特許第6129266号(P6129266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129266ばね支持された旋回可能なユニットを備えるデジタル顕微鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129266
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ばね支持された旋回可能なユニットを備えるデジタル顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/24 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   G02B21/24
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-198591(P2015-198591)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-75908(P2016-75908A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】10 2014 114 478.3
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500519563
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ (シュヴァイツ) アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems (Schweiz) AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン マーテ
【審査官】 森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−154137(JP,A)
【文献】 特開2003−098416(JP,A)
【文献】 特開2006−337470(JP,A)
【文献】 特開2006−337471(JP,A)
【文献】 特開平06−194578(JP,A)
【文献】 特開2010−276711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル顕微鏡であって、
定置のスタンド基体(12)と、
スタンド基体(12)の軸(24)に該軸(24)の長手方向軸線(26)を中心として旋回可能に支持されていて、鏡検すべき対象物の画像を撮影する画像取得ユニットを有する旋回ユニット(14)と、
旋回ユニット(14)を制動しかつ/またはロックする制動ユニット(22)と、
制動ユニット(22)を解除する操作要素(44)と、
を有し、
旋回ユニット(14)を予め規定されたゼロ位置から旋回させる際に、旋回ユニット(14)に戻しモーメント(M)を加える少なくとも1つの弾性要素(82)が設けられており、戻しモーメント(M)は、旋回ユニット(14)の重量(G)により形成される接線方向モーメント(M)と逆方向に向けられており、
弾性要素(82)は、ねじりばねであり、
スタンド基体(12)は、ロッドガイド(30)を有し、該ロッドガイド(30)内に突出しているロッド(28)が、旋回ユニット(14)に固定配置されていることを特徴とする、デジタル顕微鏡。
【請求項2】
旋回ユニット(14)の旋回範囲のうちの少なくとも一部範囲では、戻しモーメント(M)が、接線方向モーメント(M)の0.8倍〜1.2倍に相当している、請求項1記載の顕微鏡。
【請求項3】
旋回ユニット(14)の旋回範囲のうちの少なくとも一部範囲では、以下の式:
≧M
が満たされており、Mは、弾性要素(82)の戻しモーメントであり、Mは、旋回ユニット(14)の重量(G)の接線方向モーメントである、請求項1または2記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記式は、前記ゼロ位置からの旋回ユニット(14)の各旋回に対して、最大の旋回角の少なくとも80%だけ満たされている、請求項3記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記式は、旋回範囲全体に対して満たされている、請求項3記載の顕微鏡。
【請求項6】
弾性要素(82)は、スタンド基体(12)に取り付けられている、請求項1から5までのいずれか1項記載の顕微鏡。
【請求項7】
ロッドガイド(30)は、中心点が旋回ユニット(14)の回動軸線(26)に位置している円弧セグメント状である、請求項1から6までのいずれか1項記載の顕微鏡。
【請求項8】
ねじりばね(82)は、軸接合片(80)に相対回動可能に配置されており、ねじりばね(82)の線材の両端部(84,86)が、ねじりばね(82)の巻き部に対して折り曲げられており、両端部(84,86)の間に中間スペース(88)が形成されており、該中間スペース(88)内にロッド(28)が突出しており、中間スペース(88)内に、スタンド基体(12)に設けられた突出部(90)も突出している、請求項1から7までのいずれか1項記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記ゼロ位置から第1の方向への旋回ユニット(14)の旋回時には、ねじりばね(82)の第1の端部(84)が、突出部(90)に支持され、ねじりばね(82)の第2の端部(86)が、ロッド(28)によってともに移動させられ、前記ゼロ位置から、前記第1の方向と逆の第2の方向への旋回ユニット(14)の旋回時には、ねじりばね(82)の第2の端部(86)が、突出部(90)に支持され、ねじりばね(82)の第1の端部(84)が、ロッド(28)によってともに移動させられる、請求項記載の顕微鏡。
【請求項10】
前記ゼロ位置では、ロッド(28)が、ねじりばね(82)の両端部(84,86)のいずれにも接触していない、請求項記載の顕微鏡。
【請求項11】
旋回ユニット(14)がゼロ位置で配置されている場合には、弾性要素(82)に応力が加えられていない、請求項1から10までのいずれか1項記載の顕微鏡。
【請求項12】
旋回ユニット(14)は、第1の係止要素(60)を有し、スタンド基体(12)は、第1の係止要素(60)に対して相補的に形成された第2の係止要素(62)を有し、第1の係止要素(60)と第2の係止要素(62)とは、旋回ユニット(14)が前記ゼロ位置で配置されていて、操作要素(44)が未操作の基本位置で配置されている場合に、互いに連結されており、第1の係止要素(60)と第2の係止要素(62)とは、旋回ユニット(14)が前記ゼロ位置で配置されていて、操作要素(44)が予め規定された第1の操作範囲内で操作されている場合に、互いに連結されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の顕微鏡。
【請求項13】
制動ユニット(22)は、制動位置で別の弾性要素(40)により予荷重が加えられた制動要素(32〜38)を有し、該制動要素(32〜38)は、前記制動位置で軸(24)に接触しており、制動要素(32〜38)は、操作要素(44)の手動操作によって前記別の弾性要素(40)の戻し力に抗して前記制動位置から解除位置に移動可能であり、操作要素(44)は、制動要素(32〜38)に連結ユニットを介して連結されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定置のスタンド基体並びに旋回ユニットを備えていて、旋回ユニットは、スタンド基体の軸に、軸の長手方向軸線を中心として旋回可能に支持された、デジタル顕微鏡(デジタルマイクロスコープ)に関する。さらに、旋回ユニットは、鏡検すべき対象物の画像を撮影する画像取得部を備えている。さらに、顕微鏡は、旋回ユニットを制動しかつ/または固定する制動ユニットと、制動ユニットを解除する操作要素とを備えている。
【背景技術】
【0002】
