特許第6129174号(P6129174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129174管の評価のための装置、システム、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129174
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】管の評価のための装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   A61B5/02 610F
   A61B5/02 610B
【請求項の数】21
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2014-527218(P2014-527218)
(86)(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公表番号】特表2014-529442(P2014-529442A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】US2012051570
(87)【国際公開番号】WO2013028613
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年8月19日
(31)【優先権主張番号】61/525,739
(32)【優先日】2011年8月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/525,736
(32)【優先日】2011年8月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/460,296
(32)【優先日】2012年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515122402
【氏名又は名称】ボルケーノ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・デイヴィス
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−525067(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0139951(US,A1)
【文献】 特表2014−504923(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/093226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの機器及び前記少なくとも一つの機器と通信接続される処理ユニットを備えたシステムの作動方法において、
前記処理ユニットが、患者の管内に導入された前記少なくとも一つの機器から、前記患者の心周期の前記管の狭窄の近位の位置で管内の近位圧力測定値を取得するステップと
前記処理ユニットが、前記患者の心周期の前記管の前記狭窄の遠位の位置で管内の遠位圧力測定値を前記少なくとも一つの機器から取得するステップと
前記処理ユニットが、前記患者の心周期においてピーク近位圧力測定値を決定するステップと
前記処理ユニットが、前記患者の心周期においてピーク遠位圧力測定値を決定するステップと
前記処理ユニットが、前記患者の心周期内において前記患者の心周期の一部のみを包囲する診断窓を選択するステップと;及び
前記処理ユニットが、前記診断窓の過程で取得された前記遠位圧力測定値と前記診断窓の過程で取得された近位圧力測定値の間の圧力比を計算するステップを含み、
前記ピーク近位圧力測定値及びピーク遠位圧力測定値に基づくパラメーターが、前記圧力比の計算に用いられる、方法。
【請求項2】
前記ピーク近位圧力測定値及びピーク遠位圧力測定値に基づくパラメーターが、前記ピーク近位圧力測定値及び前記ピーク遠位圧力測定値の間の差である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ピーク近位圧力測定値及び前記ピーク遠位圧力測定値の間の差が、前記ピーク近位圧力測定値から前記ピーク遠位圧力測定値を減算することにより計算される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記ピーク近位圧力測定値及び前記ピーク遠位圧力測定値の間の差が、前記圧力比の計算の際に前記遠位圧力測定値に加えられる、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記ピーク近位圧力測定値及び前記ピーク遠位圧力測定値の間の差が、前記ピーク遠位圧力測定値から前記ピーク近位圧力測定値を減算することにより計算される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ピーク近位圧力測定値及び前記ピーク遠位圧力測定値の間の差が、前記圧力比の計算の際に前記遠位圧力測定値から減算される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ピーク近位圧力測定値及びピーク遠位圧力測定値に基づくパラメーターが、前記ピーク近位圧力測定値に対する前記ピーク遠位圧力測定値の比である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ピーク近位圧力測定値に対する前記ピーク遠位圧力測定値の前記比が、前記圧力比の計算においてスケール因子として用いられる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記遠位圧力測定値が、前記圧力比の計算の際、前記ピーク近位圧力測定値に対する前記ピーク遠位圧力測定値の前記比により乗算される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記患者の管内に導入される前記少なくとも一つの機器が、圧力検出カテーテル及び圧力検出ガイドワイヤーを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
患者の管内への導入のための大きさと形状を持つ少なくとも一つの機器;
前記少なくとも一つの機器と通信接続される処理ユニットであって、
前記管の狭窄の近位の位置で前記少なくとも一つの機器が前記管内に配置される時に前記少なくとも一つの機器から患者の心周期の近位圧力測定値を取得し;
前記管の前記狭窄の遠位の位置で前記少なくとも一つの機器が前記管内に配置される時に前記少なくとも一つの機器から前記患者の心周期の遠位圧力測定値を取得し;
前記患者の心周期におけるピーク近位圧力測定値を決定し;
前記患者の心周期におけるピーク遠位圧力測定値を決定し;
前記患者の心周期内において前記患者の心周期の一部のみを包囲する診断窓を選択し;及び
前記診断窓内で得られた前記遠位圧力測定値と前記診断窓内で得られた前記近位圧力測定値の間の圧力を計算するように構成された処理ユニットを備え、
前記ピーク近位圧力測定値及びピーク遠位圧力測定値に基づくパラメーターが、前記圧力比の計算に用いられる、システム。
【請求項12】
前記ピーク近位圧力測定値及びピーク遠位圧力測定値に基づくパラメーターが、前記ピーク近位圧力測定値及び前記ピーク遠位圧力測定値の間の差である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ピーク近位圧力測定値及び前記ピーク遠位圧力測定値の間の差が、前記ピーク近位圧力測定値から前記ピーク遠位圧力測定値を減算することにより計算される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記ピーク近位圧力測定値及び前記ピーク遠位圧力測定値の間の差が、前記圧力比の計算の際に前記遠位圧力測定値に加えられる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ピーク近位圧力測定値及び前記ピーク遠位圧力測定値の間の差が、前記ピーク遠位圧力測定値から前記ピーク近位圧力測定値を減算することにより計算される、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記ピーク近位圧力測定値及び前記ピーク遠位圧力測定値の間の差が、前記圧力比の計算の際に前記遠位圧力測定値から減算される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ピーク近位圧力測定値及びピーク遠位圧力測定値に基づくパラメーターが、前記ピーク近位圧力測定値に対する前記ピーク遠位圧力測定値の比である、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記ピーク近位圧力測定値に対する前記ピーク遠位圧力測定値の前記比が、前記圧力比の計算においてスケール因子として用いられる、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記遠位圧力測定値は、前記圧力比の計算の際に、前記ピーク近位圧力測定値に対する前記ピーク遠位圧力測定値の前記比により乗算される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも一つの機器が圧力検出カテーテル及び圧力検出ガイドワイヤーを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項21】
少なくとも一つの機器と通信接続される処理ユニットにより実行される指令を有するプログラムにおいて、
患者の管内に導入された前記少なくとも一つの機器から、前記患者の心周期の前記管の狭窄の近位の位置で管内の近位圧力測定値を取得する指令と;
前記患者の心周期の前記管の前記狭窄の遠位の位置で管内の遠位圧力測定値を前記少なくとも一つの機器から取得する指令と;
前記患者の心周期においてピーク近位圧力測定値を決定する指令と;
前記患者の心周期においてピーク遠位圧力測定値を決定する指令と;
前記患者の心周期内において前記患者の心周期の一部のみを包囲する診断窓を選択する指令と;及び
前記診断窓の過程で取得された前記遠位圧力測定値と前記診断窓の過程で取得された近位圧力測定値の間の圧力比を計算する指令とを含み、
前記ピーク近位圧力測定値及びピーク遠位圧力測定値に基づくパラメーターが、前記圧力比の計算に用いられる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、管の評価、特に管を通じた流体の流れに対する妨害又は他の制限の重大性の評価に関する。本開示の態様は、幾つかの実施形態においては体内管の評価に特に適する。例えば、本開示の幾つかの特定の実施形態が、具体的には、ヒト血管の狭窄の評価のために構成される。
【背景技術】
【0002】
虚血原因損傷を含む、現在受け入れられている血管の狭窄の重大性の評価技術は、FFR(fractional flow reserve(血流予備量比))である。FFRは(狭窄の近位側で取得される)近位圧力測定値に対する(狭窄の遠位側で取得される)遠位圧力測定値の比率の計算である。FFRが狭窄重大性の指標を提供し、妨害により管内の血流が治療を要求する程度であるか否かを決定することを可能にする。健康な管のFFRの通常値が1.00であり、約0.80未満の値が一般的には重大と見なされて治療を要求する。一般的な治療方法が、管形成術及びステント・グラフト留置術を含む。
【0003】
冠血流は、(大動脈のもののように)近位に生じる圧力の変動により影響を受けるのみではなく、微小循環で遠位に生じる変動によっても同時に影響を受ける点において独特である。従って、狭窄に亘る平均又はピーク圧力の降下を単に測定するだけでは冠状狭窄の重大性を正確に評価することが可能ではない。なぜなら、遠位冠状圧力が、管の大動脈端から伝達した圧力の純粋な残部ではないためである。結果として、冠状動脈内のFFRの効果的な計算のため、管内の管抵抗を減じることが必要である。現在、アデノシンといった薬理学の充血剤が冠状動脈内の抵抗を減少及び安定化するために処置される。強力な管拡張剤により抵抗の劇的な変動が減じられ(優勢には、心臓サイクルの収縮期に関連する微小循環抵抗が減じられ)、相対的に安定した、また最小の抵抗値が得られる。
【0004】
しかしながら、充血剤の投与は常に可能なものではなく又は勧められるものでもない。第1に、充血剤の投与の臨床努力が甚大になる。幾つかの国(特には、米国)においては、アデノシンといった充血剤が高価であり、また静脈内に配送される場合には得るのに多大な時間を必要とする。この点に関しては、一般的には、静脈供給アデノシンは、病院薬局において必要に応じて混合される。アデノシンを用意してオペ領域に配送するには甚大な時間や努力が必要になる。これらのロジスティック障壁が、FFRを使用する医師の決定に影響し得る。第2に、幾つかの患者は、ぜんそく、深刻な慢性閉塞性肺疾患、低血圧、徐脈、低い心臓駆出率、最近の心筋梗塞、及び/又は充血剤の投与を阻止する他の要因といった充血剤の使用に対する禁忌を有する。第3に、多くの患者は、充血剤の投与を不快だと感じ、FFR測定値の獲得のプロセス過程にて複数回も充血剤が投与されなければならないという事実によりその度合いが増されるだけである。第4に、充血剤の投与が、別方法であれば回避されるだろう中心静脈アクセス(例えば、中心静脈シース)も要求する。最後に、全ての患者が予期したように充血剤に応答するものではなく、また幾つかの場合には、充血剤の投与前にこれらの患者を識別することは困難である。
