特許第6129393号(P6129393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129393コンピテンシー目標設定支援装置,支援方法,及び支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6129393
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】コンピテンシー目標設定支援装置,支援方法,及び支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20170508BHJP
【FI】
   G06Q10/06
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-176631(P2016-176631)
(22)【出願日】2016年9月9日
【審査請求日】2017年1月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513207367
【氏名又は名称】株式会社あしたのチーム
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】高橋 恭介
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 弘
【審査官】 山本 雅士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−150753(JP,A)
【文献】 特開2004−348285(JP,A)
【文献】 特開2008−242532(JP,A)
【文献】 ▲高▼橋 潔 Kiyoshi Takahashi,人事評価の総合科学 初版 Scientific Integration of Performance Appraisal Practices,日本,株式会社白桃書房 HAKUTOUSHOBOU 大矢 栄一郎,2010年11月26日,第1版,pp.83-93
【文献】 岩出 博 HIROSHI IWADE,LECTURE人事労務管理 〔四訂版〕,株式会社泉文堂 大坪 克行,2007年12月10日,第4版,pp.144-152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被評価者ごとに行動特性の目標設定に関する定性的データを記憶するコンピテンシー目標設定データベースと,
被評価者ごとに業務目標に応じたMBO獲得点に関する定量的データを記憶するMBOデータベースと,
前記コンピテンシー目標設定データベースに記憶されている前記定性的データに基づいて定量的データを得る定量化部と,
前記定量化部により得られた定量的データに基づいて,各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける振分部と,
前記振分部により振分けられた少なくとも悪い目標設定をする被評価者に関する情報を記憶する被評価者データベースと,を備え,
前記定量化部は,
前記コンピテンシー目標設定データベースに記憶されている前記定性的データを所定の基準に基づいて点数化し,各被評価者のコンピテンシー獲得点を得る工程と,
各被評価者のコンピテンシー獲得点のその最大点に対する割合から,各被評価者のコンピテンシー獲得率を求める工程と,
前記MBOデータベースに記憶されている前記定量的データについて,MBO獲得点のその最大点に対する割合から,各被評価者のMBO獲得率を求める工程と,
前記コンピテンシー獲得率と前記MBO獲得率との差分値を求める工程とを行い,
前記振分部は,
前記定量化部が求めた前記差分値又はこれを加味した値に基づいて,各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける
コンピテンシー目標設定支援装置。
【請求項2】
被評価者が扱う利用者端末から入力された行動特性の目標設定に関する定性的データを添削する添削部を,さらに備え,
前記添削部は,前記被評価者データベースから悪い目標設定をする被評価者を抽出し,前記行動特性に関する定性的データが前記悪い目標設定をする被評価者により入力されたものである場合に,当該定性的データの添削を行う
請求項1に記載のコンピテンシー目標設定支援装置。
【請求項3】
行動特性の目標設定に関するNGワードを記憶するNGワードデータベースを,さらに備え,
前記添削部は,前記NGワードデータベースを参照して,前記入力された行動特性の目標設定に関する定性的データを構成する文章にNGワードが含まれる場合に,前記利用者端末に対して通知する
請求項2に記載のコンピテンシー目標設定支援装置。
【請求項4】
前記コンピテンシー目標設定データベースに記憶されている前記定性的データのうちの少なくとも一部を,行動特性の目標設定の良し悪しに関する情報に関連付けて記憶する目標設定例データベースと,
前記目標設定例データベースに記憶されている情報をトレーニングデータとして学習した良悪判別モデルを生成する良悪判別モデル生成部と,をさらに備え,
前記定量化部は,各被評価者のコンピテンシー獲得点を得る際に,前記良悪判別モデルを利用して,前記コンピテンシー目標設定データベースに記憶されている前記定性的データを点数化する
請求項1に記載のコンピテンシー目標設定支援装置。
【請求項5】
前記コンピテンシー目標設定データベースに記憶されている前記定性的データのうちの少なくとも一部を,行動特性の目標設定の良し悪しに関する情報に関連付けて記憶する目標設定例データベースと,
前記目標設定例データベースに記憶されている情報のうち,良いものとしてされている行動特性の目標設定に関する情報をトレーニングデータとして学習した添削モデルを生成する添削モデル生成部と,
被評価者が扱う利用者端末から入力された行動特性の目標設定に関する定性的データを,前記添削モデルを利用して添削する添削部を,さらに備える
請求項1に記載のコンピテンシー目標設定支援装置。
【請求項6】
被評価者ごとに行動特性の目標設定に関する定性的データを記憶するコンピテンシー目標設定データベースと,
被評価者ごとに業務目標に応じたMBO獲得点に関する定量的データを記憶するMBOデータベースと,を備える装置により実行される
コンピテンシー目標設定支援方法であって,
前記コンピテンシー目標設定データベースに記憶されている前記定性的データに基づいて定量的データを得る定量化工程と,
前記定量化工程で得られた定量的データに基づいて,各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける振分工程と,を含み,
前記定量化工程は,
