特許第6129359号(P6129359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129359部分的にコーティングが除去された領域を有するコーティングされたペイン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129359
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】部分的にコーティングが除去された領域を有するコーティングされたペイン
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20170508BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20170508BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20170508BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   C03C17/36
   B60J1/00 G
   B05D3/06 Z
   B05D3/10 N
【請求項の数】19
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-560591(P2015-560591)
(86)(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公表番号】特表2016-515989(P2016-515989A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】EP2014050996
(87)【国際公開番号】WO2014135296
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年10月5日
(31)【優先権主張番号】13158152.2
(32)【優先日】2013年3月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルスラン,イルカイ
(72)【発明者】
【氏名】ベームケ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ドロステ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フォン・デア・バイデン,インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ボールファイル,ディルク
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−056225(JP,A)
【文献】 特表2002−506596(JP,A)
【文献】 特開2011−102218(JP,A)
【文献】 特開2011−102217(JP,A)
【文献】 実開昭60−195251(JP,U)
【文献】 実開昭61−127062(JP,U)
【文献】 実開平03−025355(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0107641(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/112648(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/031908(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/031907(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00 − 17/44
B60J 1/00 − 1/20
B60S 1/02
B60S 1/58
H05B 3/00 − 3/86
H01B 5/14
H01Q 1/32
B05D 3/00 − 3/10
C03C 27/12
C03B 23/023 − 23/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ベースペイン(1)と、
b.ベースペイン(1)上にある金属含有コーティング(2)と、
c.金属含有コーティング(2)内の交差するコーティングが除去された内側グリッドライン(4a)でできたグリッド領域(3a)であって、グリッド領域縁部(3b)を有するグリッド領域(3a)と、
d.交差する外側グリッドライン(4b)を有するグリッド領域縁部(3b)であって、外側グリッドライン(4b)が、グリッド領域(3a)の外側縁部からグリッド面縁部(3b)の端部までずっとサイズが拡大する断続部(4c)を有するグリッド領域縁部(3b)と、
を少なくとも備える、伝達窓(5’)を備えたコーティングされたペインであって、断続部(4c)の面積が、交差点の間の内側グリッドライン(4a)の面積の70%から100%まで次第に増加する、伝達窓(5’)を備えたコーティングされたペイン
【請求項2】
