(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129377
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】積層形フォトカプラモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/12 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
H01L31/12 B
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-82164(P2016-82164)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-208028(P2016-208028A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】15001126.0
(32)【優先日】2015年4月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504324855
【氏名又は名称】アズール スペース ソーラー パワー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AZUR SPACE Solar Power GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング グーター
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル フーアマン
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス ヴェヒター
【審査官】
吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−093267(JP,A)
【文献】
特開昭63−044776(JP,A)
【文献】
特開昭62−244181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐表面を有する送信領域(SF)を備えた送信モジュール(S)と、表面を有する受信領域(EF)を備えた受信モジュール(E)と、
‐平板状の電気的な絶縁体(IS)と、
を有する積層形のフォトカプラモジュール(OPT)であって、
‐前記絶縁体(IS)は、前記送信モジュール(S)と前記受信モジュール(E)との間に設けられており、
‐前記送信モジュール(S)と前記受信モジュール(E)と前記絶縁体(IS)とは、積層形に互いに上下に重ねられて配置されており、
‐前記送信モジュール(S)と前記受信モジュール(E)とは互いに電気的に分離されているが、互いに光学的に結合されており、かつ、前記絶縁体(IS)は少なくとも、前記送信領域(SF)の放出波長の一部に対して透明であり、
‐前記送信領域(SF)の表面の重心線と前記受信領域(EF)の表面の重心線とは互いに実質的または正確に平行であり、
‐前記送信モジュール(S)の光が主に前記絶縁体(IS)を通過して、または前記絶縁体(IS)のみを通過して、前記受信モジュール(E)に作用すべく、両重心線間のオフセットは、各重心線から前記送信領域(SF)の表面の外縁辺または前記受信領域(EF)の表面の外縁辺までの距離の1/2未満または1/10未満または1/50未満であり、
前記絶縁体(IS)は全ての側面において、積層体からバルコニー状に突出しており、
‐前記受信モジュール(E)は、互いに直列接続されたN個の部分電圧源を有し、ただし、Nは自然数であり、かつN≧2であり、
‐各部分電圧源の部分電圧の相互間の偏差は、20%未満であり、
‐各部分電圧源は、pn接合を有する半導体ダイオード(D1・・・DN)を備えており、
‐それぞれ2つの連続する部分電圧源間にトンネルダイオード(TD1・・・TDN−1)が設けられており、
‐前記部分電圧源と前記トンネルダイオード(TD1・・・TDN−1)とは、共にモノリシック集積されている、
ことを特徴とする積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項2】
前記送信領域(SF)の表面の大きさと前記受信領域(EF)の表面の大きさとの差は、20%未満である、
請求項1記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項3】
前記送信領域(SF)の表面および前記受信領域(EF)の表面は、4角形の形状であり、各4角形の最長の辺の長さは、2mm未満である、
請求項1または2記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項4】
前記送信モジュール(S)と前記絶縁体(IS)と前記受信モジュール(E)とから成る積層体は、同一のパッケージ(G)内に集積されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項5】
前記送信領域(SF)の表面と前記受信モジュール(E)の表面とは、等しい大きさであり、
電気的端子領域を除いて、前記送信領域(SF)全体が光(L)を放出して、前記受信領域(EF)全体が光(L)を吸収する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項6】
前記送信領域(SF)の表面および前記受信モジュール(E)の表面は、正方形であり、
