(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フレーム(60)と、該フレーム(60)の中に配されたミラーボディ(50)であって、前記フレームによって定義される平面(X−Y)内に延長される回転軸(58)まわりに前記ミラーボディが回転可能であるミラーボディ(50)と、長手方向を有し、前記平面内に延長された、少なくとも一つのカンチレバービームアセンブリ(70)と、前記ミラーボディ及び前記フレームの間に前記回転軸に沿って接続される垂直サポートビーム(40)とを含むMEMSマイクロミラー(30)であって、前記少なくとも一つのカンチレバービームアセンブリは第一端及び第二端(721、722)を備えるカンチレバービーム(72)と、前記長手方向の第一端におけるカンチレバービームの並進運動を可能にする、前記第一端(721)のリリーフ手段(74)であって、前記第一端(721)は前記リリーフ手段(74)を介して前記フレームに結合されるリリーフ手段とを有し、前記第二端(722)は、前記第二端が前記ミラーボディに対して相対的に動かない状態で前記ミラーボディに固定され、前記カンチレバービーム(72)は、前記フレーム(60)の平面に対して垂直に厚みを有し、その厚みは前記フレーム(60)の平面内の幅よりも小さい、MEMSマイクロミラー(30)。
前記少なくとも一つのカンチレバービームアセンブリの前記回転軸まわりのねじり剛性に与える影響は、前記垂直サポートビーム(40)のねじり剛性に与える影響よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のMEMSマイクロミラー。
前記垂直サポートビームは回転軸(58)に対して垂直に細い長方形の断面を有し、前記長方形の長軸はミラー(52)及びミラーボディ(50)の表面に垂直であり、前記長方形の短軸は前記ミラー(52)の表面に平行であることを特徴とする、請求項1に記載のMEMSマイクロミラー。
前記カンチレバービーム(72)の前記第一端(721)の長手方向の前記並進運動が最大30μmであることを特徴とする、請求項1に記載のMEMSマイクロミラー。
前記カンチレバービーム(72)の前記第二端(722)は、前記回転軸(58)付近の位置(53)で前記ミラーボディ(50)と接続され、前記第一端(721)は、前記カンチレバービーム(72)の長手方向における前記回転軸から遠い側の位置で前記リリーフ手段(74)と接続されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のMEMSマイクロミラー。
前記リリーフ手段(74)は、一つ以上のリリーフスプリング(741)と前記カンチレバービーム(72)とを結合する剛体要素(742)を備え、前記剛体要素は前記カンチレバービームの厚さよりも実質的に大きな厚さを有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のMEMSマイクロミラー。
前記剛体要素(742)は中央部(743)及び周辺部(744)を有するU字型であり、前記カンチレバービーム(72)は前記中央部と接続し、前記周辺部は前記カンチレバービームの第一端の両側に互いに延長され、前記リリーフスプリングは前記U字型の剛体要素のそれぞれの周辺部と接続することを特徴とする、請求項9に記載のMEMSマイクロミラー。
前記ミラーボディ(50)が、前記少なくとも一つのカンチレバービームアセンブリ(70)によって実質的に決められる、前記回転軸(58)まわりの固有周波数を有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のMEMSマイクロミラー。
前記ミラーボディ(50)及び前記フレーム(60)の間に直接結合される、少なくとも一つの付加的なカンチレバービームを備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のMEMSマイクロミラー。
前記ミラーボディ(50)に動作可能に接続され、前記回転軸(58)まわりのトルクを提供するアクチュエータ(80)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のMEMSマイクロミラー。
前記アクチュエータ(80)が、第一くし(82)は前記ミラーボディ(50)に連結固定され、第二くし(84)は前記フレーム(60)に連結固定されている、一対(82、84)の互いに連携するくしを有する、櫛歯駆動アクチュエータであることを特徴とする、請求項13に記載のMEMSマイクロミラー。
前記アクチュエータ(80)が、第一くし(86)は前記ミラーボディ(50)に連結固定され、第二くしは前記フレーム(60)に連結固定されている、少なくとも一対の付加的な互いに連携するくし(86,88)を有し、前記少なくとも一対の付加的な互いに連携するくし(86、88)は、前記一対(82、84)の互いに連携するくしと前記回転軸(58)から異なった距離に配されることを特徴とする、請求項14に記載のMEMSマイクロミラー。
リリーフスプリング、カンチレバービーム、及び垂直サポートビームから選択される少なくとも一つの構成要素(741)が、その端(745)に向けて徐々に太くなっていくことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載のMEMSマイクロミラー。
前記カンチレバービーム(72)は単結晶シリコン層内に実装され、前記カンチレバービームは、前記単結晶シリコン層が最も低い材料剛性を有する方向と同じ方向に、長手方向を有することを特徴とする、請求項1に記載のMEMSマイクロミラー。
【技術分野】
【0001】
本開示の技術分野は、微小電気機械システム(MEMS)、特にMEMSスキャニングマイクロミラーにかかる。
【0002】
[関連技術]
MEMSスキャニングマイクロミラーは、視覚情報の表示のために開発されてきた。MEMSスキャニングマイクロミラーは、1または2次元中を振動し、そしてレーザーまたはその他の光線を鏡面から反射する。鏡面上への入射ビームの角度とタイミングを変えることによって、二次元ディスプレイマトリクスのような、スクリーンまたはその他の表面上への視覚的な画像を生み出す。細部や色が異なる画像を生み出すために、異なった数のMEMSスキャニングマイクロミラー及びレーザーが用いられている。MEMSスキャニングマイクロミラーの代表的な用途は、ビデオ投影(例えば自動車利用用の、または携帯電話のピコプロジェクション用の、ヘッドアップディスプレイ)、光干渉断層撮影、及びレーザードップラー振動測定である。
【0003】
特許文献1は基準フレームとダイナミックプレートを結合する、モノリシックに作られた微細加工構造を開示している。ある実施例では、トーショナルスキャナーはトーションバーによってフレーム内に配置されている。その中でそれぞれのテザーはそれぞれのトーションバーとくっついている。上記テザーは、それぞれがフレキシブルロッドによるフレームとスプリングによって結合されたコネクションロッドを含む。
【0004】