前記コンピテンシー目標設定データベースに記憶されている前記定性的データを所定の基準に基づいて点数化し,各被評価者のコンピテンシー獲得点を得る工程と,
各被評価者のコンピテンシー獲得点のその最大点に対する割合から,各被評価者のコンピテンシー獲得率を求める工程と,
前記MBOデータベースに記憶されている前記定量的データについて,MBO獲得点のその最大点に対する割合から,各被評価者のMBO獲得率を求める工程と,
前記コンピテンシー獲得率と前記MBO獲得率との差分値を求める工程とを含み,
前記振分工程は,
前記定量化工程で求めた前記差分値又はこれを加味した値に基づいて,各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける工程を含む
コンピテンシー目標設定支援方法。
【請求項7】
被評価者ごとに行動特性の目標設定に関する定性的データを記憶するコンピテンシー目標設定データベースと,
被評価者ごとに業務目標に応じたMBO獲得点に関する定量的データを記憶するMBOデータベースと,
前記コンピテンシー目標設定データベースに記憶されている前記定性的データに基づいて定量的データを得る定量化部と,
前記定量化部により得られた定量的データに基づいて,各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける振分部と,
前記振分部により振分けられた少なくとも悪い目標設定をする被評価者に関する情報を記憶する被評価者データベースと,を備え,
前記定量化部は,
前記コンピテンシー目標設定データベースに記憶されている前記定性的データを所定の基準に基づいて点数化し,各被評価者のコンピテンシー獲得点を得る工程と,
各被評価者のコンピテンシー獲得点のその最大点に対する割合から,各被評価者のコンピテンシー獲得率を求める工程と,
前記MBOデータベースに記憶されている前記定量的データについて,MBO獲得点のその最大点に対する割合から,各被評価者のMBO獲得率を求める工程と,
前記コンピテンシー獲得率と前記MBO獲得率との差分値を求める工程とを行い,
前記振分部は,
前記定量化部が求めた前記差分値又はこれを加味した値に基づいて,各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける
コンピテンシー目標設定支援装置として
コンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,被評価者による行動特性の目標設定(コンピテンシー目標設定)を支援するためのコンピテンシー目標設定支援装置,支援方法,及び支援プログラムに関する。具体的に説明すると,本発明は,被評価者が行ったコンピテンシー目標設定の良し悪しを判別する機能を持つ装置に関するものであり,被評価者がより良い目標設定を自発的に行えるように支援するコンサルティング業務において活用することができる。
【背景技術】
【0002】
企業の成長のためには,社員一人ひとりが経営理念に連動した目標を持ち,それを着実に実現することが重要になる。このため,近年では,社員自身に適切な「コンピテンシー目標」,すなわち「成果を生む望ましい行動特性の目標」を設定させた上で,その目標に沿って日々の業務を行うように管理指導していくことが,企業の人事管理において重要視されている。
【0003】
また,従来から,企業の人事部門で利用される人事評価システムに関して,種々の発明が提案されている(例えば特許文献1及び特許文献2)。このような人事評価システムを利用して客観的かつ公平に社員の行動や成績を評価することは,従来から一般的に行われている
【0004】
例えば,特許文献1に開示された人事評価システムによれば,評価に対する客観性を高め,被評価者にとって変革が必要な行動をより客観的に示すことが可能になるとされている。このシステムでは,ある被評価者が予め設定された期待行動に沿って行動をしているか否かを評価する際に,評価対象である被評価者の入出力端末により複数の評価者を選定する。また,この評価システムでは,選定された評価者に対して評価を依頼する評価実施通知メールを配信し,評価者の入出力端末により入力された評価結果に基づいて,フィードバック情報を作成して被評価者の入出力端末に表示させる。このようにして,上司ならびに上司以外の複数の評価者により被評価者の評価が行われるので,評価に対する客観性が高くなる。
【0005】
また,特許文献2に開示された人事評価システムによれば,平易な条件設定での評価者割当てが可能になるとされている。このシステムにおいて,評価者割当処理部は,人事評価システムデータベースの評価者割当設定情報保存領域に保存された評価者割当設定情報と,人事管理システムデータベースの人事情報保存領域に保存された人事情報,及び組織情報保存領域に保存された組織情報をもとに適切な評価者を選択し,各被評価者に対して評価者を割当てて評価情報を更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−185080号公報
【特許文献2】特開2007−323352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,従来の人事評価システムはいずれも,被評価者が予め設定された期待行動に沿った行動を取っているか否かを事後的に評価するものであり,その被評価者が行動特性(コンピテンシー)の目標を自分自身で適切に設定できているか否かを評価する仕組みを有するものではなかった。例えば,被評価者のコンピテンシー目標設定が曖昧なものであると,事業活動において判断力が低下し,一貫性のある行動が取れなくなるため,自ずと生産性が悪くなる。また,コンピテンシー目標設定が曖昧であると,被評価者に対する評価も悪くなるため,被評価者自身の業務に対する意欲や士気の低下に繋がる。他方で,被評価者のコンピテンシー目標設定が具体的かつ明確なものであると,その目標に沿って迷いなく日々適切な行動を取ることができるようになるため,生産性が向上し,その者に対する周囲の評価も向上する。その結果,被評価者自体の意欲や士気の向上に繋げることができる。
【0008】
