(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0010】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0011】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0012】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0013】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0014】
<回路構成>
本実施の形態では、半導体装置の例として、電源回路等の電力制御回路に組み込まれ、例えばスイッチング素子として使用される、所謂、パワーデバイスと呼ばれる電力制御用の半導体装置を取り上げて説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置が備える回路の一例を模式的に示す説明図である。また、
図2は、
図1に示す電界効果トランジスタの素子構造例を示す要部断面図である。
【0015】
パワーデバイスと呼ばれる電力制御用の半導体装置には、例えばダイオード、サイリスタ、あるいは、トランジスタなどの半導体素子を有するものがある。本実施の形態の半導体装置PK1は、
図1に示すように、トランジスタQ1が形成された半導体チップSCを有している。
図1および
図2に示す例では、半導体チップSCに形成されているトランジスタQ1は、電界効果トランジスタ、詳しくは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。パワーデバイスでは、トランジスタは例えばスイッチング素子として利用される。パワーデバイスに用いられるMOSFETは、パワーMOSFETと呼ばれる。
【0016】
上記したMOSFETは、ゲート絶縁膜上に導電性材料からなるゲート電極が配置された構造の電界効果トランジスタを広く表わす用語として記載している。したがって、MOSFETと記載した場合でも、酸化膜以外のゲート絶縁膜を除外するものではない。また、MOSFETと記載した場合でも、例えばポリシリコンなど、金属以外のゲート電極材料を除外するものではない。
【0017】
また、
図1に示すトランジスタQ1は、例えば、
図2に示すようなnチャネル型の電界効果トランジスタにより形成されている。
図2は、
図1に示す電界効果トランジスタの素子構造例を示す要部断面図である。
【0018】
図2に示す例では、例えばn型単結晶シリコンから成る半導体基板WHの主面Wa上に、n−型のエピタキシャル層EPが形成されている。この半導体基板WHおよびエピタキシャル層EPは、MOSFETのドレイン領域(
図1に示すドレインDに相当する領域)を構成する。このドレイン領域は、半導体チップSCの裏面側に形成されたドレイン電極DEと電気的に接続されている。
【0019】
エピタキシャル層EP上には、p+型の半導体領域であるチャネル形成領域CHが形成され、このチャネル形成領域CH上には、n+型の半導体領域であるソース領域(
図1に示すソースSに相当する領域)SRが形成されている。ソース領域SRは、引出配線を介して、半導体チップSCの主面側に形成されたソース電極パッドSEと電気的に接続されている。また、半導体基板WH上に積層された半導体領域には、ソース領域SRの上面からチャネル形成領域CHを貫通し、エピタキシャル層EPの内部に達するトレンチ(開口部、溝)TR1が形成されている。
【0020】
また、トレンチTR1の内壁にはゲート絶縁膜GIが形成されている。また、ゲート絶縁膜GI上には、トレンチTR1を埋め込むように積層されたゲート電極Gが形成されている。ゲート電極Gは、引出配線を介して、半導体チップSCのゲート電極パッドGEと電気的に接続されている。
【0021】
また、トランジスタQ1は、チャネル形成領域CHを挟んで、厚さ方向にドレイン領域とソース領域SRが配置されるので、厚さ方向にチャネルが形成される(以下、縦型チャネル構造と呼ぶ)。この場合、主面Waに沿ってチャネルが形成される電界効果トランジスタと比較して、平面視における、素子の占有面積を低減できる。このため、半導体チップSCの平面サイズを低減できる。
【0022】
また、上記した縦型チャネル構造の場合、平面視において、単位面積当たりのチャネル幅を増加できるので、オン抵抗を低減することができる。なお、
図2は、電界効果トランジスタの素子構造を示す図であって、
図1に示す半導体チップSCでは、例えば
図2に示すような素子構造を有する複数(多数)のトランジスタQ1が、並列接続されている。これにより、例えば1アンペアを越えるような大電流が流れるパワーMOSFETを構成することができる。
【0023】
上記のように、縦型チャネル構造の複数のトランジスタQ1を並列接続してMOSFETを構成する場合、MOSFETの電気的特性(主に耐圧特性、オン抵抗特性、容量特性)は、半導体チップSCの平面サイズに応じて変化する。例えば、半導体チップSCの平面積を大きくすれば、並列接続されたトランジスタQ1のセル数(すなわち素子の数)が増加するので、オン抵抗は低下し、容量は増大する。
【0024】
<半導体装置>
次に、
図1に示す半導体装置PK1のパッケージ構造について説明する。
図3は、
図1に示す半導体装置の上面図である。また、
図4は、
図3に示す半導体装置の下面図である。また、
図5は、
図3に示す封止体を取り除いた状態で、半導体装置の内部構造を示す透視平面図である。また、
図6は、
図5のA−A線に沿った断面図である。また、
図7は、
図5のB−B線に沿った断面図である。
【0025】
上記したMOSFETの電気的特性は、半導体装置PK1(
図1参照)の用途に応じて要求仕様が異なってくる。したがって、異なる要求仕様に対応するために、半導体装置PK1のパッケージ構造は、平面サイズの異なる複数種類の半導体チップSCを搭載することが可能な構造にしておくことが好ましい。一方、半導体装置PK1の端子配列や平面サイズは、半導体チップSCの平面サイズによらず、共通化することが好ましい。例えば、半導体チップSC以外の部品を共通化することにより、製造効率を向上させることができる。また、例えば、端子配列を共通化することにより、半導体装置PK1を実装する実装基板側の端子配列を標準化できる。また、例えば、半導体装置PK1の放熱特性を考慮すると、半導体チップSCの平面サイズが小さくなった場合でも、放熱経路の断面積は、変化させないことが好ましい。
【0026】
そこで、本願発明者は、平面サイズの異なる複数種類の半導体チップSCを搭載することが可能なパッケージについて検討を行った。以下、
図3〜
図7を用いて本実施の形態の半導体装置PK1の構造について説明する。
【0027】
半導体装置PK1は、半導体チップSC(
図5、
図6参照)、半導体チップSCが搭載されるダイパッド(チップ搭載部)DP(
図4〜
図6参照)、および外部端子である複数のリード(端子)LD(
図4〜
図6参照)を有している。また、半導体チップSC、ダイパッドDPの上面DPtおよび複数のリードの上面LDtは、封止体(樹脂体)MRにより、一括して封止されている。
【0028】
本実施の形態では、
図5に示すように、複数のリードLDは、Y方向に沿ってダイパッドDPと並んで配置され、かつ、Y方向と直交するX方向に沿ってそれぞれが並んで配置されている。また、
図5に示すように、平面視において、Y方向に沿って、ソース用のリード(ソースリード、ソース端子)LDs、ダイパッドDP、ドレイン用のリード(ドレインリード、ドレイン端子)LDdが順に並ぶように配列されている。また、
図5に示す例では、ゲート用のリード(ゲートリード、ゲート端子)LDgは、ソース用のリードLDsの隣で、かつドレイン用のリードLDdの反対側に配置されている。
【0029】
図6に示すように、半導体チップSCは、表面(面、第1面)SCtと、表面SCtの反対側に位置する裏面(面、第2面)SCbを有している。また、
図5に示すように半導体チップSCの表面SCt(または
図6に示す裏面SCb)は平面視において四角形を成し、周縁部に側面SCs1、SCs2、SCs3、SCs4からなる四つの側面を有している。
図5に示す例では半導体チップSCは平面視において長方形を成し、長辺がX方向に沿って配置されている。
【0030】
半導体チップSCが有する四つの側面のうち、長辺を構成する側面SCs1はソース用のリードLDs側に配置される。また、もう一つの長辺を構成する側面SCs2は側面SCs1の反対側、すなわちリードLDsの反対側に配置される。また、側面SCs1、SCs2のそれぞれと交差するように、側面SCs3が配置される。また、側面SCs3の反対側に側面SCs4が配置される。また、
図5に示すように半導体チップSCの表面SCtには、
図1に示すソースSと電気的に接続されるソース電極パッドSEと、
図1に示すゲート電極Gと電気的に接続されるゲート電極パッドGEが形成されている。一方、
図6に示すように半導体チップSCの裏面SCbには、
図1に示すドレインDと電気的に接続されるドレイン電極DEが形成されている。
図6に示す例では、半導体チップSCの裏面SCb全体が、ドレイン電極DEになっている。
【0031】
図2に示すように、半導体チップSCを縦型チャネル構造とした場合、半導体チップSCの厚さを薄く(
図6に示す表面SCtと裏面SCbの距離を小さく)することにより、オン抵抗を低減することができる。このため、半導体チップSCの厚さは薄くすることが好ましく、オン抵抗値の仕様上の要求にもよるが、半導体チップSCの厚さは100μm以下が好ましい。例えば、
図6に示す例では半導体チップSCの厚さは、50μm程度であって、ダイパッドDPの厚さよりも薄い。
【0032】
また、
図5および
図6に示すように、半導体装置PK1は、半導体チップSCが搭載されるダイパッド(チップ搭載部)DPを有する。
図6に示すように、ダイパッドDPは、半導体チップSCがダイボンド材BP1を介して搭載された上面(チップ搭載面、第1主面)DPtと、上面DPtとは反対側の下面(実装面、第2主面)DPbを有している。また、
図5に示すようにダイパッドDPの上面DPt(または
図6に示す裏面DPb)は平面視において四角形を成し、周縁部に側面DPs1、DPs2、DPs3、DPs4からなる四つの側面を有している。四つの側面のうち、側面DPs1はソース用のリードLDs側に配置される。また、側面DPs2は側面DPs1の反対側、すなわちリードLDsの反対側に配置される。また、側面DPs1、DPs2のそれぞれと交差するように、側面DPs3が配置される。半導体チップSCの側面SCs3はダイパッドDPの側面DPs3に沿って配置される。また、側面SCs3の反対側に側面SCs4が配置される。
【0033】
また、ダイパッドDPは、ドレイン端子であるリードLDdと一体に形成される。リードLDdは、
図1に示すドレインDと電気的に接続される外部端子である。また、
