【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、シランまたはハロゲンシランを非熱的プラズマ中、アーク中、または一般的に熱分解において反応させるのに続き、結果生ずる相を湿潤剤中で分散させ、引き続き蒸留し、そしてその蒸留物を水、硝酸および/またはフッ酸からなる混合物中で反応させることによって、シリコンを含む外被を有する中空体が得られることが判明した。
【0008】
従って、本発明の主題は、シリコンを含む外被を有する中空体の製造方法であって、一般式Si
nH
2n+2-mX
m[式中、nは1〜4であり、mは0〜2n+2であり、かつXはハロゲンである]の少なくとも1種のシランを含むガス中で、
(a)非熱的プラズマを周波数fの交流電圧によって励起し、もしくはアークを動作させ、または前記ガス中に電磁エネルギーを、好ましくは赤外領域の電磁エネルギーを導入することで、結果生ずる相が得られ、その相を、
(b)湿潤剤中で分散させ、そして留去し、引き続き
(c)その蒸留物を、少なくとも一回、フッ酸、硝酸、水の少なくとも2種の物質からなる混合物と接触させることで、前記蒸留物と前記混合物との転化反応の消尽後にまたは終結後に、シリコンを含む外被を有する中空体を含有する固体残留物が得られる前記製造方法である。
【0009】
本発明を以下により詳細に説明する。
【0010】
本発明により得られる中空体は、シリコンまたはシリコンの化合物を、好ましくは主としてシリコンをその外被中に有する。つまり、本方法により得られた中空体の質量の少なくとも50%はシリコンである。中空体の外被は閉じているかまたは開いていてよい。
【0011】
好ましくは、使用されるシランの一般式において、n=1および/または2、X=塩素、およびm=0〜6が選択できる。特に好ましくは、モノシラン、TCS、STCまたはこれらのシランの混合物が使用される。極めて特に好ましくは、モノシランが使用される。
【0012】
ステップ(a)においては、高純度のシランを使用することが有利なことがある。つまり、約1ppt〜10ppmのホウ素含量と約1ppt〜10ppmのリン含量を有する。
【0013】
更に、ステップ(a)において、マイクロ波または中赤外波長の領域の電磁エネルギー、同義には3〜50μmを有するマイクロ波または電磁エネルギーを使用することが有利なことがある。
【0014】
非熱的プラズマまたは非熱的平衡におけるガス放電の定義のために、関連する専門文献、例えば「プラズマ技術:基礎と応用−概論(Plasmatechnik: Grundlagen und Anwendungen - Eine Einfuehrung)」;共著、Carl Hanser出版、ミュンヘン/ウィーン;1984、ISBN 3-446-13627-4が指摘される。
【0015】
非熱的プラズマは、少なくとも1種のシランを含有するガス流中でのガス放電によって発生できる。好ましくは、前記プラズマは、基準電圧電極と高電圧電極を有する二極型電極装置における過渡高電圧放電によって発生される。それらの電極は、例えばBaOなどの電子放出助剤で機能化されていても、または前記電子放出助剤を備えていてもよい。
【0016】
パッシェンの法則は、プラズマ放電のための火花電圧が、本質的に、ガスの圧力pと電極間隔dとからの積p・dの関数であることを言い表している。電極間隔は、ガス衝突幅(Gasschlagweite)、略してギャップとも呼ばれる。本方法において有利な平板型電極装置に関して、この火花電圧を定義している積は、有利には約10mm・barである。放電は1〜1000kVの様々な交流電圧および/またはパルス電圧によって励起することができる。電圧の高さは、当業者に公知のように、放電装置のガス衝突幅の他に、プロセスガス自体にも依存する。本方法で有利に使用される電圧は、パルス電圧であってよく、好ましくは約10キロボルトピーク(10kV
p)であり、かつ概ね700ナノ秒のパルス半値時間および約14000s
-1の繰返し率を有してよい。この電圧の時間的推移は、矩形、台形であってもよく、または断片的に個々の時間的推移から構成されていてもよい。これらの形による時間的推移のあらゆる組合せを使用することができる。