外側グリッドライン(4b)が、内側グリッドライン(4a)の延長部を含む、請求項1に記載のコーティングされたペイン。
【請求項3】
外側グリッドライン(4b)がさらに、グリッド領域(3a)に境界をつける最も外側のグリッドライン(6)に平行して配置されるグリッドラインを含む、請求項2に記載のコーティングされたペイン。
【請求項4】
グリッドライン(4)が、30μmから200μmの幅を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティングされたペイン。
【請求項5】
グリッドライン(4)が、70μmから120μmの幅を有する、請求項4に記載のコーティングされたペイン。
【請求項6】
グリッドライン(4)が、正方形、菱形、平行四辺形および矩形のいずれか、又はこれらの組合せを形成する、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティングされたペイン。
【請求項7】
グリッドライン(4)が、0.1mmから15mm離れている、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティングされたペイン。
【請求項8】
グリッドライン(4)が、0.7mmから3mm離れている、請求項7に記載のコーティングされたペイン。
【請求項9】
グリッド領域縁部(3b)が、1mmから30mmの幅を有する、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティングされたペイン。
【請求項10】
ベースペイン(1)がフロートガラスを含む、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティングされたペイン。
【請求項11】
内側グリッドライン(4a)および外側グリッドライン(4b)が、ベースペイン(1)のフロートガラス形成方向に対して30°から60°の角度を有する、請求項10に記載のコーティングされたペイン。
【請求項12】
請求項1から11に記載のコーティングされたペインを備えるフロントガラス。
【請求項13】
伝達窓を備えるコーティングされたペインを形成するための方法であって、
a.ベースペイン(1)に金属含有コーティング(2)が提供され、
b.金属含有コーティング(2)が、レーザによってグリッドライン(4a)状に局所的にコーティングが除去され、グリッド領域(3a)およびグリッド領域縁部(3b)が得られ、
c.外側グリッドライン(4b)が、グリッド領域(3a)からグリッド面縁部(3b)の端部までずっとサイズが拡大する断続部(c)を有し、断続部(4c)の面積が、交差点の間の内側グリッドライン(4a)の面積の70%から100%まで次第に増加し、
d.ベースペイン(1)が曲げられる、方法。
【請求項14】
レーザが、0.100m/秒から10m/秒の速度で金属含有コーティング(2)に沿って案内される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
レーザが、炭酸ガス、YAG、Nd−YAGまたはダイオードレーザである、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
レーザが、0.001kWから10kWの出力を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
レーザがプロッターによって案内される、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
建築用、自動車、船舶、航空機、ヘリコプターまたは列車のグレージングとして、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティングされたペインの使用。
【請求項19】
自動車のフロントガラスとして、請求項18に記載のコーティングされたペインの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波放射の透過性のために部分的にコーティングが除去された領域の形態の窓を備えたコーティングされたペイン、ならびにその製造およびその使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属層を備えたペインは、建築用グレージングの分野および自動車グレージングの分野の両方で一般に普及している。金属コーティングに応じて、このような金属ベースのコーティングは、電磁放射の透過率、反射率および吸収挙動に影響を与える。詳細には、ガラス面の熱放射または電気加熱の低下は、導電性金属をベースとした多くのガラスコーティングの中核機能である。
【0003】
銀でできたコーティングは、ペインの背後に位置する自動車または建物の空間における赤外線熱放射の透過率をかなり低下させる。詳細には、自動車の場合、このような特性はまた、電気接続を介して銀を含有するコーティングの加熱機能と組み合わせることもできる。銀の特有のシート抵抗によって、極めて薄い銀含有層を備えたペインを加熱することが可能になる。その結果、上記に挙げた利点により、銀含有コーティングまたは金属コーティングを備えたペインは、益々多くの自動車において見られる。
