(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアミン成分が、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ジエチレントリアミン(DETA)、エチレンジアミン(EDA)、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
二硫化モリブデンは、潤滑油組成物における用途に望ましい添加剤として長く知られてきた。二硫化モリブデンは普通、細かく粉砕し、次いで潤滑油組成物中に分散することによって、摩擦調整特性及び摩耗防止特性を付与する。しかし、細かく粉砕した二硫化モリブデンを使用する大きな弊害の一つに、溶解度の不足がある。
【0003】
細かく粉砕した二硫化モリブデンを摩擦調整剤として使用することに代わる方法として、モリブデン化合物の様々な塩を含む、多くの他の手法が採用されてきた。ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)及びジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、摩擦調整特性を付与することが当技術分野では周知である。MoDTCの代表的な組成物は、Larsonら、米国特許第3,419,589号(二酸化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(VI)を教示している);Farmerら、米国特許第3,509,051号(硫化ジチオカルバミン酸オキシモリブデンを教示している);及びSakuraiら、米国特許第4,098,705号(硫黄含有ジヒドロカルビルジチオカルバミン酸モリブデン組成物を教示している)に記載されている。
【0004】
MoDTPの代表的な化合物は、Rowanら、米国特許第3,494,866号に記載されている組成物、例えば、ジイソプロピルホスホロジチオ酸オキシモリブデンである。
【0005】
モリブデン化合物を油中に組み込む別の方法は、既知の分散剤を使用して分散させた二硫化モリブデン又はオキシ硫化モリブデンのコロイド錯体を調製することである。既知の分散剤として、スクシンイミド、カルボン酸アミド、ホスホノアミド、チオホスホノアミド、マンニッヒ塩基、及び炭化水素ポリアミンを含む、塩基性窒素含有化合物が挙げられる。
【0006】
Kingら、米国特許第4,263,152号;Kingら、米国特許第4,261,843号;及びKingら、米国特許第4,259,195号は、酸性モリブデン化合物と、分散剤として作用する塩基性窒素化合物とを含む、抗酸化剤及び摩耗防止性添加剤として使用されるモリブデン化合物を教示している。
【0007】
DeVriesら、米国特許第4,259,194号は、抗酸化剤、摩耗防止剤、及び摩擦調整剤としての使用のための、テトラチオモリブデン酸アンモニウム及び塩基性窒素化合物の反応生成物を含む、硫黄含有添加剤を開示している。
【0008】
Nemo、米国特許第4,705,643号は、潤滑油中の清浄剤添加剤としてのカルボン酸アミドの調製を教示している。
【0009】
Uddingら、米国特許第5,468,891号は、カルボン酸のアルカリ土類金属塩、アミン及びカチオン性モリブデン源を反応させることによって調製されるモリブデン含有錯体を含む、潤滑油用減摩添加剤について記載しており、この添加剤において、(酸性基の当量数)対(モリブデンのモル数)の比(当量:モル)は、1:10〜10:1の範囲であり、(酸性基の当量数)対(アミンのモル数)の比(当量:モル)は、20:1〜1:10の範囲である。
【0010】
Ruhe、Jr.ら、米国特許第6,962,896号は、オキシ硫化モリブデンポリアミドを含む淡色モリブデン化合物及びポリアミド分散剤を含む潤滑油用抗酸化剤添加剤について記載している。
【0011】
Gattoら、米国特許第6,174,842号は、摩耗防止性及び抗酸化剤添加剤として、潤滑油と、反応性硫黄を実質的に含まない油溶性モリブデン化合物と、油溶性ジアリールアミンと、フェン酸カルシウムとを含む潤滑油組成物を開示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、様々な修飾形態及び代替形態が可能であるが、その特定の実施形態は、本明細書に詳細に記載されている。しかし、本明細書中の特定の実施形態の記載は、本発明を、開示された特定の形態に限定することを意図せず、それどころか、付随する特許請求の範囲で定義された本発明の趣旨及び範囲内に入る、すべての修飾、同等物、及び代替形態を網羅することを意図することを理解されたい。
【0017】
定義
以下の用語は、明細書全体を通して使用され、他に指摘されていない限り、以下の意味を有することになる。
【0018】
「ポリアミン」という用語は、1個より多くの塩基性窒素を含有する有機化合物を指す。化合物の有機部分は、脂肪族、環状、又は芳香族炭素原子を含有し得る。
【0019】
「ポリアルキレンアミン」又は「ポリアルキレンポリアミン」という用語は、一般式
H
2N(−R−NH)
n−H
(式中、Rは、好ましくは炭素原子数2〜3のアルキレン基であり、nは約1〜11の整数である)
で表される化合物を指す。
【0020】
「アミド」又は「ポリアミド」という用語は、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、又はカルボン酸のエステル、及びポリアミンの反応生成物を指す。
【0021】
「モリブデン酸化物」、「モリブデン硫化物」及び「モリブデンオキシ硫化物」という用語は、一般式MoO