図6に示すように半導体チップSCの裏面SCbに形成されたドレイン電極DEは、導電性材料から成るダイボンド材BP1を介してダイパッドDPと電気的に接続される。また、
図5に示す例では、半導体チップSCの平面サイズ(表面SCtの面積)は、ダイパッドDPの平面サイズ(上面DPtの面積)よりも小さい。
【0034】
また、
図4および
図6に示すように、ダイパッドDPの下面DPbは、封止体MRの下面MRbにおいて、封止体MRから露出している。詳しくは、本実施の形態では、ダイパッドDPの周縁には段差部が形成されており、ダイパッドDPの周縁の段差部は封止体MRに封止されている。したがって、ダイパッドDPの下面DPbの内の一部が封止体MRから露出している。本実施の形態のようにダイパッドDPの平面サイズを大きくし、かつ、ダイパッドDPの下面DPbを封止体から露出させることにより、半導体チップSCで発生した熱の放熱効率を向上させることができる。
【0035】
また、外部端子であるリードLDdとしてのダイパッドDPの下面DPbを封止体MRから露出させることにより、電流が流れる導通経路の断面積を大きくすることができる。このため、導通経路中のインピーダンス成分を低減することができる。特に、リードLDdが、半導体装置PK1が有する回路の出力ノードに対応する外部端子になっている場合には、リードLDdに接続される導通経路のインピーダンス成分を低減することにより、出力配線の電力損失を直接的に低減できる点で好ましい。
【0036】
また、ダイパッドDPの露出面である下面DPbには、半導体装置PK1を図示しない実装基板に実装する際に、接合材となる半田材の濡れ性を向上させるための金属膜(外装めっき膜)SDが形成されている。半導体装置PK1を図示しない実装基板(マザーボード)に実装する際には、半導体装置PK1の複数のリードLDと実装基板側の図示しない端子を電気的に接続する接合材として、例えば半田材などを用いる。
図5および
図6に示す、例えば半田から成る外装めっき膜である金属膜SDは、接合材としての半田材の濡れ性を向上させる観点から半導体装置PK1の端子の接合面にそれぞれ形成されている。
【0037】
また、ダイパッドDPの周縁部に段差部を形成し、段差部を封止することで、ダイパッドDPが封止体MRから脱落し難くなる。
【0038】
図5および
図6に示すダイボンド材(接着材)BP1は、半導体チップSCをダイパッドDP上に固定し、かつ半導体チップSCとダイパッドDPを電気的に接続するための導電性部材(ダイボンド材)である。本実施の形態では、ダイボンド材BP1は、複数の銀(Ag)粒子(Agフィラ)を含有する所謂、銀(Ag)ペーストと呼ばれる導電性の樹脂接着材である。銀ペーストは、例えばエポキシ系の熱硬化性樹脂の接着力により、半導体チップSCとの接着力を向上させ、かつ、複数の銀粒子を介して導通経路を確保することができる。
【0039】
半導体装置PK1を図示しない実装基板に実装する工程では、図示しない半田材を溶融させてリードLDと図示しない実装基板側の端子を、それぞれ接合するため、リフロー処理と呼ばれる加熱処理が施される。ダイボンド材BP1として、樹脂中に導電性粒子を混合させた導電性接着材を用いる場合、上記リフロー処理の処理温度を任意に設定しても、導電性接合材は溶融しない。このため、半導体チップSCとダイパッドDPの接合部のダイボンド材BP1が、半導体装置PK1の実装時に再溶融することによる不具合を防止できる点で好ましい。
【0040】
また、本実施の形態の場合には、ダイパッドDPの上面DPtを覆うように、例えば銀からなる金属膜(めっき膜、めっき金属膜)CM1を形成し、金属膜CM1上にダイボンド材BP1を配置している。金属膜CM1は、例えば電解めっき法により形成することができる。ダイパッドDPの上面DPtを覆うように金属膜CM1を形成することで、ダイパッドDPの基材である銅(Cu)または銅合金の酸化を抑制できる。また、ダイボンド材BP1として銀ペーストを用いる場合、ダイパッドDPの基材である銅(Cu)または銅合金よりも銀ペーストとの接着性が高い金属膜CM1をダイパッドDPの上面DPtに形成することにより、ダイボンド材BP1とダイパッドDPとの接着強度を向上させることができる。
【0041】
上記したように、異なる要求仕様に対応するためには、平面サイズの異なる複数種類の半導体チップSCを製造可能にしておくことが好ましいが、半導体チップSC以外の部品は共通化することが好ましい。そこで、本実施の形態では、ダイパッドDPの上面DPtの大部分を覆うように金属膜CM1を形成している。こうすることで、
図5に示すよりも平面サイズが大きい半導体チップSCを搭載する場合であっても、ダイボンド材BP1とダイパッドDPとの間に、金属膜CM1を介在させることができる。したがって、
図5に示すように平面サイズが小さい半導体チップSCを搭載する場合には、半導体チップが搭載されている領域よりも、半導体チップSCが搭載されていない領域の方が大きくなる。
【0042】
また、
図5に示すように、ダイパッドDPは、吊りリードTLにより支持されている。この吊りリードTLは、半導体装置PK1の製造工程において、リードフレームの枠部LFcにダイパッドDPを固定するための支持部材である。
【0043】
また、
図5および
図6に示すように、半導体チップSCのソース電極パッドSEとリードLDsは、金属リボン(導電性部材、金属箔、帯状金属部材)MB1を介して電気的に接続されている。金属リボンMB1は、
図1に示すトランジスタQ1のソースSとソース用のリードLDsとを接続する配線に相当する導電性部材であって、例えばアルミニウム(Al)から成る。
【0044】
詳しくは、
図6に示すように、金属リボンMB1の一端は、半導体チップSCのソース電極パッドSEに接合される。一方、金属リボンMB1の上記一端とは反対側の他端は、リードLDsの一部に形成された接続部(リボン接続部)RB1の上面(接続面、リボン接続面)RBtに接合される。
図5に示す例では、半導体チップSCは、平面視において長方形を成し、金属リボンMB1は、半導体チップSCの長辺と交差するように配置されている。
【0045】
金属リボンMB1とソース電極パッドSEの接合部では、ソース電極パッドSEの最表面に露出する金属部材(例えばアルミニウム)と、金属リボンMB1を構成する例えばアルミニウムリボンが、金属結合を成し、接合されている。一方、金属リボンMB1と接続される接続部RB1の上面RBtでは、例えば基材を構成する銅(Cu)が露出しており、銅(Cu)の露出面と金属リボンMB1を構成する例えばアルミニウムリボンが、金属結合を成して接合されている。詳細は後述するが、金属リボンMB1を接合する際に、ボンディングツールから超音波を印加することにより、上記のような接合部を形成することができる。アルミニウムリボンをリードLDに接合する場合、接合面に銀のめっき膜を形成するよりも、基材を構成する銅を露出させた方が接合強度を向上させることができる。このため、リードLDsの接続部RB1の上面RBtには、ダイパッドDPの上面DPtを覆う金属膜CM1のような金属膜は形成されず、基材である銅または銅合金が露出している。
【0046】
また、
図6に示すように、リードLDsの接続部RB1の上面RBtの高さは、ダイパッドDPの上面DPtよりも高い位置に配置されている。詳しくは、リードLDsは、金属リボンMB1が接続される接続部RB1と、封止体MRから露出する下面(実装面)LDbを有する端子部TN1と、を有している。また、リードLDsは、接続部RB1と端子部TN1の間に、接続部RB1の位置が端子部TN1の位置よりも高くなるように設けられたオフセット部(曲げ加工部、傾斜部、段差部)SL1を有している。このため、接続部RB1の下面RBbは、封止体MRに覆われている。言い換えれば、リードLDsの接続部RB1は、封止体MRによって封止されている。このようにリードLD下面の一部を封止体MRで封止することにより、リードLDが封止体MRから脱落し難くなる。この結果、半導体装置PK1の電気的接続信頼性を向上させることができる。
【0047】
また、
図5および
図7に示すように、ダイパッドDPの隣には、半導体チップSCのゲート電極パッドGEと電気的に接続される外部端子であるリードLDgが配置される。リードLDgは、ダイパッドDPと離間して設けられている。また、
図7に示すように、リードLDgは、ワイヤMW1が接合されるボンディング領域である接続部(ワイヤ接続部)RB2、および封止体MRから露出する下面LDbを有する端子部TN1と、を有している。また、リードLDgは、接続部RB2と端子部TN2の間に、接続部RB2の位置が端子部TN2の位置よりも高くなるように設けられたオフセット部(曲げ加工部、傾斜部、段差部)SL2を有している。このため、接続部RB2の下面RBbは、封止体MRに覆われている。
【0048】
また、ゲート電極パッドGEとリードLDgとを接続するワイヤMW1は、例えば金(Au)から成る金属線である。そして、リードLDの接続部RB2の上面(接続面、ワイヤ接続面)RBtには、例えば銀から成る金属膜(めっき膜、めっき金属膜)CM2が形成されている。リードLDの接続部RB2の上面RBtを覆うように金属膜CM2を形成することで、リードLDの基材である銅(Cu)または銅合金の酸化を抑制できる。酸化銅膜は電気や熱の伝導性を阻害する要因になるので、基材の酸化を抑制することにより、リードLDの電気電伝導性や熱伝導性を向上させることができる。また、接続部RB2の上面RBtを覆うように金属膜CM2を形成することで、ワイヤMW1を接合する際のワイヤボンディング性が向上する。このため、本実施の形態では、金製のワイヤMW1が接合される接続部RB2の上面RBtに、選択的に金属膜CM2を形成している。なお、ダイパッドDPの上面DPtに形成する金属膜CM1とリードLDgに形成する金属膜CM2とを、それぞれ同じ金属材料で形成する場合には、これらの金属膜CM1および金属膜CM2を一括して形成することができる。この時、
図6に示すアルミニウムリボンが接続されるリードLDsの接続部RB1の上面RBtには、金属膜が形成されないようにすることが好ましいので、接続部RB1の上面RBtを図示しないマスクで覆った状態で形成することが好ましい。
【0049】
また、
図6に示すように、半導体チップSC、リードLDsの接続部RB1、および金属リボンMB1は、封止体MRにより封止される。また、
図7に示すように、リードLDgの接続部RB2、およびワイヤMW1は、封止体MRにより封止される。
【0050】
封止体MRは、半導体チップSC、金属リボンMB1およびワイヤMW1を封止する樹脂体であって、上面MRt(
図3、
図6参照)および上面MRtの反対側に位置する下面(実装面)MRb(
図4、
図6、
図7参照)を有する。また
図3および
図4に示すように、封止体MRは平面視において四角形を成し、4つの側面MRsを有している。
【0051】