このように,社員の行動に対する事後的な評価も重要であるが,今後の企業活動においては,社員に対して適切なコンピテンシー目標設定を促すことがより重要になるといえる。そこで,本発明は,社員のコンピテンシー目標設定を客観的に評価し,社員一人ひとりが適切なコンピテンシー目標を自発的に設定できるように支援することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は,上記の従来発明の問題を解決する手段について鋭意検討した結果,コンピテンシー目標設定を定量的に評価して各被評価者のコンピテンシー獲得率を求めるとともに,各被評価者のMBO獲得点のその最大値に対する割合からMBO(Management By Objectives:目標管理)獲得率を求め,これらのコンピテンシー獲得率とMBO獲得率との差分値に基づいて各被評価者が良い標設定をする者か悪い目標設定をする者かを判断することにより,被評価者の目標設定の良し悪しについて客観的に評価することができるという知見を得た。このような客観的な評価基準を設けることで,社員一人ひとりが適切なコンピテンシー目標を自発的に設定できるように支援することできる。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成・工程を有する。
【0010】
本発明の第1の側面は,コンピテンシー目標設定支援装置に関する。本発明に係る装置は,コンピテンシー目標設定DBと,MBODBと,定量化部と,振分部と,被評価者DBとを備える。なお,「DB」とは,データベースを意味する。
コンピテンシー目標設定DBは,被評価者ごとに行動特性の目標設定に関する定性的データを記憶する。行動特性の目標設定に関する定性的データとは,例えば被評価者が自身の行動特性に関する目標を記述したテキストデータである。
MBODBは,被評価者ごとに業務目標に応じたMBO獲得点に関する定量的データを記憶する。業務目標とは,例えば目標売上などの予め設定された目標数値である。MBO獲得点とは,例えば業務実績(例:実際の売上などの実績数値)が業務目標をどの程度満足したかを得点化した数値である。例えば,MBO獲得点は,業務目標を100%とした場合に,業務実績が120%以上であれば6点,100〜120%であれば5点,80〜100%であれば4点といったように得点化したものとすることができる。また,MBO獲得点は,単純に,業務目標に対する業務実績の割合としてもよい。
定量化部は,コンピテンシー目標設定DBに記憶されている定性的データに基づいて定量的データを得る。具体的説明すると,定量化部は,まず,コンピテンシー目標設定DBに記憶されている定性的データを所定の基準に基づいて点数化し,各被評価者のコンピテンシー獲得点を得る。また,定量化部は,各被評価者のコンピテンシー獲得点のその最大点に対する割合から,各被評価者のコンピテンシー獲得率を求める。また,定量化部は,MBODBに記憶されている定量的データについて,MBO獲得点のその最大点に対する割合から,各被評価者のMBO獲得率を求める。その後,定量化部は,コンピテンシー獲得率とMBO獲得率との差分値を求める。少なくとも,定量化部は,このようにして被評価者の行動特性の目標設定に関する定性的データを定量化する。
振分部は,定量化部により得られた定量的データに基づいて,各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける。具体的に,振分部は,定量化部が求めた差分値又はこれを加味した値に基づいて,各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける。ここにいう差分値を加味した値とは,例えば,差分値に別の値を四則演算することで求めた値であってもよいし,差分値を所定の基準で得点化した値や,この得点化した値に別の値を四則演算することで求めた値であってもよい。いずれにしても,振分部は,定量化部が求めた差分値を考慮して,各被評価者の振分けを行う。
被評価者DBは,振分部により振分けられた少なくとも悪い目標設定をする被評価者に関する情報を記憶する。なお,被評価者DBは,悪い目標設定をする被評価者に加えて,良い目標設定をする被評価者に関する情報を記憶していてもよい。
【0011】
上記構成のように,本発明は,定量化部が求めたコンピテンシー獲得率とMBO獲得率との差分値を考慮して,被評価者の行動特性の目標設定が良いものか悪いものかを判断する。コンピテンシー獲得率とMBO獲得率との差分値が大きい場合,被評価者に行動特性に対する評価と被評価者のMBO獲得点とが大きく乖離していることを意味する。例えば,コンピテンシー獲得率が高いのに対してMBO獲得率が低い場合,行動特性の目標設定が曖昧で抽象的であったり,実際の業績が目標に沿っていないこととなるため,適切な行動特性の目標設定や適切な自己分析が出来ているとはいえない。従って,より適切な目標設定ができれば,業績実績をさらに高くする余地があるといえる。このような場合には,被評価者を悪い目標設定をする者と判断して,管理指導対象に含めることで,より適切な目標設定を行えるように支援することが可能となる。また,被評価者の振分けの際に,MBO獲得率という客観的なデータを用いることで,この評価を行う際に公平性及び客観性を担保することができる。
【0012】
本発明のコンピテンシー目標設定支援装置は,添削部をさらに備えることが好ましい。添削部は,被評価者が扱う利用者端末から入力された行動特性の目標設定に関する定性的データを添削する。具体的に,添削部は,被評価者DBから悪い目標設定をする被評価者を抽出し,行動特性に関する定性的データが悪い目標設定をする被評価者により入力されたものである場合に,当該定性的データの添削を行う。
【0013】
上記構成のように,悪い目標設定をすると判断された被評価者に対して,その目標設定に関するテキストデータ(定性的データ)の添削を行うことで,その被評価者に対して目標設定の仕方を指導することができる。これにより,被評価者の能力を向上させ,将来的には自発的に適切な目標設定をおこなうことができるように支援することができる。
【0014】
本発明のコンピテンシー目標設定支援装置は,行動特性の目標設定に関するNGワードを記憶するNGワードDBをさらに備えることが好ましい。このとき,添削部は,NGワードDBを参照して,行動特性の目標設定に関する定性的データを構成する文章にNGワードが含まれる場合に,利用者端末に対して通知する。
【0015】
上記構成のように,本発明の装置はNGワードDBを備えることで,行動特性の目標設定に不適切な単語を使用しないように,被評価者を指導することができる。これにより,被評価者は,目標設定に適さない曖昧な単語を使用しないように留意するようになる。
【0016】
本発明のコンピテンシー目標設定支援装置は,さらに,目標設定例DBと良悪判別モデル生成部とを備えることが好ましい。目標設定例DBは,コンピテンシー目標設定DBに記憶されている定性的データのうちの少なくとも一部を,行動特性の目標設定の良し悪しに関する情報に関連付けて記憶する。良悪判別モデル生成部は,目標設定例DBに記憶されている情報をトレーニングデータとして学習した良悪判別モデル(具体的にはAIモデル)を生成する。この場合に,定量化部は,各被評価者のコンピテンシー獲得点を得る際に,良悪判別モデルを利用して,コンピテンシー目標設DBに記憶されている定性的データを点数化する。