xS
y(式中、x≧0、y≧0、及びl2≧(x+y)≧2)の化合物を指す。
【0022】
「カルボン酸成分」という用語は、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、及びカルボン酸のエステルを指す。
【0023】
「脂肪酸」という用語は、末端カルボキシル基を有する、炭素原子数4〜22のアルキル鎖を含む、動物又は植物の油脂から誘導された又はこれらに含有されているカルボン酸成分を指す。
【0024】
(1)モリブデン酸化物、モリブデン硫化物、又はモリブデンオキシ硫化物と、(2)アミドの後処理された塩を含む、本発明の油溶性添加剤組成物の正確な分子式は、確実には知られていないが、モリブデンの原子価が、酸素及び硫黄の原子で満たされ、モリブデンが、これらの添加剤の調製に使用されたアミドの1個以上の塩基性窒素成分と錯体を形成しているか、又はこれとの塩である化合物と考えられる。
【0025】
モリブデン成分
本発明の油溶性添加剤組成物を調製するために使用されるモリブデン成分は、一般式MoO
xS
y(式中、x≧0、y≧及び12≧(x+y)≧2)を有するモリブデン酸化物、モリブデン硫化物、又はモリブデンオキシ硫化物である、モリブデン含有化合物である。モリブデン成分は、いかなる酸化状態のモリブデンも含むことができる。本発明の油溶性添加剤組成物の調製において有用なモリブデン成分は、モリブデン化合物から誘導することができ、これらのモリブデン成分として、これらに限定されないが、ヘキサカルボニルモリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、他のアルカリ金属モリブデン酸塩、アルカリ土類金属モリブデン酸塩、MoOCl
4、MoO
2Br
2、及びMo
2O
3Cl
6が挙げられる。他のモリブデン成分として、三酸化モリブデン、テトラチオモリブデン酸アンモニウム、及び二硫化モリブデンが挙げられる。好ましいモリブデン成分は、三酸化モリブデン並びにモリブデン酸及びモリブデン酸アンモニウムから誘導される成分である。さらに好ましいモリブデン成分は三酸化モリブデンである。
【0026】
硫黄源
本発明の油溶性添加剤組成物のモリブデン成分を調製するために硫黄源が採用された場合、代表的な硫黄源として、これらに限定されないが、硫黄、硫化水素、一塩化硫黄、二塩化硫黄、五硫化二リン、R
2S
X(式中、Rはヒドロカルビル、好ましくはC
1〜C
40アルキルであり、xは少なくとも2である)、無機硫化物及び多硫化物、例えば(NH
4)
2S
X(式中、xは少なくとも1である)など、チオアセトアミド、チオ尿素、及び式RSHのメルカプタン(式中、Rは上記に定義された通りである)が挙げられる。また硫化剤としても有用なものは、従来の硫黄含有抗酸化剤、例えば、硫化ワックス及び多硫化ワックス、硫化オレフィン、硫化カルボン酸エステル及び硫化エステル−オレフィンなど、並びに硫化アルキルフェノール及びその金属塩である。
【0027】
好ましい硫黄源は、硫黄、硫化水素、五硫化二リン、R
2S
X(式中、Rはヒドロカルビル、好ましくはC
1〜C
10アルキルであり、xは少なくとも3である)、メルカプタン(式中、RはC
1〜C
10アルキルである)、無機硫化物及び多硫化物、チオアセトアミド、並びにチオ尿素である。最も好ましい硫黄源は、硫黄、硫化水素、五硫化二リン、並びに無機硫化物及び多硫化物である。
【0028】
アミド成分
本発明の油溶性添加剤組成物の調製において使用されるアミドは、カルボン酸成分及びポリアミン成分の反応生成物である。アミドを形成するためのカルボン酸成分及びアミン成分の反応において、カルボン酸成分対アミン成分の充填モル比は、約2:1〜1:1である。好ましくはカルボン酸成分対アミン成分の充填モル比は、約1.7:1〜1:1である。別の実施形態では、カルボン酸成分対アミン成分の充填モル比は約1.5:1〜1:1である。さらなる実施形態では、充填モル比は約1.7:1〜約1.3:1である。
【0029】
一実施形態では、アミドは、1)約4及び40個の炭素を有する脂肪族カルボン酸成分、及び2)約2及び10個の窒素を有するポリアミン成分から誘導される。好ましい実施形態では、カルボン酸成分はイソステアリン酸であり、ポリアミン成分は、テトラエチレンペンタアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
本明細書中で以下に記載されているカルボン酸成分及びポリアミン成分を反応させることによって、モリブデン成分との反応前又は反応中にアミドを形成することができる。本発明において有用なアミド組成物として、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3,405,064号において開示されているものが挙げられる。これらの組成物は普通、少なくとも4〜約40個の炭素原子を有し、所望する場合、分子を油溶性にするペンダント脂肪族基を有する、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、又はカルボン酸エステルを、ポリアミン、例えば、エチレンジアミンなどと反応させて、アミドを得ることによって調製される。好ましいのは、(1)脂肪族モノカルボン酸、例えば、イソステアリン酸、ステアリン酸又はこれらの混合物など、及び(2)エチレンポリアミン、例えば、テトラエチレンペンタアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン又はこれらの混合物などから調製されるようなアミドである。好ましくは、本発明において有用なアミドは、少なくとも1個の塩基性窒素を有することになる。
