(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6129395
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ミトコンドリア活性化に起因した血管内皮細胞保護回復用還元型ビタミンB2製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/525 20060101AFI20170508BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20170508BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20170508BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20170508BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20170508BHJP
A61K 33/00 20060101ALN20170508BHJP
A61P 39/06 20060101ALN20170508BHJP
A61P 7/00 20060101ALN20170508BHJP
A61P 1/16 20060101ALN20170508BHJP
A61P 13/12 20060101ALN20170508BHJP
【FI】
A61K31/525
A61K47/04
A61P9/14
A61P3/02 106
A61P43/00 111
A61P43/00 107
!A61K33/00
!A61P39/06
!A61P7/00
!A61P1/16
!A61P13/12
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-212385(P2016-212385)
(22)【出願日】2016年10月29日
【審査請求日】2016年11月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516326449
【氏名又は名称】荒木 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】荒木 誠一
【審査官】
深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/156171(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/062814(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/108730(WO,A1)
【文献】
特開2016−063804(JP,A)
【文献】
特開2004−345988(JP,A)
【文献】
特開2010−189432(JP,A)
【文献】
特表2012−524033(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/074313(WO,A1)
【文献】
特開平11−199486(JP,A)
【文献】
特開平10−029941(JP,A)
【文献】
特表2004−518712(JP,A)
【文献】
特開2011−144186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素水と、前記水素水に溶解した還元型ビタミンB2を含むことを特徴とするミトコンドリア活性化に起因した血管内皮細胞保護回復用還元型ビタミンB2製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元型ビタミンB2(ロイコフラビン)を含む製剤、例えば、医薬、機能性製剤に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
還元型ビタミンB2の薬品として、発明者は過去に、特許文献1のビタミンB2還元体を含む医薬を開発、公開している。例えば、ロイコフラビン、モノハイドロフラビン、ロイコフラビンリン酸エステル、ロイコフラビンモノヌクレオチド、ロイコフラビンアデニンジヌクレオチド、又はそれらの薬理学的に許容される塩を有効成分とする免疫賦活・感染防御治療剤(請求項1)、その他、敗血症予防治療剤、敗血症性ショック予防治療剤、マラリア予防治療剤としての用途を見出した。
【0003】
しかしながら、還元型ビタミンB2は、酸化されビタミンB2に戻り、安定して還元型ビタミンB2の状態を保持することはできなかった。
【0004】
また、還元型ビタミンB2の製造では、特許文献1に「本発明におけるリボフラビン還元体及び/又はリボフラビン誘導体の還元体、またはそれらの薬理学的に許容される塩は、通常使用されるハイドロサルファイト又は塩化スズ等の還元剤を添加することにより、容易に製造することができる。」とあるように、人体に使用できない還元剤を用いるため、人体への治療、投与に際して、その還元剤を除去する必要があり、コスト、副作用の点から実用化に至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2002/074313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、還元型ビタミンB2を簡易、低コストで製造し、長期間安定保管、流通でき、さらに安全に投与できる、還元型ビタミンB2を含む製剤を提供することを目的とする。さらに、知られていない還元型ビタミンB2の新たな用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、
