特許第6129311号(P6129311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129311スチールベルト用鋼板およびその製造法並びにスチールベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129311
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】スチールベルト用鋼板およびその製造法並びにスチールベルト
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/46 20060101AFI20170508BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20170508BHJP
   C22C 38/32 20060101ALI20170508BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   C21D9/46 F
   C22C38/00 301U
   C22C38/32
   B21B1/22 K
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-521477(P2015-521477)
(86)(22)【出願日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】JP2014064921
(87)【国際公開番号】WO2014196586
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2016年7月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-119156(P2013-119156)
(32)【優先日】2013年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129470
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 高
(72)【発明者】
【氏名】田頭 聡
(72)【発明者】
【氏名】甲谷 昇一
(72)【発明者】
【氏名】面迫 浩次
【審査官】 佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−007084(JP,A)
【文献】 特開2003−286542(JP,A)
【文献】 特開2010−138488(JP,A)
【文献】 特開2009−024233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/46− 9/48
C22C 38/00−38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.60〜0.80%、Si:1.0%以下、Mn:0.10〜1.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Cr:0.1〜1.0%、V:0〜0.5%、Ti:0〜0.1%、Nb:0〜0.1%、B:0〜0.01%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼のスラブに対して、仕上熱延温度:800〜900℃、仕上熱延後、巻取までの平均冷却速度:20℃/sec以上、巻取温度:450〜650℃の条件で熱間圧延を施した後、熱処理を行わずに、1パス当たり12%未満の圧下率にて総圧延率40%以上の冷間圧延を施し、次いで200〜500℃で0.5〜30h保持する時効処理を施すことにより、金属組織中に占めるパーライト組織の体積率が70%以上、圧延方向の引張強さが1100MPa以上、下記[A]の定義に従う亀裂伝播抵抗が600MPa以上である鋼板を製造する、スチールベルト用鋼板の製造法。
[A]図1に示す試験片の長手方向(圧延方向に一致)に、室温で引張速度0.3mm/minの引張試験を行って、荷重−伸び曲線から最大荷重を求め、その最大荷重を初期断面積(45mm×板厚)で除した値(単位:MPa)を亀裂伝播抵抗とする。
【請求項2】
