(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129341
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】半導体回路上に一体化された容量センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
G01N27/22 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-552036(P2015-552036)
(86)(22)【出願日】2014年1月6日
(65)【公表番号】特表2016-504595(P2016-504595A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】EP2014050097
(87)【国際公開番号】WO2014108371
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】13305026.0
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515191121
【氏名又は名称】メアス フランス
【氏名又は名称原語表記】MEAS FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 光治
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】ギュメ,ジャン−ポール
(72)【発明者】
【氏名】ドルリャチャ,プレドラグ
(72)【発明者】
【氏名】ビーラー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ギャロリーニ,ロミュアルド
(72)【発明者】
【氏名】ドゥチェレ,ヴァンサン
【審査官】
蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0168882(US,A1)
【文献】
特開平02−069624(JP,A)
【文献】
特開2006−019589(JP,A)
【文献】
実開平05−014909(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/10、27/14−27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体回路の不動態層上に容量性センサを製造する方法であって、
前記不動態層は、第1のボンド・パッド(360)および第2のボンド・パッド(380)を露出させる複数の開口部を有するものであり、
前記不動態層上に金属層を形成し(520)、前記金属層をパターン化して、底部電極およびランド・パッド、および前記底部電極および前記ランド・パッドをそれぞれのボンド・パッドに接続する金属配線を形成し、
前記底部電極は、能動回路を有する前記半導体回路の部分の上に位置するように配置されるものであり、
さらに、前記底部電極および前記ランド・パッドの上にガス感応層を形成し(530)、
前記ガス感応層を貫通して前記ランド・パッドに達するヴィア・ホールを形成し(540)、
前記ヴィア・ホールを通して前記ランド・パッドに電気的に接続される多孔性の上部電極を前記ガス感応層上に形成する(550)
ことを含み、
前記上部電極の一部が前記底部電極の表面領域を完全に覆い、前記上部電極の他の部分が前記ランド・パッドと接触するものである、
方法。
【請求項2】
前記能動回路はASICを含むものであり、
さらに、成形材料における開口部が前記上部電極を周囲の環境に露出させ且つ前記成形材料がこの開口部の周囲の全ての成形材料端縁に沿って前記ガス感応層の少なくとも0.1mmを覆うように、前記上部電極および前記ASICの上に成形材料を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ASICの不動態層上に容量性センサを製造する方法であって、
低温プロセスを用いて前記ASICの能動回路の上に位置する前記不動態層の部分の上に、底部電極層およびランド・パッドを形成し(520)、
前記底部電極層および前記ランド・パッドの上にガス感応層を形成し(530)、
前記ガス感応層を貫通して前記ランド・パッドに達するヴィア・ホールを形成し(540)、
低温プロセスを用いて前記ガス感応層の上に上部電極層を形成する(550)
ことを含み、