【0017】
上記構成のように,例えば,コンピテンシー目標設定DBに記憶されている定性的データについて人手で良し悪しの判別を行い,目標設定例DBを構築しておく。この目標設定例DBを元に学習させた良悪判別モデルを利用して定性的データを数値化することで,定性的データの評価を自動的に行うことがまた,その客観性を高めることができる。また,データの蓄積により評価の精度を高めることができる。
【0018】
本発明のコンピテンシー目標設定支援装置は,さらに,添削モデル生成部を備えることが好ましい。添削モデル生成部は,目標設定例DBに記憶されている情報のうち,良いものとしてされている行動特性の目標設定に関する情報をトレーニングデータとして学習した添削モデル(具体的にはAIモデル)を生成する。この場合に,添削部は,被評価者が扱う利用者端末から入力された行動特性の目標設定に関する定性的データを,添削モデルを利用して添削する。
【0019】
上記構成のように,添削モデルは例えば人手によって良し悪しの判別がなされた定性的データを元に学習しているため,これを被評価者の定性的データの添削に用いることで,このような添削処理を精度良く自動的に行うことができる。
【0020】
本発明の第2の側面は,コンピテンシー目標設定支援方法に関する。本発発明に係る方法は,基本的に,前述した第1の側面に係るコンピテンシー目標設定支援装置によって実行される。すなわち,本発明に係る方法は,コンピテンシー目標設定DBに記憶されている定性的データに基づいて定量的データを得る定量化工程と,定量化工程で得られた定量的データに基づいて各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける振分工程と,を含む。
定量化工程は,コンピテンシー目標設定DBに記憶されている定性的データを所定の基準に基づいて点数化し,各被評価者のコンピテンシー獲得点を得る工程と,各被評価者のコンピテンシー獲得点のその最大点に対する割合から,各被評価者のコンピテンシー獲得率を求める工程と,MBODBに記憶されている定量的データについて,MBO獲得点のその最大点に対する割合から,各被評価者のMBO獲得率を求める工程と,コンピテンシー獲得率とMBO獲得率との差分値を求める工程とを含む。
振分工程は,定量化工程で求めた差分値又はこれを加味した値に基づいて,各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける工程を含む。
【0021】
本発明の第3の側面は,コンピュータを,前述した第1の側面に係るコンピテンシー目標設定支援装置として機能させるためのプログラムに関する。本発明のプログラムは,インターネットを介してコンピュータにダウンロード及びインストールされるものであってもよいし,記録媒体を介してコンピュータにインストールされるものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば,社員のコンピテンシー目標設定を客観的に評価し,社員一人ひとりが適切なコンピテンシー目標を自発的に設定できるように支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は,人事評価システムの全体構成の一例を示した概念図である。
図2図2は,人事評価システム,特にコンピテンシー目標設定装置(管理サーバ)の機能構成を示したブロック図である。
図3図3は,目標設定例DBにデータを登録する処理の流れの一例を示したフロー図
図4図4は,NGワードDBにデータを登録する処理の流れを示したフロー図である。
図5図5は,良悪判別モデル生成部が行う処理の流れの一例を示したフロー図である。
図6図6は,自動添削モデル生成部が行う処理の流れの一例を示したフロー図である。
図7図7は,定量化部が行う処理の流れの一例を示したフロー図である。
図8図8は,振分部が行う処理の流れの一例を示したフロー図である。
図9図9は,添削部が行う処理の流れの一例を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0025】
図1は,人事評価システム全体の構成を示している。図1に示されるように,人事評価システム100は,管理サーバ1,管理者端末2,及び利用者端末3がネットワークを通じて相互に接続されることによって構成されている。ネットワークの例は,インターネットや社内用のイントラネットである。本実施形態において,管理サーバ1は,本発明に係るコンピテンシー目標設定支援装置に相当する。管理サーバ1の機能は,一台のサーバ型コンピュータによって実現されるものであってもよいし,ネットワークを介して相互に接続された複数台のサーバ型コンピュータによって実現されるものであってもよい。また,管理者端末2は,本システムを運営する管理者によって操作されるコンピュータ端末である。管理者端末2は,管理サーバ1に新たな情報を登録したり,管理サーバ1に記憶されている情報を更新したりすることができる。また,利用者端末3は,本システムにおける評価者(評価をする者:例えば上司)や被評価者(評価を受ける者:例えば部下)によって操作されるコンピュータ端末である。本システムにおいて,管理者端末2や利用者端末3はそれぞれ複数存在することが想定されている。
【0026】
管理サーバ1,管理者端末2,及び利用者端末3は,一般的に用いられているコンピュータにより実現することができる。管理サーバ1の例は,前述したとおりサーバ型コンピュータである。管理者端末2と利用者端末3の例は,デスクトップ型コンピュータや,ラップトップ型コンピュータ,その他スマートフォンやタブレット端末などの携帯情報端末である。各装置1〜3は,基本的に,制御演算装置,記憶装置,入力装置,及び出力装置を有する。制御演算装置は,入力装置から入力された情報に基づいて,記憶装置に記憶されているプログラムに従った所定の演算処理を実行し,その演算結果を適宜記憶装置に書き出したり読み出したりしながら,出力装置を制御することができる。制御演算装置の例は,CPUやGPUなどのプロセッサである。記憶装置のストレージ機能は,例えばHDD及びSDDといった不揮発性メモリによって実現でき,記憶装置のメモリ機能は,例えばRAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。入力装置の例は,マウスやキーボードなどの操作用モジュールや,ネットワークを介して情報を受信するための通信モジュールである。また,出力装置の例は,ディスプレイや,スピーカや,ネットワークを介して情報を送信するための通信モジュールである。各装置1〜3の機能は,このようなハードウェア構成によって実現される。