前記各表面は、それぞれ、0.2×0.2mm2超かつ4mm2未満または1mm2未満の面積を有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項7】
前記送信モジュール(S)は、送信側の波長またはRCLEDまたは面発光レーザに対する光学ミラーを有する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項8】
平板状の前記絶縁体(IS)は、プラスチックから、および/または、ガラスから、および/または、二酸化アルミニウムから、および/または、エポキシ樹脂から、および/または、シリコーンから成る、
請求項1から7までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項9】
前記絶縁体(IS)は、全ての側面において、積層体から少なくとも5μm突出している、
請求項1から8までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項10】
前記絶縁体(IS)の厚さは、0.5mm未満であり、なおかつ少なくとも50μmである、
請求項1から9までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項11】
前記送信領域(SF)の放出波長は、前記受信領域(EF)の吸収端の波長に等しいか、または前記吸収端の波長より最大10%短い、
請求項1から10までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項12】
前記送信モジュール(S)および前記受信モジュール(E)は、III−V族材料から成る、
請求項1から11までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項13】
前記受信モジュール(E)は、GaAsおよび/またはGe基板を有する、
請求項1から12までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項14】
前記受信モジュール(E)は、(Al)GaAsおよび/またはInGaPおよび/またはInGaAs材料を含む、
請求項1から13までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項15】
前記受信モジュール(E)および前記送信モジュール(S)は、積層方向において角錐台状の形状を有し、
角錐台の下面と前記角錐台の上面との面積の差は、少なくとも5μm2である、
請求項1から14までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項16】
前記送信領域(SF)の表面は前記絶縁体(IS)の上面に直接配置されており、かつ、受信領域(EF)の表面は前記絶縁体(IS)の下面に直接配置されていることにより、前記送信領域(SF)の表面と前記受信領域(EF)の表面とが互いに面している、
請求項1から15までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項17】
前記送信モジュール(S)は、基板層(SUBS)を備えており、前記基板層(SUBS)は、前記絶縁体(IS)の上面に配置されており、かつ、前記受信モジュール(E)は、基板層(SUBE)を備えており、前記基板層(SUBE)は、前記絶縁体(IS)の下面に配置されていることにより、両基板層(SUBS,SUBE)は、互いに直接面している、
請求項1から15までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【請求項18】
前記絶縁体(IS)は、最大250μm突出する、
請求項1から16までのいずれか1項記載の積層形のフォトカプラモジュール(OPT)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層形フォトカプラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第10011258号明細書、米国特許出願公開第20140042344号明細書、米国特許出願公開第20140212085号明細書、独国特許出願公開第3317054号明細書、米国特許出願公開第20060060955号明細書、米国特許第4127862号明細書、独国特許出願公開第3633181号明細書および米国特許第4996577号明細書から、種々のフォトカプラモジュールが公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる先行技術を背景として、本発明の課題は、従来技術をさらに発展させた装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題は、請求項1に記載の特徴を有する積層形フォトカプラモジュールにより解決される。従属請求項に本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0005】