【0017】
非熱的プラズマの発生および/または維持のために投入される比エネルギー流束密度は、0.01〜1000W・s・cm
2から選択されてよい。その場合に、前記比エネルギー投入を、少なくとも250kHzの帯域幅を有する瞬時電力の位相に忠実な測定によって実施することが更に有利である。その場合に、瞬時電力の測定は、100cm
2の放電面積を有する同軸反応器中で行うことができる。同軸反応器は、好ましくは管形反応器、特に回転対称の管形反応器である。
【0018】
非熱的プラズマの形成のためのエネルギー投入は、好ましくは、形成されるプラズマにおいて、シラン自体と、例えば窒素および/またはゲルマニウムを含む化合物との反応のためにできる限り均一な条件が生ずるように行われる。その場合に、非熱的プラズマを、放電が電極面全体を覆う電圧で動作させることが特に好ましい。当業者によく知られたグリム放電がその場合でありうる。
【0019】
少なくとも1種のシランを含有するガスは、少なくとも1つのノズルによって取り入れることができる。ガスとしては、少なくとも1種のシランと少なくとも1種の不活性希釈ガスを含む混合物を使用することができる。アルゴン中に10%のモノシランを有するガスの好ましい比流束密度は、概ね40cm・s
-1であり、その値は、1cm
2の電極面積当たりの2400cm
3・min
-1の体積流れから得られる。粒子が反応空間中に留まり、少なくとも部分的にプラズマ中で反応される滞留時間は、10000msまで、好ましくは1〜1000msの範囲である。プラズマ中での反応は、化学的ラジカルの生成をもたらし、そのラジカルから再びシリコンを含有する粒子が形成される。これらの粒子は、ガスの組成に依存して、シリコンの他に、同様にSiN、SiOおよび/またはSiCを有してよい。
【0020】
前記結果生ずる相は、これらの粒子を含み、粉末形である。それらの粒子は孤立して生ずることがあり、特に3〜500nmの、好ましくは50〜300nmの典型的な粒子直径を有する。同様に、前記粒子はクラスターの形で集まることがある。該クラスターは、孤立した結晶性粒子が互いに接して成長し、場合により更に成長することによって形成されうる。隔離された粒子もクラスターも、少なくとも1つの、好ましくは正確に1つの結晶性相の純粋なシリコンを有する。前記クラスターは、直鎖として、ワイヤー状にも、または立体的に分岐して存在することもできる。
【0021】
ステップ(a)の間に、またはステップ(a)の終わりに、前記ガスを100〜500℃の温度に、好ましくは500℃に保持した場合に、前記結果生ずる相は、主としてクラスターへと弱凝集されていない粒子を有する。500℃より高い温度、好ましくは550℃〜1300℃の温度が選択される場合、主としてクラスターへと弱凝集された粒子が得られる。
【0022】
前記クラスターは、20nm〜6μmの、好ましくは20nm〜3μmの、更に好ましくは400nm〜6μmの、特に好ましくは100nm〜3μmの、更に特に好ましくは300nm〜3μmの、500nm〜3μmの、1〜3μmの大きさを有してよい。
【0023】
前記クラスターおよび/または粒子を含む結果生ずる相は、反応空間を出る、および/または反応空間中で堆積されてよい。
【0024】
反応空間とは、本発明の意味においては、反応器内部を表す。この容積内で、プラズマ放電、グリム放電もしくは熱分解、またはアークの燃焼が行われるか、あるいは電磁的エネルギーが投入される。
図1は、そのような反応器(R)を図示および例示するものである。本発明によれば、反応器(R)中にガス(G)が導入され、そこで交流電圧の発生装置(HV)によってプラズマ放電(PI)が発生される。反応空間を出て行く結果生ずる相(rP)が概略的に示されている。前記結果生ずる相が反応空間中に完全に堆積されずまたは留まらないために、前記相は、真空ポンプによって反応器から抜き出すことができる。排気のための装置の使用可能性および適切な圧力またはガス流は、当業者に公知である。
【0025】
本発明による方法のステップ(a)においては、プラズマ反応器、誘導反応器、熱分解炉、またはアーク炉を使用することができ、かつ前記反応器または炉の反応空間は、好ましくはガラス、酸化物セラミック、炭化物セラミックまたはグラファイトから作製されていてよい。