【0027】
図2は,主に管理サーバ1(コンピテンシー目標設定支援装置)の機能構成の例を示したブロック図である。図2に示されるように,管理サーバ1は,コンピテンシー目標設定DB10,目標設定例DB11,NGワードDB12,良悪判別モデル生成部13,頻出単語DB14,良悪判別モデル15,自動添削モデル生成部16,自動添削モデル17,定量化部18,被評価者モニタリング結果DB19,評価者モニタリング結果DB20,MBODB21,振分部22,悪い目標設定の被評価者DB23,良い目標設定の被評価者DB24,及び添削部25を有している。各種のデータベースは,管理サーバ1が備える記憶装置によって実現される。また,良悪判別モデル生成部13,自動添削モデル生成部16,定量化部18,振分部22,及び添削部25は,管理サーバ1が備えるプロセッサにより実現される。以下,これらの管理サーバ1の機能構成について,図3図9に示したフロー図を参照して詳しく説明する。
【0028】
図3図6は,被評価者のコンピテンシー目標設定(行動特性の目標設定)を評価するための事前準備に関する処理の流れを示す。また,図7及び図8は,被評価者のコンピテンシー目標設定を評価する処理の流れを示す。さらに,図9は,被評価者のコンピテンシー目標設定を支援するために,その目標設定の自動添削を行う処理の流れを示す。なお,本願の各図において,通常の矢印はデータの流れを示し,先端が二重になっている矢印は処理の流れを示している。
【0029】
図3は,目標設定例DB11にデータを登録する処理の一例を示している。コンピテンシー目標設定DB10は,被評価者が作成したコンピテンシー目標設定に関する定性的データが,被評価者ごとに記憶されている。例えば,被評価者は,自身のコンピテンシー目標を文章で記載する。このため,コンピテンシー目標設定DB10には,被評価者により作成されたテキストデータが,コンピテンシー目標設定に関する定性的データとして記憶される。基本的に,管理サーバ1は,コンピテンシー目標設定DB10に記憶されている情報をデータ・ソースとして各種の演算処理を行う。コンピテンシー目標設定DB10に蓄積されている情報の量が増えると,演算処理の精度が高まるため,ここには適宜情報を追加することが好ましい。
【0030】
コンピテンシー目標設定DB10に記憶されている情報は,管理者端末2で読み出すことができる。管理者端末2では,コンピテンシー目標設定DB10からテキストデータを読み出し,各被評価者が作成したコンピテンシー目標設定の内容の良し悪しに応じて識別子を付与し,各コンピテンシー目標設定を振り分ける処理が行われる(ステップS1−1)。例えば,管理者端末2を操作する管理者が,コンピテンシー目標設定の内容を閲覧して,内容の良し悪しを判断して識別子の振分けを行ってもよい。また,この作業は後述する良悪判別モデル(AIモデル)を利用して自動化することもできる。図3に示した例において,コンピテンシー目標設定に割り当てる識別子は,「非常に良い:A」,「良い:B」,「悪い:C」,及び「非常に悪い:D」の4段階に分類されている。ただし,識別子の種類や数は必要に応じて適宜変更することができる。
【0031】
管理サーバ1は,管理者端末2で振分けられた識別子に関連付けて,コンピテンシー目標設定のテキストデータを目標設定例DB11に登録する(ステップS1−2)。このため,目標設定例DB11には,コンピテンシー目標設定のテキストデータと良し悪しに関する識別子(A〜D)とが関連付けられて蓄積されることとなる。また,目標設定例DB11においては,目標設定を作成した被評価者に関する情報(ID情報)も,各テキストデータに関連付けられていてもよい。このようにして情報が登録された目標設定例DB11は,後述する良悪判別モデルの生成処理(図5)や,自動添削モデルの生成処理(図6),コンピテンシー目標設定の自動添削処理(図9)において利用される。
【0032】
図4は,NGワードDB12にデータを登録する処理の一例を示している。NGワードDB12には,コンピテンシー目標設定で使用することが好ましくないNGワードが記憶される。具体的に説明すると,管理者端末2では,コンピテンシー目標設定DB10からテキストデータを読み出し,そのテキストデータの中からNGワードを抽出する(ステップS2−1)。例えば,管理者端末2を操作する管理者が,コンピテンシー目標設定の内容を閲覧して,コンピテンシー目標設定としては相応しくない単語をNGワードとして抽出する。管理サーバ1は,管理者端末2で抽出されたNGワードを,NGワードDB12に登録する(ステップS2−2)。このようにして,NGワードDB12には,NGワードが随時蓄積されることとなる。情報が蓄積されたNGワードDB12は,コンピテンシー目標設定の自動添削処理(図9)において利用される。
【0033】
図5は,良悪判別モデル生成部13が行う処理の一例を示している。図5に示されるように,良悪判別モデル生成部13は,まず,コンピテンシー目標設定DB10から頻出単語の上位の所定数を取得し,頻出単語DB14に登録する(ステップS3−1)。具体的には,良悪判別モデル生成部13は,コンピテンシー目標設定DB10に記憶されているテキストデータを単語に分解して各単語の総出現数を求め,出現数の多い単語を抽出し,抽出した単語を頻出単語DB14に登録する。例えば,良悪判別モデル生成部13は,上位10,000程度の単語を抽出すればよい。このようにして,頻出単語DB14には,コンピテンシー目標設定においてよく使用される単語が蓄積されることとなる。
【0034】
次に,良悪判別モデル生成部13は,目標設定例DB11から目標設定例データを取得し,形態素解析を行う(ステップS3−2)。形態素解析とは,対象言語の文法のルールや品詞辞書を情報源として用いて,自然言語で書かれた文を形態素(言語で意味を持つ最小単位)の列に分割し,それぞれの品詞を判別する処理である。また,前述したように,目標設定例DB11には,各目標設定例データが内容の良し悪しに応じた識別子に関連付けて格納されている。良悪判別モデル生成部13は,形態素解析の結果にも,目標設定例DB11に格納されている識別子を関連付ける。このため,形態素にコンピテンシー目標設定に関する良し悪しの評価が付与されることとなる。良悪判別モデル生成部13は,このような形態素解析結果を一時ファイルとしてメモリなどに保存する。
【0035】
次に,良悪判別モデル生成部13は,ステップS3−2で作成した形態素解析結果と頻出単語DB14に登録されている頻出単語とを照合し,形態素解析結果のうち,頻出単語と一致しないデータ(形態素)を<unknown>(不明)としてマスキングする処理を行う(ステップS3−3)。これにより,形態素解析結果から,通常のコンピテンシー目標設定では使用されないような特異なノイズデータが除去される。良悪判別モデル生成部13は,ここで作成したマスキング済みの形態素解析結果を一時ファイルとしてメモリなどに保存する。