ハイグレードのデジタル顕微鏡は、顕微鏡を載置面に支持する定置のスタンド基体と、スタンド基体に対して相対的に一回動軸線周りに旋回可能であって、内部に特にデジタル顕微鏡の画像取得ユニットおよび対物レンズシステムが配置されているユニットとを備えている。この旋回を介して特に達成されることは、様々な視角からの対象物の観察が可能となることである。このことは、特に、奥行きについての情報の評価のために好ましい場合がある。
【0003】
旋回ユニットがまさに対象物ステージの上に配置されていて、ひいては重心垂線が旋回ユニットの回動軸線、つまり軸の長手方向軸線を通って延びるように、旋回ユニットが配置されている場合には、旋回ユニットに回動モーメントが作用せず、旋回ユニットは、制動ユニットがなくてもその位置に留まる。これに対して旋回ユニットがその位置から旋回させられていると、旋回ユニットの重量が旋回ユニットの回動軸線周りに方向付けされた回動モーメントを形成している。この回動モーメントは、旋回ユニットが垂直の位置からより遠くに旋回されているほどより大きくなっている。これは、重力の接線方向の、回動モーメントを発生させる割合がより大きくなるからである。
【0004】
公知のデジタル顕微鏡では、この回動モーメントは、制動ユニットによって吸収される。公知のデジタル顕微鏡は、旋回ユニットの位置を変化させるための制動ユニットの解除時に、使用者がこの回動モーメントを及ぼさなければならないという欠点を有している。使用者がこれを留意しない場合には、旋回ユニットが制御されずに動くことがあり、これによって顕微鏡の破損または物的損害もしくは人的損害をもたらし得る。さらに、公知のデジタル顕微鏡は、制動ユニットが旋回ユニットの最大の変位時でも旋回ユニットを確実にその位置で保持できるように、旋回ユニットを相応に寸法設計しなければならないという欠点を有している。そのために、十分に大きな、ひいては大きな構造スペースを占めて寸法設計された制動ユニットが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、旋回ユニットが操作しやすく、最小限の力を掛けて旋回ユニットを動かすことができる、デジタル顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有するデジタル顕微鏡によって解決される。本発明の好ましい形態は、従属請求項に係る発明である。
【0007】
本発明において、顕微鏡は、弾性要素を備えており、この弾性要素は、所定のゼロ位置からの旋回ユニットの旋回時に戻しモーメントを旋回ユニットに及ぼし、この場合、戻しモーメントは、旋回ユニットの重量によって形成される回動モーメント、いわゆる接線方向モーメントとは逆向きに方向付けされている。
【0008】
これによって、ロックされた状態で、つまり制動ユニットが制動位置に配置された状態で、旋回ユニットの回動モーメント全体を制動ユニットによって吸収しなくてよく、回動モーメントの少なくとも一部が弾性要素によっても吸収されることが達成される。さらにこれにより、制動システムが解除されている場合には、使用者は、旋回ユニットを旋回させるために、弾性要素が設けられていない場合よりも小さな力を用いればよく、その結果、簡単な操作が可能である。特に、これによって、旋回ユニットが不都合に制御されずに動いて、ひいては物的損害もしくは人的損害が生じることが回避される。したがって、制動システムがより小さな制動力を用いればよいので、これによって、制動システムをより小さく寸法設計することができ、これによって、よりコンパクトでより安価な構造が達成される。
【0009】
好適な実施の形態では、旋回ユニットの旋回範囲のうちの少なくとも一部範囲では、戻しモーメントが、接線方向モーメントの0.8倍〜1.2倍に相当する。
【0010】
弾性要素は、特に、旋回範囲全体にわたって、戻しモーメントが、接線方向モーメントの0.8倍〜1.2倍に相当するように、選択されている。
【0011】
これによって、合成モーメントが少なくとも一部範囲で接線方向モーメントの最大±20%であり、したがって、使用者もしくは制動ユニットにより加えるべき力は小さく、制動ユニットの解除時の両方向への旋回ユニットの急激な動作が回避される、ということが達成される。
【0012】
ゼロ位置は、特に、顕微鏡の光軸もしくは顕微鏡の光路が、鏡検すべき対象物が配置可能である顕微鏡ステージの表面に対して垂直に配置された位置である。このゼロ位置では、顕微鏡のズームも、顕微鏡ステージの表面に関して校正される。
【0013】
好適な実施の形態では、弾性要素がスタンド基体に固定されているので、弾性要素は、旋回ユニットと一緒に旋回させなくてよい。これによって、特に簡単な構造が達成される。本発明の択一的な実施の形態では、弾性要素は、旋回ユニットの一部であってよく、ひいては旋回ユニットと一緒に旋回させてよい。
【0014】
特に好ましい実施の形態では、弾性要素は、ねじりばねの形で形成されている。これによって、特に簡単で、安価でかつ安定した構造が達成される。
【0015】
ねじりばねは、特に、ねじりばねの長手方向軸線が軸の長手方向軸線と一致するように配置されている。ねじりばねの長手方向軸線とは、特にねじりばねの巻き部によって形成される円筒の長手方向軸線と解される。これによって、旋回ユニットが旋回している角度の分だけ常にねじりばねに応力が加えられることが達成される。したがって、特に、ゼロ位置から両方向への旋回ユニットの旋回時に、ねじりばねに、その都度相応に同じだけ応力が加えられていて、したがって同一の戻し力が、ひいては同一の逆向きモーメントが及ぼされることが達成される。逆向きモーメントは、特に、ねじりばねの戻し力により旋回ユニットの回動軸線、つまり軸の長手方向軸線周りに形成されるモーメントである。
【0016】
長手方向軸線とは、本願の枠内では、特に一軸線のそれぞれの数学的な概念、つまり無限の直線と解される。したがって、長手方向軸線は、特に、構成部材の長さに制限されていない。
【0017】
特に好ましい実施の形態によれば、スタンド基体はロッドガイドを有しており、旋回ユニットはロッドを有しており、ロッドは、旋回ユニットに固く結合されていて、ロッドガイドに突入している。これによって、一方では、スタンド基体に対する旋回ユニットの旋回時に旋回ユニットの案内が達成され、他方では、ゼロ位置からの旋回ユニットの最大限可能な旋回の制限が達成される。ロッドガイドは、特に、旋回ユニットがゼロ位置から逆向きに2方向に対称的な旋回範囲内で旋回できるように形成されている。特に、旋回ユニットは、それぞれ60°だけ両方向にゼロ位置から旋回できるので、特に、120°の旋回範囲が形成される。この制限は、重量の、両方向への60°の傾倒時に生じる最大の接線方向力が、つまり回動モーメントを形成する力が、旋回ユニットが旋回している角度に対してほぼ線形であり、これによって、線形の特性線を有するばねによって、ほぼ均一の割合が逆向きモーメントとして提供され得るという利点を有している。
【0018】
ロッドガイドは、好ましくは円弧状に形成されており、円の中心点は、旋回ユニットの回動軸線上に、つまり軸の長手方向軸線上に位置する。
【0019】
さらに、ねじりばねが、軸接合片または軸に相対回動可能に配置されていて、ねじりばねの線材の両端部が、両端部の間に中間スペースが形成されているように、ねじりばねの実際の巻き部に対して屈曲されていると有利である。中間スペースには、一方ではロッドガイド内で案内されたロッドが、他方ではスタンド基体に設けられた突出部が、少なくとも部分的に配置されている。
【0020】
これによって、ゼロ位置から第1の方向への旋回ユニットの旋回時には、ねじりばねの線材の第1の端部が、突出部に支持され、ねじりばねの線材の第2の端部が、ロッドによってともに移動させられ、その結果、相応に、旋回ユニットがゼロ位置から旋回するにつれ、ねじりばねにより強く応力が加えられ、より大きな戻し力が提供されることが達成される。その逆に、ゼロ位置から第1の方向とは逆の第2の方向への旋回ユニットの旋回時には、ねじりばねの線材の第1の端部が、ロッドによってともに移動させられ、これに対して、ねじりばねの線材の第2の端部は、突起に支持される。これに応じて、この場合でも、ばねは、やはり次第に強く応力が加えられるので、旋回ユニットの変位角度に応じて漸増する戻し力が生じる。特に、このような構造を介して、第1および第2の方向への同一の変位時にはそれぞれ同一の戻し力が作用することも達成される。さらに、前述の構造は簡単な取付けを可能にする。これは、ばねを簡単に被せ嵌めればよく、手間を掛けて固定しなくてよいからである。