トーションバーが回転すると、コネクションロッドが動き、フレキシブルロッドが引っ張られ、それによりスプリング中の波形構造を圧縮する。いったんその波形構造が互いに接触してしまうと、テザーは本質的に非弾性的になり、テザーがねじりばね定数の値の急な変化を引き起こすのと同様に、トーションバーのあるセクションの更なる回転が妨げられる。
【0005】
トーションバーの一つまたは両方に付加物またはテザーを付けることで、プレートが軸のまわりを回転し、それによって、それぞれのそのような角度におけるトーショナルスキャナーのねじりばね定数に著しい変化を生み出すので、あらかじめ決められた角度におけるトーションバーの長さが効果的に短くなる。このようにして、鏡面をゆがめることなく、トーショナルスキャナーの静電的な安定性を高める、マルチセグメントの復元トルク曲線を備えるトーショナルスキャナーを提供することができる。従って、垂直サポートビームとしても機能するトーションバーは、ねじり剛性に対して大きな影響を有し、それとともにプレートがフレーム内に配される。
【0006】
特許文献2は、第一端においてフレームと接続されたトーションビームによって配された、回転可能なミラーを備える光学式スキャナーを開示している。上記光学式スキャナーはさらに、ミラーのそれぞれの側に配された一対のカンチレバーと、その上に形成された駆動用圧電素子と、を備える。カンチレバーは一端においてスプリングを備えるフレームと結合され、反対の第二端においてトーションビームと結合される。上記スプリングは一対のくし型電極5、6を含む。電極5、6の間に電圧が印加されると、カンチレバー4上で引張力が発揮されるため、トーションビーム2のばね定数が変化し、その結果、ミラー部材3の共鳴周波数が変化する。上記日本語特許出願において開示された光学式スキャナーでは、カンチレバーは、トーションビームのばね定数を変化させるために、トーションビームに結合される。
【0007】
特許文献3は、二重活性層シリコンオンインシュレーター(SOI)基板上に形成された、ミラー回転軸まわりの最大回転角まで回転運動を実施するように機能するミラーを備える、光学ビームをスキャンするためのMEMS装置を開示している。上記装置は、バウンス現象を提供し、回転動作を反転する働きをする、バウンス機構を含む。バウンス現象は、本質的に非線形的な静電力による動作に対し、区分的に線形なレスポンスを伴うミラーを提供する。MEMS装置のある実施形態は、1つのミラーと、2つのトーションバーと、エレベーションと、1つの基板とを含む。二対の短い「オフセット」ビームは、上面からオフセットbの、ミラーの下部に配置される。オフセットビームは、二対のC字状のスプリングビームによってそれぞれ、保持ビームスプリングを介する基板への接続によってY方向に自由度(デバイスの平面内であって、回転軸に対して直角)を有する、二つのプレーナ型のくし型ドライブローターに接続する。くし型ドライブステーターが、その付属のスプリングビームに対して偏心引力(偏心距離bを有する)を生じると、トーションバーまわりにミラーの回転モーメントを生み出す。上記C字状のスプリングビームは、くし型ドライブにより引き起こされた動きを、ミラーの線形運動に変換する(バウンス現象)ように設計された非線形剛性を有する。上述のPCT出願で公開された配置では、スプリングビームはアクチュエータの直進運動をミラーの回転へと変換するために用いられている。これを受けてスプリングビームは、上面からオフセットbの位置のオフセットビームに付着される。スプリングビームは、デバイスのフレームによって定義される平面に平行な平面内であらかじめ湾曲され、その平面に垂直の方向に幅を有する。
【背景技術】
【0008】
図1Aに例示される、MEMSスキャニングマイクロミラーの第一の最もよく知られたカテゴリーは、そのまわりをミラー52が回転する走査軸58を形成する2つのコリニアトーションビーム41によってフレーム60に付されたミラー52を含む。トーションビーム41は両方ともミラー52を支持し、回転中に必要なねじり剛性を提供する。トーションビーム41はミラー52及びフレーム60の間の唯一の接着点であり、MEMSスキャニングマイクロミラー30の共鳴周波数を決定する。仮にミラーのこのカテゴリーが非常に特殊な固有周波数において共鳴的に動作されようとすると、第一の要請は、トーションビーム41の回転剛性が非常に特殊な値である必要がある。第二の要請は、機械的応力を許容水準に維持するために、上記回転剛性はできるだけ小さいべきであり、これは第一の要請と矛盾する。第三の要請は、他の全ての自由度において、トーションビーム41は、特に面外の並進運動に対して、できるだけ硬いべきであり、それにより、これら三つ全ての要請を考慮すると、これらのトーションビーム41の最適寸法を見いだすのが一層困難となる。
【0009】
MEMSスキャニングマイクロミラーにおける画質の問題は二つの効果から生じる。すなわち、ミラーの望ましくない剛体運動と、ミラーの変形(動的、静的いずれか)である。そのような効果によって画質があまりに悪いのであれば、高い画像解像度を達成することはできず、特に大きな画面にとって好ましくない。
【0010】
上記の好ましくない剛体運動は機械的なサスペンションによって導入される。前述のミラーカテゴリー中のトーションビーム41がミラー52及びフレーム60間の唯一の接着点であるため、トーションビーム41は、走査軸58についての回転剛性だけでなく、全方向のサスペンション剛性を定める。トーションビームの配置は、ミラーの質量及び質量慣性モーメントが対応する回転に対してするように、システムのより高次の共鳴周波数に対して影響を与える。最も重要な高次の共鳴モードは面外ロッキングモード(X軸まわりの回転)、垂直並進モード(Z軸に沿った)、面内回転モード(Z軸まわりの回転)及び水平並進モード(X軸に沿った)である。面外ロッキング及び垂直並進共鳴モードはスキャナーディスプレイの画質を大幅に悪化させる。
【0011】
マイクロミラーの静的及び動的な変形も、スキャナーディスプレイの画質を悪化させる。この変形は±λ/10よりも大きくなるべきではない。ここでλはスキャニングの適用に用いられる最も短いレーザー波長である。静的な変形は、例えば反射金属層を堆積する時または酸化物膜を除去する時に、MEMSミラーの処理によって引き起こされる内部の機械的応力から生じることがある。上記静的な変形は、応力レベルを減らすことによって、またはミラーボディ50の剛性を高め、機械的応力に対してより弾性的にすることによって、減らすことができる。一方、動的な変形はミラーボディ50にかかる慣性力によって生じ、振動運動の加速及び減速によって避けることができない。とても集中した力が、ミラーボディのサスペンションポイントに生じることになる。これらの力のレベルは加速の量に相関し、加速の量はさらに振動振幅と、振動周波数と、鏡の幾何学的な寸法と、に相関する。残念なことに、画像解像度は、走査角度とマイクロミラーの直径との積に比例する。より高い画像解像度は、より大きな走査角度を必要とし、それはトーションビーム41の応力を増大させるだけでなく、動的な変形も増大させる。それはまた、より高い走査周波数を必要とし、応力及び動的な変形に対して同様の効果を有する。トーションビーム41がミラープレート及びフレームの唯一の接着点であるため、これらのトーションビーム41によって生じるとても集中した力が、ミラーボディ50及びマイクロミラー52を変形する。
