特許第6129239号(P6129239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129239コンタクトレンズ容器の製造方法とコンタクトレンズ容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129239
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ容器の製造方法とコンタクトレンズ容器
(51)【国際特許分類】
   A45C 11/04 20060101AFI20170508BHJP
   B65D 75/32 20060101ALI20170508BHJP
   B65B 7/28 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   A45C11/04 B
   B65D75/32
   B65B7/28 A
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-111626(P2015-111626)
(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-221060(P2016-221060A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2016年11月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000138082
【氏名又は名称】株式会社メニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】三浦 要和
(72)【発明者】
【氏名】杉山 武司
(72)【発明者】
【氏名】岩井 克尋
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−313928(JP,A)
【文献】 特表2001−513470(JP,A)
【文献】 特開2009−056165(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/136361(WO,A1)
【文献】 特開平06−296514(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/078696(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 11/04
B65B 7/28
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B65D 85/38
G02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状のレンズ収容部が形成された容器本体に蓋部材を重ね合わせて該レンズ収容部の開口を覆うことにより、コンタクトレンズと保存液が該レンズ収容部に収容されたコンタクトレンズ容器を製造するに際して、
レンズ収容部の開口の少なくとも一部を前記蓋部材で覆い、前記容器本体を傾けて該レンズ収容部の開口が側方に向けられた状態でも該レンズ収容部と該蓋部材との間に前記保存液と前記コンタクトレンズを収容する領域が確保されるようにすると共に、該容器本体を傾けた状態で該収容領域の上側となる位置に外部への連通孔を形成せしめて、該容器本体を傾けた状態で該コンタクトレンズが収容された該収容領域へ該連通孔を通じて該保存液を注入した後に、該連通孔を閉塞せしめて密閉された該レンズ収容部を形成することを特徴とするコンタクトレンズ容器の製造方法。
【請求項2】
前記容器本体を傾けた状態で、前記コンタクトレンズが収容された前記収容領域へ前記連通孔を通じて水和用液を注入して該コンタクトレンズに水和処理を施した後、該連通孔を通じて該水和用液と前記保存液とを交換処理することで、該収容領域へ該保存液を注入する請求項1に記載のコンタクトレンズ容器の製造方法。
【請求項3】
前記収容領域へ前記保存液を注入した後に、前記連通孔を前記蓋部材で閉塞せしめる請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ容器の製造方法。
【請求項4】
前記レンズ収容部の外周壁部において、前記容器本体を傾けた状態で上側となる位置に前記連通孔が形成されてなる該容器本体を採用する請求項1〜3の何れか一項に記載のコンタクトレンズ容器の製造方法。
【請求項5】
前記レンズ収容部の外周壁部において該レンズ収容部の開口方向に向かって開口する凹溝状の前記連通孔が形成されてなる前記容器本体を採用する請求項4に記載のコンタクトレンズ容器の製造方法。
【請求項6】
前記蓋部材として湾曲変形可能な蓋シートを採用し、前記容器本体における前記レンズ収容部の開口の周りに広がるフランジ状部に対して該蓋シートを重ねて固着すると共に、該容器本体において前記レンズ収容部の外周壁部に設けられた前記連通孔の開口面にまで回した該蓋シートを該連通孔の周りに固着せしめて該連通孔を閉塞する請求項4又は5に記載のコンタクトレンズ容器の製造方法。
【請求項7】
凹状のレンズ収容部が形成された容器本体に蓋部材が重ね合わされて、該レンズ収容部にコンタクトレンズと保存液が密閉状態で収容されたコンタクトレンズ容器において、
レンズ収容部の開口の少なくとも一部が前記蓋部材で覆われた状態で前記容器本体が傾けられることによって該レンズ収容部の上側とされる部分を外部へ連通せしめて前記保存液の該レンズ収容部への注入を許容する連通孔が形成されていると共に、該連通孔を封止することによって前記コンタクトレンズと該保存液が収容された該レンズ収容部を密閉する封止部材が設けられており、
該容器本体における該レンズ収容部の外周壁部に該連通孔が形成されていることを特徴とするコンタクトレンズ容器。
【請求項8】
前記連通孔が、前記レンズ収容部の外周壁部において該レンズ収容部の開口方向に向かって開口する凹溝状とされている請求項に記載のコンタクトレンズ容器。
【請求項9】
前記容器本体において前記レンズ収容部の開口の周りに広がるフランジ状部が形成されていると共に、湾曲変形可能な蓋シートからなる前記蓋部材が該フランジ状部に重ね合わされて該レンズ収容部の開口の周りに固着されている一方、該容器本体において前記レンズ収容部の外周壁部に設けられた前記連通孔の開口面にまで該蓋シートが回されて該連通孔の開口の周りに固着されることによって前記封止部材が構成され、該連通孔が閉塞されている請求項又はに記載のコンタクトレンズ容器。
【請求項10】
前記容器本体が傾けられた状態で前記連通孔を通じて注入される流体圧に抗して前記コンタクトレンズの前記レンズ収容部における変位を制限する位置決め機構が設けられている請求項7〜の何れか一項に記載のコンタクトレンズ容器。
【請求項11】
