(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱水溶解温度が100℃よりも低く、85℃よりも高いポリビニルアルコール系繊維(繊維A)を10質量%以上(繊維シート100質量%に対して)配合して形成された繊維シートからなり、密度が0.25〜0.7g/cm3の範囲内であり、厚さが5μm以上40μm未満の範囲内にある電気二重層キャパシタ用セパレータ。
前記繊維Aに、熱水溶解温度が80℃未満のポリビニルアルコール系繊維(繊維B)がさらに配合された繊維シートからなる、請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のセパレータでは、実質的にセルロースの叩解物のみでセパレータを形成しているため、低密度にすることと、セパレータの厚みを薄くすることを両立するのは困難である。
【0009】
本発明の目的は、低密度であるとともに、厚みを低減し、電気抵抗を低くすることができる電気二重層キャパシタ用セパレータを提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、電気二重層キャパシタ用のセパレータとして求められる強度を有するとともに、厚みを低減することができる電気二重層キャパシタ用セパレータを提供することにある。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、電気二重層キャパシタ用のセパレータとして求められる強度を有するとともに、通気性(多孔性、イオン透過性)を有する電気二重層キャパシタ用セパレータを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、強度的性質(引張強力など)とともに、厚さが薄く、しかも、低密度で通気性(多孔性、イオン透過性)を有し、これらの特性をすべてバランスよく満足させることが可能である電気二重層キャパシタ用セパレータを提供することにある。
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、(i)特定の範囲の熱水溶解温度を有するポリビニルアルコール系繊維に着目し、(ii)熱水溶解温度が85℃を超えて、100℃未満であるポリビニルアルコール系繊維を用いた場合、この繊維から湿式法によって繊維シートを形成すると、このポリビニルアルコール系繊維は、主体繊維としての性質を残しつつ、そのシート内の繊維同士は、繊維交点において繊維表面で接合が生じること、(iii)そのようにして得られた繊維シートは、低密度であるとともに、厚みが低減されており、電気二重層用キャパシタのセパレータとして用いられた場合、セパレータの抵抗値が上昇するのを抑制することが出来ることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明第1の構成は、熱水溶解温度が100℃よりも低く、85℃よりも高いポリビニルアルコール系繊維(繊維A)を10質量%以上(繊維シート100質量%に対して)配合して形成された繊維シートからなり、密度が0.25〜0.7g/cm
3の範囲内であり、厚さが5μm以上40μm未満の範囲内にある電気二重層キャパシタ用セパレータである。
【0015】
上記のセパレータにおいて、前記繊維Aに、熱水溶解温度が80℃未満のポリビニルアルコール系繊維(繊維B)がさらに配合された繊維シートからなる電気二重層キャパシタ用セパレータであることが好ましい。その場合、繊維Aと繊維Bとの質量比は、A/B=40/60〜99/1であってもよい。
【0016】
さらに、前記繊維Aまたは前記繊維Aと繊維Bを含む繊維に、セルロース系繊維が加えられて形成された繊維シートであることが好ましく、また、前記セルロース系繊維が、有機溶剤系セルロース系繊維または天然セルロース繊維の叩解物であることが好ましい。
【0017】
また、前記セパレータは、下記の要件(1)および(2)を満たすものであることが好ましい。
1.セパレータの厚さが5〜30μmの範囲内にあること。
2.セパレータの縦方向強度(kg/15mm)/厚さ(μm)>0.025
【0018】