【0012】
図1Bは、ミラーボディ50にねじり剛性を与えるカンチレバービーム72を用いて、トーションビーム40への要請のひとつを除く、MEMSスキャニングマイクロミラーの第二のカテゴリーの例を示す。ここでトーションビーム40は回転軸58を提供しなければいけないだけであり、回転剛性ができるだけ低くあるべきことを意味し、一方でトーションビーム40のその他全ての自由度の剛性はできるだけ高いべきである。この場合、トーションビーム41はより適切に「垂直サポートビーム」と呼ばれる。MEMSスキャニングミラーのこのカテゴリーは、明確な固有周波数と、寄生振動モードの十分な抑制と、低い機械的応力と、を有するように、より簡単に設計され得る。このカテゴリーのMEMSスキャニングミラーの実施形態は特許文献4に記載されている。本実施形態では、
図1Cに概略的に描かれたフレキシブルリンク74がカンチレバービーム72とミラーボディ50とを接続し、それによりカンチレバービーム72の一端が少なくともX方向に平行移動できるようになる。これによってカンチレバービーム72はいかなる引張応力からも解放され、したがってこれらのフレキシブルリンク74は、より適切に「リリーフスプリング」と呼ばれる。しかしこの実施形態には、いくつかの欠点が認められる。
【0013】
―上記リリーフスプリング74はカンチレバービーム72とミラーボディ50の中間に配され、リリーフスプリング74の長さ及び数が制限され、それはさらに、例えば機械的応力を低減する中で設計者を制限する。
【0014】
―リリーフスプリング74は回転軸58まわりを、ミラーボディ50の回転とともに回転し、従って合計の慣性が大きくなる。従って、より多くの、またはより重いリリーフスプリング74を用いることで、慣性が大きくなり、固有周波数が小さくなり、カンチレバービームアセンブリ70のより高い回転剛性が必要となる。
【0015】
―カンチレバービーム72は四隅においてミラーボディ50に接続され、それにより、ミラーボディ50の慣性を増大させることなしにカンチレバービーム72の長さを延ばすことができない。カンチレバービーム72の長さが延びると、接着点は回転軸58から離れなければならなくなる。
【0016】
―ミラーボディ50のそれぞれの角にカンチレバービームアセンブリによって力が働き、従って、それぞれの角に十分な剛性が提供されなければならない。これは質量の付加を要求し、それにより慣性が増大する。
【0017】
―たった一つのリリーフスプリング74が用いられており、それはカンチレバービーム72のその端の回転自由度を束縛しないので、それによりリリーフスプリング74に大きな応力をもたらす。
【0018】
MEMSスキャニングマイクロミラーはまた、ミラープレートと物理的に接触せずに、走査軸についてのミラープレートへのトルクを、磁気的にまたは電気的に印加するドライバを含む。上記ドライバは典型的にはミラープレートを共鳴周波数で駆動する。MEMSスキャニングマイクロミラーは、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンから、フォトリソグラフィーを用いて作られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】既存のMEMSスキャニングマイクロミラーの概略図である。
【
図1B】既存のMEMSスキャニングマイクロミラーの概略図である。
【
図1C】既存のMEMSスキャニングマイクロミラーの概略図である。
【
図2A】それぞれ本発明のMEMSスキャニングマイクロミラーの平面図及び断面図である。
【
図2B】それぞれ本発明のMEMSスキャニングマイクロミラーの平面図及び断面図である。
【
図2C】ミラーボディが傾いた状態の、
図2Bの断面図である。
【
図3A】本発明のMEMSスキャニングマイクロミラーの実施形態の概略図である。
【
図3B】本発明のMEMSスキャニングマイクロミラーの実施形態の概略図である。
【
図3C】本発明のMEMSスキャニングマイクロミラーの実施形態の概略図である。
【
図4A】本発明のMEMSスキャニングマイクロミラー用のくし型フィンガーの詳細な斜視図である。
【
図4B】それぞれ別の部位にアクチュエータを備えた、本発明のMEMSスキャニングマイクロミラーの異なった実施形態を示す。
【
図4C】それぞれ別の部位にアクチュエータを備えた、本発明のMEMSスキャニングマイクロミラーの異なった実施形態を示す。
【
図4D】それぞれ別の部位にアクチュエータを備えた、本発明のMEMSスキャニングマイクロミラーの異なった実施形態を示す。
【
図4E】それぞれ別の部位にアクチュエータを備えた、本発明のMEMSスキャニングマイクロミラーの異なった実施形態を示す。
【
図5A】カンチレバービームの屈曲が引張応力に与える影響を示す。
【
図5B】カンチレバービームの屈曲が引張応力に与える影響を示す。
【
図5C】カンチレバービームの一端の並進及び回転の自由を示す。
【
図5D】カンチレバービームの一端の並進及び回転の自由を示す。
【
図6A】フィレットがないか、小さいか、大きいか、の弾性素子の様々な設計を示す。
【
図6B】フィレットがないか、小さいか、大きいか、の弾性素子の様々な設計を示す。
【
図6C】フィレットがないか、小さいか、大きいか、の弾性素子の様々な設計を示す。
【
図6D】フィレットがないか、小さいか、大きいか、の弾性素子の様々な設計を示す。
【
図6E】フィレットがないか、小さいか、大きいか、の弾性素子の様々な設計を示す。
【
図7A】それぞれ異なった数のリリーフスプリングを有するか、異なった場所にリリーフスプリングを有するか、カンチレバービームと別の接続をするか、のリリーフスプリングの様々な実施形態を示す。
【
図7B】それぞれ異なった数のリリーフスプリングを有するか、異なった場所にリリーフスプリングを有するか、カンチレバービームと別の接続をするか、のリリーフスプリングの様々な実施形態を示す。
【
図7C】それぞれ異なった数のリリーフスプリングを有するか、異なった場所にリリーフスプリングを有するか、カンチレバービームと別の接続をするか、のリリーフスプリングの様々な実施形態を示す。
【
図7D】それぞれ異なった数のリリーフスプリングを有するか、異なった場所にリリーフスプリングを有するか、カンチレバービームと別の接続をするか、のリリーフスプリングの様々な実施形態を示す。
【
図7E】それぞれ異なった数のリリーフスプリングを有するか、異なった場所にリリーフスプリングを有するか、カンチレバービームと別の接続をするか、のリリーフスプリングの様々な実施形態を示す。
【
図7F】それぞれ異なった数のリリーフスプリングを有するか、異なった場所にリリーフスプリングを有するか、カンチレバービームと別の接続をするか、のリリーフスプリングの様々な実施形態を示す。
【
図7G】それぞれ異なった数のリリーフスプリングを有するか、異なった場所にリリーフスプリングを有するか、カンチレバービームと別の接続をするか、のリリーフスプリングの様々な実施形態を示す。