前記容器本体が傾けられた状態で前記連通孔を通じての液注入前に前記コンタクトレンズが前記レンズ収容部の内面へ貼り付くことを防止する貼り付き防止機構が設けられている請求項7〜10の何れか一項に記載のコンタクトレンズ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズを保存液に浸漬せしめた状態で収容して流通や保存等することのできるコンタクトレンズ容器の新規な製造方法などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズを市場に提供して流通させたり保存等する際に用いられる個別包装用のケースが、従来から幾つか提案されている。特に含水性のソフトコンタクトレンズなどでは、保存液に浸漬せしめた状態で流通や保存する必要があり、ユーザーが開封して使用したあとは簡易に廃棄できることが望ましいことからブリスターパック等のコンタクトレンズ容器が利用されている。
【0003】
具体的には、例えば特開2000−238840号公報(特許文献1)や特開平7−322911号公報(特許文献2)に示されているように、ベースに形成された窪みにコンタクトレンズと保存液を収容せしめ、窪みの開口をシート状の蓋カバーで覆って密封した構造とされている。
【0004】
ところで、このようなコンタクトレンズ容器の製造は、一般にベースと蓋カバーを各別に予め準備し、ベースの窪みにコンタクトレンズと保存液を収容してから、蓋カバーで窪みを密封することによって行われる。その際、ベースを平置き状態で水平に支持せしめて上方に向かって開口させた窪みに対して、コンタクトレンズを収容すると共に、保存液をノズルから注入した後、蓋カバーをベースの上面に重ね合わせて窪みの周りに溶着などで固着するようにされる。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1,2にも示されているように、ベースの窪みがコンタクトレンズよりも大径の浅底形状とされていることに加えて、窪みの周囲には蓋カバーを固着するための平板状部がフランジ様に広がって設けられている。そのために、ベースを平置き状態で水平に支持させるに際して比較的大きな平面スペースが必要となり、特に複数のベースの窪みに対して同時にまたは連続的に保存液の注入などの工程を実行する場合に作業スペースの確保が問題になりやすかった。
【0006】
また、前記特許文献1,2に示されているように、ベースの窪みが滑らかな内面の浅底ボウル形状や皿形状などとされていることから、上方に設置したノズルから窪みへ向けて注入した保存液が、窪みの内面に沿う流動や飛び散りなどによって窪みから外へ飛び出しやすかった。保存液が窪みの外へ飛び出してしまうと、保存液の注入量にばらつきが生じて所期のレンズ保存性能に悪影響がでるおそれがある。さらに、窪みの外へ飛び出した保存液が周囲に付着すると、その後に蓋カバーを固着する際に、ベースと蓋カバーとの重ね合わせ面間に保存液が入り込む「液噛み」が発生してしまい、ベースと蓋カバーの固着不良ひいては窪みの密閉不良の原因になるおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−238840号公報
【特許文献2】特開平7−322911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コンタクトレンズ容器の製造方法に関する本発明は、上述の事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、コンタクトレンズと保存液を収容したコンタクトレンズ容器を製造する保存液の注入工程において、容器本体の占有面積を抑えて省スペース化を図ることのできる、コンタクトレンズ容器の新規な製造方法を提供することにある。
【0009】
また、コンタクトレンズ容器に関する本発明は、従来とは異なる態様で保存液を注入することが可能とされた、新規な構造のコンタクトレンズ容器を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る方法発明の第一の態様は、凹状のレンズ収容部が形成された容器本体に蓋部材を重ね合わせて該レンズ収容部の開口を覆うことにより、コンタクトレンズと保存液が該レンズ収容部に収容されたコンタクトレンズ容器を製造するに際して、レンズ収容部の開口の少なくとも一部を前記蓋部材で覆い、前記容器本体を傾けて該レンズ収容部の開口が側方に向けられた状態でも該レンズ収容部と該蓋部材との間に前記保存液と前記コンタクトレンズを収容する領域が確保されるようにすると共に、該容器本体を傾けた状態で該収容領域の上側となる位置に外部への連通孔を形成せしめて、該容器本体を傾けた状態で該コンタクトレンズが収容された該収容領域へ該連通孔を通じて該保存液を注入した後に、該連通孔を閉塞せしめて密閉された該レンズ収容部を形成するコンタクトレンズ容器の製造方法にある。
【0011】
本態様方法に従えば、容器本体の上方に開口するレンズ収容部を蓋部材で予め覆うことで、容器本体を傾けてもレンズ収容部への保存液の注入と貯留が可能とされる。そして、容器本体を傾けた状態で保存液の注入を行うことにより、レンズ収容部を含む容器本体の形状が縦方向に比して横方向が大きくても、容器本体を傾けることで占有面積を減少させることができて省スペース化が図られる。
【0012】
しかも、レンズ収容部が例えば浅底であったり内面が滑らかであったりしても、レンズ収容部の開口を蓋部材で覆って傾けることにより、保存液の注入時には深さを大きくしたり袋状やポケット状などとすることができて、注入された保存液の外部への飛び出しも効果的に抑えることが可能になる。
【0013】
本発明方法の第二の態様は、前記第一の態様に従ってコンタクトレンズ容器を製造するに際して、前記容器本体を傾けた状態で、前記コンタクトレンズが収容された前記収容領域へ前記連通孔を通じて水和用液を注入して該コンタクトレンズに水和処理を施した後、該連通孔を通じて該水和用液と前記保存液とを交換処理することで、該収容領域へ該保存液を注入するものである。
【0014】
本態様方法に従えば、別途に製造されて供給されたコンタクトレンズに対して、例えば未反応モノマー等の不純物の除去や膨潤などの処理を目的に水和処理を施す工程も、容器本体を用いてレンズ収容部内で行うことができる。しかも、保存液の注入と同様に容器本体を傾けた状態で水和用液の注入を行うことで、水和用液の外部への飛び散りの防止や省スペース化の効果も発揮される。
【0015】
本発明方法の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に従ってコンタクトレンズ容器を製造するに際して、前記収容領域へ前記保存液を注入した後に、前記連通孔を前記蓋部材で閉塞せしめるものである。
【0016】
本態様方法に従えば、容器本体のレンズ収容部の開口を覆う蓋部材を利用して連通孔を閉塞させることで、連通孔の閉塞構造の簡略化や閉塞部材の減少が実現可能となる。
