特許第6129175号(P6129175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129175
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】交絡結節点を形成する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   D02G 1/16 20060101AFI20170508BHJP
   D02J 1/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   D02G1/16
   D02J1/00 L
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-527533(P2014-527533)
(86)(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公表番号】特表2014-527583(P2014-527583A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】EP2012057382
(87)【国際公開番号】WO2013029810
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年1月8日
(31)【優先権主張番号】102011112017.7
(32)【優先日】2011年8月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マティアス シュテュンドル
(72)【発明者】
【氏名】クラウス マティース
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヴェストファール
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第04113927(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第04140469(DE,A1)
【文献】 特開昭53−122836(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0011061(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00−3/48
D02J 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメント糸において交絡結節点を形成する方法であって、
空気流インパルスを、処理通路内に開口するノズル通路によって、連続する空気流インパルス間の休止時間を伴って周期的に形成し、
空気流インパルスを、インパルス時間中に、前記処理通路内でガイドされる糸に対して横方向に向け、これにより走行する前記糸において連続する交絡結節点を形成する、マルチフィラメント糸において交絡結節点を形成する方法において、
補助空気流を連続的に形成し、
前記補助空気流と前記空気流インパルスとを一緒に前記処理通路内に吹き込み、
前記空気流インパルスの前記休止時間および前記インパルス時間に、駆動されるノズルリングの回転速度によって影響を与えるようになっており、前記ノズルリングは前記ノズル通路を支持しており、該ノズル通路を、回転によって周期的に圧力源に接続させ、前記補助空気流を、前記休止時間および前記インパルス時間中に継続的に形成し、前記補助ノズル通路を固定的なカバーを介して前記圧縮空気源に接続し、前記ノズルリングはその周面に環状に延びるガイド溝を有し、前記マルチフィラメント糸は、走入糸ガイドと走出糸ガイドとの間を、前記環状に延びるガイド溝内で、前記ノズルリングの周りに部分巻掛けを伴ってガイドされる、ことを特徴とする、マルチフィラメント糸において交絡結節点を形成する方法。
【請求項2】
前記補助空気流を少なくとも1つの補助ノズル通路によって前記処理通路内に吹き込み、前記補助空気流と前記空気流インパルスとを互いに異なる吹込み方向で前記糸に作用させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
回転するノズルリング(1)であって、周面に環状に延びるガイド溝(7)と、半径方向で前記ガイド溝(7)に開口する少なくとも1つのノズル通路(8)とを有するノズルリング(1)と、
室開口(10)を有する圧力室(9)を備えたステータ(2)であって、前記圧力室(9)は、圧縮空気接続部(11)を介して圧縮空気源(25)に接続可能であり、前記ノズルリング(1)の回転により、前記ノズル通路(8)が空気流インパルスを形成するために前記室開口(10)を介して前記圧力室(9)に接続可能である、ステータ(2)と、