【0004】
しかしながら銀含有コーティングを備えたペインには必然的に欠点も伴い、例えば、多くの金属含有コーティングによって高周波が反射されるなどである。多くのセンサ、ナビゲーション、電気通信または無線デバイスの作動は、これによりかなり損なわれる。このような問題を解決するには、金属含有コーティングの少なくとも部分的にコーティングを除去した領域が必要である。例えばFM、AM、UHF、VHF、レーダまたはマイクロ波放射などの高周波領域における電磁放射の例では、このために網状またはグリッド状のコーティングの除去が必要である。グリッド網は、問題となる所望される電磁放射の波長よりかなり小さいライン間に一定の距離を有する必要がある。この目的のために、金属含有コーティングは、例えば好適なレーザを使用してラインの形態で除去される。少量の金属含有コーティングのみを除去する必要があるため、赤外線放射反射作用は、おおかた維持される。
【0005】
欧州特許第0678483B1号明細書は、複数の薄い層を備えたガラス基材を開示している。このような層には、酸化チタン、酸化スズまたは酸化タンタルをベースにした接着層、カバー層、およびステンレス鋼の群からの機能層とが含まれる。機能層の厚さは好ましくは、15nmから45nmである。
【0006】
米国特許出願公開第2002/0192473A1号明細書は、日射に対して作用することができる複数の層のコーティングを備えた透明基材を開示している。このコーティングには、ニオビウム、タンタルまたはジルコニウムでできた少なくとも1つの機能的金属層と、窒化アルミニウム、アルミニウム酸窒化物または窒化ケイ素でできたカバー層とが含まれる。
【0007】
米国特許出願公開第2011/0146172A1号明細書は、薄い複数層のコーティングを備えた透明基材を開示している。この複数層のコーティングには、少なくとも2つの吸収性の機能層と、誘電材料でできた2つの透明な層とが含まれる。機能層は好ましくは、ニオビウム、タンタルまたはジルコニウムから成る群からの金属を含む。好ましい一実施形態において、機能層は少なくとも部分的に窒化される。
【0008】
米国特許出願公開第2007/0082219A1号明細書は、複数層の銀含有コーティングを備えた加熱可能なガラス基材を開示している。このコーティングによって、自動車における温度制御と、ペインの加熱機能の両方が可能になる。コーティングおよびそれを備えたペインは、電磁放射に対して不透過性である。
【0009】
ドイツ特許第19817712C1号明細書は、コーティングと、放射窓とを備えたガラスペインを開示している。窓は、パネルの限定的な連続領域内に実装され、そこではコーティングのない領域と全体の領域の少なくとも25%の比率が生じコーティングのない領域とコーティングされた領域が区域的に分散されている。
【0010】
国際公開第2004/051869A2号パンフレットは、高周波信号に対して透過性の窓を有する金属コーティングされたペインを開示している。この窓は、多様な高周波信号透過性構造を含んでおり、例えば垂直方向または水平方向の梁またはジグザグ構造を含む。
【0011】
米国特許第6,730,389B2号明細書は、互いに接続された高周波放射に対して透過性の複数の窓を有する金属コーティングされたペインを開示している。
【0012】
国際公開第2012/066324A1号パンフレットは、高周波領域における電磁放射に対して透過性の窓を備えたコーティングされたグレージングを形成するための方法を開示している。この窓ガラスは、レーザを使用して二次元に湾曲したパターン形成によって形成される。
【0013】
コーティングされたペインが、伝達窓の領域において少なくとも部分的にコーティングが除去される際、曲げ工程においてコーティングされたペインと、部分的にコーティングが除去されたペインの間の移行区域においてガラス内に応力が生じる。この応力は恐らく、ガラス面上のコーティングされた領域と、部分的にコーティングが除去された領域の異なる熱吸収性によるものである。コーティングされたペインの表面と伝達窓の間の境界領域において応力が増大する結果は、多くの場合、ガラス面上での光学的ゆがみとなり、これはペインの全体の印象にマイナスの影響を及ぼす。法的規制、例えばECE R43によって、多くの自動車製造元はまた、自動車窓用ペインの光学的な品質の分野におけるより厳しい閾値に準拠することも求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第0678483号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0192473号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0146172号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0082219号明細書
【特許文献5】独国特許発明第19817712号明細書
【特許文献6】国際公開第2004/051869号