【0005】
従って、管における妨害、特には血管の狭窄の重大性の評価のための改良された装置、システム、及び方法の必要性が残存している。この点に関しては、充血剤の投与を要求しない冠状動脈における狭窄の重大性の評価のための改良された装置、システム、及び方法の必要性が残存している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の実施形態は、管における妨害、特には血管の狭窄の重大性を評価するように構成される。幾つかの特定の実施形態においては、本開示の装置、システム、及び方法は、充血剤の投与無しで冠状動脈における狭窄の重大性を評価するように構成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの場合においては、患者の管の評価方法が提供される。方法が、患者の管内に少なくとも一つの機器を導入する;少なくとも一つの患者の心周期について前記管の狭窄の近位の位置で管内の近位圧力測定値を前記少なくとも一つの機器から取得する;前記少なくとも一つの患者の心周期について前記管の前記狭窄の遠位の位置で管内の遠位圧力測定値を前記少なくとも一つの機器から取得する;患者の心周期内で前記患者の心周期の一部のみを包囲する診断窓を選択する;及び前記診断窓内で取得された前記遠位圧力測定値と前記診断窓内で取得された近位圧力測定値の間の圧力差を計算するステップを含む。幾つかの実施形態においては、前記診断窓が、前記近位圧力測定値の1以上の特徴に基づいて少なくとも部分的に選択される。例えば、前記診断窓の始点及び/又は終点が、前記近位圧力測定値に基づいて選択される。その点に関して、始点及び/又は終点が、前記近位圧力測定値の重拍ノッチ、近位圧力測定値のピーク圧力、近位圧力測定値の圧力の最大変化、前記近位圧力測定値の心周期の開始、前記近位圧力測定値の心拡張の開始の1以上に基づく。幾つかの場合においては、前記診断窓の終点が、前記始点からの固定量の時間になるように選択される。
【0008】
幾つかの実施形態においては、前記診断窓が、前記遠位圧力測定値の1以上の特徴に基づいて少なくとも部分的に選択される。例えば、前記診断窓の始点及び/又は終点が、前記遠位圧力測定値に基づいて選択される。その点に関して、始点及び/又は終点が、前記遠位圧力測定値の重拍ノッチ、遠位圧力測定値のピーク圧力、遠位圧力測定値の圧力の最大変化、前記遠位圧力測定値の心周期の開始、前記遠位圧力測定値の心室化点、及び遠位圧力測定値の心拡張の開始の1以上に基づく。幾つかの場合においては、前記診断窓が、最大診断窓を識別し、また診断窓として最大診断窓の一部を選択することにより選択される。
更には、幾つかの実施形態においては、方法は、前記管を通じて流れる流体の流速値を前記少なくとも一つの機器から取得するステップを更に含む。この点に関しては、幾つかの場合においては、前記診断窓が、前記流速値の差分、第1微分係数、及び/又は第2微分係数が相対的に一定値の約ゼロを持つ前記心周期の一部に対応するように選択される。幾つかの実施形態においては、前記診断窓が、患者のECG信号の特徴に基づいて選択される。幾つかの実施形態においては、患者の心臓が、前記近位及び遠位圧力測定値が取得される前記少なくとも一つの心周期の間にストレスを受けない。更には、幾つかの実施形態においては、方法が、更に、前記遠位圧力測定値の少なくとも一部に対して前記近位圧力測定値の少なくとも一部を時間的に整列することを含む。
【0009】
幾つかの実施形態においては、患者の管を評価するためのシステムが提供される。この点に関しては、システムが、患者の管内への導入のための大きさと形状を持つ少なくとも一つの機器と、前記少なくとも一つの機器と通信接続される処理ユニットを含む。処理ユニットが、前記管の評価のために前記少なくとも一つの機器から受信したデータを処理するように構成される。
【0010】
本開示の追加の態様、特徴、及び利益が、次の詳細な説明から明らかになる。
図示の本開示の実施形態が、添付図面を参照して記述される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施形態に係る狭窄を有する管の図表の斜視図である。
図2図2は、図1の切断線2−2に沿って取られた図1の管の部分の図表の部分断面斜視図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係る図1及び2の管とそこに配置された機器の図表の、部分断面斜視図である。
図4図4は、本開示の実施形態に係るシステムの図表の概略図である。。
図5図5は、本開示の実施形態に係る管内の測定された圧力、速度、及び抵抗のグラフ表示である。
図6図6は、患者の安静状態に対応する図5のグラフ表示の部分の拡大図である。
図7図7は、患者の充血状態に対応する図5のグラフ表示の部分の拡大図である。
図8図8は、本開示の実施形態に係る診断窓を特定するために注釈された図6のグラフ表示の部分である。
図9図9は、本開示の実施形態に係る管内の測定された圧力及び速度のグラフ表示である。
図10図10は、本開示の実施形態に係る図9の測定された速度の微分係数(導関数)のグラフ表示である。
図11図11は、本開示の実施形態に係る診断窓を特定するために注釈された図9のグラフ表示である。
図12図12は、本開示の実施形態に係る管内の波形強度のグラフ表示である。
図13図13は、本開示の実施形態に係る図12の波形強度に対応する管内の近位及び遠位起因圧力波形のグラフ表示である。
図14図14は、本開示の実施形態に係る図13の近位及び遠位起因圧力波形及び図12の波形強度に対応する管内の圧力及び速度のグラフ表示である。
図15図15は、本開示の実施形態に係る図12の波形強度、図13の近位及び遠位起因圧力波形、及び図14の圧力及び速度に対応する管内の抵抗のグラフ表示である。
図16図16は、本開示の実施形態に係る近位圧力測定値に基づく診断窓の始点の特定のグラフ表示である。
図17図17は、本開示の別の実施形態に係る近位圧力測定値に基づく診断窓の始点の特定のグラフ表示である。
図18図18は、本開示の別の実施形態に係る近位圧力測定値に基づく診断窓の始点の特定のグラフ表示である。
図19図19は、本開示の実施形態に係る遠位圧力測定値に基づく診断窓の始点の特定のグラフ表示である。
図20図20は、本開示の別の実施形態に係る遠位圧力測定値に基づく診断窓の始点の特定のグラフ表示である。
図21図21は、本開示の別の実施形態に係る遠位圧力測定値に基づく診断窓の始点の特定のグラフ表示である。
図22図22は、本開示の別の実施形態に係る遠位圧力測定値に基づく診断窓の始点の特定のグラフ表示である。
図23図23は、本開示の実施形態に係る診断窓の始点に基づく診断窓の終点の特定のグラフ表示である。
図24図24は、本開示の実施形態に係る近位圧力測定値に基づく診断窓の終点の特定のグラフ表示である。
図25図25は、本開示の実施形態に係る遠位圧力測定値に基づく診断窓の終点の特定のグラフ表示である。
図26図26は、本開示の実施形態に係る遠位圧力測定値に基づく診断窓の終点の特定のグラフ表示である。
図27図27は、本開示の実施形態に係る近位及び遠位圧力測定値に対する診断窓のグラフ表示である。
図28図28は、本開示の別の実施形態に係る近位及び遠位圧力測定値に対する診断窓のグラフ表示である。
図29図29は、本開示の実施形態に係るECG信号のグラフ表示である。
図30図30は、本開示の別の実施形態に係る近位及び遠位圧力測定値に対する診断窓のグラフ表示である。
図31図31は、本開示の実施形態に係る近位及び遠位圧力測定値に対する診断窓のグラフ表示である。
図32図32は、近位圧力測定値に対する遠位圧力測定値の一時的な調整を図示する図30のグラフ表示の部分の拡大図である。
図33図33は、本開示の実施形態に係る管内の近位及び遠位圧力測定値のグラフ表示である。
図34図34は、本開示の実施形態に係るグラフ表示の組であり、上部グラフ表示が、管内の近位及び遠位圧力測定値を図示し、下部グラフ表示が、近位及び遠位圧力測定値の比率、及び近位圧力波形と遠位圧力波形のフィットを図示する。
図35図35は、図33のグラフ表示に類似するグラフ表示の組であるが、上部グラフ表示の遠位圧力測定値波形が図33の遠位圧力波形に対してシフトされており、また下部グラフ表示が、近位及び遠位圧力測定値の対応の比率及びシフトされた遠位圧力測定値波形に基づく近位圧力波形及び遠位圧力波形の間の適合を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の原則の理解の促進の目的のため、図面に図示された実施形態に対する参照がここで為され、同説明のために特定の文言が用いられる。しかしながら、開示の範囲に何らの限定も意図されないものと理解される。説明の装置、システム、及び方法に対する如何なる改変及び更なる修正、及び本開示の原則の全ての更なる適用が、本開示に関連の技術分野の当業者に自然に起きるように、本開示の範囲内で十分に考えられ、またそこに含まれる。特には、ある実施形態に関連して説明した特徴、部品、及び/又はステップが、本開示の他の実施形態に関連して説明した特徴、部品、及び/又はステップに組み合わすことができるものと良く理解される。しかしながら、簡潔さの目的のため、これらの組み合わせの多数の繰り返しが別々に記述されない。
【0013】
図1及び2を参照すると、本開示の実施形態に係る狭窄を有する管100が開示される。この点に関しては、図1は、管100の図表の斜視図であり、図2は、図1の切断線2−2に沿って取られた管100の一部の部分断面斜視図である。より詳細に図1を参照すると、管100が、近位部102及び遠位部104を有する。ルーメン106が、近位部102及び遠位部104の間を管100の長さに沿って延びる。この点に関しては、ルーメン106は、管を通した流体の流れを許容するように構成される。幾つかの場合においては、管100は、全身の血管である。幾つかの特定の場合においては、管100は、冠状動脈である。そのような場合においては、ルーメン106は、管100を通じた血液の流れを促進するように構成される。
【0014】
開示のように、管100は、近位部102及び遠位部104の間に狭窄108を含む。狭窄108は、一般的には、管100のルーメン106を介した流体の流れの制限に帰結する任意の妨害又は他の構造的な要素の代表である。本開示の実施形態は、広範囲の脈管用途での使用に適切であり、限定の意図を有することなく、冠状、末梢(限定するわけではないが、下部肢、頸動脈、及び神経管を含む)、腎臓、及び/又は静脈を含む。管100が血管の場合、狭窄108が、限定の意図を有することなく、繊維、繊維脂質(繊維脂肪質)、壊死性コア、石灰化(高濃度カルシウム)、血液、新しい血栓、及び発達した血栓といったプラーク片を含むプラーク蓄積の結果である。一般的には、狭窄の構成物は、評価される管の種類に依存する。この点に関しては、本開示の概念が、減じられた流体の流れに帰結する任意のタイプの妨害又は他の管の狭化に実質的に適用可能であると理解される。
【0015】
より端的に図2を参照すると、管100のルーメン106が、狭窄108の近位直径110及び狭窄の遠位直径112を有する。幾つかの場合においては、直径110及び112が、お互いに実質的に等しい。この点に関しては、直径110及び112が、狭窄108と比較し、ルーメン106の健康な部分、又は少なくともより健康な部分を表すことが意図される。従って、ルーメン106のこれらのより健康な部分が、実質的に一定の円筒プロファイルを有するように図示され、また、結果として、ルーメンの高さ又は幅が、直径として言及される。しかしながら、多くの場合においては、ルーメン106のこれらの部分が、狭窄108よりも少ない程度であるが、プラーク堆積、非対称プロファイル、及び/又は他の不規則も有し、従って、円筒プロファイルを有しないものと理解される。そのような場合においては、直径110及び112が、ルーメンの相対サイズ又は断面領域の代表であるものと理解され、円形の断面プロファイルを意味しない。
【0016】
図2に示すように、狭窄108が、管100のルーメン106を狭めるプラーク堆積114を含む。幾つかの場合においては、プラーク堆積114が、均一又は対称なプロファイルを有せず、そのような狭窄の管造影法の評価を頼りにならないものにする。図示の実施形態においては、プラーク堆積114が、上部116及び対向の下部118を含む。この点に関しては、下部118が、上部116に対して増加した厚みを有し、狭窄108の近位及び遠位のルーメンの部分に対して非対称及び非均一なプロファイルに帰結する。開示のように、プラーク堆積114が、ルーメン106を通じて流体が流れる利用可能な空間を減じる。特には、ルーメン106の断面領域が、プラーク堆積114により減じられる。上部及び下部116、118の間の最も狭い位置において、ルーメン106が高さ120を有し、これは、狭窄108の近位及び遠位の直径110及び112に対する減じられたサイズ又は断面領域を示す。プラーク堆積114を含む狭窄108が、実際は例示であり、如何なる態様でも限定と理解されるべきではないことに留意されたい。この点に関しては、他の場合においては、狭窄108は、ルーメン106を通じた流体の流れを制限する他の形状及び/又は組成を有するものと理解される。管100が図1及び2において単一の狭窄108を有するように図示され、また以下の実施形態の記述が、単一の狭窄の内容において主に為されるが、しかし、本明細書に記述の装置、システム、及び方法が、複数の狭窄領域を持つ管に同様の用途を持つものと理解される。