前記ガイド溝(7)の一区分に対応配置されたカバー(13)であって、該カバー(13)は、前記ノズルリング(1)と一緒に、前記ステータ(2)の前記室開口(10)に向かい合って、前記ガイド溝(7)内に処理通路(14)を形成するカバー(13)と、
を備えたマルチフィラメント糸において交絡結節点を形成する装置であって、
前記ノズルリング(1)および/または前記カバー(13)は、前記処理通路(14)内に開口する少なくとも1つの補助ノズル通路(24)を有し、該補助ノズル通路(24)は常時前記圧縮空気源(25)に接続可能であり、
前記補助ノズル通路(24)は、自由な流れ横断面を有しており、前記補助ノズル通路(24)の流れ横断面は、前記ノズル通路(8)の流れ横断面よりも小さく形成されており、
前記補助ノズル通路(24)と前記ノズル通路(8)とは、互いに異なる吹込み方向が形成可能であるように、互いにずらされて前記処理通路(14)内に開口しており、
前記マルチフィラメント糸は、走入糸ガイド(15)と走出糸ガイド(16)との間を、前記ガイド溝(7)内で、前記ノズルリング(1)の周りに部分巻掛けを伴ってガイドされる、
ことを特徴とする、マルチフィラメント糸において交絡結節点を形成する装置。
【請求項4】
前記カバー(13)は、前記ノズルリング(1)の前記ガイド溝(7)に対向するように形成された複数の補助ノズル通路(24.1,24.2)を有し、該ノズル通路(24.1,24.2)は一緒に前記圧縮空気源(25)に接続可能である、請求項記載の装置。
【請求項5】
前記カバー(13)は、分配室(30)と、該分配室(30)内に開口する供給通路(31)とを有しており、前記補助ノズル通路(24)の、前記処理通路(14)とは反対の側に位置する端部が前記分配室(30)内に開口しており、前記供給通路(31)は周期的に前記ノズルリング(1)の貫通通路(32)と協働する、請求項3または4記載の装置。
【請求項6】
前記ノズルリング(1)の前記貫通通路(32)は、前記室開口(10)を介して前記ステータ(2)内の圧力室(9)と協働するか、または補助室開口(33)を介して、前記ステータ(2)内の別個の補助圧力室(34)と協働する、請求項記載の装置。
【請求項7】
前記ノズルリング(1)は、前記ガイド溝(7)の両側壁に開口する、対向する2つの補助ノズル通路(24.1,24.2)を有し、該補助ノズル通路(24.1,24.2)は、複数の供給通路(31.1,31.2)によって室開口(10)を介して前記ステータ(2)内の前記圧力室(9)と協働する、請求項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のマルチフィラメント糸において交絡結節点を形成する方法と、請求項6の前提部に記載のマルチフィラメント糸において交絡結節点を形成する装置とに関する。
【0002】
マルチフィラメント糸において交絡結節点を形成するこのような方法および装置は、独国特許出願公開第4140469号明細書に基づいて公知である。
【0003】
マルチフィラメント糸を製造する場合、一般的に、糸における個々のフィラメントストランドが、いわゆる交絡結節点によってまとめられることが知られている。このような交絡結節点は、糸の圧縮空気処理によって形成される。糸型およびプロセスに応じて、単位長さあたりに所望される個数の交絡結節点ならびに交絡結節点の安定性には、種々異なった要求が課せられる。特に、溶融紡糸プロセスの直後に別の加工のために使用されるカーペット糸の製造時には、高い結節点安定性と、糸の単位長さあたり多数の交絡結節点とが望まれている。
【0004】
特に比較的多数の交絡結節点を比較的高い糸走行速度で得るために、前提部に記載された装置は、定置のステータと協働する回転するノズルリングを有している。ノズルリングは、周囲に糸ガイド溝を有し、この糸ガイド溝の溝底部には、周面にわたって均一に分配され半径方向に向けられた複数のノズル孔が開口している。ノズル孔は、ノズルリングをガイド溝から、ステータの周面に沿って案内されている内周面に到るまで貫通している。ステータは、内部に位置する圧力室を有していて、この圧力室は、ステータの周面に形成された室開口によって接続されている。ステータにおける室開口とノズルリングにおけるノズル孔とは、一平面に位置しているので、ノズルリングの回転時にノズル孔は次々と室開口に送られる。圧力室は圧縮空気源に接続されているので、ノズル孔と室開口との協働中には、ノズルリングの糸ガイド溝において圧縮空気インパルス(衝撃)が形成される。
【0005】