質量%で、C:0.60%超え0.80%以下、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.002〜0.020%、S:0.001〜0.010%、Cr:0.10〜1.00%、V:0〜0.50%、Ti:0〜0.10%、Nb:0〜0.10%、B:0〜0.010%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼のスラブに対して、仕上熱延温度:800〜900℃、仕上熱延後、巻取までの平均冷却速度:25℃/sec以上、巻取温度:450〜650℃の条件で熱間圧延を施した後、熱処理を行わずに、1パス当たり12%未満の圧下率にて総圧延率40%以上の冷間圧延を施し、次いで200〜500℃で0.5〜30h保持する時効処理を施すことにより、金属組織中に占めるパーライト組織の体積率が90%以上、圧延方向の引張強さが1300MPa以上、下記[A]の定義に従う亀裂伝播抵抗が600MPa以上である鋼板を製造する、スチールベルト用鋼板の製造法。
[A]図1に示す試験片の長手方向(圧延方向に一致)に、室温で引張速度0.3mm/minの引張試験を行って、荷重−伸び曲線から最大荷重を求め、その最大荷重を初期断面積(45mm×板厚)で除した値(単位:MPa)を亀裂伝播抵抗とする。
【請求項3】
前記冷間圧延において1パス当たりの圧下率を10%以下として総圧延率を40%以上とする請求項1または2に記載のスチールベルト用鋼板の製造法。
【請求項4】
前記冷間圧延において各圧延パスでの材料温度を110℃以下に維持する請求項1〜のいずれか1項に記載のスチールベルト用鋼板の製造法。
【請求項5】
時効処理後に圧延率10%以下の調質圧延を行う請求項1〜のいずれか1項に記載のスチールベルト用鋼板の製造法。
【請求項6】
質量%で、C:0.60%超え0.80%以下、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.002〜0.020%、S:0.001〜0.010%、Cr:0.10〜1.00%、V:0〜0.50%、Ti:0〜0.10%、Nb:0〜0.10%、B:0〜0.010%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、パーライト組織が90体積%以上を占め、残部が初析フェライト相である金属組織を有し、圧延方向の引張強さが1300MPa以上、下記[A]の定義に従う亀裂伝播抵抗が600MPa以上であるスチールベルト用鋼板。
[A]図1に示す試験片の長手方向(圧延方向に一致)に、室温で引張速度0.3mm/minの引張試験を行って、荷重−伸び曲線から最大荷重を求め、その最大荷重を初期断面積(45mm×板厚)で除した値(単位:MPa)を亀裂伝播抵抗とする。
【請求項7】
請求項に記載の鋼板を溶接によりエンドレスベルトにしたスチールベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素鋼を素材としたスチールベルト用鋼板およびその製造法、並びに上記鋼板を用いたスチールベルトに関する
【背景技術】
【0002】
スチールベルトには、ステンレス鋼を素材とした「ステンレススチールベルト」と炭素鋼を素材とした「カーボンスチールベルト」がある。本発明は後者のカーボンスチールベルトを対象とするものである。カーボンスチールベルトの代表的な用途としては、クッキーなどを焼成するオーブンのベルトコンベアが挙げられる。以下、本明細書においてスチールベルトとは「カーボンスチールベルト」を意味する。
【0003】
スチールベルトには以下の特性が要求される。
(i)「強度(硬さ) vs. 延性および靱性」バランス
スチールベルトは、コンベアの用途に応じて適度な張力を負荷して使用されるので、負荷される張力下で変形しない程度の強度が必要である。また、使用中に「扱い疵」がつかない程度の表面硬さが要求される。一方、スチールベルト製造時には鋼材に引張変形を加えることにより形状修正が行われる。その際、強度が高すぎると延性(塑性変形能)が不足し形状修正ができない。また、使用中の靱性を確保するためにも適度な延性が必要である。
(ii)疲労強度
ベルトコンベアは使用中に繰り返し曲げ応力が負荷されるので、疲労強度が高いことが必要である。
(iii)溶接性
鋼板をエンドレスのベルト形状にする際、溶接が施される。また、スチールベルトの補修時にも溶接が施されることがある。したがって、良好な溶接性を有することが必要である。
(iv)平坦度
前述の通り、カーボンスチールベルトの代表用途はオーブンなどのコンベアベルトであり、使用時には平坦な形状が求められる。素材コイルから、コンベアベルトを作製する際に形状修正を行い、使用時には張力を加えて平坦度を高める対応が取られるが、素材コイルには優れた平坦度が求められる。
【0004】
このような特性を獲得する手法について、従来、種々の研究がなされ、例えば、中炭素鋼に焼入れ焼戻し処理と調質圧延を付与する方法や、特許文献1あるいは特許文献2に示されるように、本来鋼線の分野で利用されていたパテンティング、ブルーイングといった処理を鋼板に適用する方法などが開発されてきた。従前のカーボンスチールベルトの大半は以下のいずれかの方法により製造されていた。
