(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被加熱物は、内部に調理の材料を収容し、前記天板上面に載置されて誘導加熱され、また前記加熱室の内部にも収容可能な金属製の調理容器であることを特徴とする請求項3記載の加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜
図18は本発明の実施の形態1に係る加熱調理器を示すものであって、組込式又はビルトイン式と称される加熱調理器の例を示している。
図1は本発明の実施の形態1の加熱調理器の一部を分解した状態の斜視図、
図2は同加熱調理器の天板部を取り外した状態での本体部全体を示す斜視図、
図3は同加熱調理器の天板部の平面図、
図4は同加熱調理器の主要な構成部品を取り外した状態の分解斜視図、
図5は
図1のV−V線縦断面図、
図6は
図1のVI−VI線縦断面図、
図7は同加熱調理器の駆動回路の概略構成図、
図8は同加熱調理器の部品ケースと冷却ダクト部分の分解した状態の斜視図、
図9は同加熱調理器の本体部の上面中央前方部の平面図、
図10は同加熱調理器の調理容器の断面図、
図11は同加熱調理器の調理容器を右IH加熱源の上方に置いた状態縦断面図である。
【0010】
(加熱調理器本体)
本発明の加熱調理器は、1つの矩形の本体部Aを備えている。この本体部Aは、通常、本体部Aの上面を構成する天板部B、本体部Aの上面以外の周囲(外郭)を構成する筐体部C、鍋や食品等を電気的エネルギー等で加熱する加熱手段D、使用者により操作される操作手段E、操作手段からの信号を受けて加熱手段を制御する制御手段F、及び加熱手段の動作条件を表示する表示手段Gを備えている。
また、加熱手段Dの一部として、以下に説明する実施の形態のように、グリル庫(グリル加熱室)又はロースターと称される電気加熱手段を備えたものもある。
【0011】
次に、本発明の実施の形態において用いられる用語をそれぞれ定義する。
加熱手段Dの動作条件とは、加熱するための電気的、物理的な条件を言い、通電時間、通電量(火力)、加熱温度、通電パターン(連続通電、断続通電等)等を総称したものである。つまり加熱手段Dの通電条件をいうものである。
【0012】
表示とは、文字や記号、イラスト、色彩や発光有無や発光輝度等の変化により、使用者に動作条件や調理に参考となる関連情報(異常使用を注意する目的や異常運転状態の発生を知らせる目的のものを含む。以下、単に「調理関連情報」という)を視覚的に知らせる動作をいう。
【0013】
表示手段とは、特に明示のない限り、液晶(LCD)や各種発光素子(半導体発光素子の一例としてはLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)、LD(Laser Diode)の2種類がある)、有機電界発光(Electro Luminescence:EL)素子などを含む。このため表示手段には、液晶画面やEL画面等の表示画面を含んでいる。
右IH加熱部などの「IH」とは、誘導加熱(Induction Heating)の意味である。
【0014】
報知とは、表示又は電気的音声(電気的に作成又は合成された音声をいう)により、制御手段の動作条件や調理関連情報を使用者に認識させる目的で知らせる動作をいう。
報知手段とは、特に明示のない限り、ブザーやスピーカ等の可聴音による報知手段と、文字や記号、イラスト、あるいは可視光による報知手段とを含んでいる。
加熱動作の連携とは、電気輻射式加熱源の動作とIH加熱源の動作の間において、一方の加熱源が他方の加熱源の動作中に何らかの動作を開始すること又は動作の予約ができることを意味し、双方の動作が互いに相手の動作に影響を与えるということを意味したものではない。
【0015】
(筐体部C)
図1、
図2、
図4及び
図5〜
図6において、Aは上面全体を後述する天板部Bで覆われた本体部であり、この本体部Aは、外形形状が流し台等の厨房家具KT(
図6参照)に形成した設置口K1を覆う大きさ、スペースに合わせている所定の大きさで、略正方形又は長方形に形成されている。
2は筐体部Cの外郭面を形成する本体ケースで、
図2に示すように、1枚の平板状の金属板をプレス成形機械で複数回折り曲げ加工して形成した胴部2Aと、この胴部の端部に、溶接又はリベット、ネジ等の固定手段で継ぎ合わせた金属板製の前部フランジ板2Bとから構成されており、これら前部フランジ板2Bと胴部2Aとを固定手段で結合した状態では、上面が開放した箱形になる。その箱型の胴部2Aの背面部下部が傾斜部2Sで、これより上方が垂直な背面壁2Uになっている。
【0016】
本体ケース2の上面開口の後端部、右端部及び左端部の三個所には、それぞれ外側へL字形に一体に折り曲げて形成したフランジを有しており、3Bは後方のフランジ、3Lは左側のフランジ、3Rは右側のフランジであり、これら3つのフランジ3B、3L、3Rと前部フランジ板2Bが厨房家具KTの設置部(
図6参照)上面に載置され、調理装置の荷重を支えるようになっている。
そして、加熱調理器が厨房家具KTの設置口K1に完全に収容された状態では、厨房家具KTの前方に形成した開口部KTKから加熱調理器の前面部が露出するようになり、厨房家具KTの前面側から加熱調理器の前面(左右)操作部60(
図2参照)が操作可能となる。
【0017】
2Sは、胴部2Aの背面と底面を結ぶ傾斜面であり(
図4参照)、調理装置を厨房家具KTに嵌め込んで設置する場合には、厨房家具KTの設置口K1の後縁部に衝突したり干渉したりしないようにカットしてある。つまり、この種の調理装置は厨房家具KTに嵌め込んで設置する際、調理装置の本体部Aの手前側が下になるように傾け、その状態で手前側から先に厨房家具KTの設置口K1に落とし込む。
その後に遅れて後ろ側が弧を描くようにして設置口K1に落とし込む(このような設置方法は、例えば特開平11−121155号公報に詳しく記載されている)。このような設置方法のために、前部フランジ板2Bは、調理装置を厨房家具KTに設置する際に、厨房家具KTの設置口K1の設置口前縁部(
図6参照)との間に十分なスペースSPが確保されるような大きさになっている。
【0018】
本体ケース2の内部には、後述するトッププレート21に載置された金属製鍋等の被加熱物Nを誘導加熱するための左右のIH加熱源6L、6Rと、電気輻射熱で加熱する電気ヒータ、例えばラジエントヒータと呼ばれるヒータ7と、該加熱手段の調理条件を制御する後記する制御手段Fと、該制御手段に前記調理条件を入力する後記する操作手段Eと、該操作手段により入力された加熱手段の動作条件を表示する表示手段Gとを備えている。以下、それぞれについて詳細に説明する。
筐体部Cの内部は、
図2に示すように、大きく分けて前後方向に長く伸びた右側冷却室8R、同じく前後方向に長く伸びた左側冷却室8L、箱形のグリル(又はロースター)加熱室9、上部部品室10、後部排気室12が区画形成されているが、各部屋は互いに完全に隔絶されている訳ではない。例えば右側冷却室8R及び左側冷却室8Lは、後部排気室12に対し、それぞれ上部部品室10を経由して連通している。
グリル加熱室9は、その前面開口部9Aが後述するドア13が閉じられた状態では、略独立した密閉空間になっているが、排気ダクト14を介して筐体部Cの外部空間、つまり台所などの室内空間に連通している(
図6参照)。
【0019】
(天板部B)
天板部Bは以下述べるように、上枠(枠体ともいう)20とトッププレート(上板、トップガラス、天板とも称する)21の2つの大きな部品から構成されている。上枠20は、全体が非磁性ステンレス板又はアルミ板などの金属製板から額縁状に形成され、本体ケース2の上面開口を塞ぐような大きさを有している(
図3、
図6参照)。
トッププレート21は、額縁形状の上枠20の中央に設けられた大きな開口部を隙間無く完全に覆うように本体ケース2上方に重ね合わせて設置されている。
【0020】
このトッププレート21は、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラス等の赤外線を透過させる半透明な材料からなり、上枠20の開口部の形状に合わせて長方形又は正方形に形成されている。
さらにトッププレート21の前後左右側縁は、上枠20の開口部との間にゴム製パッキンやシール材(図示せず)を介在させて水密状態に固定されている。したがって、トッププレート21の上面から水滴などが上枠20とトッププレート21との対面部分に形成される間隙を通じて本体部Aの内部に侵入しないようにしてある。
【0021】
図1において、20Bは、上枠20の形成時にプレス機械で同時に打ち抜き形成された右通風口で、後述する送風機30の吸気通路となる。20Cは同じく上枠20の形成時に打ち抜き形成された中央通風口、20Dは同じく上枠20の形成時に打ち抜き形成された左通風口である。なお、
図1では上枠20の後部部分しか示していないが、
図3のように上方から見た場合、本体ケース2の上面全体を額縁状に覆っている。
トッププレート21は、実際の調理の段階では後で詳しく述べる右IH加熱源6R、左IH加熱源6Lによって誘導加熱され、高温になった鍋等の被加熱物Nからの熱を受けて300度以上にもなることがある。
【0022】
さらに、トッププレート21の下方に後述する輻射型の電熱ヒータである中央加熱源7が設けられている場合には、その中央加熱源7からの熱でトッププレート21は直接高温に熱せられ、その温度は350度以上にも至ることがある。
トッププレート21の上面には、
図1及び
図3に示すように後記する右IH加熱源6R、左IH加熱源6L、中央電気加熱源7のおおまかな位置を示す円形の案内マーク6RM、6LM、7Mが、それぞれ印刷などの方法で表示されている。
【0023】
(加熱手段D)
この発明の実施態様1では加熱手段Dとして、本体部Aの上部右側位置にある右IH加熱源6R、反対に左側にある左IH加熱源6L、本体部Aの左右中心線上で後部寄りにある輻射式中央電気加熱源7及びグリル加熱室9の内部にロースター用の上下1対の輻射式電気加熱源(ヒータ)22,23を備えている。これら加熱源は制御手段Fにより互いに独立して通電が制御されるように構成されているが、詳細は後で
図7を参照しながら述べる。
【0024】
(右IH加熱源)
右IH加熱源6Rは、
図2に示すように、本体ケース2の内部に区画形成された前記上部部品室10内部に設置されている。そして、前記トッププレート21の右側位置の下面側に、右IH加熱コイル6RCを配置している。
このコイルの上端部がトッププレート21の下面に微小間隙を置いて近接しており、IH(誘導)加熱源となる。この実施の形態では例えば、最大消費電力(最大火力)3KWの能力を備えたものが使用されている。
右IH加熱コイル6RCは、渦巻状に0.1mm程度の細い線を30本程束にして、この束(以下、集合線という)を1本又は複数本撚りながら巻き、外形形状が円形になるようにして最終的に円盤形に成形されている。右IH加熱コイル6RCの直径(最大外径寸法)は約180mm程度である。
【0025】
左右IH加熱コイル6LC、6RCの下面(裏面)には、コイルからの磁束漏洩防止材として、高透磁材料、例えばフェライトで形成された板や棒が配置されているが、この実施の形態ではその図示を省略している。
磁束漏洩防止材は、左右IH加熱コイル6LC、6RCの下面全体を覆う必要はなく、断面が例えば正方形又は長方形等で棒状に成形した磁束漏洩防止材を右IH加熱コイル6RCと交差するように所定間隔で複数個設ければ良い。各コイルの中心部から放射状に複数個設ければ良い。
【0026】
トッププレート21に表示された円(
図1、
図3において実線)である案内マーク6RMの位置は、右IH加熱源6Rの右IH加熱コイル6RCの最外周位置と完全に一致しているものではない。
案内マーク6RMは適正な誘導加熱領域を示すものである。
図3の破線の円が大体右IH加熱コイル6RCの最外周位置を示す。
【0027】
前記右IH加熱コイル6RCは、独立して通電されるように複数部分に分けたものでもよい。例えば内側に渦巻き状にIHコイルを巻き、そのIHコイルの外周側にはそれと同心円上でかつ略同一平面上に別の大径の渦巻き状に巻いたIHコイルを置き、内側のIHコイル通電、外側のIHコイル通電、及び内側と外側のIHコイル共に通電、という3つの通電パターンで被加熱物を加熱するようにしても良い。
【0028】
このように2個のIHコイルに流す高周波電力の出力レベル、デューティ比、出力時間間隔の少なくとも一つ又はこれらを組み合わせることにより、小型の鍋から大形(大径寸法)の鍋まで効率良く加熱するようにしても良い(このような独立通電できる複数コイルを使用した技術文献として代表的なものとしては、特許第2978069号公報が知られている)。
31Rは、右IH加熱コイル6RCの中央部に設けた空間6S内部に設置された赤外線式の温度検出素子であり、上端部にある赤外線受光部をトッププレート5の下面に向けている(
図7、
図11参照)。
赤外線式の温度検出素子(以下、赤外線センサーという)は、鍋などの被加熱物Nから放射される赤外線の量を検知して温度を測定できるフォトダイオード等から構成されている。なお、前記温度検出素子は伝熱式の検知素子、例えばサーミスタ式温度センサーでも良い。
【0029】
このように被加熱物からその温度に応じて発せられる赤外線を、赤外線センサーによってトッププレート5の下方から迅速に検出することは例えば特開2004−953144号公報(特許第3975865号公報)、特開2006−310115号公報や特開2007−18787号公報等により知られている。
温度検出素子31Rが赤外線センサーである場合は、被加熱物から放射された赤外線を集約させ、かつリアルタイムで(時間差が殆んどなく)受信してその赤外線量から温度を検知できることで(サーミスタ式よりも)優れている。
【0030】