【0021】
さらに、軸接合片の長手方向軸線が、旋回ユニットが支持されている軸の長手方向軸線に一致すると有利であり、これによって、特に簡単な構造が提供され、前述の力の関係が保証されている。
【0022】
ゼロ位置では、ロッドは、特にねじりばねの両端部のいずれにも接触していないので、ゼロ状態では、ねじりばねに応力が加えられておらず、したがって、ねじりばねは戻し力を及ぼさない。ゼロ位置において、戻し力を及ぼすことは、そもそも回動モーメントが旋回ユニットからでないため、不要でもある。
【0023】
一般に、旋回ユニットがゼロ位置に配置されている場合には、弾性要素に応力が加えられていないと特に有利である。これによって、特に弾性要素の疲労が予防される。
【0024】
旋回ユニットの重心に作用する旋回ユニットの重量を、軸の長手方向軸線の方向に向けられた半径方向力と接線方向力とに分解することで生じる接線方向力によって形成される接線方向モーメントに、戻し力によって形成される戻しモーメントが反作用するように、弾性的なユニットが形成されているまたは配置されていると特に有利である。接線方向モーメントは、特に接線方向力を、回動軸線に対する接線方向力の垂直間隔に乗算するによって得られる。戻しモーメントは、旋回ユニットの各位置に対して、好ましくは接線方向モーメントとほぼ同一の大きさであるまたは接線方向モーメントよりも大きい。
【0025】
簡単化されたモデルによれば、旋回ユニットの重力は、旋回ユニットの重心に作用する力とみなすことができる。この重量は、旋回ユニットのあらゆる姿勢において、接線方向力と半径方向力とに分解することができる。半径方向力は、重心から旋回ユニットの回動軸線に向けられていて、したがって旋回軸線の回動軸線を中心とした回動モーメントを発生させることはない。この分解に際して生じる別の力は、接線方向力である。この接線方向力は、相応に、回動軸線に向けられた半径方向力に対して垂直であり、これにより旋回ユニットの回動軸線と重心とを結ぶ接続線に対しても垂直である。この接線方向力は、接線方向モーメントの発生の原因である。戻し力は、接線方向モーメントとは逆に向けられた、つまり反対の回動方向を有する戻しモーメントを形成する。
【0026】
戻しモーメントは、旋回範囲の少なくとも一部範囲では、好ましくは旋回範囲全体にわたって、接線方向モーメントよりも大きいまたは接線方向モーメントと同一である。したがって、旋回ユニットの特に容易な旋回動作が可能であり、旋回動作時、使用者は、大きな力を加えることなく旋回ユニットを常に確実にかつ正確に制御することができる。
【0027】
戻しモーメントは、特に弾性要素の戻し力と回動軸線に対する戻し力の間隔との積として生じる。相応に、接線方向モーメントは、接線方向力と回動軸線に対する接線方向力の間隔との積として生じる。
【0028】
戻しモーメント(M)および接線方向モーメント(M)は、特に旋回範囲の少なくとも一部範囲では、以下の式:
≧M
を満たしている。
【0029】
この式が、ゼロ位置を起点とした、最大の旋回角度の少なくとも83%、好ましくは67%、特に少なくとも50%での旋回ユニットの各旋回に対して満たされていると特に有利である。したがって、この式は、特に旋回範囲のそれぞれ終了部分で、つまり最大の旋回角度の83%〜100%もしくは67%〜100%もしくは50%〜100%の旋回時に満たされている。これによって、旋回範囲を制限するためのストッパに対する強い当接が回避される。
【0030】
特に好ましい実施の形態によれば、この式は、旋回範囲全体に対して満たされている。この式が、ゼロ位置を起点とした、少なくとも50°、好ましくは少なくとも40°、特に少なくとも30°での旋回ユニットの各旋回に対して満たされていると特に有利である。特に好ましい実施の形態によれば、この式は、旋回範囲全体に対して満たされている。
【0031】
したがって、60°の最大の旋回角度の場合、上述の式は、ゼロ位置からの特に50°〜60°または40°〜60°または30°〜60°の旋回時に満たされている。
【0032】
このことは、ゼロ位置から見て両方向で最大60°の変位時に、特に線形の特性線を有する弾性要素によって達成することができる。これは、接線方向モーメントが確かに旋回角度の正弦に対して比例しているが、旋回角度の正弦は、原点を中心として60°の範囲でほぼ線形に延びているからである。
【0033】
さらに、旋回ユニットが、第1の係止要素を有しており、スタンド基体が、特に第1の係止要素に対して相補的に形成された第2の係止要素を有していると有利である。第1の係止要素と第2の係止要素とは、旋回ユニットが予め規定されたゼロ位置で配置されていて、操作要素が未操作の基本位置で配置されている場合に、互いに連結されている。さらに、第1の係止要素と第2の係止要素とは、旋回ユニットがゼロ位置で配置されていて、操作要素が予め規定された第1の操作範囲内で操作されている場合にも、互いに連結されている。特に第1の係止要素は第2の係止要素内に係止されている。
【0034】
第1の係止要素と第2の係止要素との連結によって、顕微鏡の使用者が常時ゼロ位置を再び容易に見つけ出すことができることが達成される。特に旋回ユニットが前もってゼロ位置から移動させられている場合には、操作要素を第1の操作範囲内で操作して、第2の係止要素内への第1の係止要素の係止が行われるまで、使用者が、旋回ユニットを移動させることができる。係止によって、旋回ユニットがゼロ位置で配置されていることが、使用者に直接的にかつ直感的に信号により報知される。
【0035】
ゼロ位置は、特にこのゼロ位置を起点として旋回ユニットを両方向に互いに等しい角度だけ旋回させることができ、これによって、ゼロ位置が中心の位置を成すように選択されている。
【0036】
制動ユニットは、特に旋回ユニットの内部に配置されているので、制動ユニットも一緒に旋回させられる。
【0037】
旋回ユニットが、ゼロ位置で配置されていて、操作要素が、第1の操作範囲と異なる、この第1の操作範囲に重なり合うこともない予め規定された第2の操作範囲内で操作されている場合に、それにもかかわらず、第1の係止要素が、第2の係止要素に連結されておらず、特に係止されていないと特に有利である。これによって、使用者は、操作要素をどの程度操作しているのかに応じて、ゼロ位置への移動時に係止要素同士の連結を行うべきか否かを選択することができることが達成される。第2の操作範囲によって、連結を行うことなしに、特に旋回ユニットを一方の側からゼロ位置を越えて他方の側に移動させることができることが確保される。このことは、特に画像取得ユニットを介したビデオ撮影時に極めて有利である。なぜならば、さもないと、係止を介して、振動および衝撃が生じてしまう恐れがあるからである。さらに、連結が行われていると、通常、使用者はこの範囲内で、加える力ひいては旋回ユニットを移動させる速度を直感的に変化させてしまう。このことも同じくビデオ撮影時に不整を発生させる恐れがある。
【0038】
第1の操作範囲は、特に基本位置と第2の操作範囲との間に配置されている。さらに、第1の操作範囲が、基本位置に直接的に続いており、第2の操作範囲が、第1の操作範囲に直接的に続いていると有利である。
【0039】
操作要素の操作量に応じて、特に制動ユニットもそれぞれ異なる程度に解除される。すなわち、操作要素がどの程度操作されるのかに応じて、発生させられる制動力を無段式に調整することができる。したがって、単に個々の操作点の設定ではなく、2つの操作範囲の設定によって、両操作範囲内でそれぞれ制動力を調整することができる。
【0040】
