。静止流体は、Fluorinert、油、蒸留水などの液体、または六フッ化硫黄などの気体を含むことができる。殻416と外壁406の間にはさらに分割ファラデー・シールド412が配置されている。ファラデー・シールド412は、示されているように殻416に接して、または外壁406に接して、または両方の壁から離し静止流体408に沈めて配置することができる。接地された分割ファラデー・シールド412と外壁406の間に配置されたとき、流体408は、プラズマ室の高電圧絶縁の一部をもたらす。静止流体408は、外部ポンプによって源400の外側で循環しないことが好ましいが、静止流体408は、内部での対流によって源の内部で移動することがある。任意選択の1つまたは複数の冷却装置414がプラズマ室402の冷却を助ける。冷却装置414は、プラズマ室を取り巻き、流体がその中を循環する冷却ループを備えることができる。冷却装置414は、グランド電位にあるファラデー・シールドの外側に配置されるため、電圧絶縁を一切実行せず、したがって、冷却装置414内では任意のタイプの冷却流体を使用することができる。あるいは、冷却装置414は、ペルチェ効果冷却器などの1つまたは複数の熱電冷却器を備えることができる。RFコイル436は中空とすることができ、コイルの内部通路437に冷却材を流すことによってRFコイル436を冷却することができる。
【0037】
図5は、本発明の他の実施形態のプラズマ源500の半断面図を示す。図5は、RFコイル536とプラズマ室外壁506の間に配置された誘電性の固体媒質516中に実質的に封入されたファラデー・シールド512を示す。誘電性の固体媒質516は例えば、アルミナ、石英などのセラミック材料、樹脂、またはEmerson & Cumming Specialty Polymers(米マサチューセッツ州Billerica)によって販売されているStycast W−19、Stycast 2762などのエポキシ封入材を含むことができる。誘電性媒質516と外壁506の間の任意選択の隙間が、Fluorinert、蒸留水、油(例えば鉱油)、六フッ化硫黄などの流体によって満たすことができる流体空洞510を画定する。ファラデー・シールド512の封入されていない部分538は、接地接続の形成に利用可能である。いくつかの実施形態では、図1に示したシステムと同様のシステムを使用して、流体508を、流体空洞510、次いで冷却器を通して送り出す。他の実施形態では、流体508が源の外側に送り出されず、流体空洞510内に留まる。RFコイル536は中空とすることができ、コイルの内部通路537に冷却材を流すことによってRFコイル536を冷却することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、流体を介在させることなく、誘電性媒質516を外壁506に接して配置することができる。このような実施形態では、空隙を回避するため、誘電性媒質516が外壁506にぴったりと接触すべきである。流動可能な材料を使用して、外壁506と誘電性媒質506の間の空気を追い出すことによっても空隙を回避することができる。この流動可能な媒質は例えば高誘電率のグリースまたはジェルとすることができる。流動可能な材料は液体であり続けてもよく、またはプラズマ室に対して誘電性媒質を配置した後に固化してもよい。いくつかの実施形態では、誘電性媒質が、硬化するまたは液体であり続ける流動可能な媒質を含むことができる。例えば、外壁506の周囲にファラデー・シールドが配置されるようにファラデー・シールド512を外壁506の上に被せる前に、外壁506および/またはファラデー・シールド512に流動可能な硬化性材料を塗布することができ、この流動可能な媒質は、ファラデー・シールド512と外壁506の間の隙間を埋める。流動可能な媒質が、外壁506の側とは反対側のファラデー・シールドの面をコーティングし、それによって冷却流体とファラデー・シールドの間の接触を防ぐこともできる。いくつかの実施形態では、プラズマ室502の壁にファラデー・シールドを成形することができる。
【0039】