この温度センサーは、被加熱物の手前にある耐熱ガラスやセラミックス製等のトッププレート21の温度と被加熱物との温度が同じでなくても、またトッププレート21の温度に拘わらず、被加熱物の温度を検出できる。
すなわち、被加熱物から放射される赤外線がトッププレート21に吸収されたり遮断されたりしないように工夫しているためである。例えばトッププレート21は4.0μm又は2.5μm以下の波長域の赤外線を透過させる素材が選択されており、一方、温度センサー31Rは4.0μm又は2.5μm以下の波長域の赤外線を検出するものが選択されている。
【0031】
一方、温度検出素子31Rが、サーミスタ等の伝熱式のものである場合には、前記した赤外線式温度センサーと比較すると急激な温度変化をリアルタイムで捕捉することでは劣るが、トッププレート21や被加熱物からの輻射熱を受け、被加熱物の底部やその直下にあるトッププレート21の温度を確実に検出できる。
また、被加熱物が無い場合でもトッププレート21の温度を検出できるものである。なお、温度検出素子がサーミスタ等の伝熱式の場合には、その温度感知部をトッププレート21の下面に直接接触させ、あるいは伝熱性樹脂等のような部材を介在させて、トッププレート21自身の温度を出来るだけ正確に把握させるようにしても良い。温度感知部とトッププレート21の下面との間に空隙があると、温度の伝達に遅れが生ずるからである。
【0032】
(左IH加熱源)
左IH加熱源6Lは、本体部Aの左右中心線を挟んで右IH加熱源6Rと対照的な位置に設置されており、右IH加熱源6Rと同様な構成になっている。この実施の形態では例えば、最大消費電力(最大火力)3KW又は2.5KWの能力を備えたものが使用されている。
また、左IH加熱コイル6LCの直径(最大外径寸法)は最大火力が3KWの場合は約180mmであり、2.5KWの場合は約170mm程度となっている。
なお、トッププレート21に表示された円(
図1と
図3において実線)である案内マーク6LMの位置は、左IH加熱コイル6LCの最外周位置と完全に一致しているものではない。
【0033】
案内マークは適正な誘導加熱領域を示すものである。
図3の破線の円が大体左IH加熱コイル6LCの最外周位置を示す。また右IH加熱コイル6RCと同様に、その中央の空間内部には赤外線式の温度検出素子(以下、赤外線センサーという)31Lが設置されている(
図7参照)。
以下の説明において、左右に共通に配置された部材について共有する内容については、名称における「左、右」および符号における「L、R」の記載を省略する場合がある。
【0034】
(輻射式中央電気加熱源)
7は輻射式中央電気加熱源(以下、「中央加熱源」と称す)であり(
図2、
図3参照)、本体部Aの内部であって、トッププレート21の左右中心線上で、かつ、トッププレート21の後部寄りの位置に配置されている。中央加熱源7は、輻射によって加熱するタイプの電気ヒータ(例えばニクロム線やハロゲンヒータ、ラジエントヒータ)が使用され、トッププレート21を通してその下方から鍋等の被加熱物を加熱するものである。そして、例えば、最大消費電力(最大火力)1.2KWの能力を備えたものが使用されている。
【0035】
中央加熱源7は上面全体が開口した円形容器形状を有しており、その最外周部分を構成する断熱材製の容器状カバー50は、最大外径寸法が約180mmで、高さ(厚さ)が15mmになっている。
トッププレート21に表示された円(
図1と
図3において実線)である案内マーク7Mの位置は、中央加熱源7の最外周位置と完全に一致しているものではない。案内マークは適正な加熱領域を示すものである。
図3の破線の円が大体中央加熱源7の最外周位置を示す。
【0036】
(輻射式電気加熱源)
24Rは、垂直に設置されている右側の上下仕切板であり(
図2、
図4参照)、筐体部Cの内部で右側冷却室8Rとグリル加熱室9間を隔絶している仕切壁の役目となっている。24Lは、同じく左側の上下仕切板であり、筐体部Cの内部で左側冷却室8Lとグリル加熱室9間を隔絶している仕切り壁の役目となっている(
図2、
図4参照)。なお、上下仕切板24R、24Lはグリル加熱室9の外側壁面と数mm程度の間隔を保って設置されている。
25は水平仕切板であり(
図2、
図5参照)、左右の上下仕切板24L、24Rの間全体を上下2つの空間に区画する大きさを有しており、この仕切り板の上方が前記上部部品室10である。またこの水平仕切板25はグリル加熱室9の天井面と数mmから1cm程度の所定の空隙116(
図6参照)を持って設置されている。
24Aは左右の上下仕切板24L、24Rにそれぞれ形成した切欠き部で、後述する冷却ダクト42を水平に設置する際にそれと衝突しないように設けている。
【0037】
矩形箱状に形成されたグリル加熱室9は、ステンレスや鋼板等の金属板により左右、上下及び背面側の壁面が形成され、上部天井付近および底部付近には輻射式電気加熱源としての上下1対のシーズヒータ22、23(
図6参照)が略水平に広がるように設置されている。
ここで「広がる」とは、シーズヒータの途中が水平面において複数回屈曲して、できるだけ平面的に広い範囲を蛇行するようにしている状態をいい、平面形状がW字形になっているものが代表的な例である。
【0038】
この二つのヒータ22,23を同時又は個別に通電してロースト調理(例えば焼き魚)、グリル調理(例えばピザやグラタン)やグリル加熱室9内の雰囲気温度を設定して調理するオーブン調理(例えば、ケーキや焼き野菜)が行えるようになっている。
例えば、グリル加熱室9の上部天井付近のシーズヒータ22は最大消費電力(最大火力)1200W、底部付近のシーズヒータ23は最大消費電力800Wのものが使用されている。
26は水平仕切板25とグリル加熱室9との間に形成された空隙で(前記した空隙116と同じものである)、これは最終的に後部排気室12と連通しており、空隙26内の空気が後部排気室12を通じて本体部Aの外に誘引されて排出されるようになっている。
【0039】
図2において、28は上部部品室10と後部排気室12とを仕切る後部仕切板であり、下端部は前記水平仕切板25に、また上端部は上枠20に達する高さ寸法を有している。28Aは後部仕切板28に2箇所形成した排気穴で、上部部品室10に入った冷却風を排気するためのものである(
図2参照)。
【0040】
(冷却用送風機)
この実施の形態でいう送風機30は、遠心型多翼式送風機(代表的なものとしてシロッコファンがある)を使用しており(
図4、
図5参照)、駆動モータ300の回転軸32の先端に翼部30Fを固定したものを用いている。また送風機30は、前記右側冷却室8Rと左側冷却室8Lのそれぞれに設置され、左右の左IH加熱コイル6LC、6RC用の回路基板とそれらコイル自体を冷却するようになっており、詳しくは以下で説明する。
【0041】
CUは、
図4と
図5に示す通り、前記冷却室8R,8Lに上方から挿入されて固定される冷却ユニットで、インバータ回路を構成する回路基板41を収容した部品ケース34と、この部品ケース34に結合され内部に送風機30の送風室39を形成しているファンケース37とを備えている。
前記送風機30は、その駆動用モータ300の回転軸32が水平になっている、いわゆる横軸型であり、右側冷却室8Rの中に設置されたファンケース37の内部に収容されている。
その送風機30の多数の翼30Fを囲むようにファンケース37内部には円形の送風空間が形成され送風室39が形成されている。37Aはファンケース37の吸い込み筒であり、その最上位には吸い込み口37Bが形成されている。37Cはファンケース37の一端部に形成した排気口(出口)である。
【0042】
ファンケース37は、2つのプラスチック製ケース37D、37Eを組み合わせてネジ等の固定具で結合されることで一体構造物として形成されている。この結合状態で冷却空間8R、8Lにその上方から挿入され、適当な固定手段で移動しないように固定される。
前記部品ケース34は、前記ファンケース37の空気吐き出し用の排気口37Cから排出される冷却風が導入されるように、前記ファンケース37に密着状態に接続されており、全体が横長長方形形状を有しているとともに、排気口37Cに連通する導入口(図示せず)、後述する第1の排気口34A及び第2の排気口34Bの3箇所の部分だけを除いた他の部分全体が密閉されている。
【0043】
41は、前記右IH加熱源6R、左IH加熱源6Lに所定の高周波電力を供給するインバータ回路が実装されたプリント配線基板(以下、回路基板という)であり、部品ケース34の内部空間形状にほぼ匹敵する外形寸法を有し、部品ケース34の中においてグリル加熱室9から遠い側、逆にいうと本体部Aの外郭を構成する本体ケース2に、わずか数mm以下の近くまで接近する側に設置されている。
なお、この回路基板41には、インバータ回路の部分と離して前記送風機30の駆動用モータ300駆動用の電源及び制御回路部33を一緒に実装している。
【0044】
この回路基板41でいうインバータ回路210R、210Lとは、
図7に示した、商用電源の母線に入力側が接続された整流ブリッジ回路221を除き(含めても良いが)、その直流側出力端子に接続されたコイル222及び平滑化コンデンサ223からなる直流回路と、共振コンデンサ224と、スイッチング手段となる電力制御用半導体であるIGBT225と、駆動回路228と、フライホイールダイオード226とを具備した回路をいい、IHコイル6RC、6LCは含んではいない。
【0045】
前記部品ケース34の上面部には、送風機30からの冷却風の流れる方向に沿って前記第1の排気口34Aと第2の排気口34Bを2個離して形成している。第2の排気口34Bは、部品ケース34において冷却風の流れの最も下流側位置にあり、また第1の排気口34Aよりも数倍大きな開口面積を有している。
なお、
図5においてY1〜Y5は送風機30により吸い込まれる空気と排出される空気の流れを示すものであり、Y1、Y2、・・Y5と順次冷却風は流れていく。
【0046】
42は全体がプラスチックで成型された冷却ダクトであり、プラスチックの一体成形品である上ケース42Aと、同じくプラスチックの一体成形品である平板状の蓋(以下、「下ケース」という)42Bとを重ねてネジで固定することで、その両者の間の内部に後述する3つの通風空間42F、42G、42Hが形成される(
図5及び
図8参照)。
42Cは上ケース42Aの上面の全体に亘りその壁面を貫通するよう多数形成した噴き出し孔で、送風機30からの冷却風を噴き出すために形成されており、各噴き出し孔42Cの口径は同じにしてある。
42Dは、上ケース42Aの中に一体成型で直線又は曲線状に形成したリブ(凸条)形状の仕切り壁で、これにより部品ケース34の排気口34Aに一端が連通した通風空間42Fが区画形成される。
【0047】
42Eは、同様に上ケース42Aの中に一体に形成した平面形状がコ字状凸条形状の仕切り壁で、これにより部品ケース34の排気口34Aに一端が連通した通風空間42Hが区画形成される。この通風空間42Hは仕切り壁42Eの一側部(
図4では部品ケース34に近い側)に形成した連通口(穴)42Jを介して最も広い通風空間42Gに連通している。
さらに、通風空間42Hの一側部(
図4では部品ケース34に近い側)は、前記部品ケース34の第2の排気口34Bの真上になるように冷却ダクト42が設置される。
これにより、部品ケース34から吐き出される冷却風は、冷却ダクト42の通風空間42Hに入り、ここから通風空間42Gに展開して各噴き出し孔42Cから噴出される。
42Kは上ケース42Aの通風空間42Hに対応して形成した四角形の通風口で、これは後述する液晶表示画面45R、45Lを冷却する風を出すものである。
【0048】
43A、43Bは右IH加熱源6R、左IH加熱源6L用のインバータ回路(
図7で詳しく述べる)210R、210Lが実装された回路基板41の中にあるIGBT225などの電力制御用半導体スイッチング素子やその他発熱性部品が取り付けられたアルミ製の放熱フィンであり、全体に渡り多数の薄いフィンが規則正しく並べて形成されている。
この放熱フィンは
図5に示すように、部品ケース34の中で天井部に近い側に設置され、下方は十分な空間を確保し、その空間内を冷却風Y4が流れるようになっている。
つまり、送風機30の特性上、吐き出し能力(吹出し能力)が吐き出し口(排気口37C)の全域に亘り均一ではなく、吐き出し能力の最高部分はその排気口37Cの上下中心点より下方にあるが、この位置の延長線上の位置とならないよう、前記放熱フィン43A,43Bの位置を上方へ設定している。
また、回路基板41の表面に実装された各種の小型電子部品や印刷配線パターン部分に向けて冷却風が吹きつけられることはない。
【0049】
グリル加熱室9は、本体部Aの誘導加熱源6L、6Rの下方に内蔵されるとともに、本体Aの内側後壁面との間に所定の空間SX(
図6参照)が形成されている。つまりグリル加熱室9は、後述する排気ダクト14を設置するため及び排気室12を形成するため、本体ケース2の胴部背面壁2Uとの間に10cm以上の空間SXが形成されている。
前記2つの独立した冷却ユニットCUは、前記冷却室8R,8Lに上方から挿入されて固定された状態では、横幅の大きなファンケース37の部分が前記空間SXに一部突出している。
【0050】
また、回路基板41を収容した部品ケース34は、グリル加熱室9の左右側壁面と所定の空隙が形成される。なお、ここでいう空隙とは、グリル加熱室9の左右の外壁面との間の空隙を意味しており、この実施の形態でいう左右仕切り板24、24Lと部品ケース34の外側表面との間の対向間隙をいうものではない。
このように冷却ユニットCUのファンケース37の部分は、グリル加熱室9があってもその空間SXに配置され、前方から投影した形で見た場合、冷却ユニットCUのファンケース37の部分がグリル加熱室9と一部重なる状態になっていることで、本体部Aの横幅寸法を増大させることを防止できている。