確かに、第1の操作範囲内では、制動ユニットが、特に制動力を加えているものの、それにもかかわらず、この制動力は、旋回ユニットの調整が可能となる程度の大きさでしかない。これに対して、操作要素がその基本位置にある、すなわち、操作されていない場合には、制動力が、旋回ユニットの旋回が可能とならないほど強力である。
【0041】
操作要素は、特に予め規定された最大の操作距離だけ操作することができる。両操作範囲は、特に第1の操作範囲が、最大の操作距離の、基本位置に続く最初の半分をほぼカバーしていて、第2の操作範囲が、最大の操作距離の、最初の半分に続く残りの半分をカバーしているように選択されている。
【0042】
これによって、第1の操作範囲だけでなく、第2の操作範囲に対しても、十分な遊びが提供され、使用者による簡単な直感的な操作が得られることが達成される。
【0043】
両操作範囲の間の移行部は、特になだらかであってよい。
【0044】
さらに、操作要素の操作時に、第1の操作範囲内だけでなく、第2の操作範囲内でも、少なくとも旋回ユニットの旋回が可能となる程度に、制動ユニットが解除されていると有利である。
【0045】
第1の係止要素と第2の係止要素との間の係止結合部は、特に操作要素が、それぞれ第1の操作範囲内で操作されている限り、係止結合が、ゼロ位置からの旋回ユニットの旋回時には自動的に解除されかつ/または、逆に、ゼロ位置以外の位置からゼロ位置への旋回ユニットの旋回時には自動的に形成されるように構成されている。係止結合のこの自動的な解除と形成とによって、このために操作が必要とならず、解除および形成が、旋回ユニットの旋回時に、それぞれゼロ位置への移動もしくはゼロ位置からの移動に際して自動的に行われることが達成される。したがって、係止結合を介して、ロック作用は発生させられず、位置表示のみが達成される。
【0046】
特に係止結合は、旋回ユニットの旋回による係止結合部の解除および再現の際に、音響的、触覚的かつ/または光学的な信号、特に「クリック」が送出されるように形成されている。これによって、使用者がゼロ位置を極めて簡単にかつ直感的に感知することができる。特にこの信号は、このために弾性的な構成部材が必要とならず、信号が係止結合の機械的な形成によって純粋に送出されるように発生させられる。係止結合部は、特に相応の「クリック」によってゼロ位置を表示する、いわゆる「クリックストップ」の形態で構成されている。
【0047】
特に好適な態様では、第1の係止要素が、予め規定された経路に沿って移動可能、特に線形に摺動可能に配置されている。操作要素がその基本位置で配置されている、すなわち、操作要素が操作されていない場合には、第1の係止要素は出発位置で配置されている。この出発位置では、旋回ユニットがゼロ位置で配置されている限り、第1の係止要素が第2の係止要素内に係合されている。さらに、旋回ユニットがゼロ位置で配置されていることを常に前提として、第1の操作範囲内での操作要素の操作時には、最大でも第1の係止要素が第2の係止要素内に少なくとも部分的に係止されている程度に、第1の係止要素がその出発位置から移動させられるように、第1の係止要素が形成されており、かつ/または操作要素に連結されている。この連結が純粋に機械的に行われていると特に有利であり、これによって、電流なしでも、調整が可能となる。さらに、第1の操作範囲内での操作要素の操作時に、第1の係止要素がその出発位置に完全にとどまっていると特に有利であり、これによって、常に係止結合が形成される。
【0048】
これに対して、第2の操作範囲内での操作要素の操作時には、旋回ユニットがゼロ位置で配置されているとしても、第1の係止要素がもはや第2の係止要素内に係止されていないように、第1の係止要素がその出発位置から移動させられている。
【0049】
こうして、第1の操作範囲内での操作時にしか係止が行われておらず、ひいては、操作量に応じて、ゼロ位置が「越えられる」べきかまたは信号が送出されるべきかを選択することができることを簡単に達成することができる。
【0050】
第1の係止要素に弾性要素を介して出発位置で予荷重が加えられていると特に有利である。これによって、第1の係止要素が相変わらず出発位置に自動的に戻されることが達成される。さらに、これによって、たとえば旋回ユニットがゼロ位置で配置されていないという理由で、第1の係止要素が予め出発位置で配置されていなかった場合に、第1の係止要素が出発位置に自動的に移動させられることが達成される。旋回ユニットがゼロ位置以外に配置されている場合には、第1の係止要素は、特に弾性要素の戻し力に抗して当付け面への接触によって出発位置から移動させられている。旋回ユニットがゼロ位置に移動させられ、これによって、第1の係止要素が第2の係止要素の範囲内に達すると、第1の係止要素が弾性要素の戻し力を介して第2の係止要素内に移動させられ、ひいては、出発位置に移動させられる。相応して、逆に、操作要素を第1の操作範囲内で操作して、旋回ユニットをゼロ位置から移動させる際には、第1の係止要素が第2の係止要素および/または当付け面への接触を介してばねの戻し力に抗して再び出発位置から移動させられる。
【0051】
弾性要素は、特にばね、たとえば圧縮ばねである。これによって、特に簡単な構造が達成される。
【0052】
第1の係止要素は、特にピンとして形成されている。相応して、第2の係止要素は、相補的に、切欠き、特に軸に対して同軸に配置されたディスクに設けられた切欠きとして形成されている。操作要素が全く操作されないかまたは第1の操作範囲内でしか操作されていない場合には、旋回ユニットがゼロ位置で配置されている限り、ピンが切欠き内に係止されている。特にピンは、丸み付けられた、特に半球形の端部を有していて、この端部で切欠き内に係合されている。相応して、切欠きも、特に面取りされた形状、丸み付けられた形状または半球形の形状を有している。これによって、ゼロ位置からの旋回ユニットの移動時に、第1の係止要素がその出発位置から面取り部を通って移動させられることが達成される。したがって、特に係止結合部の引っ掛かりおよび遮断作用が回避される。好ましくは、面取りまたは丸み付けにより、係止結合によってロックが生じず、信号によるゼロ位置の報知しか生じないことが確保される。
【0053】
ピンが、長孔を有しており、この長孔内に、操作要素に固く結合された別のピンが係合されていると特に有利である。長孔は、第1の操作範囲内での操作要素の操作時に、別のピンが長孔の内部で移動させられるように形成されている。なお、その際に、これによって、ピン、すなわち、第1の係止要素は移動させられない。これによって、第1の操作範囲内での操作要素の操作時に、第1の係止要素がその出発位置にとどめられるかまたは別の係止要素に対する係止結合部が形成されることが達成される。
【0054】
特に好適な態様では、制動ユニットが、別の弾性要素により制動位置で予荷重が加えられた少なくとも1つの制動要素を有している。この制動要素は、制動位置で軸に接触していて、この接触を介して制動力を発生させている。制動要素は、操作要素の手動操作によって別の弾性要素の戻し力に抗して制動位置から解除位置に移動可能である。操作要素と制動要素との間の連結は、連結ユニットを介して行われる。解除位置では、特に軸の長手方向軸線を中心とした旋回ユニットの旋回が可能となる。
【0055】
好適な態様では、操作要素が、連結ユニットによって純粋に機械的に制動要素に連結されている。択一的または付加的には、磁気的なかつ/または電気的な連結も可能である。
【0056】