前記上部電極層は前記底部電極層の表面領域を完全に覆い、前記上部電極層の形成は、前記ヴィア・ホール中に前記上部電極層の一部を被着し、それによって前記上部電極層と前記ランド・パッドの間に電気的接続を形成するものである、
方法。
【請求項4】
さらに、成形材料における開口部が前記上部電極層を周囲の環境に露出させ且つ前記成形材料がこの開口部の周囲の全ての成形材料端縁に沿って前記ガス感応層の少なくとも0.1mmを覆うように、前記上部電極層および前記ASICの上に前記成形材料を形成することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上部不動態層(210)を有する半導体回路(200)と、
前記半導体回路(200)の前記不動態層(210)上の金属底部電極(310)であって、能動回路を含む前記半導体回路の領域の上に位置する金属底部電極(310)と、
前記不動態層(210)の上にあり前記金属底部電極(310)から電気的に分離された金属ランド・パッド(330)と、
前記金属底部電極(310)および前記金属ランド・パッド(330)の上にあり、前記ランド・パッドの一部を露出させるヴィア・ホール(350)を含むガス感応層(340)と、
前記ガス感応層(340)上にある多孔性上部電極(320)であって、前記多孔性上部電極(320)によって形成される領域が前記金属底部電極(310)によって形成される領域を完全に覆い、前記多孔性上部電極(320)が、前記ガス感応層(340)における前記ヴィア・ホール(350)を通して前記ランド・パッド(330)に電気的に接続される、多孔性上部電極(320)と、
前記金属底部電極(310)と第1のボンド・パッド(380)の間に第1の金属配線(390)と、前記ランド・パッド(330)と第2のボンド・パッド(360)の間に第2の金属配線(370)と、
を含み、
前記半導体回路は、前記金属底部電極(310)に信号を加えて容量によって前記多孔性上部電極を通って移動した電荷を測定することによって、前記ガス感応層の容量を測定するものである、ガス・センサ。
【請求項6】
前記ガス感応層(340)は前記第1の金属配線(390)および前記第2の金属配線(370)を覆い、それによって前記多孔性上部電極(320)と前記金属底部電極(310)の間の電気的短絡が防止されるものである、請求項5に記載のガス・センサ。
【請求項7】
さらに、前記多孔性上部電極(320)に隣接する成形材料(400)を含み、
前記成形材料(400)は前記多孔性上部電極(320)を周囲の環境に露出させる開口部(410)を有し、前記成形材料における前記開口部(410)の各側部は前記ガス感応層(340)の少なくとも0.1mmを覆うものである、請求項5に記載のガス・センサ。
【請求項8】
前記多孔性上部電極(320)の領域は前記金属底部電極(310)の領域より広く、それによって、前記多孔性上部電極(320)は、前記多孔性上部電極と前記金属底部電極が位置ずれしていても、前記金属底部電極(310)を完全に覆うことができるものである、請求項5に記載のガス・センサ。
【請求項9】
電圧を加えてその結果の移動した電荷を測定することによって、容量性センサの容量を測定することができる半導体回路と、
前記半導体回路の不動態層の外側の表面の直上に形成され、能動回路を含む前記半導体回路の表面領域の上に位置する金属層と、
を含み、
前記金属層は、前記容量性センサの底部電極と、前記容量性センサの多孔性上部電極の接続用のランド・パッドと、前記底部電極と前記ランド・パッドの双方を別々のボンド・パッドに接続する配線とを形成し、
前記別々のボンド・パッドは、前記半導体回路に接続され、前記半導体回路のASIC組立てプロセスの一部として形成されたものであり、
さらに、前記半導体回路の前記外側の表面上の前記不動態層の上に被着され、前記金属層を覆うガス感応性材料層であって、前記多孔性上部電極を前記ランド・パッドに電気的に接続するためのヴィア・ホールを画定し且つ前記半導体回路の前記ボンド・パッドを露出させるようパターン化されたガス感応性材料層と、
前記金属層に形成された前記底部電極パターンを完全に覆い且つ前記ランド・パッドに電気的接続を形成するように前記ガス感応性材料層上に被着された多孔性上部電極と、
を含み、
前記半導体回路は、信号を前記底部電極に加えて前記ガス感応性材料層の容量によって前記上部電極を通って移動した電荷を測定することによって、前記ガス感応性材料層の容量を測定するものである、ガス・センサ。
【請求項10】