【0017】
本発明方法の第四の態様は、前記第一〜三の何れかの態様に従ってコンタクトレンズ容器を製造するに際して、前記レンズ収容部の外周壁部において、前記容器本体を傾けた状態で上側となる位置に前記連通孔が形成されてなる該容器本体を採用するものである。
【0018】
本態様方法に従えば、レンズ収容部の外周壁部に連通孔を形成したことで、保存液の注入に際して、レンズ収容部の上方への開口部の全体を蓋部材で覆うことも可能になる。これにより、容器本体を傾けて保存液を注入する際のレンズ収容部を実質的に一層深底にすることができて注入液の外部への飛び出しをより効果的に防止することも可能になる。また、保存液の注入前にレンズ収容部の上方への開口部の全体を蓋部材で覆うように固着しておけば、かかる固着部への液噛みの問題も回避され得る。
【0019】
本発明方法の第五の態様は、前記第四の態様に従ってコンタクトレンズ容器を製造するに際して、前記レンズ収容部の外周壁部において該レンズ収容部の開口方向に向かって開口する凹溝状の前記連通孔が形成されてなる前記容器本体を採用するものである。
【0020】
本態様方法に従えば、レンズ収容部の外周壁部に連通孔を形成するに際して、例えば外周壁部をトンネル状に貫通する孔構造に比して、成形型の形状や構造が簡略化されて製造も容易となる。なお、凹溝状の連通孔は、レンズ収容部の外周面への開口を残して、レンズ収容部の開口方向に向かって開口する部分を、蓋部材によってレンズ収容部の開口と共に覆っておいてから、保存液を注入するようにしても良い。
【0021】
本発明方法の第六の態様は、前記第四又は第五の態様に従ってコンタクトレンズ容器を製造するに際して、前記蓋部材として湾曲変形可能な蓋シートを採用し、前記容器本体における前記レンズ収容部の開口の周りに広がるフランジ状部に対して該蓋シートを重ねて固着すると共に、該容器本体において前記レンズ収容部の外周壁部に設けられた前記連通孔の開口面にまで回した該蓋シートを該連通孔の周りに固着せしめて該連通孔を閉塞するものである。
【0022】
本態様方法に従えば、連通孔におけるレンズ収容部の外周側への開口を、容器本体のレンズ収容部の開口を覆う蓋部材を利用して閉塞させることで、連通孔の閉塞構造の簡略化や閉塞部材の減少が図られる。
【0023】
本発明に係る物発明の第一の態様は、凹状のレンズ収容部が形成された容器本体に蓋部材が重ね合わされて、該レンズ収容部にコンタクトレンズと保存液が密閉状態で収容されたコンタクトレンズ容器において、レンズ収容部の開口の少なくとも一部が前記蓋部材で覆われた状態で前記容器本体が傾けられることによって該レンズ収容部の上側とされる部分を外部へ連通せしめて前記保存液の該レンズ収容部への注入を許容する連通孔が形成されていると共に、該連通孔を封止することによって前記コンタクトレンズと該保存液が収容された該レンズ収容部を密閉する封止部材が設けられており、該容器本体における該レンズ収容部の外周壁部に該連通孔が形成されているものである。
【0024】
本発明に従う構造とされたコンタクトレンズ容器では、レンズ収容部の開口が略上方に向けられる平置状態から所定角度だけ傾けた状態で保存液を注入することが可能とされていると共に、保存液の注入後には、連通孔が封止部材で封止されることでレンズ収容部の密閉性が維持される。このような本発明に係るコンタクトレンズ容器は、例えば前述の本発明方法の実施に際しても好適に用いられ得る。
さらに、本態様のコンタクトレンズ容器では、例えばレンズ収容部の上方への開口部の略全体を蓋部材で覆蓋せしめた状態でレンズ収容部の外周壁部に形成された連通孔を上に向けることにより、容器本体を略直角に立てた状態で保存液の注入を行うことも可能になる。
【0027】
本発明に係るコンタクトレンズ容器の第の態様は、前記物発明の第の態様に従う構造とされたコンタクトレンズ容器であって、前記連通孔が、前記レンズ収容部の外周壁部において該レンズ収容部の開口方向に向かって開口する凹溝状とされているものである。
【0028】
本態様のコンタクトレンズ容器では、レンズ収容部の外周に向かって開口する連通孔を備えた容器本体を型成形等で形成することが容易となって、実用性が向上される。
【0029】
本発明に係るコンタクトレンズ容器の第の態様は、前記物発明の第又は第の態様に従う構造とされたコンタクトレンズ容器であって、前記容器本体において前記レンズ収容部の開口の周りに広がるフランジ状部が形成されていると共に、湾曲変形可能な蓋シートからなる前記蓋部材が該フランジ状部に重ね合わされて該レンズ収容部の開口の周りに固着されている一方、該容器本体において該レンズ収容部の外周壁部に設けられた前記連通孔の開口面にまで該蓋シートが回されて該連通孔の開口の周りに固着されることによって前記封止部材が構成され、該連通孔が閉塞されているものである。
【0030】
本態様のコンタクトレンズ容器では、レンズ収容部の開口部の周りに固着されてレンズ収容部を覆う蓋シートを封止部材として巧く利用することで、保存液の注入後に連通孔を閉塞することができる。
【0031】
本発明に係るコンタクトレンズ容器の第の態様は、前記物発明の第一〜の何れかの態様に従う構造とされたコンタクトレンズ容器であって、前記容器本体が傾けられた状態で前記連通孔を通じて注入される流体圧に抗して前記コンタクトレンズの前記レンズ収容部における変位を制限する位置決め機構が設けられているものである。
【0032】
本態様のコンタクトレンズ容器では、例えばレンズ収容部に予めコンタクトレンズを収容してから保存液を注入する際にも、コンタクトレンズがレンズ収容部内の所定位置へ安定して位置決め保持されることとなる。それ故、コンタクトレンズが意図しない位置へ移動してしまってその後の蓋シートによる封止などの作業に支障が及ぼされることを防止したり、コンタクトレンズが意図せず変形して折れ曲がったり反転等することを防止することができて、コンタクトレンズの収容状態の安定化が図られ得る。
【0033】
また、本態様に係るコンタクトレンズ容器は、前述の本発明方法の第二の態様に従って容器本体を傾けた状態で収容領域へ水和用液を注入してコンタクトレンズに水和処理を施すに際して、好適に採用される。その結果、水和処理に際してコンタクトレンズが収容領域内の所定位置へ保持されることで、水和用液の循環や水和処理の効率化などが図られ得ると共に、水和処理後の水和用液から保存液への変換処理の効率化も図られ得る。
【0034】
なお、本態様の位置決め機構としては、例えばレンズ収容部内に突出してコンタクトレンズ後面の球冠状凹部内に入り込むことで位置決めする突部を容器本体や蓋シートに設けるほか、レンズ収容部の所定部位を狭くしてコンタクトレンズをレンズ収容部内面で拘束状態で位置決めする構造などによって好適に実現され得る。
【0035】