i)(約0.65%C鋼の熱延または冷延鋼板)→焼入れ・焼戻し
ii)(約0.65%C鋼の熱延または冷延鋼板)→パテンティング→冷延→ブルーイング
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭47−38616号公報
【特許文献2】特開昭57−101615号公報
【特許文献3】特許第3964246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在使用されているスチールベルトは、上記(i)〜(iv)の特性に関し、ほぼ実用的に問題のないレベルの基本性能を有している。また近年、耐久性(寿命)についての改善要求が高まり、本出願人は特許文献3による技術を開示した。
【0007】
スチールベルトの耐久性を劣化させる要因の一つに疲労破壊がある。疲労破壊は、ベルトの端面(エッジ面)に存在する疵や使用中に生じた疵などを起点として形成される微小亀裂が、繰返し応力によって周囲に伝播することによって起こる。亀裂が伝播し易い性質の材料、すなわち「亀裂伝播抵抗」の小さい材料は、繰返し応力を受けることにより微小亀裂がいわゆる疲労亀裂に進展し易い。疲労亀裂がある大きさまで成長すると、繰返し応力下において突然、材料が破断する。これが疲労破壊である。したがって、スチールベルトの耐久性・信頼性を向上させるには、亀裂伝播抵抗を高めることが重要である。
【0008】
亀裂伝播抵抗は、材料の金属組織に大きく影響されると考えられる。単に金属組織を微細化するだけでは亀裂伝播抵抗を大幅にかつ安定して向上させることは困難であり、このことがスチールベルトの耐久性向上技術の進捗を阻んでいる一因になっていた。本出願人は上述の特許文献3により亀裂伝播抵抗の安定的な向上に有効な金属組織を明らかにし、これによりスチールベルト用鋼板の亀裂伝播抵抗を顕著に向上させることができた。また同時に、パテンティング等の手間のかかる恒温変態処理を不要とし、亀裂伝播抵抗の高い鋼板を簡易な工程で製造することを可能にした。
【0009】
特許文献3の技術ではC含有量を0.60%以下に制限することにより亀裂伝播抵抗を向上させている。しかし、スチールベルトに用いる亜共析鋼においては目的に応じて更にC含有量レベルを高めたい場合もある。特に、強度レベルの向上を図るためにはC含有量の増大が有利となる。本発明では、亜共析鋼のより広いC含有量範囲において亀裂伝播抵抗を改善する技術を提供するものである。特に、カーボンスチールベルトにおいて、更なる高強度化と優れた亀裂伝播抵抗の維持を両立させるために有効な技術を開示する。さらに、平坦度を修正するために特段の付加工程を採用することなく、上記のように簡易な工程でスチールベルト用の鋼板を製造する手法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、質量%で、C:0.60〜0.80%、Si:1.0%以下、Mn:0.10〜1.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Cr:0.1〜1.0%、V:0〜0.5%、Ti:0〜0.1%、Nb:0〜0.1%、B:0〜0.01%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼のスラブに対して、仕上熱延温度:800〜900℃、仕上熱延後、巻取までの平均冷却速度:20℃/sec以上、巻取温度:450〜650℃の条件で熱間圧延を施した後、熱処理を行わずに、1パス当たり12%未満好ましくは10%以下の圧下率にて総圧延率40%以上の冷間圧延を施し、次いで200〜500℃で0.5〜30h保持する時効処理を施すスチールベルト用鋼板の製造法が提供される。必要に応じて、前記時効処理後に圧延率10%以下の調質圧延を行う工程を有してもよい。
上記項の成分元素のうち、V、Ti、Nb、Bは任意添加元素である。
【0011】
ここで、圧延1パス当たり圧下率は下記(1)式により表される。
圧下率(%)=(h−h)/h×100 …(1)
:その圧延パス前の板厚(mm)
:その圧延パス後の板厚(mm)
また、総圧延率は下記(2)式により表される。
総圧延率(%)=(H−H)/H×100 …(2)
:圧延開始前(初回パス前)の板厚(mm)
:圧延終了後(最終パス後)の板厚(mm)
【0012】
上記鋼の化学組成は、質量%で、C:0.60%超え0.80%以下、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.002〜0.020%、S:0.001〜0.010%、Cr:0.10〜1.00%、V:0〜0.50%、Ti:0〜0.10%、Nb:0〜0.10%、B:0〜0.010%、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものであることがより好ましい。この場合もV、Ti、Nb、Bは任意添加元素である。上記冷間圧延の各圧延パスにおいて材料温度を110℃以下に維持することが好ましく、100℃以下とすることがより好ましい。