本発明第2の構成は、上記の電気二重層キャパシタ用セパレータを具備してなる電気二重層キャパシタである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気二重層キャパシタ用セパレータが、熱水溶解温度が100℃よりも低く、85℃よりも高いポリビニルアルコール系繊維(繊維A)を10質量%以上(繊維シート100質量%に対して)配合して形成された繊維シートからなることにより、繊維形態を維持しながら、繊維交点では接着が生じて繊維シートが形成されているので、繊維が保有している強度的性質を保有しながら、厚さが薄くなる一方では、繊維間の空隙の存在により通気性(イオン通過性)があり、低密度で抵抗の低い繊維シートを得ることができ、このものは、セパレータとして極めて有効なものである。
【0020】
さらに、上記繊維(A)に、上記繊維(A)よりも熱水溶解温度の低いポリビニルアルコール系繊維(繊維B)を加えてシート形成を行うことにより、繊維Bがバインダー機能を発揮して、繊維交点における接着をより強固にすることができる。
【0021】
さらに、セルロース系繊維、とくに叩解したセルロース系繊維を加えてシート形成を行うことにより、フィブリル化した繊維が加わり、繊維シートに絡み合いによる接合が加わることにより、シートの柔軟性が増加し、シートに適度な遮蔽性を与える。
【0022】
さらに好ましくは、本発明のセパレータは、下記の二つの要件、
1.セパレータの厚さが5〜30μmの範囲内にあること。
2.セパレータの縦方向強度(kg/15mm)/厚さ(μm)>0.025
を備えることにより、厚さと機械的強度がバランスしたものとなる。
【0023】
前記の特性を有する本発明第1の構成に係るセパレータを装着することにより得られる電気二重層キャパシタは、セパレータの密度を薄くできるとともにセパレータを薄くすることができ、それにより極間距離が減少して低抵抗化し、かつ、セパレータの薄型化により正極・負極が増やせることによるキャパシタの高容量化が期待できる。
【0024】
なお、請求の範囲および/または明細書に開示された少なくとも2つの構成要素のどのような組み合わせも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲に記載された請求項の2つ以上のどのような組み合わせも本発明に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータは、熱水溶解温度が100℃よりも低く、85℃よりも高いポリビニルアルコール系繊維(繊維A)を10質量%以上(繊維シート100質量%に対して)配合して形成された繊維シートからなり、キャパシタの密度は0.25〜0.7g/cm
3の範囲内であり、厚さが5μm以上40μm未満の範囲内にある。
【0026】
(繊維シート)
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータを構成する繊維シートは、熱水溶解温度が100℃よりも低く、85℃よりも高いポリビニルアルコール系繊維(繊維A)を10質量%以上(好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上)配合して形成される必要がある。なお、繊維シートを形成できる限り、繊維Aの上限は特に限定されないが、通常70質量%(好ましくは60質量%)程度であってもよい。
【0027】
熱水溶解温度が100℃よりも低いと、繊維シート形成を湿式法(抄紙機などを用いるシート成形法)で行う際に繊維が水分を含むことにより、加熱乾燥時に繊維構造を維持しながら、繊維交点において繊維表面で接合が生じて、シート形成をすることができる。熱水溶解温度が100℃以上であると、繊維表面が安定していて、加熱乾燥時において繊維交点において繊維間に接合が生じないので、繊維シート形成が困難となり、また、一方、熱水溶解温度が85℃以下であると、繊維シート形成後の加熱乾燥時においてポリビニルアルコールが溶解して、繊維シートの形態維持が困難となる。好ましくは、熱水溶解温度が98℃よりも低く、90℃よりも高いポリビニルアルコール系繊維を使用して繊維シートを形成するのがよい。なお、ここで熱水溶解温度は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
本発明では、熱水溶解温度が特定の範囲内にあるポリビニルアルコール系繊維(繊維A)を用いてシート形成を行うことが特徴であり、このような特定の範囲内にある熱水溶解温度を有するポリビニルアルコール系繊維は、シートの主体繊維として作用するだけでなく、繊維シートを形成する際の加熱によってその交点間が接着するため、バインダー繊維としての機能も有する。
