特許第6129273号(P6129273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129273
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】光硬化造形装置および光硬化造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20170101AFI20170508BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20170508BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20170508BHJP
【FI】
   B29C67/00
   B33Y30/00
   B33Y10/00
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-208876(P2015-208876)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-1382(P2017-1382A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2015年10月23日
(31)【優先権主張番号】104119216
(32)【優先日】2015年6月15日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】503378235
【氏名又は名称】国立台湾科技大学
【氏名又は名称原語表記】National Taiwan University of Science and Technology
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】鄭 正元
(72)【発明者】
【氏名】鄭 逸琳
(72)【発明者】
【氏名】陳 定シェン
(72)【発明者】
【氏名】李 漢軒
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−033826(JP,A)
【文献】 特開平04−366618(JP,A)
【文献】 特表2009−542484(JP,A)
【文献】 特開2009−298023(JP,A)
【文献】 John R. Tumbleston,Continuous liquid interface production of 3D objects,Science,2015年 3月23日,Vol.347, No.6228,p.1349-1352
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化材料を収容する収容空間を有し、第1導電層を含む透明又は半透明な底板と、前記底板の周りに設けられる壁構造とを含み、前記収容空間が前記底板と前記壁構造により形成された収容コンテナーと、
保持板と、
前記保持板を上下に移動させる昇降機構と、
前記収容コンテナーの下方に設けられ、可視光光源、可視光レーザー光源、赤外線レーザー光源のうちの一つの光源を含む光源モジュールと、
前記光源モジュールと前記昇降機構とを制御する制御手段と、を含む、光硬化材料の利用により三次元造形物を作製する光硬化造形装置であって、
前記光源モジュールの照射により前記光硬化材料を光硬化反応させ、前記底板の前記第1導電層に電気を通して磁場を形成することにより、前記収容コンテナー内において前記光硬化材料を前記底板の表面に光硬化させないようにし、且つ、前記底板の表面に近接するにつれて粘結度が小さくなるように前記保持板に光硬化層を形成し、前記昇降機構で前記保持板を移動し、前記光源モジュールの照射を繰り返して更なる光硬化層を形成し、一層ずつ積層して三次元造形物を作製することを特徴とする光硬化造形装置。
【請求項2】
前記底板は、さらに基板を含み、前記第1導電層は、前記収容コンテナーに収容された前記光硬化材料と、前記基板との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光硬化造形装置。
【請求項3】
前記底板は、さらに基板を含み、前記第1導電層は、前記収容コンテナーに収容された前記光硬化材料と前記基板との間に設けられ、
前記底板は前記第1導電層との間に前記基板が設けられた第2導電層を含み、
前記光硬化層を形成する際に、前記第1導電層と前記第2導電層とに充電することで電界を形成することにより、前記収容コンテナー内において前記光硬化材料を前記底板の表面に光硬化させないようにし、且つ、前記底板の表面に近接するにつれて前記光硬化層の粘結度が小さくなるようにすることを特徴とする請求項1に記載の光硬化造形装置。
【請求項4】
前記基板は、ガラス、又はセラミックであることを特徴とする請求項2または3に記載の光硬化造形装置。
【請求項5】
光硬化造形装置を提供するステップと、