前記ガス感応性材料層は、前記底部電極をそのボンド・パッドに接続する金属配線と、前記上部電極の最大領域を超える領域の上のそのボンド・パッドに前記上部電極を接続する金属配線とを覆うよう構成され、それによって前記上部電極と前記底部電極の間の電気的短絡が防止されるものである、請求項9に記載のガス・センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、半導体回路の最も外側の保護層(不動態化層)の直上に構築される容量性のガス・センサに関する。
【背景技術】
【0002】
容量性ガス・センサはこの技術分野で既知のものであり、特定の例は水蒸気(相対湿度)の測定におけるものである。これらのセンサに関連する多数の構成が存在する。1つの構成は、ガス感応性材料(gas sensitive:感ガス材料)によって覆われた(被覆された)互いにかみ合う同一平面上の両極性の電極を使用し、ここ(電極)で、ガス濃度の増大によってその材料の誘電率が増大し、それによって両平面電極間の誘電結合が増大し、それによって両電極間の実効容量が増大する。一体化された電極の場合、両電極はガス感応性材料の上部表面の真下にあり、電界フリンジング(fringing)効果によって両平面電極間に誘電結合が生じる。
【0003】
別の構成は、電極間にガス感応性材料の層を有する平行板(プレート)電極を使用して、ガス濃度の変化によって、ガス感応性材料の誘電率が変化し、平行板キャパシタの容量が変化するようになっている。仏国特許出願公開第2750494号(米国特許第6450026号)に記載されている平行板構成は、高度に多孔性または多孔質の導電ポリマーからなる上部電極を有し、これ(多孔性の導電ポリマー)によって電極を通してガス感応性材料中への選択ガスの拡散が可能になる。この上部電極材料は、ガス感応性材料に機密に接着し(密着し)化学的に不活性で且つ環境的に頑強となるように処理される。ここで、仏国特許出願公開第2750494号および米国特許第6450026号の全体を参照により組み込む。
【0004】
容量性ガス・センサの容量はガス濃度の関数であり、その容量はセンサを電気的に励起することができる関連の電子装置によって測定される。容量性ガス・センサの製造コストはそのセンサとその関連の電子装置の物理的サイズ(大きさ)に関連し、従って、所望の精度および信号対ノイズ比を達成しつつ可能な限り小さい容量性ガス・センサを実現することが望ましい。ガス感応キャパシタ(コンデンサ)のサイズが減少するにしたがって、ガス感応キャパシタは、相互接続および関連の電子装置において見出される寄生容量を含めた漂遊容量に関連する信号劣化の影響をより受けやすくなる。より小さいキャパシタを用いるときの寄生容量の効果を低減する1つの方法は、そのセンサにできるだけ物理的に接近するように関連の電子装置を位置決めすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2750494号明細書
【特許文献2】米国特許第6450026号明細書
【発明の開示】
【0006】
容量性ガス・センサのサイズ、従ってその製造コストを減少させると共に、関連の電子装置のサイズおよびコストを減少させることが望ましい。関連の電子装置の製造コストの減少は、小さい低コストの構成で全ての必要な機能を実現する特定用途向け集積回路(ASICS)の使用によって達成できる。
【0007】
互いにかみ合う(interdigitated:櫛歯、交互嵌合)コプレーナ(共平面上の)キャパシタ電極がASICの部分の上部に配置され且つガス感応性材料層がそのコプレーナ・センサ電極の上部に配置されてガス・センサを形成する構成の市販の装置が存在する。互いにかみ合うキャパシタ電極を有するASIC用の構成は、その互いにかみ合うキャパシタ電極がASICにおける能動回路(活動状態の回路、機能している回路)の直上にある場合に結合および干渉が起こり得る、という欠点がある。その結果、そのセンサ電極が能動回路の上に位置しないようにそのセンサ電極を収容するより広いシリコン面積領域に対するニーズ(必要性)がある。特に、その互いにかみ合う電極は、それらの電極の中間および下への導電層の付加によって回路で誘導された漂遊結合信号に対して遮蔽することができない。その理由は、そのような導電層は、その互いにかみ合う検出電極間のベースライン(基準値)の容量性結合をかなり増大させ得るからである。ガス感応層におけるガス濃度を変えることによって生成された信号は容量の変化割合(百分率)として測定されるので、ベースライン容量を増大させるとその装置の感度が低くなる。互いにかみ合う電極を有するASICの別の欠点は、ガス感応性材料層の上部の外来の材料に対する電極間容量の望ましくない感度である。例えば、ガス感応性材料層の表面上の水滴または金属小粒子は、電極によって生成されたフリンジング電界を歪ませることによって、電極間の誘電結合をかなり変化させる。