【0031】
カルボン酸成分
本発明の油溶性添加剤組成物の調製において使用されるカルボン酸成分として、少なくとも4〜100個の炭素原子、好ましくは4〜60個の炭素原子、さらに好ましくは4〜40個の炭素原子、及びさらに好ましくは10〜30個の炭素原子を有する、脂肪族及び芳香族カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、又はカルボン酸エステルが挙げられる。カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、及びカルボン酸エステルの混合物を本発明の調製に使用することができる。好ましくは、カルボン酸成分は、脂肪族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の例として、脂肪酸、例えば、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びアラキジン酸などが挙げられる。特に好ましいカルボン酸成分はイソステアリン酸である。
【0032】
ポリアミン成分
本発明の油溶性添加剤組成物の調製において使用されるポリアミン成分として、芳香族、環状、及び脂肪族(直鎖及び分枝の)ポリアミン及びこれらの混合物が挙げられる。芳香族ポリアミンの例として、これらに限定されないが、フェニレンジアミン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−及び2,6−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノ−p−キシレン、多核及び縮合芳香族ポリアミン、例えば、ナフチレン−1,4−ジアミン、ベンジジン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルジアミン及び4,4’−ジアミノアゾベンゼンなどが挙げられる。別の実施形態では、ポリアミン成分として、約5〜32環員であり、約2〜8個のアミン窒素原子を有するポリアミンを含む。このようなポリアミン化合物として、ピペラジン、2−メチルピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1,2−ビス−(N−ピペラジニル)エタン、3−アミノピロリジン、N−(2−アミノエチル)ピロリジンなどの化合物、及びアザクラウン化合物、例えば、トリアザシクロノナン、テトラアザシクロドデカンなどが挙げられる。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明の調製において使用されるポリアミン成分は、ポリアルキレンポリアミンであり、一般式
H
2N(−R−NH)
n−H
(式中、Rは、好ましくは炭素原子数2〜3のアルキレン基であり、nは1〜11の整数である)で表すことができる。
【0034】
ポリアルキレンポリアミンの具体例として、これらに限定されないが、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ヘキサエチレンヘプタアミン、ヘプタエチレンオクタアミン、オクタエチレンノナアミン、ノナエチレンデカアミン、デカエチレンウンデカアミン、ウンデカエチレンドデカアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラアミン、テトラプロピレンペンタアミン、ペンタプロピレンヘキサアミン、ヘキサプロピレンヘプタアミン、ヘプタプロピレンオクタアミン、オクタプロピレンノナアミン、ノナプロピレンデカアミン、デカプロピレンウンデカアミン、ウンデカプロピレンドデカアミン、ジ(トリメチレン)トリアミン、トリ(トリメチレン)テトラアミン、テトラ(トリメチレン)ペンタアミン、ペンタ(トリエチレン)ヘキサアミン、ヘキサ(トリメチレン)ヘプタアミン、ヘプタ(トリメチレン)オクタアミン、オクタ(トリメチレン)ノナアミン、ノナ(トリメチレン)デカアミン、デカ(トリメチレン)ウンデカアミン及びウンデカ(トリメチレン)ドデカアミンが挙げられる。
【0035】
後処理剤
一実施形態では、後処理剤を採用することによって、モリブデン成分、ポリアミド及び硫黄の反応の生成物を後処理する。典型的な後処理剤は、環状カーボネート及びエポキシドである。それぞれが本明細書に参照により全体として組み込まれている、Wollenbergら、米国特許第4,612,132号、Wollenbergら、米国特許第4,746,446号;Wollenbergら、米国特許第4,713,188号などにおいて、後処理剤の例、並びに他の後処理プロセスが開示されている。それぞれが本明細書に参照により全体として組み込まれている、LeSeurら、米国特許第3,373,111号及びEfner、米国特許第4,737,160号などにおいて、他の後処理剤の例、並びに他の後処理プロセスが開示されている。
【0036】
本発明の油溶性組成物を作製するための方法