【0017】
ここで図3を参照すると、本開示の実施形態に係る管100が、そこに配置された機器130及び132と共に図示される。一般的には、機器130及び132が、管内に配置されるようにサイズ及び形状出しされた任意の形態の装置、機器又はプローブである。図示の実施形態においては、機器130は、概してガイドワイヤーを代表し、他方、機器132は、概してカテーテルを代表する。この点に関しては、機器130が、機器132の中央ルーメンを通じて延びる。しかしながら、他の実施形態においては、機器130及び132が、他の形態を取る。この点に関しては、機器130及び132が、幾つかの実施形態においては同一の形態である。例えば、幾つかの場合においては、両方の機器130及び132がガイドワイヤーである。他の場合においては、両方の機器130及び132がカテーテルである。他方、幾つかの実施形態においては、機器130及び132が、図示の実施形態のように異なる形態であり、そこでは機器の一方がカテーテルであり、また他方がガイドワイヤーである。更には、幾つかの場合においては、機器130及び132が、図3の図示の実施形態に示すようにお互いに同軸に配置される。他の場合においては、機器の一方が、他方の機器の非中央ルーメンを延びる。また別の場合においては、機器130及び132が隣り合って延びる。幾つかの特定の実施形態においては、少なくとも一つの機器が、高速交換カテーテルといった高速交換装置である。そのような実施形態においては、他方の機器が、バディーワイヤー(buddy wire)であり、他の装置が、高速交換装置の導入及び除去を促進するべく構成される。また更には、他の場合においては、二つの別々の機器130及び132に代えて、単一の機器が利用される。この点に関しては、幾つかの実施形態においては、単一の機器が、両方の機器130及び132の機能(例えば、データ取得)の態様を包含する。
【0018】
機器130は、管100に関する診断情報を取得するように構成される。この点に関しては、機器130は、管に関する診断情報を取得するべく構成された1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素を含む。診断情報が、圧力、流れ(速度)、イメージ(超音波(例えば、IVUS)、OCT、熱、及び/又は他のイメージング技術を用いて取得されたイメージを含む)、温度の1以上、及び/又はこれらの組み合わせを含む。幾つかの場合においては、1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素が、機器130の遠位部に隣接して配置される。この点に関しては、幾つかの場合においては、1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素が、機器130の遠位先端134から30cm未満、10cm未満、5cm未満、3cm未満、2cm未満、及び/又は1cm未満に配置される。幾つかの場合においては、少なくとも一つの1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素が、機器130の遠位先端に配置される。
【0019】
機器130は、管100内の圧力をモニターするべく構成された少なくとも一つの要素を含む。圧力モニタリング要素が、ピエゾ−抵抗圧力センサー、ピエゾ−電気圧力センサー、容量性圧力センサー、電磁圧力センサー、流体カラム(流体カラムは、機器とは別の及び/又は流体カラムの近位の機器の部分に配置された流体カラムセンサーと通信接続される)、光学圧力センサー、及び/又はこれらの組み合わせの形態を取ることができる。幾つかの場合においては、圧力モニタリング要素の1以上の特徴が、半導体及び/又は他の適切な製造技術を用いて製造された固体部品として実施される。適切な圧力モニタリング要素を含む、商業的に入手可能なガイドワイヤー製品の例が、限定の意図を有することなく、PrimeWire PRESTIGE(登録商標)圧力ガイドワイヤー、PrimeWire(登録商標)圧力ガイドワイヤー、及びComboWire(登録商標)XT圧力及びフローガイドワイヤーを含み、各々がVolcano社から入手可能であり、また同様に、PressureWire(商標)Certusガイドワイヤー及びPressureWire(商標)Aerisガイドワイヤーを含み、各々が、St.Jude Medical社から入手可能である。一般的には、機器130が、遠位圧力の記録に影響する、狭窄に亘る流体の流れに甚大な影響を与えることなく、狭窄108を通じて配置可能である大きさに構成される。従って、幾つかの場合においては、機器130が、0.0018”未満の外径を有する。幾つかの実施形態においては、機器130が0.014”未満の外径を有する。
【0020】
機器132は、管100に関する診断情報を取得するようにも構成される。幾つかの場合においては、機器132は、機器130と同じ診断情報を取得するように構成される。他の場合においては、機器132は、機器130とは異なる診断情報を取得するように構成され、これは、追加の診断情報、少ない診断情報、及び/又は代替の診断情報を含む。機器132により取得された診断情報は、圧力、流れ(速度)、イメージ(超音波(例えば、IVUS)、OCT、熱、及び/又は他のイメージング技術を用いて取得されたイメージを含む)、温度の1以上、及び/又はこれらの組み合わせを含む。機器132は、この診断情報を取得するべく構成された1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素を含む。この点に関しては、1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素が、幾つかの場合においては、機器132の遠位部に隣接して配置される。この点に関しては、幾つかの場合においては、1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素が、機器132の遠位先端136から30cm未満、10cm未満、5cm未満、3cm未満、2cm未満、及び/又は1cm未満に配置される。幾つかの場合においては、少なくとも一つの1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素が、機器132の遠位先端に配置される。
【0021】
機器130と同様、機器132は、管100内の圧力をモニターするべく構成された少なくとも一つの要素も含む。圧力モニタリング要素が、ピエゾ−抵抗圧力センサー、ピエゾ−電気圧力センサー、容量性圧力センサー、電磁圧力センサー、流体カラム(流体カラムは、機器とは別の及び/又は流体カラムの近位の機器の部分に配置された流体カラムセンサーと通信接続される)、光学圧力センサー、及び/又はこれらの組み合わせの形態を取ることができる。幾つかの場合においては、圧力モニタリング要素の1以上の特徴が、半導体及び/又は他の適切な製造技術を用いて製造された固体部品として実施される。幾つかの実施形態においては、ミラーカテーテルが利用される。フィリップス社のXper Flex Cardio Physiomonitoring System,GE社のMac-Lab XT及びXTi血流力学記録システム、シーメンス社のAXIOM Sensis XP VC11、McKesson社のHorizon Cardiology Hemo、及びMennen社のHorizon XVu血行力学モニタリングシステムの1以上での使用に適切な現在入手可能なカテーテル製品が圧力モニタリング要素を含み、幾つかの場合においては、機器132に利用可能である。
【0022】
本開示の態様においては、少なくとも一つの機器130及び132が、狭窄108の遠位の管100内の圧力をモニターするように構成され、また少なくとも一つの機器130及び132が、狭窄の近位の管内の圧力をモニターするように構成される。この点に関しては、機器130、132が、装置の構成に基づいて必要なように管100内の圧力をモニターするように構成されて狭窄108の近位及び/又は遠位に配置される少なくとも一つの要素の配置を許容する大きさと形状に構成される。この点に関しては、図3は、狭窄108の遠位圧力の測定に適した位置138を図示する。この点に関しては、幾つかの場合においては、(図2に示すように)位置138が、狭窄108の遠位端から、5cm未満、3cm未満、2cm未満、1cm未満、5mm未満、及び/又は2.5mm未満である。図3は、狭窄108の近位圧力の測定に適した複数の位置も図示する。この点に関しては、幾つかの場合においては、位置140、142、144、146、及び148が、各々、狭窄の近位の圧力の測定に適した位置を代表する。この点に関しては、位置140、142、144、146、及び148が、狭窄108の近位端から変動する距離に設けられ、20cm超から約5mm以下までの範囲に及ぶ。一般的には、近位圧力測定が、狭窄の近位端から離間される。従って、幾つかの場合においては、近位圧力測定が、狭窄の近位端から管のルーメンの内径に等しい若しくはそれよりも大きい距離で行われる。冠状動脈の圧力測定に照らして、近位圧力測定は、一般的に、管の近位部において、狭窄の近位の位置かつ大動脈の遠位の位置で行われる。しかしながら、冠状動脈の圧力測定の幾つかの特定の場合においては、大動脈内の場所から近位圧力測定値が取られる。他の場合においては、近位圧力測定値が、冠状動脈の付け根又は口で取られる。
【0023】
ここで図4を参照すると、開示の実施形態に係るシステム150が図示される。この点に関しては、図4は、システム150の図表の概略図である。開示のように、システム150は、機器152を含む。この点に関しては、幾つかの場合においては、機器152は、上述した機器130及び132の少なくとも一つのとしての使用に適切である。従って、幾つかの場合においては、機器152は、幾つかの場合においては、機器130及び132に関して上述したものと同様の特徴を含む。図示の実施形態においては、機器152は、遠位部154及び遠位部に隣接した配置されたハウジング156を有するガイドワイヤーである。この点に関しては、ハウジング156は、機器152の遠位先端から凡そ3cm離間される。ハウジング156は、管に関する診断情報を取得するべく構成された1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素を収容するように構成される。図示の実施形態においては、ハウジング156が、機器152が配置されるルーメン内の圧力をモニターするべく構成された少なくとも一つの圧力センサーを含む。シャフト158が、ハウジング156から近位に延びる。トルク装置160が、シャフト158の近位部に亘り配置され、またそこに結合される。機器152の近位端位置162がコネクター164に結合される。ケーブル166が、コネクター164からコネクター168へ延びる。幾つかの場合においては、コネクター168は、インターフェイス170内に差し込まれるべく構成される。この点に関しては、幾つかの場合においては、インターフェイス170は、患者インターフェイスモジュール(PIM)である。幾つかの場合においては、ケーブル166が、ワイヤレスコネクションで置換される。この点に関しては、機器152及びインターフェイス170の間で、物理コネクション(電気、光学、及び/又は流体コネクションを含む)、ワイヤレスコネクション、及び/又はこれらの組み合わせを含む様々な通信路が利用されるものと理解される。
【0024】
インターフェイス170が、コネクション174を介して計算装置172に通信可能に結合される。計算装置172は、概して、本開示内で説明する処理及び分析技術を実行するために適切な任意の装置を代表する。幾つかの実施形態においては、計算装置172が、プロセッサ、ランダムアクセスメモリー、及びストレージ媒体を含む。この点に関しては、幾つかの特定の場合においては、計算装置172が、本明細書で説明のデータ取得及び分析に関連のステップを実行するべくプログラムされる。従って、データ取得、データ処理、機器制御、及び/又は他の本開示の処理及び/又は制御態様に関連する任意のステップが、計算装置によりアクセス可能な非一時的コンピューター読み取り可能媒体上又は内に記憶された対応の指令を用いて計算装置により実行されるものと理解される。幾つかの場合においては、計算装置172がコンソール装置である。幾つかの特定の場合においては、計算装置172は、s5(商標)Imagingシステム又はs5i(商標)Imagingシステムに類似し、各々が、Volcano社から入手可能である。幾つかの場合においては、計算装置172が、ポータブルである(例えば、回転カート上で手持ちされる等)。更には、幾つかの場合においては、計算装置172が、複数の計算装置を備えるものと理解される。この点に関しては、本開示とは異なる処理及び/又は制御態様が、複数の計算装置を用いて別々若しくは事前に設定されたグループ内において実施されるものと特に理解される。複数の計算装置に亘る以下に説明の処理及び/又は制御の態様の任意の分割及び/又は組み合わせが、本開示の範囲内である。