好ましくは純粋に機械的な連結によって、旋回ユニットの旋回が電流の供給なしでも可能となるという利点が得られる。さらに、弾性要素によって、操作要素の操作なしでは、制動要素が常に制動位置で配置されていて、ひいては、必要となる制動力を加えていることにより、制動ユニットが自動的に旋回ユニットを常にロックしていることが確保される。したがって、旋回ユニットの不本意な旋回が生じないようになっており、これによって、物的損害および人的損害が予防される。さらに、軸との接触ひいてはこれにより生じる摩擦力を介して制動作用を発生させる、このような純粋に機械的に連結された制動要素により、使用者が操作要素を実際にどの程度操作しているのかに応じて、制動力を使用者によって無段式に調整することができることが可能となる。これによって、特に旋回ユニットの位置の微調整が可能となる。このためには、操作要素が最小限しか操作されず、これによって、相変わらず制動力は加えられるものの、それにもかかわらず、この制動力は、旋回ユニットの調整が可能となる程度の大きさでしかない。この場合には、使用者によって旋回ユニットの全重量が支えられる必要はなく、この全重量の大部分が制動力によって受け止められる。したがって、使用者は具体的な精密位置決めに集中することができ、仮に使用者が旋回ユニット全体を支えなければならなかったとしても、精密位置決めを十分正確に行うことができる。
【0057】
制動力は、特に制動要素と軸との間の摩擦結合によって発生させられる。制動力は、特に制動要素がどの程度の力で軸に押圧されるのかに左右される。この力はやはり弾性要素によって加えられる。操作要素の操作時には、弾性要素の戻し力と逆方向に向けられた力が加えられる。これによって、制動要素から軸に作用する合成力が減少させられるので、より少ない制動力も発生させられる。このことは、制動力の前述した無段式の調整を可能にする。
【0058】
本発明の特に好適な態様では、制動ユニットが、それぞれ1つの弾性要素を介して制動位置で予荷重が加えられた複数の制動要素を有している。これら全ての制動要素は、操作要素によって制動位置から解除位置に移動可能となるように、操作要素に連結されている。特に軸のそれぞれ異なる箇所に配置された複数の制動要素を設けることによって、より大きな、特に均一に配分された制動力が得られ、これによって、旋回ユニットの制動およびロックを確実にかつ安全に行うことができることが達成される。
【0059】
制動要素は、特にそれぞれ同一に形成されている。弾性要素も、好ましくはそれぞれ同一に形成されている。1つの態様では、択一的に、種々異なる制動要素および/または種々異なる弾性要素が使用されてもよい。制動要素および弾性要素を改良することができる以下に説明する特徴は、複数の制動要素を備えた態様に際して、全ての制動要素に利用することができるだけでなく、それぞれ複数の制動要素のうちの一部にだけ利用することもできる。特に種々異なる制動要素は、以下に説明する特徴の一部に互いに組み合わせることができる。
【0060】
全ての制動要素と単一の操作要素との連結によって、使用者は相応して1つの操作要素を操作しさえすればよく、ひいては、特に簡単な操作が保証されていることが達成される。1つ以上の制動要素は、これが軸に押圧される限り、特にラジアルピストン、すなわち、半径方向に向けられた力を軸に加えるピストンとして形成されている。このようなラジアルピストンによって、1つには、特に簡単な構造が達成され、もう1つには、軸への極めて良好な力伝達が保証される。
【0061】
1つ以上のラジアルピストンは、好ましくは、予め規定された角度だけ面取りされた、軸に接触するそれぞれ1つの接触領域を有している。力は、ラジアルピストンから、特に接触領域を介して加えられる。面取りされた領域では、力伝達が、特に1つの線に沿って行われる。接触領域は、好ましくは、20°〜45°の角度、特に約30°だけ、ラジアルピストンの周面に対して相対的に面取りされている。相応して、ラジアルピストンは端面に対して、特に45°〜70°の角度、好ましくは60°の角度を有している。
【0062】
本発明の択一的な態様では、接触領域が、異なる形状を有していてもよい。特に接触領域が円筒セグメント状に形成されていて、特に軸の直径に正確に適合されてもよく、これによって、極めて大きな接触範囲が得られ、したがって、力を1つの線に沿ってだけでなく、大きな面積にも伝達することができる。これによって、さらに確実なかつ均一な力伝達と、より良好な制動・ロック作用が得られる。
【0063】
制動要素に制動位置で予荷重を加える1つ以上の弾性要素は、特にばね、好ましくは圧縮ばねとして形成されている。これによって、特に簡単なかつ安全な構造が達成される。択一的には、たとえばゴムブロックが使用されてもよい。
【0064】
特に好適な態様では、制動要素が制動位置から解除位置に無段式に移動可能であり、これによって、制動要素の位置に関連して、それぞれ異なる程度の制動力が加えられる。したがって、制動力を無段式に、特に連続的に調整することができることが達成される。これによって、操作快適性が向上させられ、直感的な操作が可能となる。
【0065】
操作要素は、特に旋回軸線を中心として旋回ユニットのハウジングに対して旋回可能な1つのレバーを有している。このレバーには、特に制動ユニットの弾性要素および/または別の弾性要素によって基本位置で予荷重が加えられている。なお、基本位置とは、操作要素が操作されておらず、したがって、1つ以上の制動要素が制動位置で配置されている場合に操作要素がとっている位置である。
【0066】
レバーが、解除のために、基本位置から使用者の方向に引き寄せられると特に有利であり、これによって、特に簡単なかつ快適な操作が可能となる。
【0067】
特に好適な態様では、制動ユニットが、ラジアルピストンとして形成された少なくとも2つ、好ましくは4つの制動要素を有している。これらのラジアルピストンのうちのそれぞれ2つは、軸の中心平面を基準として互いに反対の側に配置されている。これら互いに反対の側に配置されたラジアルピストンには、それぞれ1つの弾性要素を介して互いに逆方向で、すなわち、互いに近づく方向で予荷重が加えられている。したがって、偶数個のラジアルピストン、たとえば2つ、4つ、6つまたは8つのラジアルピストンが好適である。前述したラジアルピストンに相応して、2つのラジアルピストンが、それぞれ互いに反対の側に配置されている。これによって、特に簡単なかつコンパクトな構造が達成される。さらに、均一な力供給が達成される。特にラジアルピストンは、その力導入箇所が軸の全周にわたって対称的に分配されているように配置かつ/または形成されている。
【0068】
さらに、互いに近づく方向に予荷重が加えられた両ラジアルピストンの間に、操作要素に固く結合されたそれぞれ1つの中間要素が配置されており、両ラジアルピストンが、各々の弾性要素を介した予荷重に基づき、中間要素の互いに反対側の面を押圧していると有利である。操作要素の操作時には、中間要素が傾倒されて、ラジアルピストン同士の間の間隔が、操作要素の操作距離に応じて、すなわち、操作要素がその基本位置からどの程度移動させられているのかに応じて増加させられ、これによって、ラジアルピストンが制動位置から解除位置の方向に移動させられるようになっている。特に中間要素の傾倒によって、この中間要素が傾けられて、ラジアルピストンにその縁部で接触し、ラジアルピストンを互いに押し離す。したがって、簡単に形成された極めて安全なコンパクトな構造が達成される。さらに、この構造により、予荷重が加えられた両ラジアルピストンの間での、操作要素に固く結合された中間要素の挟込みによって、ラジアルピストンを介して操作要素に基本位置で自動的に予荷重が加えられており、このために、別個の弾性要素が設けられる必要がないことが可能となる。
【0069】
中間要素の傾倒は、特にレバーを操作する際の旋回と同じ旋回軸線を中心として行われる。特に中間要素と、レバーをハウジングに対して相対回動可能にこのハウジングに支持する支持体とが一体に形成されており、これによって、特に簡単な構造および安全な操作が達成される。
【0070】
ラジアルピストンが制動位置で配置されている場合には、ラジアルピストンの端面は、水平線に対して相対的に予め規定された角度で配置されている中間要素に接触している。中間要素の傾倒時には、この中間要素の表面が相応に同じく傾倒され、これによって、水平線に対する角度が増加させられ、これによって、互いに近づく方向に応力が加えられているラジアルピストン同士の間の間隔が増加させられる。この間隔の増加により、ラジアルピストンを軸に押し付ける力が減少させられ、これによって、制動力が相応に減少させられる。
【0071】