本発明の調製は、モリブデン成分及びアミド成分を合わせることによって行うことができる。極性促進剤を反応混合物に場合によって加えることができる。アミド成分は、モリブデン成分との反応前、又はその場(in situ)で、カルボン酸成分及びポリアミン成分から形成することができる。好ましくは、モリブデン成分及びアミドの反応生成物は、硫黄成分と反応させることによって硫化させる。本発明の調製は、アミド成分の添加前に、モリブデン成分を硫黄成分と合わせることによって、モリブデン硫化物又はモリブデンオキシ硫化物を形成することにより行うことができる。好ましい実施形態では、モリブデン成分及びアミドを反応させることによって、モリブデン酸化物とアミドの塩を形成し、続いて硫黄成分での硫化により、モリブデン硫化物又はモリブデンオキシ硫化物とアミドの塩を形成する。反応成分の添加順序は重要ではない。反応は普通、大気圧で行うが、所望する場合、当業者に周知の方法を使用して、より高い又は低い圧力を使用することができる。希釈剤を使用することによって、反応混合物の効率的撹拌を可能にすることができる。典型的な希釈剤は、潤滑油並びに炭素及び水素しか含有しない液体化合物である。混合物が満足な混合が可能な位十分な流動性を有する場合、希釈剤は必要ではない。モリブデン成分と反応しない希釈剤が望ましい。
【0037】
場合によって、極性促進剤を本発明の調製に採用することができる。極性促進剤は、モリブデン成分と、ポリアミン又はアミド成分の塩基性窒素との間の相互作用を促進させる。多種多様なこのような促進剤を使用することができる。典型的な促進剤は、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ブチルセロソルブ、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、メチルカルビトール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチル−ジエタノール−アミン、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、アルカリ金属水酸化物、メタノール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラヒドロフラン、酢酸、無機酸及び水である。好ましいのは水及びエチレングリコールであり、特に好ましいのは水である。
【0038】
普通は、極性促進剤は、反応混合物に別々に加えるが、これが特に水の場合には、含水出発物質の成分として、又はモリブデン成分中の水和水、例えば、(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2Oなどとして存在することもできる。水はまた、水酸化アンモニウムとしても加えることができる。
【0039】
本発明の油溶性添加剤組成物を調製するための一般的方法は、(1)モリブデン成分と、(2)カルボン酸及びポリアミンのアミド(カルボン酸及びポリアミンは、約2:1〜1:1の間の充填モル比(CMR)を有する)とを反応させることを含む。場合によって、塩を形成するための(3)極性促進剤若しくは(4)希釈剤、又は(5)極性促進剤と希釈剤の両方を加えてもよい。必要に応じて、希釈剤を使用することによって、混合及び取扱いを容易にする適切な粘性を得る。典型的な希釈剤は、潤滑油、並びに炭素及び水素しか含有しない液体化合物である。場合によって、水酸化アンモニウムを反応混合物に加えることによって、モリブデン酸アンモニウムの溶液を得ることもできる。モリブデン成分、アミド、極性促進剤(使用する場合)、及び希釈剤(使用する場合)は、反応器に充填し、約200℃以下、好ましくは約70℃〜約120℃の温度で加熱する。温度は、モリブデン成分が十分に反応するまで、約200℃以下、好ましくは約70℃〜約90℃の温度で維持する。このステップのための反応時間は、通常、約1〜約30時間、好ましくは約1〜約10時間の範囲である。
【0040】
通常、過剰の水及びいかなる揮発性希釈剤も反応混合物から除去する。除去の方法として、これらに限定されないが、減圧蒸留又は窒素ストリッピングが挙げられ、反応器の温度を、約200℃以下、好ましくは約70℃〜約90℃の間の温度に維持しながら行う。水及び揮発性希釈剤の除去は普通、減圧下で行う。気圧を徐々に減少させることによって、発泡の問題を回避することができる。所望の気圧に到達した後、ストリッピングステップを通常、約0.5〜約5時間、好ましくは約0.5〜約2時間の期間行う。
【0041】
反応混合物は、上で定義されたような硫黄成分と、適切な気圧及び200℃を超えない温度でさらに反応させてもよい。硫化ステップは通常、約0.5〜約5時間、好ましくは約0.5〜約2時間の期間行う。場合によっては、反応混合物からの極性促進剤の除去は、硫黄成分との反応の完了前が望ましいこともある。
【0042】
硫黄成分は普通、モリブデン原子1個当たり、12個までの硫黄原子が得られるような比で反応混合物に充填する。一実施形態では、本発明の油溶性組成物は、モリブデン対硫黄のモル比1:0〜1:8を有することになる。別の実施形態では、モリブデン対硫黄の比が、約1:0〜1:4である。さらなる実施形態では、モリブデン対硫黄の比が約1:1〜1:4である。
【0043】
反応混合物において、モリブデン原子対(アミドにより提供される塩基性窒素原子)の比は、塩基性窒素原子1個当たり、約0.01〜4.0個のモリブデン原子の範囲にすることができる。
【0044】
普通、反応混合物は、アミドにより提供される塩基性窒素原子1個当たり、0.01〜2.00個のモリブデン原子を充填する。好ましくは塩基性窒素原子1個当たり、0.4〜1.0、及び最も好ましくは0.4〜0.7個のモリブデン原子を反応混合物に加える。
【0045】
極性促進剤は、好ましくは水であるが、これは普通、モリブデン1モル当たり、0.1〜50モルの水の比で存在する。好ましくは、0.5〜25、最も好ましくは1.0〜15モルの促進剤がモリブデン1モル当たりに存在する。
【0046】
カルボン酸成分対ポリアミンの充填モル比は重要であり、約2:1〜1:1の範囲にすることができる。一実施形態では、充填モル比は約1.7:1〜1:1である。別の実施形態では充填モル比は約1.5:1〜1:1である。さらなる実施形態では、充填モル比は約1.7:1〜1.3:1である。カルボン酸成分とポリアミンの反応から形成されるアミドは、反応混合物へのモリブデン成分の導入前、導入中又は導入後に生じ得る。