【0025】
一緒に、コネクター164、ケーブル166、コネクター168、インターフェイス170、及びコネクション174が、機器152の1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素及び計算装置172の間の通信を促進する。しかしながら、この通信路は実際には例示であり、また如何なる方法でも限定と理解されるべきではない。この点に関しては、機器152及び計算装置172の間で、物理コネクション(電気、光学、及び/又は流体コネクションを含む)、ワイヤレスコネクション、及び/又はこれらの組み合わせを含む任意の通信路が用いられるものと理解される。この点に関しては、幾つかの場合においては、コネクション174がワイヤレスであるものと理解される。幾つかの場合においては、コネクション174が、ネットワーク(例えば、イントラネット、インターネット、遠隔通信ネットワーク、及び/又は他のネットワーク)上の通信リンクを含む。この点に関しては、幾つかの場合においては、計算装置172が、機器152が用いられるオペ領域から離れて配置されるものと理解される。コネクション174にネットワークを介したコネクションを持たせることにより、計算装置が隣接の部屋、隣接の建物、又は異なる州/国にあるかを問わず、機器152とリモート計算装置172の間の通信を促進することができる。更には、幾つかの場合においては、機器152とリモート計算装置172の間の通信路が、セキュアコネクションであるものと理解される。また更には、幾つかの場合においては、機器152と計算装置172の間の通信路の1以上の部分に亘り通信されるデータが暗号化されるものと理解される。
【0026】
システム150が、機器175を含む。この点に関しては、幾つかの場合においては、機器175が、上述の機器130及び132の少なくとも一つとしての使用に適切である。従って、幾つかの場合においては、機器175が、幾つかの場合において機器130及び132に関して上述したものと同様の特徴を含む。図示の実施形態においては、機器175は、カテーテル−タイプの装置である。この点に関しては、機器175が、管に関する診断情報を取得するべく構成された機器の遠位部に隣接した1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素を含む。図示の実施形態においては、機器175が、機器175が配置されるルーメン内の圧力をモニターするべく構成された圧力センサーを含む。機器175が、コネクション177を介してインターフェイス176に通信接続される。幾つかの場合においては、インターフェイス176が、Siemens AXIOM Sensis、Mennen Horizon XVu、及びPhilips Xper IM Physiomonitoring 5といった、血流力学モニタリング装置又は他の制御装置である。ある特定の実施形態においては、機器175が、その長さに沿って延びる流体カラムを含む圧力−検出カテーテルである。そのような実施形態においては、インターフェイス176が、カテーテルの流体カラムに流体的に結合した止血バルブ、止血バルブに流体的に結合したマニホールド、部品を流体的に結合するのに必要なため部品の間を延びるチューブを含む。この点に関しては、カテーテルの流体カラムは、バルブ、マニホールド、及びチューブを介して圧力センサーに流体的に連通される。幾つかの場合においては、圧力センサーがインターフェイス176の一部である。他の場合においては、圧力センサーは、機器175及びインターフェイス176の間に配置された別部品である。インターフェイス176は、コネクション178を介して計算装置172に通信可能に結合される。
【0027】
機器152及び計算装置172の間のコネクションと同様、インターフェイス176及びコネクション177及び178が、機器175の1以上のセンサー、トランスデューサー、及び/又は他のモニタリング要素及び計算装置172の間の通信を促進する。しかしながら、この通信路は実際には例示であり、また如何なる方法においても限定として理解されるべきではない。この点に関しては、機器175及び計算装置172の間で、物理コネクション(電気、光学、及び/又は流体コネクションを含む)、ワイヤレスコネクション、及び/又はこれらの組み合わせを含む任意の通信路が用いられるものと理解される。この点に関しては、この点に関しては、幾つかの場合においては、コネクション178がワイヤレスであるものと理解される。幾つかの場合においては、コネクション178が、ネットワーク(例えば、イントラネット、インターネット、遠隔通信ネットワーク、及び/又は他のネットワーク)上の通信リンクを含む。この点に関しては、幾つかの場合においては、計算装置172が、機器175が用いられるオペ領域から離れて配置されるものと理解される。コネクション178にネットワークを介したコネクションを持たせることにより、計算装置が隣接の部屋、隣接の建物、又は異なる州/国にあるかを問わず、機器175とリモート計算装置172の間の通信を促進することができる。更には、幾つかの場合においては、機器175とリモート計算装置172の間の通信路が、セキュアコネクションであるものと理解される。また更には、幾つかの場合においては、機器175と計算装置172の間の通信路の1以上の部分に亘り通信されるデータが暗号化されるものと理解される。
【0028】
本開示の他の実施形態においては、システム150の1以上の部品が含まれず、異なる構成/順番で実施され、及び/又は代替の装置/機構により置換されるものと理解される。例えば、幾つかの場合においては、システム150は、インターフェイス170及び/又はインターフェイス176を含まない。そのような場合においては、コネクター168(又は機器152又は機器175と通信接続された他の類似のコネクター)が、計算装置172に関連のポートに差し込まれる。代替的に、機器152、175が、計算装置172とワイヤレスで通信する。一般的に述べれば、機器152、175及び計算装置172のいずれか又は両方の間の通信路が、中間ノードを有せず(つまり、ダイレクトコネクション)、機器及び計算装置の間の一つの中間ノードを有し、又は機器及び計算装置の間の複数の中間ノードを有し得る。
【0029】
ここで図5乃至8を参照すると、そこには、本開示の実施形態の側面を図示する診断情報のグラフ表示が図示される。この点に関しては、図5は、管内で測定された圧力、速度、及び抵抗のグラフ表示である;図6は、患者の安静状態に対応する図5のグラフ表示の一部の拡大図である;図7は、患者の充血状態に対応する図5のグラフ表示の一部の拡大図である;及び図8は、本開示の実施形態に係る診断窓の特定のために注釈された図6のグラフ表示の一部である。
【0030】
より端的に図5を参照すると、管に関する診断情報のグラフ表示180が図示される。より端的には、グラフ表示180が、期間に亘る管内の圧力をプロットするグラフ182、期間に亘る管内の流体の速度をプロットするグラフ184、及び期間に亘る管内の抵抗をプロットするグラフ186を含む。この点に関しては、グラフ186に示した抵抗(又はインピーダンス)は、グラフ182及び184の圧力及び速度データに基づいて計算される。特には、グラフ186に示した抵抗値は、グラフ182の圧力測定値を時間の対応点の速度測定値184により除算することにより決定される。グラフ表示180は、患者の心臓が安定状態に対応する時間範囲188と、患者の心臓がストレス状態に対応する時間範囲190を含む。この点に関しては、幾つかの場合においては、患者の心臓のストレス状態が、充血剤の投与により生じる。
【0031】
患者の安静及びストレス状態の間において圧力、速度、及び抵抗データの違いをより良く図示するため、ウィンドウ192及び194内のデータのクローズアップ図が図6及び7に図示される。図6をより詳細に参照すれば、グラフ表示180のウィンドウ192が、グラフ182、184、及び186に各々対応するグラフ部分196、198、及び200を含む。開示のように、図6の安静状態においては、管内の抵抗が、ライン202で示唆されるようにグラフ200のスケール上でおよそ0.35の平均値を有する。ここで図7を参照すると、グラフ表示180のウィンドウ194が、グラフ182、184、及び186に各々が対応するグラフ部分204、206、及び208を含む。開示のように、図7のストレス状態においては、管内の抵抗がライン210により示唆されるように、グラフ208のスケール上でおよそ0.20の値だけ顕著に安静状態未満である。現在のFFR技術が、全心拍サイクルに亘る平均圧力に依存するため、患者の心臓にストレスをかけることが必要であり、この減じられた及び相対的に一定な抵抗を全ての鼓動に亘り達成し、FFR技術での使用に適切なデータを得ている。
【0032】
図8を参照すると、図6と同様、図5のグラフ表示180のウィンドウ192が示され、グラフ182、184、及び186、に各々が対応するグラフ部分196、198、及び200を含む。しかしながら、図8においては、患者の心拍サイクルのセクション212が識別されている。開示のように、セクション212が、患者の心拍サイクルの部分に対応し、ここでは、抵抗が、充血剤又は他のストレス手法の使用なしに減じられている。つまり、セクション212が、自然に減じられ、また相対的に一定な抵抗を持つ安静状態の患者の心拍サイクルの一部である。他の場合においては、心拍サイクルのセクション212が、心拍サイクルの最大抵抗の固定パーセント未満である心拍サイクルの部分を包含する。この点に関しては、心拍サイクルの最大抵抗の固定パーセントが、幾つかの実施形態においては、50%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、及び5%未満である。また別の場合においては、心拍サイクルのセクション212が、心拍サイクルの平均抵抗の固定パーセント未満である心拍サイクルの部分を包含する。この点に関しては、心拍サイクルの平均抵抗の固定パーセントが、幾つかの実施形態においては、75%未満、50%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、及び5%未満である。
【0033】
従って、本開示の幾つかの実施形態においては、セクション212に合致する心拍サイクルの部分が、充血剤や患者の心臓への他のストレスの使用をなしで患者の管の狭窄の評価のための診断窓として利用される。特には、狭窄に亘る圧力比(近位圧力により除算された遠位圧力)が、1以上の心拍のためにセクション212に対応する時間範囲で計算される。計算された圧力比が、幾つかの場合においては、セクション212により規定された診断窓に亘る平均値である。計算された圧力比を閾値又は所定値と比較することにより、医師又は他の治療医務人員が、もしあれば、治療が施されるべきであると決定できる。この点に関しては、幾つかの場合においては、計算された圧力が閾値(例えば、0.00〜1.00のスケール上で0.80)を超えるならば、第1治療モード(例えば、治療なし、ドラッグ療法等)が示唆され、他方、計算された圧力比が閾値未満であれば、第2のより侵害の治療モード(例えば、管形成、ステント等)が示唆される。幾つかの場合においては、閾値が固定、プリセット値である。他の場合においては、閾値が特定の患者及び/又は患者の特定の狭窄のために選択される。この点に関しては、特定の患者のための閾値が、1以上の経験的なデータ、患者の特徴、患者経歴、医師の好み、入手可能な治療オプション、及び/又は他のパラメーターに基づく。
【0034】
幾つかの場合においては、セクション212が、1以上の機器を用いて管内の圧力及び流体の流速をモニターし、また測定した圧力及び速度に基づいて管内の抵抗を計算することにより識別される。例えば、図3の実施形態を再度参照すると、幾つかの場合においては、機器130が、少なくとも圧力及び流速をモニターするべく構成された1以上の検出素子を含み、他方、機器132が、少なくとも圧力をモニターするべく構成された1以上の検出素子を含む。従って、狭窄の遠位に配置された機器130の1以上の検出素子及び狭窄の近位に配置された機器132の1以上の検出素子で、機器130により取得された圧力及び流速値が、セクション212の識別のために利用される。セクション212の識別に基づいて、次に、対応の遠位圧力測定値(機器130の1以上の検出素子により取得される)が、近位圧力測定値(機器132の1以上の検出素子により取得される)と比較され、セクション212により規定された診断窓の間で狭窄に亘る圧力比を計算する。圧力及び流速値に基づいて管を評価する追加例が、2010年3月10日出願の英国特許出願No.1003964.2、タイトル「管内の流体の流れの制限の測定のための方法及び機器」に説明され、これがその全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