【0008】
代替的な装置は、次のような別々の2つのチップを有する。その1つのチップは適切な基板の上に組み立てられたガス検出キャパシタを有し、その第2のチップは適切な回路を有する。この2つのチップによる解決法(ソリューション)は、各部分を製造するのに用いられる、各生産収率(歩留まり)、各プロセス(処理)および各基板材料を互いに分離するという利点を有する。しかし、これらのチップは、検出キャパシタの動作または性質に影響を与えるフリップ・チップまたはワイヤ・ボンディング技術を用いて電気的に相互接続されなければならない。さらに、電気的および機械的なパッケージングのコストは、垂直に一体化される構成の場合よりも高い。
【0009】
従って、適切な半導体回路の直上に組み立てられるより小さく且つより効果的な(効率的な)容量性ガス・センサに対するニーズ(必要性)が存在する。
【0010】
発明の概要
本発明の実施形態は、標準的半導体ガス・センサASICの不動態化された表面の直上に組み立てられた平行板容量性ガス・センサからなるガス・センサ・アセンブリ(組立体)に関する。その構成は、最小の可能なセンサ・サイズを可能にしつつ、平行板センサ構成の利益を提供する。
【0011】
本発明の目的は、製造が簡単な半導体回路上のガス測定用の容量性センサを製造することである。
【0012】
本発明は、ガス・センサとして使用されるセンサに加えて、これらのセンサの製造方法に関する。好ましい実施形態において、この方法は、薄い金属層、ガス感応層(感ガス層)および多孔性または多孔質の上部電極の連続的な積層または形成に関する。
【0013】
半導体回路の不動態(passivation:保護)層上に容量性センサを製造する方法は、その回路を覆う(cover)その不動態層の上に金属層を被着すること(deposit:堆積、被覆)を含んでもよい。その金属層がパターン化されて、底部電極、その底部電極を第1のボンド・パッド(bond pad:接着パッド)に接続する第1の配線(trace)、ランド・パッド(landing pad)、およびそのランド・パッドを第2のボンド・パッドに接続する第2の配線を形成する。その底部電極は、それ(底部電極)が能動回路を含むその半導体回路の部分の上に位置するように配置される。その方法は、さらに、その底部電極およびそのランド・パッド上にガス感応層を被着し;そのガス感応層を貫通するヴィア・ホールを形成してそのランド・パッドを露出させ;そのガス感応層上に多孔性(porous:多孔質)の導電性電極を被着して、そのヴィア・ホールを通してそのランド・パッドに電気的に接続される上部電極を形成すること、を含んでもよい。その上部電極の一部はその底部電極の表面領域を完全に覆い、その上部電極はそのランド・パッドに接続する。
【0014】
一実施形態において、ASIC(510)の不動態層上に容量性センサを製造する方法は、そのASICの能動回路の上に位置するその不動態層の部分の上に底部電極層およびランド・パッド(520)を形成し;その底部電極層およびそのランド・パッド上にガス感応層(530)を形成し;そのガス感応層を貫通してそのランド・パッドに達するヴィア・ホール(540)を形成し;そのガス感応層上に上部電極層(550)を形成することを含んでもよい。その上部電極層はその底部電極層の表面領域を完全に覆う。その上部電極層の形成プロセス(工程)はそのヴィア・ホールに電導性材料を充填することを含み、それによって、その上部電極層とそのランド・パッドの間に電気的接続を形成する。
【0015】
一実施形態において、その不動態層上に被着された金属層からその底部電極層およびランド・パッドを形成するのに用いられるプロセス(方法)は、フォトリソグラフィ・プロセス(過程)、フォトリソグラフィ・レジスト・プロセス、またはウェット・エッチング・プロセスを含んでもよい。スピン・コーティング・プロセスを用いて、その底部電極層およびそのランド・パッド上にガス感応層を形成してもよい。一実施形態において、その方法は、さらに、ドライ・エッチングまたはウェット・エッチングの後でフォトリソグラフィ技術を用いてそのガス感応層にパターンを形成または塗布することを含んでもよい。そのガス感応層上にその多孔性上部電極層を形成するのに用いられるプロセスは、スクリーン・プリンティング、ステンシル・プリンティング、パッド・プリンティング、インク噴射、またはスピン・コーティングを含んでもよい。一実施形態において、その方法は、さらに、その上部電極およびそのASIC上に成形材料(molding compound:成形コンパウンド、モールド化合物)を形成することを含んでもよく、その成形材料の形成は、その成形材料における開口部がその上部電極をその周囲環境に露出させるように、また、その成形材料がその開口部の周りの全ての成形材料端縁に沿ってそのガス感応性材料の少なくとも0.1mm(幅)を覆うように行われてもよい。