【0051】
(操作手段E)
この実施の形態における加熱調理装置の操作手段Eは、前面操作部60と上面操作部61とからなっている(
図1〜
図4参照)。
(前面操作部)
本体ケース2の左右両側の前面にプラスチック製の前面操作枠62R,62Lが取り付けられており、この操作枠前面が前面操作部60となっている。
この前面操作部には、左IH加熱源6L、右IH加熱源6R、中央加熱源7及びグリル加熱室9の電気ヒータ22、23の全ての電源を一斉に投入・遮断する主電源スイッチ63(
図2参照)の操作ボタン63Aと、右IH加熱源6Rの通電とその通電量(火力)を制御する右電源スイッチ(図示せず)の電気接点を開閉する右操作ダイアル64Rと、同じく左IH加熱源6Lの通電とその通電量(火力)を制御する左制御スイッチ(図示せず)の左操作ダイアル64Lと、がそれぞれ設けられている。主電源スイッチ63を経由して
図7に示す全ての電気回路構成部品へ電源が供給される。
【0052】
前面操作部60には、左操作ダイアル64Lによって左IH加熱源6Lに通電が行われている状態でのみ点灯する左表示灯66Lと、右操作ダイアル64Rによって右IH加熱源6Rに通電が行われている状態でのみ点灯する右表示灯66Rとが設けられている。
なお、左操作ダイアル64Lと右操作ダイアル64Rは、使用しない状態では、
図4に示されるように、前面操作部60の前方表面から突出しないように内側へ押し込まれており、使用する場合には、使用者が指で一度押してから指を離すと、前面操作枠62に内蔵しているバネ(図示せず)の力によって突出し(
図2参照)、使用者が周囲を掴んで回せる状態になるものである。
そして、この段階で1段階右か左に回せば、初めて左IH加熱源6Lおよび右IH加熱源6Rにはそれぞれ(最小設定火力120Wでの)通電が開始される。
【0053】
そこで、突出している左操作ダイアル64L、右操作ダイアル64Rの何れかをさらに同じ方向に回せば、その回動の量に応じて内蔵したロータリエンコーダー(図示せず)より発生する所定の電気的パルスを前記制御手段Fが読み取り、当該加熱源の通電量が決まり、火力設定が行えるようになっている。
なお、左操作ダイアル64L、右操作ダイアル64Rの何れも、初期の状態であるか途中で左右に回した状態であるかに関係なく、使用者が指で一度押して前面操作部10の前方表面から突出しないような所定の位置に押し込むと、左IH加熱源6L、右IH加熱源6Rの何れも通電を停止できる(例えば、調理中であっても、右操作ダイアル64Rを押し込めば、右IH加熱源6Rは直ちに通電停止される)。
【0054】
なお、前記主電源スイッチ63(
図1参照)の操作ボタン63Aを開成(OFF)操作すれば、それ以後、右操作ダイアル64Rおよび左操作ダイアル64Lの操作は一斉に無効となる。同様に中央加熱源7とグリル加熱室9の内蔵ヒータ22、23の通電も全て遮断される。
また、前面操作枠62の前面下部には、図示していないが3つの独立したタイマーダイアルが設けられている。これらタイマーダイアルは、それぞれ左IH加熱源6L、右IH加熱源6R、中央加熱源7を通電開始から所望の時間(タイマーセット時間)だけ通電し、その設定時間を経過した後は自動的に電源を切るタイマースイッチ(タイマーカウンターともいう。図示せず)を操作するためのものである。
【0055】
(上面操作部)
上面操作部61は、
図3に示すように右火力設定用操作部70、左火力設定用操作部71及び中央操作部72とからなっている。すなわち、トッププレート21の上面前部において、本体部Aの左右中心線を挟んで、右側には右IH加熱源6Rの右火力設定用操作部70が、中央部には中央加熱源7及びグリル加熱室9に設置された電気ヒータ22,23の中央操作部72が、左側には左IH加熱源6Lの左火力設定用操作部71が、それぞれ配置されている。
この上面操作部61には、後述する調理容器80を使用する場合の各種キーが設けてあり、その中にはパン専用キー250が設けてある。
なお、特定の調理(例えばパン)の専用キーではなく、調理容器使用のための専用の共通キーを1個設け、それを押すたびに、後述する統合表示装置100の中に所望の調理名(例えばパン)が表示された操作可能なキー(後述する入力キー141〜145など)を表示させ、当該キーのエリアを使用者が指で触れてその所望の調理開始指令を入力するような形態にしても良い。
【0056】
さらに、上面操作部61には、後述する調理容器80をIH加熱源と電気輻射加熱源22、23の両方で使用して調理する場合(以下、「複合加熱調理」又は「複合調理」という)のための複合調理キー251が設けてある。
この実施の形態1では、右IH加熱源6Rとグリル加熱室9の電気輻射加熱源22、23との複合加熱ができるようにしたものであり、前記複合調理キー251は、後述する右火力設定用操作部70寄りに設けてある(
図3参照)。
なお、前記複合調理キー251は、固定式のキーやボタン、摘み等ではなく、後述する統合表示装置100の表示画面(液晶画面など)の中に所望のキーを表示させ、当該キーのエリアを使用者が指で触れることで、複合調理の入力を可能にする形態であっても良い。つまり統合表示装置100の表示画面中にソフトウエアによって適時に入力可能なキー形状を表示し、それをタッチして入力操作する方法でも良い。
【0057】
(右火力設定用操作部)
図3及び
図9に示す右火力設定用操作部70には、
図9に示すように、使用者が1度押圧するだけで右IH加熱源6Rの火力を簡単に設定することができる各火力のワンタッチ設定用キー部90が設けられている。具体的には弱火力キー91、中火力キー92、および強火力キー93の3つのワンタッチキーを備えており、弱火力キー91は右IH加熱源6Rの火力を300Wに設定し、中火力キー92は750Wに設定し、強火力キー93は2.5KWに設定する。さらに、右ワンタッチキー部の右端部に強火力キー94が設けられ、右IH加熱源6Rの火力を3KWにしたい場合には、これを押圧操作する。
【0058】
(左火力設定用操作部)
同様に左IH加熱源6Lの火力設定のための左火力設定用操作部71にも右火力設定用操作部70と同様なワンタッチキー群が設置されている。
【0059】
(中央操作部)
図3及び
図9に示す中央操作部72には、
図9に示すように、グリル(ロースト)調理およびオーブン調理に用いられるグリル加熱室9のヒータ22,23の通電を開始する操作スイッチ(図示せず)の操作ボタン95と、その通電を停止する操作スイッチ(図示せず)の操作ボタン96が並べて設けられている。
また、中央操作部72には、
図9に示すように、ヒータ22,23によるグリル調理や左IH加熱源6L、右IH加熱源6Rによる電磁調理における制御温度を、1度ずつ加算的又は減算的に設定する温度調節スイッチ(図示せず)の操作ボタン97A、97Bが横一列に設けられている。また、中央加熱源7の電源入り・切りスイッチボタン98及び火力を1段階ずつ加算的又は減算的に設定する設定スイッチ99A、99Bもここに設けてある。
【0060】
さらに、中央操作部72には便利メニューキー130が設けられている。それを操作すると揚げ物調理(左IH加熱源6L、右IH加熱源6Rを使用)、揚げ物予熱状態表示(左IH加熱源6L、右IH加熱源6Rを使用し、油を所定の予熱温度まで加熱)、タイマー調理(左IH加熱源6L、右IH加熱源6R、中央加熱源7、グリル加熱室9の内部に設けたヒータ22、23を、タイマースイッチにて設定した時間中だけ通電して調理)を設定する際に押圧すれば、後述する統合表示手段100に所望の入力画面や状態表示画面を簡単に読み出せる。
パン専用キー250の右側には、ハードボタンからなる右IH便利メニューボタン131Rが設けられており、これは右加熱コイル6Rについての各種の設定をするための設定ボタンである。同様な設定ボタンは左加熱コイル6Lについても設けられている(図示省略)。
【0061】
前記したタイマーカウンター(図示せず)を操作・スタートさせるスタートスイッチを操作すると、前記した液晶表示画面45R、45Lに、そのスタート時点からの経過時間が計測されて数字で表示される。
なお、液晶表示画面45R、45Lの表示光はトッププレート21を透過し、経過時間が「分」と「秒」単位で明瞭に使用者に表示される。
左側の左火力設定用操作部71にも、右火力設定用操作部70と同様に、左タイマースイッチ(図示せず)と、左液晶表示部45Lが設けられ、これらは本体1の左右中心線を挟んで左右対象的位置に設けられている。
【0062】
(火力表示ランプ)
トッププレート21の右前側で、右IH加熱源6Rと右火力設定用操作部70との間の位置に、右IH加熱源6Rの火力の大きさを表示する右火力表示ランプ101Rが設けられている。
右火力表示ランプ101Rはトッププレート21を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つようにトッププレート21の下面近傍に設けられている。
同様に、左IH加熱源6Lの火力の大きさを表示する左火力表示ランプ101Lが、トッププレート21の左前側で、左IH加熱源6Lと左火力設定用操作部22との間の位置に設けられ、トッププレート21を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つようにトッププレート21の下面近傍に設けられている。
なお、これら表示ランプ101R、101Lは
図7の回路構成図には表示を省略している。
【0063】
(調理容器)
図10において、80は全体が鉄やステンレス等の磁性を有する厚さ1〜2mm程度の薄板金属からプレス成型等で形成された調理容器で、前記グリル加熱室9の内部にその前面開口9Aから挿入され、焼き網109の上に置かれて使用される。
その調理容器80は、平面形状が円形の上容器81と、同じく平面形状が円形の下容器82とから構成されている。上容器81と下容器82は、平面的な外形形状が同じであり、上容器81と下容器82はともにその直径はW1であり、上容器81の深さH1に対し、下容器82の深さH2はその1.4倍程度の寸法関係になっている。例えばH1=25mm、H2=35mmである。
【0064】
上容器81と下容器82の開口周縁部には、使用者が持ち運ぶ際の手掛け部となる金属製の鍔部84、86がそれぞれ一体に折り曲げ形成されて、又は溶接などの固着手段によって設けてある。ここで鍔部84、86の板厚は、それぞれ2mmである。
上容器81の鍔部84は、その天井面83からH3の距離だけ離れた位置にあり、一方、下容器82の鍔部86は、その底面85からH4の距離だけ離れた位置にある。ここでH3は例えば25mm、H4は35mmである。なお、鍔部84、86の貼り出し幅は使用者がミトンを装着した手でしっかりとその上下面を持てるように、最低でも30mmの大きさになっており、この実施の形態1では60mmになっている。
【0065】
上容器81と下容器82の開口周縁同士が向かい合った状態(両者の中心線が一致して上下に完全に重なった状態)を維持できるよう、両者の位置合わせをする構造にしても良い。例えば一方の鍔部84の2個所以上に貫通孔を設け、他方の鍔部86にはその貫通孔にそれぞれ嵌まり込む複数個の突起を設けることにより、それら貫通孔と突起との嵌合状態(必ずしも緊密な嵌合ではなくても良い)によって相互の位置を固定するようにしても良い。
上容器81の天井面83と下容器82の底面85は、何れも出来るだけ全体が平坦面になっていることが望ましい。その詳しい理由は後述するが、左IH加熱源6L又は右IH加熱源6Rによって誘導加熱されるという使用方法を想定しているからである。
【0066】
また、上容器81と下容器82の鍔部84,86の位置は、右IH加熱コイル6RC及び左IH加熱コイル6LCの最外周端部6Eよりも外側に外れている。
この位置関係と前記した対向間隔H3,H4を設けた工夫によって、上容器81と下容器82とは、その天井面83、又は底面85の何れかがトッププレート21の上面に対面した状態で、右IH加熱コイル6RC又は左IH加熱コイル6LCによって加熱された場合でも、鍔部84、86自体が直接誘導加熱されて高温になることが防止されている。
つまり、左右IH加熱コイル6RC、6LCから離れる距離の三乗に反比例して誘導加熱される磁界の強度は小さくなるから、十分な間隔を置いた鍔部84、86は調理容器80の底壁面85や周壁面のように直接誘導加熱されて高温になることはない。
【0067】
GAは、上容器81と下容器82をその開口部同士が向き合った状態で、その鍔部84,86間に形成される微小間隙である。なお、この微小間隙はゼロが理想的であるが、製造上の制約により実際には僅かな寸法で形成されるが、前記したように鍔部84,86の幅が30mm以上あるため、実際の調理においては調理容器80の内部には外部とほぼ隔絶された閉鎖空間87が形成される。
調理容器80の最大横幅寸法W2は、前記グリル加熱室9の内側空間の最大幅(有効横幅寸法)に近いものとなっている。例えばこの実施の態様におけるグリル加熱室9は、内側の有効横幅寸法が360mm、奥行き290mm、高さは120mm程度になっているため、W2は350mmである。
【0068】
H5は調理容器8の最大高さ寸法であり、
図6に示した焼き網109の上面から、その上部に横たわっている輻射式電気加熱源であるシーズヒータ22の下面までの寸法(H6)よりも小さく設定してあり、調理容器8をドア13の開閉に伴って前後方向に移動される場合に、その上部のヒータ22に衝突しないで前方に移動し、最終的にはグリル加熱室9の前面開口9Aから前方に引き出せるようにしてある。
この実施の形態1ではH5は例えば59mm(=H3+H4+鍔部84の板厚2mm+鍔部86の板厚2mm)である。H6は65mmである。
【0069】