本発明に係るコンタクトレンズ容器の第の態様は、前記物発明の第一〜の何れかの態様に従う構造とされたコンタクトレンズ容器であって、前記容器本体が傾けられた状態で前記連通孔を通じての液注入前に前記コンタクトレンズが前記レンズ収容部の内面へ貼り付くことを防止する貼り付き防止機構が設けられているものである。
【0036】
本態様のコンタクトレンズ容器では、例えばレンズ収容部に予めコンタクトレンズを収容してから保存液を注入する際にも、コンタクトレンズがレンズ収容部の内面へ貼り付くことに起因する問題、具体的には注入阻害やレンズ変形などが回避され得る。
【0037】
また、本態様に係るコンタクトレンズ容器は、前述の本発明方法の第二の態様に従って容器本体を傾けた状態で収容領域へ水和用液を注入してコンタクトレンズに水和処理を施すに際して、好適に採用される。そして、水和処理に際してコンタクトレンズが収容領域の内面に貼り付くことでレンズ表面が部分的に水和用液に晒され難くなったり水和用液の循環抵抗が大きくなる等といった不具合が防止されて、水和用液の循環や水和処理の効率化などが図られ得ると共に、水和処理後の水和用液から保存液への変換処理の効率化も図られ得る。
【0038】
なお、本態様の貼り付き防止機構としては、例えばコンタクトレンズが貼り付くおそれがあるレンズ収容部の内面に対して小さな突起や突条、溝などを形成したり微小な凹凸状のシボを設ける等して機械的に貼り付きを防止する機構のほか、コンタクトレンズ材料に対する吸着性が低い材質の層を設けて化学的に貼り付きを防止する機構なども採用可能である。
【発明の効果】
【0039】
本発明に従えば、従来とは異なる態様で保存液を注入することが可能となるのであり、例えば保存液の外部への飛び出しの抑制と作業の省スペース化を図りつつ、コンタクトレンズの収容領域へ保存液を注入することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズ容器を、保存液およびコンタクトレンズを収容した状態で示す縦断面図である。
図2図1に示されたコンタクトレンズ容器を構成する容器本体の平面図である。
図3図2に示された容器本体の正面図である。
図4図2に示された容器本体の右側面図である。
図5図2に示された容器本体の左側面図である。
図6図2に示された容器本体の底面図である。
図7図2におけるVII−VII断面図である。
図8図2に示された容器本体の斜視図である。
図9図1に示されたコンタクトレンズ容器の開封状態を示す斜視図である。
図10図1に示されたコンタクトレンズ容器の使用状態を概略的に示す説明図である。
図11図1に示されたコンタクトレンズ容器の一製造工程である保存液の注入工程を説明するための説明図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
図12】本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズ容器の容器本体を示す斜視図である。
図13図12に示された容器本体の平面図である。
図14図13に示された容器本体のXIV−XIV断面図である。
図15図12に示された容器本体の右側面図である。
図16図12に示された容器本体の左側面図である。
図17】本発明の第三の実施形態としてのコンタクトレンズ容器を保存液の注入工程において示す、図11(b)に対応する縦断面図である。
図18】本発明の第四の実施形態としてのコンタクトレンズ容器を保存液の注入工程において示す、図11(b)に対応する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0042】
図1には、本発明方法の実施に好適に用いられ得る、本発明に従う構造とされたコンタクトレンズ容器の第一の実施形態であるコンタクトレンズ容器10が示されている。このコンタクトレンズ容器10は、容器本体12のレンズ収容部14が蓋シート16で封止されることで形成された密閉構造の収容領域を内部に有しており、かかる収容領域にコンタクトレンズ20が保存液22に浸漬されて収容されている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として鉛直上下方向をいう。
【0043】
より詳細には、容器本体12は、図2〜8に示されているように、上方に開口する浅底凹状のレンズ収容部14を備えている。レンズ収容部14は、底壁26とその外周から立ち上がる外周壁部としての周壁28によって、コンタクトレンズ20と保存液22を収容し得る所定容積をもって形成されている。
【0044】
また、レンズ収容部14の底面を構成する底壁26の上面は、コンタクトレンズを取り出す際にユーザーに対して遠近方向となる図1中の左右方向で深さ寸法が変化しており、ユーザーに対して近位側に位置する傾斜底面30と遠位側に位置する深底面32を有している。傾斜底面30は、ユーザーに対する近位側から遠位側に向かって次第にレンズ収容部14が深くなる方向に傾斜している。そして、傾斜底面30の最深部となる遠位側端縁から遠位側に略水平な深底面32が広がっている。なお、傾斜底面30は、深底面32より平面視で広く設定されている。
【0045】
さらに、傾斜底面30の略中央部分には、レンズ収容部14内において開口部に達しない高さで突出する突部34が形成されている。そして、図1に示されているように、レンズ収容部14内に収容されるコンタクトレンズ20が、角膜に重ね合わされる凹形球冠状のレンズ後面を下方にして突部34に被せられて載置されることで、位置決め状態で傾斜底面30に載置されるようになっている。
【0046】
加えて、傾斜底面30には、中央部分から外周に向かって延びる小さな突出高さの突条35が形成されている。特に本実施形態では、突部34の幅方向両側付近から各2本の突条35が、傾斜底面30の傾斜方向で浅底側に向かって直線的に延びて形成されている。そして、かかる突条35により、傾斜底面30に載置されたコンタクトレンズ20がエッジ部の全周に亘って傾斜底面30に密着して、球冠凹形状のレンズ後面が封止される状態で吸着されてしまうことが防止されるようになっている。
【0047】
また、底壁26の下面には、下方に向かって突出する脚部36が形成されている。脚部36の突出先端となる下端面は、深底面32を形成する底壁26の下面と略同じ平面上に位置せしめられている。そして、これら脚部36と底壁26の各下面を、テーブルなどの略水平な載置面に重ねることで、レンズ収容部14の開口を上方に向けた平置状態で容器本体12を安定して載置することができるようになっている。
【0048】
また一方、レンズ収容部14における図1中の上方に向かう開口部には、周壁28の上端縁部から外周側に向かって略水平方向に広がるフランジ状部40が形成されている。このフランジ状部40は、レンズ収容部14の開口部を実質的に全周に亘って囲むようにして、略平板形状をもって形成されている。
【0049】