【0013】
上記製造工程により得られる鋼板は、例えばパーライト組織が70体積%以上好ましくは90体積%以上を占め、残部が初析フェライト相である金属組織を有し、圧延方向の引張強さが1100MPa以上好ましくは1300MPa以上、下記[A]の定義に従う亀裂伝播抵抗が600MPa以上である。初析フェライトの量は例えば0.1体積%以上である。すなわちパーライト組織の量を99.9体積%以下の範囲に規定することができる。
[A]図1に示す試験片の長手方向(圧延方向に一致)に、室温で引張速度0.3mm/minの引張試験を行って、荷重−伸び曲線から最大荷重を求め、その最大荷重を初期断面積(45mm×板厚)で除した値(単位:MPa)を亀裂伝播抵抗とする。
【0014】
ここで、図1(a)は、試験片の全体形状を示す平面図である。図1(b)は、(a)の中央部に示される穴の部分の拡大図であり、穴と、その周囲に形成されたノッチおよび疲労予亀裂の形状、寸法を示すものである。試験片中央部の直径4.0mmの穴の板幅方向両側には、幅約2.5mmのノッチが形成され、さらにそのノッチの先端には長さ3.5±0.1mmの疲労予亀裂が形成されている。疲労予亀裂は、穴の両側にノッチを形成した後、予め、試験片の長手方向に繰返し応力を負荷する部分片振り疲労試験を行うことによって形成することができる。
「室温」はJIS Z2241:2011(金属材料引張試験方法)に記載の通り10〜35℃を意味する。
【0015】
また、本発明では上記の鋼板を溶接によりエンドレスベルトにしたスチールベルトが提供される。このスチールベルトはコンベア用スチールベルトに好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、亜共析鋼であるC含有量範囲において鋼板の亀裂伝播抵抗を安定して向上させることができる。特に、引張強さ1300MPa以上の高強度化と優れた亀裂伝播抵抗の付与を両立させることが可能となった。その鋼板の製造においてはパテンティング処理などの煩雑な熱処理を行うことなく、熱間圧延→冷間圧延→時効処理という簡単な工程が採用できる。また、冷間圧延条件のコントロールという簡便な操作により鋼板の平坦度を顕著に向上させることができる。本発明に従う鋼板はスチールベルトに好適である。本発明はスチールベルトの耐久性・信頼性の向上に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は亀裂伝播抵抗測定用試験片の形状を表す平面図、(b)はその中央部に形成した穴、ノッチおよび疲労予亀裂の寸法を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願人が特許文献3に開示したように、スチールベルトに適した「強度(硬さ) vs. 延性および靱性」のバランスを高レベルで発揮する金属組織は、実用的にはパーライト主体の組織が最適であると考えられる。特許文献3の開示および本発明者らのその後の検討により、パーライト主体の組織を有する鋼板における亀裂伝播抵抗の改善に効果的な組織状態について、以下のような知見が得られている。
(1)初析フェライト+パーライトの組織を有する鋼板を加工した場合、加工硬化した初析フェライト相と加工硬化したパーライト組織とでは、パーライト組織の方が亀裂伝播抵抗が大きい。昨今のニーズに適した耐久性の高いスチールベルトを得るには鋼板中のパーライト組織の量を70%体積以上とする必要があり、90体積%以上とすることがより効果的である。
(2)冷延工程においてパーライト組織中にはミクロな割れが導入され、これが、疲労亀裂の起点になりうる。そのミクロな割れはセメンタイト・ラメラに発生する。
(3)パーライト組織中のセメンタイト・ラメラが薄いほど冷延でのミクロな割れは生じにくい。特に、パーライト組織中のセメンタイトの体積率が15%以下であるとき、セメンタイト・ラメラは割れにくくなり、鋼板の亀裂伝播抵抗は大幅に向上する。
(4)スチールベルトとして使用される状態の鋼板において、初析フェライト相の板厚方向の厚さが5μm以下であることが高い亀裂伝播抵抗を得る上で効果的である。
【0019】
発明者らは、これらの知見をベースとして更なる高強度化を実現するために手法について検討を進めてきた。その結果、亜共析鋼においてC含有量の増大とCrの添加が高い亀裂伝播抵抗を維持しながら高強度化を図るうえで極めて有効であることがわかった。特にCrは、C含有量が例えば0.6質量%を超えるような亜共析鋼において亀裂伝播抵抗を顕著に向上させる作用がある。従来、Crは焼入れ性改善や高強度化の目的で添加されることがある。しかし、C含有量が例えば0.6質量%を超える共析組成に近い鋼を用いて、Crを添加することによりスチールベルトの耐久性向上を図った例はない。