封止体MRは、例えば、主としてエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂により構成されている。また、封止体MRの特性(例えば熱影響による膨張特性)を向上させるため、例えば、シリカ(二酸化珪素;SiO
2)粒子などのフィラー粒子が樹脂材料中に混合されている場合もある。
【0052】
<ダイパッド上のレイアウト詳細>
ここで、
図5に示すダイパッドDP上のレイアウトの詳細について説明する。
図8は、
図5に対する変形例であって、ダイパッドの半導体チップが搭載されていない部分に部材を搭載した状態を示す要部拡大平面図である。また、
図40は、
図5に対する比較例である半導体装置の内部構造を示す透視平面図である。
【0053】
上記したように、平面サイズの異なる複数種類の半導体チップを一種類の平面サイズのダイパッドDPに搭載する場合、
図5に示すように、ダイパッドDPの上面DPtに半導体チップSCが搭載されていない領域が広く残る場合がある。言い換えれば、平面視において、このダイパッドDPの上面DPtの半導体チップSCが搭載されていない領域の面積が、半導体チップの面積よりも大きい場合がある。
図5では、ダイパッドDPは、半導体チップSCが搭載されていない部分DP1と、平面視において部分DP1とリードLDsの間に設けられ、かつ半導体チップSCが搭載された部分DP2とを含んでいる。また、Y方向における半導体チップSCの長さLc1は、Y方向における部分DP1の長さL1よりも短い(小さい)。言い換えれば、また、Y方向において、ダイパッドDPの部分DP1の長さL1は、部分DP2の長さL2よりも長い(大きい)。
図5に示す例では、ダイパッドDPの上面DPtのうち、半導体チップSCが搭載されている領域の面積は半分以下である。また、半導体チップSCのソース電極パッドSEとソース用のリードLDsとの接続距離を近づけて、インピーダンス成分を低減する観点からは、半導体チップSCの搭載位置は、ダイパッドDPの中央部よりも、リードLDs側に近い位置の方が好ましい。したがって、ダイパッドDPの部分DP2よりもリードLDsから遠い側に位置する部分DP1の面積は、一層大きくなる。
【0054】
半導体装置PK1の汎用性の観点からは、端子配列を共通化する方が好ましいので、
図5のように、半導体チップSCが搭載されていない領域が広く残っても問題はない。また、半導体装置PK1の放熱性の観点からは、ダイパッドDPの平面積を大きくすることにより、放熱経路の断面積を大きくすることができるので、半導体チップSCの平面サイズが小さくなった場合でも、ダイパッドDPの平面サイズは大きい方が好ましい。
【0055】
ところが、本願発明者の検討によれば、半導体チップSCの平面サイズを小型化することによりダイパッドDPの半導体チップSCが搭載されていない領域の面積が大きくなると、半導体チップSCとダイパッドDPとの接着面が損傷し易くなることが判った。詳しくは、
図40に示す比較例の半導体装置PKh1のように、ダイパッドDPの部分DP1上に
図5に示す部材PS1を配置しない場合、半導体チップSCとダイパッドDPとを接着固定するダイボンド材BP1にクラックが生じ、そのクラックがダイボンド材BP1内を進展(ダイボンド材BP1がバルク破壊)し、半導体チップSCとダイパッドDPとが剥離することが判った。この現象は、半導体装置PKh1を図示しない実装基板に実装する際に行うリフロー処理時の熱影響により生じる場合がある。また、リフロー処理後にクラックが生じなくても、その後の温度サイクル負荷に起因してクラックが生じる場合もある。また、このダイボンド材BP1内にクラックが進展して剥離している半導体装置PKh1を詳しく調べると、半導体チップSCが搭載されていない部分DP1において、封止体MRとダイパッドDPとの接着界面も、ほぼ全面に亘って剥離していることが判った。
【0056】
上記の知見から、ダイボンド材BP1にクラックが生じる現象は以下のメカニズムで発生すると考えられる。すなわち、半導体装置PKh1に温度サイクル負荷が印加されると、封止体MRとダイパッドDPとの線膨張係数の違いに起因して、封止体MRとダイパッドDPの接着界面に応力が発生する。この応力の大きさは、線膨張係数の差の大きさ、および接着界面の面積に比例して大きくなるので、ダイパッドDPの部分DP1の面積が大きくなる程、大きな応力が発生する。また、半導体チップSCとダイパッドDPとの接着界面では、半導体チップSCとダイパッドDPとの線膨張係数の違いに起因した別の応力が発生する。このため、ダイパッドDPと封止体MRの接着界面で発生した応力は、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に集中し易くなる。したがって、半導体チップSCの平面サイズが小さい場合、すなわち、ダイパッドDP1の面積が大きい場合には、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に大きな応力が生じ、この応力によってダイボンド材BP1にクラックが生じ、剥離に至ったものと考えられる。
【0057】
ダイパッドDPと封止体MRの線膨張係数の違いに起因して発生する応力は、
図6に示すように、ダイパッドDPの下面DPbが、封止体MRから露出している、ダイパッド露出型の半導体装置において、特に大きくなる。ダイパッドDPの下面DPbの全体が封止体MRに封止されている場合、ダイパッドDPを包むように封止体MRが形成されていることで、ダイパッドDPの熱膨張、熱収縮を抑制し易い。しかし、ダイパッドDPの下面DPbが封止体MRから露出している場合、ダイパッドDPが熱影響により膨張または収縮し易いので、応力が大きくなり易い。
【0058】
また、半導体チップSCの厚さが100μm以下程度まで薄くなると、導電性材料から成るダイボンド材BP1の供給量を少なくする必要がある。これは、導電性材料からなるダイボンド材BP1が半導体チップSCの表面SCt側に回り込んで、裏面SCb(
図6参照)側のドレイン電極DE(
図6参照)と表面SCt側のソース電極パッドSEとが短絡することを防ぐためである。この場合、半導体チップSCの周縁部において、ダイボンド材BP1のフィレット形状が形成され難くなるので、半導体チップSCの厚さが100μmよりも厚い場合と比較して、ダイボンド材BP1は損傷し易くなる。
【0059】
そこで、本願発明者は、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に生じる応力を低減する技術について検討し、以下の構成を見出した。すなわち、
図8に示すように、ダイパッドDPの部分DP1の上面DPtには、半導体チップSCの側面SCs1とダイパッドDPの周縁部(リードLDsとは反対側に位置する側面DPs2)との間に、部材PS1が固定されている。部材PS1は、ダイパッドDPの上面DPt上(
図8に示す例では金属膜CM1上)に密着して固定できれば、種々の材料を用いることができる。
図5や
図8に示す例では、例えば部材PS1は、ダイボンド材BP1と同じ材料、すなわち、樹脂中に複数の銀粒子を含有する、銀ペーストと呼ばれる導電性の樹脂接着材を硬化させたものから成る。ダイボンド材BP1と部材PS1を同じ材料で構成することにより、半導体装置PK1(
図5参照)の製造工程において、部材PS1を形成するために追加される工程を低減できる。
【0060】
この銀ペーストから成る部材PS1は、ダイパッドDPの上面DPt上に接着固定されている。このように、半導体チップSCの側面SCs2とダイパッドDPの周縁部(リードLDsとは反対側に位置する側面DPs2)との間に、部材PS1が接着固定されている場合、半導体装置PK1に温度負荷を印加した際には、
図40に示す半導体装置PK1とは応力のかかり方が異なる。すなわち、ダイパッドDPと封止体MR(
図6参照)との線膨張係数の違いに起因して発生した応力の一部が部材PS1に分散される。この結果、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に生じる応力を低減させることができる。そして、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に生じる応力を低減させることにより、半導体チップSCとダイパッドDPとの接着面の損傷を抑制できる。
【0061】
ところで、部材PS1は、半導体チップSCとダイパッドDPとの接着面の損傷を抑制するための部材なので、半導体装置PK1に形成された回路と、電気的に接続されている必要はない。半導体チップSCのように
図5に示す金属リボンMB1やワイヤMW1などの導電性部材を介してリードLDと電気的に接続すると、製造工程が煩雑になる。本実施の形態では、上記したように製造工程を効率化する観点からダイボンド材BP1と同じ銀ペーストを用いて部材PS1を形成しているので、部材PS1の搭載面PSb(
図6参照)はダイパッドDPと電気的に接続されていると考えることもできる。しかし、部材PS1を電気的に機能させる必要はなく、ノイズを低減させる観点からは、部材PS1の電気的な機能を低減させることが好ましい。このため、部材PS1の搭載面PSb以外の部分は、他のリードLDや半導体チップSCとは電気的に接続されていない。言い換えれば、本実施の形態の部材PS1は、ダイパッドDPおよびダイパッドDPと一体に形成されているリードLDd以外のリードLDとは電気的に分離(絶縁)されている。このため、部材PS1をダイパッドDPの部分DP1に搭載しても、製造効率の低下を抑制できる。また、部材PS1は電気回路としては開放端になっているので、
図1を用いて説明したトランジスタQ1に電流が流れる際に部材PS1には電流は流れ難い。したがって、部材PS1を導電性部材で形成した場合でも、トランジスタQ1の電気的特性に及ぼす影響を低減できる。
【0062】
また、
図8に示すように、Y方向と直交するX方向における半導体チップSCの周縁部(側面SCs3)からダイパッドDPの周縁部(側面DPs3)までの平面視における長さ(距離)L3は、Y方向における部分DP1の長さL1よりも短い(小さい)。また、Y方向と直交するX方向における半導体チップSCの周縁部(側面SCs4)からダイパッドDPの周縁部(側面DPs4)までの平面視における距離(符号による図示は省略)は、Y方向における部分DP1の長さL1よりも短い(小さい)。つまり、Y方向における半導体チップSCが搭載されていない領域の長さL1の方がX方向における半導体チップSCが搭載されていない領域の長さL3よりも長い(大きい)。この場合、半導体チップSCの側面SCs3および側面SCs4において生じる応力は側面SCs2において生じる応力と比較して小さいので、考慮しなくて良い。同様に、半導体チップSCの側面SCs1とダイパッドDPの側面DPs1との平面視における距離は、長さL1よりも小さいので、半導体チップSCの側面SCs1おいて生じる応力は考慮しなくて良い。
【0063】
つまり、最も大きい応力が発生する半導体チップSCの側面SCs2とダイパッドDPの側面DPs2の間に、部材PS1を配置することで、半導体チップSCとダイパッドDPとの接着面の損傷を抑制できる。
