特許第6129332号(P6129332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129332
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】口腔用たばこ組成物
(51)【国際特許分類】
   A24B 13/00 20060101AFI20170508BHJP
   A23G 4/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   A24B13/00
   A23G3/30
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-545313(P2015-545313)
(86)(22)【出願日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】JP2014078983
(87)【国際公開番号】WO2015064719
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2016年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-226406(P2013-226406)
(32)【優先日】2013年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】打井 公隆
(72)【発明者】
【氏名】片山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭55−19597(JP,B2)
【文献】 米国特許第5092352(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0118421(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/056709(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 13/00
A23G 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ成分を溶出するたばこ原料とガムベースとを含む咀嚼可能な口腔用たばこ組成物であって、
前記たばこ原料と、第1ガムベースとを含む第1ガム部と、
第2ガムベースを含む第2ガム部とを有し、
前記第2ガム部は、前記たばこ原料を含んでいない、或いは、前記第1ガム部に含まれる前記たばこ原料の量よりも少ない量のたばこ原料を含み、
前記第1ガムベースの重量は、0.3g以上であり、
前記第1ガム部の重量%が100重量%である場合に、前記第1ガムベースの重量%は、50重量%以上であり、
前記口腔用たばこ組成物の重量%が100重量%である場合に、前記第1ガムベース及び前記第2ガムベースの合計重量%は、50重量%以下である
ことを特徴とする口腔用たばこ組成物。
【請求項2】
前記第2ガム部は、香料を含み、
前記第2ガム部の重量%が100重量%である場合に、前記第2ガムベースの重量%は、30重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の口腔用たばこ組成物。
【請求項3】
前記口腔用たばこ組成物の重量%が100重量%である場合に、前記第1ガムベース及び前記第2ガムベースの合計重量%は、25重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の口腔用たばこ組成物。
【請求項4】
前記口腔用たばこ組成物の重量は、0.6〜2.0gの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の口腔用たばこ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用たばこ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ成分を溶出するたばこ原料及びガムベースを含む咀嚼可能な口腔用たばこ組成物が知られている。また、当該口腔用たばこ組成物の香味(たばことしての味わい)を改善させる様々な取り組みが進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、口腔用たばこ組成物におけるガムベースの配合率を高めることによって、咀嚼時において、たばこ原料に含まれるニコチン等のたばこ成分の溶出量の変動を安定化させる技術が開示されている。なお、特許文献1に開示される口腔用たばこ組成物では、ガムベースの重量%を60重量%以上とすることで、たばこ成分の溶出量の変動を安定化させている。