【0036】
続いて,良悪判別モデル生成部13は,ステップS3−3で作成したマスキング済みの形態素解析結果をトレーニングデータとして学習させたAIモデル,すなわち良悪判別モデル15を生成する(ステップS3−4)。具体的には,良悪判別モデル生成部13は,マスキング済みの形態素解析結果をトレーニングデータとした多層パーセプトロンネットワーク(いわゆるニューラルネットワーク)を構築し,ネットワーク学習を行うことで,良悪判別モデル15を生成する。多層パーセプトロンネットワークを利用したAIモデルの作成手法は公知である。このようにして生成された良悪判別モデル15は,基本的に,どのような形態素又は形態素の組み合わせを含むコンピテンシー目標設定が,良いと判断される傾向にあるのか或いは悪いと判断される傾向にあるのかを学習している。具体的に,ここで説明した例において,良悪判別モデル15は,目標設定例DB11に登録された目標設定に関する良し悪しに関する4段階の識別子(A〜D)をトレーニングデータとして学習している。このため,この良悪判別モデル15を利用すれば,コンピテンシー目標設定に関するテキストデータの内容を4段階に自動的に分類することが可能となる。このようにして生成された良悪判別モデル15は,コンピテンシー目標設定の定量化処理(図7)において利用することができる。また,前述したように,学習が進んだ良悪判別モデル15は,目標設定例DB11にデータを登録する処理(図3)においても利用できる。
【0037】
図6は,自動添削モデル生成部16が行う処理の一例を示している。図6に示されるように,自動添削モデル生成部16は,コンピテンシー目標設定DB10から頻出単語の上位の所定数を取得し,頻出単語DB14に登録する(ステップS4−1)。なお,このステップS4−1は,前述したステップS3−1と同じである。このため,すでに頻出単語DB14へのデータ登録が完了している場合には,自動添削モデル生成部16は,このステップS4−1の処理を省略することができる。
【0038】
次に,自動添削モデル生成部16は,目標設定例DB11に記憶されている目標設定例データのうち,内容が良いという識別子(A及びB)と関連付けて記憶されている目標設定例データを取得し,形態素解析を行う(ステップS4−2)。つまり,自動添削モデル生成部16は,良い内容のコンピテンシー目標設定のデータのみを利用する。また,自動添削モデル生成部16は,形態素解析を行って抽出された単語と,その出現順序を関連付ける。具体的には,自動添削モデル生成部16は,良い内容のコンピテンシー目標設定では,ある単語の次にどのような単語が用いられているのかを解析する。このように,単語が出現する前後関係の対応付けを行う。自動添削モデル生成部16は,形態素解析結果を一時ファイルとしてメモリなどに保存する。
【0039】
次に,自動添削モデル生成部16は,ステップS4−2で作成した形態素解析結果と頻出単語DB14に登録されている頻出単語とを照合し,形態素解析結果のうち,頻出単語と一致しないデータ(形態素)を<unknown>(不明)としてマスキングする処理を行う(ステップS4−3)。これにより,形態素解析結果から,通常のコンピテンシー目標設定では使用されないような特異なノイズデータが除去される。自動添削モデル生成部16は,ここで作成したマスキング済みの形態素解析結果を一時ファイルとしてメモリなどに保存する。
【0040】
続いて,自動添削モデル生成部16は,ステップS4−3で作成したマスキング済みの形態素解析結果をトレーニングデータとして学習させたAIモデル,すなわち自動添削モデル17を生成する(ステップS4−4)。具体的に,自動添削モデル生成部16は,マスキング済みの形態素解析結果でリカレントネットワークを構築し,ネットワーク学習を行うことで,自動添削モデル17を生成する。リカレントネットワークを利用したAIモデルの作成手法は公知である。このようにして生成された自動添削モデル17は,基本的に,良い内容のコンピテンシー目標設定においてはどのような単語が頻繁に使用されるかという傾向と,ある単語の次にどのような単語を置くとコンピテンシー目標設定として適切であると判断されるかという傾向を学習している。このため,自動添削モデル17は,被評価者が作成するコンピテンシー目標設定の添削に利用することができる。従って,このようにして生成された自動添削モデル17は,コンピテンシー目標設定の自動添削処理(図9)において利用することができる。
【0041】
以上が,準備段階での処理である。続いて,以下では,上記の処理で作成したデータベースやAIモデルを利用して,実際に被評価者が作成したコンピテンシー目標設定の評価を行う処理について説明する。図7及び図8は,被評価者のコンピテンシー目標設定が良いか悪いかを振り分ける処理の一例を示している。特に,図7は定量化部18の処理を示し,図8は振分部22の処理を示している。
【0042】
図7に示されるように,定量化部18は,図5の処理で作成された良悪判別モデル15を利用して,コンピテンシー目標設定DB10に記憶されているコンピテンシー目標設定の定性的データ(テキストデータ)を評価する(ステップS5−1)。前述したとおり,良悪判別モデル15は,目標設定例DB11に登録されている識別子(A〜D)に基づいてコンピテンシー目標設定の良し悪しを学習しているため,学習済みの良悪判別モデル15を利用すれば,コンピテンシー目標設定DB10に記憶されているコンピテンシー目標設定の定性的データを,「非常に良い:A」,「良い:B」,「悪い:C」,及び「非常に悪い:D」の4段階に分類することができる。そこで,定量化部18は,この良悪判別モデル15が分類した4段階の評価に応じて,コンピテンシー目標設定の定性的データのそれぞれについて得点付けを行う。図7に示した例では,「非常に良い」,「良い」,「悪い」,及び「非常に悪い」の順に,それぞれ1.2点,0.9点,0.6点,0.4点が与えられる。なお,得点付けの方法は適宜調整することができる。
【0043】
また,定量化部18は,被評価者モニタリング結果DB19から,評価対象とされている被評価者のモニタリング結果を読み出す(ステップS5−2)。被評価者モニタリング結果DB19には,被評価者の能力に対する評価が点数化して記憶されている。例えば,被評価者モニタリング結果DB19では,ビジネスマナーや,自己啓発性,徹底性,チームワークなどの項目に関する評価が細かく点数化されている。定量化部18は,この被評価者モニタリング結果DB19から被評価者の点数を読み出し,所定の基準で得点付けを行う。図7に示した例では,被評価者モニタリング結果が「3点以上」,「2.5〜3点」,「2〜2.5点」,「2点未満」の順に,それぞれ1.6点,1.2点,0.8点,0.4点が与えられる。なお,被評価者モニタリング結果DB19内の評価項目や評価基準は,会社ごとに適宜調整することができる。また,ステップS5−2における得点付与の基準も,被評価者モニタリング結果DB19の内容に合わせて調整すればよい。さらに,本発明において,このステップS5−2は任意のステップであり,省略することもできる。