本発明の対象は、表面を有する送信領域を備えた送信モジュールと、表面を有する受信領域を備えた受信モジュールと、当該送信モジュールと当該受信モジュールとの間に形成された平板状の電気絶縁体とを有する積層形フォトカプラモジュールであって、当該送信モジュールと当該受信モジュールと当該絶縁体とは、積層形となるように互いに上下に配置されており、前記絶縁体は上面と下面とを有する積層形フォトカプラモジュールを実現するものである。送信モジュールと受信モジュールとは互いに電気的に分離されているが、互いに光学的に結合されており、絶縁体は少なくとも、送信モジュールの放出波長の一部に対して透明であり、送信領域の表面の重心線と受信領域の表面の重心線とは互いに実質的または正確に平行であり、送信モジュールの光が主に絶縁体を通過して、または絶縁体のみを通過して、受信モジュールに、ないしは受信領域の表面に、かつ受信領域に作用すべく、両重心線のオフセットは、各重心線から送信領域の表面の外縁辺または受信領域の表面の外縁辺までの距離の1/2未満または1/10未満または1/50未満であり、絶縁体は全ての側面において、積層体からバルコニー状に突出しており、受信モジュールは、互いに直列接続されたN個の部分電圧源を有し、ただし、Nは自然数であり、かつN≧2であり、各部分電圧源の部分電圧の相互間の偏差は20%未満であり、各部分電圧源は、pn接合を有する半導体ダイオードを備えており、それぞれ2つの連続する部分電圧源間にトンネルダイオードが設けられており、部分電圧源とトンネルダイオードとは共にモノリシック集積されている。
【0006】
本願において「表面の重心線」との用語は、表面の重心の位置における当該表面の面法線を指すことを述べておく。すなわち、2つの表面の重心線は平行であり、また、各重心線が属する各面は互いに平行である、ということになる。ここで両表面は平坦であるか、または少なくともほぼ平坦であるとみなすことができる。すなわち、2つの表面の重心線は平行であり、また、各重心線が属する各面は互いに平行である、ということになる。ここで両表面は平坦であるか、または少なくともほぼ平坦であるとみなすことができる。本願では「表面」との用語は、有利には平坦な表面であり、特に、コンタクトシステムまたはメタライジングを有しない表面を指すことを述べておく。
【0007】
また、半導体ダイオードのpn接合を用いると、光の入射により生成された電子正孔対が分離され、これにより上述の各部分電圧が生成されることが明らかである。よって、部分電圧は常に電気化学的な電位差である。有利には、p層とn層との間に真性ドープ層を配置することができる。
【0008】
「平板状」との用語は、有利には2つの平行かつそれぞれ平坦な小板であって、両平坦な面が平板の上面と下面とに形成されている小板を指すことを述べておく。
【0009】
D1からD4。ダイオードD1からD4は、図示されていないpn接合を有する。それぞれ2つの連続する部分電圧源間に、それぞれ1つのトンネルダイオードTD1からTD3が設けられている。部分電圧源とトンネルダイオードTD1からTD3とは、共にモノリシック集積されている。
【0010】
さらに、送信モジュールおよび受信モジュールはいわゆる「ダイス」の形態となっている。すなわち、パッケージ封止されていないモジュールとなっている。さらに、送信モジュールは送信領域の他に裏面も有し、受信モジュールは受信領域の他に裏面も有する。具体的にいうと、送信モジュールおよび受信モジュールはダイスとして、有利にはそれぞれ絶縁体上ないしは絶縁体下方に直接配置されている。有利には、かかる積層体は全体的に、パッケージ封止されていない部品となる。さらに、個数Nは有利には4に等しいことを述べておく。
【0011】
「透明」との用語は、少なくとも送信波長領域において吸収率が低いことをいうと解されるものである。有利には、入射した強度に対する吸収率は20%未満または10%未満であり、最も有利なのは5%未満である。
【0012】
さらに、受信モジュールでは、具体的には受信領域では、半導体ダイオードは互いに、同一または実質的に同一の半導体材料を有する半導体層の実質的に同一または正確に同一の配列体を備えており、ダイオードを直列接続することにより、受信モジュールの総電圧は部分電圧の和となることが分かる。このことにより、各半導体ダイオードの部分電圧を、容易にほぼ等しくすることができる。有利には、積層体の任意の2つの半導体ダイオード相互間の部分電圧の偏差は10%未満である。さらに、各ダイオードから絶縁体までの距離が増大するにつれて、吸収領域の厚さが大きく増大し、これにより各ダイオードの総厚が大きく、有利には指数関数的に増大することも述べておく。
【0013】
利点は、受信モジュールにおける複数のモノリシックダイオードの新規の積層形配置により、高い感光度と相俟って、非常にコンパクトで小さいフォトカプラモジュールを製造できることである。とりわけ、放出された光を直接入力することができる。すなわち、放出された光が受信モジュールに入射する前に、光が絶縁体内を通過するときに進むべき経路が短くなる。
【0014】
他の利点は、受信モジュールが高電圧を、有利には2Vを上回る高い電圧を、最も有利には4Vを上回る高い電圧を供給し、かつその他に、1mA/cm
2を上回る高い電流を、最も有利には100mA/cm
2を上回る高い電流を供給できることである。このことにより、10MHzを上回る高速のスイッチング速度を、有利には100MHzを上回るスイッチング速度を実現することができる。
【0015】
また、送信領域が受信領域側に来るように、送信領域を絶縁体の表面に直接結合し、かつ、受信領域を絶縁体の下面に直接結合するのが有利であることを述べておく。このことにより、放出された光が受信面まで、すなわち受信領域の表面までに通る距離が最小限になる。
【0016】
