【課題を解決するための手段】
【0028】
透明な石英ガラスを製造するための上述の種類の方法から出発して、前記課題は、本発明によれば、焼結雰囲気、焼結温度及び焼結持続時間を方法ステップ(c)による焼結の間に調節し、その結果、緻密化SiO
2造粒体が一方ではなおも開気孔を含みかつ他方では1700nmの波長で材料固有の赤外線透過率T
1700を示し、ここで、前記透過率は同一の材料の石英ガラス顆粒の赤外線透過率T
1700の50〜95%の範囲内であるものとする方法により解決される。
【0029】
最初は多孔性であるSiO
2造粒体から透明な石英ガラスへと加工する際に、時間、エネルギー及び材料に関してあまり煩雑でない高温処理ステップと、気泡の望ましい不在を達成するために例えば高温での脱気手段のような煩雑な手段が講じられねばならない高温処理ステップとは区別されうる。本発明による方法は、あまり煩雑でない高温処理ステップの方を採用して、煩雑な高温処理ステップの寄与を低減させることを目的としている。この目的を達成するために、以下の手段が講じられる:
・高品質で透明な石英ガラスを製造するための標準品である十分にガラス化された石英ガラス顆粒の予備製造を回避する。その結果、この中間ステップに伴う時間、エネルギー及び材料に関する労力も不要である。その代わりに、それほど労力なしに製造することのできるなおも多孔性であるSiO
2造粒体が溶融プロセスへ提供される。
【0030】
・しかしながら通常は、多孔性造粒体を溶融プロセスにおいて経済的に妥当な溶融期間及び溶融時間で以て透明な石英ガラスへと加工することはできない。この点において、多孔性造粒体を透明な石英ガラスへの溶融に使用することは技術的には可能であるものの、制約がある。しかしながら驚くべきことに、使用されるべき多孔性造粒体が赤外波長域で特定の透過性を示す場合には、この制約を排除できることが見出された。ここで、この赤外(IR)透過性は低すぎても高すぎてもならない。そのような造粒体は、以下で「IR透過性最適化SiO
2造粒体」とも称される。この造粒体は、時間、エネルギー及び材料に関して比較的わずかな労力で高品質の石英ガラスへと溶融されることができる。本発明による方法のこうした態様を、以下により詳細に記載する。
【0031】
ガラス化された緻密な石英ガラス顆粒が用いられるか又はなおも開気孔性であるSiO
2造粒体が用いられるかにかかわらず、溶融プロセスにおける気泡形成に関する課題を解決するためには脱気手段が講じられなければならない。公知の脱気手段とは、負圧の印加や、バルク粒子の内部を占めるガスのヘリウム又は水素への置換である。この点では、なおも開気孔性である造粒体が有利である。何故ならば、こうした造粒体は溶融プロセスにおいてなおも、この造粒体中に存在するガスを除去することができかつガスの包含に抗することできるという意味で、そのような脱気手段にさらされうるためである。
【0032】
なおも多孔性である造粒体の使用に伴う断熱性に関する問題や溶融に必要とされる熱エネルギーの供給に関する問題は、本発明によれば、IR透過性に関して最適化されているSiO
2造粒体を用いて低減される。前記造粒体は、約500nm〜約2400nmの波長域内のIR線に対して特定の透過性を示す。この波長域内では吸収バンドが認められるが、この吸収バンドは通常はヒドロキシル基や水によるものであって、本明細書においては考慮される必要はない。ヒドロキシル基や水による吸収には実質的には影響を受けない1700nmの波長での透過率が、前記造粒体のIR透過性を表す。
【0033】
IR線に対する透過性に基づき、IR線に対する前記造粒体粒子の散乱効果は低減され、それによって前記SiO
2造粒体粒子を溶融するための熱エネルギーの供給が容易になる。その結果、IR透過性に関して最適化されたSiO
2造粒体が使用された場合には、最適化されていない造粒体と比較して、溶融期間及び/又は溶融温度を著しく低減させることができる。
【0034】