ノズルリングには、室開口の上方でカバーが対応配置されている。カバーは、ステータの周面のガイド溝の一区分を閉じ、ノズルリングと一緒に処理通路を形成する。この処理通路内に、ノズル通路により形成された空気流インパルスが進入し、糸に作用する。この場合、空気流インパルスの強さおよび継続期間は、処理通路内で形成される空気流の渦が、マルチフィラメント糸において交絡結節点を形成するように選択されている。空気流インパルスは、ノズル通路を介してガイドされたフィラメントの束に、処理通路内でカバーの方向に向かって吹き付けられることが公知である。処理室内に進入した空気流インパルスは、この場合、反対の側に位置するカバーにより制動され、変向されて複数の部分流を形成する。したがって、フィラメントストランドの要求される捻れおよび絡まりが形成されて、交絡結節点をもたらす。この工程は、実質的に処理通路内に流入する空気流インパルスの継続期間によって規定されるインパルス時間によって、かつ空気流インパルスの体積流量によって影響を与えられる。この場合、一般的には、インパルス時間が長く、空気流インパルスの体積流量が大きいほど、交絡結節点が集中的にかつより強固に形成される。
【0006】
本発明の課題は、マルチフィラメント糸において交絡結節点を形成する方法および装置を改善して、糸に比較的小さな体積流量および比較的短いインパルス時間で顕著な交絡結節点が製造可能であるようにすることである。
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法および請求項6に記載の特徴を有する装置により解決される。
【0008】
本発明の好適な実施の形態は、従属請求項に記載の特徴およびこれらの特徴の組合せにより定義される。
【0009】
本発明は、マルチフィラメント糸を交絡させる方法および装置を開示した国際公開第2003/029539号にも類似していない。2つのプレートの間に形成された処理通路内には、主孔の他に複数の補助孔が開口している。その結果、処理通路内では、不変に形成される主空気流の他に、複数の一定の副空気流が導入され得る。これらの空気流は一緒に糸に作用する。この場合、空気のほぼ一定の流れ経過が処理通路内で生じる。しかし、たとえば本発明において空気流インパルスにより引き起こされるような、処理通路内における動的な流れ変化は生じない。その限りでは、この公知の方法および公知の装置の知識を容易に借用することはできない。
【0010】
これに対して本発明は、動的な流れ変化を発生させるための、処理通路内に所定の周期で繰返し吹き込まれる空気流インパルスが、マルチフィラメント糸において交絡結節点を形成するその作用が改善されるように、支援されることに基づいている。意想外にも、処理通路内に空気流インパルスと共に吹き込まれる、連続的に形成される補助空気流も、非連続的に形成される補助空気流も、結節点形成の増大および強化をもたらすことが判った。したがって、空気流インパルスが処理通路内に吹き込まれるインパルス時間を減じることが可能となった。この場合、補助空気流は、空気流インパルスに比べて、大幅に小さな体積流量を有しているので、補助空気流を連続的に供給している場合でさえも、エネルギ節約が達成され得た。したがって本発明に係る方法は、処理通路内の空気流インパルスの動的な圧縮空気流を、結節点品質を保ったままで空気流インパルスの圧縮空気レベルを減じることができるように支援する。
【0011】
補助空気流をできるだけ意図的に処理通路内に吹き込むことができるように、補助空気流が少なくとも1つの補助ノズル通路によって処理通路内に吹き込まれ、この場合、補助空気流と空気流インパルスとが互いに異なる吹込み方向で糸に作用する本発明に係る方法の態様が使用されると有利である。これによって、補助空気流による付加的な効果が達成され、たとえば処理通路内における糸の位置に影響を与えることができる。空気流インパルスとは逆方向に向けられた吹込み方向を有する不変に形成される補助空気流は、たとえば休止時間に、糸がノズル開口の開口領域にガイド可能であることをもたらす。
【0012】
糸走行速度が高い場合でさえも糸の単位長さ毎に多数の交絡結節点が形成可能であるように、空気流インパルスは、比較的高い周期で形成可能でなければならない。このためには、空気流インパルスの休止時間とインパルス時間とに、駆動されるノズルリングの回転速度によって影響を与えることができる本発明に係る方法の態様を有利に使用することができる。この場合、ノズルリングは、ノズル通路を支持し、ノズル通路を回転により周期的に圧力源に接続する。これにより、高速プロセスにおいても、交絡結節点の十分なバリエーションを糸において製造することができ、この場合、回転速度は0.5Hz〜20Hzの範囲の周期で変更可能である。
【0013】
補助空気流は、この方法の態様では、好適にはインパルス状に形成される。これにより、処理通路内への補助空気流の流入は、インパルス時間にのみ生じる。このためには、補助ノズル通路への補助空気流の供給部は、ノズルリングの回転によってのみ補助空気通路が周期的に圧縮空気源に接続されるように、ノズルリングと組み合わせられる。