他の場合においては、セクション212が、流体速度にモニタリングを行うことなく識別される。この点に関しては、充血剤の不使用でも狭窄に亘る圧力比に基づいて管の狭窄を評価する使用に適切な診断窓の識別のための幾つかの手法が以下に説明される。幾つかの場合においては、診断窓が、管内に配置された機器により取得された圧力測定値の特徴のみに基づいて識別される。従って、そのような場合においては、使用される機器が、管内の圧力をモニターするべく構成された部品のみを有する必要があり、コストの低減及びシステムの単純化に帰結する。圧力測定値に基づいて管を強化する例示の手法が、2011年1月6日に出願の英国特許出願No.1100137.7、タイトル「流体で充填されたチューブの狭化を評価する機器及び方法」に説明され、これがその全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
一般的には、本開示に係る充血剤の不使用での狭窄に亘る差分の圧力の評価のための診断窓が、近位圧力測定値、遠位圧力測定値、近位速度測定値、遠位速度測定値、ECG波形、及び/又は他の識別可能及び/又は測定可能な管特性の態様の1以上の特徴及び/又は要素に基づいて識別される。この点に関しては、様々な信号処理及び/又はコンピューター技術が、適切な診断窓を識別するため、近位圧力測定値、遠位圧力測定値、近位速度測定値、遠位速度測定値、ECG波形、及び/又は他の識別可能及び/又は測定可能な管特性の態様の1以上の特徴及び/又は要素に適用可能である。
【0037】
幾つかの実施形態においては、診断窓の決定及び/又は圧力差の計算が、およそリアルタイム又はライブで実行され、セクション212を識別し、また圧力比を計算する。この点に関しては、本開示の内容の範囲内では「リアルタイム」又は「ライブ」での圧力比の計算が、データ取得の10秒内で発生する計算を包含するものと理解される。しかしながら、たびたび、「リアルタイム」又は「ライブ」計算が、データ取得の1秒内で行われるものと理解される。幾つかの場合においては、「リアルタイム」又は「ライブ」計算が、データ取得と同時に行われる。幾つかの場合においては、計算が、データ取得の間の遅滞においてはプロセッサにより実行される。例えば、もしデータが5ms毎1msで圧力検出装置から取得されるならば、データ取得の間の4msにおいてプロセッサが計算を行うことができる。これらのタイミングは単なる例示であり、データ取得速度、処理回数、及び/又は計算に関する他のパラメーターが変更するものと理解される。他の実施形態においては、圧力比の計算が、データ取得の後、10秒以上で実行される。例えば、幾つかの実施形態においては、診断窓の識別及び/又は圧力比の計算のために用いられるデータが、後の分析のために記憶される。
【0038】
ここで図9乃至11を参照すると、本開示の別の実施形態の側面を示す診断情報のグラフ表示が図示される。この点に関しては、図9は、管内で測定された圧力及び速度のグラフ表示である;図10は、図9の測定された速度の差分のグラフ表示である;及び図11は、本開示の実施形態に係る診断窓の識別のために注釈された管内で測定された圧力及び速度のグラフ表示である。
【0039】
図9をより詳細に参照すると、グラフ表示220が、一の心周期の時間範囲に亘る管内の圧力(mmHgで測定される)を代表するプロット222及び同じ心周期に亘る管内の流体の速度(m/sで測定される)を代表するプロット224を含む。図10は、同様に、図9のグラフ表示220の速度プロット224の差分のグラフ表示230である。この点に関しては、幾つかの場合においては、速度(dU)の差分又は変化の速度が、次のように計算される。
【数1】
xが時間xでの速度であり、Uyが時間yでの速度であり、またtが、Ux及びUyの間の所用時間である。幾つかの場合においては、不定のtが、システムの速度測定値のサンプル速度に等しく、全データポイントに対して差分が計算される。他の場合においては、不定のtが、システムの速度測定値のサンプル速度よりも長く、取得したデータポイントのサブセットのみが利用される。
【0040】
図10に示すように、約625msから約1000msに亘る時間範囲232においては、速度プロット224の差分が、約ゼロで相対的に安定である。換言すれば、管内の流体の速度及び/又は管抵抗が、時間範囲232にて相対的に一定である。幾つかの場合においては、速度が、−0.01及び+0.01の間で変動するときに安定であると理解され、また幾つかの特定の場合においては、約−0.005と約+0.005の間で変動するときに安定であると理解される。しかしながら、他の場合においては、速度が、これらの範囲の外の値で安定であると理解される。同様に、約200msから約350msに亘る時間範囲234においては、速度プロット224の差分が、時間範囲234にても約ゼロで相対的に安定であり、管内の流体の速度が実質的に一定であることを意味する。しかしながら、心臓弁膜疾患、心室内での同期不全(dyssynchrony)、部分的な心筋の収縮差、微小循環系疾患の全てが時間範囲234のタイミングの大きな変動につながるため、時間範囲234が、非常に不定になり得る、以下で説明のように、本開示の幾つかの実施形態においては、時間範囲232及び/又は234の全部又は一部が、狭窄に亘る圧力比の評価のための診断窓として用いられる。この点に関しては、診断窓が、速度(つまり、dU)の変化が約ゼロで振幅する時間範囲に対応する心周期の部分を識別することにより選択される。図11は、図10の時間範囲232に対応する診断窓236の識別のために参酌された図9のグラフ表示220を示す。他の場合においては、診断窓は、速度(つまり、dU)の変化が心周期の過程で速度(つまり、dUmax)の最大変化と比較して相対的に小さい期間に対応する心周期の部分を識別することにより選択される。図10に図示の実施形態においては、速度の最大変化(つまり、dUmax)がポイント235で発生する。幾つかの場合においては、診断窓は、速度(つまり、dU)の変化が心周期の速度の最大変化(つまり、dUmax)の25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、及び/又は5%未満の心周期の部分(群)の識別により選択される。
【0041】
速度変化が相対的に一定であり、平均、最小閾値オフセットからの変動又は標準偏差又は他のものといった約ゼロである時間範囲232、時間範囲234、及び/又は他の時間範囲の識別のために利用できる様々な信号処理技術がある。更には、速度測定の差分を用いて時間範囲232及び234が識別されたが、他の場合においては、速度測定の第1、第2、及び/又は第3微分係数が利用される。例えば、速度の第1微分係数が相対的に一定であり、約ゼロである心周期の間での時間範囲の識別により、速度が相対的に一定である時間範囲の位置確認が許容される。更には、速度の第2微分係数が相対的に一定であり、また約ゼロである心周期過程での時間範囲の識別により、加速度が相対的に一定であり、また約ゼロ(必ずしもゼロである必要はない)である時間範囲の位置確認が許容される。
【0042】
速度の変化が相対的に一定であり、また約ゼロである(つまり、流体の流れのスピードが安定である)時間範囲232、234、及び/又は他の時間範囲は、本開示に係る充血剤の不使用での管の狭窄に亘る圧力差の評価のために適切な診断窓である。この点に関しては、流体の流れのシステムで、別々の前及び後方の圧力が、次のように定義される:
【数2】
及び
【数3】
ここで、dPが、圧力の差分であり、ρが、管内での流体の密度であり、cが、波速度であり、及びdUが流速の差分である。しかしながら、流体の流速が実質的に一定である場合、dUが約ゼロであり、別々の前及び後方の圧力が、次のように定義される:
【数4】
及び
【数5】
【0043】
換言すれば、dUが約ゼロである時間範囲の間、前及び後方の圧力が、単に圧力の変化により規定される。従って、そのような時間範囲において、管の狭窄の重大性が、狭窄の近位及び遠位で取られた圧力測定値に基づいて評価される。この点に関しては、前及び/又は後方の狭窄の近位の圧力に対する前及び/又は後方の狭窄の遠位の圧力の比較により、狭窄の重大性の評価が可能である。例えば、前方の圧力差が、
【数6】
のように計算可能であり、他方、後方の圧力差が、
【数7】
として計算可能である。
【0044】
冠状動脈との関連においては、幾つかの場合においては、前方の圧力差が狭窄の評価に用いられる。この点に関しては、幾つかの場合においては、前方の圧力差が、近位に由来する(つまり、大動脈から由来する)別々の前方の圧力波及び/又は大動脈の遠位の導管構造からの近位に由来する別々の前方の圧力波の反射に基づいて計算される。他の場合においては、後方の圧力差が、冠状動脈との関係において狭窄の評価のために用いられる。この点に関しては、後方の圧力差が、遠位に由来する(つまり、微小循環系から由来する)別々の後方の圧力波及び/又は微小循環系の近位の管構造からの遠位に由来する別々の後方の圧力波の反射に基づいて計算される。
【0045】
また別の場合においては、圧力波が、機器又は医療装置により管内に導入される。この点に関しては、機器又は医療装置が、狭窄の重大性の評価のために用いられる近位由来の前側圧力波、遠位由来の後ろ側の圧力波、及び/又はこれらの組み合わせの生成のために利用される。例えば、幾つかの実施形態においては、変位可能な膜を有する機器が、管内に配置される。次に、機器の変位可能な膜が作動され、膜の移動が生じて管の流体に対応の圧力波を生じさせる。機器の構成、管内の膜の位置、及び/又は管内の膜の配向に基づいて、生成された圧力波(群)が、遠位、近位、及び/又は両方に向けられる。次に、生じた圧力波(群)に基づく圧力測定値が分析されて狭窄の重大性が決定される。
【0046】
ここで図12乃至15を参照すると、本開示の別の実施形態の側面を図示する診断情報のグラフ表示が図示される。この点に関しては、図12が、管内の波形強度のグラフ表示である;図13が、図12の波形強度に対応する管内の近位及び遠位起因圧力波形のグラフ表示である;図14が、図12の波形強度及び図13の近位及び遠位起因圧力波形に対応する管内の圧力及び速度のグラフ表示である;及び図15が、図12の波形強度、図13の近位及び遠位起因圧力波形、及び図14の圧力及び速度に対応する管内の抵抗のグラフ表示である。
【0047】
図12をより詳細に参照すると、ある期間に亘る心周期の近位及び遠位に由来の波に関連する強度をプロットしたグラフ表示240が図示される。この点に関しては、プロット242が、近位に由来の波を示し、他方、プロット244が、遠位に由来の波を示す。開示のように、6つの優位の波形が患者の心周期に関連する。心周期の過程での発生の順で、波形246が、後方に伝搬する押圧波であり、波形248が、優勢の前方に伝搬する押圧波であり、波形250が、後方に伝搬する押圧波であり、波形252が、前方に伝搬する吸引波であり、波形254が、優勢な後方へ伝搬する吸引波であり、波形256が、前方へ伝搬する押圧波である。注目すべきは、心周期の後半の時間範囲258では何ら波形が生成されていない。幾つかの場合においては、時間範囲258が、心周期の波形無し期間として言及される。冠状動脈との関係において、圧力波に関する追加の詳細が、「左側心室肥大で弱められるヒトにおける心拡張の冠状動脈の栓につながる優位な後方伝搬「吸引」波の証拠」、Davies 等(Circulation.2006;113:1768−1778)に見ることができ、これがその全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
ここで図13を参照すると、心周期に関連の時間範囲に亘る管内の近位及び遠位起因圧力波形のグラフ表示260が図示される。この点に関しては、図13の圧力波が、図12の波強度に対応する。開示のように、グラフ表示260が、近位由来の圧力を示すプロット262、遠位由来の圧力を示すプロット264、及び全圧力(近位由来の圧力+遠位由来の圧力)を示すプロット265を含む。
【0049】
ここで図14を参照すると、ある期間に亘る管内の圧力(mmHgで測定)を示すプロット272及びある期間に亘る管内の流体の速度(cm/sで測定)を示すプロット274を含むグラフ表示270が示される。この点に関しては、図14の圧力及び速度プロット272、274が、各々、図12及び13の波強度及び圧力波に対応する。開示のように、約475msから約675msに亘る波無し時間範囲258にとっては、圧力プロット272及び速度プロット274のスロープが、相対的に一定である。この時点では、図15に示すように、管内の抵抗が、相対的に一定であり、時間範囲258の間に減じられる。この点に関しては、図15のグラフ表示280が、心周期のある時間に亘る管内の抵抗のプロット282を含む。この点に関しては、グラフ表示280の抵抗値は、抵抗が心周期に沿う時間の特定のポイントで速度で除算した圧力に等しい、図14の圧力及び速度測定値を用いて計算される。時間範囲258の間の減じられた相対的に一定の抵抗のために、本開示の幾つかの実施形態においては、時間範囲258の全又は一部が、狭窄に亘る圧力差の評価のための診断窓としての使用に適切である。この点に関しては、幾つかの実施形態においては診断窓が、心周期の最後の僅か前に経過する後方伝搬吸引波形の終端の波形無し期間に対応する最小抵抗の期間である。
【0050】
ここで図16〜26を参照すると、本開示に係る診断窓のための開始及び/又は終了時点のための手法の様々なグラフ表示が図示される。この点に関しては、図16〜18は、概して、近位圧力測定値に基づく診断窓の始点の識別を図示する;図19〜22は、概して、遠位圧力測定値に基づく診断窓の始点の識別を図示する;図23は、診断窓の始点に基づく診断窓の終点の識別を図示する;図24は、近位圧力測定値に基づく診断窓の終点の識別を図示する;及び図25及び26は、遠位圧力測定値に基づく診断窓の終点の識別を図示する。