【0020】
さらに、初析フェライト+パーライト組織を有する鋼板に冷間圧延を施して加工硬化させるにあたり、平坦度を悪化させる諸要因について詳細に検討を行った。冷延板の形状を決める要因には圧延機側の各種条件設定に関連するものが多い。例えば、圧延ロールのロール径、材質、ロールプロファイル、パススケジュール、潤滑条件などが挙げられる。一方、鋼板の特性に関わる要因としては、材質(硬さなど)のバラツキが考えられるが、工業的に適正な条件にて熱間圧延が行なわれていれば、平坦度を劣化させる原因になるほどコイル内の材質バラツキが生じることはない。
【0021】
これらの点を踏まえて詳細な検討を行った結果、熱延板の材質が均一であっても、冷間圧延時の加工発熱によるコイル温度上昇が原因となって平坦度が劣化する場合があることが明らかになった。それは次のような過程で発生する。
(a)冷間圧延における1パスあたりの圧下率が高ければ加工発熱量も大きくコイル温度が上昇するのであるが、鋼板の温度が110℃を超えると動的ひずみ時効が起るようになり、冷間圧延時の変形抵抗が急激に上昇する。
(b)加工による熱量は、ロールへの熱伝導、圧延油による系外への放出があるため、コイルの幅方向中央部の温度上昇は幅方向端部(エッジ)より大きい。
(d)加工発熱が大きくコイル温度が上昇する場合、幅方向中央部がまず110℃を超えて、動的ひずみ時効を起こし始める。このため、中央部で変形抵抗が高く、エッジで変形抵抗が低い状況が生じる。その結果、幅方向で変形量(伸び)が不均一になり、平坦度が劣化する。
(e)従って、鋼板の幅方向(圧延方向に対して直角方向)の中央部の材料温度が110℃を超えないように冷間圧延1パス当りの圧下率をコントロールすることが、幅方向の変形抵抗の不均一さを抑制するうえで極めて有効である。幅方向中央部の材料温度を100℃以下にコントロールすることがより効果的である。
本発明は、これらの知見に基づき完成したものである。以下、本発明を特定する事項について説明する。
【0022】
〔成分元素〕
Cは、パーライト主体の金属組織を得るために重要な元素である。すなわち、C含有量は、パーライトの生成量および形態に大きな影響を及ぼす。C量が少ないと、熱延鋼板中におけるパーライト組織の体積率が減少し、スチールベルトに使用される状態の鋼板においてパーライト組織の量を十分に確保することが困難になる。また、初析フェライトが増加することにより冷間圧延での加工硬化能が低下するので、目標の強度レベルを得るには冷間圧延の総圧延率が過大となる恐れがある。さらに、初析フェライト相の加工歪が過大となることに加え、延性、靱性に有利なパーライト組織が少ないため、延性、靱性の低下を招く。種々検討の結果、本発明ではC含有量を0.60質量%以上好ましくは0.60質量%を超える量に規定する。
【0023】
一方、C量が増加すると、パーライト組織中のセメンタイト比率が高まる。特に、C含有量が0.80質量%を超えると、パーライト組織中に初析セメンタイト相が形成され、亀裂伝播抵抗の安定的な向上が図れない。また、溶接部の硬さが上昇し、靱性が低下する。
以上のことから、本発明ではC含有量を0.60〜0.80質量%の範囲、より好ましくは0.60質量%を超え0.80質量%以下の範囲に厳密にコントロールする必要がある。
【0024】
Siは、溶鋼の脱酸元素として有効である。0.10質量%以上のSi含有量とすることがより効果的である。ただし、Si含有量が1.00質量%を超えると熱延板、冷延板がともに硬質となり、製造性が低下する。
【0025】
Mnは、パーライト組織中のラメラ間隔を微細化する作用を有する。Mn量が0.10質量%未満では層状のパーライト組織が形成されず、粒状セメンタイトが分散した擬似パーライト組織になりやすい。そうなると優れた「強度 vs. 延性および靱性」バランスが得られない。一方、Mn含有量が1.0質量%を超えると鋼板が硬質化することにより靱性が劣化する。
【0026】
Pは、オーステナイト粒界に偏析して鋼板の靱性を劣化させる。実質的に問題にならない範囲として、本発明では0.020質量%までのP含有を許容する。過度の脱Pは製鋼負荷を増大させるので、P含有量は通常0.002〜0.020質量%の範囲とすればよい。
Sは、鋼中でMnSを形成し亀裂の起点となりやすく、疲労特性の低下を招く。実質的に問題にならない範囲として、本発明では0.010質量%までのS含有を許容する。過度の脱Sは製鋼負荷を増大させるので、S含有量は通常0.001〜0.010質量%の範囲とすればよい。