【0047】
反応混合物(すなわち、モリブデン成分、アミド成分、及び本明細書中上に記載されている任意のステップの反応物)は、後処理剤、例えば、これらに限定されないが、炭酸エチレン及び炭酸グリセリンとさらに反応させる。
【0048】
添加剤濃縮物
多くの場合、本発明の油溶性添加剤組成物の濃縮物は、担体液体中に形成するのが有利となり得る。これらの添加剤濃縮物は、取扱い、輸送、及び最終的には潤滑剤基油へとブレンドすることによって、完成した潤滑剤を得るための便利な方法を提供する。一般的には、本発明の油溶性添加剤濃縮物は、これら自体完成した潤滑剤として使用可能又は適切ではない。むしろ、油溶性添加剤濃縮物は、潤滑剤基油ストックとブレンドすることによって、完成した潤滑剤を得る。担体液体は、本発明の油溶性添加剤を容易に可溶化し、潤滑剤基油ストック中に容易に溶ける油添加剤濃縮物を提供することが望まれる。加えて、担体液体は、例えば、高い揮発性、高い粘性、及び不純物、例えばヘテロ原子などを含めたいかなる望ましくない特徴も、潤滑剤基油ストックに、したがって最終的に完成した潤滑剤に導入しないことが望まれる。したがって、本発明は、不活性な担体流体と、全濃縮物に対して、2.0重量%〜90重量%の、本発明による油溶性添加剤組成物とを含む油溶性添加剤濃縮物組成物をさらに提供する。不活性な担体流体は潤滑油であってよい。
【0049】
これらの濃縮物は普通、約2.0重量%〜約90重量%、好ましくは10重量%〜50重量%の本発明の油溶性添加剤組成物を含有し、加えて、当技術分野で公知及び以下に記載されている1種以上の他の添加剤を含有し得る。濃縮物の残りは、実質的に不活性な担体液体である。
【0050】
潤滑油組成物
本発明の一実施形態では、本発明の油溶性添加剤組成物は、潤滑粘度の基油と混合することによって、潤滑油組成物を形成することができる。潤滑油組成物は、主要量の、潤滑粘度の基油と、微量の、上記に記載されている本発明の油溶性添加剤組成物とを含む。
【0051】
本発明において使用することができる潤滑油は、多種多様な炭化水素油、例えば、ナフテン系基油、パラフィン系基油及び混合基油、並びに合成油、例えばエステルなどが挙げられる。本発明において使用することができる潤滑油はまた、バイオマスからの油、例えば、植物及び動物由来の油なども含む。潤滑油は個々に又は組み合わせて使用することができ、40℃で、一般的に7〜3,300cSt、及び普通20〜2000cStの範囲の粘性を有する。したがって、基油は、精製パラフィンタイプの基油、精製ナフテン系基油、又は潤滑粘度の合成炭化水素若しくは非炭化水素油であることができる。基油はまた、鉱油と合成油の混合物であることができる。本発明における基油としての使用のための鉱油として、例えば、潤滑油組成物において普通使用されるパラフィン系、ナフテン系及び他の油が挙げられる。合成油として、例えば、炭化水素合成油と合成エステルの両方並びに所望の粘性を有するこれらの混合物が挙げられる。炭化水素合成油として、例えば、エチレンの重合から調製した油、すなわち、ポリアルファオレフィン若しくはPAO、又は一酸化炭素ガス及び水素ガスを使用する炭化水素合成手順、例えばFisher−Tropsch法などから調製した油を挙げることができる。有用な合成炭化水素油として、適切な粘性を有するアルファオレフィンの液体ポリマーが挙げられる。同様に、適切な粘性のアルキルベンゼン、例えば、ジドデシルベンゼンなどを使用することができる。有用な合成エステルとして、モノカルボン酸及びポリカルボン酸と、モノヒドロキシアルカノール及びポリオールのエステルが挙げられる。典型的な例は、アジピン酸ジドデシル、ペンタエリトリトールテトラカプロアート、ジ−2−エチルヘキシルアジパート、セバシン酸ジラウリルなどである。モノカルボン酸及びジカルボン酸とモノヒドロキシアルカノール及びジヒドロキシアルカノールの混合物から調製した複合エステルもまた、使用することができる。鉱油と合成油のブレンドもまた有用である。
【0052】
本発明の油溶性添加剤を含有する潤滑油組成物は、従来の技法で、適当な量の本発明の油溶性添加剤を潤滑油と混和することによって調製することができる。特定の基油の選択は、潤滑剤の想定される用途及び他の添加剤の存在に依存する。一般的に、本発明の潤滑油組成物中の本発明の油溶性添加剤の量は、潤滑油組成物の総重量に対して、0.05〜15重量%、好ましくは0.2〜1重量%まで変動することになる。一実施形態では、潤滑油組成物のモリブデン含有量は、約50百万分率(ppm)〜5000ppmの間、好ましくは約90ppm〜1500ppmの間である。別の実施形態では潤滑油組成物のモリブデン含有量は、約500ppm〜700ppmの間である。
【0053】
追加の添加剤
所望する場合、他の添加剤が本発明の潤滑油及び潤滑油濃縮組成物に含まれていてもよい。これらの添加剤として、抗酸化剤又は酸化防止剤、分散剤、さび止め剤、腐食防止剤などが挙げられる。消泡剤、安定剤、防汚剤、粘着剤、チャター防止剤、滴点向上剤、スクォーク防止剤、極圧剤、悪臭防止剤などもまた含み得る。
【0054】
以下の添加剤成分は、本発明の潤滑油組成物に有利に採用することができる一部の成分の例である。追加の添加剤のこれらの例は、本発明を例示するために提供されるが、これらの例は、本発明を限定することを意図しない。
【0055】
金属清浄剤