【0004】
このような口腔用たばこ組成物によれば、咀嚼時において、たばこ成分を安定して溶出できるため、たばこ成分による香味をユーザに対して安定して与えることができる。
【0005】
しかしながら、背景技術に係る口腔用たばこ組成物では、次のような問題があった。
【0006】
すなわち、口腔用たばこ組成物におけるガムベースの配合率が高められているため、口腔用たばこ組成物が硬くなりすぎてしまい、その結果、ユーザに与えられるテクスチャ(食感又は噛み口)が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭55-19597号公報
【発明の概要】
【0008】
第1の特徴は、たばこ成分を溶出するたばこ原料とガムベースとを含む咀嚼可能な口腔用たばこ組成物であって、前記たばこ原料と、第1ガムベースとを含む第1ガム部と、第2ガムベースを含む第2ガム部とを有し、前記第2ガム部は、前記たばこ原料を含んでいない、或いは、前記第1ガム部に含まれる前記たばこ原料の量よりも少ない量のたばこ原料を含み、前記第1ガムベースの重量は、0.3g以上であり、前記第1ガム部の重量%が100重量%である場合に、前記第1ガムベースの重量%は、50重量%以上であり、前記口腔用たばこ組成物の重量%が100重量%である場合に、前記第1ガムベース及び前記第2ガムベースの合計重量%は、50重量%以下であることを要旨とする。
【0009】
第1の特徴において、前記第2ガム部の重量%が100重量%である場合に、前記第2ガムベースの重量%は、30重量%以下であってもよい。
【0010】
第1の特徴において、前記口腔用たばこ組成物の重量%が100重量%である場合に、前記第1ガムベース及び前記第2ガムベースの合計重量%は、25重量%以上であってもよい。
【0011】
第1の特徴において、前記口腔用たばこ組成物の重量は、0.6〜2.0gの範囲内であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る口腔用たばこ組成物の斜視図である。
図2図2(a)は、テクスチャ評価結果を示すグラフである。 図2(b)は、テクスチャ評価結果を示すグラフである。
図3図3は、表4の第1ガムベース重量と表4の初期溶出比率との関係性を示すグラフである。
図4図4(a)は、実施形態に係る口腔用たばこ組成物の他の形態を示す斜視図である。図4(b)は、実施形態に係る口腔用たばこ組成物の他の形態を示す斜視図である。図4(c)は、実施形態に係る口腔用たばこ組成物の他の形態を示す斜視図である。図4(d)は、実施形態に係る口腔用たばこ組成物の他の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0014】
[一実施形態]
以下、図面を参照して、一実施形態に係る口腔用たばこ組成物1について説明する。実施形態に係る口腔用たばこ組成物1は、たばこ成分を溶出するたばこ原料とガムベースとを含む咀嚼可能な口腔用たばこ組成物(所謂、たばこガム)である。なお、実施形態において、たばこ成分は、ニコチンを想定している。
【0015】
図1は、実施形態に係る口腔用たばこ組成物1の斜視図である。なお、図1に示す口腔用たばこ組成物1は、ユーザによって咀嚼される一個の口腔用たばこ組成物を想定している。
【0016】
図1に示すように、実施形態に係る口腔用たばこ組成物1は、たばこ原料と第1ガムベースとを含む第1ガム部10と、第2ガムベースを含む第2ガム部20とを有する。すなわち、実施形態では、口腔用たばこ組成物1は、2層構造によって構成されている。
【0017】
ここで、一般的に、口腔用たばこ組成物では、咀嚼時にユーザに対して与える香味(たばことしての味わい)を損ねないように、咀嚼時におけるニコチンの溶出量を適切に調整することによって、ニコチンによる経時的な刺激強度の変化を小さくすることが重要である。つまり、たばこ原料に含まれているニコチンを経時的に一定の割合で安定的に溶出させることによって、経時的な刺激強度の変化を小さくすることが重要であり、これにより、ユーザに対して、安定した香味を与えることができる。