【0016】
ガス・センサは、上部不動態層(210)を有する半導体回路(200)と;その半導体回路(200)のその不動態層(210)上に金属底部電極(310)とを含んでいてもよい。その底部電極(310)は、能動回路を含むその半導体回路の領域の上に位置する。ガス・センサは、さらに、その不導体層(210)上にその底部電極(310)から電気的に分離した金属ランド・パッド(330)と;その金属底部電極(310)および金属ランド・パッド(330)上にガス感応層(340)を含んでいてもよい。そのガス感応層(340)は、そのガス感応層を貫通するように画定されたヴィア(350)を有する。ガス・センサは、さらに、そのガス感応層(340)上に多孔性上部電極(320)を含んでいてもよい。その多孔性上部電極(320)によって形成された領域は、その金属底部電極(310)によって形成された領域を完全に覆い、その多孔性上部電極(320)は、そのガス感応層(340)におけるそのヴィア(350)を通してそのランド・パッド(330)に電気的に接続される。ガス・センサは、さらに、その金属底部電極(310)を第1のボンド・パッド(380)に接続する第1の金属配線(390)と、そのランド・パッド(330)を第2のボンド・パッド(360)に接続する第2の金属配線(370)とを含んでいる。その底部電極、ランド・パッド、および双方の接続用の配線は、同じ金属層からパターン化されてもよい(例えば、選択的パターニングによって)。一実施形態において、その半導体回路は、その金属底部電極(310)に信号を加えてキャパシタ(容量)によってその上部電極を通って移動(変位)した電荷を測定することによって、そのガス感応層の容量を測定する。
【0017】
一実施形態において、前記ガス感応層(340)は、その第1の金属配線(390)および第2の金属配線(370)を覆い、それによって、その上部電極を被着するのに用いられるプロセスによって生じ得るその多孔性上部電極(320)とその金属底部電極(310)の間の電気的短絡が防止される。別の実施形態において、ガス・センサは、さらに、その多孔性上部電極(320)に隣接する成形材料(400)を含んでもよい。その成形材料(400)はその多孔性上部電極(320)をその周囲の環境に露出させる開口部(410)を有し、その成形材料におけるその開口部(410)の各側部は、そのガス感応層(340)の少なくとも0.1mm(の幅)を覆う。ガス・センサにおいて、その多孔性上部電極(320)の領域(面積)は、その底部電極(310)の領域(面積)より広くてもよく、それによって、その多孔性上部電極(320)とその底部電極(310)とが位置ずれしていても(misaligned:正しく整列または位置合わせされていなくても)、その多孔性上部電極(320)はその底部電極(310)を完全に覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1a】
図1aは、外側被覆(オーバモールド)成形材料を含む半導体回路上に一体化された容量性センサの典型例の実施形態の斜視図を示している。
【
図1b】
図1bは、外側被覆成形材料のない、半導体回路上に一体化された容量性センサの典型例の実施形態の斜視図を示している。
【
図1c】
図1cは、底部電極、ランド・パッド、ヴィア・ホールの整列状態、および底部電極およびランド・パッドのそれぞれのボンド・パッドへの相互接続を含む、容量性センサが一体化されたASICの典型例の実施形態の上面図を示している。
【
図2】
図2は、底部電極を覆いガス感応性材料層におけるヴィア・ホールを通して接触を形成する上部電極を含む、
図1cのASIC構成の短辺側の幅の
図1cの線A−Aに沿った部分断面図を示している。
【
図3】
図3は、キャパシタ接続用の接続パッド上のダイ・パッケージ材料の重なり状態を含む、
図1cのASIC構成の長辺側の
図1cの線B−Bに沿った長さの断面図を示している。
【
図4】
図4は、下部の回路から底部電極への望ましくない寄生容量結合を含む、
図1cのASIC構成の短辺側の幅の