本発明に採用され得る清浄剤としては、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート、カルシウムフェノキシド、ホウ酸化スルホネート,マルチ−ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は非硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化若しくは非硫化アルキル又はアルケニルナフテネート、アルカン酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩、並びにこれらの化学的及び物理的混合物が挙げられる。
【0056】
摩耗防止剤
これらの名称が暗示するように、これらの薬剤は、可動金属部分の摩耗を減少させる。このような薬剤の例として、これらに限定されないが、ジチオリン酸亜鉛、カルバメート、エステル、及びモリブデン錯体が挙げられる。
【0057】
さび止め剤(防さび剤)
防さび剤は、通常腐食にさらされる物質表面の腐食を減少させる。防さび剤の例として、これらに限定されないが、非イオン性ポリオキシエチレン表面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアラート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、及びポリエチレングリコールモノオレアートが挙げられる。防さび剤として有用な他の化合物として、これらに限定されないが、ステアリン酸及び他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属セッケン、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分的カルボン酸エステル、及びリン酸エステルが挙げられる。
【0058】
乳化破壊剤
乳化破壊剤を使用することによって、エマルジョンの分離を補助する。乳化破壊剤の例として、これらに限定されないが、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、ポリエトキシル化アルキルフェノール、ポリエステルアミド、エトキシ化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアルコール誘導体及びカチオン性又はアニオン性多価電解質が挙げられる。異なるタイプのポリマーの混合物もまた使用することができる。
【0059】
摩擦調整剤
追加の摩擦調整剤を本発明の潤滑油に加えることができる。摩擦調整剤の例として、これらに限定されないが、脂肪族アルコール、脂肪酸、アミン、エトキシ化アミン、ホウ酸化エステル、他のエステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホスホン酸エステルが挙げられる。
【0060】
多機能性添加剤
複数の特性、例えば、抗酸化作用及び摩耗防止特性などを有する添加剤もまた、本発明の潤滑油に加えることができる。多機能性添加剤の例として、これらに限定されないが、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオアート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチラートアミド、アミン−モリブデン錯体、及び硫黄含有モリブデン錯体が挙げられる。
【0061】
粘度指数向上剤
粘度調整剤としても知られる粘度指数向上剤は、潤滑油の粘性−温度特を改善するある種類の添加剤を含み、その温度の変化につれて、油の粘性をさらに安定させる。粘度指数向上剤を本発明の潤滑油組成物に加えてもよい。粘度指数向上剤の例として、これらに限定されないが、ポリメタクリラートタイプのポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、ホスホ硫化ポリイソブチレンのアルカリ土類金属塩、水和したスチレン−イソプレンコポリマー、ポリイソブチレン、及び分散剤タイプの粘度指数向上剤が挙げられる。
【0062】
流動点降下剤
流動点降下剤は、潤滑油中のワックス結晶形成を制御して、結果として、流動点の低下及び低温での流動性能の改善が生じるように考案されたポリマーである。流動点降下剤の例として、これらに限定されないが、ポリメチルメタクリラート、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレンポリマー、及びアルキル化ポリスチレンが挙げられる。
【0063】
発泡防止剤
発泡防止剤を使用することによって、潤滑油の発泡傾向を減少させる。発泡防止剤の例として、これらに限定されないが、メタクリル酸アルキルポリマー、アルキルアクリラートコポリマー、及びポリマー性のオルガノシロキサン、例えば、ジメチルシロキサンポリマーなどが挙げられる。
【0064】
金属不活性化剤
金属不活性化剤は、金属の表面上に膜を作り出すことによって、金属が油の酸化を引き起こすのを防ぐ。金属不活性化剤の例として、これらに限定されないが、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ビス−イミダゾールエーテル、及びメルカプトベンゾイミダゾールが挙げられる。
【0065】
分散剤
分散剤は、スラッジ、炭素、煤煙、酸化生成物、及び他の堆積する前駆体を拡散させることによって、これらが凝集するのを防ぎ、結果として、より少ない堆積物の形成、より少ない油酸化、及びより少ない粘性増加をもたらす。分散剤の例として、これらに限定されないが、アルケニルスクシンイミド、他の有機化合物で修飾されたアルケニルスクシンイミド、炭酸エチレン又はホウ酸による後処理で修飾されたアルケニルスクシンイミド、アルカリ金属又は混合したアルカリ金属、アルカリ土類金属ホウ酸塩、水和したアルカリ金属ホウ酸塩の分散液、アルカリ土類金属ホウ酸塩の分散液、ポリアミド無灰分散剤など、又はこのような分散剤の混合物が挙げられる。