【0051】
図16に示すように、グラフ表示300が、近位圧力記録302及び遠位圧力記録304を含み、各々が、心周期に対する期間に亘りプロットされる。この点に関しては、近位圧力記録302が、管の狭窄の近位の圧力を示す。幾つかの場合においては、近位圧力記録302が、(例えば、前で生じた又は後で生じた)部分圧に基づく。同様に、遠位圧力記録304が、狭窄の遠位の圧力を示す。遠位圧力記録304が、幾つかの場合においては、(例えば、前で生じた又は後で生じた)部分圧に基づく。
【0052】
簡潔及び一貫性のため、図16の近位及び遠位圧力記録302及び304が、図17乃至28に関連の手法の説明にも同様に利用される。しかしながら、全ての開示の手法に関して近位及び遠位圧力記録302及び304が例示であり、如何なる方法においても限定と理解されるべきではない。この点に関しては、圧力記録が、患者間で、また同一の患者の心周期の間においてさえも変更するものと理解される。従って、これらの圧力記録に基づく診断窓の識別のための本明細書に記述の手法が、多様な圧力記録プロットの使用に適切であるものと理解される。更には、幾つかの場合においては、以下で説明の手法が、複数の心周期に亘り計算又は決定されるものと理解される。例えば、幾つかの実施形態においては、複数の心周期に亘り計算し、また平均値を計算し、複数の心周期に共通の重複領域を識別し、及び/又は他の方法で診断窓のための適切な時間範囲を識別することにより診断窓が識別される。また更には、以下で説明の2以上の手法が一緒に用いられ、始点、終点、及び/又は診断窓の他の側面を識別する。
【0053】
図16〜18を参照すると、近位圧力測定値に基づく診断窓の始点の識別のための幾つかの手法が図示される。より詳細に図16を参照すると、幾つかの場合においては、診断窓の始点が、重拍ノッチの識別及び固定量の時間の追加により決定される。図16に示すように、重拍ノッチ306が識別され、固定時間範囲308が追加され、診断窓の始点310が決定される。幾つかの場合においては、固定時間範囲308が、約1msと約500msの間である。幾つかの特定の場合においては、時間範囲308が、約25msと約150msの間である。他の場合においては、心拡張の開始に加えられる時間量が、心周期のパーセント又は心拡張の長さのパーセントに基づいて選択される。例えば、幾つかの場合においては、加えられる時間量が、心周期の長さの約0%と約70%の間である。また他の場合、重拍ノッチに時間が加えられず、重拍ノッチ306が始点310になる。
【0054】
別の実施形態においては、心拡張の開始が、近位圧力測定値に基づいて識別され、また固定時間範囲が加えられて診断窓の始点が決定される。固定時間範囲が、約1msと約500msの間である。幾つかの特定の実施形態においては、固定時間範囲が、心拡張の開始と診断窓の開始の間であり、約25msと約200msの間である。他の場合においては、心拡張の開始に加えられる時間量が、心周期のパーセント又は心拡張の長さのパーセントに基づいて選択される。例えば、幾つかの場合においては、心拡張の開始に加えられる時間が、心周期の約0%と約70%の間である。他の場合においては、心拡張の開始に加えられる時間が、心周期の心拡張部分の全長の約0%と約100%の間である。幾つかの場合においては、心拡張の開始に加えられる時間が、心周期の心拡張部分の全長の約2%と約75%の間である。また他の場合、心拡張の開始に時間が加えられず、心拡張の開始が診断窓の始点でもある。
【0055】
ここで図17を参照すると、幾つかの場合においては、診断窓の始点が、ピーク近位圧力を識別して固定量の時間を追加することにより決定される。図17のグラフ表示312に示すように、ピーク圧力314が識別されており、また固定時間範囲316が加えられており、診断窓の始点318が決定される。固定時間範囲316が、幾つかの場合においては、約1msと約550msの間である。幾つかの場合においては、固定時間範囲316が、約25msと約175msの間である。他の場合においては、ピーク近位圧力に加えられる時間量が、心周期のパーセント又は心拡張の長さのパーセントに基づいて選択される。例えば、幾つかの場合においては、加えられる時間量が、心周期の長さの約0%と約70%の間である。また他の場合においては、ピーク近位圧力に時間が加えられず、ピーク圧力314が始点318である。
【0056】
ここで図18を参照すると、幾つかの場合においては、診断窓の始点が、心周期の開始を識別し、また固定量の時間を加えることにより決定される。図18のグラフ表示320に示すように、心周期の開始322が識別されており、また固定時間範囲324が加えられ、診断窓の始点326が決定される。固定時間範囲324が、幾つかの場合においては、約150msと約900msの間である。幾つかの場合においては、固定時間範囲324が、約300msと約600msの間である。幾つかの特定の実施形態においては、固定時間範囲324が、患者の心周期の長さ328のパーセントとして計算される。図18に示すように、心周期の長さ328が、開始322と終了330の間に亘るように、心周期の終点330が識別される。幾つかの場合においては、始点356の計算のために用いられる心周期の長さ328のパーセントが、約25%と約95%の間である。幾つかの場合においては、心周期の長さ328のパーセントが、約40%と約75%の間である。また他の場合、心周期の開始に時間が加えられず、心周期322の開始が始点326である。
【0057】
ここで図19乃至22を参照すると、遠位圧力測定値に基づいて診断窓の始点を識別するための幾つかの手法が図示される。より詳細に図19を参照すると、幾つかの場合においては、診断窓の始点が、重拍ノッチを識別し、また固定量の時間を追加することにより決定される。図19のグラフ表示332に示すように、重拍ノッチ334が識別され、また固定時間範囲336が追加され、診断窓の始点338が決定される。幾つかの場合においては、固定時間範囲336が、約1msと約500msの間である。幾つかの場合においては、固定時間範囲336が、約25msと約150msの間である。他の場合においては、ピーク圧力339が、遠位圧力測定値に基づいて識別され、また固定時間範囲が加えられて診断窓の始点を決定する。ピーク圧力に対する固定時間範囲が、幾つかの場合においては、約1msと約550msの間である。幾つかの場合においては、固定時間範囲が、約25msと約175msの間である。また他の場合においては、重拍ノッチに時間が加えられず、重拍ノッチ334が、始点338である。
【0058】
別の実施形態においては、心拡張の開始が、遠位圧力測定値に基づいて識別され、また固定時間範囲が加えられ、診断窓の始点が決定される。固定時間範囲が、約1msと約500msの間である。幾つかの特定の実施形態においては、心拡張の開始と診断窓の開始の間の固定時間範囲が、約25msと約200msの間である。他の場合においては、心拡張の開始に追加される時間量が、心周期のパーセント又は心拡張の長さのパーセントに基づいて選択される。例えば、幾つかの場合においては、心拡張の開始に加えられる時間が、心周期の約0%と約70%の間である。他の場合においては、心拡張の開始に追加される時間が、心周期の心拡張部分の全長の約0%と約100%の間である。幾つかの場合においては、心拡張の開始に追加される時間が、心周期の心拡張部分の全長の約2%と約75%の間である。また他の場合においては、心拡張の開始に時間が追加されず、心拡張の開始が、診断窓の始点である。
【0059】
ここで図20を参照すると、幾つかの場合においては、診断窓の始点が、圧力の最大変化を識別し、また固定量の時間を追加することにより決定される。幾つかの特定の場合においては、ピーク遠位圧力後の圧力の最大変化が、そこから固定量の時間が加えられる基準点として利用される。図20のグラフ表示340に示すように、ピーク圧力342の後、圧力の最大変化(つまり、dP/dt)を有する点が、ポイント344により識別される。固定時間範囲346がポイント344に加えられ、診断窓の始点348が決定される。固定時間範囲346が、幾つかの場合においては約1msと約500msの間である。幾つかの場合においては、固定時間範囲346が、約25msと約150msの間である。幾つかの特定の実施形態においては、固定時間範囲346が、患者の心周期の長さのパーセントとして計算される。始点348の計算に用いられる心周期の長さのパーセントが、幾つかの場合においては、約0%と約70%の間である。また他の場合、圧力の最大変化を示すポイント344に時間が追加されず、ポイント344が、始点348である。
【0060】
ここで図21を参照すると、幾つかの場合においては、診断窓の始点が、心周期の開始を識別し、また固定量の時間を追加することによりにより決定される。図21のグラフ表示350に示すように、心周期の開始352が識別され、また固定時間範囲354が加えられ、診断窓の始点356が決定される。固定時間範囲354が、幾つかの場合においては約150msと約900msの間である。幾つかの場合においては、固定時間範囲354が、約300msと約600msの間である。幾つかの特定の実施形態においては、固定時間範囲354が、患者の心周期の長さ358のパーセントとして計算される。図21に示すように、心周期の長さ358が開始352と終わり360の間に亘るように、心周期の終わり360が識別される。始点356の計算のために利用される心周期の長さ358のパーセントが、幾つかの場合においては、約25%と約95%の間である。幾つかの特定の場合においては、心周期の長さ358のパーセントが、約40%と約75%の間である。また他の場合においては、心周期の開始に時間が加えられず、心周期352の開始が始点356である。
【0061】
ここで図22を参照すると、幾つかの場合においては、診断窓の始点が、心室化点を識別することにより決定される。図22のグラフ表示362に示すように、心周期の心室化点364が識別される。幾つかの場合においては、心室化点364が、遠位圧力記録のスロープにおける変化に基づいて識別される。図示の実施形態においては、診断窓の始点366が、実質的に心室化点364に合致する。他の場合においては、始点366が、心室化点の前又は後の固定量の時間にセットされる。この点に関しては、固定時間範囲が、幾つかの場合においては約−250msと約400msの間である。幾つかの場合においては、固定時間範囲が、約−50msと約100msの間である。
【0062】
ここで図23を参照すると、診断窓の始点372に基づいて診断窓の終点を識別するための手法を図示するグラフ表示370が図示される。開示のように、診断窓が、固定量の時間376だけ始点372から離間した終点374を有する。固定時間範囲376が、幾つかの場合においては、約1msと約700msの間である。幾つかの場合においては、固定時間範囲376が、約200msと約500msの間である。幾つかの特定の実施形態においては、固定時間範囲376が、患者の心周期の長さのパーセントとして計算される。時間範囲376を計算するために用いられる心周期の長さのパーセントが、幾つかの場合においては、約0%と約70%の間である。幾つかの場合においては、心周期の長さのパーセントが、約25%と約50%の間である。他の場合においては、診断窓が、心周期の特定のポイントであり、時間376が、ゼロである。この点に関しては、診断窓の始点及び/又は終点を識別するために説明された手法が、圧力差の評価のために心周期のそのような診断ポイントの識別に適切である。幾つかの場合においては、単一心周期の診断窓が、単一心周期に沿う複数の固有の診断ポイントから構成される。
【0063】
ここで図24を参照すると、近位圧力測定値に応じた心周期の終わりの識別に基づいて診断窓の終点を識別するための手法を図示するグラフ表示380が図示され、幾つかの場合においては大動脈圧力測定値であり、固定量の時間を減算する。開示のように、心周期の終わり382が識別され、また固定時間範囲384が減じられ、診断窓の終点386が決定される。固定時間範囲384が、幾つかの場合においては、約1msと約600msの間である。幾つかの特定の実施形態においては、固定時間範囲384が、患者の心周期の長さのパーセントとして計算される。時間範囲384を計算するために用いられる心周期の長さのパーセントが、幾つかの場合においては、約0%と約70%の間である。幾つかの場合においては、心周期の長さのパーセントが、約1%と約25%の間である。また他の場合においては、心周期の終わりから時間が減算されず、心周期382の終わりが、終点386である。
【0064】
ここで図25及び26を参照すると、遠位圧力測定値に基づいて診断窓の終点を識別するための手法が図示される。図25をより詳細に参照すると、遠位圧力測定値に応じて心周期の終わりを識別し、また固定量の時間を減算することに基づいて診断窓の終点を識別するための手法を図示するグラフ表示390が図示される。開示のように、周期の終わり392が識別され、また固定時間範囲394が減じられ、診断窓の終点396が決定される。固定時間範囲394が、約1msと約600msの間である。幾つかの場合においては、固定時間範囲394が、約5msと約100msの間である。幾つかの特定の実施形態においては、固定時間範囲394が、患者の心周期の長さのパーセントとして計算される。時間範囲394を計算するために用いられる心周期の長さのパーセントが、約0%と約70%の間である。幾つかの場合においては、心周期の長さのパーセントが、約1%と約25%の間である。また他の場合においては、前記心周期の終わりから時間が減算されず、心周期392の終わりが、終点396である。