【
図7H】それぞれ異なった数のリリーフスプリングを有するか、異なった場所にリリーフスプリングを有するか、カンチレバービームと別の接続をするか、のリリーフスプリングの様々な実施形態を示す。
【
図7I】それぞれ異なった数のリリーフスプリングを有するか、異なった場所にリリーフスプリングを有するか、カンチレバービームと別の接続をするか、のリリーフスプリングの様々な実施形態を示す。
【
図7J】それぞれ異なった数のリリーフスプリングを有するか、異なった場所にリリーフスプリングを有するか、カンチレバービームと別の接続をするか、のリリーフスプリングの様々な実施形態を示す。
【
図8A】リリーフスプリングの、回転剛性の非線形性に対して与える影響を示す。
【
図8B】リリーフスプリングの、回転剛性の非線形性に対して与える影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の詳細な説明において、本発明の完全な理解を提供するために、数多くの具体的な詳細が明らかとされる。しかし当業者は、これらの具体的な詳細なしに本発明を実施しても良いことが分かるであろう。他の例では、本発明の側面を目立たなくさせないために、周知の方法、手順及び構成要素については記述されていない。
【0026】
これ以後、発明の実施形態が描かれた添付図面を参照して、発明がより完全に描写される。しかし、本発明は多くの異なった形態で具体化することができ、ここにおいて明らかとされる実施形態に制限されると解釈されるべきではない。そうではなく、これらの実施形態は本開示が完全かつ徹底的なものとなるように提供され、これらによって当業者に本発明の範囲が完全に伝わるであろう。図中において、明確にするために、層及び領域の大きさ及び相対的な大きさが誇張されているかもしれない。ここで発明の実施形態は、本発明の理想的な実施形態(及び中間構造)の概略図である断面図を参考として、描写される。従って、例えば製造技術及び/又は製作公差から生じる、図の形状からの変形が予想される。従って、本発明の実施形態は、ここに描かれた領域の特定の形状に制限されると解釈されるべきではなく、例えば製造面から生じる形状の偏差を含むことができる。従って、図で描かれた領域は本質的に概略的なものであり、それらの形状は装置の領域の正確な形状を描くように意図されておらず、発明の範囲を制限するように意図されていない。
【0027】
ここで様々な構成要素、構成部分、領域、層、及び/又はセクションを記述するために、第一、第二、第三、などの用語が用いられたとしても、これらの構成要素、構成部分、領域、層、及び/又はセクションはこれらの用語によって制限を受けるべきではない。これらの用語は、一つの構成要素、構成部分、領域、層、又はセクションを別の領域、層、又はセクションから区別するために用いられているに過ぎない。従って、本発明の教えから離れることなく、以下で議論される第一の構成要素、構成部分、領域、層、又はセクションは第二の構成要素、構成部分、領域、層、又はセクションと呼ばれ得る。
【0028】
別に定義がない限り、ここで用いられる全ての用語は(技術的及び科学的な用語を含む)、当業者によって通常理解されているのと同じ意味を有する。さらに、通常用いられている辞書に定義されているような用語は、その関連分野の文脈中での意味と矛盾しない意味を持つと解釈されるべきであり、ここで特別にそのように定義されない限り、理想的または過度に形式にとらわれた意味で解釈されない。不一致の際には、定義を含む、本明細書がコントロールする。さらに、材料、方法、例は説明例にすぎず、制限する意図ではない。
【0029】
特別に言及されない限り、「長手方向」という表現は、カンチレバービームの長手方向と理解される。
【0030】
類似の構成要素が類似の参照番号を共有している、
図2A〜
図2Cはそれぞれ、本発明のMEMSスキャニングマイクロミラー30の平面図及び断面図である。
図2Aは休止位置のマイクロミラーを示す。
図2Bは、
図2AのセクションA−Aに沿った断面図による休止位置のマイクロミラーを示し、
図2Cは、ミラーボディ50が回転軸58まわりに傾いた、
図2AのセクションA−Aに沿った断面図である。
【0031】
MEMSスキャニングマイクロミラー30は、ミラーボディ50と、フレーム60と、カンチレバービームアセンブリ70と、垂直サポートビーム40とを含む。カンチレバービームアセンブリ70はカンチレバービーム72と、一つ以上のリリーフスプリング741を備えるリリーフ手段74とを有する。ミラーボディ50はミラーサポート54上のミラー52と、回転軸58とを有する。一つの実施形態では、ミラー52はミラーサポート54の上に形成される。別の実施形態では、ミラー52はミラーサポート52に取り付けられる。ミラーボディ50は、正方形、長方形、円形、楕円形、その他、特定の用途に望まれるいかなる平面形状でもよい。ミラーの面がミラーサポート54の鏡面を画定する。当業者であればミラー52及びミラーサポート54の形状は独立であり、特定の用途に望まれるいかなる形状でもよく、例えば円形、楕円形、正方形、長方形、または他の望まれる形状でよいことを理解する。ミラーボディ50はフレーム60のミラー窪み62内に配される。フレーム60は窪みの外周64を伴うミラー窪み62を形成する。
【0032】
示された実施形態では、カンチレバービーム72は、低い材料剛性の向きを有する単結晶シリコン層で実施される。カンチレバービームは、低い材料剛性の方向と同じ方向に長手方向を有する。これにより層の割れのリスクを低減することができる。さらに詳細には、カンチレバービーム72は<100>軸を有するシリコン層で実施され、カンチレバービームは、この場合低い材料剛性を有する<100>方向と同じ方向に長手方向を有する。層は絶縁層上のシリコンとして形成されてもよい。
【0033】
MEMSスキャニングマイクロミラーはミラーボディ50と結合されたカンチレバービームアセンブリ70を用いて、回転軸58まわりのねじり剛性を設定する。一対の垂直サポートビーム40は、回転軸58において、垂直に(すなわち、フレーム60の主表面と直角に)ミラーボディ50を支える。しかし、垂直サポートビーム40はねじり剛性に対して無視できる程度の影響しか与えないので、ミラーボディ50の固有周波数は実質上カンチレバービームアセンブリ70によって決定される。固有周波数は実質上、垂直サポートビーム40と独立である。ここで定義される固有周波数とは、ミラーボディ50の回転軸58まわりの、非減衰の周波数である。垂直サポートビーム40は面外ロッキングと、対応する動的モード及び対応する共鳴周波数の垂直モード剛性とを規定する。ねじり剛性は面外ロッキング及び垂直モード剛性から分離することができるので、ねじりモード剛性及び共鳴周波数に影響を与えることなく、面外ロッキング及び垂直モード周波数は、より高い値などの、望ましい値に設定され得る。ここに定義されるように、Y軸は回転軸58に沿い、X軸はミラー52が停止している際の鏡面上でY軸と直交し、Z軸はミラー52が停止している際の鏡面に直交し、鏡面の外に出る。
【0034】
カンチレバービーム72の一端722はミラーボディ50に固定され、一方で他端721はリリーフ手段74と接続される。これは