この実施の形態1の加熱調理器は、組込式又はビルトイン式と称されるものであるため、本体部Aの高さは、調理器が設置される流し台などの規格の関係で23cm程度の制約があり、グリル加熱室9の内側空間の最大高さも制約があるが、据置形と称されるタイプの調理器であれば、そのようなグリル加熱室9の内部有効高さの制約も無いので、結局調理容器80の厚さ(H5)寸法を、より大きなものにすることができる。
これは、
図6に示した焼き網109の上面から、シーズヒータ22の下面までの対向間隔(H6)を広く確保できるからである。
【0070】
(表示手段)
統合表示手段100が、トッププレート21の左右方向の中央部で、前後方向の前側に設けられている。この統合表示手段は液晶パネルを主体に構成され、トッププレート21を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つようにトッププレート21の下面近傍に設けられている。
統合表示手段100は、左IH加熱源6L、右IH加熱源6R、中央加熱源7及びグリル加熱室9のヒータ22、23等の通電状態(火力や時間等)を入力したり、確認したりすることができるものである。すなわち、
(1) 左右IH加熱源6L、6Rの機能(調理動作中であるかどうか等)
(2) 中央加熱源7の機能(調理中であるかどうか等)
(3) グリル加熱室9での調理の場合には、その加熱調理を行う場合の操作手順や機能(例えば、現在ロースター、グリル、オーブンの調理の何れが行われているかどうか)
の3つの場面に対応して、動作状況や火力等の加熱条件が、文字やイラスト、グラフなどによって明瞭に表示されるものである。
【0071】
この統合表示手段100で使用されている液晶画面は、周知のドットマトリックス型液晶画面である。また高精細(320×240ピクセルの解像度を備えているQVGAや640×480ドット、16色の表示が可能なVGA相当)の画面を実現でき、文字を表示する場合でも多数の文字を表示することができる。
液晶画面は1層だけではなく、表示情報を増やすために上下2層以上で表示するものを使用しても良い。液晶画面の表示領域の大きさは縦(前後方向)約4cm、横約10cmとなっている長方形である。
【0072】
また情報を表示する画面区域を加熱源毎に複数個に分割している(
図9参照)。例えば画面を合計10個のエリアに割り当ててあり、次のように定義されている。
(1)左IH加熱源6Lに対応する表示エリア100L(火力用100L1と時間用100L2の計2個)。
(2)中央加熱源7に対応する表示エリア100M(火力用100M1と時間用100M2の計2個)。
(3)右IH加熱源6Rに対応する表示エリア100R(火力用100R1と時間用100R2の計2個)。
(4)グリル加熱室9の調理用表示エリア100G。
(5)各種調理における参考情報を随時又は使用者の操作を表示するとともに、異常運転検知時又は不適正操作使用時に使用者に報知する全ての熱源に共通するガイドエリア100GD。
(6)各種調理条件等を直接入力可能な機能を有する、互いに独立した6つの入力キー141、142、143、144、145、146を表示するキー表示エリア(100Fの1個)と、
(7)全ての熱源に共通する任意表示エリア100Nと、
をそれぞれ備えている。
【0073】
任意表示エリアのキー100Nを押せば、調理に役立つ詳しい情報などを文字で統合表示手段100のガイドエリア100GDに表示させることができるものである。
また、前記表示エリアの背景色は、通常では全体が統一された色彩(例えば白)で表示されるようになっているが、表示エリア100Rと100Gは、前記した「複合調理」の場合は、同じ色でしかも他の加熱源の表示エリア100L、100Mとは異なる色(例えば黄色や青など)に変化するようになっている。このような色変化は表示画面が液晶の場合は、そのバックライトの動作切り替えで可能になるが、詳細な説明は省略する。
【0074】
上記の合計10個の各エリア(表示領域)は、統合表示手段100の液晶画面の上に実現されたものではあるが、画面自体に物理的に個別に形成され、又は区画されているものではない。
すなわち、画面表示のソフトウエア(マイコンのプログラム)により確立されたものであるので、そのソフトウエアによりその都度面積や形、位置を変えることは可能であるが、使用者の使い勝手を考え、左IH加熱源6L、中央加熱源7、右IH加熱源6Rなど各加熱源の左右の並び順序に合わせて常に同じ並び順序にしている。
つまり、画面上では左側に左IH加熱源6L、真中に中央加熱源7、右側に右IH加熱源6Rについての情報が表示される。またグリル加熱室9の調理用表示エリア100Gは、必ず上記左IH加熱源6Lの表示エリア100L、中央加熱源7の表示エリア100M、右IH加熱源6Rの表示エリア100Rよりも手前側に表示される。さらに入力キーの表示エリア100Fがいかなる場面でも必ず最も手前に表示される。
【0075】
また、前記入力キー141〜146は、使用者が指などを触れることで静電容量が変化する接触式キーを採用しており、使用者がキー表面に対応した位置の、統合表示手段100の上面を覆うガラス板の上面に軽く触れることで通電制御回路200に対する有効な入力信号が発生するものである。
前記入力キー141〜146の部分(区域)を構成する前記ガラス板上には、キーの入力機能を示す文字や図形、記号(
図9のキー143,145の矢印を含む)を印刷や刻印等で何ら表示していないが、これらキーの下方の液晶画面(キー表示エリアF)には、それら入力キーの操作場面毎にキーの入力機能を示す文字や図形、記号を表示する構成になっている。
【0076】
全ての入力キー141〜146が常に同時に表示されている訳ではない。操作しても無効なキー(操作する必要が無い入力キー)については、
図9の入力キー144のように、入力機能文字や図形を液晶画面上で表示しないようにして、非アクティブ状態にしている。アクティブ状況の入力キー141〜146が操作されれば、通電制御回路200の動作を定める制御プログラムに対し、有効な操作指令信号になることになる。
また、入力キー146は、調理条件を決定したい場合及び調理をスタートしたい場合に操作されるためのキーである。
これを一度操作して調理動作がスタートすると、「停止」という表示の入力キーに変更される。その他の入力キー141〜145も、その都度入力命令が変化することがあり、有効な入力機能はその都度表示される文字や図形、記号などで用意に識別できる。
【0077】
(グリル加熱室9)
グリル加熱室9の前面開口9Aは、
図1と
図6に示すように、ドア13によって開閉自在に覆われ、ドア13は使用者の操作によって前後方向に移動自在になるよう前記グリル加熱室9にレール、コロ等の支持機構(図示せず)によって保持されている。また、ドア13の中央開口部13Aには耐熱ガラス製の窓板が設置され、グリル加熱室9の内部が外側から視認できるようになっている。13Bはドア13を開閉操作するために前方に突出した取っ手である。なお、グリル加熱室9は、前述したように本体の内側後壁面との間に所定の空間SX(
図6参照)が形成され、この空間を利用して後述する排気ダクト14が設置され、また後部排気室12が形成されている。
【0078】
ドア13には、金属製の受皿108(
図6参照)の前端部が連結されており、油の多い調理をする場合は通常その受皿108の上には金属製の焼き網109が置かれて使用される。
これにより、ドアを前方に水平に引き出した場合、その引出し動作に伴って受皿108(焼網109が載っている場合はその焼網)も一緒にグリル加熱室9の前方へ水平に引き出される。
なお、受皿108は、通常ドア13と連結された左右一対の金属製レール(図示せず)の上に左右両端部が着脱自在に支持されているため、受皿108をレールの上から単独で取り外すことが出来るようになっている。
また、焼網109の形状と受皿108の位置、形状等は、受皿108を前方に引き出す際に下部のヒータ23に当たって引き出せないことがないように工夫してある。
このように、グリル加熱室9では、焼網109の上に肉や魚、その他食品を載せてヒータ22、23を(同時又は時分割等で)通電すれば、それら食品を上下両面から加熱する「両面焼き機能」を有するものである。
また、グリル加熱室9には、この室内温度を検出する庫内温度センサー242(
図7参照)が設けられており、庫内温度を所望の温度に維持させて調理をすることも可能になっている。
【0079】
グリル加熱室9は、
図6に示すように、後方(背面)側全体に開口9Bを有し、前方側に開口9Aを有した筒状の金属製内枠9Cと、この内枠の外側全体を所定の(下方)間隙113、(上方)間隙114および左右両側方間隙(115。図示せず)を保って覆う外枠9Dとから構成されている。
なお、307はグリル加熱室9の外枠9Dと本体ケース2の底壁面との間に形成された空隙である。
外枠9Dは、左右両側壁面、上面、底面及び背面の5つの面を有し、全体が鋼板などで形成されている。これら内枠9Cと外枠9Dの内側表面は、ホーロー等の清掃性の良い被覆を形成するか又は耐熱塗装膜を塗ったり、あるいは赤外線放射皮膜を形成したりしている。
赤外線放射皮膜を形成した場合、食品などの被加熱物に対する赤外線放射量を増大させ、加熱効率を高め、またむら焼けの改善にもなる。9Eは外枠9Dの背壁面上部に形成した排気口である。
【0080】
14はその排気口9Eの外側に連続するように設置した金属製排気ダクトであり、この排気ダクト14は流路断面が正方形又は長方形であり、
図6に示すように途中から下流側に行くに従って斜め上方に傾斜し、その後垂直方向に曲がり、最終的には上端部開口14Aが上枠20に形成した中央通風口20C近傍まで連通している。
121は排気ダクト14の内部で、排気口9Eの下流側位置に設置された脱臭用触媒で、触媒ヒータ(図示せず)により加熱されることで活性化し、排気ダクト14を通るグリル加熱室9内部の熱い排気から臭気成分を除去する働きをする。
【0081】
(排気構造・吸気構造)
前記した通り、
図1に示すように、上枠20の後部には横に長く右通風口(吸気口になる)20B、中央通風口(排気口になる)20C、左通風口20Dがそれぞれ形成されている。
これら3つの後部通風口20B、20C、20Dの上には、上方全体を覆うように全体に亘り無数の小さな連通孔が形成された金属製平板状のカバー130(
図1参照)が着脱自在に載せられている。カバーは金属板に連通孔用の小孔をプレス加工で形成したもの(パンチングメタルとも言う)の他に、金網や細かい格子状のものでも良い。何れにしても上方から使用者の指や異物等が各通風口20B、20C、20Dに入らないようなものであれば良い。
また、
図5に示すように、ファンケース37の吸い込み筒37A最上位にある吸い込み口37Bは、前記カバー130の右端部の直下に臨んでおり、カバー130の連通孔を通して台所などの外部の室内空気を本体部Aの中の左右冷却室8R、8Lに導入できるようになっている。
【0082】
前記後部排気室12の中には
図2に示すように、前記排気ダクト14の上端部が位置した状態である。
言い換えると、排気ダクト14の左右両側には、前記グリル加熱室9の周囲に形成されている空隙116と連通している後部排気室12が確保されている。
グリル加熱室9は、前記した水平仕切板25との間に所定の空隙116を持って設置されているが、この空隙116は最終的には後部排気室12に連通している。
前記したように後部仕切板28に形成した1対の排気口28Aを通じて上部部品室10の内部は後部排気室12と連通しているから、上部部品室10の中を流れる冷却風(
図5の矢印Y5)が本体1の外部へ
図2の矢印Y9のように排出されるが、この際、これに誘引されて前記空隙116内部の空気も一緒に排出される。
【0083】
前記回路基板(インバータ回路等が形成された回路基板)41(
図4、
図8参照)には、
図7に示す100V又は200Vの商用電源に接続された整流ブリッジ回路221、整流ブリッジ回路221の直流側出力端子に接続されたコイル222、平滑化コンデンサ223、コイル222と平滑化コンデンサ223に接続された共振コンデンサ224、これら部品に接続された半導体スイッチング手段となる(IGBTなどの)電力制御素子225及びその他誘導加熱駆動に必要な主要電気・電子回路部品が搭載されている。
なお、前記電力制御素子225は、誘導加熱駆動動作に伴って大きな電力が流れるので発熱するから、これを空冷するため前記した放熱フィン43A、43B(
図5参照)に熱伝的に取り付け、送風機30からの冷却風で冷却するようにしている。
【0084】
(補助冷却構造)
図4、
図5において、46は内部に前記上面操作部61の各種電気・電子部品56や誘導加熱調理時の火力を光で表示する発光素子(LED)57などが取付基板58上に固定されて収容された前部部品ケースで、上面が開放した透明プラスチック製の下ダクト46Aと、この下ダクトの上面開口を塞ぐように密閉する蓋となる透明プラスチック製の上ダクト46Bとから構成されている。
下ダクト46Aの右端部と左端部にはそれぞれ通風口46R、46Lが開口しており、また中央の後部には通風を許容する切欠き46Cが形成されている。
上ダクト46Bの天井面には、中央に前記統合表示装置100が、また左右には液晶表示部45R,45Lがそれぞれ設置されている。
【0085】
前記送風機30の冷却風は、前記部品ケース34の第2の排気口34Bから冷却ダクト42の通風空間42Hに入り、ここから通風空間42Hに対応して形成した通風口42Kを通して液晶表示画面(液晶表示部)45R、45Lの下方から前部部品ケース46に入り、切欠き46Cから上部部品室10に排出されるものである。
これにより、液晶表示部、統合表示装置100ともに常に送風機30からの冷却風で冷却される。特にこの部品ケース34の第2の排気口34Bからの冷却風は、誘導加熱動作時に高温になる左右IH加熱コイル6LC、6RCを冷却した風でないから、その温度は低く、液晶表示部45R、45L及び統合表示装置100ともに、冷却風の風量が少ないながらも効果的に温度上昇が抑制される。