【0014】
しかし択一的には、補助空気流を休止時間およびインパルス時間中に不断に形成する可能性も生じる。この場合、補助ノズル通路は、有利には定置のカバーを介して圧縮空気源に連結されている。
【0015】
しかし、本発明に係る方法は、処理通路内に流入する空気流インパルスを、回転するノズルリングによって形成することに限定するものではない。基本的には、本発明による方法は、空気流インパルスを弁制御により形成する固定的な手段を有する装置によっても実施され得る。
【0016】
しかし、溶融紡糸プロセスにおいて比較的高い糸速度で形成されるマルチフィラメント糸のためには、比較的高い周期の空気流インパルスが交絡結節点を形成するために要求されるので、本発明による装置は、圧縮空気の消費量が比較的小さなままで、安定した多数の交絡結節点を形成するために特に適している。本発明に係る装置は、このためにはノズルリングおよび/またはカバー内に、処理通路内に開口する少なくとも1つの補助ノズル通路を有している。この場合、補助ノズル通路は、圧縮空気源に常時接続可能であるか、周期的に接続可能である。したがって、糸型およびフィラメントの本数に応じて、空気流インパルスと共に処理通路内に吹き込まれる連続的または非連続的な補助空気流が形成され得る。
【0017】
補助空気流の形成時にできるだけ小さな体積流量を必要とするように、本発明に係る装置は、好適には、補助ノズル通路が、ノズル通路の流れ横断面よりも小さく形成された自由な流れ横断面を有しているように形成されている。これにより、たとえば体積流量が大幅に異なるにも拘わらず、1つの共通の圧縮空気源を介した圧縮空気供給が行われ得る。
【0018】
処理通路内における圧縮空気流に意図的に影響を与え、糸の位置に意図的に影響を与えることができるようにするためには、互いに異なる吹込み方向が形成可能であるように、補助ノズル通路およびノズル通路が処理通路内で互いに対してずらされて開口している本発明の別の態様が特に有利である。
【0019】
この効果は、カバーが、ノズルリングのガイド溝に対向する複数の補助ノズル通路を有しているとさらに改善される。これらの補助ノズル通路は、一緒に圧縮空気源に接続可能である。
【0020】
補助ノズル通路の、逆方向に向けられた吹込み方向にもかかわらず、補助空気流のインパルス状の形成を可能にするために、本発明に係る装置は、カバーが分配室および該分配室内に開口する供給通路を有しているように形成されていると有利である。この場合、補助ノズル通路の、処理通路とは反対の側に位置する端部は、分配室内に開口し、かつ供給通路は周期的にノズルリング内の貫通通路と協働する。したがって、ノズルリングの回転時に、インパルス時間中にのみ、補助ノズル通路による補助空気流の形成が行われる。
【0021】
補助空気流の形成および空気流インパルスの形成は、択一的には、圧縮空気の種々異なる圧力レベルでも形成され得る。このためには、ノズルリングの供給通路が補助室開口を介してステータ内の別個の補助圧力室と協働する本発明の別の態様が特に適している。
【0022】
複数の補助空気流を、回転しているノズルリングにより直接に形成するためには、さらに択一的にノズルリングが、ガイド溝の両側壁に開口する、互いに向い合う2つの補助ノズル通路を有し、これらの補助ノズル通路が複数の供給通路により室開口を介してステータ内の圧力室と協働することが規定されている。この構成により、通常はノズルリングとカバーとの間に形成されているシール継ぎ目を介した通流を阻止することができる。
【0023】
本発明に係る方法および本発明に係る装置は、3000m/minを上回る糸速度でマルチフィラメント糸に安定的に形成される交絡結節点を高い個数で均一にかつ規定された順番で最小限のエネルギ消費によって形成するために特に適している。
【0024】
本発明を以下に本発明に係る装置の幾つかの実施の形態につき、添付の図面に関連して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る装置の第1の実施の形態の概略的な縦断面図である。
図2図1に示した実施の形態の概略的な横断面図である。
図3】形成される空気流インパルスおよび補助空気流の時間経過を示す概略図である。
図4】本発明に係る装置の別の実施の形態の縦断面を部分的に示す概略図である。
図5.1】本発明に係る装置のさらに別の実施の形態の縦断面を部分的に示す概略図である。
図5.2】本発明に係る装置のさらに別の実施の形態の縦断面を部分的に示す別の概略図である。
図6】本発明に係る装置のさらに別の実施の形態の縦断面を部分的に示す断面図である。
図7】本発明に係る装置のさらに別の実施の形態の縦断面を部分的に示す断面図である。
【0026】
