特許第6129382号(P6129382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129382キューティクル剥離量の測定方法、及び該方法を用いた毛髪の損傷度の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6129382
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】キューティクル剥離量の測定方法、及び該方法を用いた毛髪の損傷度の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20170508BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20170508BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20170508BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20170508BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   G01N33/68
   G01N33/50 H
   G01N33/48 S
   G01N21/47 Z
   A61B5/10 300P
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-99487(P2016-99487)
(22)【出願日】2016年5月18日
【審査請求日】2017年3月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松井 正
(72)【発明者】
【氏名】布施 直也
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0249849(US,A1)
【文献】 特開2002−112978(JP,A)
【文献】 特開2005−77251(JP,A)
【文献】 特開2005−187400(JP,A)
【文献】 特公昭61−10743(JP,B2)
【文献】 特開2007−238607(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0128220(US,A1)
【文献】 川副智行、藤井敏弘,毛髪の“みえないダメージ”の可視化技術,Cosmetic Stage,2010年 6月25日,Vol. 4, No. 6,p. 26-32
【文献】 岡本隆太,微粒子可視化システム,建築設備と配管工事,2013年11月 5日,Vol. 51, No. 13,p. 66-69
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/68
G01N 21/47
G01N 33/48
G01N 33/50
A61B 5/107
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルーム内において、
被測定物質に外的刺激を与える工程と、
外的刺激により前記被測定物質より剥離するキューティクルを微粒子可視化システムによって光学的に捕捉し、前記キューティクルの剥離量を計測する工程と、
を含むことを特徴とするキューティクルの剥離量の測定方法。
【請求項2】
前記微粒子可視化システムは、レーザーシートを生成する光源システム、前記キューティクルがレーザーシートを通過するときに発生する散乱光を捉える撮像システム、及び前記キューティクルの画像の表示又は処理を行う画像処理システムからなる、請求項1に記載のキューティクルの剥離量の測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキューティクルの剥離量の測定方法を用いて毛髪からのキューティクルの剥離量を測定し、毛髪の損傷度を評価することを特徴とする、外的刺激による毛髪の損傷度の評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキューティクル剥離量の測定方法、及び該方法を用いた毛髪の損傷度の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キューティクルの剥離量に関する測定方法として、外的刺激を与える前後の毛髪の外径を測定することによってキューティクルの剥離量を推定する方法、水中で毛髪をブラッシングし、回収した残液から遠心分離によって剥離したキューティクルを回収する方法等が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、外的刺激によって剥離するキューティクルそのものの量を逐次測定する方法はなかった。特に毛髪に関して、日常的な外的刺激であって比較的強い外的刺激のブラッシングから、穏やかな外的刺激である風による毛髪同士の擦れ等の幅広い外的刺激によって剥離するキューティクルそのものの量を逐次測定する方法はなかった。また、レーザー光による微粒子の可視化方法および装置については知られているが、キューティクル剥離量の測定に応用する方法は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−112978号公報