さらに、フランジ状部40には、使用時におけるユーザーの近位側に向かって小幅で延び出す把持部42が形成されている。なお、かかる把持部42は、片手の指先での把持などによる取り扱いを容易にする目的で、先端部分が下方に向かって湾曲している。
【0050】
また、フランジ状部40の外周縁のうち、使用時におけるユーザーの遠位側の端縁部が該ユーザーの左右方向に直線的に延びていると共に、かかる遠位側の端縁部から下方に向かって垂れ壁状に広がる奥側縦壁44が突設されている。なお、奥側縦壁44の下方への突出高さは、テーブルなどへの容器本体12の平置状態でその載置面までは達しない寸法とされている。
【0051】
更にまた、レンズ収容部14の周壁28には、遠位側端部に位置して外周側に貫通して延びる連通孔46が形成されている。特に本実施形態では、かかる連通孔46が、周壁28の上端部から下方に向かって延びる切欠状に形成されていると共に、フランジ状部40から奥側縦壁44にまで連続して直線的に延びる凹溝状とされている。すなわち、かかる連通孔46は、フランジ状部40の上面に開口して、レンズ収容部14から奥側縦壁44までユーザーの遠近方向に延びる凹溝状に形成されており、連通孔46の一方の端部がレンズ収容部14の周壁28の内面に開口していると共に、他方の端部が奥側縦壁44の表面に開口している。
【0052】
なお、上述の如き構造とされた容器本体12は、底壁26と周壁28を備えたレンズ収容部14やフランジ状部40、奥側竪壁44および把持部42を備えた合成樹脂材料製の一体成形品として形成されることが望ましい。具体的には、例えばフッ素樹脂やポリアミド,ポリアリレート,ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリ塩化ビニル,非結晶ポリオレフィン,ポリカーボネート,ポリサルフォン,ポリブチレンテレフタレート,ポリプロピレン,ポリメチルペンテン等、或いはそれらの複合体や多層構造の合成樹脂材が好適に採用される。そして、このような樹脂材料を用いた射出成形や真空成形、圧空成形等によって一体成形された容器本体12が好適に用いられる。本実施形態では、底壁26や周壁28のほか、把持部42を含むフランジ状部40や奥側縦壁44も、略一定の厚さ形状とされている。
【0053】
一方、容器本体12の上面に重ね合わされてレンズ収容部14の開口を覆う蓋部材としての蓋シート16は、曲げ変形可能な流体密性の薄肉シートであって、容器本体12のフランジ状部40の外周形状と略同じ大きさの平面形状とされている。そして、容器本体12の上面に重ね合わされた蓋シート16が、レンズ収容部14の開口周りでフランジ状部40に固着されることで、レンズ収容部14の開口を覆うようになっている。
【0054】
さらに、封止部材としての蓋シート16は、フランジ状部よりも奥方向に大きく広がっており、この延長シート部48が下方に向けて折り曲げられて、奥側縦壁44の外面へ重ね合わされている。そして、奥側縦壁44に開口する連通孔46の開口部の周りで、延長シート部48が連通孔46の開口面である奥側縦壁44の表面に固着されることで、連通孔46の開口を覆うようになっている。
【0055】
要するに、蓋シート16は、容器本体12のフランジ状部40に重ね合わされてレンズ収容部14の開口部の周りに固着された状態では、レンズ収容部14の上方への開口が密閉されるものの、レンズ収容部14が連通孔46を通じて外部に開口された状態となっている。そして、延長シート部48が奥側縦壁44に重ね合わされて連通孔46の周りに固着されることにより、レンズ収容部14が外部空間に対して遮断された密封領域とされるようになっている。
【0056】
このような蓋シート16は、樹脂シートなどで形成することも可能であるが、好適にはアルミニウムと合成樹脂を層状または箔状にして積層一体化した複合材からなるラミネートシート等によって形成される。特に、ガスバリア性能や高圧蒸気滅菌後の蒸気バリア性能および耐強度性能等を考慮して、例えばナイロンとアルミニウム合金とポリプロピレンとからなるように、3層以上の多重層からなる蓋シート16などが好適に採用される。
【0057】
なお、レンズ収容部14や連通孔46の周りで容器本体12に対して蓋シート16を確実に封止するには、接着なども可能であるが、ヒートシールによる溶着が好適に採用される。即ち、容器本体12と蓋シート16の少なくとも両重ね合わせ面を熱可塑性樹脂で形成して、両者を重ね合わせた状態で押圧すると共に熱や高周波、超音波などで溶着することなどによって、レンズ収容部14や連通孔46を蓋シート16で封止することができる。
【0058】
また、蓋シート16には、容器本体12の把持部42の上に延びだして、把持部42に対して非接着で被さる操作片部43が設けられている。すなわち、本実施形態のコンタクトレンズ容器10は、図1に示されているように、レンズ収容部14へコンタクトレンズ20と所定量の保存液22を収容し、蓋シート16でレンズ収容部14を封止せしめた構造で市場流通されて各ユーザーへ提供されるが、ユーザーの使用時には、蓋シート16を容器本体12から剥離して開封する操作が必要となる。その際、図9,10に示されているように、かかる操作片部43を片手の指で摘んで引っ張ることにより、蓋シート16を、接着面の幅寸法が最も狭くされた、容器本体12の手前側から引き剥がして容易に開封することができるようになっている。
【0059】
ところで、上述のようにレンズ収容部14内にコンタクトレンズ20が保存液22へ浸漬されて封止状態で収容されたコンタクトレンズ容器10は、例えば以下のようにして製造され得る。
【0060】
先ず、前述の如き容器本体12を、樹脂材料の射出成形などによって製造して準備すると共に、前述の如き蓋シート16を、ラミネート法や共押出法などによる多層加工工程と容器本体12の形状に応じてカッティングする切断加工工程を経て準備する。
【0061】
その後、容器本体12のフランジ状部40へ蓋シート16を重ね合わせて、ヒートシールなどによる固着工程により、レンズ収容部14の開口部の周りで蓋シート16をフランジ状部40へ固着する。なお、本実施形態では、レンズ収容部14の上方への開口の全体が蓋シート16で覆われるように、フランジ状部40への蓋シート16の重ね合わせ面を周方向の全体に亘って連続して固着する。
【0062】
続いて、図11に示されているように、蓋シート16がフランジ状部40へ固着された容器本体12を、レンズ収容部14の開口が上方に向く平置状態から所定角度だけ傾けることで、レンズ収容部14の開口を側方へ向けた傾斜状態で支持せしめる。なお、かかる状態への容器本体12の支持は、例えばベースなどによって固定的に支持されて容器本体12を厚さ方向に挟んで固定する挟持具50,52などによって実現され得る。特に本実施形態では、平置状態から略90度傾けて、レンズ収容部14が略水平方向へ開口する状態で支持せしめるようになっている。
【0063】