図1および図2には、本発明に係る装置の第1の実施の形態が複数の視点で示されている。図1は、本実施の形態を縦断面図で示しており、図2は、本実施の形態を横断面図で示している。両方の図面のうちの一方に対して明確に関連付けがなされない限り、以下の説明は両方の図面に当てはまる。
【0027】
マルチフィラメント糸において交絡結節点を形成する本発明に係る装置の本実施の形態は、回転するノズルリング1を有している。このノズルリング1は、リング状に形成されており、その周面に環状に延びるガイド溝7を支持している。このガイド溝7の溝底部には、複数のノズル通路8が開口している。これらのノズル通路8は、ノズルリング1の周面にわたって均等に分配されて形成されている。本実施の形態では、2つのノズル通路8が、ノズルリング1に含まれている。これらのノズル通路8は、ノズルリング1を貫通して、ノズルリング1の内径にまで達している。ノズルリング1におけるノズル通路8の個数およびノズル通路8の位置は例示的である。個数および位置は、主に糸の単位長さあたりの結節点の所望の個数ならびに結節パターンにより決定される。
【0028】
ノズルリング1は、端面側に形成された端面壁4と、該端面壁4の中心に配置されたボス5を介して駆動軸6に結合されている。このためにはボス5は、駆動軸6の自由端に取り付けられている。ノズルリング1は、ステータ2の一方の端部29に回転可能にガイドされている。ステータ2とノズルリング1との間には、環状に延びるシールギャップ12が形成されている。シールギャップ12は、0.01mm〜0.1mmの範囲のギャップ高さを有しているので、ノズルリング1はステータ2の周面に接触することなしにガイドされる。
【0029】
ステータ2は、シールギャップ12の内側で、その周面に室開口10を有している。この室開口10は、ステータ2の内部に形成された圧力室9に接続されている。圧力室9は、圧縮空気接続部11を介して圧縮空気源25に接続されている。圧力室9と圧縮空気源25との間には、圧力リザーバ27が設けられている。
【0030】
ステータ2に設けられた室開口10およびノズルリング1のノズル通路8は、1つの平面に配置されているので、ノズルリング1の回転によって、ノズル通路8は交互に室開口10の領域にガイドされる。このためには、室開口10は長孔として形成されており、半径方向でノズル通路8の比較的に長いガイド領域にわたって延びている。したがって、室開口10の大きさは、各ノズル通路8の開放時間を決定し、この開放時間はインパルス時間と呼ばれ、空気流インパルスが形成される期間を定義する。
【0031】
180°ずらされたノズル通路8が室開口10の開口領域に進入するまでに経過する期間は、休止時間と定義される。この休止時間中、ステータ2の室開口10は、ノズルリング1によって閉じられている。したがって、ノズルリング1の回転速度によって、インパルス時間も休止時間も変更することができる。
【0032】
ノズルリング1の端面壁4と、ステータ2の端部29との間に軸方向ギャップ17が形成されている。この軸方向ギャップ17は、好適にはステータ2の周面における半径方向ギャップ12よりも幾らか大きく形成されている。
【0033】
ステータ2は、支持体3において保持されており、中心の軸受け孔18を有している。この軸受け孔18は、シールギャップ12と同心的に形成されている。軸受け孔18内には、駆動軸6が軸受け23により回転可能に支持されている。
【0034】
駆動軸6は、一方の端部で駆動部19に連結されている。駆動部9によってノズルリング1は予め規定された回転速度で駆動可能である。駆動部19は、たとえば、ステータ2の側方に配置されている電気モータによって形成されていてよい。
【0035】
図1に示されているように、ノズルリング1には、周面にカバー13が対応配置されている。このカバー13は、支持体3により保持されている。
【0036】
図2の図面から補足的に判るように、カバー13は、周方向でノズルリング1の周面において所定の領域にわたって延びている。この領域は、ステータ2の室開口10を含んでいる。カバー13は、ノズルリング1に面した側に、ノズルリング1に適合されたカバー面を有している。このカバー面は、ノズルリング1の周面に設けられたガイド溝7を完全に覆っていて、したがって、ノズルリング1と共に処理通路14を形成する。処理通路14内では、糸20がノズルリング1の周面に設けられたガイド溝7内でガイドされる。このためには、ノズルリング1には、供給側21では走入糸ガイド15が、排出側22では走出糸ガイド16が対応配置されている。したがって糸20は、走入糸ガイド15と走出糸ガイド16との間でノズルリング1における部分巻掛けを伴ってガイド溝7内でガイドされる。
【0037】