【0064】
また、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に生じる応力を低減させる程度を大きくする観点からは、
図8に示すY方向における半導体チップSCと部材PS1との離間距離P1を小さくすることが好ましい。
図8に示す例では離間距離P1は、Y方向における半導体チップの長さLc1よりも小さくなっている。また
図5では、半導体チップSCの側面SCs2とダイパッドDPの周縁部(リードLDsとは反対側に位置する側面DPs2)との間に、複数の部材PS1が接着固定されている例を示しているが、複数の部材PS1のうち、最も半導体チップSC1の近くに配置される部材PS1と半導体チップSCの離間距離P1は、Y方向における半導体チップの長さLc1よりも小さくなっている。ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に生じる応力は、Y方向における部材PS1と半導体チップSCとの離間距離P1に比例して大きくなるので、離間距離P1は、Y方向における半導体チップSCの長さLc1よりも小さくすることが好ましい。
【0065】
また、部材PS1により応力を分散させる効果を向上させる観点からは、部材PS1の厚さは、半導体チップSCの厚さよりも大きくすることが好ましい。
図6に示すように、部材PS1の厚さは、半導体チップSCの厚さよりも大きい。部材PS1の厚さを大きくすることにより、封止体MRの熱膨張、熱収縮の影響が、ダイボンド材BP1に及ぶことを抑制できる。なお、
図6では、ダイパッドDPの部分DP1に複数の部材PS1を接着固定する例を示しているが、複数の部材PS1のそれぞれの厚さは、半導体チップSCの厚さよりも大きい。例えば、
図6に示す例では、部材PS1の厚さは、150μm程度である。
【0066】
また、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に生じる応力を確実に分散させる観点からは、
図8に示すように、X方向における部材PS1の長さLps1がX方向における半導体チップSCの長さLc12よりも長いことが好ましい。X方向において、部材PS1を半導体チップSCよりも長く延ばせば、部材PS1の周囲から応力が回り込んでダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に印加されることを抑制できる。本実施の形態では、ダイパッドDPの上面DPt上に金属膜CM1が形成されており、部材PS1は、金属膜CM1の側面DPs3に沿った辺から反対側の辺までを覆うようにX方向に沿って延びている。この場合、平面視において、半導体チップSCの側面SCs2とダイパッドDPの側面DPs2との間に、確実に部材PS1を介在させることができるので、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に生じる応力を大幅に低減できる。
【0067】
ただし、部材PS1と、ダイパッドDPの側面DPs2とのY方向における離間距離が長い場合、部材PS1に応力集中が発生して部材PS1が損傷または剥離してしまう場合が考えられる。部材PS1がダイパッドDPから剥離すると、部材PS1による応力分散効果が得られなくなるため、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に応力集中が生じ易い状態になる。そこで、半導体チップSCに最も近い位置に形成された部材PS1の剥離を防止または抑制する観点からは、
図5に示す半導体装置PK1のように、ダイパッドDPの部分DP1に、複数の部材PS1を搭載することが好ましい。なお、図示は省略するが、
図5に対する変形例としては、例えば
図5に示すY方向の長さ(幅)を大きくする(例えば
図5に示す二個の部材PS1を一体化する程度の幅にする)ことで、部材PS1の損傷を抑制する方法も考えられる。しかし、半導体装置PK1内に搭載する材料の使用量を低減する観点からは、
図5に示すように、Y方向とは直交するX方向に沿って延びる複数の部材PS1を搭載することが好ましい。
【0068】
また、複数の部材PS1間で応力を確実に分散させる観点からは、
図5に示すように、Y方向における複数の部材PS1間の離間距離P2は、Y方向における半導体チップSCの長さLc1よりも小さいことが好ましい。これにより、複数の部材PS1のそれぞれに印加される応力を低減できるので、部材PS1の剥離を抑制できる。
【0069】
また、本実施の形態とは別の態様としては、
図5、
図6および
図8に示す部材PS1を設けず、代わりに、ダイパッドDPに図示しない溝や複数の窪み部(ディンプル)を形成する方法、あるいは、粗面化処理を施す方法が考えられる。しかし、上記したように平面サイズの異なる複数種類の半導体チップSCを搭載することを考慮すると、半導体チップSCが搭載される領域の範囲が異なるので、溝や窪み部を形成する位置や粗面化処理を施す位置を個別に最適化することが難しい。一方、本実施の形態では、共通のダイパッドDPに部材PS1を追加することで、ダイボンド材BP1の損傷を抑制するので、半導体チップSCの平面サイズに応じて、部材PS1の搭載位置を容易に最適化することができる。
【0070】
<半導体装置の製造方法>
次に、
図1〜
図7を用いて説明した半導体装置PK1の製造工程について説明する。半導体装置PK1は、
図9に示すフローに沿って製造される。
図9は、
図1〜
図7を用いて説明した半導体装置の製造工程の概要を示す説明図である。
【0071】
<リードフレーム準備工程>
まず、
図9に示すリードフレーム準備工程では、
図10〜
図12に示すリードフレームLFを準備する。
図10は、
図9に示すリードフレーム準備工程で準備する配線基板の全体構造を示す平面図である。また、
図11は
図10に示すデバイス形成部1個分の拡大平面図である。また、
図12は
図11のA−A線に沿った拡大断面図である。
【0072】
図10に示すように、本工程で準備するリードフレームLFは、外枠LFbの内側に複数(
図10では32個)のデバイス形成部LFaを備えている。複数のデバイス形成部LFaは、それぞれ、
図5に示す半導体装置PK1の1個分に相当する。リードフレームLFは、複数のデバイス形成部LFaが行列状に配置された、所謂、多数個取り基材である。このように、複数のデバイス形成部LFaを備えるリードフレームLFを用いることで、複数の半導体装置PK1(
図3参照)を一括して製造することができるので、製造効率を向上させることができる。リードフレームLFは、例えば銅(Cu)を主体とする金属材料から成り、その厚さは、例えば125μm〜200μm程度である。
【0073】
また、
図11に示すように各デバイス形成部LFaの周囲は枠部LFcに囲まれている。枠部LFcは、
図9に示す個片化工程までの間、デバイス形成部LFa内に形成された各部材を支持する支持部である。
【0074】
また、
図11および
図12に示すように各デバイス形成部LFaには、
図5〜
図7を用いて説明したダイパッドDPおよび複数のリードLDが既に形成されている。ダイパッドDPは吊りリードTLを介してデバイス形成部LFaの周囲に配置された枠部LFcと連結され、枠部LFcに支持されている。また、複数のリードLDは、それぞれ枠部LFcに連結され、枠部LFcに支持されている。
【0075】
図11に示す例では、平面視において四角形を成すデバイス形成部LFaの一辺側から対向辺に向かって、Y方向に沿って、ソース用のリードLDs、ダイパッドDP、ダイパッドDPと一体に形成されたドレイン用のリードLDdの順で配列されている。また、X方向に沿って、リードLDsの隣にはゲート用のリードLDgが配列されている。
【0076】
また、ダイパッドDPの上面DPtにはニッケル(Ni)、あるいは銀(Ag)から成る金属膜CM1が予め形成されている。上記したように、平面サイズの異なる複数種類の半導体チップSC(
図5参照)を搭載可能にするため、金属膜CM1は、ダイパッドDPの上面DPtの大部分を覆うように形成されている。言い換えれば、本実施の形態では、半導体チップを搭載しない部分DP1と半導体チップの搭載予定領域である部分DP2とを跨ぐように金属膜CM1が形成されている。
【0077】
また、複数のリードLDのうち、ゲート用のリードLDgの接続部Rb2の上面RBtには、例えば銀から成る金属膜CM2が予め形成されている。一方、複数のリードLDのうち、ソース用のリードLDsの接続部RB1の上面RBtには、金属膜CM2が形成されず、基材である銅合金が露出している。金属膜CM1、CM2のそれぞれは、例えばめっき法により形成することができる。また、金属膜CM1、CM2を同じ材料で形成する場合には、一括して形成することができる。
【0078】
また、複数のリードLDのうち、リードLDsには、予め曲げ加工が施され、接続部RB1の位置が端子部TN1の位置よりも高くなるように設けられたオフセット部(曲げ加工部、傾斜部、段差部)SL1が形成されている。また、複数のリードのうち、リードLDsの隣に配置されているリードLDgにも、予め曲げ加工が施され、接続部RB2の位置が端子部TN1の位置よりも高くなるように設けられたオフセット部(曲げ加工部、傾斜部、段差部)SL1が形成されている。オフセット部SL1は、例えばプレス加工により形成することができる。
【0079】
本工程で準備するリードフレームLFの上記以外の特徴は、
図5〜
図8を用いて説明した通りなので、重複する説明は省略する。
【0080】
<第1部材配置>
また、
図9に示す第1部材配置工程では、
図13、
図14、および
図15に示すように、ダイパッドDPの部分DP1に部材PS1を配置する。
図13は、
図11に示すダイパッドの一部に、銀ペーストを塗布した状態を示す拡大平面図である。また、
図14は、
図13のA−A線に沿った拡大断面図である。また、
図15は、
図13のB−B線に沿った拡大断面において、銀ペーストを塗布する方式を模式的に示す説明図である。また、
図16は、
図15に対する変形例を示す説明図である。また、
図17は
図16に示す方式により形成された銀ペーストの平面形状を示す拡大平面図である。
【0081】
本工程では、
図13〜
図15に示すように、ダイパッドDP1上(
図13〜
図15では、金属膜CM1上)に密着固定させることができるものであれば、部材PS1の材料には種々の変形例を適用することができる。本実施の形態の例では、部材PS1として、半導体チップを搭載するためのダイボンド材BP1と同じ材料、例えば複数の銀(Ag)粒子を含有する、銀(Ag)ペーストと呼ばれる導電性の樹脂接着材を用いている。銀ペーストは、樹脂成分を硬化させる前には、流動性を有するので、
図15に示すように、ノズルNZ1からダイパッドDPの上面DPtに向かってペースト状態の部材PS1を塗布すると、部材PS1とダイパッドDPの部分DP1(詳しくは、ダイパッドDP上に形成された金属膜CM1)とが密着する。また、