【0028】
(繊維A)
本発明において、熱水溶解温度が100℃よりも低く、85℃よりも高いポリビニルアルコール系繊維は、平均重合度1000〜5000、ケン化度95モル%以上のビニルアルコール系ポリマーから得ることができる。なお、ここで平均重合度は、30℃水溶液の粘度から求めた粘度平均重合度を意味する。
【0029】
上記の熱水溶解性を阻害しない範囲内で、該ビニルアルコール系ポリマーは他の共重合成分により共重合されていてもよいが、繊維形成性、形成された繊維の機械的性質の点から、共重合量は20モル%以下、特に10モル%以下であるのが好ましい。また、ホルマール化(FA化)などのアセタール化等の処理または架橋処理が施されていないことが、繊維シート形成時の繊維間接着性を保持する点で望ましい。なお、該ポリビニルアルコール系繊維は、ビニルアルコール系ポリマーのみから構成されている必要はなく、他のポリマーを含んでいても構わない。勿論、ポリビニルアルコール系繊維は、ビニルアルコール系ポリマーの単独紡糸繊維であってもよく、繊維が所定の熱水溶解温度を有する範囲で、他のポリマーとの複合紡糸繊維、混合紡糸繊維(海島繊維)であっても構わない。本発明においてポリビニルアルコール系繊維は高強度であることが望まれるので、ビニルアルコール系ポリマーを80重量%以上含むポリビニルアルコール系繊維であることが好ましい。繊維の形成方法は、湿式法(芒硝浴、アルカリ浴、有機溶剤浴)、乾式法、乾湿式法のいずれでもよく、紡糸後、さらに熱延伸(湿熱延伸、乾熱延伸)、熱固定等が行われ、熱延伸倍率、熱固定温度等を調節することにより、熱水溶解温度が100℃よりも低く、85℃よりも高いポリビニルアルコール系繊維を得ることができる。また、このような特定の熱水溶解温度を有するポリビニルアルコール系繊維は、例えば、株式会社クラレにより商品名「VN20200」などとして市販されている。
【0030】
該繊維の単繊維繊度は、セパレート性、薄型化の点から3.3dtex以下が好ましく、なかでも好ましくは1.1dtex以下、さらに好ましくは、0.8dtex以下であり、抄紙性、内部圧力の増大を抑制する点から0.01dtex以上が好ましく、さらに好ましくは0.1dtex以上である。また、繊維長は単繊維繊度に応じて適宜設定すればよいが、抄紙性等の点から繊維長0.5〜10mmが好ましく、特に1〜5mmとするのが好ましい。
【0031】
(繊維B)
また本発明では、上記した繊維Aの他に、バインダー性能(湿式法で繊維シート形成時および形成後の加熱により溶解して、繊維A間を接着させる性能)を有する、熱水溶解温度が80℃未満のポリビニルアルコール系繊維(繊維B)(ポリビニルアルコール・バインダー繊維とも称する)が加えられているのが、繊維間の接着をより強固にして、繊維シートの機能を高める点で好ましい。これに適したポリビニルアルコール・バインダー繊維の熱水溶解温度としては、60℃よりも高く、80℃未満であることが好ましく、さらに好ましくは70℃よりも高く、80℃未満である。かかる繊維Bは、平均重合度は500〜3000程度、ケン化度80〜99モル%(好ましくは95〜99モル%)のポリビニルアルコール系ポリマーから構成された繊維が好適に使用される。勿論、ポリビニルアルコール系繊維は、ビニルアルコール系ポリマーの単独紡糸繊維であってもよく、繊維が所定の熱水溶解温度を有する範囲で、他のポリマーとの複合紡糸繊維、混合紡糸繊維(海島繊維)であっても構わない。電解液吸液性、機械的性能等の点からはビニルアルコール系ポリマーを30重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含むポリビニルアルコール繊維を用いることが好ましい。
【0032】
ポリビニルアルコール・バインダー繊維は、上記繊維Aと同様に繊維形成を行った後、繊維Aに比して熱延伸・熱固定の度合いを小さくすることにより、上記の熱水溶解温度を有するポリビニルアルコール系繊維を形成することができる。繊度は、水分散性、他成分との接着性、ポアサイズ等の点から0.01〜3dtex程度であるのが好ましく、繊維長は1〜5mm程度であるのが好ましい。ポリビニルアルコール・バインダー繊維は、株式会社クラレにより商品名「VPB101」、「VPB041」などとして市販されている。