図3Aから3Cに概略的に描かれてもおり、類似の構成要素は
図2Aと類似の参照番号を共有する。
【0035】
図3A及び
図2Aの実施例において、少なくとも一つのカンチレバービーム72の第二端722は、回転軸58の近くの位置53においてミラーボディ50に接続され、第一端721は、回転軸58から遠く離れた位置でリリーフ手段74と接続される。
【0036】
カンチレバービームアセンブリ70はマイクロミラーボディ50の回転軸58まわりのねじり剛性を提供する。リリーフ手段74は、カンチレバービーム72からフレーム60へ、コンプライアントな又はフレキシブルな結合を提供する。リリーフ手段74は、カンチレバービーム72の長手方向(
図3A、
図3BのX方向、
図3CのY方向)に相対的に低い剛性を有し、それによりミラーボディ50が回転軸58まわりに回転した際に、カンチレバービーム72の一端が長手方向に動くことができる。リリーフ手段74は横方向(
図3A、
図3BにおけるZ方向及びY方向、
図3CにおけるX方向)に相対的に大きな剛性を有する。
【0037】
図3Cにおいて、カンチレバービーム72は回転軸58と平行に向いており、カンチレバービーム72と回転軸58が必ずしも直交しなくてもよいことを示す。そのような平行配置はマイクロミラー30の全体寸法を抑えるために使用されるが、機械的応力を増大させる、カンチレバービーム72のねじれを引き起こすだろう。
【0038】
回転軸58まわりのミラー52の回転についてのねじり剛性は、主にミラーボディ50の慣性及びカンチレバービームアセンブリ70の剛性によって定められ、さらにそれはカンチレバービーム72の曲げ剛性並びにリリーフ手段74のねじり及び並進剛性により定められる。カンチレバービーム72の曲げ剛性は、カンチレバービーム72の長さ、幅、及び最も重要な厚みによって定められる。
【0039】
垂直サポートビーム40及びリリーフ手段74のX方向における複合的な剛性が、動作中の回転軸58と直交する方向(X方向)のミラーボディ50の動きを妨げる。以下に、リリーフ手段74の更なる詳細が提供される。
【0040】
垂直サポートビーム40はフレーム60及びミラーボディ50の間に、回転軸58に沿って接続され、フレーム60中のマイクロミラーボディ50を支える。一つの実施形態では、垂直サポートビーム40は回転軸58に対して垂直に細い長方形の断面を有し、ミラー52及びミラーボディ50の表面に垂直に、上記長方形の長軸を、ミラー52の表面に平行に、上記長方形の短軸を備える。回転軸58まわりのMEMSスキャニングマイクロミラー30の回転に対応するねじり剛性は、カンチレバービームアセンブリ70によって提供される。垂直サポートビーム40はミラーボディ50を支える為だけに必要であり、ねじり剛性への影響は無視できる。垂直サポートビーム40は、ミラーボディ50の垂直変位(Z方向)に対する剛性と、回転軸58と垂直な(X軸まわりの)ロッキング運動に対する剛性と、ができるだけ大きくなるような大きさに作られる。
【0041】
MEMSスキャニングマイクロミラー30は、回転軸58のまわりにミラーボディ50を動かすトルクを提供する、アクチュエータ80を含むことができる。一つの実施形態では、アクチュエータ80は、フレーム60に取り付けられたくし型のフレーム84と交互に配置される、ミラーボディ50に取り付けられたくし型のミラー82を含む。交互に配置されたくし型のミラー82とくし型のフレーム84との間に電位差を作ると、くし型のミラー82とくし型のフレーム84の間に駆動力が生じ、それによって回転軸58まわりのミラーボディ50へのトルクが生じる。MEMSスキャニングマイクロミラー30を動かすために、固有周波数の振動電位を印加することができる。他の駆動方法の例は、電磁式駆動及び圧電アクチュエータを含む。電磁式駆動では、マイクロミラーは磁界中に「浸され」、導電パスを通る交流電流が、必要な回転軸58まわりの振動トルクを生み出す。圧電アクチュエータはカンチレバーミームに集中されることができ、又は電気信号に反応して交互のビームを曲げる力を生じ、必要な振動トルクを生み出す、圧電材料で作られ得る。
【0042】
MEMSスキャニングマイクロミラー30は、フォトリソグラフィーやDRIE技術を用いて、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン材料からつくられ得る。
図4Aは、
図2Aと類似の構成要素は類似の参照番号を共有し、本発明のMEMSスキャニングマイクロミラー用のくし型フィンガーの詳細な斜視図である。くし型ミラー82のくし型フィンガー100は、くし型のフレーム84のくし型フィンガー110と交互に配置される。一つの実施形態では、MEMSスキャニングマイクロミラーは、上部シリコン層と下部シリコン層と上部シリコン層及び下部シリコン層の間の絶縁層とを有する、シリコンオンインシュレーター(SOI)ウェハから作られ得る。一つの実施形態では、くし型ミラー82及びくし型フレーム84は、絶縁層がくしを鏡面と平行に分断し、電気的に絶縁された上部導電部及び下部導電部を各くし型フィンガーにつくるように製造される。くし型ミラー82のくし型フィンガー100は、第一導電部102及び絶縁層106で分離された第二導電部104を含む。くし型フレーム84のくし型フィンガー110は、第一電導部112及び絶縁層116で分離された第二電導部114を含む。くし型ミラー82の上部導電部とくし型フレーム84の下部導電部に、またはその反対に、電位差を作ると、くし型ミラー82及びくし型フレーム84が同じ向きに揃い、ミラーボディ50が休止している時に、くし型ミラー82及びくし型フレーム84の間に最初の駆動力が生じる。二つの(トップとボトム)部分のくし型フィンガーの分離は、対向する層とスイッチングすることにより、一振動サイクルに半分の振動期間よりも長い時間の駆動ポテンシャル(最終的にはくし型フィンガーの位置関係によるトルク)をつくる。一つの実施形態では、カンチレバービームはシリコンオンインシュレーターウェハの上部シリコン層に作られることができ、くし型ミラー82のトップ第一導電部に電位を与えることができる。別の実施形態では、カンチレバービームはシリコンオンインシュレーターウェハの下部シリコン層に作ることができ、くし型ミラー82のボトム第二導電部104に電位を与えることができる。別の実施形態では、垂直サポートビームがシリコンオンインシュレーターウェハの下部シリコン層に作られることができ、くし型ミラー82のボトム第二導電部104に電位を与えることができる。別の実施形態では、垂直サポートビームはシリコンオンインシュレーターウェハの上部シリコン層に作られることができ、くし型ミラー82のトップ第一導電部102に電位を与えることができる。さらに他の実施形態では、垂直サポートビームはシリコンオンインシュレーターウェハの下部シリコン層及びシリコンオンインシュレーターウェハの上部シリコン層の両方に作られることができ、くし型ミラー82のボトム第二導電部104及びくし型ミラー82のトップ第一導電部102の両方に電位を与えることができる。
【0043】