特に、冷却風の流れ(
図5の矢印Y5)で下流側になる左右IH加熱コイル6LC、6RCの後部位置が冷えにくいため、この実施の形態では、通風空間42Fに第1の排気口34Aからの低温の風が直接供給されて、この風で当該部分を冷やすようにしている。
【0086】
(補助排気構造)
図6に示すように、排気ダクト14の脱臭用触媒120より下流側に、一段階下方へ凹ませた形状の筒形底部14Bが形成されている。14Cはこの底部14Bに形成された通気孔である。106はこの通気孔に臨ませた補助排気用の軸流形送風機で、106Aはその回転翼、106Bはその回転翼106Aを回転させる駆動用のモータであり、排気ダクト14に支持されている。
グリル加熱室9で調理中、そのグリル加熱室9は高温になるから自然と内部気圧が上昇し、それに伴って高温の雰囲気が排出され、排気ダクト14を上昇してくるが、その送風機106を運転して矢印Y7で示すように本体部Aの内部の空気を排気ダクト14に取り入れることにより、その新鮮な空気にグリル加熱室9の高温空気は誘引され、温度が下がりながら排気ダクト14の上端部開口14Aから矢印Y8で示すように排気される。
【0087】
補助排気用の軸流形送風機106は、調理器の運転中に常に運転されている訳ではなく、運転されるのはグリル加熱室9で加熱調理が行われる場合である。この場合にはグリル加熱室9から排気ダクト14に高温の熱気が排出されるからである。
また、この
図6におけるY7、Y8の空気の流れと、
図5におけるY1〜Y5の空気の流れとは全く関連しておらず、また連続した流れでもない。
【0088】
(制御手段F)
(制御回路)
図7は、この調理装置の制御回路の全体を示す構成要素図であり、該制御回路は、1つ又は複数のマイクロコンピュータを内蔵して構成されている通電制御回路200によって形成されている。
通電制御回路200は、入力部201と、出力部202と、記憶部203と、演算制御部204と、の4つの部分から構成され、定電圧回路(図示せず)を介して直流電源が供給されて、全ての加熱源と表示手段Gを制御する中心的な制御手段の役目を果たすものである。
図7において、100V又は200V電圧の商用電源に対し、整流回路(整流ブリッジ回路ともいう)221を介して右IH加熱源6R用のインバータ回路210Rが接続されている。
【0089】
同様に、この右IH加熱源のインバータ回路210Rと並列に、左IH加熱源のインバータ回路210Lが前記整流ブリッジ回路221を介して同様に前記商用電源に接続されている。
211は中央加熱源7のヒータ駆動回路、212はグリル加熱室9の庫内加熱用ヒータ22を駆動するヒータ駆動回路、213は同じくグリル加熱室9の庫内加熱用ヒータ23を駆動するヒータ駆動回路、214は前記排気ダクト14の途中に設けた触媒ヒータ121を駆動するヒータ駆動回路、215は統合表示手段100の液晶画面を駆動する駆動回路である。
【0090】
右IH加熱源6Rのインバータ回路210Rは、
図7に示した右IH加熱コイル6RC(誘導加熱コイル)と、商用電源の母線に入力側が接続された整流ブリッジ回路221と、整流ブリッジ回路221の直流側出力端子に接続されたコイル222及び平滑化コンデンサ223からなる直流回路と、コイル222と平滑化コンデンサ223の接続点に1端が接続された右IH加熱コイル6RC及び共振コンデンサ224の並列回路からなる共振回路と、この共振回路の他端にコレクタ側が接続されたスイッチング手段となるIGBT225とを備えている。
前記IGBT225のエミッタは、平滑化コンデンサ223と整流ブリッジ回路221の共通接続点に接続されている。フライホイールダイオード226のアノードがエミッタ側になるようIGBT225のエミッタとコレクタ間に接続されている。Nは被加熱物となる金属鍋を示す。
【0091】
227は電流検出センサーであり、加熱コイル6RCと共振コンデンサ224Rの並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出する。
電流検出センサー227の検出出力は通電制御回路200の入力部に供給され、誘導加熱に不適当な鍋などが用いられた場合や、何らかの事故などによって正規の電流値に比較して所定値以上の差の過少電流や過大電流が検出された場合は、通電制御回路200により駆動回路228を介してIGBT225が制御され、瞬時に誘導加熱コイル220の通電を停止するようになっている。
同様に左IH加熱源6Lのインバータ回路210Lは、右加熱源回路206Rと同等の回路構成であるので説明は省略するが、6LCは左IH加熱コイル、224Lは共振コンデンサである。
電流検出センサー227は、図示していないが、左IH加熱源6Lのインバータ回路210Lにも同様に設けられている。なお電流検出センサー227としては抵抗器を用いて電流を計測する分流器や、カレントトランスを用いて構成する方法がある。
【0092】
本発明のような誘導加熱方式で被加熱物Nを加熱する調理装置においては、IH加熱コイル6RC、6LCに高周波電力を流すための電力制御回路は、いわゆる共振型インバータと呼ばれている。
被加熱物N(金属物)を含めたIH加熱コイル6RC、6LCのインダクタンスと、共振コンデンサ(
図7の224)を接続した回路に、スイッチング手段(
図7でいうIGBT225)を20〜40KHz程度の駆動周波数でオン・オフ制御する構成である。
また、共振型インバータには、200V電源用に適すると言われている電流共振型と、100V電源に適すると言われている電圧共振型とがある。
このような共振型インバータ回路の構成には、IH加熱コイル6RC、6LCと共振コンデンサ224の接続先をリレー回路でどのように切り替えるかによって、いわゆるハーフ・ブリッジ回路とフル・ブリッジ回路と呼ばれる方式に分かれる。
本発明のインバータ回路210R、210Lは、ハーフ・ブリッジ回路でもフル・ブリッジ回路で構成しても良い。
【0093】
上記したように被加熱物N(金属物)をIH加熱コイル6RC、6LCの通電により誘導加熱する際、鉄等の磁性材料の被加熱物Nの場合は、共振コンデンサ(
図7の224)を接続した回路にスイッチング手段(
図7のIGBT225)を20〜40KHz程度の駆動周波数でオン・オフ制御して、20〜40KHz程度の周波数の電流を流せば良い。
一方、被加熱物Nがアルミや銅などの高電気導電率の材料で作られている場合には、所望の加熱出力を得るためにIH加熱コイル6RC、6LCに大電流を流して被加熱物Nの底面に大きな電流を誘起させる必要がある。
そのため、高電気導電率の材料で作られている被加熱物Nの場合は、60〜70KHzの駆動周波数でオン・オフ制御することを行っている。
33は、本体部Aの内部空間を一定の温度範囲に保つための前記送風機30の駆動モータ300の駆動回路であり、231は排気ダクト14に設置した補助排気ファン106のモータ106Bの駆動回路である。
【0094】
(温度検出回路)
図7において、240は温度検出回路で、これには以下の各温度センサーからの温度検出情報が入力される。
(1) 右IH加熱コイル6RCの中央部に設けた前記温度センサー31R。
(2) 左IH加熱コイル6LCの中央部に設けた前記温度センサー31L。
(3) 中央加熱源7の電気ヒータ近傍に設けた温度センサー241。
(4) グリル加熱室9の庫内温度検出用温度センサー242。
(5) 統合表示手段100の近傍に設置した温度センサー243。
(6) 部品ケース34の内部の2つの放熱フィン43A、43Bに密着して取り付けられ、それら2つの放熱フィンの温度を個別に検出する温度センサー244、245。
【0095】
なお、温度センサーを温度検出対象物に対して2箇所以上設けても良い。例えば右IH加熱源6Rの温度センサー31Rを、その右IH加熱コイル6RCの中央部と、外周部分に設け、より正確に温度制御を実現しようとするものでも良い。
また、温度センサーを異なる原理を利用したもので構成しても良い。例えば右IH加熱コイル6RCの中央部の温度検出素子は赤外線方式で、外周部分に設けたものはサーミスタ式としても良い。
送風機30のモータ300の駆動回路33は、温度検出回路240からの温度測定状況に応じ、それぞれの温度測定部分が所定温度以上高温にならないように常に送風機30を運転して、風で冷却する。
【0096】
(加熱調理器の動作)
次に、上記の構成からなる加熱調理器の動作の概要を説明する。
電源投入した場合、その投入から調理準備開始までの基本動作プログラムが、通電制御回路200の内部にある記憶部203に格納されている。
まず電源プラグを200Vの商用電源に接続し、主電源スイッチ63の操作ボタン63A(
図2参照)を押して電源を投入する。
すると、定電圧回路(図示せず)を介して所定の低い電源電圧が通電制御回路200に供給され、通電制御回路200は起動される。通電制御回路200自身の制御プログラムにより自己診断し、異常がない場合には送風機30の駆動モータ300を駆動するためのモータ駆動回路33が予備駆動される。
また、左IH加熱源6Lおよび右IH加熱源6R、統合表示手段100の液晶表示部の駆動回路215もそれぞれ予備起動する。
【0097】
温度検出回路240は各温度センサー31R,31L、241、242、244,245からの温度データを読み込み、そのデータを通電制御回路200に送る。
以上のようにして通電制御回路200には、主要な構成部分の回路電流や電圧、温度などのデータが集まるので、調理前の異常監視制御として、異常加熱判定を行う。例えば、統合表示手段100の液晶基板周辺の温度がその液晶表示基板の耐熱温度(例えば70℃)よりも高い場合は、異常高温と判定する。
【0098】
また電流検出センサー227は、右IH加熱コイル6RCと共振コンデンサ224の並列回路からなる共振回路225に流れる電流を検出し、この検出出力は通電制御回路200の入力部201に供給され、記憶部203に記憶されている判定基準データの正規の電流値に比較して、過少電流や過大電流が検出された場合には、通電制御回路200は何らかの事故や導通不良などと判定し、異常と判定する。
以上の自己診断ステップによって異常判定が無かった場合は「調理開始準備完了」となる。しかし、異常判定が行われた場合には、所定の異常時処理が行われ、調理開始ができないようになる。
【0099】
(調理モード)
次に、調理前異常監視処理を終えたあとに調理モードに移行した場合について、右IH加熱源6Rを使用した場合を例にして説明する。
まず、前面操作部60の右操作ダイアル64Rを右か左へ回す(回した量に応じて火力が設定される)。
前面操作部60からの操作信号が通電制御回路200に入力され、また上面操作部61からの各種入力キーの操作信号が通電制御回路200に入力され、火力レベルや加熱時間などの調理条件が設定される。
次に、通電制御回路200が駆動回路228を駆動し、右IH加熱源回路210Rを駆動する。
また、統合表示手段100が駆動回路215によって駆動されるので、その表示エリアには火力や調理時間などの調理条件が表示される。
駆動回路228はIGBT225のゲートに駆動電圧を印加するので、右IH加熱コイル6RCに高周波電流が流れる。但し、最初から高火力通電加熱はせず、鍋などの被加熱物Nの適否検知が以下のように行われる。
【0100】
電流検出センサー227は、右IH加熱コイル6RCと共振コンデンサ224の並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出し、検出出力は通電制御回路200の入力部に供給される。
そして、何らかの事故や導通不良などによって正規の電流値に比較して過少電流や過大電流が検出された場合は、通電制御回路200は異常と判定する。通電制御回路200は上記のような種類の異常判定機能に加え、使用される鍋(調理器具)の大きさが適当かどうか判定する機能を有している。
具体的には、共振回路225に、最初の数秒間は使用者が設定した火力(電力)ではなく、所定電力(例えば1KW)を流し、その時の入力電流値を電流検出センサー227で検出するように構成している。
【0101】
すなわち、通電制御回路200が所定の電力により同じ導通比率で駆動信号を出してスイッチング手段となるIGBT225を駆動した際、右IH加熱コイル6RCの面積に比べて小さい直径の鍋がトッププレート21上に載置されている場合に電流検出センサー227の部分を流れる電流は、加熱コイル220の面積に比べて大きな直径の鍋がトッププレート21上に載置されている場合に電流検出センサー227の部分を流れる電流に比較して、小さくなることが既に知られている。
したがって、事前に実験結果などから過剰に小さい鍋を載置した場合の電流検出センサー227の部分を流れる電流の値を判定基準データとして用意している。
そうすると、電流検出センサー227において小さ過ぎる電流が検出された時は、異常な使用形態であることが通電制御回路200側で推定できるため、異常処理の処理ルートに移行する。
なお、スイッチング手段225に対する通電率を通電制御回路200が自ら変更し、例えば使用者が設定した火力でも、導通比率を許容範囲まで下げることで正常な加熱状態を維持確保できる場合は、自動的に電力適応制御処理が実行されるものであり、小さい電流値が検出された場合、全て一律で無条件に異常処理に行くのではないようになっている。
【0102】
上記のような鍋の判定を行っている状態では、右IH加熱源6Rの表示エリア100R2には
図9に示すように最初に「鍋適否判定中」との文字が表示される。そして、数秒後には上記異常電流検出監視処理の判定結果により、小さ過ぎる鍋の場合はガイドエリア100GDに、
図9に示すように「使用する鍋が小さすぎます」「もっと大きな鍋(直径10cm以上)を使用して下さい」というような注意喚起文字が表示される。