図6Aから6Dは、ヒート・パイプ冷却が組み込まれたプラズマ源600の他の実施形態の複数の図を示す。プラズマ源600は、内壁628および外壁626を有する誘電性のプラズマ室604を含む。図6Aは、好ましいヒート・パイプ冷却装置を含むプラズマ源600の実施形態の概略断面図を示す。図6Cの断面切断線B−Bを参照されたい。「ヒート・パイプ」は、相遷移を利用して熱を効率的に伝達する熱伝達装置である。この実施形態では、冷却材ジャケット608の上部に組み込まれた1つまたは複数のヒート・パイプ606を有するプラズマ室604を静止流体冷却材602が取り囲む。冷却材602は、プラズマ室604からの熱によって蒸発し、冷却フィン612に向かって上昇する冷却材蒸気610を生み出す。冷却材蒸気610の熱は冷却フィン612によって放散し、周囲の空気に伝達され、それによって冷却材蒸気は冷却される。冷却材蒸気は冷えると凝縮し、冷却材ジャケット608へ戻る。あるいは、ヒート・パイプ606の内側の液体を、冷却ジャケット608内の液体とは別個の液体とし、ヒート・パイプ内で蒸発−凝縮サイクルを完結させることもできる。
【0040】
熱放散能力を増大させるため、冷却材ジャケット608の上部に複数のヒート・パイプが組み込まれることが好ましい。冷却材602は、アンテナ・コイル620とプラズマ室の外壁626の間、好ましくは分割ファラデー・シールド624と外壁626の間に配置された冷却材ジャケット608内に配置される。あるいは、誘電性の固体媒質中に分割ファラデー・シールドを実質的に封入することもできる。接地された分割ファラデー・シールド624と外壁626の間に配置されたとき、液体602は、プラズマ室の高電圧絶縁の一部をもたらす。静止液体冷却材602は、外部ポンプによって源600の外側で循環しないが、静止液体冷却材602は、対流によって、さらには凝縮した冷却材の重力流によって、源の内部で移動することある。いくつかの実施形態では、液体冷却材が、相変化することなしに対流によって壁626から熱を運び去り、この上昇した高温の液体冷却材は、例えば冷却フィン612によって冷却され、冷却ジャケット608内に戻る。冷却材は、外壁626と接触して流れることができ、または外壁626の外側の冷却流路内を流れることができる。RFコイル620は中空とすることができ、コイルの内部通路622に冷却材を流すことによってRFコイル620を冷却することができる。ガスは、ガス入口614を通ってプラズマ室604に入り、引出し電極632によってプラズマ室604から荷電粒子が引き出される。
【0041】
図6Bは、1本のヒート・パイプを示す、図6Aのプラズマ源600の切断線A−Aに沿った断面図を示す。ヒート・パイプ606の源側の端部は、プラズマ室604を取り囲む冷却材ジャケット608に接続されている。静止液体冷却材602は冷却材ジャケット空間を占有する。ヒート・パイプ606の反対端は、冷却フィン・マウント618に接続されている。液体冷却材が静止液体冷却材と呼ばれるのは、液体冷却材が能動的に流れ出ることがないためであるが、液体内部の熱勾配によって液体が移動することがあることを理解されたい。
【0042】
図6Cは、組み込まれたヒート・パイプの例示的な一構成を有するプラズマ源600の上面図を示す。この実施形態では、8本のヒート・パイプ606がプラズマ源に放射状に組み込まれ、プラズマ源の頂部の近くに位置する。それぞれのヒート・パイプ606は、ヒート・パイプの外端に取り付けられた冷却フィン・マウント618を有する。それぞれの冷却フィン・マウント618には1つまたは複数の冷却フィン612が接続される。
【0043】
図6Dは、図6Cのプラズマ源600の側面図を示し、冷却フィンおよびヒート・パイプの配置をさらに示すために、8本のヒート・パイプのうちの1本のヒート・パイプ634が破断されている。分かりやすくするため、この図には前景のヒート・パイプだけが示されている。ヒート・パイプ606はプラズマ源に放射状に組み込まれ、プラズマ源の上部に位置する。それぞれのヒート・パイプ606は、1つまたは複数の冷却フィン612が取り付けられた冷却フィン・マウント618を有する。
【0044】
図7は、プラズマを収容するための内部空洞(見えていない)を有する誘電性構造体702を含むプラズマ源700の一部分の正面図を示す。すなわち、誘電性構造体702はプラズマ室の壁を構成する。分割ファラデー・シールド708が、誘電性構造体702と接触するように、好ましくは誘電性構造体702に密接して接合されるように配置されている。ファラデー・シールド708は、シールドと誘電性構造体702の間に空隙(すなわち空気、冷却流体または他の流体によって満たすことができる空間)が実質的に存在しないように構成されることが好ましい。誘電構造体702の周囲に空隙が存在しないことは、高電圧アーク放電が起こりえないことを保証する。空隙が実質的に存在しないとは、存在する空隙が、損傷を与えるアーク放電を防ぐ十分に小さいものであることを意味する。
【0045】