【0065】
図26を参照すると、遠位圧力測定値の心室化点の識別に基づいて診断窓の終わりを識別するための手法を図示するグラフ表示400が図示される。開示のように、心周期の心室化点402が識別される。幾つかの場合においては、心室化点402が、遠位圧力記録のスロープの変化に基づいて識別される。図示の実施形態においては、診断窓の終点404が、実質的に心室化点402に合致する。他の場合においては、終点404が、心室化点の前又は後で固定量の時間にセットされる。この点に関しては、固定時間範囲が、約−200msと約450msの間である。幾つかの場合においては、固定時間範囲が、約−50msと約100msの間である。
【0066】
ここで図27及び28を参照すると、近位及び遠位圧力測定値に対する例示の診断窓のグラフ表示が図示される。この点に関しては、図27が、心室化の直後に開始する診断窓を図示し、他方、図28が、心室化の前に始まる診断窓を図示する。図27をより詳細に参照すると、グラフ表示410が、始点414及び終点416を含む診断窓412を示す。幾つかの場合においては、始点414が、診断窓の始点を識別するために上述した1以上の手法を用いて選択される。同様に、幾つかの場合においては、終点416が、診断窓の終点を識別するために上述した1以上の手法を用いて選択される。開示のように、診断窓412が、遠位圧力記録304の心室化点の後に始まり、また心周期の終わりの前に終わる。
【0067】
ここで図28を参照すると、グラフ表示420が、始点424及び終点426を含む診断窓422を示す。幾つかの場合においては、始点424が、診断窓の始点を識別するために上述した1以上の手法を用いて選択される。同様に、幾つかの場合においては、終点426が、診断窓の終点を識別するために上述した1以上の手法を用いて選択される。開示のように、診断窓422が前記遠位圧力記録304の心室化点の前に始まり、また心周期の終わりの前に終わり、心室化点が診断窓422内に含まれる。
【0068】
ここで図29を参照すると、本開示の実施形態に係る例示の診断窓により注釈されたECG信号のグラフ表示が図示される。概して、ECG信号の少なくとも一つの識別可能な特徴(限定の意図を有することなく、P波の開始、P波のピーク、P波の終わり、PRインターバル、PRセグメント、QRSコンプレックスの開始、R波の開始、R波のピーク、R波の終わり、QRSコンプレックスの終わり(J−ポイント)、STセグメント、T波の開始、T波のピーク、及びT波の終わりが含まれる)が、診断窓のその始点及び/又は終点の選択に用いられる。例えば、幾つかの場合においては、診断窓が、T波の減少を始点とし、またR波の開始を終点として用いて識別される。幾つかの場合においては、診断窓の始点及び/又は終点が、固定量の時間をECG信号の識別可能な特徴に追加することにより決定される。この点に関しては、幾つかの場合においては、規定時間の範囲が心周期のパーセントである。
【0069】
ここで図30を参照すると、一連の患者の心周期に亘る近位圧力452及び遠位圧力454のグラフ表示450が図示される。この点に関しては、心周期462において始点458及び終点460を含む診断窓456が識別される。診断窓456が、始点458及び終点460により規定される。図示の実施形態においては、始点458が、圧力の最大の減少の後、心周期462の全心拡張時間の固定パーセントに位置づけられるように選択される。幾つかの場合においては、始点458を決定するために最大圧力低下点に加えられる全心拡張時間の固定パーセントが、約10%と約60%の間であり、幾つかの特定の実施形態では約20%と約30%の間のパーセントを有し、またある特定の実施形態では約25%のパーセントを有する。終点560が、心周期462の心拡張の開始から全心拡張時間又は診断窓の固定パーセントに位置づけられるように選択される。幾つかの場合においては、終点460の決定のために心拡張の開始に加えられる全心拡張時間の固定パーセントが、約40%と約90%の間であり、幾つかの特定の実施形態では、約60%と約80%の間のパーセントを有し、またある特定の実施形態では約70%のパーセントを有する。他の実施形態においては、終点560が、心周期462の心拡張の終わりから全心拡張時間又は診断窓の固定パーセントに位置づけられるように選択される。幾つかの場合においては、終点460を決定するために心拡張の終わりから減じられる全心拡張時間の固定パーセントが、約10%と約60%の間であり、幾つかの特定の実施形では約20%と約40%の間であり、またある特定の実施形態では約30%のパーセントを有する。従って、図示の実施形態においては、始点458及び終点460の両方が、心周期462の心拡張の比率に基づいて選択される。結果として、複数の心周期のためのそのような手法を用いて規定された診断窓が、心周期間で変動する。なぜなら、心拡張の長さが心周期間で変動するためである。図30に示すように、心周期462に続く心周期472にて始点468及び終点470を含む診断窓466が識別される。結果として、幾つかの場合においては、心周期462及び心周期472間の心拡張の長さの差異のために、診断窓466が、診断窓456よりも長く、若しくは短い。
【0070】
適切な診断窓を選択するための特定の手法の例を上述したが、これらが例示であり、他の手法が利用できるものと理解される。この点に関しては、診断窓が、次から選択される1以上の手法を用いて決定されるものと理解される:波形の特徴又は他のデータ特徴を識別し、また識別された特徴に対して始点を(例えば、特徴の前、後、又は同時に)選択する;波形の特徴又は他のデータ特徴を識別し、また識別された特徴に対して終点を(例えば、特徴の前、後、又は同時に)選択する;波形の特徴又は他のデータ特徴を識別し、また識別された特徴に対して始点及び終点を選択する;始点を識別し、また始点に基づいて終点を識別する;及び終点を識別し、また終点に基づいて始点を識別する。更には、幾つかの実施形態においては、近位及び遠位圧力測定値の各々に対して、分離した及び/又は異なる診断窓が選択され、利用されるものと理解される。従って、幾つかの場合においては、近位圧力測定値の診断窓が、遠位圧力測定値の診断窓とは異なる始点、終点、及び/又は持続期間を有する。
【0071】
幾つかの場合においては、最大診断窓の始点及び/又は終点が(例えば、上述した1以上の手法を用いて)識別され、次にその最大診断窓の部分が、狭窄に亘る圧力差の評価のための使用に選択される。例えば、幾つかの実施形態においては、使用のために選択された部分が、最大診断窓のパーセントである。幾つかの特定の実施形態においては、部分が、最大診断窓の約5%と約99%の間である。更には、幾つかの場合においては、使用のために選択された部分が、最大診断窓の中央部分である。例えば、もし最大診断窓が心周期の500msから900msに亘ると見いだされ、最大診断窓の50%を備える中央部分が選択部分として利用されるとき、選択部分が心周期の600msから800msの時間に対応するだろう。他の場合においては、使用のために選択された部分が、最大診断窓の非中央部分である。例えば、もし最大診断窓が心周期の500msから900msに亘ると見いだされ、最大ウィンドウの中間ポイントから等しく離間した最大診断窓の25%を含む非中央部分及び最大ウィンドウの終点が選択部分として利用されるならば、選択部分が、心周期の700msから800msの時間に対応するだろう。幾つかの場合においては、診断窓が、各心周期のために選択され、診断窓の場所及び/又はサイズが、サイクル間で変動する。この点に関しては、心周期の間で診断窓の開始、終わり、及び/又は持続期間を選択するために用いられるパラメーター(群)の変動に起因し、幾つかの場合においては、診断窓に対応の相違が生じる。
【0072】
ここで図31及び32を参照すると、本開示の実施形態に係る狭窄に亘る圧力比を計算するための態様が図示される。この点に関しては、図31が、近位及び遠位圧力測定値に対する診断窓を図示し、他方、図32が、近位圧力測定値に対する遠位圧力測定値の一時的な調整を図示する。
【0073】
ここで図31をより詳細に参照すると、患者の心周期に亘る近位圧力502及び遠位圧力504のグラフ表示500が図示される。この点に関しては、始点508及び終点510を含む診断窓506が識別される。診断窓506が、充血剤の不使用の管の狭窄の重大性の評価のために適切である。この点に関しては、診断窓506、始点508、及び/又は終点510が、幾つかの場合においては、上述の1以上の手法を用いて計算される。開示のように、近位圧力502が、診断窓506に合致する部分512を含む。遠位圧力504が、診断窓506に合致する部分514を含む。
【0074】
ここで図32を参照すると、様々な理由から、幾つかの場合においては、近位圧力502及び遠位圧力504が時間的に整列(アライメント)されていない。例えば、測定値を得るために用いられる機器(群)の間の差異に対処するハードウェア信号に起因して、データ取得の間、遠位圧力測定値信号及び近位圧力測定値信号の間には遅延が度々生じる。この点に関しては、差異が、物理的ソース(例えば、ケーブル長さ及び/又は変動する電子機器)から起因し、及び/又は信号処理(例えば、フィルタリング技術)の相違に起因し得る。幾つかの実施形態においては、近位圧力測定値信号が、血流力学モニタリングシステムにより取得され、またそれを介して伝送され、また、処理ハードウェア又は計算装置により直接的に送信される遠位圧力測定値信号と比較して、処理ハードウェア又は計算装置に伝達するのに相当に長い時間がかかりうる。結果として生じる遅延が、幾つかの場合においては、約5msと約150msの間である。個別の心周期が、約500msと約1000msの間持続し、また診断窓が心周期の全長の僅かなパーセントであり得るため、近位及び遠位圧力測定値信号の間の長い遅延が、所望の心周期の診断窓のために圧力差を計算するための圧力データの整列に顕著な影響を有し得る。
【0075】
結果として、幾つかの場合においては、圧力測定値を時間的に整列させるために、近位及び遠位圧力の一方を遠位及び近位圧力の他方に対してシフトすることが必要である。図32の図示の実施形態においては、遠位圧力504の部分が、診断窓506に合致する近位圧力502の部分512に時間的に整列するようにシフトされている。この点に関しては、矢印518により示唆されるように、遠位圧力504の部分516がシフトされており、近位圧力502の部分512に整列される。図32が、遠位圧力504の部分のみの近位圧力との整列へのシフトを図示するが、他の実施形態においては、選択された診断窓に対応する部分が識別される前、全部又は実質的に全部の近位及び遠位圧力が整列される。
【0076】
近位及び遠位圧力の全部又は部分(群)の整列が、幾つかの場合においては、ハードウェアアプローチを用いて達成される。例えば、1以上のハードウェア部品が、近位圧力測定値、遠位圧力測定値、及び/又は両方の通信路内に配置され、任意の必要な遅延を提供し、受信した圧力信号を時間的に整列させる。他の場合においては、近位及び遠位圧力の全部又は部分(群)の整列が、ソフトウェアアプローチを用いて達成される。例えば、幾つかの実施形態においては、相互相関関数又はマッチング技術が、心周期の整列のために用いられる。他の実施形態においては、整列が、特定の識別可能な心周期の特徴、例えば、ECG R波又は圧力ピークに基づく。加えて、幾つかの実施形態においては、整列がソフトウェアユーザーにより実行され、ここでは、ユーザーに心周期が視覚的に整列されるまで近位及び遠位圧力の少なくとも一つの遅延時間に対して調整が為される。更には、信号の整列の技術が、信号取得のポイントで同期したタイムスタンプを付与する。更には、幾つかの場合においては、1以上のハードウェア、ソフトウェア、ユーザー、及び/又は時間−スタンプアプローチの1以上の組み合わせが信号の整列に用いられる。
【0077】
実施の態様に関わらず、近位及び遠位圧力測定値信号の整列のために幾つかのアプローチが利用可能である。幾つかの場合においては、各個別の遠位圧力測定値の心周期が、個別にシフトされて対応の近位圧力測定値の心周期に適合する。他の場合においては、特定の手順のために平均シフトが手順の開始で計算され、また手順の過程の全てのその後の心周期がその量だけシフトされる。この手法は、初期シフトが決定された後の実行のために僅かな処理電力を要求するが、手順の過程に亘り信号の相対的に正確な整列が依然として提供できる。なぜなら、信号遅延の大半は、手順内若しくは患者間で変化しない固定源のためである。また他の場合においては、新しい平均シフトが各時間で計算され、手順過程で近位及び遠位圧力信号がお互いに標準化される。この点に関しては、1回以上、手順の過程で、狭窄の遠位圧力をモニターするために用いられる検出素子が、狭窄の近位圧力をモニターするために用いられる検出素子に隣接して配置され、両方の検出素子が同一の圧力記録を有することになる。圧力記録に差異があるならば、近位及び遠位圧力信号がお互いに標準化される。結果として、引き続いて取得される近位及び遠位圧力測定値が、お互いにより一貫したものになり、従って、結果として生じる圧力比の計算値がより正確になる。