なお、本発明は、適合する鍋の最小直径寸法を、上記「10cm以上」に限定するものではなく、加熱コイルの直径寸法に依存した数値に適宜設定されるものである。
この鍋適否判定結果が出された場合、右IH加熱源6Rの表示エリア100R1,100R2は、その面積が
図9の状態から数倍大きく拡大され、その表示エリアに鍋が適当ではないことが表示される。
【0103】
左IH加熱源6Lと中央加熱源7の両方とも使用されていない場合は、右IH加熱源6Rの表示エリア100R1,100R2は、それら左IH加熱源6Lと中央加熱源7の表示エリア100L1、100L2,100M1、100M2を包含するほどの大きさまで拡大される。
その後、鍋の交換などの措置を使用者が行わなかった場合、通電制御回路200を停止せずに、表示エリアEに鍋が小さすぎると表示した時点から一定時間後に、一旦右IH加熱源による加熱動作を自動停止する。
使用者が鍋を大きいものに変更し、再度調理開始の操作を行えば再度調理を再開することができる。
以上のような鍋検知動作を行って、適合する鍋(被加熱物N)であると判定された場合、通電制御回路200は右IH加熱源6Rが本来の設定火力を発揮するように、自動的に適応する通電制御処理を実行する。
【0104】
これにより、右IH加熱コイル6RCからの高周波磁束により被加熱物Nの鍋が高温になり、電磁誘導加熱調理動作(調理モード)に入る。
整流ブリッジ回路221と平滑化コンデンサ223によって得られた直流電流はスイッチング素子であるIGBT225のコレクタに入力される。
IGBT225のベースには駆動回路228からの駆動信号が入力されることでIGBT225のオン・オフ制御を行う。
IGBT225のオン・オフ制御と共振コンデンサ224を組み合わせることで右IH加熱コイル6RCに高周波電流を発生させ、この高周波電流がもたらす電磁誘導作用により右IH加熱コイル6RC上方のトッププレート21上に載置された鍋等の被加熱物Nに渦電流が発生する。
こうして、被加熱物Nに生じた渦電流はジュール熱となって被加熱物が発熱し、調理に用いることが可能となる。
【0105】
駆動回路228は発振回路を有しており、この発振回路が発生する駆動信号がIGBT225のベースに供給されてIGBT225をオン・オフ制御する。駆動回路228の発振回路の発振周波数や発振タイミングを調整することで、右IH加熱コイル6RCの導通比や導通タイミング、電流周波数等が調整されて、右IH加熱コイル6RCの火力調節が可能となる。
なお、右IH加熱源6Rの通電停止指令が出された場合には、右IH加熱源6Rの通電は停止されるが、送風機30は、前記通電停止後も2分間〜5分間運転継続する。
これにより、送風機30からの送風停止直後から右IH加熱源6Rの加熱コイル6RC周辺に熱気が滞留したままになり、温度が急激に上昇するというオーバーシュート問題も未然に防ぐことができる。
【0106】
また、統合表示手段100の温度が高くなるという弊害も防ぐことができる。この運転継続時間は、通電停止までの温度上昇の様子や室内気温、加熱源の運転火力大小等の条件に対応して通電制御回路200が予め決められた算式や数値テーブルから決定する。
但し、送風機30からの異常電流が検出される等、冷却用ファン自体の故障であることが判明した場合(例えば、冷却フィン43A、43Bの温度だけが上昇している場合)は、その送風機30への通電も同時に停止する。
【0107】
統合表示手段100の液晶表示基板は、左右IH加熱源6R、6Lの加熱調理時に加熱された被加熱物Nの底部からの反射熱やトッププレート21からの輻射熱で加熱される。
また、使用した高温のてんぷら鍋がそのままトッププレート21の中央部上に置かれている場合もその高温の鍋(200℃近くある)からの熱を受ける。
そこで、この実施の形態1では、統合表示手段100の温度上昇を抑制するため送風機30により左右両側から空冷している。
このように正常な運転環境下で送風機30が駆動された場合には、本体部Aの外部の空気がファンケース37の吸い込み筒37Aの吸い込み口37Bからファンケース37の内部に吸引される。吸引された空気はファンケース37の内部で高速回転している翼部30Fにより排気口(出口)37Cから水平方向で前方に吐き出される。
【0108】
排気口37Cの前方位置にはファンケース37に密着状態に接続される部品ケース34があり、空気導入口をその排気口37Cに密着状態で連通させているから、排気口37Cから部品ケース34の内部は、その内部気圧(静圧)を上昇させるように送風機30から空気が送り込まれる。
その送り込まれた冷却風の一部は、部品ケース34の上面部で排気口37Cに近い側にある第1の排気口34Aから空気が放出される。この放出された空気の温度は、途中で高温の発熱体や発熱性電気部品などを冷却していないから、排気口37Cから出た直後の温度と殆ど同じであり、新鮮な空気のままである。
そして、第1の排気口34Aから冷却ダクトの通風空間42Fに送りこまれた冷却用空気は、噴き出し孔42Cから
図5、
図8の矢印Y3で示すように上方へ噴出し、真上にある右IH加熱コイル6RCの下面に衝突してそのコイルを効果的に冷却する。
なお、右IH加熱コイル6RCの形状が、上記のような空冷用空気を一部で貫通させる空隙を有している場合はその空隙にも第1の排気口34Aからの冷却風が貫通するように流れて冷却する。
【0109】
一方、部品ケース34の内部に送風機30から圧力を持って送り込まれた冷却風は、回路基板41の表面に向けられず、また表面近くを流れる訳ではない。
冷却風は回路基板41の表面(一側面)に突出した構造物となっている放熱フィン43A、43Bの部分を中心に多数の熱交換フィン素子間を通るから、放熱フィン43A,43Bが主に冷却される。
さらに、排気口37Cから押し込まれた冷却風(
図8の矢印Y2)の中で、最も速度が速い部分である本流は
図5に矢印Y4で示すように排気口37Cから前方に一直線状に流れ、部品ケース34において冷却風の流れの最も下流側位置にある第2の排気口34Bから噴出される。
この第2の排気口34Bは第1の排気口34Aよりも数倍大きな開口面積を有しているため、排気口37Cから部品ケース34に押し込まれた冷却風の大部分はこの第2の排気口34Bから噴出するものである。
【0110】
そして、噴出した冷却風は冷却ダクトの空間42G、42Hの中に案内され、その大部分の冷却風は上ケース42Aの上面に多数形成した噴き出し孔42Cから
図8に矢印Y4、Y5で示すように噴き出し、その真上にある右IH加熱コイル6RCの下面に衝突してそのコイルを効果的に冷却する。
冷却ダクトの空間42Hの中に案内された冷却風の一部は、各種電気・電子部品56や誘導加熱調理時の火力を光で表示する、右火力表示ランプ101Rと左火力表示ランプ101Lのそれぞれの発光素子(LED)などが収容された前部部品ケース46の中に導かれる。
具体的には、前記送風機30の冷却風は、前記部品ケース34の第2の排気口34Bから冷却ダクト42の通風空間42Hに入り、ここから通風空間42Hに対応して形成した冷却ダクト42の通風口42Kを通り、その通風口42Kの真上に密着するように位置している下ダクト46Aの通風口46R、46Lに入る。
【0111】
これにより、前部部品ケース46に入った冷却風でまず液晶表示画面(液晶表示部)45R、45Lが下方から冷却されるとともに、その後前部部品ケース46内を流れて最後に切欠き46Cから上部部品室10に排出される過程で順次内蔵部品等を冷却して行くものである。
これにより、液晶表示部45R、45L、統合表示装置100、各種電気・電子部品56や誘導加熱調理時の火力を光で表示する右火力表示ランプ101Rと左火力表示ランプ101L用の発光素子等は順次冷却風で冷却される。
特に、この前部部品ケース46の中に案内された冷却風は、誘導加熱動作時に高温になる左右IH加熱コイル6LC、6RCを冷却した風でないから、その温度は低く、液晶表示部45R、45L及び統合表示装置100などは、冷却風の風量が少ないながらも効果的に温度上昇が抑制されるように冷却され続ける。
冷却ダクト42の多数の噴き出し孔42Cから噴出された冷却風は、
図2、
図3、
図5及び
図8に示すように、上部部品室10を後方に向かって矢印Y5、Y6のように流れる。この冷却風の流れに、切欠き46Cから上部部品室10に排出された冷却風も合流し、本体部Aで外部に開放している後部排気室12に流れることで最終的に後部排気室12から排出される。
【0112】
次に、この右IH加熱源6Rによる加熱中、グリル加熱室9のヒータ22,23に通電した場合について
図6に基づいて説明する。
ヒータ22,23を同時又は個別に通電することでグリル加熱室9内部で各種調理ができるが、この調理に伴ってグリル加熱室9の内部には高温の熱気が発生する。
このため、グリル加熱室9の内部圧力は自然と高まり、後部の排気口9Eから排気ダクト14の中を自然と上昇していく。その過程で駆動用ヒータ駆動回路214によりヒータ121に通電され高温になっている脱臭用触媒121によって排気中の臭い成分が分解される。
一方、排気ダクト14の途中には補助排気用の軸流形送風機106が設けてあるため、排気ダクト14を上昇してくる熱気に対し、その送風機106を運転して矢印Y7で示すように本体部Aの内部の空気を排気ダクト14に取り入れることにより、その新鮮な空気にグリル加熱室9の高温空気は誘引され、温度が下がりながら排気ダクト14の上端部開口14Aから矢印Y8で示すように排気される。
このように排気ダクト14の上端部開口14Aからの排気流により、その開口14Aと隣り合っている後部排気室12の中の空気も誘引されて外部へ排出される。つまり、本体内部のグリル加熱室9と水平仕切板25との間の空隙26の空気や上部部品室10内部の空気も一緒に後部排気室12を経由して排出される。
【0113】
次に、調理容器80を用いた加熱調理を行う場合の動作について説明する。
調理容器80では、パンや、パエリア、フルーツタルトを含む様々な加熱調理を行うことができるが、パン作りを行う場合の動作について説明し、その後、他の加熱調理を行う場合の動作について説明する。なお、右IH加熱源6Rなどのような他の熱源による調理は同時に行われていないものとして説明する。
本実施の形態1に係る調理容器80では、パンの発酵及びパン焼きを行うことができる。
図12はパン生地を発酵させ、そのあと連続してパン焼き動作をする場合のフローチャートである。
最初にパン作りのためのパン生地発酵を行う場合には、調理容器80を用いる。調理容器80の下容器82にパン生地を入れて、上容器81をかぶせることにより、調理容器80内にパン生地を収容する。
そして、加熱調理器2のドア13を手前に引いて引き出して焼き網109の上に調理容器80を載置し、再びドア13を押し込んで閉める。
【0114】
これ以降の動作は
図12に示す通りである。
図12において、電源OFF状態(ステップS1)で主電源スイッチ63をオンすると、電源起動状態となり(ステップS2)、続けて上面操作部61に設けたパン専用キー250を1回押下するとパン・発酵モード(ステップS3)となる。
ここで、パン発酵のための時間設定を行う。時間設定は、調理するパンの量や気温、材料などによって適宜ユーザが定めるが、これらの量や気温、材料の種類等のパラメータを基にした目安となる時間を統合表示装置100やその他部分に表示しても良い。
そして、上面操作部61に備えられたスタートキー(図示せず)を押下すると、所定の温度で加熱が開始され、パン・発酵動作中(ステップS4)となる。
発酵動作が完了した後(発酵時間は通電制御回路200の制御プログラムによって前記スタートキーを押した時点からの経過時間がカウントされており)、当該時間経過したことが統合表示装置100に表示されるか、ブザーや音声ガイド機構によって合成音声で報知される。
【0115】
そこで、次にパン専用キー250を1回押下すると、パン・焼きモード(ステップS5)へ移行し、所定の温度でグリル加熱室9の内部で調理容器80がその上下からヒータ22、23により加熱が開始され、パン・焼き動作中(ステップS6)となる。
焼き動作時間は、通電制御回路200の制御プログラムによって自動的に決定される場合と、使用者が任意に設定する場合の2通りある。自動的に焼き時間を設定することは、パン生地の量や焼き加減を使用者が選択することで通電制御回路200の制御プログラムによって自動的に計算して決定され、あるいは予め記憶された時間テーブルの中の数値から選択される。
所定のパン焼き時間が経過してパン焼き動作(ステップS6)が終了すると、通電制御回路200の制御プログラムによって当該終了が統合表示装置100に表示されるか、ブザーや音声ガイド機構によって合成音声で報知される。そこで使用者はパン焼きを続けない場合は、上面操作部61に備えられた停止キーを押下すると、電源起動状態(ステップS2)へと戻る。
【0116】
次に、パン生地の発酵だけを行う場合について
図13のフローチャートを参照しながら説明する。
パン生地23を入れた調理容器80をグリル加熱室9内に配置した状態で、前記したように電源を起動して、上面操作部61に設けたパン専用キー250を1回押下してパン・発酵モード(ステップS3)をスタートさせる。パンの発酵動作を開始すると(ステップS11)、通電制御回路200はまず(前回の調理が魚焼きなどのような加熱時に強い臭いが発生する食材を使用した調理、例えば秋刀魚などの青魚を焼いた場合には)セルフクリーン処理を実行する(ステップS12)。このセルフクリーン処理においては、ヒータ駆動回路214が動作して触媒121の加熱用ヒータ(図示せず)を所定時間オンし、触媒を高温度になるまで加熱する。
【0117】
また、グリル加熱室9内部のヒータ22、23もヒータ駆動回路212、213の動作により所定の電力で通電される。これらの加熱動作により、前回の調理時に生じたグリル加熱室9内壁面や触媒121に付着した調理カス等を焼ききり、生じた煙は脱煙フィルターである触媒121の浄化作用により浄化されて排出する。