【特許文献2】特開2005−187400号公報
【特許文献3】特開2005−077251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、毛髪等のキューティクルを表面に有する繊維状物質から、ブラッシング等の外的刺激によって、その都度剥離するキューティクルの量を測定する方法、及び該方法を用いて毛髪の損傷度を評価する方法を見出そうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、クリーンルーム内において、剥離したキューティクルを微粒子可視化システムによって光学的に捕捉することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の態様であるキューティクルの剥離量の測定方法は、クリーンルーム内において、外的刺激により前記被測定物質より剥離するキューティクルを微粒子可視化システムによって光学的に捕捉し、前記キューティクルの剥離量を計測する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0008】
更に、前記態様において、前記微粒子可視化システムは、レーザーシートを生成する光源システム、前記キューティクルがレーザーシートを通過するときに発生する散乱光を捉える撮像システム、及び前記キューティクルの画像の表示又は処理を行う画像処理システムからなることが好ましい。
【0009】
本発明の第2の態様である外的刺激による毛髪の損傷度の評価方法は、前記態様のキューティクルの剥離量の測定方法を用いて毛髪からのキューティクルの剥離量を測定し、毛
髪の損傷度を評価することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外的刺激によって剥離するキューティクルそのものの量を逐次測定することができる。
【0011】
特に毛髪に関して、日常的な外的刺激であって比較的強い外的刺激のブラッシングから穏やかな外的刺激である風による毛髪同士の擦れ等の幅広い外的刺激によって剥離するキューティクルそのものの量を逐次測定することが可能になる。また、外的刺激によって剥離するキューティクルの量を測定することにより、毛髪の損傷度を評価することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るキューティクルの剥離量の測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のキューティクル剥離量の測定方法は、外的刺激により被測定物質から剥離するキューティクルを光学的に捕捉し、キューティクルの剥離量を測定する方法である。
【0015】
本発明のキューティクル剥離量の測定方法は、被測定物質に外的刺激を与える工程と、外的刺激により被測定物質から剥離するキューティクルを微粒子可視化システムによって光学的に捕捉し、キューティクルの剥離量を計測する工程を含む。
【0016】
本発明に用いられる微粒子可視化システムは、シート状のレーザー光であるレーザーシートを生成する光源部、前記キューティクルがレーザーシートを通過するときに発生する散乱光を光学的に捉える撮像部、及び前記キューティクルの画像の表示又は処理を行う画像処理部からなることが好ましい。
【0017】
レーザーシートを生成する光源部は、レーザーシートを照射する光源ヘッドとレーザー光の出力を調整する光源コントローラを備える。撮像部は、被測定物質から剥離したキューティクルがレーザーシートを通過する際に発生する散乱光を捉えるための高感度カメラを備える。画像処理部は、撮像部から送られてきた画像の表示、録画及び背景減算等の画像処理を行うもので、画像中の任意の領域に映し出されたキューティクルの量を計測する機能を有していることが好ましい。このような微粒子可視化システムとしては、新日本空調株式会社が提供する微粒子可視化システム等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられるレーザーシートの生成状態は特に限定されるものではないが、水平ないし略水平状であることが好ましい。水平ないし略水平状のレーザーシートとすることで、被測定物質から剥離したキューティクルの鉛直方向への自由落下を利用して、レーザーシートを通過するときに発生する散乱光を捉えることができ、測定に使用する装置を複雑な構成にする必要がない。
【0019】
本発明に用いられる被測定物質は、キューティクルを表面に有する繊維状物質であり、具体的にはケラチン繊維である毛髪、羊毛等が挙げられる。測定には被測定物質を毛束状にすることが望ましい。毛束の量としては発生する散乱光の量を勘案し適宜決めることができるが、1〜20gであることが望ましい。1g未満ではキューティクル剥離量が少なく測定に十分な散乱光が得られないか、得ようとしてレーザー光の出力を上げることによ
る経済的な負荷が高まる。また、クリーンルーム清浄度を高めることによる経済的な負荷が高まる。20gを超えると被測定物質に対して一度に均一な外的刺激を与えにくく、キューティクル剥離量が多くクリーンルームの内の清浄度に悪影響を与える可能性が増すことから好ましくなく、被測定物質の調製も困難になる。被測定物質の設置の位置と方法は特に限定されないが、レーザーシートの上部に吊り下げて設置することが好ましい。