【0018】
更に、口腔用たばこ組成物1では、咀嚼時にユーザに対して与えるテクスチャを適切に調整することも重要である。
【0019】
発明者等は、このような観点から、次の点について着目した。まず、咀嚼時の所定期間を対象に、ユーザに与えられるニコチンの溶出量とテクスチャとを改善することに着目した。具体的に、対象の所定期間として、咀嚼開始から5分後までの初期期間に着目した。これは、咀嚼開始から5分後は、ユーザが一服する時間を想定して規定している。
【0020】
また、発明者等は、咀嚼開始から5分後までの初期期間において、ニコチンが経時的に一定の割合で溶出されていることを確認するため、咀嚼開始(0分後)から5分後までの初期期間内に、中間時点を規定した。実施形態では、中間時点は、咀嚼開始から2分後に規定した。これは、咀嚼開始から2分後であれば、口腔用たばこ組成物1が、咀嚼中の柔らかい状態に安定化し易いということも、理由の一つとして挙げられる。なお、かかる中間時点は、咀嚼開始から2分後に限定されず、咀嚼開始から5分後までの期間内であれば、何れの時点でもよい。
【0021】
また、実施形態では、対象の所定期間が、咀嚼開始から5分後の初期期間に規定されているケースを例に挙げて説明するが、実施形態は、かかるケースに限定されるものではなく、かかる所定期間が咀嚼開始から5分後以外(例えば、10分後)の時間として規定されているケースにも適用可能である。
【0022】
また、初期期間にユーザに対して適度な香味を感じさせるためには、咀嚼開始から2分後までのニコチンの溶出量A(積算値)と、咀嚼開始から5分後までのニコチンの溶出量B(積算値)との比率A/Bが、0.4近傍の値を示すことが好ましい。具体的には、0.35≦A/B≦0.45の関係を満たすことが好ましい。
【0023】
したがって、実施形態に係る口腔用たばこ組成物1では、上述のA/Bが、0.35≦A/B≦0.45の関係を満たすように構成されている。
【0024】
なお、説明のため、以下では、咀嚼開始から2分後までのニコチンの溶出量Aを、2分後溶出量Aと示し、咀嚼開始から5分後までのニコチンの溶出量Bを、5分後溶出量Bと示し、A/Bを、初期溶出比率A/Bと示す。
【0025】
上述した観点を踏まえ、実施形態に係る口腔用たばこ組成物1の構成について、具体的に説明する。
【0026】
実施形態では、口腔用たばこ組成物1の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベース及び第2ガムベースの合計重量%は、50重量%以下である。なお、口腔用たばこ組成物1の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベース及び第2ガムベースの合計重量%は、25重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、35重量%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
これは、次の理由による。すなわち、第1ガムベース及び第2ガムベースの合計重量%が50重量%以下であることによって、口腔用たばこ組成物1が硬くなりすぎずに、ユーザに与えられるテクスチャの悪化が抑制される。一方で、第1ガムベース及び第2ガムベースの合計重量%が25重量%以上であることによって、口腔用たばこ組成物1がガムとして柔らかくなりすぎない。従って、この場合、柔らかすぎるという観点から生じるテクスチャの悪化が抑制される。
【0028】
ここで、口腔用たばこ組成物1に含まれる総ガムベースは、第1ガムベース及び第2ガムベースとによって構成される。すなわち、第1ガムベース及び第2ガムベースの合計重量%は、口腔用たばこ組成物1に含まれる総ガムベースの重量%とも言い換えることができる。
【0029】
なお、口腔用たばこ組成物1の重量は、0.6〜2.0gの範囲内であることが好ましい。これは、次の理由による。すなわち、口腔用たばこ組成物1の重量が、2.0gよりも多いと、ユーザに咀嚼される一個あたりの口腔用たばこ組成物1として、大きくなりすぎてしまい、咀嚼しにくくなるからである。一方、口腔用たばこ組成物1の重量が、0.6g未満であると、ユーザに咀嚼される一個あたりの口腔用たばこ組成物1として、小さくなりすぎてしまうとともに、ユーザが咀嚼してもユーザに香味を与えにくくなるからである。実施形態では、口腔用たばこ組成物1の重量は、1.3gであるケースを例に挙げて説明する。