図1cの線A−Aに沿った部分断面図を示している。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による一体化されたガス・センサを有する半導体回路を製造するプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
次に、図面に例が記載された本発明の例示的な実施形態を参照して説明する。
【0020】
図1aは、成形材料を含む、半導体回路上に一体化されたガス・センサの典型例の実施形態の斜視図を示している。特に、
図1aに示されたガス・センサ100は、ASIC(特定用途向け集積回路)200、ASIC200上の平行板容量性センサ300、およびガス・センサ100上の成形材料400を含んでいる。成形材料400は開口部410を含み、開口部410は、検出するように設計された状態の読取りを行い得るように、容量性センサ300を周囲の環境に露出させる。
【0021】
図1bは、成形材料400のない、
図1aのセンサ100の等尺性の図を示している。センサ300は、装置の一実施形態を示すためにASIC200の上部の概略的に中心に位置するように示されている。
【0022】
図1cは、上にセンサ300が一体化されたASIC200の典型例の実施形態の上面図を示している。成形材料400は図を簡明にするために示されていない。底部電極310は、高精度の半導体リソグラフィ・プロセスを用いて形成されてもよく、一実施形態において薄い金属層からなるものであてもよい。非限定的な一実施形態において、底部電極は、TiW接着/バリア層を有するAuで形成されてもよい。底部電極は、半導体回路またはASICの能動回路の上に位置してもよく、その結果、能動回路の上に配置されていない互いにかみ合う(櫛歯、交互嵌合)電極を有するセンサよりもコンパクトな設計が得られる。
【0023】
多孔性上部電極320は、底部電極を完全に覆っている(overlay)。ここで、覆う(overlay)という用語は、上部電極の足跡(フットプリント)または領域が、基本的に平行板キャパシタを形成する底部電極の足跡と完全に重なるまたはそれを完全に覆う(overlap)という意味で用いられるが、上部電極と底部電極の間の接触(コンタクト)という意味を含んでいる。一実施形態において、上部電極は多孔性電極である。用語“多孔性”(porous)は、ここでは、関心の対象であるガスに対して完全に不浸透性ではないという意味で用いられる。本発明の実施形態を実施するのに有用な多孔性電極の例は、単なる非限定的な例として、フィルム系の多孔性電極、および、白金または炭素粒子が充填された有機バインダ、等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0024】
上部電極320は、好ましい多孔性および接着性(接着力)を与えるプロセスを用いて組み立てられ、このプロセスは、底部電極におけるような半導体ウェハ上に金属電極をフォトリソグラフィで像形成するのに用いられるプロセスよりも、概して寸法的または位置関係的に精度が低い。ガス検出材料の所与の誘電特性および厚さについて、容量性センサのベースライン(基準値)容量は、底部電極および上部電極の重ね合わせまたは上覆い(overlay:オーバレイ)によって決定される。非限定的な一実施形態において、その容量は、約1.5pF乃至約10pFの容量であってもよいが、これは単なる例示であり、特定の適用例の要求に応じて種々の他の範囲(例えば、約0.2pF乃至約20pFの範囲)が使用されてもよい。同じサイズの上部電極および底部電極の使用、および被着プロセスの位置決めおよび幾何学的許容誤差から生じ得る不可避的な容量の分散(variance:差異、ばらつき)をなくすために、一実施形態において、上部電極320は、
図1cに示された底部電極310の表面領域(面積)より広い表面領域(面積)を有してもよい。このようにして、底部電極の上の上部電極の完全な重ね合わせまたは上覆いが確保されてもよく、その結果、センサの容量は、上部電極の位置ずれ(不整列)があったとしても、一貫性または均一性のある(consistent)ものとなる。その位置ずれによって上部電極が底部電極を完全に覆うことがなくならない限り、その容量は、一貫性または均一性のあるものとなる。
【0025】
また、