他の択一的な実施形態では、送信モジュールの裏面は絶縁体の上面に結合されており、かつ、受信モジュールの裏面は絶縁体の下面に結合されている。試験により、送信モジュールの裏面に基板層を設け、かつ、受信モジュールの裏面に基板層を設けることにより、有利な積層形構成を実現できることが判明した。換言すると、本実施形態では、両基板層が互いに直接面していることとなる。上述の両基板層の構成により、各モジュールの機械的安定性を向上させ、かつ、モジュールの高信頼性のコンタクトを実現することができる。
【0017】
他の1つの実施形態では、送信モジュールと絶縁体と受信モジュールとの積層体は、同一のパッケージ内に集積されている。
【0018】
1つの有利な実施形態では、送信モジュールおよび受信モジュールは積層方向において角錐台状の形状を有し、かかる角錐台の下面と当該角錐台の上面との面積の差は少なくとも5μm
2である。
【0019】
1つの実施形態では、送信領域の表面の大きさと受信領域の表面の大きさとの差は20%未満であり、有利には10%未満である。試験により、受信領域の表面の大きさを送信領域の表面の大きさと等しくすること、またはこれに代えて択一的に、受信領域の表面の大きさを送信領域の表面の大きさより最大20%大きくすることが有利であることが判明した。
【0020】
さらに、送信領域の表面全体および/または送信領域が光を放出し、受信領域の表面全体および受信領域が全体的に光を吸収するのが有利である。かかる構成により、フォトカプラモジュールの効率を向上させることができる。もちろん、光が送信領域の表面を通過して放出される場合、コンタクト金属により覆われる面積は可能な限り小さい。このことは、吸収の場合についても相違することはなく、光が受信領域の表面を通過して当該受信領域において吸収される場合、受信領域の全表面のうちコンタクト金属により覆われる面積ないしは面積割合が可能な限り小さいことが適用される。
【0021】
1つの実施形態では、送信領域の表面および受信領域の表面は4角形の形状であり、各4角形の最長の辺の長さは2mm未満である。1つの実施形態では、送信領域の表面および受信領域の表面は正方形であり、各表面はそれぞれ、0.2×0.2mm
2超かつ4mm
2未満または1mm
2未満の
面積を有する。
【0022】
さらに、送信領域の表面および受信領域の表面がそれぞれ、全表面のうち10%未満の割合のストリップ状もしくは格子状もしくは小さいコンタクト面を有するか、または面全体に及ぶメタライジングを有すると有利である。さらに、送信モジュールの裏面および受信モジュールの裏面は双方とも、全表面のうちそれぞれ10%未満の割合のストリップ状コンタクト面もしくは格子状コンタクト面もしくは小さいコンタクト面を有するか、または面全体に及ぶメタライジングを有する。
【0023】
他の1つの実施形態では送信モジュールは、送信側の波長またはRCLEDまたは面発光レーザに対する光学ミラーを有する。
【0024】
試験により、平板状の絶縁体はプラスチックならびに/もしくはガラスならびに/もしくは二酸化アルミニウムならびに/もしくはエポキシ樹脂ならびに/もしくはシリコーンを含むか、またはこれらに類する化合物から成るのが有利であることが判明した。これには、複数の異なる材料から成る多層構成も包含される。特にたとえば、両モジュールすなわち送信モジュールおよび受信モジュールはそれぞれ、透明のシリコーン接着層より薄く形成された接続層により、薄いガラス板と摩擦結合により接合することができる。もちろん、他の接合材料および/または固定剤を用いて送信モジュールおよび受信モジュールを絶縁体に接合することによっても積層体を構成できることが明らかである。
【0025】
1つの有利な実施形態では、絶縁体の厚さは0.5mm未満であり、有利には0.3mm未満であるが、50μmより厚い。その際にはもちろん、送信モジュールと受信モジュールとの間の絶縁破壊耐性が2kVを越えることを保証できるように、絶縁体の厚さを選択する。その際に有利なのは、平板状の絶縁体が全ての側面において積層体から少なくとも5μm突出していることである。すなわち、絶縁体は周面にバルコニーを形成し、かかるバルコニーは有利には、最大250μm突出する。
【0026】
他の1つの実施形態では、送信モジュールと受信モジュールと絶縁体とから成る積層体の総厚は、パッケージ収容されていない状態では3mm未満であり、有利には2mm未満であり、最大で有利には1.2mm未満であるが、0.2mmより厚い。
【0027】
送信モジュールと受信モジュールとの間の結合効率を増大させるために有利なのは、送信モジュールの放出波長が受信モジュールの吸収端の波長に等しいか、または当該吸収端の波長より最大10%短いことである。他の1つの構成では、受信モジュールおよび送信モジュールは III-V 族材料を含むか、または III-V 族材料から成る。とりわけ、受信モジュールはGaAsおよび/またはGe基板を有する。有利には、受信モジュールは(Al)GaAsおよび/またはInGaPおよび/またはInGaAs材料を含む。ここで、かっこ書した要素、ここではたとえばアルミニウムは、存することが可能なものであり、必須の要素ではないことに留意すべきである。
【0028】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図面中、同種の要素には同一の符号を付している。図中の実施形態は非常に概略化されている。すなわち、距離および垂直方向ならびに横方向の寸法は実寸の比率通りではなく、特記しない限りは、相互間に導出可能な幾何学的関係も存しない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1の実施形態の上方向からの断面図と、一部を拡大した図である。