【0030】
(第1ガム部の構成)
次に、実施形態に係る第1ガム部10の構成について具体的に説明する。実施形態に係る第1ガム部10は、第1ガムベースと、たばこ原料と、他の添加原料とを含む。
【0031】
第1ガムベースには、ガムベースとして一般的に用いられる樹脂を適用できる。例えば、第1ガムベースには、チクル等の植物性樹脂又は酢酸ビニル樹脂、或いはこれらの混合物が適用できる。
【0032】
たばこ原料には、例えば、バーレー種や黄色種等といった一般的なたばこ製品において広く用いられている原料種のたばこ原料を適用することができる。なお、第1ガム部に含まれるたばこ原料の量は、たばこ原料に含まれるニコチン量と口腔用たばこ組成物1に含むべきニコチン量とを考慮して選定することが好ましい。例えば、第1ガム部に含まれるたばこ原料の量は、1〜60mgの範囲内であることが好ましく、10〜30mgの範囲内であることがより好ましい。
【0033】
また、第1ガム部に含まれるニコチン量は、0.1〜3.0mgの範囲内であることが好ましく、0.5〜2.0mgの範囲内であることがより好ましい。
【0034】
他の添加原料には、たばこ製品やチューイングガムにおいて用いられるような種々の材料を適用できる。具体的に、他の添加原料として、メントール等の香料、糖原料などの少なくとも一つを適用できる。
【0035】
また、実施形態において、第1ガム部10では、第1ガムベースの重量は、0.3g以上である。また、実施形態において、第1ガム部10の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベースの重量%は、50重量%以上である。
【0036】
これは、次の理由による。第1ガムベースの重量が、0.3g未満であると、第1ガム部に対する第1ガムベースの重量%が50重量%以上であってもニコチンの初期溶出比率A/Bが、0.35≦A/B≦0.45の関係を満たさなくなる。また、第1ガム部10に対する第1ガムベースの重量%は、50重量%未満であると、第1ガムベースの重量が0.3g以上であってもニコチンの初期溶出比率A/Bが、0.35≦A/B≦0.45の関係を満たさなくなる。
【0037】
すなわち、実施形態に係る口腔用たばこ組成物1では、第1ガムベースの重量が、0.3g以上であり、かつ、第1ガム部10に対する第1ガムベースの重量%が、50重量%以上であることによって、ニコチンの初期溶出比率A/Bが、0.35≦A/B≦0.45の関係を満たすことができる。
【0038】
なお、第1ガム部10の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベースの重量%は、99重量%以下であることが好ましい。これは、次の理由による。第1ガムベースの重量%が、99重量%よりも大きいと、十分な量のたばこ原料を第1ガムベースに含めることができず、たばこ原料由来の香味を満足にユーザに与えられなくなる恐れがある。
【0039】
(第2ガム部の構成)
次に、第2ガム部20の構成について説明する。実施形態に係る第2ガム部20は、第2ガムベースを含む。また、第2ガム部20は、他の添加原料を含むことが好ましい。
【0040】
第2ガムベースには、第1ガムベースと同様の材料を適用できる。また、他の添加原料には、香料(例えば、メントール)など、第1ガム部10の他の添加原料と同様の材料を適用できる。
【0041】
また、実施形態では、第2ガム部20は、たばこ原料を含んでいないケースを例に挙げて説明する。なお、第2ガム部20は、上述したニコチンの初期溶出比率A/Bが、0.35≦A/B≦0.45の関係を満たす範囲内で、第1ガム部10に含まれるたばこ原料の量よりも少ない量のたばこ原料を含んでいてもよい。例えば、第2ガム部20には、第1ガム部10に含まれるたばこ原料の5%以下のたばこ原料が含まれていてもよい。
【0042】
なお、第2ガム部20の重量%が100重量%である場合に、第2ガムベースの重量%は、第1ガム部10に対する第1ガムベースの重量%に基づいて、総ガムベース重量%が50重量%以下となるように決定されることが好ましい。