図1cは、ボンド・パッド360および380、および金属配線370および390を示している。示された実施形態において、ボンド・パッド360は、金属配線370によって、ランド・パッド(これは上部電極に接続されている)に電気的に接続されている。同様に、ボンド・パッド380は、金属配線390によって、底部電極に電気的に接続されている。金属底部層がASICの不動態層上に形成されたとき、その底部層の電極部分が金属配線380との接触を形成し且つその底部層のランド・パッド部分が金属配線360との接触を形成するように、それ(金属底部層)は形成される。お分かりのように、各ボンド・パッドは、ガス・センサを後でASIC上に組み立てることができるように、ASICの一部として設計される機能または要素である。さらにお分かりのように、ボンド・パッド360および380は、検出される状態(例えばガス)を決定または測定するASICの回路に電気的に接続される。また、ASICまたは半導体回路は、ガスの検出濃度を示すデータを信号に供給または付与する出力リード線(図示せず)を含んでもよい。上述のように、半導体回路は、金属底部電極(310)に信号を加えてキャパシタによって上部電極を通して移動する電荷を測定することによって、ガス感応層(感ガス層)の容量を測定する。次いで、その測定結果は、ASICまたは半導体回路によって使用されて、検出される状態が決定される。
【0026】
図2は、
図1cのASIC200の短辺側の幅の線A−Aに沿った部分断面図を示している。
図2の実施形態において、上部電極320は、底部電極310を完全に覆い(covers)および底部電極310に完全に重ね合わされ(overlays)且つランド・バッド330への接続を形成して、上部電極320の半導体回路への電気的相互接続が形成される。ガス検出(感応性)材料層340は、そこに画定された、導電性材料が充填された開口部またはヴィア350を有し、開口部またはヴィア350を通して上部電極320とランド・パッド330の間に電気的接触が形成される。上部電極被着プロセスによって、上部電極320がヴィア350を通してランド・パッド330に信頼できる電気的相互接続を形成することが、確保される。ガス検出材料340は、誘電材料であってもよい。非限定的な一実施形態において、誘電材料は、例えば厚さ約2μm(ミクロン)を有するポリマー・フィルムのような、高分子(ポリマー)材料であってもよい。非限定的な別の例として、ガス感応性材料層に、既知の商業的利用における湿度検出用のポリイミド(有機ポリマー)が使用されてもよい。さらに、ガス感応性ポリマー材料がこの技術分野で既知であると理解され、従ってここでは簡潔にするために更なる説明を省略する。
【0027】
図3は、
図1cのASIC200の長辺側の線B−Bに沿った長さの断面図を示している。この図は、上部電極320および底部電極310をASIC回路に相互接続するのにそれぞれ使用されるボンド・パッド360および380の上をパッケージ(包装)用の成形材料400の上覆いを示している。一実施形態において、成形材料400は各キャパシタ相互接続パッドを少なくとも0.1mm(幅)だけ覆って、それによって、関心の対象である測定されるガスによって生じる成形材料における小さい変化が、各検出キャパシタ接続配線または各接続パッドの間の誘電結合に影響を与えないことが、確保されるようにされる。
【0028】
図4は、
図1cのASIC200の幅の線A−Aに沿った部分断面図を示している。
図4が、半導体不動態層の下(真下)の能動回路における配線が底部電極にどのように容量的に結合し得るかを示していることを除いて、
図4は
図2と同様である。容量性結合は、ASIC回路230に接続する、ASIC200に示された複数のキャパシタ記号220によって表されている。
【0029】
一実施形態において、ASIC上のそのセンサは容量性の湿度(湿度感応、感湿度)センサである。
図4に示されているように、能動回路の真上にある容量性ガス・センサの配置によって、その下部の回路からそのキャパシタの底部電極への意図しない寄生容量結合が形成される。或るガス濃度による容量の変化はゼロ濃度におけるガス感応性材料の容量よりも相対的に小さいので、センサ電荷移動(変位)測定の精度は、この追加的な寄生容量結合の影響を受ける。さらに、底部電極の下の回路はいずれにしてもガス検出キャパシタの存在によって制限されることがないので、その結合は、従来の回路モデル化ツールを用いて予測されることがないまたは容易にはモデル化されない可能性がある。これらの寄生接続(結合)の有害な効果を回避するために、本発明の実施形態において、底部電極は既知のレベルの低インピーダンス電圧によって駆動され、この印可電圧の結果として検出キャパシタによって移動(変位)した電荷(ガス濃度に起因する部分)が上部電極を用いて測定される。検出キャパシタの底部電極上の電圧、従って検出キャパシタから移動した電荷は、半導体不動態表面の下の任意の回路への寄生容量結合による影響を受けない。