図1および図2の図面からさらに判るように、カバー13内には、補助ノズル通路24が形成されている。この補助ノズル通路24は、一方の端部では処理通路14に開口していて、反対の側に位置する端部では圧力弁26を介して圧縮空気源25に接続されている。本実施の形態では、カバー13内の補助ノズル通路24は、ノズルリング1のガイド溝7に対して向かい合って配置されている。補助ノズル通路24は、自由な流れ横断面を有している。この流れ横断面は、ノズル通路8の自由な流れ横断面に比べて大幅に小さく形成されている。補助ノズル通路24により形成される補助空気流は、ノズル通路8により形成された空気流インパルスに対して大幅に小さな体積流量を形成する。
【0038】
図1および図2に示された実施の形態では、マルチフィラメント糸20内に交絡結節点を形成するために、圧縮空気がステータ2の圧力室9内に導入される。糸20をガイド溝7内にガイドするノズルリング1は、ノズル通路8が室開口10の領域に到達すると、周期的な空気流インパルスを形成する。この場合、空気流インパルスは、マルチフィラメント糸における局所的な渦動をもたらすので、結果として糸に交絡結節点が形成される。並行して、補助ノズル通路24によって同時に補助空気流が処理通路14内に吹き込まれる。この補助空気流は、ノズル通路8の吹込み方向とは逆に向けられていて、処理通路14内における空気流の分配および形成に、結節点形成を改善するための影響を与える。
【0039】
本発明に係る方法および上述の工程を説明するために、この箇所では付加的に図3が参照される。
【0040】
図3には、空気流インパルスおよび補助空気流の圧力経過が所定の時間にわたってグラフで示されている。この場合時間軸は横軸を形成し、縦軸には空気流インパルスおよび補助空気流の圧力が記入されている。
【0041】
図3の図から判るように、ノズル通路8により形成された空気流インパルスは、それぞれ同じ大きさであり、この場合、それぞれ一定のインパルス時間が生じる。インパルス時間は、時間軸において小文字のtで示されている。連続する空気流インパルスの間には、休止時間が生じる。休止時間は小文字のtで記入されている。この場合、ノズルリング1の一定の回転速度により、糸の渦動時にそれぞれ一定のインパルス時間および一定の休止時間が維持される。空気流インパルスの圧力経過は、符号Lにより規定される実線で示されている。インパルス時間および休止時間の期間は、ノズルリング1におけるノズル通路8の個数、室開口10の大きさおよびノズルリング1の回転速度に依存する。
【0042】
空気流インパルスに並行して、処理通路14内では、補助ノズル通路24により吹き込まれた補助空気流が作用する。この場合、糸を渦動させるためには互いに異なる2つの方法形態が可能である。第1の形態では、補助空気流が、インパルス時間と一緒にしか形成されないので、補助空気流はインパルス状につまり衝撃的に処理通路14に吹き込まれる。図3では、補助空気流の圧力経過がHおよびHで破線で示されている。この場合、符号Hは、補助空気流のインパルス状の形成を示している。図3からさらに判るように、補助空気流の期間は、インパルス時間tよりも短い。さらに、補助空気流と空気流インパルスとは、インパルス時間の真ん中で補助空気流の最大値が形成されるように生ぜしめられている。補助空気流および空気流インパルスの圧力経過は、互いに対して対称的に形成されている。しかし、基本的には、圧力経過が互いに対して非対称に形成されることも可能であるので、たとえば補助空気流がインパルス時間の半分を経過した後にようやく形成され、これにより補助空気流の主な作用が空気流インパルスの減少中に開始する。さらに、補助空気流のインパルス時間は、空気流インパルスのインパルス時間と同じ長さに選択されてもよい。さらに、図3に示したように、両方の空気流は同じ圧縮空気レベルで形成され、これにより最大の圧力が同じ大きさである。しかし択一的には、空気流インパルスおよび補助空気流は、互いに異なる圧縮空気レベルで形成され得る。
【0043】
図1および図2に示した実施の形態では、補助空気流の、図3に示されたインパルス状の経過が圧力弁26の相応の制御により形成され得るので、補助ノズル通路24を介して、それぞれインパルス状の補助空気流が処理通路14内に吹き込まれる。
【0044】
しかし、択一的には、圧力弁26を介して不変の圧縮空気流が補助ノズル通路24に供給され、これにより補助空気流が常時、処理通路14内に吹き込まれる可能性も生じる。
【0045】
連続的に形成される補助空気流の圧力経過は、図3には破線で,横軸に対して平行に示されており、符号Hで示されている。補助空気流Hの圧力レベルは、本実施の形態では、空気流インパルスの最大の圧縮空気レベルよりも低い。しかし、基本的には、補助空気流を形成する任意の圧力が圧力弁26を介して形成され得る。
【0046】