また、このように容器本体12を傾けて立てた支持状態では、蓋シート16で開口を覆蓋されたレンズ収容部14が、上方に向けられた連通孔46を通じて外部に開口した状態とされる。特に本実施形態では、容器本体12が略直角に傾けられることで、平置状態で略水平に開口していた連通孔46が略鉛直上方に向かう開口状態とされている。
【0064】
その結果、平置状態では上方に向かって大きな開口部をもって開口する浅底皿状のレンズ収容部14が、傾けて支持された縦置状態では、鉛直上方に向かう連通孔46が小さな開口部とされた深底ポケット状のレンズ収容部14とされている。特に本実施形態では、連通孔46の開口面積が、レンズ収容部14の最大横断面積に比して小さくされることで、開口部が絞られた構造となっている。しかも、平置状態で連通孔46の深さ寸法と幅寸法の何れもがレンズ収容部14の深さ寸法と幅寸法より小さくされていることから、縦置状態では、連通孔46で構成された上方に向かう開口部が小さく絞られており、開口部から下方に向かって内部周長が大きく広がって、且つ、開口部の幅寸法よりも深さ寸法が大きい深底のポケット形状とされている。
【0065】
そして、縦置状態で支持せしめたレンズ収容部14に対して、連通孔46を通じて保存液22を注入して充填し、かかる保存液22に浸漬された状態でコンタクトレンズ20を収容する。
【0066】
具体的には、例えば公知のレースカット法やモールディング法、スピンキャスト法などによって別途に形成したコンタクトレンズ20を、レンズ収容部14に対して、事前にまたは縦置状態とした後に収容する。
【0067】
かかるコンタクトレンズ20の材質や種類などは限定されないが、例えば含水性のソフトコンタクトレンズの場合には、必要とされる残留物質の除去や水和などの処置を予め施した後に、レンズ収容部14へ収容する他、それらの処置をレンズ収容部14内で行うことも可能である。その場合には、処置前のコンタクトレンズ20をレンズ収容部14へ収容せしめた容器本体12を縦置状態で支持せしめて、上方に開口する連通孔46を通じて処理液をレンズ収容部14内へ供給することで、残留物質の除去や水和処理を施す。その後に、水和用液等の処理液をレンズ収容部14内から排出すると共に、保存液22をレンズ収容部14へ充填することとなる。
【0068】
また、そのような処理液の給排や保存液22の供給は、容器本体12を縦置状態で固定的に支持せしめたままの状態で行うことも可能である。それには、例えば図11に示されているように、容器本体12の連通孔46に対して上方から差し入れられるノズル54を通じて行うことが好適である。より好適には、図示するように複数本のノズル54を用い、特定のノズル54を通じて液注入を行うと同時に他のノズル54を通じて液吸引排出を行うようにされる。これにより、ノズル54を通じてレンズ収容部14内へ所定量の処理液を供給してコンタクトレンズ20の洗浄や水和の処置を行った後、ノズル54を通じて処理液の吸引排出と保存液22の注入を同時に行うことで、レンズ収容部14内の液を置換して保存液22を充填することができる。
【0069】
そして、レンズ収容部14へ保存液22を充填して、コンタクトレンズ20を浸漬状態で収容せしめた後、容器本体12を縦置状態に維持して保存液の流出を防止せしめた状態で、容器本体12のフランジ状部40の表面から上方に延びだした延長シート部48を折り曲げて、奥側縦壁44の上に重ね合わせる。この延長シート部48を連通孔46の開口部を覆うように配して、連通孔46の周りで奥側縦壁44の外面に対して溶着や接着などで固着せしめて密閉する。
【0070】
これによって、レンズ収容部14が外部空間に対して遮断された密封状態とされ、内部にコンタクトレンズ20と保存液22が収容された目的とするコンタクトレンズ容器10を得ることができるのである。
【0071】
そして、上述のような蓋シート16の容器本体12への固着態様を採用することで、より好適な効果を得ることもできる。すなわち、容器本体12へ保存液22を注入する前のフランジ状部40の乾燥状態で蓋シート16をフランジ状部40に重ね合わせて溶着等で固着し、その後に容器本体12内でのコンタクトレンズ20の膨潤処理や保存液22の注入を行ってから、奥側竪壁44に蓋シート16を重ねて、フランジ状部40への固着よりも強力に溶着することができる。これにより、フランジ状部40における蓋シート16の溶着部位に対する保存液の巻き込みを容易に且つ確実に防止して、開封操作を損なわない程度の固着力で蓋シート16を安定してフランジ状部40へ固着することが可能になる。一方、奥側竪壁44は、蓋シート16の開封を予定しない固着部位であるから、開封操作への悪影響を考慮することなく蓋シート16を強固且つ確実に密着させることで剥離を防止して機密性を高度に確保することが可能になるのである。
【0072】
このように容器本体12を縦置状態で支持すると共に、平置状態で上方に開口するレンズ収容部14の開口部を、縦置状態での少なくとも下端部から上方に所定高さに至るところまで(図11に示す上記実施形態では開口部の上端までの全体)を蓋シート16で覆蓋せしめることで、縦置状態でもレンズ収容部14へ保存液22を注入して貯留させることが可能とされる。
【0073】
そして、かかる縦置状態で保存液22の注入を行うことにより、従来では平置きが必要であったが故に大きなスペースが必要とされた保存液注入工程を省スペース化することが可能になる。
【0074】
また、前述のように保存液22の注入前に、比較的に長い処理時間を要するコンタクトレンズ20の洗浄や水和といった封止前処置まで、容器本体12の縦置状態下で行うことも可能であり、そのような封止前処置まで縦置状態下で行うことで省スペース化がより有効に達成され得ることとなる。
【0075】
さらにまた、平置状態では浅底のレンズ収容部14も、縦置状態で深底のポケット状または袋状とすることが可能である。その結果、保存液などの注入に際して外部への液の飛び出しも抑えられることから、注入液の量を精度良く設定することができる。また、保存液が飛び出して蓋シートの固着領域に付着することも軽減されることから、液噛みによる蓋シートの固着不良も防止されて、レンズ収容部14の密閉構造の信頼性の向上なども図られ得る。
【0076】
また、前記実施形態では、レンズ収容部14の周壁28に連通孔46が形成されていたことから、容器本体12を平置状態から略90度傾斜させた略垂直状態に支持させて、連通孔46を上方に向けて開口させることができるのであり、保存液の供給などに際しての縦置状態に必要なスペースを一層小さくすることができる。
【0077】
加えて、かかる連通孔46が、フランジ状部40の表面に開口して奥側縦壁44の外面まで延びる凹溝で構成されていることから、かかる連通孔46を、蓋シート16とそれに一体形成された延長シート部48により、少ない部品点数と簡単な構造で密閉して覆蓋することが可能となる。
【0078】