【0043】
一例を挙げると、第2ガムベースの重量%は、第2ガム部に対して30重量%以下であることが好ましい。第2ガム部20に香料(例えば、メントール等)を含む場合、第2ガムベースの重量%が、第2ガム部に対して30重量%以下であれば、当該香料から香味成分が溶出しやすくなる。これにより、ユーザに当該香味成分からの香味を与えやすくなる。一方で、第2ガムベースの重量%は、第2ガム部に対して20重量%以上であることが好ましい。第2ガムベースの重量%が、第2ガム部に対して20重量%以上であることによって、ガムとしての粘性を維持することができ、ユーザに与えるテクスチャの悪化が抑制される。このような観点から、第2ガムベースの重量%は、特に第2ガム部に対して20〜30重量%とすることが好ましい。
【0044】
実施形態に係る口腔用たばこ組成物に含まれるたばこ原料は、0.5mm未満の粒径を有する粉粒体からなることが好ましく、0.35mm未満の粒径を有する粉粒体からなることがより好ましい。口腔用たばこ組成物に含まれるたばこ原料が、0.5mm未満の粒径からなることによって、咀嚼時にユーザに対して異物感を与えてしまう虞や製品の美観を損なう虞が軽減される。
【0045】
また、実施形態では、図1に示すように、口腔用たばこ組成物1は、2層構造である。従って、実施形態では、口腔用たばこ組成物1の厚さ方向Dの厚さD1は、第1ガム部10の厚さ方向Dの厚さD10と、第2ガム部20の厚さ方向Dの厚さD20との合計値である。なお、第1ガム部10の厚さ方向Dの厚さD10は、たばこ原料の粒径よりも大きく、7.0mm以下の範囲内であることが好ましい。第2ガム部20の厚さ方向Dの厚さD20は、0.1〜6.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0046】
実施形態では、口腔用たばこ組成物1の長手方向Lの長さL1と、第1ガム部10の長手方向Lの長さL10と、第2ガム部20の長手方向Lの長さL20とは等しい場合を例に挙げて説明する。なお、口腔用たばこ組成物1の長手方向Lの長さL1(及びL10、L20)は、10〜75mmの範囲内であることが好ましい。
【0047】
実施形態では、口腔用たばこ組成物1の短手方向Wの長さW1と、第1ガム部10の短手方向Wの長さW10と、第2ガム部20の短手方向Wの長さW20とは等しい場合を例に挙げて説明する。なお、口腔用たばこ組成物1の短手方向Wの長さW1(及びW10、W20)は、10〜20mmの範囲内であることが好ましい。
【0048】
(口腔用たばこ組成物の製造方法)
実施形態に係る口腔用たばこ組成物1の製造方法には、様々な方法が適用できる。例えば、第1ガム部10と第2ガム部20とのそれぞれを製造した後に、第1ガム部10と第2ガム部20とを結合して、口腔用たばこ組成物1を製造できる。
【0049】
更に、口腔用たばこ組成物1の製造方法として、下記の方法を適用できる。
【0050】
第1に、ニーダー(入江商会製 BENCH KNEADER品番PNV-1H)を60℃に予備加熱する。
【0051】
第2に、所定量の第1ガムベース(富士ケミカル社製CL-NTM2)をニーダーに投入し、10分間混練する。
【0052】
第3に、ソルビトール、マンニトール、エリスリトールなどの糖アルコールや、グルコース、スクロースなどの糖類、及び必要に応じてグリセリンなどのその他の添加剤とを投入し、40分間混練する。
【0053】
第4に、メントールなどの香料と、たばこ原料とを投入し、10分間混練する。これにより、第1ガム部のベース体を製造できる。
【0054】
なお、第2ガム部のベース体は、上述の工程において、たばこ原料を投入しないことで、同様の方法によって製造できる。また、第2ガム部にたばこ原料を含める場合には、上述の工程において、初期溶出比率A/Bが、0.35≦A/B≦0.45の関係を満たす範囲内となるように、第2ガム部のベース体に所定量のたばこ原料を含めてもよい。
【0055】
第5に、第1ガム部のベース体と第2ガム部のベース体とを積層して、それぞれを結合する。これにより、口腔用たばこ組成物のベース体を製造できる。
【0056】
第6に、口腔用たばこ組成物のベース体を、所定形状に成型しながら、所定量に切り分ける。これにより、個別の口腔用たばこ組成物1を製造できる。
【0057】