【0066】
抗酸化剤
抗酸化剤は、酸化生成物、例えば、金属の表面のスラッジ及びワニス状堆積物などの形成を抑制することによって、鉱油の劣化傾向を減少させる。本発明の有用な抗酸化剤の例として、これらに限定されないが、フェノールタイプ(フェノール系)酸化防止剤、例えば、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−1−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−10−ブチルベンジル)−スルフィド、及びビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)が挙げられる。ジフェニルアミン−タイプの酸化防止剤として、これらに限定されないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、及びアルキル化アルファ−ナフチルアミンが挙げられる。他のタイプの酸化防止剤として、金属のジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、及びメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)などが挙げられる。
【0067】
用途
本明細書中に開示されている油溶性添加剤組成物を含有する潤滑油組成物は、潤滑油の摩擦特性を調整するための流体及びグリース組成物として効果的であり、これがクランクケース潤滑剤として使用された場合、本発明の潤滑油で潤滑された車両に対して燃費の改善をもたらすことができる。
【0068】
本発明の潤滑油組成物は、クロスヘッドディーゼルエンジンにおけるような舶用シリンダー潤滑剤、自動車及び鉄道におけるようなクランクケース潤滑剤、重機、例えば製鋼所などのための潤滑剤、又はベアリング用のグリースなどとして使用することができる。潤滑剤が流体であるか又は固体であるかどうかは、普通粘稠化剤が存在するかどうかによる。典型的な粘稠化剤として、ポリウレアアセテート、ステアリン酸リチウムなどが挙げられる。本発明の油溶性添加剤組成物はまた、爆発性エマルジョン配合物における抗酸化剤、摩耗防止性添加剤として有用性を見出すことができる。
【0069】
追加的用途
本発明の油溶性添加剤組成物は、潤滑油添加剤としてのこれらの使用に加えて、水素化処理触媒前駆体として想定することができる。本発明の油溶性添加剤組成物は、触媒前駆体として作用することができ、水素及び硫黄又は硫黄保持化合物の存在下、炭化水素と接触させて、分解することによって、炭化水素質の原料を水素化処理するための活性のある触媒を形成することができる。本発明の油溶性添加剤組成物は、水素、炭化水素、及び硫黄又は硫黄保持化合物の存在下、例えば、「油中」条件で、分解温度に加熱して、分解し、水素化処理のための活性のある触媒種を形成することができる。
【0070】
炭化水素の性質は重要ではなく、非環状又は環状の、飽和又は不飽和の、非置換の又は不活性に置換されていてもよい、任意の炭化水素化合物を一般的に含むことができる。好ましい炭化水素は、常温で液体のものであり、これらの例示として、直鎖の飽和した非環状の炭化水素、例えば、オクタン、トリデカン、エイコサン、ノナコサンなど;直鎖の不飽和の非環状の炭化水素、例えば、2−ヘキセン、1,4−ヘキサジエンなど;分枝鎖の飽和した非環状の炭化水素、例えば、3−メチルペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、2,7,8−トリエチルデカンなど;分枝鎖の不飽和の非環状の炭化水素、例えば、3,4−ジプロピル−1,3−ヘキサジエン−5−イン、5,5−ジメチル−1−ヘキセンなど;飽和又は不飽和の環状炭化水素、例えば、シクロヘキサン、1,3−シクロヘキサジエンなどが挙げられ、これには、クメン、メシチレン、スチレン、トルエン、o−キシレンなどの芳香族炭化水素も含まれる。さらに好ましい炭化水素は、石油から誘導されたものであり、特に、バージンナフサ、分解ナフサ、Fischer−Tropschナフサ、ライトサイクルオイル、ミディアムサイクルオイル、ヘビーサイクルオイルなどとして特徴づけられ、約5〜約30個の炭素原子、好ましくは約5〜約20個の炭素原子を通常含有し、約30℃〜約450℃、好ましくは約150℃〜約300℃の範囲内で沸騰する、石油炭化水素の混和物を含む、水素化処理触媒を形成するための本発明の油溶性添加剤組成物の分解において、本発明の油溶性添加剤組成物を含有する充填層は、水素雰囲気内で、炭化水素及び硫黄又は硫黄保持化合物の両方に接触させ、本発明の前記油溶性添加剤組成物を分解する条件で加熱する。
【0071】