このため、前回の調理時にパンの香ばしい香りを阻害するような魚や肉の加熱調理時から残存している臭い等がパン生地に付着するのを防ぐことができる。
なお、セルフクリーン処理は、触媒121の加熱用ヒータ(図示せず)だけを通電するものであっても良い。また加熱調理の終了時にこのような加熱による浄化処理を手動又は自動的に行った場合には、パン作り時にセルフクリーニング処理は不要にできる。
【0118】
セルフクリーン処理が終了すると、通電制御回路200はパンを発酵させるための温度制御を行う(ステップS13)。パンを発酵させるための温度としては、予め発酵に適した所定値が設定されている。
発酵のための温度制御(ステップS13)においては、通電制御回路200は、前述の温度センサー242から温度制御回路240を経由して送られるグリル加熱室9内の温度測定データを取得する。
本実施の形態1においては、パンは調理容器80に収容されており、調理容器80内の温度はグリル加熱室9内の温度とは異なる。したがって、調理容器80内の温度を、発酵に適した温度に制御する必要がある。
そこで、通電制御回路200は、グリル加熱室9内の検知温度に基づいて、調理容器80内の温度を所定の処理により推測し、調理容器80の閉鎖空間87内部の温度が発酵に適した温度となるよう上部のヒータ22及び下部のヒータ23の加熱制御を行う。
このようにすることで、調理容器80にパン生地を入れて発酵させる場合でも、適切な発酵温度で発酵させることができる。
【0119】
そして、ユーザが予め発酵時間として設定した所定時間が経過すると(ステップS14)、発酵動作を終了する(ステップS15)。
発酵することによりパン生地は膨らむが、パン生地は下容器82に収容されて蓋となる上容器81が被せられているため、パン生地が上部のヒータ22に接触することはない。
また、上容器81はパン生地の膨らみによっても簡単に移動しないような一定の重さがあるので、パン生地の発酵により上容器82がずれてパン生地が調理容器80からはみ出すようなこともない。
なお、下容器82と上容器81は前記したように突起などによって横にずれないように鍔部84、86で位置合わせしてあれば更に確実にパン生地を収容したまま発酵を完了させることができる。
【0120】
前記通電制御回路200が、温度センサー242で検出された温度情報に基づいて調理容器80内の温度を推測して上下のヒータ22,23の加熱温度の制御を行う場合、そのヒータの動作条件は、通電量や通電パターン(連続通電、断続通電等)等を適宜組み合わせて実施すれば良い。
【0121】
次に、本実施の形態1に係る調理容器80を、パン作り以外の加熱調理に使用する場合の例について説明する。
調理容器80の下容器82にパン以外の食材を入れて加熱調理を行うことができる。この場合、通電制御回路200は、温度センサー242が出力する温度に基づいて調理容器80内の温度を推測し、調理容器80内が調理に適した温度となるよう上部のヒータ22と下部のヒータ23の動作条件を制御する。
また、下容器82は、通常は蓋として機能する上容器81を取り外した状態で単独で使用することもできる。
例えば、ピザやトーストなど、厚みの少ない食材を加熱する場合には、下容器82に食材を入れてグリル加熱室9内に収容し、加熱調理を行うことができる。
【0122】
また、上容器81は、ひっくり返して(上下反転させて)開口部を上面に向けて焼き網109の上に載置することにより、浅い焼き皿として使用することができる。
例えば、グラタンやパエリアなど、調理物の容量が大きい場合には、下容器82をそのまま深皿として使用し、容量が小さい場合には、上容器81をひっくり返して使用することにより、適切に加熱調理を行うことができる。
上容器81、下容器82とも、使用者が確実に掴めるような鍔部84,86という取っ手が設けられているので、取り扱いが容易である。
【0123】
以上のように本実施の形態1によれば、下容器82と上容器81とを有する調理容器80を備えたので、パン作りなど調理により食材が膨らむような場合でも、食材の膨らみを上容器81によって押さえ込むことができ、食材は上部のヒータ22に接触することがない。
また、上容器81は、パンの膨らみによっても移動しないような所定の重さで形成されているので、パンが膨らんでも上容器81が簡単に上や横にずれるようなことはなく、パンが調理容器80からはみ出すようなこともない。これにより、加熱調理により膨らむ食材であっても、適切に加熱調理することができる。
さらに、下容器82は上容器81よりも高さ寸法(深さ)が大きくなるように構成されており、調理する食材の量などに応じて、下容器82と上容器81の何れか一方を下にして使用することもできる。
これにより、調理の幅を広げることができる。加えて、上容器81と下容器82とも、それら個々に持ち運ぶことができるような取っ手として機能する鍔部84、86を設けたので、使用、運搬するときも把持が容易であり、取り扱い利便性を向上させることができる。
【0124】
次に、調理容器80を用いた「複合加熱調理」を行う場合の動作について説明する。
調理容器80では、パンや、パエリア、フルーツタルトを含む様々な加熱調理を行うことができることは述べたが、複合加熱調理の一例としてハンバーグステーキを行う場合の動作について説明する。
その説明の前に、従来の誘導加熱調理器でフライパンを使用してハンバーグステーキを作る手順について述べる。なお、ハンバーグの生地を作るまでの工程は省略する。
(1)フライパンにバターとサラダ油を熱して、誘導加熱する(火力は中火)。
(2)ハンバーグにしっかりと焦げ目が付いてくればひっくり返し、ヒータ火力を更に弱めの中火に落として、蓋をして7〜8分焼き上げる。
(3)ハンバーグを取り出して食器に盛り付け、使用していたフライパンの油を切り、赤ワイン、デミグラスソース、ブイヨンを軽く煮詰め、バターと塩、コショウで味付けする。
(4)食器の上のハンバーグに付け合わせのフライドポテトやクレソン等を添え、前記のソースをかけて完成。
【0125】
仮に、上記(2)の段階の「焦げ目を付ける」工程までを誘導加熱で行い、その後グリル加熱室9にハンバーグを移し変えて、グリル加熱室9でハンバーグの中心部まで火を通すことは従来の誘導加熱調理器で可能であったが、使用者が個々の加熱源を制御して行うものであり、二つの加熱源に何ら機械的、物理的な関連性、連携を持たせることはできなかったので、複合調理として満足できるものではなかった。
これに対し、本発明の実施の態様1では以下のような複合調理を行うことができる。
すなわち、調理容器80の中の下容器82にハンバーグを入れ、この下容器82を右IH加熱源6Rの加熱エリアであるトッププレート21の上に置く。
【0126】
ここで右IH加熱源6Rによる加熱を開始する前に、
図14に示すように最初に複合調理をすることを、前記複合調理キー251を押して選択する(ステップS21)。
すると、通電制御回路200は、「複合加熱調理」を行う場合の基本動作について使用者に説明する。実際には統合表示手段100のガイドエリア100GDに説明文が出て来て案内する(同時に音声ガイド機能により、使用者に報知しても良い)(ステップS22)。
また、右IH加熱源6Rを複合加熱調理の場合の熱源と予め通電制御回路200の制御プログラムに設定されているので、表示エリア100R1、100R2にはデフォルト値として火力や時間が表示される(それを使用者が変更することも可能)。
また、ハンバーグ以外の調理メニューも表示されるので、目的の調理メニューを選らんで、誘導加熱を開始する(ステップS23)。
調理容器80(下容器82や上容器81)は、右IH加熱源6Rにとっては不適合な鍋ではないので、前記した「鍋適否検知」動作は本来不要であるが、調理容器80の特に底面が変形して平坦になっていなかった場合、正しい温度検知や制御動作を行えない可能性があるので、念のため鍋検知のステップは実行する。
【0127】
このIH加熱の開始と同時に、通電制御回路200は、「複合調理」の内、後段の電気輻射熱加熱を行うための「予約加熱」の動作の準備を指令する(ステップS24)。
具体的には、グリル加熱室9の内部の電気ヒータ22、23に通電開始して予熱動作を開始する。
本実施の形態1ではグリル加熱室9の上部天井付近のヒータ22は最大消費電力(最大火力)1200W、底部付近のヒータ23は最大消費電力800Wのものが使用されているので、予熱開始時から合計2KW加熱をしても良いが、誘導加熱によってハンバーグの表面に最初に焦げ目を付ける工程に数分以上要することが通電制御回路200には予め分かるので、その焦げ目を付ける時間内に所定温度(例えばグリル加熱室9の内部検知温度が250℃)以上になるようであれば、最大電力通電しない。
また、誘導加熱調理と同時に使用する電力の制限もある(通電制御回路200が調理器全体の電力につき、いわゆるデマンド制御する)ため、実際にはグリル加熱室9はヒータ22,23合計で1.5KW程度の火力で加熱開始される。
【0128】
そして、誘導加熱によってハンバーグの表面に所望の焦げ目を付けることができた場合、ハンバーグの入った下容器82をそのままグリル加熱室9の中に入れる。この場合、上容器81で蓋をすることが望ましい。
グリル加熱室9の中に容器80を入れたあと、グリル加熱調理を開始する(ヒータ22,23用の操作ボタン95を押せば良い)(S25)。
通電制御回路200は、温度センサー242、温度制御回路240からの情報を受けて、グリル加熱室9の内部雰囲気温度が予め通電制御回路200で設定している目標温度になるように、前記ヒータ22、23の通電を制御し、調理開始から所定時間を経過した段階でその旨報知し(統合表示手段100による表示や音声ガイド機構による報知)、調理は終了する(ステップS27)。
【0129】
このように、IH加熱と電気輻射加熱による複合加熱調理を本発明では実施できるが、前記したように最初にIH加熱し、後段で電気輻射熱加熱をする場合は、その後段の輻射加熱調理の立ち上げを迅速に行なえるように、誘導加熱によってハンバーグの表面に最初に焦げ目を付ける工程と並行して、通電制御回路200によりグリル加熱室9の予熱動作も開始しているため、全体の調理時間を短縮することができる。
特に、IH加熱の最大の特徴である「スピーディーな加熱調理」というメリットを損なわないようにできることは、調理の幅を広げることと相俟って利便性を大きく向上させることができる。
なお、グリル加熱室9によってハンバーグの内部までじっくり加熱している間、通常のフライパンなどを使用してハンバーグ用のソースを左右IH加熱源6R、6Lで作ることも可能であり、従来のようにフライパンに出たハンバーグの脂をキッチンペーパーなどに吸わせて取り除くという手間は不要である。
【0130】
次に、調理容器80を用いた「複合加熱調理」で、最初にグリル加熱室9を使用する場合の動作について説明する。
ここで、グリル加熱室9による加熱を開始する前に、前記複合加熱を実行することを、複合調理キー251を押して選択する。
すると、通電制御回路200は、「複合調理」を行う場合の基本動作について使用者に説明する。実際には統合表示手段100のガイドエリア100GDに説明文が出て来る(同時に付属している音声ガイド機能により、使用者に報知しても良い)。
また、グリル加熱室9の加熱源22,23による調理用の表示エリア100Gにはデフォルト値として火力や時間が表示される(それを使用者が変更することも可能)。
【0131】
調理容器80(下容器82や上容器81)をグリル加熱室9の内部にセットし、グリル加熱室9で行える調理メニューもガイドエリア100Gに表示されるので、目的の調理メニューを選らんで、電気輻射加熱を開始する。
この電気輻射加熱の開始と同時に、通電制御回路200は、「複合調理」の内、後段のIH加熱を行うための準備を指令する。具体的にはIH加熱のための各種制御パラメータ(火力や通電時間など)を予め予約状態でセットすることを許可する。
このため、統合表示手段100の各種入力キー141〜145やその他各種火力キー91〜94等を操作して、IH加熱するための誘導加熱源6R、6Lの動作条件を決めることができる。
【0132】
そして、電気輻射加熱が終了した場合、食材の入った下容器82をグリル加熱室9から運びだし、そのままトッププレート21の上に置く(右IH加熱源6Rの所定加熱エリア内が望ましい)。なお、この場合、調理の内容にもよるが、調理容器80内部は高温度になっているので、上容器81で蓋をしたままでも良いが、IH加熱で食材の変化をリアルタイムで確認したい場合は、上容器81を取り除く。
そして、右IH加熱源6Rの上方に調理容器80を置いたあと、IH加熱調理を開始する。
なお、調理容器80(下容器82や上容器81)は、本調理器専用のものであり、右IH加熱源6Rにとっては不適合な材質、大きさ等の鍋ではないので、前記した「鍋適否検知」動作は省略し、迅速に本体のIH加熱に移行することができる(もちろん、念のため鍋適否検知のステップは実行しても良い)。
【0133】
このように、最初に電気輻射加熱し、次に連続してIH加熱源で加熱調理する場合は、その後段のIH加熱調理の立ち上げを迅速に行なえるように、電気輻射加熱中に、通電制御回路200はIH加熱の予約動作も受け付けるため、全体の調理時間を短縮することができる。特にIH加熱の最大の特徴である「スピーディーな加熱調理」というメリットを損なわないようにできることは、調理の幅を広げることと相俟って利便性を大きく向上させることができる。
なお、上容器81を逆さまにしてIH加熱や電気輻射加熱した場合も、基本的に前記した調理と同様に調理ができる。また最初は上容器81を下にして加熱し、途中から上下逆にして上容器82を下において加熱調理しても良い。
【0134】