【0026】
特に好ましくは、金属不含のセラミック、金属不含のガラス、または高い純度を有するセラミックもしくはガラスを使用することができる。好ましくは、モジュールとして複数の部分エレメントから構成されているか、または1つの部分から作製されていてよい反応器が使用される。エネルギー投入は、好ましくは電磁的に、例えばプラズマ電極によって行うことができる。
【0027】
ステップ(b)で使用される湿潤剤は、少なくとも1種のアルコール、水、硝酸、または前記物質からなる混合物から選択することができる。少なくとも1種のアルコールおよび水を使用することが有利である。
【0028】
本発明による方法のステップ(b)においては、前記結果生ずる相をまずガス抜きし、引き続き水およびエタノールから選択される湿潤剤中に分散させることが有利なことがある。
【0029】
ガス抜きのためには、圧縮段階を使用することができる。有利には、前記相を高純度の水中で、または高純度の水とエタノールとからなる混合物中で分散させ、引き続き留去することができる。特に有利には、前記相をエタノール中に分散させ、そして引き続き留去することができる。好ましくは、ステップ(b)の終わりに得られる蒸留物1グラム当たりに、10〜50gの水、特に有利には15〜25gの水の量を使用することができる。更に有利には、ステップ(b)の終わりに得られる蒸留物1グラム当たりに、10〜50gのアルコール、特に有利には15〜25gのアルコールを使用することができる。殊に有利には、ステップ(b)の終わりに得られる蒸留物1グラム当たりに、同質量の水およびアルコール、好ましくはエタノールが使用される。
【0030】
本発明による方法のステップ(c)においては、前記蒸留物は、好ましくはまずは水と硝酸とからなる混合物と接触され、引き続きフッ酸と接触されて、転化反応の消尽後に固体残留物が得られ、それは洗浄、濾過、および/または乾燥される。
【0031】
有利には、ステップ(c)は、一回行われ、更に有利には少なくとも一回行われる。ステップ(c)の少なくとも一回の実施の間に、ステップ(b)の終わりに得られる蒸留物1グラム当たりに、有利には3〜10gの、特に有利には3〜6gの硝酸が使用される。硝酸の濃度は、有利には70%である。更に、ステップ(c)の少なくとも一回の実施の間に、ステップ(b)の終わりに得られる蒸留物1グラム当たりに、有利には0〜70gのフッ酸HFが使用され、特に有利には0〜60gのHFが使用され、更に特に有利には0〜45gのHFが使用され、殊に有利には0〜10gのHFが使用される。フッ酸の濃度は、4〜12%から、有利には5〜10%から選択されてよい。
【0032】
前記転化反応はステップ(c)の少なくとも一回の実施の間に何ら助力なくして停止状態となる場合に、そのことを、本発明の範囲においては「消尽」と呼ぶ。ステップ(c)における転化反応の消尽を見分けることは、当業者によく知られている。本発明によれば、1種以上の酸が完全に反応されており、かつ蒸留物が完全に反応されなかったときに、その消尽が起こる。この場合に、本発明によればシリコンを含む外被を有する中空体を含有する固体残留物が得られる。
【0033】
本発明のその他の一実施形態においては、前記転化反応は、ステップ(c)の少なくとも一回の実施の間に、蒸留物が完全に反応される前に中断、遮断、または大幅に減速される。そのことを、本発明の範囲においては「終結」と呼ぶ。この場合にも、本発明によればシリコンを含む外被を有する中空体を含有する固体残留物が得られる。
【0034】
まさに一般的には、ステップ(c)のどちらの実施に際しても蒸留物の完全な反応は避けるべきである。このために必要とされるやり方は当業者に公知である。それというのも、ステップ(c)における転化反応はエッチング反応だからである。もはやエッチング反応が行われず、かつまだ液体が視認できるに過ぎない場合に、固体残留物は存在しない。その際、結果生ずる相を改めて本発明により製造せねばならない。
【0035】
固体残留物の存在は、当業者には容易に確かめることができる。それというのも、該固体残留物は、ステップ(c)の間の転化反応が消尽されたときに、または終結させたときに得られる液体とは視覚的に十分に区別がつくからである。