シールド708は例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第13/353,032号明細書に記載されたシールドと同様のシールドとすることができる。分割ファラデー・シールド708を取り囲むように封入材710が塗布されている。図示の目的上、図7は、半透明の封入材710を通して見えるファラデー・シールド708を示している。RFコイルからのエネルギーを消費する渦電流を低減させるため、分割ファラデー・シールド708は隙間722を有する。封入材710は、誘電性構造体702の隙間722の内側の領域、およびいくつかの実施形態ではシールド708によって覆われていない他の領域と接触し、それらの領域に付着することが好ましい。封入材が誘電性構造体と接触している領域では、封入材と誘電性構造体の間に空隙が実質的に存在しないことが好ましい。言い換えると、封入材と誘電性構造体の間にシールドの一部分が存在するかどうかに関わらず、封入材と誘電性構造体の間には空隙が存在しないことが好ましい。シールドに電気接続するための手段を提供するため、封入材710の下から、領域712など、分割ファラデー・シールド708の一部分が延出する。この延出部分は例えばタブの形態をとることもできる。ファラデー・シールドの領域が封入材から延出する代わりに、封入材の隙間を通して電気接触を実施することもでき、または封入材の外側にファラデー・シールドから導体を延ばすこともできる。
【0046】
封入材710は、シールド708の覆われた部分および誘電性構造体702の覆われた部分に付着し、それらの部分を保護する、漏れのない薄い誘電材料であることが好ましい。封入材の中で渦電流が維持されることがないように封入材は導電性ではない。構造体702からの熱コンダクタンス(heat conductance)を増大させるため、封入材710は薄くあるべきである。好ましい封入材の厚さは10mm未満、より好ましくは5mm未満、よりいっそう好ましくは3mm未満である。可能な最も低い熱障壁を提供するため、封入材710は熱伝導性が高いことが好ましく、それによって、上記の実施形態で説明した冷却方法などのさまざまな冷却方法によってプラズマ室を効率的に冷却することができることが好ましい。さらに、分割ファラデー・シールドの封入材710によって取り囲まれた部分に流体が接触しないように、封入材710は無孔であることが好ましい。封入材710の適当な材料は、限定はされないが、エポキシ、ほうろう(enamel)およびガラス・フリット(glass frit)を含むことができる。
【0047】
誘電性構造体702と接触する分割ファラデー・シールド708であって、ファラデー・シールドと誘電性構造体の間に空気が存在しないように構成された分割ファラデー・シールド708の使用、およびシールドを保護する封入材であって、封入材とファラデー・シールドの間に空気が存在しないことを可能にする封入材の使用は、プラズマ室とファラデー・シールドの間の高DC電圧領域に空気および冷却液体が入り込むことを防ぎ、それによってシステムの設計を単純にする。
【0048】
図8は、図7に示した実施形態の部分断面図を示す。誘電性構造体702は、プラズマ室808の内壁804および外壁806を画定する。プラズマ室808内にプラズマが維持される。分割ファラデー・シールド708は外壁806に接触するように配置される。封入材710は、ファラデー・シールド708と、分割ファラデー・シールドの細長い隙間によって露出した外壁806の部分とに十分に付着し、それによってファラデー・シールドと外壁806の間の空気または冷却流体を排除するように、外壁806の一部分に塗布される。封入材710の下から、封入材よりも上にもしくは封入材よりも下にまたは封入材の上と下の両方に、分割ファラデー・シールドの領域712が延出する。上記の実施形態によって説明した冷却方法などの冷却方法を、封入材710と誘電性の外殻834の間の空間832に供給することができ、誘電性の外殻834は、高周波エネルギーを最小限の損失で伝送するセラミックまたはプラスチック材料でできていることが好ましい。RFコイル812は中空とすることができ、コイルの内部通路に冷却材を流すことによってRFコイル812を冷却することができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビーム・システムは、誘電材料からなる壁を有するプラズマ室であり、この壁が内面および外面を有するプラズマ室と、プラズマ室の周囲に少なくとも1回巻かれた導体と、導電材料からなり、誘電性の媒質中に実質的に封入されたシールドであり、プラズマ室とプラズマ室の周囲に巻かれた導体との間に配置された導電性のシールドと、プラズマを高電圧に電気的にバイアスする源電極とを有するプラズマ源と、プラズマ源からの荷電粒子を試料の表面に焦束させる1つまたは複数の集束レンズとを備える。