全体的に、処理通路14内における糸の渦動は、補助空気流によって良い影響を与えられ得るので、空気流インパルスの圧力レベルとインパルス時間とを減じることができる。したがって、先行技術から公知の方法および装置と比べて、マルチフィラメント糸における結節点品質および結節点の個数を維持したままで、エネルギ節減が達成され得る。
【0047】
本発明による方法は、図1および図2に記載された装置によってのみ実施され得るわけではない。基本的には、インパルス状の空気流インパルスは、同様に弁制御によっても達成され得るので、処理室は、定置のプレートの間にも形成され得る。しかし、溶融紡糸工程において、糸の単位長さあたりで比較的多い交絡結節点の個数は、図1および図2に示された装置により実施され得る。
【0048】
図4には、本発明による装置の択一的な別の実施の形態が縦断面で部分的に示されている。図4に示した実施の形態は、図1および図2に示した実施の形態とほぼ同一であるので、ここでは上述の説明が参照されるとともに、以下では繰返しを避けるために差異についてのみ説明する。
【0049】
図4に示された実施の形態では、カバー13が、ノズルリング1に面した側に、ガイド溝7に対応する長溝35を有している。この長溝35は、好適には、カバー13の全長にわたって延びていて、ノズルリング1に設けられたガイド溝7と一緒に処理通路14を形成する。長溝35の溝底部には、互いに間隔を置いて配置された2つの補助ノズル通路24.1,24.2がそれぞれ開口している。カバー13の補助ノズル通路24.1,24.2は、平行な2つの補助空気流が処理通路14のガイド溝7の側壁の領域に進入するように、互いに対してずらされている。ノズルリング1の回転時にインパルス時間中に、補助ノズル通路24.1,24.2とは反対の側に位置するノズル通路8は、ガイド溝7の中央の領域で両補助ノズル通路24.1,24.2の間に開口している。
【0050】
カバー13に設けられた補助ノズル通路24.1,24.2は、圧縮空気管路を介して圧力弁26に連結されている。圧力弁26は圧縮空気源25(図示せず)に接続されている。
【0051】
ノズルリング1は、ステータ2に沿ってガイドされている。この場合、ステータ2とノズルリング1との間に環状に延びるシールギャップ12は、ラビリンスシール28によりシールされている。この構成ではラビリンスシール28は室開口10の両側にそれぞれ延びていて、ステータ2に設けられた複数の環状に延びる溝によって形成されている。
【0052】
同様に、軸方向のギャップ17が、ステータ2と端面壁4との間でラビリンスシール28によりシールされている。このラビリンスシール28は、ステータ2における端面側のボスによって形成されている。
【0053】
本発明に係る装置の図4に示された実施の形態の機能は、上述の実施の形態と同一である。この場合、補助空気流は、補助ノズル通路24.1,24.2を介して不変に、または周期的に形成可能である。
【0054】
本発明に係る装置の図1から図4に示された実施の形態は、補助ノズル通路24を介して一定の補助空気流を処理通路14内に吹き込むために、有利に使用される。補助空気流のインパルス状の形成時に、比較的高い頻度が達成され得るように、本発明に係る装置が図5.1および5.2に示した態様で実施されていると有利である。この実施の形態は、縦断面で部分的に示されており、この場合、図5.1には、休止時間中の運転状況が、図5.2ではインパルス時間中の運転状況が示されている。
【0055】
図5.1および図5.2による実施の形態は、図1および図2に示した実施の形態と略同一であるので、以下では上述の説明が参照され、差異に関してのみ説明する。
【0056】
図5.1および図5.2に示された実施の形態では、相並んで平行に形成された2つの補助ノズル通路24.1,24.2が長溝35に開口している。長溝35は、カバー13の、ノズルリング1に面した側に形成されている。カバー13内には分配室30が形成されている。この分配室30内に、補助ノズル通路24.1,24.2の、長溝35とは反対の側に位置する端部が開口している。分配室30は、軸方向で、長溝35の幅とオーバラップする領域に延びている。分配室30の端部には、供給通路31が、カバー13内に形成されている。供給通路31は、分配室30から分離ギャップ36に至るまで延びている。分離ギャップ36は、カバー13と回転するノズルリング1との間で分離部を形成する。
【0057】
特に図5.2から判るように、ノズルリング1はガイド溝7およびノズル通路8の他に、該ガイド溝7およびノズル通路8の隣に平行に形成された貫通通路32を有している。この貫通通路32は、一方の端部で分離ギャップ36に開口し、カバー13に設けられた、向かい合って位置する供給通路31と協働する。貫通通路32の、分離ギャップ36とは反対の側に位置する端部は、シールギャップ12内で終わっていて、ステータ2の圧力室9の室開口10と協働する。