本発明の電気二重層キャパシタ用セパレータに、繊維Bをバインダー成分として加える場合には、その配合量は繊維シートの質量に対して3〜20質量%が好ましい。繊維Bが多すぎる場合には、繊維間の空隙を塞ぐため、通気度を減少させる結果となり好ましくない。
【0033】
また、繊維Aと繊維Bとを併用する場合、繊維Aと繊維Bとの質量比は、例えばA/B=40/60〜99/1程度であってもよく、好ましくは45/55〜90/10程度であってもよく、より好ましくは50/50〜85/15程度であってもよい。
【0034】
また、繊維Aと繊維Bとを併用する場合、繊維Aは繊維Bよりも繊度が小さい方が好ましく、例えば繊維Aと繊維Bとの繊度比は、例えばA/B=5/95〜35/65程度であってもよく、好ましくは10/90〜30/70程度であってもよく、より好ましくは15/85〜25/75程度であってもよい。
【0035】
(セルロース系繊維)
本発明の繊維シートを、セルロース系繊維を加えて形成してもよい。セルロース繊維としては、セルロースをアミノキサイドなどの有機溶剤に溶解して紡糸して得られる有機溶剤系のセルロース繊維、再生セルロース繊維、各種の木材パルプやコットンリンターなどの天然セルロース繊維、それらのマーセル化物、叩解物などをあげることができる。とくに、有機溶剤系のセルロース繊維の叩解物、天然セルロースの叩解物が、フィブリル化した繊維の存在により網状構造を有する繊維シートを形成することができるので望ましい。
【0036】
例えば、叩解物としては、カナダ標準濾水度における0〜130ml程度であることが好ましく、より好ましくは0〜110ml、さらに好ましくは0〜100mlであってもよい。なお、ここで叩解度は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
【0037】
本発明においては、繊維A、さらには繊維Bが加えられた繊維に、上記のセルロース繊維が加えられることにより、繊維シート中にフィブリル化による繊維の絡み合いが導入されるので、柔軟性があり、遮蔽性のあるシートを得ることができる。
【0038】
従来、セルロース系繊維のみにより形成された紙がキャパシタ用セパレータとして用いられているが、所定の強度的性質を得るように、緻密なシートを形成すると通気性が低くなるという問題を有していた。これに対して、本発明では、セパレータを構成する主体繊維として特定のポリビニルアルコール系繊維とすることにより、機械的性質、厚さ、通気性・抵抗等のバランスを取ることができるセパレータを形成することができる。そしてさらに、セルロース系繊維を加えることにより、シートに柔軟性と遮蔽性を与えて、より優れたセパレータを形成することができる。繊維シートに加えるセルロース系繊維としては、繊維シート中に70質量%未満、より好ましくは、60質量%未満、さらに好ましくは50質量%未満含まれるのが好ましい。
【0039】
(繊維シート形成)
本発明のセパレータは、上記の繊維Aを用いて、好ましくは、繊維Bおよび/またはセルロース系繊維をさらに加えて、例えば湿式不織布とすることにより形成することができるが、その湿式不織布の製造方法は特に限定されない。例えば一般の湿式抄紙機を用いることにより効率的に所望の湿式不織布を製造できる。用いる抄き網としては、円網、短網、長網等が挙げられ、これらの抄き網を単独で用いて単層としても、また抄き網の組み合わせによる複数層の抄き合せとしてもよい。地合斑のない均質で電気特性に優れた紙を得る点からは複数層の抄き合せとすることが好ましく、なかでも短網−円網抄紙機にて2層抄き合せ紙とするのが好ましい。湿式抄紙機により抄き上げた後にヤンキー型乾燥機等で乾燥することで目的とする電気二重層キャパシタ用セパレータが得られる。勿論、加熱乾燥後、必要に応じて熱プレス加工等をさらに行うこともできる。
【0040】
加熱乾燥温度は、例えば、繊維Aの熱水溶解温度(TAとする)について、(TA+15)〜(TA+55)℃の範囲で行ってもよく、好ましくは(TA+25)〜(TA+45)℃の範囲で行ってもよい。
【0041】
また、熱プレス加工は、繊維シートの通気性を保持する範囲で行うのが好ましく、例えば、処理温度150〜250℃の範囲において、線圧75〜150kgf/cmで行ってもよい。
【0042】
さらには、得られたシートに対して界面活性剤処理等の親水化処理を行うことで、セパレータとしての電解液吸液性を向上させることも可能である。