図15に示す例では、銀ペーストから成る部材PS1を吐出しながらノズルNZ1をX方向に沿って移動させる。これにより、
図13および
図15に示すように、X方向に沿って延びる部材PS1を形成することができる。以下、
図15に示すようにペースト材を吐出しながらノズルNZ1を移動させて塗布する方式を線引き方式と記載する。
【0082】
図15に対する変形例としては、
図16に示すように、複数の吐出口を有するノズルNZ2を準備して、複数の吐出口から一括してペースト状の部材PS1を吐出する方式で部材PS1を形成することができる。以下、
図16に示すように、複数の吐出口からペースト材を吐出して塗布する方式を多点塗布方式と記載する。
【0083】
図15に示すような線引き方式で部材PS1を塗布する場合、部材PS1のX方向に沿って部材PS1が分断されることを防止できる。部材PS1は、
図13に示すダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に生じる応力を低減するため、応力を分散させるために設ける部材である。X方向に沿ってのびる部材PS1の一部が途中で分断されている場合、応力が部材PS1の分断箇所を経由して伝達され、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に生じる応力が大きくなってしまう。このため、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に伝達されることを抑制する観点から、X方向に沿って、部材PS1が分断されていないことが好ましい。つまり、ダイパッドDPの部分DP1と部分DP2との境界に生じる応力を低減する観点からは、
図15に示す線引き方式が好ましい。
【0084】
一方、
図16に示す多点塗布方式の場合、ノズルNZ2を移動させる時間を要しないので、塗布時間を短縮することができる。したがって、効率的に製造する観点からは、
図16に示す多点塗布方式が好ましい。ただし、多点塗布方式の場合には、ダイパッドDP上の複数箇所に一括して部材PS1を塗布する。このため、隣り合う部材PS1が確実に接触するように、上記した線引き方式の場合よりも塗布量を多くすることが好ましい。言い換えれば、部材PS1の形成に要する銀ペーストの使用量を低減する観点からは
図15に示す線引き方式が好ましい。
【0085】
なお、
図15に示す線引き方式により部材PS1を形成した場合には、
図13に示すように塗布方向(X方向)と直交するY方向における部材PS1の広がりは一様になる。一方、
図16に示す多点塗布方式により、部材PS1を形成した場合には、
図17に示すように、塗布方向(X方向)と直交するY方向における部材PS1の広がりは、大きい部分と小さい部分とが交互に繰り返された形状になる。
【0086】
ところで、上記したように、本実施の形態では、部材PS1をダイボンド材BP1と同じ材料で形成する。このため、本工程では、
図9に示す半導体チップ搭載工程の準備として、
図13や
図17に示すように、ダイボンド材BP1をダイパッドDPのチップ搭載領域である部分DP2に塗布しておくことができる。
【0087】
ダイボンド材BP1の塗布方法は、
図15を用いて説明した、線引き方式、または
図16を用いて説明した、多点塗布方式を適用できる。ただし、半導体チップの厚さが薄い場合には、ダイボンド材BP1が半導体チップの表面側に回り込んで、短絡することを防止する観点から、ダイボンド材BP1の塗布量を低減できる、線引き方式が好ましい。また、ダイボンド材BP1および部材PS1のそれぞれを、線引き方式により形成する場合、部材PS1およびダイボンド材BP1のそれぞれを、
図15に示すノズルNZ1から供給することができる。つまり、部材PS1の供給装置とダイボンド材BP1の供給装置を兼用化できるので、製造装置を簡略化できる。
【0088】
また、部材PS1とダイボンド材BP1との供給順序は、特に限定されないが、ダイボンド材BP1の乾燥を抑制する観点からは、部材PS1を先に形成することが好ましい。時に、線引き方式で部材PS1を形成する場合、多点塗布方式と比較して塗布時間が長くなる。したがって、
図9に示す半導体チップ搭載工程において、ダイボンド材BP1が乾燥して広がり難くなることを抑制する観点からは、ダイボンド材BP1は半導体チップ搭載工程の直前に塗布することが好ましい。
【0089】
なお、本実施の形態では、製造工程を効率的に行う観点から、半導体チップ搭載工程の前に第1部材配置工程を行う実施態様について説明したが、変形例としては、半導体チップ搭載工程の後で、第1部材配置工程を行うこともできる。
【0090】
<半導体チップ搭載工程>
次に、
図9に示す半導体チップ搭載工程では、
図18および
図19に示すように、リードフレームLFのダイパッドDPに半導体チップSCを搭載する。
図18は、
図13に示すダイパッド上に半導体チップを搭載した状態を示す拡大平面図である。また、
図19は
図18のA−A線に沿った拡大断面図である。
【0091】
本工程では、ドレイン端子であるリードLDdと一体に形成されたダイパッドDPの部分DP2にダイボンド材BP1を介して半導体チップSCを搭載する。
図18に示す例では、半導体チップSCは、半導体チップSCの四つの側面のうちの側面SCs1が、ダイパッドDPの側面DPs1に沿うようにダイパッドDP上に配置される。言い換えれば、半導体チップSCは、側面SCs1が、ソース用のリードLDsの先端(接続部RB1側の端部)と対向するようにダイパッドDP上に配置される。また、
図19に示すように、半導体チップSCはドレイン電極DEが形成された裏面SCbが、ダイパッドDPのチップ搭載面である上面DPtと対向するように、ダイボンド材BP1を介して接着固定される。これにより、半導体チップSCのソース電極パッドSEおよびゲート電極パッドGEは、
図18に示すように露出している。一方、
図19に示すように半導体チップSCのドレイン電極DEは、導電性接着材であるダイボンド材BP1および金属膜CM1を介してダイパッドDPと電気的に接続される。
【0092】
また、本工程では、半導体チップSCとソース端子であるリードLDsの接続部RB1の距離が近づくように、半導体チップSCは、ダイパッドDPの上面DPtにおいてリードLDsに寄せて配置される。このため、半導体チップSCをダイパッドDPの中央部に搭載する場合と比較して、半導体チップSCの側面SCs2からダイパッドDPの部分DP1側の側面DPs2までの距離は大きくなる。
【0093】
また、ダイボンド材BP1は、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含む樹脂材料中に複数の導電性粒子(例えば銀粒子)を混合させた樹脂接着材であって、硬化させる前の性状は、ペースト状を成す。このため上記したように、予めダイパッドDPの部分DP2にペースト状のダイボンド材BP1を塗布した後、半導体チップSCをダイパッドDPの上面DPtに向かって押し付ける。これにより、半導体チップSCとダイパッドDPの上面DPtの間にダイボンド材BP1を広げることができる。
【0094】
次に、本工程では、半導体チップSCをダイパッドDP上にそれぞれ搭載した後、ダイボンド材BP1および部材PS1を一括して硬化させる(キュア工程)。ダイボンド材BP1および部材PS1には、上記したようにそれぞれ熱硬化性樹脂が含まれているので、加熱処理(ベーク処理)を施すことにより、熱硬化性樹脂成分を硬化させる。本工程により、半導体チップSCは、ダイパッドDPの部分DP2に接着固定される。また、部材PS1は、ダイパッドDPの部分DP1に接着固定される。
【0095】
本実施の形態のように、ダイボンド材BP1と部材PS1を同じ材料で構成し、半導体チップ搭載工程の前に部材PS1を配置しておくことで、ダイボンド材BP1と部材PS1とを一括して硬化させることができる。
【0096】
<リボンボンディング工程>
また、
図9に示すリボンボンディング工程では、
図20および
図21に示すように、半導体チップSCのソース電極パッドSEとソース端子であるリードLDsの接続部RB1の上面RBtを、金属リボンMB1を介して電気的に接続する。
図20は、
図18に示す半導体チップとリードとを、金属リボンを介して電気的に接続した状態を示す拡大平面図である。また、
図21および
図22は、
図20のA−A線に沿った断面において、金属リボンを接続する状態を段階的に示す拡大断面図である。
【0097】
本工程では、
図21および
図22に示すように金属帯20を被接合部材に接合するボンディングツール23、接合後の金属帯20を切断する切断刃24、およびボンディングツール23との間の隙間に金属帯20を挟み、金属帯20の繰り出し方向を制御するリボンガイド28を有するリボン接続装置を使用してリボンボンディングを行う。まず、
図21に示すように、半導体チップSCのソース電極パッドSEに金属帯20の一端(
図20に示す金属リボンMB1の一端)を接合する。本工程では、ボンディングツール23とリボンガイド28との間の隙間から繰り出された金属帯20をソース電極パッドSEに押し付けることで、ボンディングツール23に倣って金属帯20の形状が変形する。また、ボンディングツール23に超音波を印加することで、金属帯20とソース電極パッドSEとの接触界面に金属結合を形成し、金属帯20とソース電極パッドSEを電気的に接続することができる。この時、金属帯20の被押し付け面には、圧痕20aが形成される。
【0098】
また、ダイパッドDPのチップ搭載面の反対側に位置する下面DPbは、支持台25のタブ保持面25aと密着し、支持台25に保持されている。このように被接合部であるソース電極パッドSEが、支持台25により支持された状態でボンディングを行うことにより、ボンディングツール23に印加した超音波が、金属帯20の接合面に効率的に伝達される。この結果、金属帯20とソース電極パッドSEの接合強度を向上させることができる。支持台25は、ボンディングツール23に印加された超音波が、接合界面に集中的に伝達されるように、例えば金属製のテーブル(金属テーブル)を用いることが好ましい。
【0099】
次に、ボンディングツール23とリボンガイド28とにより、金属帯20の繰り出し方向が制御された状態で、金属帯20を保持するリール21から金属帯20を順次繰り出しながらボンディングツール23を移動させ、
図22に示すように、リードLDsの接続部RB1の上面RBtに金属帯20の他端を接合する。この時、金属帯20をリードLDsのリボン接続面である上面RBtに押し付けることで、ボンディングツール23に倣って金属帯20がリードLDsの接続部RB1の上面RBtと密着するように変形する。また、ボンディングツール23に超音波を印加することで、金属帯20と接続部RB1の上面RBtとの接触界面に金属結合を形成し、金属帯20と接続部RB1の上面RBtとを電気的に接続することができる。
【0100】