【0030】
コストを低減し、結果として得られるアセンブリの信頼性を高くするために、ガス検出キャパシタに関連するプロセスとその絶縁および相互接続が下部の回路に損傷を与えないことは、重要である。典型例の実施形態における半導体回路は、標準的な高い費用対効果のCMOS設計および組立てのグランドルール(基本原則)を用いて製造され、適用例に適切な最大のウェハ(例えば、直径200mmまたは300mmのシリコン・ウェハ)上に構築するまたは組み立てることができる。この組立てプロセスによって製造されたウェハは、露出した電気的相互接続ボンド・パッドおよびテスト・パッドを有し、露出した上部表面の大部分および全ての相互接続回路が窒化珪素または二酸化珪素または類似の不動態層内に覆われる。本発明では、容量性ガス・センサがこの外部不動態層の直上に構築されることを意図している。
【0031】
本発明の観点によるキャパシタおよび関連の配線およびパッケージ材料の組立てにおける各工程は、損傷を回避するのに充分低い温度で行われ、そうしないと、下部の能動的半導体回路の性能または信頼性に有害な影響を与える。底部電極と、上部電極用のランド・パッドとは、標準的な低リスクで低コストのフォトリソグラフィ・プロセスを用いて、例えば、PVDスパッタまたは蒸着、現像とストリップを含むフォトリソグラフィ・レジスト像形成(imaging)、およびウェット・エッチングを用いて、組み立てられる。ガス感応性材料および多孔性上部電極は、窒化珪素(シリコン)、二酸化珪素、アルミニウムまたは珪素そのものを含む、標準的CMOSプロセスの結果においてウェハの表面上に典型的に露出される材料に、損傷を与えない。ガス感応層は、例えばスピン・コーティングおよびベーキング(焼成)のような、典型的なウェハ・プロセス技術を使用して被着することができ、材料は、プロセスまたは半導体ポリマー(フォトレジストおよびポリイミドを含む)におけるフォトグラフィ技術の使用に類似したフォトグラフィ技術を用いてパターン化されてもよい。多孔性上部電極材料は、ステンシル・プリンティング、パッド・プリンティング、インク噴射またはスピン・コーティングを含む多数の低温技術を用いて、被着されてもよい。全てのポストCMOSプロセス(CMOS後工程)において要求される硬化温度およびベーキング(焼成)温度は、下部の回路に害を与え得る温度より低い温度に保たれる。
【0032】
一実施形態において、一体化されたガス・センサを有する半導体回路(例えば、ASIC)は、半導体回路に対する損傷を防止する低い温度を用いる方法を用いて組み立てられてもよい。次に、
図2および3と共に
図5を参照すると、本開示内容の観点による、プロセスの各工程を示す簡単化された論理フローチャートまたはフロー
図500が示されている。ブロック510において、例えばASICのような半導体回路が供給される。半導体回路は、上部に不動態層(210)と、露出されたボンド・パッド(360および380)とを含んでもよい。ブロック520において、底部電極層(310)およびランド・パッド(330)、および、ガス・センサの上部電極(320)および底部電極(310)をASIC回路に電気的に接続するのに用いられる金属配線(370および390)が、不動態層(210)の上に形成される。ブロック530において、ガス感応層(340)が形成されてもよい。1つの構成では、底部電極およびランド・パッドをそれぞれのボンド・パッドに接続するのに使用される金属配線は、選択的パターニングによって同じ金属層から形成される。ガス感応層(340)は、例えばポリマーのような誘電体であってもよい。ブロック540において、ヴィアまたはホール(350)が、フォトリソグラフィ・パターニング技術を用いてガス感応層(340)に形成される。ブロック550において、上部電極層(320)が、例えばスクリーン・プリンティング、ステンシル・プリンティング、パッド・プリンティング、インク噴射、またはスピン・コーティングのような低温技術を用いて、ガス感応層(340)上に形成される。上部電極層の被着によって、ランド・パッド330に対するヴィア350を介した電気的接触が形成される。非限定的な一例において、ガス・センサのポリマー材料は、硬化を必要としてもよく、例えば、その構造体は所与の持続時間において適切な温度でベーキング(焼成)されてもよい。
【0033】
以上において例示的な実施形態および実現形態を説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明に対する種々の変更および変形例を作成できることは、当業者には明らかである。