IR透過率を決定するための適した測定方法について、以下に記載する。バルク形態である前記造粒体粒子の、又は前記造粒体粒子から製造された成形体のIR透過率は、前記SiO
2造粒体の熱による緻密化の程度に依存する。
図2の透過率曲線は、1700nmの波長でのIR透過率が前記SiO
2造粒体の熱による緻密化に伴って増大し、完全な緻密化の少し前に最大に達することを示している。比較すると、十分に緻密化されたSiO
2造粒体、すなわち石英ガラス顆粒がわずかにより低いIR透過率を示すことがあるが、これはガラス化された反射面上での反射の増大によるものである。気泡不含の完全にガラス化されかつ透明である石英ガラス顆粒のIR透過率は、前記SiO
2造粒体粒子のIR透過率にとっての好適な「参照値」を表す。ここで、参照材料としての役割を果たす前記石英ガラス顆粒と前記SiO
2造粒体粒子とは、化学的に同一なSiO
2材料からなる。最も単純なケースでは、前記参照石英ガラス顆粒はIR透過率を測定すべき造粒体の完全なガラス化により形成される。
【0035】
前記IR透過率は、例えば、測定キュベット中の厚さ4.2mmのバルク形態のSiO
2造粒体に対して積分球を用いることにより測定される。4.2mmの測定長にわたって、高多孔性造粒体は、低多孔性造粒体よりも低いSiO
2質量占有分をもたらす。このように造粒体密度が異なっていても測定値を比較できるようにするために、前記測定値をそれぞれの造粒体のかさ密度で正規化する。この正規化とは、積分球を用いて求められた透過率測定値(%)に前記SiO
2造粒体の比かさ密度(g/cm
3)を乗じることである。それにより求められる1700nmの測定波長での透過率値Tは、ここでは「T
1700」と称される。
【0036】
上述の通り(さらには
図2から明らかである通り)、バルク形態のSiO
2造粒体粒子のIR透過率(特に前述のT
1700値)は、十分にガラス化された石英ガラス顆粒について測定された参照値よりも高い場合すらある。しかしながら、そのように高い(前記参照値の95%を上回る)IR透過率を有する造粒体粒子は、驚くべきことに、IR透過率に関して最適化された造粒体の有利な溶融挙動を示さない。恐らく、IR透過率が極めて高いことは、造粒体粒子がほぼ完全に緻密であって、もはや開気孔性を示さないことの一つの表れである。そのような造粒体粒子の残留閉気孔を溶融プロセスにおいて脱気手段に供することは、もはやできない。
【0037】
従って本発明によれば、できる限り緻密ではあるがなおも開気孔を示し、かつその気孔率が好ましくは少なくとも10%であるSiO
2造粒体が、方法ステップ(d)による溶融に使用される。開気孔性の保持に関する境界条件下に、前記SiO
2造粒体は、該造粒体ができる限り高いIR透過性を示すような程度にまで機械により及び/又は熱により緻密化される。適した緻密化度は、1700nmの波長で前記参照値の50〜95%の範囲内、好ましくは60〜90%の範囲内にあるIR透過率を伴うことが判明した。
【0038】
機械による及び/又は熱による緻密化の後に保持される前記SiO
2造粒体の気孔性は、前記SiO
2一次粒子の緻密化に関連する特性に、それぞれの造粒プロセスや前記造粒体粒子の生じるモルホロジー、気孔性及びサイズ分布に、そして緻密化プロセス自体の種類や強度に依存する。これに関して、以下により詳細に記載する。
【0039】
なおも開気孔性であるSiO
2造粒体の典型的な透過率曲線は、500〜1300nmの波長域において透過率の増大を示す。波長に強く依存するこの透過率曲線は、サブミクロン範囲の構造に対する散乱に基づくものである。これは明らかに前記SiO
2造粒体の気孔性に依存している。高度に緻密化された造粒体の場合には、この増大はわずかであるか又は全く存在しない。この増大の一つの目安が、それぞれ500nm及び1700nmの波長で測定された赤外線透過率値であるT
500とT
1700との差である。この差が小さいことは、前記造粒体の緻密化が高度であることを示す。実験により、比T
500/T
1700が0.8を上回る場合には、前記造粒体のそのような高度の緻密化が、可融性を妨害する閉気孔の形成に明らかにつながることが見出された。