【0043】
(セパレータの特性)
電気二重層キャパシタ用のセパレータとしては、抵抗を低くするために、0.25〜0.7g/cm
3の範囲内という低密度であることが求められ、また、セパレータを電気二重層キャパシタに取付ける加工工程を通過するに必要な引張強力[繊維シート長手(縦)方向]を備えているのが好ましく、また、イオン透過性を確保するために多孔性(通気性)のあるものがよい。
【0044】
セパレータの密度は、好ましくは、0.30〜0.6g/cm
3の範囲内であってもよく、より好ましくは0.35〜0.5g/cm
3の範囲内であってもよい。
【0045】
そして、厚さは小さい方が所定容積に電極材料をより多く充填できることから望ましい。強度的性質と通気性、厚さとは、相反する特性であるが、本発明に係る繊維シートは、熱水溶解温度85〜100℃のポリビニルアルコール系繊維を用いて形成することにより、繊維構造を維持しながら繊維交点において接合を生じるために、ポリビニルアルコール系繊維の有する高強度特性が生かされ、厚みの薄い所望の性能を有する繊維シートが少ない目付で得られる。
【0046】
セパレータの厚さは、5μm以上40μm未満の範囲内にあり、5〜30μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲内にあってもよい。
【0047】
また、セパレータの目付は、セパレータの厚みに応じて適宜設定することが可能であるが、例えば、5〜20g/m
2程度であってもよく、好ましくは7〜18g/m
2程度、より好ましくは8〜15g/m
2程度であってもよい。
【0048】
また、セパレータの通気度は、例えば、1.5〜35cc/cm
2/sであってもよく、好ましくは2〜30cc/cm
2/sであってもよい。なお、ここで通気度は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
【0049】
また、セパレータの厚さ(μm)に対する繊維シートの縦方向引張強力(kg/15mm)との比は、下記式を満足することが好ましく、本発明によれば、以下の実施例に示すように、この条件を満足するセパレータを得ることができる。
セパレータ(繊維シート)の縦方向強度/セパレータの厚さ(μm)>0.025
上記の式において、さらに好ましくは、>0.03である。
【0050】
(電気二重層キャパシタ)
本発明のセパレータを用いた電気二重層キャパシタは、正負電極、電解液、上記のセパレータ、および集電体を少なくとも備える。そのほか必要に応じて電気二重層キャパシタの技術分野で通常使用されている他の部材を備えていてもよい。例えば、電気二重層キャパシタは、セパレータと、前記セパレータを介して対向配置し、集電体上に分極性電極層を形成した正負一対の分極性電極とで構成された素子と、この素子を電解液とともに収容するケースとを少なくとも備えていてもよい。本発明の電気二重層キャパシタは、その形状は特に制限されず、コイン型、捲回型など種々の形状を取りうることができる。
【0051】
そして、金属材料からなる集電体に、それぞれ正極側の分極性電極と負極側の分極性電極が形成され、これらの分極性電極がセパレータによって隔離される。一対の固体電極を、電解質イオンを含む溶液中に浸して直流電圧を印加すると、+側に分極された電極には−イオンが、また−側に分極された電極には+イオンが静電的に引き寄せられ、電極と電解液の界面にはそれぞれ電気二重層が形成される。これにより、電気二重層キャパシタは、電解質イオンの溶液内移動と電極表面への吸脱着による充放電を行うことができる。
【0052】
前記キャパシタにおける正極および負極の種類、電解液の種類などは特に限定されず、電気二重層キャパシタにおいて従来から採用されているものを用いることができる。さらに、本発明のセパレータは、電気二重層の正極と、リチウムイオン二次電池の負極(例えば、リチウムイオンを吸蔵可能な炭素系材料)とを備えるリチウムイオンキャパシタにも使用することが出来る。リチウムイオンキャパシタは電気二重層キャパシタの原理を利用しているため、本発明では、リチウムイオンキャパシタも、電気二重層キャパシタの範疇に入るものとしてもよい。
【0053】
特に、本発明のセパレータは、炭素質の正極および負極を備え、電解液として非水系の有機系電解液[例えば、テトラアルキルアンモニウムカチオンとBF