硫黄又は硫黄保持化合物は、オルガノ硫黄又はヒドロカルビル硫黄化合物として特徴づけられ、これらは、全分子内で1つ以上の炭素−硫黄結合を含有し、非環状又は環状の、飽和又は不飽和の、置換されている又は不活性に置換されている化合物を一般的に含む。この特徴の非環状化合物の例とは、硫化エチル、硫化n−ブチル、n−ヘキシルチオール、ジエチルスルホン、アリルイソチオシアネート、ジメチルジスルフィド、エチルメチルスルホン、エチルメチルスルホキシドなどがあり、このような特徴の環状化合物は、メチルチオフェノール、ジメチルチオフェン、4−メルカプト安息香酸、ベンゼンスルホン酸、5−ホルムアミド−ベンゾチアゾール、1−ナフタレンスルホン酸、ジベンジルチオフェンなどがある。硫黄は、少なくとも触媒のために必要とされる所望のストイキオメトリを提供するのに十分な量で存在しなければならず、好ましくはこの量を超える量で採用される。適切には、反応に対して炭化水素及び硫黄の両方が、硫黄含有炭化水素化合物、例えば、ヘテロ環式硫黄化合物(単数又は複数)の使用により供給され得る。このような目的に対して適切な例示的ヘテロ環式硫黄化合物は、チオフェン、ジベンゾチオフェン、テトラフェニルチオフェン、テトラメチルジベンゾチオフェン、テトラヒドロジベンゾチオフェン、チアントレン、テトラメチルチアントレンなどである。本発明の触媒を形成するために必要とされる水素は、純水素、水素の豊富な気体混和物又はその場(in situ)で水素を発生する化合物、例えば、水素生成気体、例えば、水との一酸化炭素混合物など、又は水素供与性溶媒とであってよい。
【0072】
以下の例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提示され、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈してはならない。
【実施例】
【0073】
(例1)(比較)
硫化モリブデンポリアミド添加剤
3Lのガラス反応器に、イソステアリン酸及びジエチレントリアミン(ISA/DETA CMR=1.7)から調製した、685gのポリアミド、751gの希釈剤油及び681gのキシレンを充填した。反応混合物を70℃の温度に加熱し、この時点で95gの三酸化モリブデン及び57gの水を次いで加えた。次いで反応器を90℃の反応温度で2.5時間保持した。その後、42gの硫黄を次いで加え、反応物を135℃でさらに3時間加熱した。次いでさらに1時間の間減圧を適用することによって、キシレン及び水を除去した。
【0074】
(例2)
炭酸エチレン(EC)処理した硫化モリブデンポリアミド添加剤
3Lガラス反応器に、例1で調製した硫化モリブデンポリアミド535gを充填した。硫化モリブデンポリアミドを165℃まで加熱させておき、この時点で34gの炭酸エチレンを1時間の期間にわたりゆっくりと充填した。その後、反応を165℃でさらに2時間保持させておいた。
【0075】
(例3)
炭酸グリセリン(GC)処理した硫化モリブデンポリアミド添加剤
3Lガラス反応器に、例1で調製した硫化モリブデンポリアミド595gを充填した。反応混合物を165℃まで加熱させ、この時点で28gの炭酸グリセリンを、1時間の期間にわたりゆっくりと充填した。その後、反応を165℃でさらに2時間保持させておいた。
【0076】
例1、2、及び3からの生成物を、500ppmで、他の添加剤、例えば、これらに限定されないが、少なくとも1種の分散剤、少なくとも1種のカルボキシラート清浄剤、少なくとも1種のスルホナート清浄剤、少なくとも1種の摩耗防止性添加剤、少なくとも1種の抗酸化剤、少なくとも1種の粘度指数向上剤、少なくとも1種の発泡防止剤(及び残りは希釈油である)などを含有する部分的に配合された潤滑油中でモリブデンとブレンドした。
【0077】
潤滑油組成物(潤滑油1〜4)
硫化モリブデンポリアミドからの500ppmのモリブデン、EC処理した硫化モリブデンポリアミド、又はGC処理した硫化モリブデンポリアミドを含有する潤滑油組成物を、以下のベースライン配合でトップ処理した:
ベースライン配合
(1)2重量%の炭酸エチレンで後処理した無灰分散剤の油濃縮物
(2)4.5重量%のホウ酸化分散剤の油濃縮物
(3)2.48重量%の油濃縮物のアルカリ土類金属スルホネート清浄剤
(4)1.03重量%の油濃縮物のジアルキルジチオリン酸亜鉛
(5)0.9重量%の抗酸化剤
(6)0.2重量%のモリブデンスクシンイミド錯体の油濃縮物
(7)9.4重量%の非分散タイプの粘度指数向上剤の油濃縮物
(8)5ppmの発泡防止剤
(9)残りは、グループIIIの潤滑油
【0078】
潤滑油組成物(比較)−潤滑油5
0.82重量%のモリブデンジチオカルバメート(「Sakura Lube 505」、AdekaUSA Corporation、Saddle River、New Jerseyから入手可能)がこの潤滑油組成物に対する唯一のモリブデン源である以外は、上記ベースライン配合に従い潤滑油組成物を調製した。Mo含有量=500ppm。
【0079】
図1及び表1は、後処理していない硫化モリブデンポリアミドと比較して、後処理した硫化モリブデンポリアミドはより低いトルクを有することを示している。上記に記載されている潤滑油組成物を、モーター駆動のエンジンの摩擦トルク試験における摩擦性能について試験した。エンジンは、1.8リットルに置き換えられた、直列4シリンダータイプである。エンジンは、ローラーフォロアー動弁系である。
【0080】
モーター駆動のエンジンの摩擦トルク試験は、すべてのエンジン部分、例えば、シリンダーヘッド、ピストン及びクランクシャフトなどを使用する。ローラータイプ弁系を採用している。モーターは、トルクメーターを介してクランクシャフトに接続する。油の温度は、電気ヒーターで制御し、25〜100℃の範囲にする。エンジン速度は550〜2000rpmの間で変化させた。様々な温度(40℃、60℃、80℃及び100℃)、様々な速度(rpm)に対してトルク測定を記録した。摩擦調整剤は高温でしか作用しないので、結果は100℃に対してのみ示されている。100℃での結果は、トルク変化(%)として示され、表1において要約されている。負の数が大きいほど、より良好なトルク変化及びより良好な燃費を示している。例えば、−5.0は、−1.0より良好な燃費を有する。
【表1】