なお、口腔用たばこ組成物1(1.3g)と、第1ガム部10と、第2ガム部20とは、下記の表1〜3に示すように構成されていてもよい。なお、表1〜3に示される数値の末尾は、四捨五入によって算出されている。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】
【0061】
(作用及び効果)
実施形態に係る口腔用たばこ組成物1は、たばこ原料と第1ガムベースとを含む第1ガム部10と、第2ガムベースを含む第2ガム部20とを有する。また、口腔用たばこ組成物1では、口腔用たばこ組成物1の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベース及び第2ガムベースの合計重量%は、50重量%以下である。
【0062】
かかる構成によれば、口腔用たばこ組成物1が硬くなりすぎることを抑制するので、ユーザに与えられるテクスチャが悪化することを抑制できる。
【0063】
また、第1ガム部10では、第1ガムベースの重量は、0.3g以上であり、かつ、第1ガムベースの重量%は、50重量%以上である。
【0064】
かかる構成によれば、ニコチンの初期溶出比率A/Bが、0.35≦A/B≦0.45の関係を満たすことができる。従って、第1ガムベースの重量が0.3g以上であり、かつ、第1ガムベースの重量%が50重量%以上であれば、ニコチン溶出量の変動を抑制して、初期期間にユーザに対して適度な香味を与えられることができる。
【0065】
このように、実施形態に係る口腔用たばこ組成物1によれば、咀嚼時にユーザに対してたばこ成分による香味を安定して与えつつ、ユーザに対して好適なテクスチャを与えることができる。
【0066】
また、口腔用たばこ組成物1の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベース及び第2ガムベースの合計重量%は、25重量%以上であることが好ましい。かかる構成によれば、口腔用たばこ組成物1がガムとして柔らかくなりすぎてしまうことを抑制できる。従って、この場合、柔らかすぎるという観点から、ユーザに与えられるテクスチャが悪化することを抑制できる。
【0067】
また、第2ガム部20の重量%が100重量%である場合に、第2ガムベースの重量%は、30重量%以下であることが好ましい。かかる構成によれば、第2ガム部20に香料(メントール等)を含む場合に、香料からの香味成分が溶出しやすくなる。これにより、ユーザに当該香味成分からの香味を与えやすくなる。
【0068】
また、口腔用たばこ組成物1の重量は、0.6〜2.0gの範囲内であることが好ましい。かかる構成によれば、ユーザに咀嚼される一個あたりの口腔用たばこ組成物1として、大きくなり過ぎてしまうことや、小さくなり過ぎてしまうことを抑制できるとともに、ユーザに香味を確実に与えることができる。
【0069】
[実施例]
実施形態の効果を明確にするため、下記の評価試験を実施した。試験方法及び結果について、以下に示す。
【0070】
<テクスチャ評価試験>
サンプル11〜12を準備して、口腔用たばこ組成物のテクスチャについての評価試験を行った。
【0071】
サンプル11には、口腔用たばこ組成物の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベース(GB)及び第2ガムベース(GB)の合計重量%が、40重量%となるように調整したものを用いた。つまり、サンプル11には、総ガムベース(GB)重量%が40重量%となるように調整したものを用いた。
【0072】
サンプル12には、口腔用たばこ組成物の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベース(GB)及び第2ガムベース(GB)の合計重量%が、50重量%となるように調整したものを用いた。つまり、サンプル12には、総ガムベース(GB)重量%が50重量%となるように調整したものを用いた。
【0073】
なお、サンプル11及びサンプル12のそれぞれの構成は、下記の点で共通する。
【0074】
・ 口腔用たばこ組成物の総重量: 1.3g
・ 第2ガム部に対する第2ガムベース(GB)重量%: 25重量%
【0075】
(試験方法)