【0027】
Crは、パーライト組織中のラメラ間隔を微細化するので、強度向上を狙う場合には添加が有利であるとされる。これによって靭性を低下させること無く、強度を向上させることができる。また、パーライト変態特性(TTT曲線におけるノーズの位置)を制御するためにCrが添加されることもある。一方、亜共析鋼の高強度化にはCの増量が有効であるが、C含有量を増大させた場合には亀裂伝播抵抗が低下するという問題があった。そのため、従来、亀裂伝播抵抗を重視する用途ではC含有量レベルは概ね0.6質量%以下に抑えられていた。このようなC含有量レベルにおいて、Cr添加による高強度化を狙っても、圧延方向の引張強さが1300MPa以上という高強度化は困難であった。
【0028】
ところが、発明者らの詳細な研究によれば、C含有量を例えば0.60質量%以上好ましくは0.60質量%を超える含有量に増量し、なおかつCrを0.10質量%以上含有させた場合に、引張強さ1300MPa以上という高強度化を図りながら、亀裂伝播抵抗を顕著に改善できることがわかった。ただし、Cr含有量が過剰になると逆に亀裂伝播抵抗の低下を招く場合がある。種々検討の結果、Cr含有量は1.00質量%以下に制限する必要があり、0.80質量%以下とすることがより好ましい。0.60質量%以下に管理してもよい。
【0029】
V、Ti、Nbは、いずれも旧オーステナイト粒径を微細化する効果を有し、亀裂伝播抵抗の向上に寄与するので、必要に応じてこれらの1種以上を添加することができる。ただし、あまり多量に添加してもその効果は飽和するので、Vは0.50質量%以下、Tiは0.10質量%以下、Nbは0.10質量%以下とすることが望ましい。V:0.05〜0.50質量%、Ti:0.001〜0.10質量%、Nb:0.001〜0.10質量%の1種以上を含有させることがより効果的である。
【0030】
Bは、旧オーステナイト粒界を強化する効果により、亀裂伝播抵抗の向上に寄与するので、必要に応じて添加することができる。ただし、あまり多量に添加してもその効果は飽和するので、Bを添加する場合は0.010質量%以下とすることが望ましい。なお、上記効果を顕著に発揮させるためには0.001質量%以上のB添加量とすることがより効果的である。
【0031】
〔金属組織〕
本発明に従えば、スチールベルトとして使用される状態の鋼板において、金属組織中に占めるパーライト組織の体積率を70%以上、好ましくは90%以上とすることができる。パーライト以外の残部は初析フェライト相である。パーライトを含む金属組織の熱延鋼板を冷間圧延すると、パーライト組織のラメラが冷延方向に配向しながら、ラメラ間隔が微細化する。そして、圧延方向に揃った微細ラメラが形成されることによってパーライト組織は加工硬化する。ラメラが圧延方向に揃った微細なパーライト組織は、強度が高いにもかかわらず靱性低下が小さい。また、さらに時効処理を行うと高強度を保ったままで延性・靱性が一層改善される。
【0032】
パーライト組織の量が少ない場合、昨今のスチールベルトとして求められる強度レベル(圧延方向の引張強さ1100MPa以上好ましくは1300MPa以上)を得るには、加工硬化能の小さい初析フェライト相が多い分、冷延率を高めざるを得ない。加工硬化した初析フェライト相と加工硬化したパーライト組織を比較すると、後者の方が亀裂伝播抵抗が大きいので、パーライトが少ないと、鋼板の亀裂伝播抵抗を向上させるうえで非常に不利である。種々検討の結果、引張強さ1100MPa以上の高強度を維持しながら、亀裂伝播抵抗を顕著に向上させるには、鋼板の金属組織中に占めるパーライト組織の体積率は少なくとも70%以上とすべきである。特に、圧延方向の引張強さが例えば1300MPa以上である強度レベルの高いスチールベルトを安定して得るためには、鋼板の金属組織中に占めるパーライト組織の体積率を90%以上とすることが好ましい。より具体的には、パーライト組織が70〜99.9体積%好ましくは90〜99.9体積%を占め、残部が初析フェライト相である金属組織とすることが望ましい。
【0033】
亀裂伝播抵抗を高めるために、鋼板の金属組織において相対的に強度が低い初析フェライト相の破壊を抑制することが極めて有効である。スチールベルトとして使用される状態の鋼板において、初析フェライト相の板厚方向の厚さが5μm以下であることが効果的である。フェライト相は延性に富んだ相であるが、強冷延後の「強度 vs. 延性および靱性」バランスはパーライト組織に比べ劣っている。熱延鋼板中の初析フェライト相は冷間圧延によって圧延方向に展伸されるが、冷間圧延後の初析フェライト相の板厚方向厚さが5μm以下であるとパーライト組織の延性・靱性が大きく損なわれることはなく、亀裂伝播抵抗の低下が抑制できる。このような初析フェライト相の形態を得るためには、熱間圧延の仕上圧延後の冷却速度を高めて、初析フェライト相の生成量を低く抑えることが有効である。さらに検討を加えた結果、鋼中にCrを0.10質量%以上含有させることによって、初析フェライトの生成量が低減するとともに粒径が微細化し、C含有量を高めて高強度化を図った場合においてもスチールベルトとして十分に使用できる高い亀裂伝播抵抗が得られることが明らかとなった。