【0040】
従って、焼結雰囲気、焼結温度及び焼結持続時間を方法ステップ(c)による焼結の間に調節し、その結果、前記緻密化SiO
2造粒体が500nmの波長で材料固有の赤外線透過率T
500を示し、かつ比T
500/T
1700が0.8以下である場合に有利であることが判明した。
【0041】
前記比T
500/T
1700が約0.8であることは、なおも開気孔性であるSiO
2造粒体の細孔と、過度に緻密化された閉気孔性SiO
2造粒体との間の遷移を示す。
【0042】
方法ステップ(d)による溶融が、SiO
2造粒体のバルク材料又は前記SiO
2造粒体からなる圧密体の、負圧下で溶融温度での加熱を含むという手順が好ましい。
【0043】
IR透過性に関して最適化された前記SiO
2造粒体の有利な特性の一つは、前記造粒体がIR線に対して生じる散乱が比較的わずかであるため、IR透過性に関して最適化されていないSiO
2造粒体よりも容易に溶融しうることである。もう一つの利点は、前記造粒体がT
1700の下限値により与えられる最小密度を有することである。この特性も前記造粒体の溶融し易さを助長する。従って、前記SiO
2造粒体が使用される場合には、付加的な脱気手段を伴う、すなわち負圧や真空(2mbar未満)の印加を伴うエネルギーや時間のかかる高温処理ステップは、本発明による方法においては、完全にガラス化された石英ガラス顆粒が溶融される場合と同様に短くて済み、そしていずれにしても従来のSiO
2造粒体が使用される場合よりもはるかに短くて済む。このことは、前記造粒体が、前記溶融プロセスの前に例えば冷間等方圧単軸加圧法による機械的圧力にさらされる場合や、前記溶融プロセスの間に負圧(真空)を用いることに加えて例えば熱間等方圧加圧法にさらされる場合にも当てはまる。
【0044】
これに関連して、前記緻密化SiO
2造粒体が0.9kg/l〜1.3kg/lの範囲内の、好ましくは少なくとも1.1kg/lのかさ密度を有する場合に有用であることも判明した。
【0045】
かさ密度が比較的高いため、前記SiO
2造粒体粒子は容易に溶融しうる。
【0046】
本発明においては、重要であるのは個々の前記SiO
2造粒体粒子の開気孔性であって、前記バルク造粒体材料の気孔性ではない。材料の開気孔性自体は基本的に、該材料がガス透過性であり、かつそれに伴って液体吸収性であることを示すものであり、ここで、この液体吸収性は染料浸透試験により示されることができる。窒素のようなガスを透過しない造粒体粒子は、緻密でありかつ開気孔性を有しないものと定義される。個々の前記SiO
2造粒体粒子の開気孔性の目安の一つとして本発明では比T
500/T
1700が用いられ、開気孔性の場合には前記比は0.8以下である。
【0047】
BET法により求められたBET比表面積は、1m
2/g〜25m
2/gの範囲内、好ましくは3m
2/g〜20m
2/gの範囲内である。
【0048】
20m
2/gを上回るBET表面積は、前記造粒体の迅速な溶融を妨害する。
【0049】
焼結は、最も単純な場合には、空気又は不活性ガスからなる雰囲気中で行われる。しかしながら、前記焼結雰囲気が塩素を含む場合や、前記焼結温度が少なくとも1000℃であり、好ましくは1100℃である場合に、特に有利であることが判明した。
【0050】
前記塩素含有雰囲気は、例えばHCl又はCl
2を含む。前記処理は特に、アルカリ金属や鉄の不純物を前記SiO
2造粒体から低減し、かつヒドロキシル基を除去するという作用を有する。100℃未満の温度では処理期間が長く、また1000℃を上回る温度では、塩素やガス状塩素化合物の包含を伴う多孔性造粒体の緻密焼結のリスクが生じる。
【0051】
前記脱水処理後に、前記緻密化SiO
2造粒体においてヒドロキシル基の低い含分が得られる。塩素含分は、酸素含有雰囲気中での後処理により低下されることができる。ヒドロキシル基や塩素の濃度が低いことによって、前記造粒体粒子の気泡不含の溶融が促進される。