また、接続部RB1の上面RBtの反対側(直下)に位置する下面RBbは、支持台25のリボン接続部保持面25bと密着し、支持台25に保持されている。
図22に示す例では、リードLDsには、オフセット部SL1が設けられているので、支持台25の一部に突出部が設けられ、突出部の上面がリボン接続部保持面25bとなっている。このように被接合部である接続部RB1の下面RBbが、支持台25のリボン接続部保持面25bにより支持された状態でボンディングを行うことにより、ボンディングツール23に印加した超音波が、金属帯20の接合面に効率的に伝達される。この結果、金属帯20と接続部RB1の接合強度を向上させることができる。
【0101】
次に、図示は省略するが、ボンディングツール23およびリボンガイド28をY方向に沿って半導体チップSCから遠ざかる方向にさらに移動させる。そして、
図22に示す切断刃24を金属帯20に向かって押し付けることで、金属帯20を切断する。これにより、半導体チップSCのソース電極パッドSEとソース用のリードLDsの接続部RB1を電気的に接続する、金属リボンMB1(
図20参照)が金属帯20から分離されて形成される。この時、切断刃24による切断位置は、接続部RB1の上面RBt上にすることが好ましい。金属帯20を切断刃24と上面Rbtの間に挟んだ状態で切断する方が、安定的に金属帯20を切断することができる。
【0102】
以上の工程により、
図20に示すように、半導体チップSCのソース電極パッドSEとリードLDsの接続部RB1の上面RBtとは、金属リボンMB1を介して電気的に接続される。
【0103】
<ワイヤボンディング工程>
また、
図9に示すワイヤボンディング工程では、
図23および
図24に示すように、半導体チップSCのゲート電極パッドGEとゲート用のリードLDgの接続部RB2の上面RBtを、ワイヤ(金属ワイヤ)MW1を介して電気的に接続する。
【0104】
図23は、
図20に示す半導体チップと、ゲート用のリードとを、金属ワイヤを介して電気的に接続した状態を示す拡大平面図である。また、
図24は
図23のA−A線に沿った断面において、ワイヤを接続した状態を示す拡大断面図である。
【0105】
図24に示すように、本工程では、ボンディングツール26に超音波を印加することにより、ワイヤMW1の一部を被接合部と金属結合させることにより接合する。例えば、
図24に示す例では、まず、ゲート電極パッドGEの最表面に形成された金属膜(例えばアルミニウム膜、あるいは金膜)に、例えば金(Au)から成るワイヤMW1の一端を接合する。この時、ボンディングツール26に超音波を印加して接合界面に金属結合を形成する。
【0106】
次に、ボンディングツール26からワイヤ27を繰り出しながらボンディングツール26をリードLDgの接続部RB2上に移動させる。リードLDgの接続部RB2の上面RBtには、ワイヤMW1とリードLDgの基材(例えば銅)の接続強度を向上させることができる金属膜CM2が形成されている。リードLDgの基材は例えば銅(Cu)合金から成り、金属膜CM2は例えば銀(Ag)から成る。そして、ボンディングツール26に超音波を印加することにより、ワイヤ27の一部(第2ボンド部)と金属膜CM2の接合界面に金属結合を形成し、これらを電気的に接続する。次に、ワイヤ27を切断すれば、
図23および
図24に示すワイヤMW1が形成される。
【0107】
本工程では、被接合部に超音波を効率的に伝達させ、接合強度を向上させる観点から、支持台25により被接合部を支持した状態でボンディングツール26に超音波を印加することが好ましい。
【0108】
また、
図9に示すようにワイヤボンディング工程は、リボンボンディング工程の後で行うことが好ましい。リボンボンディング工程では、上記したように半導体チップSCとソース電極パッドSEとを接続する際に、超音波を印加して接続する。この時、ワイヤMW1とゲート電極パッドGEとが予め接続されている場合、リボンボンディング時の超音波の影響により、ワイヤMW1、あるいはワイヤMW1の接続部分が損傷する可能性がある。したがって、金属リボンMB1よりも幅が狭いワイヤMW1を接続するワイヤボンディング工程は、リボンボンディング工程の後で行うことが好ましい。
【0109】
<封止工程>
次に、
図9に示す封止工程では、
図23に示す、半導体チップSC、ダイパッドDPの一部、複数のリードLDの一部、金属リボンMB1、およびワイヤMW1を絶縁樹脂で封止し、
図25に示す封止体MRを形成する。
図25は、
図23に示す半導体チップおよび金属リボンを封止する封止体を形成した状態を示す拡大平面図である。また、
図26は
図25のA−A線に沿った断面において、成形金型内にリードフレームが配置された状態を示す拡大断面図である。
【0110】
本工程では、例えば、
図26に示すように上型(第1金型)32と、下型(第2金型)33を備える成形金型31を用いて、所謂トランスファモールド方式により封止体MRを形成する。
【0111】
図26に示す例では、デバイス形成部LFaのダイパッドDPおよびダイパッドDPの隣に配置された複数のリードLDが上型32に形成されたキャビティ34内に位置するようにリードフレームLFを配置し、上型32と下型33でクランプする(挟み込む)。この状態で、軟化(可塑化)させた熱硬化性樹脂(絶縁樹脂)を、成形金型31のキャビティ34に圧入すると、絶縁樹脂はキャビティ34と下型33で形成された空間内に供給され、キャビティ34の形状に倣って成形される。
【0112】
この時、ダイパッドDPの下面DPbおよびリードLDの端子部TN1の下面LDbを下型33と密着させれば、下面DPb、LDbは、封止体MRの下面MRbにおいて封止体MRから露出する。一方、リードLDsの接続部RB1の下面RBbは下型33と密着させない。このため接続部RB1は絶縁樹脂に覆われ、封止体MRにより封止される。また、ダイパッドDPの周縁部には段差部が形成されており、ダイパッドDPの周縁部の下面は、樹脂に封止される。このように、ダイパッドDPおよびリードLDのそれぞれ一部が封止体MRに封止されることで、封止体MRから脱落し難くなる。
【0113】
また、封止体MRは、絶縁性の樹脂を主体として構成されるが、例えば、シリカ(二酸化珪素;SiO
2)粒子などのフィラー粒子を熱硬化性樹脂に混合することで、封止体MRの機能(例えば、反り変形に対する耐性)を向上させることができる。
【0114】
<めっき工程>
次に、
図9に示すめっき工程では、
図27に示すように、リードフレームLFを図示しないめっき溶液に浸し、封止体MRから露出した金属部分の表面に金属膜SDを形成する。
図27は、
図26に示すダイパッドおよびリードの封止体からの露出面に金属膜を形成した状態を示す拡大断面図である。
【0115】
図27に示す例では、例えば、半田溶液にリードフレームLFを浸し、電気めっき方式により半田膜である金属膜SDを形成する。金属膜SDは、完成した半導体装置PK1(
図6参照)を図示しない実装基板に実装する際に、例えば半田から成る接続材の濡れ性を向上させる機能を有している。金属膜SDの種類としては、例えば、錫−鉛めっき、Pbフリーめっきである純錫めっき、錫−ビスマスめっき等が挙げられる。
【0116】
なお、予めリードフレームに導体膜が形成された先付けめっきのリードフレームを用いてもよい。このときの導体膜は、例えば、ニッケル膜と、ニッケル膜上に形成されたパラジウム膜と、パラジウム膜上に形成された金膜により形成される場合が多い。先付けめっきのリードフレームを用いる場合は、本めっき工程は省略される。先付けめっきのリードフレームを用いる場合には、基材である銅(Cu)や銅合金が露出させなくても金属リボンMB1との金属接合性は良好である。したがって、先付けめっきの場合には、金属リボンMB1の接合領域を含むリードフレーム全体に先付けめっき膜を形成する。
【0117】
<個片化工程>
次に、
図9に示す個片化工程では、
図28に示すように、リードフレームLFをデバイス形成部LFa毎に分割する。
図28は、
図27に示すリードフレームを個片化した状態を示す拡大平面図である。
【0118】
本工程では、
図28に示すように、リードLDの一部を切断し、リードLDを枠部LFcから切り離す。また、本工程では、ダイパッドDPを支持する複数の吊りリードTLの一部を切断し、ダイパッドDPを枠部LFcから切り離す。切断方法は特に限定されず、プレス加工、あるいは回転刃を用いた切削加工により切断することができる。
【0119】
以上の各工程により、
図1〜
図7を用いて説明した半導体装置PK1が得られる。その後、外観検査や電気的試験など、必要な検査、試験を行い、出荷、あるいは、図示しない実装基板に実装する。
【0120】
<変形例>
次に、上記実施の形態で説明した実施態様に対する種々の変形例について説明する。
【0121】
まず、上記実施の形態では、部材PS1としてダイボンド材BP1と同一材料である銀ペーストを用いる実施態様について説明した。しかし、半導体チップSCとダイパッドDPとの接着界面の損傷を抑制する観点からは、部材PS1として以下のような材料を用いることができる。
【0122】
例えば、
図29に示す半導体装置PK2は、
図6に示す部材PS1に代えて、ダイパッドDPの部分DP1に搭載される部材PS2として銀粒子などの金属粒子が混合されていない、非導電性の樹脂接着材を用いている。
図29は、
図6に対する変形例を示す断面図である。
【0123】
ダイパッドDPの部分DP1に、非導電性の部材(第1部材)PS2を接着固定する場合、部材PS2とダイパッドDPとは電気的に分離される。また部材PS2は、上記実施の形態で説明した部材PS1と同様に、ダイパッドDP以外の端子(リードLD)とは電気的に接続されていない。つまり、部材PS2は、半導体装置PK2が有する他の部材とは電気的に分離されている。したがって、半導体装置PK2が有する回路に対するノイズ成分を低減することができる。
【0124】
また、半導体装置PK2の製造工程においては、上記した第1部材配置工程において、ペースト状の部材PS2を供給するノズルと、ペースト状のダイボンド材BP1を供給するノズルとを兼用化できず、それぞれ別のノズルから供給する必要がある点で相違する。ただし、半導体チップ搭載工程で説明したキュア工程については兼用化できる。すなわち、ダイボンド材BP1および部材PS2には、それぞれ熱硬化性樹脂が含まれているので、加熱処理(ベーク処理)を施すことにより、ダイボンド材BP1および部材PS2を一括して硬化させることができる。
【0125】
図29に示す半導体装置PK2は、上記した相違点を除き、上記実施の形態で説明した半導体装置PK1と同様である。例えば、上記した第1部材配置工程では、ペースト状の部材PS2を、線引き方式または多点塗布方式のうちのどちらかを適用して配置することができる。したがって、上記実施の形態で説明した部材PS1を部材PS2に置き換えて適用できる説明、および図示は省略する。
【0126】
また例えば、
図30および
図31に示す半導体装置PK3は、
図5および