【0034】
〔機械的性質〕
昨今のスチールベルトに求められる耐久性・信頼性を確保するためには、それに使用する鋼板の具体的な機械的性質として、室温における圧延方向の引張強さが1100MPa以上好ましくは1300MPa以上であり、かつ下記[A]の定義に従う亀裂伝播抵抗が600MPa以上である特性を挙げることができる。
[A]図1に示す試験片の長手方向(圧延方向に一致)に、室温で引張速度0.3mm/minの引張試験を行って、荷重−伸び曲線から最大荷重を求め、その最大荷重を初期断面積(45mm×板厚)で除した値(単位:MPa)を亀裂伝播抵抗とする。
また、室温における圧延方向の全伸びが5.0%以上であることが好ましい。
【0035】
以上説明した金属組織および機械的性質を有するスチールベルト用鋼板は、例えば以下の方法で製造することができる。
〔熱間圧延〕
熱間圧延では、パーライト変態の過冷度を大きくするために、仕上熱延後の冷却速度を大きくすることが望ましい。具体的には、先に説明した成分組成を有する鋼を用いた場合、仕上熱延温度(熱間圧延最終パス圧延温度)を800〜900℃とし、その後、巻取までの間の平均冷却速度が20℃/sec以上となるように急冷し、450〜650℃で巻き取る方法が好適に採用できる。この方法は、上述したように初析フェライト相の生成量を抑制する効果や粒径を微細化する効果もある。
【0036】
〔冷間圧延〕
本発明では、上述のように「強度 vs. 延性および靱性」バランスと耐久性を高レベルで実現できる金属組織を明らかにした。製造工程についても種々検討したところ、このような金属組織を呈する鋼板は、従来のような恒温変態処理を行わず、熱延鋼板を直接冷間圧延する方法により製造することが可能である。ただし、ベルトコンベア用スチールベルトなど平坦度が要求されるスチールベルトを製造する場合には、平坦度の高い素材鋼板を得ておくことが極めて有利である。平坦度の高い鋼板を得るためには、上記(a)〜(e)で説明した通り、冷間圧延時の温度上昇に伴う動的ひずみ時効を防止することが極めて有効であることがわかった。鋼板の圧延方向に対して直角方向(幅方向)中央部における材料表面温度が110℃を超えると、幅方向中央部で動的ひずみ時効が起こりやすくなり、比較的温度上昇の少ない幅方向端部(エッジ部)近傍と幅方向中央部との特性にバラツキが生じ、それが冷延鋼板の平坦度を劣化させる要因となる。幅方向中央部の材料表面温度が100℃以下となるようにコントロールすることがより効果的である。
【0037】
本発明では、冷間圧延での動的ひずみ時効に起因する特性バラツキを軽減して平坦度の良好な鋼板を得る手法として、熱間圧延後に熱処理を受けていない熱延鋼板に対して、1パス当たりの最大圧下率を12%未満として総圧延率40%以上の冷間圧延を行う。1パス当たりの最大圧下率を10%以下とすることがより好ましい。1パス当たりの圧下率が増大すると鋼板の温度上昇が大きくなりやすく、動的ひずみ時効による特性バラツキを抑制することが難しくなる。この冷間圧延の総圧延率が低いと高強度を得ることが難しく、また平坦度を改善する上でも不利となる。冷間圧延の総圧延率が過剰に高いと延性が低下する。延性を重視する場合は総圧延率を75%以下とすることがより好ましい。
【0038】
具体的には、前記の熱間圧延を行った熱延鋼板を酸洗した後、そのまま冷間圧延ラインにて冷延することができる。また、酸洗ラインなどに付属のインライン・ミルを用いて冷間圧延する場合は、時効処理に供するまでのトータル冷間圧延率が前記の範囲になるようにすればよい。いずれの場合も、熱間圧延と冷間圧延の間で熱処理を施す必要はない。
【0039】
〔時効処理〕
冷間圧延後には、200〜500℃で0.5〜30h保持する時効処理を施す。
【0040】
〔調質圧延〕
調質圧延は必要に応じて施すことができる。時効処理後、調質圧延を施す場合には、10%以下の圧下率で行うことが望ましい。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