上述のサンプル11及び12を、成人5人に咀嚼させて、テクスチャについての官能評価を行った。具体的に、サンプル11及び12を、咀嚼開始から初期期間が経過する5分後まで、60回/分のペースで咀嚼させて、それぞれのテクスチャについて官能評価を行った。
【0076】
(試験結果)
試験結果を図2(a)〜(b)に示す。なお、図2(a)は、サンプル11のテクスチャ評価結果を示し、 図2(b)は、サンプル12のテクスチャ評価結果を示す。
【0077】
図2(a)〜(b)に示すように、サンプル11及びサンプル12の何れも、テクスチャが許容範囲内であることが証明された。
【0078】
ここで、図2(b)に示すように、サンプル12は、テクスチャが許容範囲であるものの、硬く感じる傾向がある結果になった。従って、総ガムベース重量%が50重量%より大きい場合には、口腔用たばこ組成物が硬いと感じ易くなることが判る。
【0079】
つまり、総ガムベース重量%が50重量%より大きい場合、ユーザに対するテクスチャが悪化してしまうことが判る。従って、テクスチャ評価試験結果によれば、総ガムベース重量%が50重量%以下であれば、テクスチャが良好であることが証明された。
【0080】
<初期溶出比率の評価試験>
サンプル21〜23と、サンプル31〜33と、サンプル41〜46と、サンプル51〜54とを準備して、口腔用たばこ組成物の初期期間における初期溶出比率の評価試験を行った。
【0081】
サンプル21〜23には、第1ガム部の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベース(GB)の重量%が、40重量%となるように調整して製造したものを用いた。
【0082】
サンプル31〜33には、第1ガム部の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベース(GB)の重量%が、50重量%となるように調整して製造したものを用いた。
【0083】
サンプル41〜46には、第1ガム部の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベース(GB)の重量%が、60重量%となるように調整して製造したものを用いた。
【0084】
サンプル51〜54には、第1ガム部の重量%が100重量%である場合に、第1ガムベース(GB)の重量%が、80重量%となるように調整して製造したものを用いた。
【0085】
また、上述のサンプル21〜54のそれぞれの構成は、下記の点で共通する。
【0086】
・ 口腔用たばこ組成物の総重量: 1.3g
・ 第2ガム部に対する第2ガムベース(GB)重量%: 25%
・ 第1ガム部におけるたばこ原料量: 0.02g
・ 口腔用たばこ組成物に含まれるニコチン含有量:1mg
【0087】
なお、上述のサンプル21〜54の詳細な構成は、表4に示すとおりである。
【0088】
(試験方法)
上述のサンプル21〜54のそれぞれを、成人に咀嚼させて、咀嚼開始から2分後のニコチン溶出量Aと、咀嚼開始から5分後のニコチン溶出量Bとを測定した。その結果に基づいて、初期溶出比率A/Bを算出した。このとき、サンプル21〜54のそれぞれを、60回/分のペースで咀嚼させた。
【0089】
ここで、ニコチン溶出量A〜Bは、次の方法によって測定した。具体的に、上述のサンプル21〜54のそれぞれを対象に、咀嚼開始前のニコチン含有量と、咀嚼開始から2分後のニコチン含有量(残存量)と、咀嚼開始から5分後のニコチン含有量(残存量)とを測定した。
【0090】
なお、咀嚼開始から2分後のニコチン溶出量Aは、咀嚼開始前のニコチン含有量と、咀嚼開始から2分後のニコチン含有量(残存量)との差分に基づいて、算出した。一方、咀嚼開始から5分後のニコチン溶出量Bは、咀嚼開始前のニコチン含有量と、咀嚼開始から5分後のニコチン含有量(残存量)との差分に基づいて算出した。
【0091】
そして、咀嚼開始から2分後のニコチン溶出量Aと咀嚼開始から5分後のニコチン溶出量Bとに基づいて、ニコチンの初期溶出比率A/Bを算出した。
【0092】
また、サンプルに含まれるニコチンの含有量(残存量)は、以下のように測定した。
【0093】
第1に、50ml容量のスクリュー瓶に対して、サンプル全量を投入し、11%の水酸化ナトリウム水溶液を15ml投入した後、1000mlのn-ヘキサン及び500mgのn-ヘプタデカンの混合溶液を20ml投入する。
【0094】
第2に、上述のスクリュー瓶をアルミホイルで遮光後、18時間、振とうする。