図6に示す部材PS1に代えて、ダイパッドDPの部分DP1には、非導電性の樹脂接着材である部材PS2を介して、部材PS2とは異なる材料で構成された、部材PS3(
図30において、ドットパターンを付して示している部材)が固定されている。
図30は
図5に対する変形例を示す透視平面図である。また、
図31は、
図30のA−A線に沿った断面図である。
【0127】
半導体装置PK3のように、接着材である部材PS2を介して別の部材PS3を接着固定する場合、部材PS2と部材PS3を一体物と見做した場合の厚さを容易に厚くすることができる。例えば
図31に示す例では、部材PS3の上面PS3tからダイパッドDPの上面DPtまでの距離は、半導体チップSCの表面SCtからダイパッドDPまでの距離よりも遠くなっている。部材PS2と部材PS3を一体物と見做した場合の厚さを厚くすることで、封止体MRの熱膨張量(または熱収縮量)を抑制する、アンカー効果が大きくなる。したがって、封止体MRとダイパッドDPとの線膨張係数の違いに起因して生じるダイボンド材BP1の損傷を低減できる。
【0128】
また、部材PS2は、上記したように非導電性の樹脂接着材なので、部材PS3として金属材料を選択した場合でも、ダイパッドDPと電気的に分離することができる。したがって、半導体装置PK3が有する回路に対するノイズ成分を低減することができる。
【0129】
また、部材PS3と封止体MRとの密着界面の剥離を抑制する観点からは、部材PS3は、封止体MRと線膨張係数が近い材料、例えばシリコン(Si)などから構成されていることが好ましい。
【0130】
また、半導体装置PK3の製造工程においては、第1部材配置工程の後、部材PS3を部材PS2上に搭載する工程、および部材PS2を硬化させることで、部材PS3をダイパッドDP上に接着固定する工程が追加される。ただし、部材PS2を硬化させる工程(キュア工程)は、ダイボンド材BP1を硬化させる際に一括して行うことができる。
【0131】
図30および
図31に示す半導体装置PK3は、上記した相違点を除き、上記実施の形態で説明した半導体装置PK1と同様である。したがって、上記実施の形態と重複する説明、および図示は省略する。
【0132】
また例えば、
図32および
図33に示す半導体装置PK4および
図34に示す半導体装置PK5は、
図5および
図6に示す部材PS1に代えて、ダイパッドDPの部分DP1には、複数のスタッドバンプSTB1(
図34ではスタッドバンプSTB2)がX方向に沿って並ぶように接合されている。
図32は
図5に対する他の変形例を示す透視平面図である。また、
図33は、
図32のA−A線に沿った断面図である。また、
図34は、
図33に対する変形例を示す断面図である。
【0133】
図32および
図33に示すスタッドバンプSTB1は、上記ワイヤボンディング工程で説明した、ボンディングツール26(
図24参照)を用いて形成することができる。すなわち、ボンディングツール26の先端部分において、ワイヤ27の先端を加熱してボール部(図示は省略)を形成する。そして該ボール部を
図32および
図33に示すダイパッドDPの部分DP1に接合する。接合方式は、上記ワイヤボンディング工程と同様に、ボンディングツール26に超音波を印加して接合界面に金属結合を形成する方式を適用することができる。そして、ボール部を接合した後、ワイヤ27を切断すれば、
図32および
図33に示すスタッドバンプSTB1が形成される。また、
図34に示すスタッドバンプSTB2は、
図33に示すスタッドバンプSTB1上に、さらにスタッドバンプSTB1を形成して得られる。このように複数のスタッドバンプSTB1を積層すれば、
図5を用いて説明した部材PS1に対応する部材であるスタッドバンプSTB2(
図34参照)の高さを高くすることができる。その結果、スタッドバンプが1段(スタッドバンプSTB1)の時よりもスタッドバンプと封止体MRとの接触面積が増えるので、アンカー効果が大きくなる。したがって、封止体MRとダイパッドDPとの線膨張係数の違いに起因して生じるダイボンド材BP1の損傷を低減できる。
【0134】
本変形例のスタッドバンプSTB1、STB2は、上記したようにワイヤボンディング工程で使用するボンディングツール26(
図24参照)を用いて形成できるので、
図9に示す第1部材配置工程は、ワイヤボンディング工程の直前、あるいはワイヤボンディングの直後に行うことが好ましい。
【0135】
図32および
図33に示す半導体装置PK4および
図34に示す半導体装置PK5は、上記した相違点を除き、上記実施の形態で説明した半導体装置PK1と同様である。したがって、上記実施の形態と重複する説明、および図示は省略する。
【0136】
次に、上記実施の形態では、半導体チップSCを導電性の樹脂接着材である銀ペーストから成るダイボンド材BP1を介してダイパッドDP上に搭載する実施態様について説明した。しかし、半導体チップSCを搭載する接着材としては、種々の変形例を適用できる。
【0137】
例えば、図示は省略するが、半導体チップSCの裏面に電極が形成されず、ダイパッドDPと半導体チップSCとを電気的に接続する必要がない場合には、非導電性の樹脂接着材を用いることができる。この場合、
図29に示す半導体装置PK2を例に挙げて説明した変形例と組み合わせて適用すれば、上記した第1部材配置工程において、ペースト状の部材PS2を供給するノズルと、ペースト状でかつ非導電性のダイボンド材を供給するノズルとを兼用化できる。
【0138】
また例えば、
図35および
図36に示す半導体装置PK6では、半導体チップSCを半田から成るダイボンド材BP12を介してダイパッドDPの部分DP2上に固定している。
図35は、
図5に対する他の変形例を示す平面図、
図36は
図35のA−A線に沿った断面図である。
【0139】
半導体装置PK6のように、半田を介して半導体チップSCとダイパッドDPとを接続する場合、上記実施の形態で説明した銀ペーストを用いた場合と比較して、ダイパッドDPと半導体チップSCのドレイン電極DE(
図36参照)との電気的接続信頼性を向上させることができる。
【0140】
また、半田から成るダイボンド材BP12を介して半導体チップSCを搭載する場合、製造工程を効率化させる観点からは、半導体チップSCとダイパッドDPの接続界面に集中する応力を分散させるために部分DP1に設ける部材(第1部材)PS4は、ダイボンド材BP12と同じ半田材料で構成することが好ましい。ただし、ペースト状の半田からなる部材PS4をダイパッドDPの部分DP1に塗布した後、リフロー処理を行って、部材PS4を溶融させると、半田材がダイパッドDPの上面DPtに沿って広がってしまい、部材PS4の厚さを厚くすることが難しい。そこで、半田から成る部材PS4をダイパッドDPの部分DP1に固定する場合には、部材PS4を介して、部材PS4とは異なる材料で構成された、部材PS5(
図35において、ドットパターンを付して示している部材)を固定することが好ましい。
【0141】
また、部材PS5は、部材PS4に含まれる半田成分が濡れ易くなるように、金属材料で構成されていることが好ましい。これにより、半田から成る部材PS4がダイパッドDPの上面DPtに沿って広がることを抑制できるので、部材PS2と部材PS3を一体物と見做した場合の厚さを厚くすることができる。
【0142】
また、半田から成るダイボンド材BP12をダイパッドDP上に固定する場合、
図5に示す半導体装置PK1のように、金属膜CM1がダイパッドDP上に形成されていると、ダイボンド材BP1(および部材PS4)が金属膜CM1に沿って広がり易くなるので、半導体チップSCの搭載位置の制御が難しくなる。一方、上記実施の形態で説明したように、平面サイズが異なる複数種類の半導体チップSCを共通のダイパッドDPに搭載するためには、半導体チップSCの搭載予定領域を予め設定しておくことができない。したがって、半田から成るダイボンド材BP12を用いる場合には、ダイパッドDPの上面DPtには、
図5に示す金属膜CM1を形成せず、基材である銅または銅合金を露出させることが好ましい。
【0143】
また、半導体装置PK6は、半導体チップSCのソース電極パッドSEとソース用のリードLDsとが、例えば銅(Cu)からなる金属クリップ(導電性部材、金属板)MB2を介して接続されている。金属クリップMB2は、半導体チップSCの側面SCs1を跨ぐように配置され、一部が導電性の接続材SDp1を介して半導体チップSCのソース電極パッドSEと電気的に接続され、他の一部が導電性の接続材SDp2を介してソース用のリードLDsの接続部RB1の上面RBtと電気的に接続されている。金属クリップMB2は、金属板に対してプレス加工やエッチング加工などの加工処理を施し、予め成形した状態で半導体チップSC上に搭載するので、
図5に示す金属リボンMB1と比較して、複雑な形状にすることができる。
【0144】
また、導電性の接続材SDp1、接続材SDp2には、それぞれ半田材料を用いることができる。この場合、半導体装置PK6の製造工程では、ペースト状の半田(半田ペースト、またはクリーム半田と呼ぶ)を介して半導体チップSCおよび部材PS5をダイパッドDP上に配置した後、リフロー処理を行う前に、接続材SDp1、SDp2を介して金属クリップMB2を配置する。その後、リフロー処理を行うことにより、ダイボンド材BP12、部材PS4、接続材SDp1、および接続材SDp2を一括して溶融させる。そして、ダイボンド材BP12が冷却されれば、半導体チップSCはダイボンド材BP12を介してダイパッドDPと電気的に接続され、かつ、ダイパッドDP上に固定される。また、部材PS5は、部材PS4を介してダイパッドDPの部分DP1上に固定される。また、金属クリップMB2の一部は、接続材SDp1を介してソース電極パッドSEと電気的に接続され、金属クリップMB2の他の一部は、接続材SDp2を介してソース用のリードLDsと電気的に接続される。
【0145】
また、半導体装置PK6の製造工程では、リフロー工程の後、洗浄工程を行う場合があるので、ワイヤボンディング工程は、リフロー工程後の洗浄工程を行った後で行う。
【0146】
図35および
図36に示す半導体装置PK6は、上記した相違点を除き、上記実施の形態で説明したPS1と同様である。したがって、上記実施の形態と重複する説明、および図示は省略する。
【0147】
次に、上記実施の形態では、
図5に示すように、平面視において、Y方向に沿って、ソース用のリードLDs、ダイパッドDP、ドレイン用のリードLDdが順に並ぶように配列され、ゲート用のリードLDgが、ソース用のリードLDsの隣で、かつドレイン用のリードLDdの反対側に配置されている実施態様について説明したが、端子配列には種々の変形例を適用できる。
【0148】
例えば、
図37に示す半導体装置PK7では、Y方向に沿って、ソース用のリードLDs、ダイパッドDP、およびゲート用のリードLDgが順に並ぶように配列されている。
図37は、
図5に対する他の変形例を示す透視平面図である。また