【0020】
本発明に用いられる被測定物質については、測定前に被測定物質表面の付着物を洗浄剤組成物等で除去しておくことが望ましい。剥離キューティクル以外の物質による散乱光を発生させないために望ましい前処理方法となる。
【0021】
本発明の外的刺激としては、櫛通し、手櫛通し、振動等があるが、毛髪の手入れを想定すれば櫛通しによる外的刺激が再現性の点から望ましい。手櫛通しでは手からの発塵による妨害があり好ましくない場合がある。測定前に櫛表面の付着物を洗浄剤組成物等で除去しておくことが望ましい。剥離キューティクル以外の物質による散乱光を発生させないために望ましい前処理方法となる。また、振動の例示としては、風による毛髪同士の擦れが日常的に起こり得る外的刺激として好ましい。更に、毛束の毛流れ方向に対し並行、直行または一定の角度をもって一定の振幅、速度で束ねた部位を振動させる外的刺激も日常的に起こり得るものであり好ましい例である。
【0022】
(キューティクルの剥離量の測定方法)
以下、本発明の一実施形態であるキューティクルの剥離量の測定方法を説明する。図1は、本方法を説明するための模式図である。本実施形態では、上記したように必要に応じて前処理を行った被測定物質である毛束9と、微粒子可視化システム1とをクリーンルーム内に設置し、光源部2の光源ヘッド3よりレーザーシート5を水平状に生成させる。次に、毛束9を水平状のレーザーシート5の上部に吊り下げて設置し、被測定物質に櫛10を用いて櫛通しによる外的刺激を与え、毛束9から剥離したキューティクル8がレーザーシート5を通過するときに発生する散乱光を撮像部6で捉え、画像処理部7においてキューティクルの画像の表示又は処理を行い、キューティクルの剥離量を測定する。
【0023】
(毛髪の損傷度の評価方法)
本発明の別の実施形態である毛髪の損傷度の評価方法では、毛髪について前記のキューティクルの剥離量の測定方法による測定を行い、測定されたキューティクルの剥離量に基づいて、毛髪の損傷度を評価する。このキューティクルの剥離量の数値が大きいものほど、より損傷度が高いと判断することができる。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。
【0025】
健康な毛髪の毛束(20cm、5g)を8質量%ラウレス硫酸ナトリウム水溶液で洗浄後、市販のブリーチ剤で3回処理した後に自然乾燥させたダメージ毛髪と、健康な毛髪の毛束(20cm、5g)を8質量%ラウレス硫酸ナトリウム水溶液で洗浄後に自然乾燥させた健康毛髪を調製し、新日本空調株式会社が提供する微粒子可視化システムによる測定に供した。
【0026】
クラス100のクリーンルーム内に水平状のレーザーシートを発生させ、その上部に前記ダメージ毛髪と健康毛髪を吊り下げ、前記ダメージ毛髪及び健康毛髪にそれぞれ市販の櫛(アルコール洗浄済み)を通して外的刺激を与えた。櫛通しは2回行い、剥離するキューティクルが落下し前記水平状のレーザーシートを通過するときに発生する散乱光を光学的に捕捉し、その画像処理によって散乱光の発生回数をカウントしキューティクル剥離量
とした。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1から、健康毛髪とダメージ毛髪の各々において櫛通しによって剥離したキューティクル量の違いを評価することが可能なキューティクル剥離量の測定方法であることが明らかとなった。
【0029】
また、ブリーチ毛髪の毛束(20cm、5g)を吊り下げ櫛通しを行わない状態でのカウント数(計測時間は上記櫛通し2回に要した時間)は6であった。櫛通しを行わない状態であっても上から下への気流が存在するため被測定物質間の擦れが起こり、キューティクルの剥離が発生し、測定することが可能であった。ブリーチ毛髪の毛束(20cm、2g)で同様に行った測定ではカウント数(計測時間は上記櫛通し2回に要した時間)は1となり、毛髪量の違いによるキューティクル剥離量の差も明らかにできた。
【0030】
ブリーチ毛髪の毛束(20cm、5g)を吊り下げ、その下部に表面に両面テープを貼ったプレパラートを配置し、上記と同様に櫛通しを2回行い、落下してくる物質を前記プレパラートに捕捉し、レーザー顕微鏡にて観察した結果、主に短径、長径が各々1〜3μm、2〜5μmの剥離キューティクルが観察された。
【符号の説明】
【0031】
1 微粒子可視化システム
2 光源部
3 光源ヘッド
4 光源コントローラ
5 レーザーシート
6 撮像部
7 画像処理部
8 キューティクル
9 毛束
10 櫛
【要約】
【課題】毛髪等のキューティクルを表面に有する繊維状物質から、ブラッシング等の外的刺激によって、その都度剥離するキューティクルの量を測定する方法、及び該方法を用いて毛髪の損傷度を評価する方法を提供する。
【解決手段】クリーンルーム内において、被測定物質に外的刺激を与える工程と、外的刺激により前記被測定物質より剥離するキューティクルを微粒子可視化システムによって光学的に捕捉し、前記キューティクルの剥離量を計測する工程と、を含むことを特徴とするキューティクルの剥離量の測定方法。
【選択図】図1
図1