特に好適な態様では、制動要素が制動位置で配置されている場合、この制動位置の制動要素に予荷重を加えている弾性要素を介して、操作要素が配置されている基本位置でこの操作要素に予荷重が加えられている。択一的または付加的には、更なる別個の弾性要素、たとえばばねを介して操作要素に基本位置で予荷重が加えられていてもよい。
【0072】
特に好適な態様では、軸が中空に形成されている。これは、軸をケーブル通路として用いることができ、このケーブル通路を通して、スタンド基体と、旋回ユニット内に配置された構成ユニットとの間の配線を行うことができるという利点を有している。これは、旋回ユニットの旋回時でも配線が弛まず、邪魔にならないという利点を有している。
【0073】
さらに、旋回ユニットが、ズームシステムおよび/または選択的に光路にもたらすことができる複数の対象レンズを備えた対物レンズシステムを有していると有利である。対物レンズに応じて、対象物のそれぞれ異なる拡大率を得ることができる。
【0074】
対物レンズは、特に同焦点対物レンズとして形成されている。これは、焦点ずれを生じさせることなく、種々異なる対物レンズの交換が可能となり、これによって、使用者による後位置調整が不要となるという利点を有している。
【0075】
さらに、対物レンズが、軸の長手方向軸線、すなわち、旋回ユニットの回動軸線と、それぞれ選択された対物レンズがその使用時に配置されている位置、すなわち、運転位置との間の予め規定された間隔に工場側で適合されていると特に有利である。旋回システムの回動軸線への対物レンズのこの適合によって、旋回ユニットのユーセントリックな旋回が実現され、これによって、旋回ユニットの旋回時に、使用者が再度の位置調整動作を実施する必要がなくなる。
【0076】
本発明の更なる特徴および利点は以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】顕微鏡の概略的な斜視図である。
図2】制動ユニットを見た、顕微鏡の一部の概略的な斜視図である。
図3】制動位置に配置された制動ユニットを見た、図1および図2に示す顕微鏡の一部の断面図である。
図4】制動位置に配置された制動ユニットを側方から見た、図1および図2に示す顕微鏡の一部の別の断面図である。
図5】制動ユニットが解除された位置に配置された、図1および図2に示す顕微鏡の一部の断面図である。
図6】解除された位置に配置された制動ユニットを側方から見た、図1および図2に示す顕微鏡の一部の断面図である。
図7】クリックストップ機構を見た、図1および図2に示す顕微鏡の一部の別の概略斜視図である。
図8】クリックストップ機構の係止要素が初期位置に配置された、図1および図2に示す顕微鏡の一部の断面図である。
図9】操作要素が第1の操作範囲内で操作されている場合の図1および図2に示す顕微鏡の一部の断面図である。
図10】操作要素が第2の操作範囲内で操作された、図1および図2に示す顕微鏡の一部の断面図である。
図11図1および図2に示した顕微鏡を、ハウジング部分を省略して後ろ側から見た概略的な斜視図である。
図12】旋回ユニットがゼロ位置で配置されている場合の図1および図2に示した顕微鏡の断面図である。
図13】旋回ユニットがゼロ位置から第1の位置に動かされた場合の図1および図2に示した顕微鏡の別の断面図である。
図14】ゼロ位置から第2の位置に旋回させられた旋回ユニットを備えた図1および図2に示した顕微鏡の別の断面図である。
図15】旋回ユニットの旋回角に関連して作用する力の線図の第1の実施の形態を示す図である。
図16】旋回ユニットの旋回角に関連して作用する力の線図の第2の実施の形態を示す図である。
図17】旋回ユニットの旋回角に関連して作用する力の線図の第3の実施の形態を示す図である。
図18】旋回ユニットの旋回角に関連して作用する力の線図の第4の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0079】
図1には、デジタル顕微鏡10の概略斜視図が示してある。顕微鏡10は、定位置のスタンド基体12を備え、スタンド基体12によって、顕微鏡10は、所定の面に載置することができる。
【0080】
さらに、顕微鏡10は、このスタンド基体12に対して相対的に旋回可能な旋回ユニット14を備える。旋回可能な取付けを、以下に、図2に関して詳しく説明する。
【0081】
旋回ユニット14は、少なくとも1つの画像取得ユニットを備え、画像取得ユニットによって、鏡検すべき対象物の画像を記録することができる。特に、この画像取得ユニットを介して、個々の画像だけではなく、ビデオを撮影することもできる。画像取得ユニットは、鏡検すべき対象物を様々な観察角度から観察することを可能にする。
【0082】
さらに、旋回ユニット14は、対物レンズシステムおよび/またはズームシステムを有しており、対物レンズシステムおよび/またはズームシステムによって、鏡検すべき対象物の拡大を様々に調整することができる。対物レンズシステムは、特に多数の対物レンズを有しており、これらの対物レンズのうちその都度1つの対物レンズが、選択的に、顕微鏡10の光路に旋回して入ることができるので、この旋回して入る対物レンズが実際に使用される。顕微鏡10の光路もしくは光軸は、図1に、符号15で示してある。
【0083】
特に少なくとも1つのカメラである画像取得ユニットおよび対物レンズは、旋回ユニット14のハウジング16によって覆われているので、図1では看取されない。
【0084】
対物レンズシステムの対物レンズは、特に同焦点に構成されているので、対物レンズ交換時に使用者によるリフォーカスを行わなくてよい。この場合、対物レンズは、特に、旋回ユニット14が回動する中心の回動軸線と対物レンズのインタフェース、つまり対物レンズが配置される領域との間の間隔に合わせるように調整されているので、ユーセントリックシステムが形成され、その結果、スタンド基体12に対して相対的な旋回ユニット14の旋回時に新たなフォーカシングを行わなくてよい。
【0085】
スタンド基体12には、さらに対象物ステージ18が取り付けられており、対象物ステージ18の上に、鏡検すべき対象物が置かれる。この顕微鏡ステージ18は、調整ホイール20によって、スタンド基体12に対して相対的に、両矢P1の方向で調節することができる。これによって、鏡検すべき対象物のフォーカシングが可能である。
【0086】
図2には、制動ユニット22と、スタンド基体12に対する旋回ユニット14の支持部とを見た、顕微鏡10の一部の概略的な断面図が示してある。図示するために、旋回ユニット14のハウジング16は省略されている。さらに、旋回ユニット14の上部も、その内部に位置する構成部材をより良好に看取できるようにするために、図示していない。
【0087】
スタンド基体12は、軸24を備えており、軸24に、旋回ユニット14が、軸24の回動軸線26を中心として回動可能に軸支されている。従って、軸24の長手方向軸線26は、旋回ユニット14の回動軸線を成している。
【0088】
旋回ユニット14は、ロッド28を備え、ロッド28は、旋回ユニット14に不動に取り付けられていて、スタンド基体12のロッドガイド30の内側で案内されている。ロッドガイド30は、特に円弧状に形成されており、この場合、この円の中心点は、長手方向軸線26の上に位置する。ロッドガイド30および係合しているロッド28を介して、一方では運動の案内が行われ、他方では特に最大限可能な旋回の制限が行われる。
【0089】
ロッドガイド30は、特に、ロッドガイド30が120°の角度を占め、その結果、旋回ユニットが図1および図2に示したゼロ位置から両矢P2の双方向に60°だけ旋回可能であるように、構成されている。ゼロ位置は、旋回ユニットが真っ直ぐに形成されている、つまり旋回ユニットが顕微鏡ステージ18の上方で中心を合わせて配置されていて、ハウジング16の側方のハウジング部分が鉛直に方向付けされている位置である。換言すると、ゼロ位置は、顕微鏡10の光軸15が顕微鏡ステージ18の表面に対して直交して延在する位置である。
【0090】