【特許文献7】米国特許第6730389号明細書
【特許文献8】国際公開第2012/066324号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、金属コーティングされたペインを提供することからなり、これは、部分的にコーティングが除去された伝達窓と、ペインの区域的コーティングの間の境界領域において、光学的なゆがみが全くない、あるいは光学的なゆがみは少なくとも低減される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、独立クレーム1に従って達成される。好ましい実施形態は、サブクレームから生じる。
【0017】
伝達窓を備えたコーティングされたペインを形成するための本発明による方法およびその使用は、他の独立クレームから生じる。
【0018】
伝達窓を備えた本発明によるコーティングされたペインは、金属含有コーティングを備えた少なくとも1つのベースペインを備える。ペインは好ましくは、板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ほうけい酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラスおよび/またはそれらの混合物を含む。あるいは、ペインはまた、ポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレート(プレキシグラス)などのポリマーを含む場合もある。コーティングは好ましくは、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO、SnO:F)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO、SnO:Sb)、アルミニウム、亜鉛、インジウム、ガリウム、銀、金、スズ、タングステン、銅、カドミウム、ニオビウム、ストロンチウム、ケイ素、亜鉛、セレンおよび/またはそれらの混合物または合金を含有し、特に好ましくは銀を含有する。実際のコーティングに加えて、さらに誘電性の層も存在することが好ましい。誘電層は好ましくは、SiO、SnO、Bi、ZnO、TiO、Ta、AlN、Siおよび/またはその混合物を含む。複合ペインへの誘電層および機能層の堆積の順序は、変えることができ、好ましくは複数の機能層と誘電層が、複合ペインに堆積される。任意選択で別の層、例えばカバー層がある場合もある。金属含有コーティングは好ましくは、レーダ波、マイクロ波および/または高周波に対して不透過性である。
【0019】
ベースペインは、金属含有コーティング上に、交差するコーティングが除去された内側グリッドラインでできた局所的に領域が決められたグリッド領域を有する。これは、グリッドラインを、好ましくはコーティングの除去作業によって、詳細にはレーザコーティング除去作業によって金属含有コーティング内に取り込むことを意味している。グリッドラインは、結果として、金属含有コーティングがない領域である。グリッド領域は、何らかの矩形および/または丸みをつけられた形状を有することができる。グリッド領域はグリッド領域の縁部によって完全にまたは部分的に区域的に囲まれている。グリッド領域の縁部は、グリッド領域と同様に、交差する外側グリッドラインを有する。外側グリッドラインは好ましくは、パターン形成されない金属コーティングの方向で外向きに内側のグリッドラインの延長部を形成する。内側グリッドラインおよび外側グリッドラインの基本パターンは、同様または全く同じように実装される。外側グリッドラインは、グリッド領域の外縁部からグリッド面縁部の端部までずっとサイズが拡大する断続部を有する。本発明に文脈において、「断続部」という表現は、外側グリッドラインの領域内に、あるいはまた好ましくは外側グリッドラインの交差点の領域内にもパターン形成がないことを意味している。
【0020】
外側グリッドラインは好ましくは、内側グリッドラインの延長部を含む。外側グリッドラインは特に好ましくは、グリッド領域の境界をつける最も外側の断続部のないグリッドラインに平行して配置されるグリッドラインも含む。本発明によって実現されるグリッド領域の縁部の交差する外側グリッドラインは、この好ましい実施形態では、少なくとも
−1つには内側グリッドラインの延長部と、
−さらには、グリッド領域の境界をつける最も外側のグリッドラインに平行して配置されるグリッドラインと、によって形成される。グリッド領域の縁部はさらに、追加の外側グリッドラインを含むことができる。
【0021】
特定の利点は、ペインが特に光学的に目立たないこと、および特に美的な印象にあり、観察者にとってほとんど悪影響とならない点である。
【0022】
本発明に文脈において、「グリッド領域」は、断続部のない領域によって定義される。
【0023】
本発明による断続部は、最も外側の境界をつけるグリッドラインと平行に配置された内側グリッドラインおよび/または外側グリッドラインの延長部に配置することができる。特に好ましい一実施形態では、断続部は、外側グリッドラインの交差点に配置される。
【0024】