【
図2】第2の実施形態の上方向からの断面図である。
【
図3a】基板を備えた第3の実施形態の上方向からの断面図である。
【
図3b】基板を備えた第4の実施形態の上方向からの断面図である。
【
図5】パッケージ収容された実施形態の上方向からの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の第1の実施形態の積層形フォトカプラモジュールOPTの上方向からの断面図と共に、一部を拡大した図である。フォトカプラモジュールOPTは、表面を有する送信領域SFを備えた送信モジュールSと、受信領域EFおよび表面を備えた受信モジュールEとを含む。一部拡大図は、受信領域EFの基本的構成を示している。ここでは、受信領域EFおよび受信モジュールEの面積は、送信領域SFおよび送信モジュールSの面積と等しい。フォトカプラモジュールOPTはさらに、平板状の電気絶縁体ISを有し、この絶縁体ISは送信モジュールSと受信モジュールEとの間に設けられている。
【0031】
全体として、送信モジュールSおよび受信モジュールEおよび絶縁体ISは、互いに上下に重ねられて積層形に配置され、互いに摩擦結合されている。ここで、送信モジュールSと受信モジュールEとは互いに電気的に分離されているが、互いに光学的に結合されている。絶縁体ISは少なくとも、送信モジュールSの放出波長に対して透明である。3つのモジュールS,ISおよびEは、送信領域SFの表面の重心線と、受信領域EFの表面の重心線とが、互いに正確に平行であり、かつ両重心線間にオフセットがないように配置される。送信モジュールSの光Lは、絶縁体ISを通って受信モジュールEに直接作用する。
【0032】
一部拡大図にて、受信モジュールEの受信領域EFを詳細に示す。電気技術的に見ると、受信モジュールEは4つの互いに直列接続されている部分電圧源を有する。各部分電圧源は半導体ダイオードD1からD4を備えており、ダイオードD1からD4は、図示されていないpn接合を有する。それぞれ2つの連続する部分電圧源間に、それぞれ1つのトンネルダイオードTD1からTD3が設けられている。部分電圧源とトンネルダイオードTD1からTD3とは、共にモノリシック集積されている。受信モジュールEは、送信モジュールSを通じて照射されると、2Vを上回る総電圧を生成する。その際には、積層体の各ダイオードが生成する部分電圧はほぼ等しい。
【0033】
図2は、本発明の第2の実施形態のフォトカプラモジュールOPTの上方向からの断面図である。以下では、
図1に示された実施形態との相違点についてのみ説明する。平板状の絶縁体ISの面積は、送信モジュールSの面積および受信モジュールEの面積より大きいので、絶縁体ISは周縁において、積層体からバルコニー状に突出する。絶縁体ISと送信モジュールSとの間、および絶縁体ISと受信モジュールEとの間にそれぞれ、透明な接続層KLが設けられている。接続層KLを用いて、受信モジュールEおよび送信モジュールSは絶縁体ISに摩擦結合されて、積層体を構成している。
【0034】
図3aは、本発明の第3の実施形態のフォトカプラモジュールOPTの上方向からの断面図である。以下では、
図1および
図2に示された実施形態との相違点についてのみ説明する。送信モジュールSは送信領域SFの他にさらに、基板層SUBSも備えている。受信モジュールEは受信領域EFの他にさらに、基板層SUBEも備えている。両基板層SUBSおよびSUBEは、支持層として形成されている。両基板層SUBSおよびSUBE間に送信領域SFおよび受信領域EFが配置されている。平板状の絶縁体ISの上面および下面には、同様に透明である接続層KLが設けられている。接続層KLの厚さは0.2mm未満であり、有利には0.02mm未満であり、絶縁体ISの上面と送信領域SFとを素材結合し、かつ、当該絶縁体ISの下面と受信領域EFとを素材結合する。かかる配置構成の利点は、送信領域SFの光Lが絶縁体ISを通って直接、受信領域EFに入射することである。
【0035】
図3bは、本発明の第4実施形態のフォトカプラモジュールOPTの上方向からの断面図である。以下では、
図3aに示された実施形態との相違点についてのみ説明する。送信領域SFと絶縁体ISとの間に基板層SUBSが配置されており、受信領域EFと絶縁体ISとの間に基板層SUBEが配置されている。同図では光Lは、受信領域EFに当たって吸収されるために、絶縁体ISの他にさらに両基板層SUBSおよびSUBEも通過する。もちろん、両基板層SUBSおよびSUBEは、送信モジュールSの放出波長領域において低い吸収率を示すものである。
【0036】
図4は、フォトカプラモジュールOPTの一部としての受信モジュールEの細部を示す断面図である。以下、
図1の実施形態との相違点についてのみ説明する。ダイオードD1からD4の層厚は、各ダイオードから絶縁体ISまでの距離が大きくなると共に連続的に増大していき、第4のダイオードD4の層厚が最大となる。
【0037】
図5は、パッケージ収容された実施形態のフォトカプラモジュールOPTの上方向からの断面図である。以下、上述の実施形態との相違点についてのみ説明する。送信モジュールSと絶縁体ISと受信モジュールEとの積層体は、同一のパッケージG内に組み込まれている。送信モジュールSは第1の電気的接続コンタクトKS1および第2の電気的接続コンタクトKS2を有する。受信モジュールEは第1の電気的接続コンタクトKE1および第2の電気的接続コンタクトKE2を有する。