一つの実施形態において、くし型ミラー82のトップ第一導電部102は、導電性ビア、ワイヤーボンド、または付加的な金属堆積によってくし型ミラー82のボトム第二導電部104と短絡される。
【0044】
図4Bから
図4Eは本発明の異なる実施形態を示し、それぞれアクチュエータ80の位置が異なる。
図4Bでは、アクチュエータ80は湾曲され、ミラーボディ50の周囲に位置している。
図4Cでは、アクチュエータ80は湾曲されず、ミラーボディ50の周囲に位置しているが、回転軸58からの距離はより大きい。
図4Dでは、アクチュエータ80は、回転軸58近くのミラーボディ50のそれぞれの側であってミラーボディとカンチレバービームアセンブリとの間に位置している。
図4Eではアクチュエータ80は回転軸58近くのミラーボディ50のそれぞれの側であって、しかしカンチレバービームアセンブリとフレームとの間に位置している。
【0045】
図2Aに示される通り、アクチュエータ80は少なくとも一つの付加的な一対の相互に連携するくし86、88を有する。第一に言及した一対のくし82、84と同様に、上記少なくとも一対の付加的なくしの、一つのくし86はミラーボディ50に連結固定されて、上記付加的な一対のくしの、もう一つのくし88はフレーム60に連結固定される。付加的な一対のくし86、88は、先に述べた一対の相互に連携するくし82、84とは回転軸58からの距離が異なって配される。この場合回転軸58のより近くに配置されている、付加的な一対のくし86、88の存在によって、たとえより外側に配置された一対のくし82、84が互いに関して相対的に大きな接線方向の変位を有したとしても、アクチュエータ80がマイクロミラーボディ50に回転力を印加することができる。
【0047】
図5A及び
図5Bは、ミラーボディ及び第一端で強固な基準フレームに固定される二つのカンチレバービームの概略的な側面図である。その中で
図5Aは休止状態のミラーボディを示し、
図5Bは回転軸まわりに回転したミラーボディを示す。
図5Cは、傾いたミラーボディ及び第一端がガイドされた、すなわち強固な基準フレームに長手方向に動くことができる(dx)ように付けられた、二つのカンチレバービームの概略的な側面図を示す。
図5Dは、傾いたミラーボディ及び第一端がサポートされた、すなわち長手方向に動くことができる(dx)ように、そして上記長手方向を横断し、フレームによって定義される平面内の軸まわりに、強固な基準フレームに対して回転可能(R
y)であるように付けられた、第一端を有する二つのカンチレバービームの概略的な側面図を示す。
【0048】
図8A、
図8Bは、一方で
図5Aと
図5Bの配置を、他方で
図5Dの配置を比較したシミュレーション結果である。この中で、
図8Aはミラーの傾き角度を負荷の関数として示し、
図8Bは相対的な回転剛性を上記傾き角度の関数として示す。
【0049】
ミラーボディが休止状態の、
図5Aで示される固定されたカンチレバービームの配置では、ミラーボディの傾き角度はゼロであり、カンチレバービームは変形がなく、従って応力もかからない。カンチレバービームの長さはL
0である。しかし、
図5Bに示されるように、回転軸のまわりをミラーボディが回転すると、カンチレバーは曲げられ、カンチレバーの一端はミラーボディとともに回転し、他端は固定されているために、S字型となる。基準フレームに固定されたカンチレバービームの端はX方向に動くことができないため、S字型の軌道の長さL
1はL
0よりも長い。従って、カンチレバービームは引っ張られ、又は少し引き延ばされることとなる。これにより曲げ応力に加えて引張応力がカンチレバービームに生じ、それによって故障のリスクが高まり、剛性は増加する。ミラーボディの傾き角度が大きいと、引張応力がさらに支配的となり、
図8Aの実線で示される通り、鏡のそれ以上の傾きを妨げる。そのような場合、
図8Bの実線で示されるように、剛性は傾き角度の関数として、強い非線形性が観測される。
図5Dの配置だと、カンチレバービームの一端がX軸方向に並進運動し、Y軸と平行な軸まわりに回転する自由を与えられている。これによってカンチレバービームから大半の引張応力が除去され、それによってミラーボディの回転剛性が減少し、
図8Bの破線で示されるように、回転剛性はミラーボディの傾き角度の関数として、線形性が高まる。それはまた、カンチレバービーム中の機械的応力の総量を下げることによって機械的な故障のリスクを低減する。ミラーボディの回転剛性は、
図5Cに描かれるように、並進運動が制限されてさえいなければ、大きくなる。これによって、そうでなければ回転によって生じていた、リリーフ手段中の機械的応力を低減するが、これは回転角度の関数としたカンチレバービームアセンブリの剛性の非線形性を増大させ得る。
【0050】
図2Aは四つのカンチレバービーム72を備えたミラーボディの実施形態を示し、それぞれのカンチレバービーム72には並進自由度(DOF)が提供される。リリーフ手段74の多くのリリーフスプリング741により、カンチレバービーム72の一端は、少なくともX方向の並進運動が可能となり、これによってカンチレバービーム72から大半の引張応力が軽減される。もしカンチレバービームの一端の、全てのリリーフスプリング741が同一線上に同じ向きに揃えば(
図7B参照)、Y軸と平行な軸まわりの回転も制限されない。そのような場合、カンチレバービーム72の曲げ応力及び剛性も低減されるであろう。しかし、もし
図2Aや
図7Cから
図7Eに示されるように複数のリリーフスプリング741が同一線上でなく用いられると、X方向の並進自由度のみ制限されないであろう。
【0051】
そのようなリリーフスプリング741は、原理的にはカンチレバービーム72のどちらの端に位置することもできる。しかし、もしそれらがカンチレバービーム72とミラーボディ50との間に位置したとすると、ミラーボディ50自体に従って、回転軸58まわりを回転してしまうため、ウェハ平面から出て行ってしまうだろう。これにより、望ましい振動周波数を達成するためには、ミラーボディ50及びカンチレバービームアセンブリ70の合計の回転慣性ができるだけ低いべきであるので、慣性の観点からリリーフスプリング741に対し制限が課せられる。もしリリーフスプリング741を、カンチレバービームアセンブリ70の長手方向(
図2AでのX方向)に比べて、他の全ての方向で硬く設計しようとすれば、追加材料が必要となり、不可避的に追加の回転慣性が必要となる。もしリリーフスプリング741が、カンチレバービーム72のもう一方の(不動の)端において、フレーム60とカンチレバービーム72の間にあれば、それらはほとんど一切慣性を付加しないため、好ましい実施形態となる。これが本計算によって示されている。
【0052】
図2Aと同様に、六つの平行なリリーフスプリング741が用いられたと仮定する。リリーフスプリング741は、長さ約300μm(Y方向)、高さ約50μm(Z方向)、平均の厚み約10μm(X方向)である。従ってこれら六つの平行なリリーフスプリング741の重量は約2μgである。U字型をした剛体742の外部境界ボックスは約500×290μmの寸法であり、一方、U字型を形成する内側のカットアウトは約420×190μmの寸法である。厚みをリリーフスプリング741の厚みと同じと仮定すると、上記U字型の剛体の重さは約7.6μgと計算される。従って、リリーフスプリング741とU字型の剛体742とで構成される、リリーフ手段74の総重量は約9.6μgとなる。