【0036】
好ましくは、ステップ(c)の実施に際して、蒸留物が完全に反応されないような量の、1種以上の酸との混合物が使用されるべきである。有利には、ステップ(c)の実施の間に蒸留物1グラム当たりに、3〜5gの、特に有利には5gの硝酸を使用することによって、転化反応の消尽が得られる。
【0037】
ステップ(c)の少なくとも一回の実施の間に該混合物を水で希釈する、および/または蒸留物を該混合物から消尽の前に、例えば当業者に公知の方式での濾別によって取り出すことによって、転化反応を終結させることも同様に有利である。
【0038】
更に、ステップ(c)の間に水を、特に有利には蒸留水または精製水を加えることによって転化反応を終結させることを選択することが有利である。
【0039】
本発明による方法においては、前記固体残留物は洗浄、濾過、および/または乾燥でき、または前記転化反応は、有利には水の添加によって終結させて、固体残留物を引き続き洗浄、濾過、および/または乾燥させることが好ましい。特に有利には、前記残留物を、膜を介して、好ましくはセルロース混合エステル膜を介して濾過し、そして洗浄し、かつ20℃〜100℃の温度で、好ましくは60℃で乾燥させ、殊に有利には真空下で乾燥させることができる。
【0040】
転化反応をし続ける時間は、まとめて3.5日までであってよい。転化反応は消尽させることが好ましい。
【0041】
ステップ(c)の少なくとも一回の実施の間に、前記転化反応は終結させることができ、または何ら助力なくして消尽させることができる。更に、ステップ(c)を複数回実施することが有利なことがある。消尽させること、または終結させることは、有利には、ステップ(c)の一回の実施の間に、特に有利にはステップ(c)の一回目の実施および二回目の実施の間で選択される。
【0042】
好ましくは、ステップ(c)の少なくとも一回目の繰り返しに際して、反応が消尽された後に、または反応が終結された後に、反応生成物に再び水および硝酸を添加することができる。
【0043】
特に有利には、反応が消尽された後に、または反応が終結された後に、反応生成物に繰り返し少量のHFを添加することができる。つまり、加えられる硝酸の質量に対してそれぞれ5〜50%の量でHFが繰り返し添加される。
【0044】
同様に本発明の主題は、本発明による方法により得られた、シリコンを含む外被を有する中空体である。
【0045】
該中空体は、規則的または不規則的な形状を有してよい。前記中空体は、例えば球状、卵形、または不規則な形状であってよい。前記中空体は、孤立した物体として存在してもよい。複数の個別の物体が互いに接して成長してクラスターとなってもよい。クラスターは、弱凝集体とも呼ぶことができ、本明細書ではクラスターとは、互いに接して成長された物体、または互いに接して溶融された物体を意味する。ここで複数の物体は、少なくとも2つの物体がそれらの表面に互いに接して溶融されたクラスターを形成しうる。これらのクラスターは、直鎖として、ワイヤーの形状で、または分岐して存在してもよく、かつバッテリーにおいて、例えば亜鉛−炭素バッテリー、アルカリバッテリー、またはリチウムイオンバッテリーにおいて電極材料として使用されている粒子の場合に当業者が認識しているサイズを有してよい。好ましくは、前記サイズは、20nm〜6μmの範囲である。
【0046】
何らかの理論に縛られるものではないが、本発明者は、外被の形成に際して、完全にまたは部分的に取り囲まれた容積とは異なって、いわゆるカーケンドール効果が推進作用となるかもしれないと推測している。それというのも、ステップ(c)の間に、窒素含有化合物は、ケイ素含有化合物より速く、粒子の内側から外側へと拡散し、またはSi原子もしくはSiイオンは、外側から反応される粒子の内側へと拡散するからである。
【0047】
好ましくは、本発明による中空体または本発明により得られる中空体のシリコンを含む外被は、透過型電子顕微鏡法により測定された厚さ5〜40nmを有する。
【0048】
同様に、本発明の主題は、本発明による中空体または本発明により得られた中空体の、ソーラーセルの製造のための、またはエネルギー蓄積セルにおける電極材料の製造のための使用である。