前記光硬化造形装置の収容コンテナーの底板に電界または磁場を形成するステップと、
前記光硬化造形装置の光源モジュールの照射により光硬化材料を光硬化反応させ、保持板に光硬化層を形成した後、前記光硬化造形装置の昇降機構で前記保持板を移動し、前記光源モジュールの照射を繰り返して更なる光硬化層を形成していき、一層ずつ積層して三次元造形物を作製するステップと、を含み、
前記光硬化層を形成する際に、前記底板に電界または磁場を利用することで前記収容コンテナー内において前記光硬化材料を前記底板の表面に光硬化させないようにし、且つ、前記底板の表面に近接するにつれて前記光硬化層の粘結度が小さくなるようにする光硬化造形方法。
【請求項6】
前記光硬化層を形成する際に、前記底板の第1導電層に電気を通して磁場を形成することにより、前記収容コンテナー内において前記光硬化材料を前記底板の表面に光硬化させないようにし、且つ、前記底板の表面に近接するにつれて前記光硬化層の粘結度が小さくなるようにすることを特徴とする請求項5に記載の光硬化造形方法。
【請求項7】
前記光硬化層を形成する際に、前記底板の対向する導電層に充電することで電界を形成することにより、前記収容コンテナー内において前記光硬化材料を前記底板の表面に光硬化させないようにし、且つ、前記底板の表面に近接するにつれて前記光硬化層の粘結度が小さくなるようにすることを特徴とする請求項5に記載の光硬化造形方法。
【請求項8】
前記光源モジュールにより照射された可視光、可視レーザー光、赤外線レーザーのうちの一つの光により、前記光硬化材料を光硬化反応させることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の光硬化造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元造形技術に関し、特に、光硬化材料で立体物を製造する光硬化造形技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化造形技術は、液状の光硬化樹脂を硬化させて形成された固体状の薄い層を積層することにより、三次元造形物や立体物を製造する技術である。従来の光硬化造形機器に利用される造形技術は、一般に2つの手法に分けられる。
【0003】
第一の手法では、上方から光パターンを下方にある収容コンテナー内に投射して、前記収容コンテナー内に収容された液状の光硬化材料を硬化させる方法である。このような上から下への投射のために、収容コンテナーの大きさは、必ずプリント物、即ち、三次元造形物を完全に浸漬するように十分な樹脂を維持することが可能なサイズにしなければならない。各層のいずれか一層の均一性をそれぞれ確保するため、露光した各層における樹脂表面がそれぞれ均等に調整される必要がある。また、樹脂表面はプリント過程において同一のレベルに留まるものではないため、プリント層が同じ厚さとなるように鉛直の変位を保証しなければならない。さらに、光硬化が空気に晒された樹脂表面に発生するので、酸素による反応阻害によって、樹脂硬化の時間が増えてしまう。
【0004】
第二の手法では、下方から上方に向けて光パターンを収容コンテナーの透明な底部まで投射し、収容コンテナー内に収容された液状の光硬化材料を硬化させる方法である。かかる手法では、上記方法を利用する従来の光硬化造形機器での欠点を改善することができる。例えば、従来より機器構造を簡略化することができ、収容コンテナーの体積を大幅に減らすことができる。また、光硬化層は、収容コンテナーの底部と先の一層またはプラットフォームとの間に形成されている。光硬化層が空気に晒された液状の光硬化材料の表面の上方に形成されていないため、各層の均一性と酸素による反応阻害の問題がなくなり、かつ、機器内には樹脂表面調整装置の必要がなくなる。各層のいずれか一層は、それぞれ収容コンテナーの底部から離間し、持ち上げられて、次の層にスペースを取っておくようになっている。
【0005】
しかしながら、ファンデルワールス力、化学粘結力および吸引力によって、光硬化層と収容コンテナーとの間に粘結現象を発生してしまい、プラットフォームが光硬化層に対して引き抜きづらくなるという問題をもたらす。分離力の大きさは、前記力および光硬化層の面積と正比例し、かつ、高解像度印刷の最も重要な規制要因の一つでもある。粘結力を減らすため、幾つかの粘結現象を改善する技術は、収容コンテナーの底部に弾性のある膜、例えばテフロン(Teflon)またはシリコン(silicone)を設置することで、光硬化層が収容コンテナーに粘結されることを防止するようになっている。しかしながら、このような改善があっても、分離力が依然として大き過ぎるため、精密にプリントすることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の目的として、光硬化造形装置および光硬化造形方法を提供することにある。