【0053】
また、リリーフ手段74がミラーボディ50に装着されたと仮定する。この場合、それらはミラーボディ50とともに回転軸58まわりを回転する。回転軸58への距離(r)が分かれば、回転慣性への寄与が計算できる。
図2Aでは、この距離は約1560μmである。質点(m)の慣性モーメント(I)はmr
2であるから、慣性は2.4×10
−14Kgm
2となる。ミラーデバイス30の各角にリリーフ手段74を有するので、さらに四倍され、慣性への総寄与は9.4×10
−14Kgm
2となる。しかしミラーボディ50とカンチレバービーム72を合わせた複合的な回転慣性は2×10
−13Kgm
2と小さい。従ってリリーフ手段74は、直接ミラーボディ50に取り付けられれば、回転慣性を47%も増大させる。しかし、もしリリーフ手段74が、カンチレバービーム72とミラーボディ50との間に存在する代わりに、カンチレバービーム72とフレーム60との間に存在すると、それらはほとんど動かず、回転慣性への寄与はずっと小さくなるか、無視できるものとなる。これは
図3Bに示されるような実施形態に適用できるだけでなく、リリーフ手段74が回転軸58からずっと離れて位置している
図3Aや
図2Aと同様の実施形態にも適用できる。
【0054】
リリーフ手段74をカンチレバービーム72とミラーボディ50との間に配置しない別の理由は、その場合、リリーフ手段74は、カンチレバービーム72からミラーボディ50に非常に大きい力をトランスファーするために、ミラーボディ50にがっちりと固定されなければならず、すでに上で計算した慣性に加えて、さらに質量及び慣性の追加が必要となるからである。さらにそれは、すでにリリーフ手段74自体のために必要とされた面積に加えて、かなり大きな面積を必要とする。しかし本願の
図2A及び特許文献4の
図5Aから
図5Eから明らかなように、カンチレバービーム72とミラーボディ50との間で利用できる面積は極めて限定されている。カンチレバービーム72とフレーム60の間の、他端で利用可能な面積はずっと広く、例えば長いリリーフスプリング741または平行な複数のリリーフスプリング741を使用する自由や、剛性や応力などの機械パラメータを調整する設計を最適化する自由がずっと広がる。これは構造力学の中で、寸法と負荷と変位と応力の間の関係を表す、かなりよく知られた式を用いて表すことができる。
【0055】
W.C.Youngの「Roark’s Formulas for Stress and Strain」によれば、一端が完全に固定され、もう一端が部分的に固定されているカンチレバーに負荷(W)がかかった状態でのカンチレバービームの変位(x)は、以下で表され、
x=(Wl
3)/(16Ebd
3)
Eは材料のヤング係数であり、lはカンチレバービームの長さであり、bはカンチレバービームの高さであり、dはカンチレバービームの厚さである。同様に、応力(σ)は、以下で表される。
σ=(6Wl)/(8bd
2)
【0056】
応力の変位に対する比率は、以下で表され、
(σ/x)=(12Ed)/l
2
ここから、変位(x)が与えられたとき、応力(σ)が長さの二乗に反比例することが分かる。従ってリリーフスプリング741の長さを延長すると機械的応力を大幅に低減する。これは、リリーフ手段74がカンチレバービーム72とフレーム60との間に位置していれば、カンチレバービーム72のそちら側の端ではより広い空間を利用可能なため、より簡単に実現できる。同時に、これにより複数の幾何学的に平行なリリーフスプリング741を使用することができ(
図7Cから
図7E参照)、カンチレバービームのその端の回転自由度を制限する。
【0057】
カンチレバービーム72の引張歪み及び応力を低減するために、リリーフ手段74は、カンチレバービーム72の長手方向(
図2のX方向)にいくらかのコンプライアンスを提供しなければならない。しかし、望んでいない動きを避けるために、カンチレバービーム72の横方向(
図3A、
図3BのZ方向及びY方向、
図3CのZ方向及びX方向)の並進運動はできるだけ強く抑えられるべきである。許容される唯一の動きは、回転軸58まわりのミラーボディ50の傾きである。従ってリリーフ手段74はカンチレバービームの横方向にできるだけ硬いべきであるが、これはカンチレバービームの長手方向についてのコンプライアンスの要請と矛盾する。ここでトレードオフが必要となるが、幸い必要とされる長手方向の並進は比較的小さく、すなわち30μm未満である。これはアクチュエータ80やミラーボディ50の最大の並進に比べてずっと小さい。従ってリリーフ手段74はカンチレバービーム72の長手方向にも比較的硬く設計され、それにより長手方向のストロークが小さくなる。これは他の方向についての高い並進剛性が可能とする。この、長手方向以外の全ての方向における高い並進剛性は、リリーフ手段74のカンチレバービーム72へのコンプライアント接続によって損なわれてはならない。このような理由で、付加的な剛体742はリリーフスプリング741及びカンチレバービーム72の間に用いられる(
図7D参照)。この剛体742によってリリーフスプリング741のカンチレバービーム72への接続が容易となる。リリーフスプリング741は、カンチレバービーム72の長手方向にその最も薄い寸法を有することが好ましい。このようにして、リリーフスプリング741は、その付属したカンチレバービーム72の長手方向を横切る方向に高い並進剛性を提供する。例として
図2に示されるリリーフスプリング741は、長手方向に5μmの最も薄い厚みを有し、その高さ、すなわちZ方向の寸法、は約55μmである。比較として、付属するカンチレバービーム72はミラー52の面と垂直に最も薄い寸法(約10μm)を有し、上記平面及びそれと直交する方向に、約300μmの最も小さな幅を有する。この剛体742は、まるでカンチレバービーム72に巻きつけられているかのように、U字型でよい(
図7E参照)。すなわち、カンチレバービーム72は、剛体要素742の中央部743に接続され、リリーフスプリング741は、U字型の剛体の周辺部744の外側に接続される。この実施形態は、リリーフ手段74が、その付属のカンチレバービーム72の第一端721において小さな面積しか占めないという点で好都合である。このようにして、カンチレバービーム72及びそのリリーフ手段74の寸法を決めるのに、より多くの自由度が利用可能となり、長手方向に限られた広さの空間しか利用できないときに、特に好都合である。
【0058】
図7D及び
図7Eの実施形態において、剛体要素742は、付属するカンチレバービーム72より実質的に厚い、すなわち二倍以上厚い、厚みを有する。この実施形態では、これはMEMSミラーデバイスが、約10μmの厚みの上層と、厚さ約1μmの絶縁層によって隔たれた厚さ約300μmの下層と、を有するSOIウェハで実施されて実現する。この中で、剛体要素742は上層と、絶縁層と、一部の下層とに形成され、結果として55μmの厚みとなり、付属するカンチレバービーム72は上層に形成される。その結果、この実施形態では、剛体要素742はカンチレバービームの約5.5倍の厚みを有する。