4−,PF
6−,SO
3CF
3−,AsF
6−,N(SO
2CF
3)
2−,ClO
4−などのアニオンとの塩をプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、スルホラン、メチルスルホランなどの有機溶媒に溶解した電解液]を用いる電気二重層キャパシタ用のセパレータとして適している。
【実施例】
【0054】
本発明に係るセパレータについて実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において、各物性値は以下のようにして測定した。
【0055】
<ポリビニルアルコール系繊維の熱水溶解温度℃>
試験長5cmのポリビニルアルコール系繊維のトウに荷重0.9gf/500dtexの錘を取り付けたものを試料とし、該試料を500ccの水(20℃)中で吊るし、昇温速度1℃/分で昇温して、繊維が溶断したときの温度を熱水溶解温度とした。
【0056】
<叩解度>[(濾水度) CSF ml]
JIS P 8121「パルプの濾水度試験方法」に準じてカナダ標準濾水度を測定した。
【0057】
<目付>
試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の質量を測定し、1m
2当りに換算して求めた。
【0058】
<厚さ mm、密度 g/cm
3>
JIS P 8118「紙及び板紙の厚さと密度の試験方法」に準じて測定した。
【0059】
<引張強力>
JIS P8113「紙及び板紙の引張強さ試験方法」に準じて、繊維シートの縦方向の引張強力(kg/15mm)を測定した。
【0060】
<通気度 cc/cm
2/s>
JIS L 1096 6.27「一般織物試験方法 通気性」に準じ、フラジール型試験機にて測定した。
【0061】
<インピーダンス(抵抗値)>
試料を、1モル%の四フッ化ホウ素リチウム液[キシダ化学(株)、1mol/L LiBF
4/EC(エチルカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)(3:7v/v%)]に20℃、30分浸漬し、保液十分な状態(30秒液切りした状態)で、測定雰囲気(20℃×65%)にてインピーダンス測定器[国洋電気工業(株)製:KC−547 LCR METER)で測定した。
【0062】
(実施例1)
熱水溶解温度95℃、繊度0.3dtex、繊維長2mmmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(未FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN20200」)(構成繊維1)と、熱水溶解温度72℃、繊度1.1dtex、繊維長3mmのポリビニルアルコール系繊維(株式会社クラレ製、商品名「VPB101」)(構成繊維2)、1.7dtex、繊維長3mmの溶剤紡糸セルロース繊維(レンチング社製、商品名「テンセル」)をパルパーとファイバライザにて叩解し、CSF10mlのフィブリル化したもの(構成繊維3)を調整し、表1に示す割合で構成繊維1,2および3を混合してスラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤー(ドライヤー温度130℃)で乾燥し、ついで熱プレス機で処理温度200℃、線圧100kgf/cmで処理して、シートを作製した。得られたシートの物性を表2に示す。
【0063】
(実施例2〜3)
構成繊維1,2および3の割合を表1に示す割合とするほかは、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートの物性を表2に示す。
【0064】
(実施例4)
実施例1と同様の構成繊維1、構成繊維2および構成繊維3を同じ配合比率で混合してスラリーを調製し、実施例1と同様にして抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、ついで熱プレス機で処理して、目付10g/m
2、厚さ20μm、密度0.50g/m
3のシートを作製した。なお、厚さの調整は熱プレス機のクリアランスを調整して行った。得られたシートの物性を表2に示す。
【0065】
(実施例5)