本発明の光硬化造形技術においては、光硬化材料の光硬化過程で形成した帯電体(例えば、カチオン性基、帯電モノマー(monomer)またはオリゴマー(oligomer)など)を底板の表面外に移動させることが可能な技術を採用することによって、三次元造形物が保持板の表面に近接するにつれて光硬化層の粘結度が小さくなる効果を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、収容コンテナーと、底板と、保持板と、昇降機構と、光源モジュールと、制御手段とを含む光硬化造形装置を提供する。前記収容コンテナーは、光硬化材料を収容する収容空間と、底板と壁構造とを含む。前記底板は、透明又は半透明である。前記壁構造は、前記底板の周りに設けられ、前記収容空間は前記底板と前記壁構造により形成される。前記昇降機構は、前記保持板を上下動させる。前記光源モジュールは、前記収容コンテナーの下方に設けられる。前記制御手段は、前記光源モジュールと前記昇降機構とを制御するために用いられる。前記光硬化造形装置では、前記光源モジュールの照射により前記光硬化材料を光硬化反応させ、前記保持板に光硬化層を形成し、前記昇降機構で前記保持板を移動し、前記光源モジュールの照射を繰り返して更なる光硬化層を形成し、一層ずつ積層して三次元造形物を作製する。前記光硬化層を形成する際に、前記底板に電界または磁場を利用することで、前記収容コンテナー内において前記光硬化材料を前記底板の表面に光硬化させないようにし、且つ、前記底板の表面に近接するにつれて前記光硬化層の粘結度が小さくなるようにする。
【0008】
本発明の他の実施形態は、光硬化造形装置を提供するステップと、前記光硬化造形装置の収容コンテナーの底板に電界または磁場を形成するステップと、前記光硬化造形装置の光源モジュールの照射により前記光硬化材料を光硬化反応させ、前記保持板に光硬化層を形成した後、前記光硬化造形装置の昇降機構で前記保持板をさらに移動し、前記光源モジュールの照射を繰り返して更なる光硬化層を形成していき、一層ずつ積層して三次元造形物を作製するステップとを含み、前記光硬化層を形成する際に、前記底板に電界または磁場を利用することで、前記収容コンテナー内において前記光硬化材料を前記底板の表面に光硬化させないようにし、且つ、前記底板の表面に近接するにつれて前記光硬化層の粘結度が小さくなるようにする光硬化造形方法を提供する。
【0009】
本発明の上述及その他の面に関しより良い理解させるため、以下、特に実施例を多数挙げて、さらに添付図面に合わせて、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に係る実施形態の光硬化造形装置を示す模式図である。
図2A図2Aは、本発明に係る実施例によって底板の表面に光硬化を発生させないことを示す図である。
図2B図2Bは、本発明に係る実施例によって底板の表面に光硬化を発生させないことを示す図である。
図3図3は、本発明に係る実施例の収容コンテナーの部分断面図である。
図4図4は、本発明に係る実施例の収容コンテナーの部分断面図である。
図5図5は、本発明に係る実施例の収容コンテナーの部分断面図である。
図6図6は、本発明に係る実施形態の光硬化造形方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、光硬化造形技術において、光硬化材料の光硬化過程で形成した帯電体(例えば、カチオン性基、帯電モノマー(monomer)またはオリゴマー(oligomer)など)を底板の表面外に移動させる可能な技術を採用し、これにより、三次元造形物が保持板の表面に近接するにつれて光硬化層の粘結度が小さくなる効果を達成する。
【0012】
以下に、本発明の上記知見によって、光硬化造形装置の構造を例にして本発明の様々な実施形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る実施形態の光硬化造形装置を示す模式図である。図1に示すように、光硬化造形装置100は、少なくとも、収容コンテナー110と、保持板120と、昇降機構130と、光源モジュール140と、制御手段150とを含む。収容コンテナー110は、光硬化材料190を収容する収容空間180を有する。昇降機構130は、保持板120を上下動させる。光源モジュール140は、収容コンテナー110の下方に設けられる。制御手段150は、光源モジュール140と昇降機構130を制御するために用いられる。また、収容コンテナー110は、底板111と、壁構造112とを含む。底板111は、透明か半透明である。壁構造112は、底板111の周りに設けられ、底板111とともに収容空間180を形成する。
【0014】
光硬化造形装置100では、光源モジュール140の照射により光硬化材料190を光硬化反応させ、保持板120に光硬化層を形成した後、さらに昇降機構130で保持板120を移動し、そして、光を繰り返して更なる光硬化層を形成していき、一層ずつ積層して三次元造形物体199を作製する。
【0015】