さらに、前記実施形態では、縦置状態におけるレンズ収容部14の下側部分において、図11(a)の左右方向となる開口幅寸法が下方に向かって次第に小さく狭窄されていると共に、図11(b)に示されるように傾斜底面30により下方に向かって深さ方向に狭窄されていることにより、レンズ収容部14の下側部分の内周面によってコンタクトレンズ20に対する位置決め作用が発揮されるようになっている。加えて、レンズ収容部14の傾斜底面30に突設された突部34が、コンタクトレンズ20の球冠凹形状の後面側から入り込むことで、コンタクトレンズ20の変位量を制限する位置決め作用も発揮されるようになっている。即ち、図11に示す実施形態では、レンズ収容部14の下側部分で狭窄された周壁内面と突部34とによって、それぞれ、予め収容されたコンタクトレンズ20に対してレンズ収容部14内での変位を制限する位置決め機構が構成されている。そして、これらの位置決め機構によって、水和用液等の処理液や保存液の注入に際しての流体圧の作用時にもコンタクトレンズ20における意図しない移動や変形が防止されて作業の安定化が図られるようになっている。
【0079】
また、前記実施形態では、縦置状態におけるレンズ収容部14の下側部分において、傾斜底面30上に突出する突条35が形成されてコンタクトレンズ20の貼り付きを防止する貼り付き防止機構が構成されている。かかる貼り付き防止機構によって、水和用液等の処理液や保存液の注入に際してコンタクトレンズ20が部分的に容器本体12や蓋シート16へ貼り付いた状態に維持されてしまうことを防止することができる。それ故、コンタクトレンズ20の処理液や保存液への接触状態を安定して発現させることができると共に、コンタクトレンズ20と容器本体12や蓋シート16との間へエアが意図せず残留してしまうような問題も回避することが可能になる。
【0080】
なお、貼り付き防止機構の具体的態様は突条35に限定されるものでない。すなわち、レンズ収容部14へ収容されたコンタクトレンズ20が接触する容器本体12や蓋シート16の表面には、その少なくとも一部に対して、コンタクトレンズ20の貼り付きを防止する貼り付き防止機構が採用され得る。例えば、容器本体12や蓋シート16の少なくとも内面を、コンタクトレンズ20に対して貼り付き難いフッ素樹脂などの特定の材質で形成することによって貼り付き防止機構とすることができる。また、容器本体12や蓋シート16の内面を形成する成形型にショットブラストなどの粗面化処理を施して、容器本体12や蓋シート16の内面にシボ加工や梨子地加工を施すことによって貼り付き防止機構とすることも可能である。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでない。
【0082】
例えば、本発明において採用される容器本体12やレンズ収容部14などの具体的形状は限定されるものでない。以下に第二〜第四の実施形態を例示するが、各実施形態では、第一の実施形態と同様な構造とされた部材や部位について図中に第一の実施形態と同一の符号を付することで詳細な説明を省略する。
【0083】
すなわち、図12〜16には、前記第一の実施形態の容器本体12に代えて採用され得る、第二の実施形態としての容器本体60が示されている。かかる容器本体60は、略平坦な平板形状の底壁62を備えていると共に、かかる底壁62の中央部分に、上方に向かって突出する位置決め機構としての中央突部64が、コンタクトレンズのレンズ後面に対応する凸形の球冠形状をもって形成されている。また、レンズ収容部14の周壁28には、縦置状態で上側とされる位置に、それぞれフランジ状部40の表面に開口して外周側へ直線的に延びる2本の凹溝をもって連通孔66,66が形成されている。
【0084】
このような構造とされた容器本体60も、第一の実施形態の容器本体12と同様に用いることができ、レンズ収容部14の開口部を蓋シートで覆蓋せしめた縦置状態で、上方に向かって開口する連通孔66,66を通じてノズルを差し入れて、液の注入や排出などを行うことが可能となる。また、コンタクトレンズの収容下で保存液を注入した後は、連通孔66,66の開口部を、前記実施形態と同様に蓋シートと一体形成した延長シート部で覆蓋したり、または別途に準備した蓋部材を圧入や固着して封止することで、レンズ収容部14を密閉してコンタクトレンズ容器を得ることができる。
【0085】
さらに、図17には、本発明の第三の実施形態としての容器本体70が、前記第一の実施形態における図11に対応する縦置状態で示されている。
【0086】
本実施形態の容器本体70には、レンズ収容部14の周壁28において、縦置状態で上側とされる位置を貫通する連通孔72が形成されている。かかる連通孔72は、レンズ収容部14の開口部やフランジ状部40の表面には開口しないで周壁28を貫通するトンネル構造をもって形成されている。
【0087】
このような構造とされた容器本体70も、第一の実施形態の容器本体12と同様に用いることができ、レンズ収容部14の開口部の全体を蓋シートで覆蓋せしめた縦置状態で、上方に向かって開口する連通孔72(複数形成しても良い)を通じてノズル54を差し入れて、液の注入や排出などを行うことが可能となる。また、コンタクトレンズ20の収容下で保存液を注入した後は、連通孔72の開口部を、別途準備した蓋シールや栓体などを用いて封止することで、レンズ収容部14を密閉してコンタクトレンズ容器を得ることができる。
【0088】
また、図18には、本発明の第四の実施形態としての容器本体80が、前記第一の実施形態における図11に対応する縦置状態で示されている。
【0089】
本実施形態の容器本体80では、レンズ収容部14の周壁28に溝や孔が形成されていない。その代わり、蓋シート16がレンズ収容部14の開口部を、縦置状態で下端となる部分から上端にまで達しない高さ方向の途中までを覆う状態でフランジ状部40の表面に固着されている。これにより、容器本体80の縦置状態で、レンズ収容部14の開口部の上側に位置する部分によって連通孔82が構成されている。
【0090】
なお、本実施形態では、図18に示されているように、容器本体80を平置状態から90度までは達しない角度(例えば45度以上、より好適には60度以上)で傾斜させた縦置状態を採用することが望ましい。これによって、レンズ収容部14の開口部で構成された連通孔82を斜め上方に向けて開口位置させることができて、縦置状態でレンズ収容部14の収容液量をより効率的に確保できると共に、ノズルの差し入れも一層容易にすることが可能となる。
【0091】
このような構造とされた容器本体80も、第一の実施形態の容器本体12と同様に用いることができ、縦置状態で、レンズ収容部14の開口部の一部を利用して構成された連通孔82を通じてノズル54を差し入れて、液の注入や排出などを行うことが可能となる。また、コンタクトレンズ20の収容下で保存液を注入した後は、蓋シート16をレンズ収容部14の全周囲においてフランジ状部40の表面に固着することで、特別な封止部材などを必要とすることなく、連通孔82を封止してコンタクトレンズ容器を得ることができる。