図38は
図37のA−A線に沿った断面図である。
【0149】
半導体装置PK7は、
図5に示すリードLDdのように、ダイパッドDPから延びるように形成された端子を有しておらず、ダイパッドDPがドレイン端子として機能している。また、半導体装置PK7は、半導体装置PK7が有する他の部材とは電気的に分離された(言い換えれば、電気的にフローティングになっている)リードLDを有している。
【0150】
半導体装置PK7のような端子配列の場合には、半導体チップSCと、ゲート用のリードLDgとを電気的に接続するワイヤMW1が、平面視において部材PS4および部材PS5を跨ぐように形成されている。したがって、半導体装置PK7の製造工程においては、部材PS4、PS5を固定する際に、ワイヤMW1が損傷することを防止する観点から、部材PS4、PS5を先に固定した後、ワイヤボンディング工程を行うことが好ましい。
【0151】
図37および
図38に示す半導体装置PK7は、上記した相違点を除き、
図35および
図36を用いて説明した半導体装置PK6と同様である。したがって、重複する説明、および図示は省略する。
【0152】
次に、上記実施の形態では、一つのパッケージ(封止体MR)内に一つの半導体チップSCが搭載された実施態様について説明した。しかし、一つのパッケージ内に複数の半導体チップSCが搭載された半導体装置に適用することができる。
【0153】
例えば
図39に示す半導体装置PK8では、X方向に沿って半導体チップSC1と半導体チップSC2とが隣り合うように搭載されている。
図39は
図5に対する他の変形例を示す透視平面図である。半導体装置PK8のように一つのダイパッドDPに複数の半導体チップSCが搭載されている場合、複数の半導体チップSCのそれぞれと部材PS1とが、上記実施の形態で説明した関係になるように配置することで、上記実施の形態で説明した効果が得られる。例えば、ダイパッドDPの部分DP2に部材PS1を固定して、平面視においてダイパッドDPの周縁部と半導体チップSC1の間に部材PS1が配置されるようにすれば、半導体チップSC1とダイパッドDPの接着界面の損傷を抑制できる。また、ダイパッドDPの部分DP2に部材PS1を固定して、平面視においてダイパッドDPの周縁部と半導体チップSC2の間に部材PS1が配置されるようにすれば、半導体チップSC2とダイパッドDPの接着界面の損傷を抑制できる。
【0154】
その他、重複する説明は省略するが、上記実施の形態あるいは変形例として説明した実施態様を、半導体チップSC1、SC2のそれぞれに適用することで、上記実施の形態あるいは変形例で説明した効果が得られる。
【0155】
次に、上記実施の形態では、ダイパッドDPの下面DPbの少なくとも一部が封止体MRから露出しているダイパッド露出型の半導体装置に適用した実施態様について説明した。しかし、変形例としては、ダイパッドDPの下面DPbの全体が封止体MRに封止された半導体装置において、上記実施の形態または変形例として説明した技術を適用することもできる。上記実施の形態で説明したように、ダイパッドDPの下面DPbの全体が封止体MRに封止されている場合、ダイパッドDPを包むように封止体MRが形成されていることで、ダイパッドDPの熱膨張、熱収縮を抑制し易い。このため、ダイパッドDPと封止体MRとの密着界面の剥離が生じ難く、半導体チップSCとダイパッドDPとの接着界面の損傷も発生し難い。しかし、例えば封止体MRとダイパッドDPの線膨張係数の差が大きい場合には、ダイパッドDPの下面DPbの全体が封止体MRに封止されていてもダイパッドDPと封止体MRの剥離が発生する可能性もある。この場合には、上記実施の形態または変形例として説明した技術を適用することで、半導体チップSCとダイパッドDPとの接着界面の損傷を抑制できる。
【0156】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、上記に例示的に示した変形例の他、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0157】
また、上記実施の形態で説明した半導体装置の製造方法について技術的思想を抽出すれば、下記のように表現することができる。
【0158】
〔付記1〕
(a)第1主面と、前記第1主面の反対側に位置する第2主面と、を有するチップ搭載部と、平面視において、第1方向に沿って前記チップ搭載部と並んで配置され、かつ、前記第1方向と直交する第2方向に沿ってそれぞれが並んで配置された複数の外部端子と、が枠部に支持されたリードフレームを準備する工程と、
(b)前記(a)工程の後、前記チップ搭載部の第1部分の前記第1主面上に第1部材を配置する工程と、
(c)前記(a)工程の後、第1電極パッドが形成された第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を有する半導体チップを、前記第2面が前記チップ搭載部の前記第1主面と対向するように、接着材を介して前記チップ搭載部の第2部分に搭載する工程と、
(d)前記(b)および(c)工程の後、前記半導体チップの前記第1電極パッドと前記複数の外部端子のうちの第1外部端子とを、第1導電性部材を介して電気的に接続する工程と、
(e)前記半導体チップ、前記チップ搭載部の前記第1主面、前記複数の外部端子のそれぞれの一部、および前記第1導電性部材を封止し、封止体を形成する工程と、を有し、
平面視において、前記チップ搭載部の前記第2部分は、前記第1部分と前記第1外部端子との間に配置され、
平面視において、前記第1方向における前記チップ搭載部の前記第1部分の長さは、前記第1方向における前記半導体チップの長さより長く、
前記(e)工程の後、前記第1部材は、前記チップ搭載部以外の端子とは電気的に分離されている、半導体装置の製造方法。
【0159】
〔付記2〕
付記1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程では、平面視において、前記第1方向における前記チップ搭載部の前記第1部分の長さが、前記第2方向における前記半導体チップの周縁部から前記ダイパッドの周縁部までの距離よりも長くなるように前記半導体チップを搭載する、半導体装置の製造方法。
【0160】
〔付記3〕
付記2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程では、平面視において、前記第1方向における前記半導体チップから前記第1部材までの距離が、前記第1方向における前記半導体チップの長さよりも短くなるように前記半導体チップを搭載する、半導体装置の製造方法。
【0161】
〔付記4〕
付記3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程では、平面視において、前記第2方向における前記第1部材の長さが、前記(c)工程で搭載される前記半導体チップの前記第2方向における長さよりも長くなるように行う、半導体装置の製造方法。
【0162】
〔付記5〕
付記4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程は、前記チップ搭載部の前記第2主面の一部が、前記封止体から露出するように行う、半導体装置の製造方法。
【0163】
〔付記6〕
付記3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程は、平面視において、前記第1部材が前記1方向に沿って複数配置されるように、かつ、それぞれの離間距離が、前記第1方向における前記半導体チップの長さよりも短くなるように行う、半導体装置の製造方法。
【0164】
〔付記7〕
付記1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1部材は、前記接着材と同一材料で構成されている、半導体装置の製造方法。
【0165】
〔付記8〕
付記7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1部材および前記接着材は、複数の銀粒子を含有する導電性接着材である、半導体装置の製造方法。
【0166】
〔付記9〕
付記1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体チップの厚さは、前記チップ搭載部の厚さよりも薄い、半導体装置の製造方法。
【0167】
〔付記10〕
付記9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体チップの厚さは、100μm以下である、半導体装置の製造方法。
【0168】
〔付記11〕
付記1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体チップの前記第1面には第2電極パッドが形成され、
前記半導体チップの前記第2面には第3電極が形成され、
前記(c)工程は、前記接着材を介して前記チップ搭載部の前記第1主面と前記半導体チップの前記第3電極とを電気的に接続する工程を含み、
前記(d)工程は、前記半導体チップの前記第2電極パッドと前記複数の外部端子のうちの第2外部端子とを電気的に接続する工程を含み、
前記(e)工程は、前記チップ搭載部の前記第2主面の一部が、前記封止体から露出するように行う、半導体装置の製造方法。
【0169】
〔付記12〕
付記11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体チップは、縦型チャネル構造のMOSFETを含み、
前記第1電極パッドは、前記MOSFETのソース電極と電気的に接続され、
前記第2電極パッドは、前記MOSFETのゲート電極と電気的に接続され、
前記第3電極は、前記MOSFETのゲート電極である、半導体装置の製造方法。
【0170】
〔付記13〕
付記11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程の後、前記第1外部端子、前記第2外部端子、および前記チップ搭載部の前記第2主面の前記封止体から露出した部分は、前記半導体装置を実装基板に実装した際、半田付け可能な部分を有する、半導体装置の製造方法。
【0171】
〔付記14〕
付記1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、前記チップ搭載部の前記第1部分の前記第1主面上に前記第1部材を介して前記第1部材とは異なる材料で構成された第2部材を搭載する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【0172】
〔付記15〕
付記1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記チップ搭載部の前記第1主面上には金属膜が形成され、
前記(b)工程は、前記第1部材を前記金属膜上に供給する工程を含み、
前記(c)工程は、前記接着材を前記金属膜上に供給する工程を含む、半導体装置の製造方法。