【0058】
図5.2に示された状態では、空気流インパルスに対しても、補助空気流に対しても、ステータ1の圧力室9からの圧縮空気が供給される。ノズルリング1の回転時に貫通通路32が室開口10および供給通路31に接続されるや否や、圧縮空気流がカバー13の分配室30内に導かれる。圧縮空気は分配室30から補助ノズル通路24.1,24.2を介してそれぞれ補助空気流として処理室14内に到達する。
【0059】
この場合、補助空気流の発生のための期間は、主に室開口10、貫通通路32および供給通路31の幾何学形状により決定される。特に、室開口10および供給通路31は、周方向に長く延びる開口を有しているので、補助空気流の構築および発生のために十分な期間が達成され得る。
【0060】
図5.1に示された状態では、ノズル通路8および貫通通路32は、変更された角度位置に位置しているので、室開口10は閉じられていて、処理通路14内には空気流は吹き込まれない。
【0061】
上述の実施の形態では、補助ノズル通路24.1,24.2は、処理通路14の、ノズル通路8に向かい合う側に配置されているので、逆方向に向けられた吹込み方向が生じる。基本的には、補助空気流の、補助ノズル通路24.1,24.2により形成される吹込み方向が横に向けられて処理通路14内に流入する可能性も生じる。これに関して、図6には、図1および図2に示した実施の形態と構造が同一である1つの実施の形態が示されている。その限りでは、繰返しを避けるために、ここでも差異についてのみ説明する。
【0062】
図6に示された実施の形態では、ノズルリング1内に、対向する2つの補助ノズル通路24.1,24.2が設けられている。これらの補助ノズル通路24.1,24.2は、ガイド溝7の側壁に開口する。補助ノズル通路24.1,24.2には、互いに平行に配置された2つの供給通路31.1,31.2を介して圧縮空気が供給される。これらの供給通路は、ノズル通路8に対して平行にノズルリング1に形成されており、ノズルリング1の回転時に、周期的に室開口10を介して圧力室9と協働する。したがって、同様に有利にはインパルス状の補助空気流が発生し、この補助空気流は、空気流インパルスの吹込み方向に対して横に向けられて、処理通路14内に吹き込まれる。
【0063】
図5および図6に示した実施の形態では、空気流インパルスおよび補助空気流の形成は、ステータ2に形成された圧力室9を介して一緒に行われる。したがって、空気流インパルスおよび補助空気流は同一の圧力レベルで形成される。しかし基本的には、空気流インパルスおよび補助空気流が、互いに異なる圧力レベルで形成される可能性も生じる。このためには図7にさらに別の実施の形態が示されている。この実施の形態は、図5.1,5.2に示された実施の形態と同一である。その限りでは、上述の説明が参照され、以下では差異に関してのみ説明する。
【0064】
図7に示された実施の形態では、ノズルリング1の貫通通路32は、ステータ2に設けられた補助室開口33および補助圧力室34に別個に、ノズルリング1の回転により周期的に接続される。ノズルリング1に平行に形成されたノズル通路8は、室開口10および圧力室9と協働する。圧力室9および補助圧力室34は、互いに分離しており、ステータ2内で互いに異なる圧縮空気供給部により互いに異なる圧力で作動され得る。その限りでは、互いに異なる作動圧力を有する補助空気流と空気流インパルスとが形成される可能性が生じる。これらの作動圧力は、通常、0.5〜10barの範囲である。
【0065】
本発明に係る装置の上記の実施の形態は全て、本発明に係る方法を実施するために適している。基本的には、本発明に係る方法は、処理通路が固定的に形成されていてインパルス状の圧縮空気流を形成し、ノズル通路に導入する空気供給部がノズル通路内に対応配置されている装置でも実施され得る。このような空気供給部は、たとえば回転する圧力室または圧縮空気弁により実現されていてよい。
【符号の説明】
【0066】
1 ノズルリング
2 ステータ
3 支持体
4 端面壁
5 ボス
6 駆動軸
7 ガイド溝
8 ノズル通路
9 圧力室
10 室開口
11 圧縮空気接続部
12 シールギャップ
13 カバー
14 処理通路
15 走入糸ガイド
16 走出糸ガイド
17 軸方向ギャップ
18 軸受け孔
19 駆動部
20 糸
21 供給側
22 排出側
23 軸受け
24 補助ノズル通路
25 圧縮空気源
26 圧力弁
27 圧力リザーバ
28 ラビリンスシール
29 端部
30 分配室
31 供給通路
32 貫通通路
33 補助室開口
34 補助圧力室
35 長溝
36 分離ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5.1】
図5.2】
図6
図7