表1に示す成分組成の鋼を溶製し、以下の条件で熱間圧延→冷間圧延→時効処理→調質圧延を行い、板厚1.0mmの鋼板を製造した。熱間圧延条件は表2中に記載した。仕上熱延後、巻取までの平均冷却速度は、表2のNo.3は10℃/sec、No.4は60℃/sec、それ以外は30℃/secとした。熱延鋼板の板厚は2.0〜5.0mmの範囲とした。冷間圧延は、熱延鋼板を酸洗したのち、板厚1.0〜1.1mmまで圧延した。冷間圧延1パス当たりの圧下率は最大7%とし、冷間圧延パス数は8〜25回であった。冷間圧延の総圧延率はいずれの例も40%以上であり、表2のNo.12は約80%とした。時効処理は、400℃×15hの条件で行った。調質圧延は、圧延率10%以下で行った。なお、表2のNo.10は冷間圧延にて板厚1.0mmとし、調質圧延を省略した(調質圧延率0%)。
【0042】
【表1】
【0043】
得られた板厚1.0mmの鋼板について、以下の要領で金属組織観察および機械試験を行った。
〔パーライト組織の観察〕
鋼板の圧延方向と板厚方向を含む断面を電解研磨したのちエッチングしたサンプルを用意した。光学顕微鏡を用いて撮影したサンプル表面の画像をもとに画像処理装置にてパーライト組織の体積率を求めた。
【0044】
〔初析フェライト相の観察〕
上記と同様のサンプルについて、走査電子顕微鏡を用いて、圧延方向に伸びた10個の初析フェライト相の板厚方向の最大厚さを測定し、その平均値を「初析フェライト相の板厚方向厚さ」とした。
【0045】
〔硬さ試験〕
鋼板の圧延方向と板厚方向を含む断面におけるビッカース硬さを測定した。コンベアとして使用されるスチールベルト用鋼板としては310HV以上の硬さレベルが要求されるが、380HV以上であることがより好ましい。
【0046】
〔引張試験〕
圧延方向に平行なJIS 5号引張試験片を用い、室温にて引張速度10mm/minで引張試験を行った。コンベアとして使用されるスチールベルト用鋼板コンベア用スチールベルトとしては引張強さ1100MPa以上、全伸び5%以上の特性が望まれるが、特に引張強さは1300MPa以上であることが好ましい。
【0047】
〔亀裂伝播抵抗の測定試験〕
図1に示す試験片を用いて、前記[A]で定義した方法にて亀裂伝播抵抗を求めた。その値が600MPa以上のものを良好と判定した。これらの結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
本発明で規定する成分組成および金属組織を呈するNo.1、2、5、7〜11は、引張強さ1300MPa以上の高強度と、亀裂伝播抵抗600MPa以上の耐久性を有し、スチールベルトとして非常に優れた耐久性を有することが確認できた。これらは、硬さ、全伸びも良好であった。
【0050】
これに対し、No.3は、仕上熱延後の冷却速度が10℃/secと小さかったため、初析フェライト相が多く生成し、引張強さと伸びは良好であったが亀裂伝播抵抗が低かった。No.4は、熱延組織がベイナイト主体の組織となったため、亀裂伝播抵抗が低かった。No.12は、鋼のC含有量が少ないので金属組織中の初析フェライト相の量が多くなり、冷間圧延率を約80%としても引張強さは1050MPaにとどまった。また、冷間圧延率を高くしたことに起因して全伸びが低かった。No.13は、Cr含有量が少ないため、亀裂伝播抵抗が低かった。
【0051】
[実施例2]
表1の鋼Bを用いて、仕上熱延温度:850℃、巻取温度:570℃で熱間圧延を行い、板厚2.5mmの鋼板を製造した。仕上圧延後、巻取までの平均冷却速度は35℃/secとした。この鋼板を次の2通りの冷間圧延方法にて板厚1.0mmまで冷間圧延した。
(A)圧延速度:200m/min、圧延パス数:15パス、各パスの圧下率:最大7%、総圧延率:60%(本発明例)
(B)圧延速度:200m/min、圧延パス数:9パス、各パスの圧下率:最大13%、総圧延率:60%(比較例)
【0052】
上記の(A)、(B)の条件で冷間圧延を行なう際に、各パスごとにコイル表面温度を測定した。測定位置はコイル長手方向の中央部において、幅方向のセンター部とエッジから50mm位置とした。圧延後の板厚1.0mmの冷延鋼板の平坦度を、センター部とエッジ部において測定した。平坦度の評価は、コイル長手方向の2000mm長さを規定長さとし、その間の山高さを測定することによって行った。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
No.14の本発明範囲内である冷延条件(A)の場合、合計15パスの冷間圧延を行なったが、コイル表面温度は90℃に達することはなかった。冷間圧延後の平坦度は良好な値となった。一方、No.15の本発明範囲外である冷延条件(B)の場合、冷間圧延途中におけるコイル表面温度はセンター部で最大122℃に達したが、その時のエッジ部温度は94℃であった。No.15の場合、冷間圧延後の平坦度の値(mm)はNo.14に比べて大きく、平坦度に劣っていることが明らかであった。No.15ではコイル幅方向のセンター部のみが110℃以上になり、変形抵抗が上昇したために、コイルの平坦度が劣化したと考えられる。
図1