グリッドラインは好ましくは、30μmから200μm、特に好ましくは70μmから120μmの幅を有する。この幅は、問題とされる電磁放射および、その製作に関して必須なレーザスキャナの光学分解能によって決定される。
【0025】
グリッドラインは好ましくは、正方形および/または矩形を形成する。曲げられたペインの場合、詳細には三次元に曲げられた窓ガラスの場合、矩形が直角から逸れる場合があり、例えば四角形、台形または平行四辺形などに変移する場合がある。特にペインの空間的な幾何学形状に応じて、丸みがつけられたまたは部分的に丸みがつけられたセンサ窓または伝達窓が可能である。
【0026】
グリッドラインは好ましくは0.2mmから15mm、好ましくは0.7mmから3mm離れている。グリッドライン間の好ましい距離は、高周波電磁波に対して十分な透過性を可能にする。
【0027】
断続部の面積は好ましくは、交差点の間の内側グリッドラインの領域の70%から100%まで次第に拡大する。本発明の文脈において、グリッド領域の縁部の幅は好ましくは1mmから30mmである。段階的な拡大は好ましくは、中断されないグリッドライン(100%)から2つの隣接する交差点の間のグリッドラインの元々の領域の70%から90%まで1mmから30mmの距離にわたって生じる。
【0028】
金属含有コーティングは好ましくは、レーダ波、マイクロ波および/または高周波に対して不透過性である。
【0029】
ベースペインは好ましくは、フロートガラスを含む。内側グリッドラインおよび外側グリッドラインは好ましくは、ベースペインのフロートガラス形成方向に対して30°から60°、特に好ましくは40°から50°の角度のところにある。用語「フロートガラスの形成方向」とは、フロートガラス形成工程におけるガラスの移動方向を表している。驚くべきことに、部分的にコーティングが除去されたペインを曲げられた後の光学的な欠陥は、グリッドラインがスズの槽内(フロートガラス工程)およびその後のベルトコンベア内でのガラスの移動方向に対して上記に述べた角度にあるとき少なくされるされる。
【0030】
本発明はさらに、伝達窓を備えた本発明のコーティングされたペインの特徴を備えたフロントガラスを含む。
【0031】
本発明はさらに、伝達窓を備えたコーティングされた窓ガラスを形成するための方法を含む。第1の工程ステップにおいて、ベースペインには、金属含有コーティングが提供される。任意選択で追加の誘電層および追加の金属層が塗布される場合もある。次のステップにおいて、金属含有コーティングは、レーザによるグリッドラインの形成において局所的にコーティングが除去され、第1のグリッド領域ならびにグリッド領域の縁部が形成される。外側グリッドラインは、内側グリッド領域からグリッド面縁部の端部までずっとサイズが拡大する断続部を有する。断続部は、交差点の領域および交差点の間のグリッドライン上の両方に配置することができる。本発明の文脈において、用語「断続部」は、外側グリッドラインの領域にパターン形成がないことを意味している。最終ステップにおいて、コーティングされ(および部分的に)パターン形成されたベースペインは、各々のガラスの軟化温度の領域内で曲げられる。本発明による外側の中断されたグリッドラインは驚くべきことに、伝達窓の近傍においてコーティングされた領域と部分的にコーティングが除去された領域の間の光学的な目に見えるゆがみを低減する。詳細には、ベースペインのコーティングされた領域と、コーティングが除去されたグリッドラインの異なる熱吸収率は急速に、従来技術による伝達窓の場合、光学的な阻害を生じさせる、例えば不均一な光の反射などを生じさせる。
【0032】
レーザは好ましくは、0.100m/秒から10m/秒の速度でベースペイン上の金属含有コーティングに沿って案内される。レーザは好ましくは、1Wから10kWの出力を有するおよび/または炭酸ガス、YAG、Nd−YAG、イッテルビウム−YAGレーザ、ホルミウムYAGレーザ、エルビウムYAGレーザ、−ネオジウムガラスレーザ、−エキシマ−レーザ、−ファイバレーザ、−ディスクレーザ、−スラブレーザまたはダイオードレーザを含める。
【0033】
レーザは好ましくは、プロッターによって案内される。プロッターは、グリッド領域のサイズをさらに拡大することができる。
【0034】
本発明はさらに、建築用、自動車、船舶、航空機、ヘリコプターまたは列車のグレージングとして伝達窓を備えた本発明によるコーティングされたペインの使用を含める。伝達窓を備えた本発明によるコーティングされた窓ガラスは好ましくは、自動車のフロントガラスとして使用される。
【0035】
以下において、本発明は、図面を参照して詳細に説明される。図面は、純粋に概略的な描写であり、縮尺に正しく合せられてはいない。それらは本発明を全く制限しない。黒い線の位置は、コーティング除去領域に印をつけている。実際のコーティングされた窓ガラス上では、このようなコーティング除去領域は、コーティングされた周辺部よりわずかに明るく見える。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】従来技術による伝達窓の概略図である。
図2】本発明による伝達窓の概略図である。
図3】内側グリッドラインおよび外側グリッドラインの拡大図である。