【0044】
また,定量化部18は,評価者モニタリング結果DB20から,被評価者を評価した評価者のモニタリング結果を読み出す(ステップS5−3)。評価者モニタリング結果DB20には,評価者の能力に対する評価が点数化して記憶されている。例えば,評価者モニタリング結果DB20では,評価者のサポート能力や,アドバイスの的確さ,部下とのコミュニケーション能力などの項目に関する評価が細かく点数化されている。定量化部18は,この評価者モニタリング結果DB20から評価者の点数を読み出し,所定の基準で得点付けを行う。図7に示した例では,評価者モニタリング結果が「3点以上」,「2.5〜3点」,「2〜2.5点」,「2点未満」の順に,それぞれ0.4点,0.3点,0.2点,0.1点が与えられる。なお,評価者モニタリング結果DB20内の評価項目や評価基準は,会社ごとに適宜調整することができる。また,ステップS5−3における得点付与の基準も,評価者モニタリング結果DB20の内容に合わせて調整すればよい。さらに,本発明において,このステップS5−3は任意のステップであり,省略することもできる。
【0045】
次に,定量化部18は,MBODB21を参照して,被評価者のMBO獲得点とその最大得点を取得する(ステップS5−4)。MBOとは,目標管理(Management By Objectives)を意味する。MBODB21には,被評価者ごとに業務目標に応じたMBO獲得点に関する定量的データが記憶されている。業務目標とは,例えば目標売上などの予め設定された目標数値である。MBO獲得点とは,例えば業務実績(例:実際の売上などの実績数値)が業務目標をどの程度満足したかを得点化した数値である。例えば,MBO獲得点は,業務目標を100%とした場合に,業務実績が120%以上であれば6点,100〜120%であれば5点,80〜100%であれば4点といったように得点化したものとすることができる。また,MBO獲得点は,単純に,業務目標に対する業務実績の割合としてもよい。業務目標とMBO獲得点は,所定の項目ごとにMBODB21に記憶されていてもよい。例えば,MBODB21は,受注予算達成率,新規顧客獲得率,業務改善件数,コスト削減率などの項目ごとに,業務目標,業務実績,及びMBO獲得点が登録されていてもよい。また,MBODB21では,項目ごとに重み付けがなされていてもよい。このように,定量化部18は,MBODB21を参照すれば,被評価者ごとに,MBO獲得点とその最大得点を取得することができる。
【0046】
次に,定量化部18は,コンピテンシー獲得率とMBO獲得率とを求める(ステップS5−5)。コンピテンシー獲得率は,ステップS5−1〜S5−3で求めた被評価者の獲得点(コンピテンシー獲得点)を分子とし,ステップS5−1〜S5−3で求められる最大点を分母とした割合から求められる。なお,図7に示した例において,コンピテンシーの最大点は,3.2点(1.2+1.6+0.4)である。また,MBO獲得率は,ステップS5−4で取得した被評価者のMBO獲得点を分子とし,MBO獲得点の最大点を分母とした割合から求められる。コンピテンシー獲得率とMBO獲得率は,それぞれ100%が最大となる。
【0047】
次に,定量化部18は,コンピテンシー獲得率からMBO獲得率を差し引く演算[コンピテンシー獲得率−MBO獲得率]を行う(ステップS5−5)。また,定量化部18は,ここで求めた差分値に応じて,所定の基準で得点を付与する。図7に示した例では,差分値が30%未満の場合には0.8点,差分値が30〜40%の場合には0.6点,差分値が40〜50%の場合には0.4点となる。このように,コンピテンシー獲得率からMBO獲得率を差し引いた差分値は,より小さい方がより得点が高くなるように設定されている。コンピテンシー獲得率とMBO獲得率との差分値が大きい場合,被評価者に行動特性に対する評価と被評価者の業務実績とが大きく乖離していることを意味する。例えば,コンピテンシー獲得率が高いのに対してMBO獲得率が低い場合,行動特性の目標設定が曖昧で抽象的であったり,実際の業績が目標に沿っていないこととなるため,適切な行動特性の目標設定や適切な自己分析が出来ているとはいえない。従って,この場合には得点が低くなる。他方で,コンピテンシー獲得率とMBO獲得率との差分値が小さい場合には,行動特性の目標設定が明確で具体化されており,かつ,実際の業績も目標設定に沿っているといえる。従って,この場合には得点が高くなる。
【0048】
上記ステップS5−1〜S5−6を行うことで,定量化部18は,コンピテンシー目標設定DB10に記憶されている定性的データを定量化する。ここで説明した実施形態において,定量化部18は,ステップS5−1で求めた値[a],ステップS5−2で求めた値[b],ステップS5−3で求めた値[c],及びステップS5−6で求めた値[d]を振分部22へと出力する。
【0049】
続いて,図8に示されるように,振分部22は,まず,被評価者ごとに,定量化部18が算出した値[a][b][c][d]の合計値を求める(ステップ5−7)。なお,図7及び図8に示した例において,ここで求められる合計値の最大は4.0点(1.2+1.6+0.4+0.8)である。
【0050】
次に,振分部22は,ステップS5−7で求めた合計値が2点未満であるかどうかを判断する(ステップS5−8)。前述のとおり,この例において合計値の最大は4.0点であるため,その半分の値を閾値としている。このように,ステップS5−8における閾値は,合計値の最大の半分の値とするとよい。合計値が2点未満である場合,ステップS5−9へと進み,合計値が2点以上である場合,ステップS5−10へと進む。
【0051】
合計値が2点未満である場合,振分部22は,被評価者に関する情報(ID情報等)を,悪い目標設定の被評価者DB23に登録する(ステップS5−9)。この被評価者DB23には,悪い目標設定を行う傾向にある被評価者が一覧的に記録されることとなる。他方で,合計値が2点以上である場合,振分部22は,被評価者に関する情報を,良い目標設定の被評価者DB24に登録する(ステップS5−10)。この被評価者DB24には,良い目標設定を行う傾向にある被評価者が一覧的に記録されることとなる。
【0052】