図1に示す光硬化造形装置100では、光硬化層を形成する間に、底板111に例えば電界または磁場の物理場FD(例えば、破線で示す空間存在物理場)を利用または形成することで、収容コンテナー110内において光硬化材料190を当該底板の表面に光硬化させないようにし、底板の表面に近接するにつれて光硬化層の粘結度が小さくなるようにする。したがって、本発明の光硬化造形装置によれば、光硬化材料が底板表面に硬化して底板の表面に粘結されることで造形技術による三次元造形物の硬化層が引き抜きづらくなる問題を避けることができる。
【0016】
従来の光硬化造形技術では、光硬化材料、例えば「感光性樹脂」(photopolymer)のうちの光開始剤(photoinitiator)が紫外線(例えば、波長250〜300nmの紫外線)を吸収した後でラジカルグループ又はカチオン性基を発生し、感光性樹脂のうちモノマー(monomer)および対応するオリゴマー(oligomer)と架橋重合反応して硬化するようになっている。図2Aに示すように、従来の光硬化造形装置では、光硬化層を形成する際に、仮に底板111に電界または磁場が利用されなければ、カチオン性基が底板111の表面111Pに集まってさらに硬化し底板111の表面111Pに粘結され、粘結の問題が生じる。
【0017】
図2Bに示すように、本実施形態の光硬化造形装置100では、光硬化層を形成する間に、底板111に電界EDを利用する時、帯電体、例えば、カチオン性基は、電界ED(例えば、陽極性が上を向く電界方向)が発生した斥力に作用されて底板111の表面111Pの上に移動し、継続して硬化反応を行う。同様に、底板111の表面111Pに磁場を利用する時、帯電体、例えばカチオン性基は、磁場(例えば、磁力線方向が底板111の表面111P周りに囲む)が発生した力に作用されて底板111の表面111Pの上方に移動し、継続して硬化反応を行う。よって、本発明の実施例は、底板の表面に光硬化を発生しないようにすることができる。
【0018】
以下に、例を挙げて前記底板111に電界または磁場を利用する実施例を説明する。
【0019】
図3は、本発明に係る実施例の収容コンテナーの部分断面図である。図3では、底板111は、第1導電層201を含む。この光硬化層を形成する間に、底板111の第1導電層201の両側に電圧(例えば、電源VSで)を印加して磁場を形成することにより、収容コンテナー110内において光硬化材料180を底板111表面に光硬化させないようにし、底板111の表面に接近するにつれて光硬化層の粘結度が小さくなる。
【0020】
図4は、本発明に係る実施例の収容コンテナーの部分断面図である。図4では、底板111は、基板200と、第1導電層201とを含む。光硬化層を形成する間に、底板111の第1導電層201の両側に電圧(例えば、電源VSで)を印加し電流を通過させて磁場を形成することにより、収容コンテナー110内において光硬化材料180を底板111表面に光硬化させないようにし、底板111の表面に接近するほど光硬化層の粘結度が小さくなる。
【0021】
また、電流磁気効果では、電流の大きさがこの電流が発生した磁場の大きさと正比例の関係があるため、第1導電層201に流れた電流の大きさを調整することで、適切な大きさの磁場を加えて、光硬化材料180が底板111表面に光硬化を発生しないような効果を達成する。
【0022】
図5は、本発明に係る実施例の収容コンテナーの部分断面図である。図5では、底板111は、基板200と、第1導電層201と、第2導電層202とを含む。第1導電層201は、収容コンテナー110に収容された光硬化材料180と基板200との間に設けられる。基板200は、第1導電層201と第2導電層202との間に設けられる。光硬化層を形成する間に、第1導電層201と第2導電層202との間に充電(例えば、電源VSから正電圧を印加)することで電界を形成し、収容コンテナー110内において光硬化材料180を底板111表面に光硬化させないようにし、底板111の表面に接近するほど光硬化層の粘結度が小さくなるようにする。
【0023】
また、第1導電層201と第2導電層202との間の電界の大きさEabは,式Eab=Vab/dで簡易に示すことができる。ここで、Vabは、第1導電層201と第2導電層202に印加された電圧を表し、dは両方の距離を表す。そのため、Vabの大きさまたはdを調整することにより、適切な大きさの電界を発生し、光硬化材料180が底板111表面に光硬化を発生しないような効果を達成する。
【0024】