図4】伝達窓を備えた本発明によるコーティングされた窓ガラスの図である。
図5】伝達窓を備えた本発明による窓ガラスを形成するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、従来技術による伝達窓(5)の概略図である。コーティングが除去された領域(3a)が、内側グリッドライン(4a)の領域内で金属含有コーティング(2)上に適用される。グリッド領域(3a)と周辺の金属含有コーティング(2)の間の境界領域(6)において、実際のペインに光学的なゆがみ、例えば光の反射またはぶれなどが容易に生じる可能性がある。境界領域(6)は例示の目的で視覚的に強調されるが、概して実際の窓ガラスにおいては太線によって特徴付けられるわけではない。詳細には、このような光学的効果は、コーティング工程と、その後の部分的なコーティング除去作業の後に曲げられるベースペイン(1)の場合において生じる。曲げ工程におけるコーティングされた領域と部分的にコーティングが除去された領域の異なる温度吸収率が、ベースペイン(1)(図示せず)内に異なる応力のプロフィールを形成する。
【0038】
図2は、本発明による伝達窓(5’)の概略図である。コーティングが除去されたグリッド領域(3a)が、内側グリッドライン(4a)の領域内で金属含有コーティング(2)上に適用される。グリッド領域(3a)は、グリッド領域縁部(3b)によって周りを囲まれ、この場合グリッド領域縁部(3b)は、外側グリッドライン(4b)によって形成される。外側グリッドライン(4b)は、内側から外側にサイズが拡大する断続部(4c)を有する。このような断続部(4c)は、図2に描かれるように外側グリッドライン(4b)の間の交差点の領域内に、あるいは交差点の間のそれらの外側グリッドライン(4b)上のいずれかに配置することができる。驚くべきことに、本発明によるグリッド領域縁部(3b)によるグリッド領域(3a)の境界づけは、伝達窓(5’)の領域における光学的な阻害の出現をかなり低減する。
【0039】
本発明の文脈において、グリッド領域3aは、グリッドラインの断続部4cを持たない領域である。グリッド領域3aの境界をつける最も外側のグリッドライン(境界領域6)は、単に例として図面に他のグリッドラインより幅広に描かれる。グリッド領域縁部3bは、外側グリッドライン4bを含み、これは内側グリッドライン4aの延長部を形成する。グリッド領域縁部3bはまた、外側グリッドライン4bを含んでおり、これはグリッド領域3aの境界をつける幅広に描かれた最も外側のグリッドライン6に対して平行に配置される。グリッド領域縁部3bはまた、グリッド領域3aの丸みがつけられた角の領域内に追加の外側グリッドライン4bも含む。
【0040】
図3は内側グリッドライン(4a)と、外側グリッドライン(4b)との拡大図である。内側グリッドライン(4a)および外側グリッドライン(4b)は好ましくは、移行部がなく互いの中へと伸びている。例えばグリッドライン(4b)の交差点における断続部(4c)は、外側グリッドライン(4b)の始まりを示している。断続部(4c)の面積は、内側グリッドライン(4a)から外側グリッドライン(4b)の方向に拡大している。この断続部(4c)の拡大は、本発明による部分的にコーティングが除去された伝達窓(5’)と、ベースペイン(1)上の金属含有コーティング(2)の間に段階的な移行部を形成する。
【0041】
図4は、本発明による伝達窓(5’)を備えた本発明によるコーティングされたペインの図を描く。金属含有コーティング(2)が、ベースペイン(1)に塗布される。本発明による伝達窓(5’)は、グリッド領域(3a)を備え、グリッド領域縁部(3b)は、金属含有コーティング(2)の領域上に位置する。追加の伝達窓(5’)が金属含有コーティング(2)に適用される場合もある。
【0042】
図5は、伝達窓(5’)を備えた本発明による窓ガラスを形成するためのフロ−チャートを描いている。第1の工程ステップにおいて、ベースペイン(1)に金属含有コーティング(2)が提供される。次のステップにおいて、金属含有コーティング(2)が、レーザによるグリッドラインの形で局所的にコーティングが除去され、第1のグリッド領域(3a)およびグリッド領域縁部(3b)が形成される。外側グリッドライン(4b)は、内側グリッド領域(3a)からグリッド面縁部(3b)の端部までずっとサイズが拡大する断続部(4c)を有する。驚くべきことに、本発明によるグリッドライン(4a、4b)は、伝達窓(5)の近傍においてコーティングされた領域とコーティングが除去された領域の間の光学的な目に見えるゆがみを低減する。詳細には、ベースペイン(1)のコーティングされた領域と、コーティングが除去されたグリッドライン(4a)の異なる熱吸収率は急速に、光学的な阻害を生じさせる、例えば不均一な光の反射などを生じさせる。
【符号の説明】
【0043】
1 ベースペイン
2 金属含有コーティング
3a グリッド領域
3b グリッド領域縁部
4a 内側グリッドライン
4b 外側グリッドライン
4c 断続部
5 従来技術による伝達窓
5’ 本発明による伝達窓
6 グリッド領域の境界領域
図1
図2
図3
図4
図5