次に、「複合加熱調理」を行う場合の前記統合表示手段100の表示画面の変遷について説明する。統合表示手段100で使用されている液晶画面は、周知のドットマトリックス型液晶画面である。また高精細の表示を実現でき、文字を表示する場合でも多数の文字を表示することができる。前述したように情報を表示する画面区域を加熱源毎に複数個に分割しており、画面を次の各エリアに割り当ててある。
【0135】
すなわち、
(1)左IH加熱源6Lに対応する表示エリア100L。
(2)中央加熱源7に対応する表示エリア100M。
(3)右IH加熱源6Rに対応する表示エリア100R
(4)グリル加熱室9の調理用表示エリア100G。
(5)異常運転検知時又は不適正操作使用時に使用者に報知する全ての熱源に共通するガイドエリア100GD。
(6)各種調理条件等を直接入力可能な機能を有する、互いに独立した6つの入力キー141、142、143、144、145、146を表示するキー表示エリア100F。
(7)全ての熱源に共通する任意表示エリア100N(
図15〜18では図示省略している)。
【0136】
次に、調理容器80を用いた「複合加熱調理」で、最初にIH加熱調理を行い、その後にグリル加熱室9を使用する場合の動作について説明する。なお、IH加熱調理として右IH加熱源6Rのみを使用できるようになっている前提で説明する。
最初に複合加熱を実行することを、前記複合調理キー251を押して選択する。
すると、通電制御回路200は、「複合調理」を行う場合の基本動作について使用者に説明する。実際には統合表示手段100の表示画面のガイドエリア100GDに
図15のような「先に使用する熱源を選んで下さい」のような説明文が出て来る(同時に付属している音声ガイド機能により、使用者に報知しても良い)。
また、右IH加熱源6Rの表示エリア100R(100R1、100R2)はデフォルト状態の面積から
図15に示すように大きく拡大される。すなわちデフォルト状態では中央加熱源7の表示エリア100Mや左IH加熱源6Lの表示エリア100Lと同等な面積であるが、それが2倍以上に拡大される。これは表示エリア面積を拡大して、より多くの情報を見やすく表示したいためである。
【0137】
表示エリア100Rには
図15に示すように、「右IH複合加熱」という文字が表示され、その下には横方向に、「最初に使う」、「グリル後に使う」、「メニューで選択」という3つの選択肢が表示される。この内、「最初に使う」、「グリル後に使う」の2つの選択肢を表示した部分は、第2の発明でいう「1つの調理を行うために前記2種類の加熱源の中から最初に使用する加熱源を任意に指定できる第1の選択部」に相当する部分である。また「メニューで選択」という選択肢を表示した部分は、第2の発明でいう「特定の調理の名称を表示させ当該調理の実行を選択することで最初に使用する加熱源を自動的に設定できる第2の選択部」に相当する部分である。
「最初に使う」とは調理の最初の熱源にこの右IH加熱源6Rを使用するということを意味し、「グリル後に使う」とは調理の最初の熱源にグリル加熱室9の加熱源22,23を使用し、その後に右IH加熱源6Rを使うということを意味する。つまり、この
図15に示した統合表示手段100の表示画面は、1つの調理を行うために、右IH加熱源6Rと、グリル加熱室9内部の上部・下部にそれぞれ配置された輻射式電気加熱源(ヒータ)22、23の中から、最初に使用する加熱源を選択する入力用画面の1つである。
「メニューで選択」とは、これを選択すると、具体的な調理の名称、例えばパン作りやハンバーグ、焼き魚、煮物等の細かい選択肢が表示され、その何れか1つを選択することによって、自動的に最初に使用する加熱源が設定される機能である。このようなメニューの表示は、通電制御回路200の制御プログラムによって自動的に行われる。
【0138】
表示エリア100Rに表示された「最初に使う」、「グリル後に使う」、「メニューで選択」という3つの選択肢の中から所望のものを選択するには、表示画面の最も手前側に表示された入力キー141、142、143、144、145、146の中から、右向き「→」の表示がある入力キー142や左向き「←」の表示のある入力キー143を押せばよい。表示エリア100Fに表示された入力キー141、142、143、144、145、146の真上をタッチすると、当該入力キー部に対応して内部に設置してある静電容量スイッチが働き、所定の入力信号が前記通電制御回路200に入力される。
入力キー142,143を操作すると、操作する度に、前記「最初に使う」、「グリル後に使う」、「メニューで選択」の部分が一つずつ順番に一段と明るくなる(この輝度変化は入力キー142,143を押せば何回でも巡回する)。そこで例えば「最初に使う」部分が明るくなった状態で、それを選択するには「決定」と文字が表示された入力キー146の部分をタッチすれば良い。
【0139】
また、表示エリア100Rに表示された「グリル後に使う」を選択すると、グリル加熱室9の調理用表示エリア100Gの中に「最初に使う」という文字が同時に表示される。表示エリア100Rに「最初に使う」、「グリル後に使う」、「メニューで選択」の文字が表示されるのと同時に、前記表示エリア100Gには「グリル複合」という文字が表示される。
右IH加熱源6Rの表示エリア100Rには、加熱動作時間や火力などの入力欄も現れるので、それらを入力(例えば設定温度は300℃に設定)し、最後に決定の表示のある入力キー146を押せば良い。なお、「決定」機能は必ず入力キー146が発揮するものではなく、場面によっては別の入力キーに決定機能が付与される。
【0140】
右IH加熱源6Rの加熱条件設定を終えると、電気輻射式加熱の条件設定を行えるように、自動的に表示エリア100Gには、加熱設定温度や加熱(動作連続)時間などの入力部の表示が出てくる。なお、最初に前記「メニューで選択」で所定の調理物を選択した場合は、自動的に設定温度や加熱時間がデフォルト値として表示される場合もある。
また、
図16に示すように、後段で加熱動作を開始することになる加熱源22,23の調理条件などが表示されるエリア100Gには、「グリル」という名称の近傍に、星形(★)マークや「予約」という文字が表示される。
このようなマークRMを予約マークと呼ぶが、これはこの加熱源について何らかの動作が予約されていることを示すものである。
また、
図15、
図16に示しているように、統合表示手段100の前記表示エリアの内、複合調理に関係する加熱源の表示エリア100R1、100R2、100Gの背景色のみを他の加熱源の表示エリア(通常は白)100L、100Mの色とは異ならせている。
つまり、全体が統一された色彩(例えば黄色や青色)で表示し、「複合調理」の場合は、同じ色で表示されている表示エリアのところを明確にし、使用者が調理条件の確認や調理の進捗確認等を行う場合に、混乱しない効果を期待している。
なお、
図15から18においてガイドエリア100GDも加熱源の表示エリア100R1、100R2、100Gの背景色と統一感を持たせるように同じ色調にしても良い。
【0141】
図16で入力キー144にはプラスマークが、入力キー145にはマイナスマークが表示されるが、これはこのキーを押すたびに、設定温度を10度ずつ、又は設定時間を1分ずつなど加算又は減算することを指令できるものである。
グリル加熱室9の加熱源22,23の通電条件等の設定が終わると、スタートボタンが前記入力キー141、142、143、144、145、146の何れかのところに表示されるので、その部分を押すと
図16に示したように右IH加熱が最初に行われる。
図16に示した場面では、既に4分間の加熱調理時間の内、3分経過し、あと1分で右IH加熱が終了することが分かる。なおこの例では調理中の誘導加熱火力は1KWである。
図16において、AMは加熱動作の行われていることを示す加熱動作表示マークで、実際は赤いブロックが点灯したような形で表示される。CMは表示エリア100R1と100R2に跨るように表示される複合調理マークで、矢印形状であり、矢印の向きが加熱源の動作順序に合致している。
つまり、
図16の例では最初に右IH加熱が先であるので、矢印は右IH加熱の表示エリア100Rから下向きになっている。
【0142】
右IH加熱が終了すると、前記複合調理マークは点滅を繰り返し、ガイドエリア100GDに調理容器80(下容器82や上容器81)をグリル加熱室9内部にセットするように促す(同時に音声ガイドでも報知される)。
調理器容器80をグリル加熱室9内部にセットし、ドア13を閉じた上で前記表示エリア100Fのところに「スタート」と表示される入力キー141、142、143、144、145、146の何れかにタッチすると、電気輻射加熱を開始する。
通電制御回路200は、「複合調理」の前段である右IH加熱の加熱開始と同時に、この電気輻射加熱を行うため予約加熱の動作の開始を指令する。
具体的には、電気輻射加熱を行うために予約された各種制御パラメータ(グリル加熱室9の内部雰囲気温度を何度に維持するかということや、通電時間など)に従って動作開始する。そしてその設定温度が所定値よりも高い場合には、直ぐに通電開始しても、その目的の設定温度まで雰囲気温度が上がらないことを考慮し、通電を開始させる。
【0143】
このため、右IH加熱が終了して、調理容器80をグリル加熱室9へ運び込む段階では既にその加熱室内の雰囲気温度は上がっており、IH加熱に比較して迅速に温度上昇させにくいグリル加熱室9の温度上昇を早め、迅速に電気輻射加熱調理を開始できる。つまりIH加熱源との組み合わせによる複合調理であっても、IH加熱の最大の特徴である「スピーディーな加熱調理」というメリットを損なわないようにできる。
なお、
図17は電気輻射加熱の動作が行われている状態を示している。前記した予約マークRMは既に消えていることが分かる。
また、
図18は最初にグリル加熱室9を使用した加熱調理をし、その後右IH加熱に移行する場合の統合表示手段の表示画面の例を示したものである。
図18に示すように、通電制御回路200は、電気輻射加熱を先に行う「複合調理」を行う場合、統合表示手段100の表示画面の表示エリア100Gに「最初の加熱」の表示を出す。
複合調理マークCMは、右IH加熱源6Rの表示エリア100Rにおいて、上向きの矢印の図形で表示される。なお、
図18では既に加熱動作マークAMが示されていることから、加熱動作が開始されているので、ガイドエリア100GMには、「グリル加熱は・・・・使えません」と注意喚起される。
【0144】
また、前記実施の形態1では、上面操作部61に複合調理キー251を設けていたが、これを前記統合表示手段100の表示画面の中に前記入力キー141〜146のように出現させるようにしても良い。
さらに、前記実施の形態1では、複合調理を行う場合に
図14のフローチャートに示すように、誘導加熱を開始する(ステップS23)と同時に、通電制御回路200は「複合調理」の内、後段の電気輻射加熱を行う準備のため「予約加熱」の動作を指令(ステップS24)していたが、誘導加熱を開始してから所定時間以内に、グリル加熱室9の内部の電気ヒータ22、23への予約加熱動作を開始しても良い。
これは前段の誘導加熱動作が所定の時間(例えば5分間)必要であり、一方、後段の予熱に3分間必要であると通電制御回路200が判断した場合、誘導加熱開始から最大2分以内に後段の電気輻射加熱を開始する。
このようにすれば、誘導加熱の終了時には予熱が完了していることになり、調理容器80を速やかに移動させれば、迅速に電気輻射調理に移行できる。
【0145】
なお、以上の実施の形態1では、左IH加熱コイル6LCが誘導加熱中である場合には左冷却室8Lの送風機30のみ運転し、右冷却室8Rの送風機30は運転しない、という前提で説明したが、加熱調理器の使用状態(例えば左右IH加熱コイル6LC、6RCを同時に駆動して直前まで別の調理をしていたとか、あるいは中央加熱源7やグリル加熱室9を使用するとかのケースをいう)や、上部部品収納室10の温度等の環境によっては、左右の冷却室8L、8Rの各送風機30を同時に運転しても良く、また左右それぞれの送風機30の運転速度(送風能力)は常に同じではなく、一方又は両方を調理装置使用状態に応じて適宜変化させるようにしても良い。
【0146】
また、左右の冷却ユニットCUの外形寸法は必ずしも同じでなくともよく、送風機30や回転する翼部30F、モータ300、ファンケース37、部品ケース34の各部寸法も、冷却される対象物(誘導加熱コイル等)の発熱量や大きさ等に応じて適宜変更できるが、左右のIH加熱源6R、6Lの最大火力が同等の場合には、2つの冷却ユニットCUの構成部品の寸法や仕様を可能な限り共通化し、生産コスト低減や組立性向上を図ることが望ましい。
更に、上下仕切板24R,24Lや水平仕切板25は本発明を実施する上では必ずしも必要ではない。例えばグリル加熱室9の外壁面を断熱材で覆うことはもちろん、グリル加熱室9の外壁面との間に十分な間隙が確保できる場合、あるいはその間隙の温度を低く抑えることができる場合(例えば空気を自然対流又は強制対流させる)には、それら仕切板24,25や断熱材は省略しても良い。
さらに、冷却ユニットCU自体の外壁面の内、グリル加熱室9の外壁面に対面する側に遮熱パネルを取り付けたり、断熱性皮膜を形成したりしても良い。こうすれば、グリル加熱室9の外壁面との対面間隔を最終にでき、本体部Aの横幅を同じであるとすれば、その分グリル加熱室9の横幅寸法を大きくすることができる。
【0147】
また、以上の実施の形態1では、統合表示手段100は、左IH加熱コイル6LC、右IH加熱コイル6RC、輻射式中央電気加熱源(ヒータ)7、輻射式電気加熱源(ヒータ)22、23の4つの熱源の動作条件を個別又は複数同時に表示できる上、入力キー141〜入力キーをタッチ操作することで加熱動作の開始や停止を指令し、また通電条件を設定することが出来たが、このような通電制御回路100に対する入力機能を備えず、単なる表示機能だけに限定したものであって良い。