旋回ユニット14を所望の位置で固定し、その運動を制動するために、全部で4つのラジアルピストン32〜38を有する制動ユニット22が設けられている。ラジアルピストン32〜38は、それぞれ1つのばね40を介して、ラジアルピストン32〜38が軸24の表面に押し付けられるように付勢されているので、摩擦結合部が形成され、これによって生じる力は、制動力もしくは固定力として働く。図3および図4では、それぞれ旋回ユニット14および軸24の一部の断面図が示してあり、その際、図3は、正面から見た図を、図4は、側方から見た図を示している。この場合、両図において、制動位置が示してあり、制動位置では、ラジアルピストン32〜38が軸24の表面に接触し、これによって、旋回ユニット14が固定されている。
【0091】
ラジアルピストン32〜38は、それぞれ1つの面取りされた接触面42を備えており、この場合、接触面42は、特に各々のラジアルピストンの端面32a〜38aと45°〜70°の角度、好ましくは約60°の角度を形成している。これらの面取りされた面を介して、ラジアルピストンが軸24に可能な限り大きな接触線に沿って接触して、力F1を軸に加え、力F1によって必要な摩擦をもたらし、ひいては制動ユニット22の固定が行われることが達成される。
【0092】
択一的な実施の形態では、4つよりも多いまたは少ないラジアルピストン32〜38、例えば2つのラジアルピストンまたは6つのラジアルピストンを設けてもよい。さらに、接触面42は、別の形状を有してもよい。例えば、接触面の形状は、軸24における形状に適合されていてよく、これによって、力伝達は、線に沿ってだけではなく、面状にも行われる。
【0093】
さらに、ラジアルピストン32〜38とは別の制動要素、例えばブレーキパッド(ブレーキシュー)を用いてもよい。
【0094】
さらに、ばね40の代わりに、別の弾性要素、例えばゴムまたはシリコーンブロックを利用してもよい。
【0095】
制動ユニット22は、操作要素44によって解除することができる。この操作要素44は、レバー46を備えており、レバー46の、制動ユニット22とは反対の側の端部は、使用者によって、手動で操作することができる。図1および図2に例示してある基本位置では、この操作要素44は操作されていない。制動ユニット22を解除するために、レバー46は、使用者によって、その基本位置から動かさなければならない。図1および図2に示した実施の形態では、レバー46を、使用者は、自分に向けて引っ張ればよいので、簡単な操作が可能である。
【0096】
さらに、操作要素44は、2つの中間要素48,50を備え、中間要素48,50を介して、レバー46は、旋回軸線52を中心としてハウジング16に対して相対的に旋回可能に軸支されている。さらに、中間要素48,50は、段部54,56を備え、段部54,56は、それぞれ対向して配置された2つのラジアルピストン32〜38の間に配置されている。制動位置では、段部54,56の表面と、ラジアルピストン32〜38の端面とは、互いにほぼ平行に方向付けされている。
【0097】
レバー46が、使用者によって、自分に向けて、つまり矢印3(図6)の方向に操作されると、中間要素48,50は、レバー46と共に旋回され、その結果、段部54,56が傾動され、これによって、図5および図6の断面図に示してあるように、ラジアルピストン32〜38が、制動位置から、互いに離反して、解除された位置の方向に動かされる。図5および図6に示した解除された位置では、ラジアルピストン32〜38は、ラジアルピストン32〜38がもはや全く軸24に接触しなくなるまで相互に離反する方向に動かされるので、もはや制動力が全く与えられていない。これに対して、図5および図6の場合における極端な状況のように、レバー46が完全には操作されないときには、ラジアルピストン32〜38は依然として軸24に接触するが、ただし力は制動位置の場合よりも小さくなっていてよい。これによって、旋回ユニット14は、制動力にもかかわらず動くことができ、しかもこの場合、制動力は、使用者を介して、使用者がどの程度レバー46を引っ張るかに応じて、無段階に調節することができる。これによって、特に旋回ユニットの微妙な位置調整が問題なく可能である。
【0098】
これに対して、使用者がレバー46を放すと、ラジアルピストン32〜38は、ばね40によって自動的に再び制動位置に動かされるので、制動ユニット22は、自動的に固定され、旋回ユニット14の不意の制御不能な旋回が回避される。
【0099】
さらに、ラジアルピストン32〜38のばね40は、中間要素48,50とラジアルピストン32〜38との接触を介して、レバー46の解放時に、レバー46が自動的に再び基本位置に戻されるように作用し、その際、そのために別の弾性要素が必要とされない。それでも、択一的に、基本位置にレバー46に力を加える別の弾性要素を設けてもよい。
【0100】
図7には、顕微鏡10の一部の別の概略的な斜視図が示してある。この斜視図は、「クリックストップ機構」として用いられる係止結合部を見た方向で示してある。この係止結合部は、ピン60として形成された第1の係止要素と切欠き62として形成された第2の係止要素との間に形成される。この場合、ピン60は、旋回ユニット14の一部であり、これに対して切欠き62は、スタンド基体12のリング64に設けられている。
【0101】
図8図10には、それぞれ、クリックストップ機構を見た顕微鏡10の一部の断面図が示してある。その際、切り口は、ピン60が断面されるように選択されている。図8図10では、操作要素44の操作に応じて生じる、ピン60の様々な位置が示してある。
【0102】
図8には、制動ユニット22が制動位置に配置されていて、したがってレバー46が操作されずにその基本位置に配置されている状態が図示してある。ピン60は、ばね66として形成された弾性要素を介して初期位置に付勢されている。旋回ユニット14がゼロ位置に配置されているときには、初期位置に配置されたピン60は、切欠き62に係合するので、係止結合部が形成されている。レバー46が基本位置に配置されている場合、制動ユニット22は、制動位置に配置されているので、旋回ユニット14の旋回は、通常、不可能である。
【0103】
レバー46は、結合ピン68を介してピン60に結合されており、この場合、この結合ピン68は、ピン60の長孔70に突入している。
【0104】
レバー46が所定の第1の操作範囲内で基本位置から操作されると、結合ピン68は、結合ピン68が長孔70の内側で動かされるが、ただしピン60がその初期位置から動かない程度にしか、スタンド基体12から離反する方向に動かない。この第1の操作範囲は、レバー46の最大限に可能な操作距離のほぼ半分に相当する。
【0105】
レバー46がその第1の操作範囲内で操作されているときには、制動ユニット22は、少なくとも、旋回ユニット14の旋回が可能であるまで解除されている。旋回ユニット14がゼロ位置から動かされると、ピン60は、その初期位置から、リング64との接触を介して動かされ、相応にリング64上をスライドする。この切欠き62から外方への移動を確保するために、切欠き62は、特に面取りされた縁を有しており、ピンは、特に半球状の端部72を有している。半球状の端部72は、切欠き62に係合する。
【0106】
依然としてレバー46が第1の操作範囲内で操作される場合に、旋回ユニット14が再びゼロ位置へ動かされると、ピン60は、ばね66の戻し力に基づいて、自動的に、ゼロ位置への到達時ひいては切欠き62への到達時に、再び初期位置に戻され、これにより、切欠き62に係合する。この係合を、使用者は、触感に基づいて相応の振動によってかつ/または聴覚に基づいて相応の「クリック」によって認識することができるので、使用者は、常時、再びゼロ位置に向けて正確に操作することができる。
【0107】
ただし使用者がレバー46を第1の操作範囲を越えて操作すると、レバー46は、図10に例示してあるように、所定の第2の操作範囲内で操作されていて、そうすると、ピン60は、結合ピン68との接触を介して、ばね66の戻し力に抗して、旋回ユニット14がゼロ位置に配置されている場合でも、ピン60が切欠き62に係合しなくなるまで、初期位置から動かされる。このことは、相応の係止が行われることなく、旋回ユニット14を、ゼロ位置を越えて動かすことができる、という利点を有する。従って、例えば振動が回避され、これは、旋回ユニット14の旋回中にビデオを撮影する際に有利である。