このように,振分部22は,定量化部18が求めた定量的データに基づいて,被評価者を悪い目標設定を行うものと良い目標設定を行うものとに振り分ける処理を行う。このようにして情報が登録された悪い目標設定の被評価者DB23は,後述する自動添削処理(図9)において利用される。また,ここまでの処理で,悪い目標設定を行う傾向にある被評価者の一覧が悪い目標設定の被評価者DB23が記録されることとなる。このため,ここまでの処理を行うことで,被評価者のコンピテンシー目標設定の内容を評価し,悪い目標設定を行う傾向にある被評価者を発見することができる。なお,良い目標設定の被評価者DB24も有効に活用できる。ただし,本発明において,この良い目標設定の被評価者DB24は任意の要素であり,省略することもできる。
【0053】
なお,本発明においては,S5−6で求められる値[d]が特徴の一つとされる。このため,本発明において,定量化部18は,S5−6で求めた値[d]のみを振分部22へと出力するものであってもよい。その場合には,振分部22は,値[d]のみに基づいて被評価者の良し悪しに関する振分け処理を行うこととしてもよい。
【0054】
続いて,図9を参照して,添削部25によるコンピテンシー目標設定の自動添削処理について説明する。図9に示されるように,添削部25は,まず,悪い目標設定の被評価者DB23に登録されている被評価者の一覧を抽出する(ステップS6−1)。このように,自動添削処理は,悪い目標設定の被評価者DB23に登録されている被評価者のみを対象として行われる。
【0055】
次に,添削部25は,ステップS6−1で抽出された被評価者が操作する利用者端末3の表示画面に,目標設定例DB11において非常に良い(識別子A)ものとして登録されているコンピテンシー目標設定例を表示する(ステップS6−2)。これにより,被評価者は,非常に良いコンピテンシー目標設定例を参照しながら,自らの目標設定を作成することができる。
【0056】
被評価者が利用者端末3に入力した目標設定の入力データは,利用者端末3から管理サーバ1に対して随時送信される。管理サーバ1の添削部25は,利用者端末3から目標設定の入力データを受け取ると,図6に示した処理で生成した自動添削モデル17を利用して,被評価者により入力された単語や文章から次に入力すべき単語や文章を計算して,利用者端末3に送信する(ステップS6−3)。すなわち,自動添削モデル17は,前述したとおり,良い内容のコンピテンシー目標設定においてはどのような単語が頻繁に使用されるかという傾向と,ある単語の次にどのような単語を置くとコンピテンシー目標設定として適切であるかという傾向を学習している。このため,自動添削モデル17を利用すれば,利用者端末3からリアルタイムに入力されている単語データに基づいて,その単語の次に入力すべき単語や文章を決定することができる。そこで,添削部25は,このようにして決定した推奨される単語や文章のデータを利用者端末3にリアルタイムに返信する。利用者端末3の表示画面には,管理サーバ1から送信されてきた推奨される単語や文章のデータが,次に入力すべきものの候補として表示される。これにより,コンピテンシー目標設定の入力が苦手な被評価者に対して,適切なアドバイスを提供することができる。
【0057】
また,管理サーバ1の添削部25は,利用者端末3から目標設定の入力データを受け取ると,図4で作成したNGワードDB12を参照し,その入力データの中にNGワードと一致する単語を発見した場合には,その結果を利用者端末3に返信する(ステップS6−4)。例えば,添削部25は,利用者端末3からの入力データの中にNGワードを発見した場合,そのNGワードをハイライトするための制御信号を生成し,利用者端末3に送信する。これにより,利用者端末3の表示画面では,NGワードが目立って見えるようになる。これにより,被評価者に対してNGワードを訂正するように促すことができる。
【0058】
その後,添削部25は,利用者端末3によるコンピテンシー目標設定の入力が終了したか否かを判断する(ステップS6−5)。入力が終了した場合,自動添削処理は終了する。他方で,入力が続いている場合には,再びステップS6−3に戻り,引き続き自動添削を継続する。
【0059】
社員の行動に対する事後的な評価も重要であるが,今後の企業活動においては,社員に対して適切なコンピテンシー目標設定を促すことがより重要になるといえる。この点,本発明によれば,社員のコンピテンシー目標設定を客観的に評価し,社員一人ひとりが適切なコンピテンシー目標を自発的に設定できるように支援することができる。
【0060】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は,被評価者が行ったコンピテンシー目標設定の良し悪しを判別する機能を持つ装置などに関する。従って,本発明は,被評価者がより良い目標設定を自発的に行えるように支援するコンサルティング業務において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…管理サーバ(コンピテンシー目標設定支援装置)
2…管理者端末
3…利用者端末
10…コンピテンシー目標設定DB
11…目標設定例DB
12…NGワードDB
13…良悪判別モデル生成部
14…頻出単語DB
15…良悪判別モデル
16…自動添削モデル生成部
17…自動添削モデル
18…定量化部
19…被評価者モニタリング結果DB
20…評価者モニタリング結果DB
21…MBODB
22…振分部
23…被評価者DB(悪い被評価者)
24…被評価者DB(良い被評価者)
25…添削部
100…人事評価システム
【要約】      (修正有)
【課題】社員一人ひとりが適切なコンピテンシー目標を自発的に設定できるように支援する。
【解決手段】管理サーバ1は、被評価者の行動特性の目標設定に関する定性的データを記憶するコンピテンシー目標設定DB10と、業務目標に応じたMBO獲得点に関する定量的データを記憶するMBODB21と,コンピテンシー目標設定DB10に記憶されている定性的データに基づいて定量的データを得る定量化部18と、定量化部により得られた定量的データに基づいて悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける振分部22と、振分部22により振分けられた悪い目標設定をする被評価者に関する情報を記憶する被評価者データベース23とを備える。定量化部は、コンピテンシー獲得率とMBO獲得率との差分値を求め、振分部22は、この差分値又はこれを加味した値に基づいて、各被評価者を悪い目標設定をする者と良い目標設定をする者に振り分ける。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9