【0092】
なお、前記各実施形態では、コンタクトレンズ容器10の単体について説明したが、複数個のコンタクトレンズ容器10の容器本体12が幅方向につながった状態で、例えば蓋シート16を連続シート状に形成することで製造することも可能であり、その場合には、複数個の容器本体12をつながったままで各容器本体12の連通孔66が上方に開口するように縦置状態に支持せしめて、前述の如き保存液の供給などの処理をすることもできる。
【0093】
さらに、上述の実施形態において具体的な態様例が開示されている構成として、以下の構成については、本発明とは別の独立した技術思想に基づく別発明として把握することができるものであり、且つ上述の実施形態に基づいて当業者が容易に実施することができるものである。なお、以下の別発明に関する記載は、本発明を限定的に解釈する理由とされるものではない。
【0094】
すなわち、本明細書および図面に開示した別発明の第一の態様は、「コンタクトレンズと保存液を収容する凹状のレンズ収容部が形成された容器本体と、該レンズ収容部の開口を覆って流体密に封止する蓋シートとを備えたコンタクトレンズ容器において、該容器本体における該蓋シートの開封操作側となる近位側端部と反対側の遠位側端部において、該レンズ収容部が開口する上方と反対の下方に向かって突出して広がる垂れ壁を設けると共に、該容器本体における該レンズ収容部の周囲に広がるフランジ状部に重ね合わされて該レンズ収容部を覆蓋する該蓋シートを、該フランジ状部の表面から該垂れ壁の表面にまで回り込む状態で延び出させて該垂れ壁の表面に対して該蓋シートを重ね合わせ状態で固着したことを特徴とするコンタクトレンズ容器」である。
【0095】
本別発明の第二の態様は、「上記第一の態様に係るコンタクトレンズ容器において、前記垂れ壁が、前記フランジ状部から下方に向かって略垂直に突出して形成されているコンタクトレンズ容器」である。
【0096】
本別発明の第三の態様は、「上記第一又は第二の態様に係るコンタクトレンズ容器において、前記蓋シートの固着強度が、前記フランジ状部よりも前記垂れ壁において大きくされているコンタクトレンズ容器」である。
【0097】
なお、本別発明の第一〜第三の態様に係るコンタクトレンズ容器において、「垂れ壁」は、前記実施形態では「奥側竪壁44」よって構成されている。かかる奥側竪壁44において、前記実施形態にも記載したように連通孔46を設ける必要はなく、レンズ収容部14の周囲を全周に亘って覆うフランジ状部40が形成されてレンズ収容部14が上方にのみ開口する態様において該フランジ状部40の遠位側端縁部の略全長に亘って下方に突出する態様で奥側竪壁44が形成された態様は、本別発明においても採用可能である。
【0098】
また、かかる垂れ壁を構成する奥側竪壁44は、フランジ状部40から直角に下方に向かって形成されている必要はなく、斜め下方に向かって傾斜して下方に突出形成されていても良いし、その傾斜角度も一定である必要はなく、垂れ壁(奥側竪壁44)の表面が屈曲又は湾曲して下方に突出形成されていても良い。
【0099】
このような本別発明の第一〜第三の態様に係るコンタクトレンズ容器では、前記実施形態における図9図10に示されているように、奥側竪壁44(垂れ壁)まで蓋シート16を捲り上げた状態では、奥側竪壁44の表面とフランジ状部40の表面との境界部である角部から上方に向かって蓋シート16の基端部(捲り上げた蓋シート16の捲り上げ端)が立ち上がることとなる。一方、例えば奥側竪壁44へ固着されずにフランジ状部40の表面だけに固着された蓋シート16を、開封に際してフランジ状部40の途中まで捲り上げた状態(奥側竪壁44を持たない一般的な従来構造のブリスターパックでは、フランジ状部40の最後まで蓋シート16を捲り上げてしまうと、蓋シート16がフランジ状部40から分離してしまうからできない)では、蓋シート16の捲り上げ端がフランジ状部40の表面から傾斜をもって手前側に倒れて立ち上がる状態となってしまう。このような手前側に倒れて立ち上がる状態で開封された蓋シート16は、レンズ収容部14を上方で部分的に覆ってしまい易く、レンズ収容部14に収容されたコンタクトレンズへの手指でのアクセスが阻害されやすい問題があるのに対して、本別発明のコンタクトレンズ容器では、蓋シート16の捲り上げ端が上方に向かって立ち上がって手前側への倒れが効果的に抑えられると共に、更に蓋シート16の捲り上げ端を手前と反対側に大きく且つ容易に倒し込んでしまうことも可能になることから、レンズ収容部14の開口が蓋シート16で覆われてしまう問題を回避することが可能になる。
【0100】
加えて、本別発明の第一〜第三の態様に係るコンタクトレンズ容器では、前記実施形態における図9図10に示されているように、蓋シート16を捲り上げて開封する操作時において、蓋シート16の端部を手指で摘んでフランジ状部40の鉛直略上方に向けて引っ張る方向に及ぼされる開封力をたとえ強く及ぼしてしまっても、蓋シート16の開封端が、図9図10に示される如き奥側竪壁44の表面とフランジ状部40の表面との境界部である角部から上方に向かって蓋シート16の基端部が立ち上がる位置に安定して規定され得ることとなる。一方、例えば奥側竪壁44へ固着されずにフランジ状部40の表面だけに固着された蓋シート16を備えた従来の一般的なブリスターパックでは、開封に際して蓋シート16を勢い良く上方に引っ張り挙げて引き剥がすと、勢い余って蓋シート16の全体がフランジ状部40の表面から剥離して分離してしまい、かかる分離時の衝撃(弾発力)で液やレンズが飛び出すおそれもあった。すなわち、本別発明の第一〜第三の態様に係るコンタクトレンズ容器では、開封時に及ぼされる蓋シート16を上方に向けて引っ張る操作力が、フランジ状部40への固着領域では「引っ張りの力」として作用して固着面の引き剥がし力として効率的に作用することとなる一方、奥側竪壁44への固着領域では「剪断の力」として作用して固着面の引き剥がしには作用し難いこととなるのであり、その結果、たとえ強い力で蓋シート16を開封操作しても、規定の開封位置(容器本体12のフランジ状部40の遠位側端部付近)に効果的に抑えられて安定した開封状態が発現され得ることとなり、ユーザーの使用の便が向上され得るのである。
【0101】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0102】
10:コンタクトレンズ容器、12,60,70,80:容器本体、14:レンズ収容部、16:蓋シート(蓋部材、封止部材)、20:コンタクトレンズ、22:保存液、28:周壁(外周壁部)、34:突部(位置決め機構)、35:突条(貼り付き防止機構)、40:フランジ状部、46,66,72,82:連通孔、64:中央突部(突部、位置決め機構)
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