実施例1と同様の構成繊維1、構成繊維2および構成繊維3を同じ配合比率で混合してスラリーを調製し、実施例1と同様にして抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、ついで熱プレス機で処理して、目付9g/m
2、厚さ25μm、密度0.36g/m
3のシートを作製した。なお、厚さの調整は熱プレス機のクリアランスを調整して行った。得られたシートの物性を表2に示す。
【0066】
(実施例6)
構成繊維1,2および3の割合を表1に示す割合とするほかは、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートの物性を表2に示す。
【0067】
(比較例1および2)
構成繊維1,2および3の割合を表1に示す割合とするほかは、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートの物性を表2に示す。
【0068】
(比較例3)
実施例1と同様の構成繊維1、構成繊維2および構成繊維3を同じ配合比率で混合してスラリーを調製し、実施例1と同様にして抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、ついで熱プレス機で処理して、目付11g/m
2、厚さ13μm、密度0.85g/m
3のシートを作製した。なお、厚さの調整は熱プレス機のクリアランスを調整して行った。得られたシートの物性を表2に示す。
【0069】
(比較例4)
実施例1の構成繊維1に代えて、熱水溶解温度が100℃より高いポリビニルアルコール(PVA)繊維(株式会社クラレ製、商品名「VN30200」)を用い、実施例1の構成繊維3に代えて、1.7dtex、繊維長3mmの溶剤紡糸セルロース繊維(レンチング社製、商品名「テンセル」)をディスクリファイナーにて叩解し、フィブリル化したもの(CSF150ml)を用い、さらに構成繊維1,2および3の割合を表1に示す割合にする以外は、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートの物性を表2に示す。
【0070】
(比較例5)
実施例1の構成繊維3に代えて、1.7dtex、繊維長3mmの溶剤紡糸セルロース繊維(レンチング社製、商品名「テンセル」)をディスクリファイナーにて叩解し、フィブリル化したもの(CSF150ml)を用いる以外は、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートの物性を表2に示す。
【0071】
(比較例6)
実施例1の構成繊維1に代えて、熱水溶解温度が100℃より高いポリビニルアルコール(PVA)繊維(株式会社クラレ製、商品名「VN30200」)を用いる以外は、実施例1と同様にしてシートを作製した。得られたシートの物性を表2に示す。
【0072】
実施例1〜6および比較例1〜6のシートについて、シートを構成している構繊維の仕様を表1に、シートの性能(引張強力、通気度、抵抗値、引張強力/厚さ比)を表2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
(1)熱水溶解温度95℃のポリビニルアルコール系繊維(構成繊維1)に、セルロース繊維(構成繊維3)とポリビニルアルコール・バインダー繊維(構成繊維2)を配合して形成したシートでは、厚みが薄く、低密度であっても、厚さ当たりの強度的性質および通気性に優れるとともに、電気抵抗が低減したシート(セパレータ)が得られる(実施例1および2)。
(2)構成繊維1の配合率を高くした場合、その強度および通気性が高くなるとともに電気抵抗をさらに低減させることができる(実施例3および6)。
(3)実施例1と比べ、シートの密度を高くした場合でも、所定の範囲であればセパレータに求められる特性を維持できる(実施例4)。
(4)実施例1と比べ、シートの密度が低くした場合、強度的特性を維持しつつ、電気抵抗を低くすることが可能である(実施例5)。
(5)構成繊維1を全く含まない場合(比較例1)や、構成繊維1の割合が低い場合(比較例2)と、構成繊維1の熱水溶解温度が高くなりすぎる(比較例4および6)と、強度的性質、強度/厚さ比において見劣りがする。
(6)厚みが薄くなる場合であっても、密度が高い場合には、電気抵抗を低減させることが困難である(比較例3)。
(7)密度が所定の範囲であっても、厚みが厚すぎる場合、電気抵抗を低減させることが困難である(比較例5)。