【0078】
近位及び遠位圧力測定値が整列されると、診断窓506のための圧力比が計算される。幾つかの場合においては、圧力比が、診断窓に亘る近位及び遠位圧力測定値の平均値を用いて計算される。本開示の圧力比の計算が、幾つかの場合においては、単一心周期にて実行される。他の場合においては、圧力比計算が、複数の心周期にて実行される。この点に関しては、複数の心周期に亘る圧力比の計算を行い、また値を平均化し、及び/又は1以上の計算された値が最大及び/又は最小で正確であるものと識別する分析技術を用いることにより、圧力比の精度が向上できる。
【0079】
ここで図33を参照すると、本開示の実施形態に係る管内の近位及び遠位圧力測定値のグラフ表示550が図示される。この点に関しては、グラフ表示550が、近位圧力測定値波形552及び遠位圧力測定値波形554を含む。概して、近位圧力測定値波形552が、管の傷害又は関心領域の近位で取得された圧力測定値を示し、遠位圧力測定値波形554が、管の傷害又は関心領域の遠位で取得された圧力測定値を示す。近位圧力測定値波形552が、ポイント556でピーク圧力を有し、また遠位圧力測定値波形554が、ポイント558でピーク圧力を有する。この点に関しては、ピーク圧力が、収縮期の波無し期間で又は近傍で各心拍サイクルの収縮期に発生する。図示の実施形態においては、ピーク近位圧力556及び前記ピーク遠位圧力558の間に差560がある。幾つかの実施形態においては、差560が、ピーク近位圧力556からピーク遠位圧力558をマイナスして算出される。他の実施形態においては、差が、ピーク遠位圧力558からピーク近位圧力556をマイナスして算出される。
【0080】
幾つかの場合においては、ピーク圧力の間の差が、1以上の上述した手法を用いて選択された診断窓での近位圧力に対する遠位圧力の比率の計算の差異に考慮される。この点に関しては、ピーク近位圧力556及びピーク遠位圧力558の間の差560が決定され、また次に圧力比の計算を行うために補償される。例えば、幾つかの実施形態においては、ピーク圧力間の差560が、診断窓での遠位圧力測定値に加えられ、診断窓での圧力比が、(P遠位+ピーク圧力差)/P近位として計算される。あるそのような実施形態においては、差が、ピーク近位圧力556からピーク遠位圧力558をマイナスして算出される。他の実施形態においては、ピーク圧力間の差560が、診断窓での遠位圧力測定値から減算され、診断窓での圧力比が、(P遠位−ピーク圧力差)/P近位として計算される。あるそのような実施形態においては、差が、ピーク遠位圧力558からピーク近位圧力556をマイナスすることにより計算される。
【0081】
他の場合においては、ピーク近位及び遠位圧力の比が計算される。ピーク圧力の比は、次に、スケール因子として用いられ、診断窓で行われる圧力比の計算が調整される。例えば、ある実施形態においては、ピーク圧力比が、ピーク遠位圧力によりピーク近位圧力を除算することにより計算される。次に、上述の1以上の手法を用いて診断窓に亘り計算された標準圧力比が、ピーク圧力の比により標準圧力比計算値を掛けることにより調整可能である。このようにして、ピーク圧力の比が、診断窓での圧力比の計算のためのスケール因子として用いることができる。ピーク圧力差又はピーク圧力比のいずれかが用いられ、管の評価に用いられる診断窓での圧力比を計算する際のため、収縮過程で存在する圧力差が補償される。この補償は、収縮の直後に続く心拡張の波無し期間の過程で診断窓が選択されるような状況において、特に有利である。
【0082】
ここで図34及び35を参照すると、本開示の別の実施形態に係る管の評価のための手法の側面が図示される。この点に関しては、図34及び35に関する後述の手法が、傷害、狭窄、又は関心の領域に亘る圧力比を用いて管を評価するために上述した任意の診断窓及び関連手法を用いて実施される。しかしながら、より詳細に述べるように、図34及び35に関連の手法が、狭窄の評価のために圧力測定値の精度に依存しない。従って、手順の過程における圧力トランスデューサードリフトに関する懸念が、この手法により大きく減じられ、若しくは除去される。更には、手順の過程における近位圧力測定値装置に対する遠位圧力測定値装置の繰り返しの校正や標準化の必要性が同様に減じられ又は除去される。
【0083】
はじめに図34を参照すると、本開示の現在の実施形態にかかる管の評価のための手法の一側面を示すグラフ表示600が図示される。開示のように、グラフ表示600が、グラフ602及びグラフ604を含む。グラフ602が、ある時間に亘る患者の近位圧力波形606及び遠位圧力波形608を図示する。グラフ604が、続いて、これらの波形606及び608に基づいた対応の計算を図示する。この点に関しては、プロット610が、幾つかの実施形態においては心拍サイクルの波無し期間のある時間に亘る近位圧力波形606に対する遠位圧力波形608の圧力比を指標する。プロット610が、上述の管評価手法の幾つかで用いられた圧力比計算値を示す。プロット612が、遠位圧力波形608及び近位圧力波形606の間のスロープ比較を示す。この点に関しては、遠位圧力波形608のスロープが、近位圧力波形606のスロープに比較され、傷害又は狭窄の重大性の指標が提供される。幾つかの場合においては、最良適合回帰スロープが用いられる。この点に関しては、1以上の多項式フィッティング、多重線形回帰、波形のいずれかの終点からのスロープの推定、及び/又は他の適切なフィッティング手法が用いられる。更には、フィッティングが、単一の心拍又は複数の心拍サイクルに亘り実行される。遠位圧力波形608のスロープが、近位圧力波形606のスロープに等しい時、次に多項式フィット回帰(polyfit regression)スロープ(つまり、多項式曲線フィッティングを介して取得されたスロープ)が1.0に等しくなり、これが、傷害又は狭窄無しを示唆する。他方、遠位圧力波形608のスロープが近位圧力波形606のスロープから分岐し、次に、多項式フィットスロープが0.0側に変化し、これが重大な障害又は狭窄(例えば、完全閉鎖又は酷い障害)を示唆する。従って、傷害又は狭窄の重大性が、多項式フィットスロープに基づいて評価することができる。より端的には、多項式フィットスロープが1.0に近づくにつれて、傷害/狭窄の重大さが減じられ、多項式フィットスロープが0.0に近づくにつれて、傷害/狭窄の重大さが増加する。上述した圧力比に関する0.80遮断と同様、所定の閾値が、回帰スロープ比較のために用いられる。例えば、幾つかの場合においては、所定の閾値が、約0.70と約0.90の間であり、幾つかの特定の実施形態では、0.75、0.80、0.85、又は他の閾値が用いられる。他の場合においては、所定の閾値が0.70未満又は0.90を超える。
【0084】
上述のように、このスロープ基準の手法が、狭窄の評価のために圧力測定値の精度に依存しない。この点に関しては、図35が、この点を図示する。そこに図示されるものは、グラフ622及びグラフ624を含むグラフ表示620である。グラフ622が、ある時間に亘る患者の近位圧力波形626及び遠位圧力波形628を図示する。この点に関しては、近位圧力波形626が、図34の近位圧力波形606と同じであり、また遠位圧力波形628が、図34の遠位圧力波形608と実質的に同じであるが、遠位圧力波形608と比較して10mmHgの一定値だけ遠位圧力波形628が増加したトランスデューサードリフト効果を図示する。グラフ624が、これらの波形626及び628に基づいた対応の計算を図示する。この点に関しては、プロット630が、ある時間に亘る近位圧力波形626に対する遠位圧力波形628の圧力比の指標である。注目すべきは、プロット630の値が、図34のプロット610の値に対してかなり増加している。これは、圧力比計算の関係で、不正確及び/又は非標準化された遠位圧力測定値の潜在的な問題の一つを図示する。他方、プロット632が、遠位圧力波形628及び近位圧力波形626の間のスロープ比較を示す。開示のように、プロット632が、図34のプロット612に実質的に適合する。これはプロット612及び632が、図34及び35の間で等しい近位及び遠位波形の形に基づくためである。この点に関しては、遠位圧力波形628が、遠位圧力波形608と同一の形を有し、10mmHgの値だけ上方に単にシフトされている。結果として、波形のスロープに基づくプロット612及び632が圧力値とは無関係であり、また従って、ドリフトとは無関係である。この波形形状及び/又は波形スロープに基づく手法が、上述の任意の診断窓の波形を用いて実施することができるものと理解される。
【0085】
診断窓を識別して圧力差を評価する本開示のこの手法の一つの利点は、「ビートマッチング(beat matching)」の概念である。この点に関しては、同一の心周期のための近位及び遠位波形が一緒に分析され、単一心周期より長くに及ぶ平均化又は個々の計算が行われない。結果として、心周期における妨害(例えば、異所性心拍)が、近位及び遠位記録に等しく影響する。結果として、現在FFR手法に有害になるこれらの妨害が、本開示の手法に僅かな影響を及ぼす。更には、本開示の幾つかの実施形態においては、心周期における妨害及び/又は他のデータにおける非規則性の影響が、これら異常を検出するため並びに影響を受けた心周期を自動的に排除するために圧力差計算のモニタリングにより更に最小化及び/又は軽減される。
【0086】
ある特定の実施形態においては、圧力比が、二つの連続の心周期で計算され、また個々の圧力比の値が平均化される。第3サイクルの圧力比が、次に計算される。圧力比の平均値が、三回サイクルを用いて平均圧力比に比較される。平均の間の差が、所定閾値未満であるならば、計算された値が安定のものと理解され、また更なる計算が実行されない。例えば、もし0.001の閾値が用いられ、追加心周期の追加により、0.001未満で平均圧力比の値が変化するならば、計算が完了する。しかしながら、もし平均の間の差が、所定閾値を超えるならば、4回目サイクルの圧力比が計算され、また閾値との比較が行われる。この手順が拍服して繰り返され、心周期N及び心周期N+1の平均の間の差が所定閾値未満になる。典型的には、圧力比値が数点以下2桁の精度で表現されるため(例えば、0.80)、分析を完了するための閾値が、典型的には十分に小さく選択され、連続の心周期の追加が、圧力差値を変化させない。例えば、幾つかの場合においては、閾値が、約0.0001と約0.05の間で選択される。
【0087】
信頼度の計算が、狭窄の度合い及び/又は初期の計算された圧力比に依拠して、異なる閾値を有する。この点に関しては、狭窄の圧力比分析が、典型的には遮断値(群)に基づいて、もしあれば、どのような種類の療法が処置されるかの決定を取る。従って、幾つかの場合においては、これらの遮断点についてより正確であることが望ましい。換言すれば、計算された圧力差値が遮断近傍であれば、高い信頼度が要求される。例えば、もし治療決定のための遮断が0.80であり、また初期に計算された圧力比測定値が約0.75と約0.85の間であるならば、初期に計算された圧力比測定値が0.40の場合(これは、0.80の遮断ポイントよりも離れている)よりも高い信頼度が要求される。従って、幾つかの場合においては、閾値が、少なくとも部分的に初期に計算された圧力比測定値により決定される。幾つかの場合においては、計算された圧力比の信頼度又は安定性が、ソフトウェアインターフェイスを介して視覚的にユーザーに示唆される。例えば、信頼度が高まると、計算された圧力比の色が変化し(例えば、暗い色から明るい色へ次第に薄くなる)、ユーザーインターフェイスが、特定の計算(例えば、スライドスケール又は信頼度のインジケーターが信頼度の増加と共に黒点に近づく標的中心円)のために表示された対応のマーカーの信頼度スケールを含み、圧力比値が、信頼度の増加と共に、ぼやけた又は不鮮明な表示から鮮明、明瞭な表示に推移し、及び/又は他の適切なインジケーターが、信頼度若しくは測定値の知覚された精度を視覚的に表示する。
【0088】
圧力比が本開示のように単一心周期に基づいて計算可能であるため、遠位圧力測定装置が管内を移動する過程でリアルタイム又はライブの圧力比計算が可能である。従って、幾つかの場合においては、システムが、少なくとも2モードを含む:遠位圧力測定装置が管を移動する過程で圧力比計算を促進する単一−心臓−サイクルモード及び個別の場所でより正確な圧力比計算を提供するマルチ−心臓−サイクルモード。そのようなシステムのある実施形態においては、遠位圧力測定装置が所望の場所まで動き、また測定ボタンが選択され、及び/又は幾つかの他の作動ステップが取られてマルチ−心臓−サイクルモード計算がトリガーされるまで、ソフトウェアユーザーインターフェイスが、ライブ圧力比値を提供するように構成される。
【0089】
当業者は、上述の機器、システム、及び方法が様々な態様で変更できるものとも理解する。従って、当業者は、本開示により包含される実施形態が、上述の特定の例示の実施形態に限定されないものと予期する。この点に関しては、図示の実施形態が図示及び説明されたが、広範囲の修正、変形、及び置換が上述の開示において想起される。上述のものに対するそのような変更が本開示の範囲から逸脱することなく為されうる。従って、添付請求項が広義及び本開示に一貫する態様で解釈されることが適切である。
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