また、前記図3図5では、第1導電層201は、透明導電膜(transparent conductive film)であってよい。基板200は、ガラス、セラミック、またはいかなる適切な透明または半透明の基材で実現することができる。なお、基板200と第1導電層201(および/または第2導電層202)は、導電性酸化物(TCO;Transparent Conductive Oxide)ガラスで実現することができる、例えば、酸化インジウム・スズ(ITO;Indium Tin Oxide)導電ガラス、フッ素ドープ酸化スズ(FTO;Florine Doped Tin Oxide)導電ガラス、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO;Al-doped ZnO)導電ガラス、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO;Ga.Zno)導電ガラス、酸化インジウム酸化亜鉛(IZO;Indium Zinc Oxide)導電ガラス、酸化亜鉛(ZnO;Zinc Oxide)導電ガラスのうち一つで実現することができる。また、前記何れかの実施例のうちの導電層(第1導電層201および(または)第2導電層202)は、導電性高分子材料、カーボンナノチューブ材料、ナノ粒子材料、またはナノワイヤで実現することができる。つまり、いかなる透過性や導電性の良い材料が、電気を通した後電界または磁場を発生できるのであれば、全てが前記実施例の導電層の材料として使用することに適する。
【0025】
前記何れか一つの光造形装置の実施例では、光源モジュールとして、紫外線光源を使用することができる。本発明は、光源モジュールを制限することはなく、三次元造形物の複数の断面層に用いるフォトマスクパターンを発生する光源モジュールであればよい。
【0026】
また、光硬化の粘結問題をさらに低下させるため、前記何れか一つの光硬化造形装置の実施例では、更に、可視光光源、可視光レーザー光源、および赤外線レーザー光源のうち一つを使用してもよい。この場合、該光源の照射により適切な光硬化材料を光硬化反応させる。従来紫外線を光硬化造形装置のパターン化光源とすることに比べ、紫外線以外の長波長光源、例えば可視光光源(例えば、波長が400nm〜760nm)または赤外線光源(例えば、波長が760nm〜10000nm)用いる時に、長波長光源の液体に対する透過性が紫外線の透過性よりも高いため、長波長の光源が底板111を照射して透過した後、底板111の表面の光硬化材料の硬化度が、底板111以外の光硬化材料の硬化度より小さく、よって、硬化層の引張り力が比較的低下する。
【0027】
図6は、本発明に係る実施形態の光硬化造形方法を示す模式図である。図6では、ステップS110に示すように、光硬化造形装置を用意する。ステップS120に示すように、光硬化造形装置の収容コンテナーの底板に電界または磁場が形成される。ステップS130に示すように、該光硬化造形装置の光源モジュールの照射により、光硬化材料を光硬化反応させ、保持板に光硬化層を形成した後、さらに光硬化造形装置の昇降機構で保持板を移動し、そして、光源モジュールの照射を繰り返して更なる光硬化層を形成していき、一層ずつ積層して三次元造形物体を作製する。光硬化層を形成する際に、底板に電界または磁場を利用することで、収容コンテナー内において光硬化材料を底板の表面に光硬化させないようにすることができると共に、底板の表面に近接するにつれて光硬化層の粘結度が小さくなるようにすることができる。
【0028】
前記光硬化造形方法では、光硬化層を形成する際に、底板の第1導電層に電気を通して磁場を形成することにより、収容コンテナー内において光硬化材料を底板の表面に光硬化させなくすることができると共に、底板の表面に近接するにつれて光硬化層の粘結度が小さくなるようにすることができる。
【0029】
前記光硬化造形方法では、光硬化層を形成する際に、底板の対向する2導電層に電気を通して磁場を形成することにより、収容コンテナー内において光硬化材料を底板の表面に光硬化させないようにすることができると共に、底板の表面に近接するにつれて光硬化層の粘結度が小さくなるようにすることができる。
【0030】
前記光硬化造形方法では、光源モジュールは、可視光、可視光のレーザー、赤外線のレーザーのうち一つを照射して光硬化材料を光硬化反応させることができる。
【0031】
前記光硬化造形方法では、前記何れかの一つの光硬化造形装置の実施例を参照して実現することができる。
【0032】
上述したように、本発明の内容はすでに上記のような実施例を挙げて説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、いずれの当該技術を熟知する当業者であれば、様々な変更や修飾を加えることは当然可能であり、例えば、前記実施例に示された各技術的内容を組み合わせまたは変更して新しい実施形態にし、これらの実施形態も、もちろん本発明の範囲に属するものと見なされる。そのため、本発明が保護しようとする範囲も、後述の特許請求の範囲およびその規定範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
100…光硬化造形装置
110…収容コンテナー
111…底板
111P…底板の表面
112…壁構造
120…保持板
130…昇降機構
140…光源モジュール
150…制御手段
180…収容空間
190…光硬化材料
199…3D造形物
200…基板
201…第1導電層
202…第2導電層
FD…物理場
ED…電界
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6