【0052】
前記SiO
2造粒体の焼結処理は、好ましくはバルク状態で、すなわちルーズで流動可能な状態で行われる。造粒体粒子間でのアグロメレート形成を防ぐためには、方法ステップ(c)による焼結が回転炉中で行われるのが有利であることが判明した。
【0053】
さらに、方法ステップ(b)による造粒が凍結造粒により行われ、かつ板状のモルホロジーを有する造粒体粒子が得られる方法別形が好ましい。
【0054】
凍結造粒においては、前記SiO
2一次粒子の分散液が深冷凍結され、次いで凍結乾燥され、その際、凍結液体が高真空中での昇華により蒸発する。それにより低多孔性SiO
2造粒体が得られる。
【0055】
他の手順においては、方法ステップ(b)による造粒を噴霧造粒により行い、かつ球状のモルホロジーを有する造粒体粒子を得ることも適している。
【0056】
SiO
2粒子の造粒においては、凝集されていないか又は不十分にしか凝集されていない造粒体に伴って、望ましくない微細フラクションが得られる。このフラクションは、前記造粒体の後続の焼結や溶融において問題を引き起こす。噴霧造粒においては、前記造粒体粒子の所定のサイズを比較的厳密に調節することができ、かつ微細フラクションは比較的少量である。製造方法に基づき、噴霧造粒体粒子は、前記造粒体の流動性を促進するモルホロジーを有している。これによって、前記SiO
2造粒体をそのバルク状態で焼結処理することが容易になる。
【0057】
SiO
2造粒体のIR透過率は、該造粒体粒子の粒子径に依存することが判明した。100μmを上回る平均粒子径(D
50値)では、平均粒子径が大きいほどIR透過率は高くなる。
【0058】
従って、方法ステップ(b)による造粒の間に、好ましくは、少なくとも150μm、好ましくは少なくとも200μmの平均粒子径を有する造粒体粒子から開気孔性SiO
2造粒体が製造される。好ましくは、方法ステップ(b)による造粒により得られる前記開気孔性SiO
2造粒体は、20m
2/g〜100m
2/gの範囲内のBET表面積を有する。
【0059】
前記造粒体粒子の粒子径及び粒子径分布は、粒子径分布曲線のD
50値(粒子径に応じた前記SiO
2造粒体粒子の累積値)により特徴付けられる。前記D
50値は、前記SiO
2造粒体粒子の累積体積の50%が達していない粒子径を示す。粒子径分布は、ISO 13320による散乱光分光分析法及びレーザ回折分光分析法によって求められる。平均粒子径は、最も単純な場合にはDIN 66165−2によるふるい分析法によって求められる。ここでは、「平均粒子径」とはそれぞれ前記造粒体のD
50値を表す。
【0060】
造粒体粒子をできる限り均一に溶融するには、粒子径がほぼ同一であることが有利である。この点においては、前記造粒体粒子が狭い粒子径分布を有し、その際、D
90値に割り当てられた粒子径が、D
10値に割り当てられた粒子径のせいぜい3倍の大きさである場合に有利であることも判明した。
【0061】
好ましくは高熱法により得られたSiO
2粒子が、方法ステップ(b)による造粒の間に用いられる。
【0062】
前記SiO
2一次粒子は、ケイ素含有供給原料の、特に好ましくは塩素フリーのケイ素含有供給原料の、酸化又は火炎加水分解により得られる。そのようなSiO
2一次粒子は、特に高い純度や焼結活性が顕著であるため、その造粒は、結合剤を添加せずに公知の造粒法により行われることができる。
【0063】
合成石英ガラスを製造するための確実な供給原料は、四塩化ケイ素(SiCl
4)である。この物質は、それぞれ、水素及び酸素の存在での火炎加水分解法により、そして高熱法により、酸素の存在でSiO
2に転化されることができる。しかしながらこれは、保護されていない金属部材の使用をその腐食性ゆえに妨げる塩素又は塩素化合物が転化の間に形成されるという欠点を伴う。従って、前記欠点を回避するために、加水分解又は酸化によりSiO
2を形成しうる他の有機ケイ素化合物の使用が提案される。ここでは例示的にポリアルキルシロキサンが挙げられる。