【0095】
第3に、振とうしたスクリュー瓶を約1時間静置する。
【0096】
第4に、上澄みを取り、0.45μmのメンブレンフィルタでろ過した後、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)に供する。
【0097】
(試験結果)
試験結果を表4と図3に示す。なお、図3は、表4のサンプル21〜54の第1ガムベース重量と、表4のサンプル21〜54の初期溶出比率A/Bとの関係性を示す散布図(グラフ)である。
【0098】
表4及び図3に示すように、サンプル21〜54のうち、第1ガムベースの重量%が40重量%であるサンプル21〜23は、初期溶出比率A/Bが、0.45よりも大きくなることが分かる。すなわち、第1ガムベースの重量%が40重量%であると、初期溶出比率A/Bが、0.35≦A/B≦0.45の範囲外になることが分かる。
【0099】
一方、第1ガムベースの重量%が50重量%以上であるサンプル31〜54であっても、第1ガムベースの重量が0.3g未満であるサンプルは、初期溶出比率A/Bが、0.35≦A/B≦0.45の範囲外になることが分かる。
【0100】
すなわち、第1ガムベースの重量が0.3g以上であり、かつ、第1ガムベースの重量%が50重量%以上であれば、初期溶出比率A/Bが、0.35≦A/B≦0.45の範囲内にできることが分かる。
【0101】
従って、第1ガムベースの重量が0.3g以上であり、かつ、第1ガムベースの重量%が50重量%以上であれば、ニコチン溶出量の変動を抑制して、初期期間にユーザに対して適度な香味を与えられることが証明された。
【0102】
【表4】
【0103】
[その他の実施形態]
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。
【0104】
例えば、実施形態は、次のように変更することができる。上述した実施形態では、口腔用たばこ組成物1が、第1ガム部10と第2ガム部20との2層構造である場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限定されるものではない。
【0105】
例えば、図4(a)〜(c)に示す口腔用たばこ組成物1a〜1cのように、口腔用たばこ組成物は、1層の第1ガム部10と、2層の第2ガム部20とによって構成されてもよい。すなわち、口腔用たばこ組成物は、3層構造であってもよい。
【0106】
なお、実施形態の口腔用たばこ組成物は、図4(a)〜(c)に示す口腔用たばこ組成物1a〜1cに限定されない。例えば、口腔用たばこ組成物は、第1ガム部10が複数層によって構成され、第2ガム部20も複数層によって構成されていてもよい。
【0107】
更に、図4(d)に示す口腔用たばこ組成物1dのように、口腔用たばこ組成物は、第1ガム部10が第2ガム部20に分散して配置されていてもよい。
【0108】
また、第2ガム部20は、たばこ原料の含有量が異なる複数のガム部によって構成されていてもよい。例えば、第2ガム部20は、たばこ原料の含んでいない無たばこガム部と、たばこ原料を含む有たばこガム部とを有していてもよい。すなわち、第2ガム部20は、ニコチンの初期溶出比率A/Bが、0.35≦A/B≦0.45の関係を満たす範囲内で、第1ガム部10に含まれるたばこ原料の量よりも少ない量のたばこ原料を含んでいれば、様々な構成が可能である。更に、第2ガム部20は、第2ガムベースの含有量(重量%)が少ない低ガムベース部と、第2ガムベースの含有量(重量%)が多い高ガムベース部とを有していてもよい。すなわち、第2ガム部20は、口腔用たばこ組成物における総ガムベース重量%が50重量%以下となる構成であれば、様々な構成が可能である。
【0109】
このように、本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0110】
なお、日本国特許出願第2013−226406号(2013年10月31日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上説明したように、本発明によれば、咀嚼時にユーザに対してたばこ成分による香味を安定して与えつつ、ユーザに対して好適なテクスチャを与えることができる口腔用たばこ組成物を提供することができる。
図1
図2
図3
図4