【0050】
いくつかの実施形態では、シールドが、プラズマ室の外面に配置される。
【0051】
いくつかの実施形態では、この荷電粒子ビーム・システムが、シールドの導電材料とプラズマ室の外面の間に空隙を実質的に持たない。
【0052】
いくつかの実施形態では、シールドが、誘導場をプラズマまで通過させるための隙間を含み、誘電性の封入材が、導電材料の隙間の間のプラズマ室壁の外面と接触する。
【0053】
いくつかの実施形態では、誘電性の封入材が、エポキシ、ほうろう、ガラス・フリット、樹脂またはポリマーを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、この荷電粒子ビーム・システムが、誘電性の媒質の少なくとも一部分と接触する流体をさらに含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、この流体が、誘電性の封入材とプラズマ室の周囲に巻かれた導体との間に配置される。いくつかの実施形態では、この流体が、プラズマ室の外面と誘電性の封入材の間に配置される。いくつかの実施形態では、この流体が能動的に流れ出ることがない。
【0056】
いくつかの実施形態では、電気接触を実施するためにシールドの封入されていない部分が露出する。いくつかの実施形態では、プラズマ室壁の外面と誘電性の媒質の間の空隙を埋めるために材料が提供される。いくつかの実施形態では、この壁の外面と誘電性の媒質の間の隙間を埋めるために提供された材料が、液体または塗布された後に硬化する液体を含む。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビーム・システム用のプラズマ源は、内面および外面を有する壁を有するプラズマ室と、プラズマ室に高周波エネルギーを供給する導体と、誘電性の媒質中に実質的に封入された導電性シールドであり、前記導体とプラズマ室の外面との間に配置された導電性シールドと、導電性シールドと前記導体の間に配置された流体とを備える。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記流体が冷却系によって冷却される。いくつかの実施形態では、前記流体が水またはフッ素化合物を含む。いくつかの実施形態では、前記流体が、プラズマ室の外面と導電性シールドを封入している誘電性の媒質との間に配置される。いくつかの実施形態では、前記流体が、プラズマ室の外面と導電性シールドを封入している誘電性の媒質との間に配置される。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビーム・システムのプラズマ源に高電圧絶縁をもたらす方法は、プラズマ室を用意すること、プラズマ室の周囲に少なくとも1回巻かれた導体を用意すること、プラズマ室と導体の間に配置された導電性シールドを用意すること、導電性シールドを誘電性の固体媒質中に実質的に封入すること、およびプラズマを高電圧に電気的にバイアスする源電極を用意することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムのプラズマ源に高電圧絶縁をもたらすこの方法が、誘電性の固体媒質の少なくとも一部分と接触する冷却流体を提供することをさらに含む。いくつかの実施形態では、冷却流体が、プラズマ室と導電性シールドを封入している誘電性の媒質との間に配置される。いくつかの実施形態では、冷却流体が、導電性シールドを封入している誘電性の媒質とプラズマ室の周囲に巻かれた導体との間に配置される。いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムのプラズマ源に高電圧絶縁をもたらすこの方法が、冷却流体をポンプで送り出してプラズマ室を冷却することをさらに含む。
【0061】
1つの実施形態で説明した材料および構造体または先行技術の一部として説明した材料および構造体が他の実施形態で使用されることもある。本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。
図1
図2
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図6A
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図8