【0059】
これによってMEMSミラーデバイス30の全体寸法が限定され、一つのシリコンウェハ上により多くのデバイスが製造できるようになる。
図7F、
図7Gに描かれるような別の実施形態では、リリーフスプリング741の形状はジグザグ形状である。
図7Hから
図7Jでは、リリーフスプリング741がX軸まわりに90度回転されている。全ての実施形態は共通して、カンチレバービーム72がリリーフ手段74を介してフレーム60と結合されている。それとともに、カンチレバービーム72は、ミラーボディ50の回転慣性を増大させるのを避けつつ、長手方向に自由に伸縮することが可能となる。
【0060】
一つの実施形態では、MEMSミラーデバイス30は、ミラーボディ50とフレーム60との間に直接結合される、少なくとも一つの付加的なカンチレバービーム(示されていない)を有する。そのような付加的なカンチレバービームはミラーの長手方向の振動を低減するために付加されてもよい。上記付加的なカンチレバービームは、典型的には、カンチレバービーム72よりも小さいねじり剛性を有する。これは、付加的なカンチレバービームをカンチレバービーム72よりも長くすることで実現されてもよい。MEMSミラーデバイス30は、例えば、各カンチレバービーム72と平行に配置された一つの付加的なカンチレバービームを有しても良い。
【0061】
図2A及び
図3Aに示される実施形態では、カンチレバービーム72はミラーボディ50の角には接続されておらず、その代わりに回転軸58の近くの点においてミラーボディ50と接続される。これにより、ミラーボディ50の慣性を増加させることなく、カンチレバービーム72の長さを延ばすことができる。もしカンチレバービーム72の長さが延ばされると、曲げ応力が減少しうる。剛性の減少を補償するために、同時に厚みが厚くされる。剛性は厚みの三乗に比例するため、これは剛性に大きく影響するが、応力は厚みと線形比例するだけなので、機械適応力に対してはそこまで大きな影響を与えない。
図2A及び
図3Aの実施形態の別の長所は、リリーフスプリング741が回転軸58からかなり離れてフレーム60に接続されていることであり、それによってリリーフスプリング741の寸法及び個数を最適化するための、最大限の面積が提供される。
【0062】
図2Aに示されたMEMSスキャニングマイクロミラーの実施形態では、カンチレバービーム72は回転軸58に向かう方向に幅が太くなっている。これによりカンチレバービーム72の機械的耐久性が向上する。
【0063】
リリーフ手段74の機械的耐久性を向上させるために、そして機械的な故障のリスクを低減するために、リリーフスプリング741の機械的応力は最小化されなければならない。これは長さを延ばす(
図2AのY方向)ことにより実現できるが、これはY及びZ方向の剛性をある程度損なってしまう。機械応力を低減する別の方法は、リリーフスプリング741を薄くする(
図2AのX方向)である。というのも、ある変位に対して機械的曲げ応力(σ)は、リリーフスプリング741の厚み(d)に比例するからである。剛性の減少を補償するために(全方向で)、例えば
図7Bから
図7E及び
図7Jのように、機械的に平行に配置された複数のリリーフスプリング741を用いることができる。機械的に平行に複数のリリーフスプリング741が用いられると、それらの剛性は合計され、結果としてリリーフ手段74のより大きな全体の剛性をもたらす。このように、リリーフ手段74の機械的剛性を低減することなく、リリーフスプリング741の機械的曲げ応力は低減され得る。同時に、(
図2Aにおける)Z方向の並進剛性の、X方向の並進剛性に対する比率が、リリーフスプリング741の長さをできるだけ短く保つことによって、向上されることができ、それによって望ましくない動きがさらに抑制される。また、カンチレバービーム72の端における又はカンチレバービーム72の端における剛体742の(
図2Aで定義されたY軸に平行な軸まわりの)回転剛性が非常に大きくなる。これは、一つのリリーフスプリング741のみ(
図7A参照)又は複数の同一線上のリリーフスプリング741(
図7B参照)が用いられた時には不可能である。
【0064】
図2Aにおいて、異なる三種類の弾性要素が識別される。リリーフスプリング741と、カンチレバービーム72と、垂直サポートビーム40である。これら全ての弾性要素の機械的耐久性を向上させるために、機械適応力は低減されるべきである。それぞれの角746において応力集中が予想され、そこではこれらの応力が、機械的な故障につながる割れ目を生じることが予想される。これは
図6Aに示されるような、鋭い角746については尚更である。これはそれぞれの角にフィレットを追加することで改善することができ、フィレットは一般に一定の半径(R
small)を有し、フィレットは一般に両方の縁に接線的に接する(
図6B)。半径が大きくなるにしたがって(R
medium)、応力集中が小さくなる(
図6C)。しかし大きい半径とすると、付加的な材料も多くなり、それにより剛性が大きくなり、それは補償されなければならない。それに加えて、大きな半径は多くの空間を必要とする。これら両方のマイナス面は、弾性要素とのみ接線的に接し、剛体742の端とは接線的に接しない、大きな半径のフィレットを用いることで解決することができる(
図6D)。これは応力集中を大幅に低減し、そこまで多くの剛性を追加せず、多くの面積を必要としない。フィレットと剛体742の間に尖った角が生じ、それによってまだいくらかの応力集中が導入されるかもしれない。しかしこれは小さい半径の第二フィレットを導入することで改善されうる(
図6E)。その中に弾性要素の端745、ここではリリーフスプリング741、は、その値で上記少なくとも一つの要素が上記端へと広がっていく、そして弧が90度未満の、回転半径R
largeよりも小さな回転半径R
very smallを有する、角746を有する。
【0065】
ここに開示された発明の実施形態は現在好ましいと考えられているものの、発明の範囲から逸脱せずに多くの変形及び変更が可能である。発明の範囲は添付の特許請求の範囲に示され、等価な意味及び範囲内に入る全ての変更は、その中に含まれると解する。
【0066】
本明細書中で用いられる「備える(comprise)」及び/または「備えている(comprising)」という用語は、述べられた特徴、整数、段階、作用、構成要素及び/または構成部分の存在を明確にし、しかし、一つ以上の他の特徴、整数、段階、作用、構成要素、構成部分及び/またはそれらの群の存在または付加を除外するものではない。特許請求の範囲において、「備えている(comprising)」という言葉は、他の構成要素や段階を除外せず、単数形での表記「a」または「an」は複数を除外しない。一つの構成部分または他のユニットは請求項中で挙げられたいくつかのアイテムの機能を実現するかもしれない。単に、相互に異なる請求項中に特定の手段が挙げられているという事実は、これらの手段を組み合わせても利点がない、ということを意味しない。請求項中のどの参照符号も、範囲を制限するものと解釈されるべきでない。