【0108】
図11には、顕微鏡10をその背中側から見た別の概略的な斜視図が示してある。この斜視図では、内部に位置する構成部材を認めることができるようにするために、スタンド基体12のハウジングの背壁が省略されている。
【0109】
スタンド基体12のハウジングの内部には、特に軸24に対して同軸に配置された軸接合片80が配置されている。択一的な実施の形態では、この軸接合片80と軸24とが一体に形成されていてもよい。
【0110】
軸接合片80には、ねじりばね82が支持されている。このねじりばね82の巻き部は軸接合片80に巻き付けられており、これによって、ねじりばね82の軸線も軸接合片80ひいては軸24、更には、旋回ユニット14の回動軸線26に対して同軸に配置されている。
【0111】
ねじりばね82の線材の両端部84,86は上方に曲げ出されていて、両者間に中間スペース88が形成されるように配置されている。この中間スペース88内には、ロッド28の、旋回ユニット14と反対の側の端部が突出している。さらに、中間スペース88内には、スタンド基体12に固く結合された突出部90も配置されている。
【0112】
図12図14には、顕微鏡10のそれぞれ1つの断面図が示してある。これらの断面図では、背中側から見て手前側の端部86が断面されているように、切り口が設定されている。図12では、旋回ユニット14がゼロ位置で配置されている。このゼロ位置では、ロッド28が両ばね端部84,86のいずれにも接触しておらず、ねじりばね82に応力が加えられていないので、このねじりばね82によって、旋回ユニット14に力もモーメントも加えられない。
【0113】
旋回ユニット14の重量を、この旋回ユニット14の重心Sにおいて作用する集中した力Gとして考えると、ゼロ位置では、この力Gの垂線、いわゆる「重心垂線100」が、旋回ユニット14の回動軸線26を通って延びているので、重量Gによって、回動軸線26を中心とした回動モーメントは形成されない。
【0114】
図13では、旋回ユニット14が、ゼロ位置から約60°だけ左向きに第1の方向へと旋回させられている。ねじりばね82がその第1の端部84で突出部90に支持されている。ねじりばね82の他方の端部86はロッド28を介して一緒に移動させられ、これによって、ねじりばね82に応力が加えられ、ロッド28ひいては旋回ユニット14に戻し力Fが加えられる。
【0115】
旋回ユニット14がゼロ位置から旋回させられている場合、重心垂線100は、もはや、回動軸線26に交差するように方向付けられていない。それどころか、力の平行四辺形に相応して、重量Gが半径方向力Fと接線方向力Fとに分解されるようになっている。半径方向力Fは回動軸線26の方向に向けられているので、半径方向力Fによって、回動軸線26を中心とした回動モーメントは形成されない。これに対して、接線方向力Fは、回動軸線26を中心とした、旋回ユニット14を引き下げる相応の回動モーメント(接線方向モーメント)Mを形成している。
【0116】
ばね82の戻し力Fは、接線方向力Fと逆方向にかつ接線方向力Fに対して平行に向けられており、これによって、戻し力Fも同じく回動軸線26を中心とした回動モーメント、いわゆる「戻しモーメントM」を形成している。ただし、この戻しモーメントMは接線方向モーメントMと逆方向に向けられているので、逆向きモーメントと呼ばれる。したがって、接線方向力Fにより形成された回動モーメントMと、逆向きモーメントとから成る合成モーメントが、接線方向力Fにより形成された接線方向モーメントMよりも小さくなっている。その結果、使用者は、旋回ユニット14をゼロ位置の方向に移動させるために、より少ない力を加えさえすればよい。さらに、制動ユニット22をより小さく寸法設定することができる。なぜならば、旋回ユニット14を所望の位置にロックするために、制動ユニット22によって、もはや、より少ない制動力が加えられさえすればよいからである。つまり、この制動力は合成モーメントを補償しさえすればよい。
【0117】
図14には、図13に示した変位に対して逆方向への旋回ユニット14の変位が示してある。この形態では、ばね82の第2の端部86が突出部90に支持される。これに対して、ばね82の第1の端部84はロッド28によってともに移動させられる。ねじりばね82の対称的な構成と対称的な配置とによって、やはり、旋回ユニット14の接線方向モーメントMと逆方向に向けられていて、他方向への同様の変位時と同じ大きさを有する戻しモーメントMが形成される。使用されるねじりばね82の強さによって、戻し力Fひいては戻しモーメントMをどのくらい大きく形成し、ひいては、残存する合成モーメントをどのくらい大きくするのかを調整することができる。
【0118】
図15に示した第1の実施の形態では、ゼロ位置から50°の旋回時に、戻しモーメントMが接線方向モーメントMにほぼ等しい大きさとなり、これによって、合成モーメントが残存しないように、ねじりばね82が選択されている。ゼロ位置から50°よりも大きな角度の旋回時には、戻しモーメントMが接線方向モーメントMよりも大きくなり、これによって、負の合成モーメントが形成される。
【0119】
図16に示した第2の実施の形態では、ゼロ位置から38°の旋回時に、戻しモーメントMが接線方向モーメントMにほぼ等しい大きさとなり、これによって、合成モーメントが残存しないように、ねじりばね82が選択されている。ゼロ位置から38°よりも大きな角度の旋回時には、戻しモーメントMが接線方向モーメントMよりも大きくなり、これによって、負の合成モーメントが形成される。
【0120】
図17に示した第3の実施の形態では、戻しモーメントMが常に接線方向モーメントM以上の大きさであり、これによって、合成モーメントが常にゼロ以下であるように、ねじりばね82が選択されている。
【0121】
図18に示した第4の実施の形態では、戻しモーメントMが常に接線方向モーメントM以下の大きさであり、これによって、合成モーメントが常にゼロよりも大きくなるように、ねじりばね82が選択されている。この実施の形態では、他の実施の形態と異なり、確かに、旋回ユニット14の最大の旋回角を制限するためのストッパへの旋回ユニット14の当接が回避されることが達成されないものの、この実施の形態でも、旋回のためには、使用者が少ない力を加えさえすればよく、制動ユニット22の所要の制動力もより少なくて済む。特にゼロ位置から最大限に可能な角度だけ旋回した際に、戻しモーメントMが接線方向モーメントMと正確に等しい大きさになっている。
【0122】
全ての実施の形態では、旋回範囲全体にわたって、戻しモーメントMが接線方向モーメントMの0.8倍〜1.2倍に相当しているように、ねじりばね82が選択されている。したがって、戻しモーメントMが常に接線方向モーメントMの最大±20%であり、ひいては、使用者もしくは制動ユニット22により加えられる力が常に少なく、制動ユニット22の解除時の両方向への旋回ユニット14の急激な動きが回避される。
【0123】
本発明の択一的な実施の形態では、ねじりばね82の代わりに、別種のばねおよび別の弾性要素が使用されてもよい。
【符号の説明】
【0124】
10 顕微鏡
12 スタンド基体
14 旋回ユニット
15 光軸
16 ハウジング
18 顕微鏡ステージ
20 調整ホイール
22 制動ユニット
24 軸
26 回動軸線
28 ロッド
30 ロッドガイド
32〜38 ラジアルピストン
32a〜38a 端面
40 ばね
42 接触面
44 操作要素
46 レバー
48,50 中間要素
52 旋回軸線
54,56 段部
60 ピン
62 切欠き
64 リング
66 ばね
68 結合ピン
70 長孔
72 端部
80 軸接合片
82 ねじりばね
84,86 端部
88 中間スペース
90 突出部
100 重心垂線
F1,F,F,F,G 力
,M モーメント
S 重心
P1〜P3 方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図18