(1)
水素水と、前記水素水に溶解した還元型ビタミンB2を含むことを特徴とする
ミトコンドリア活性化用還元型ビタミンB2製剤。
(2)
活性酸素除去作用を有することを特徴とする(1)に記載のミトコンドリア活性化用還元型ビタミンB2製剤。
(3)
酸化ストレス除去作用を有することを特徴とする(1)に記載のミトコンドリア活性化用還元型ビタミンB2製剤。
(4)
過剰サイトカイン抑制作用を有することを特徴とする(1)に記載のミトコンドリア活性化用還元型ビタミンB2製剤。
(5)
疲労回復作用を有することを特徴とする(1)に記載のミトコンドリア活性化用還元型ビタミンB2製剤。
(6)
血球数回復作用を有することを特徴とする(1)に記載のミトコンドリア活性化用還元型ビタミンB2製剤。
(7)
肝・腎障害回復作用を有することを特徴とする(1)に記載のミトコンドリア活性化用還元型ビタミンB2製剤。
(8)
血管内皮細胞保護回復作用を有することを特徴とする(1)に記載のミトコンドリア活性化用還元型ビタミンB2製剤。
(9)
癌疾患の予防又は治療作用を有することを特徴とする(1)に記載のミトコンドリア活性化用還元型ビタミンB2製剤。
(10)
認知症の予防又は治療作用を有することを特徴とする(1)に記載のミトコンドリア活性化用還元型ビタミンB2製剤。
【0008】
ここで、本発明は、還元型ビタミンB2(ロイコフラビン)、即ち、リボフラビン還元型及び/又はリボフラビン誘導体の還元型、またはそれらの薬理学的に許容される塩を有効成分とする。本発明におけるリボフラビン還元型及び/又はリボフラビン誘導体の還元型、又はそれらの薬理学的に許容される塩とは、ビタミンB2群を還元したものを意味し、特に限定されない。
【0009】
一般的にリボフラビン、ビタミンB2酪酸エステル、フラビンモノヌクレオチド(ビタミンB2リン酸エステ;FMN)およびフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)などを還元して製造する。
【0010】
還元型としては、ロイコフラビン、モノハイドロフラビン、ロイコフラビンリン酸エステル、ロイコフラビン酪酸エステル、ロイコフラビンアデニンジヌクレオチッド、ロイコフラビンモノヌクレオチッド、又は薬理学的に許容される塩を有効成分とする。本発明にはこれらのリボフラビン還元型の薬理学的に許容される塩、水和物等も含まれる。
【0011】
一般的に、リボフラビン、ビタミンB2酪酸エステル、フラビンモノヌクレオチド(ビタミンB2リン酸エステ;FMN)およびフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)などを還元して製造する。
【0012】
水素水とは、通常の水素水、過酸化水素水など水素を含むものすべてを指す。還元型ビタミンB2を製造する際のビタミンB2が溶解した溶液の反応温度は、好ましくは、25℃以上がよく、水素が抜けにくい暖かい温度が相応しい。また、反応時間は、数分〜数時間が好ましいが、条件により反応速度も変わるので、反応時間も変化させる。また、ビタミンB2と水素の反応としては、ビタミンB2を溶かした溶液に水素を吹き込んでも良い。ビタミンB2群の形態は、水溶液、顆粒、カプセルなど固形物であっても、いずれかのステップで水素と反応できる形状であれば問わない。水素水は、今日、人用の飲料水として使用され、安全性が確認されており、極めて安全に投与でき還元型ビタミンB2の提供を可能にする。
【発明の効果】
【0013】
(1)製法発明
本発明は、ビタミンB2群を、水素と接触、反応させ、還元させ、水素水中に保持するだけであるので、極めて容易に、かつ安全性が高く、活性の高い還元型ビタミンB2が、極めて低コストで提供できる。また、水素水は、一般に流通するほど普及しており、高濃度製造が可能で、さらに水素水濃度を維持するためアルミ缶、アルミパウチなどの包装容器の十分に発達しており、還元型ビタミンB2を低コストで製造し、長期間安定保管、流通を十分に担保することができるようになった。このように、画期的な製法で製造された還元型ビタミンB2は、医薬品、注射液、点滴液、うがい液、吸入剤、洗浄液(鼻、口、傷口などの皮膚)、点眼剤、入浴剤、塗布剤、クリーム剤、化粧水、育毛剤、ゼリー剤、飲料水まで幅広く使用できる。
【0014】
(2)製剤発明
還元型ビタミンB2は、酸素に触れて容易に酸化され、元のビタミンB2に急激に戻ってしまい、活性も低下し、還元型として使用することはできなかったが、本発明では、還元型ビタミンB2を水素水で保持するという画期的な方法を見出し、還元型ビタミンB2を安定に保ち、長期間保存可能な製剤を可能にした。
【0015】
(3)用途発明
1)還元型ビタミンB2は、ビタミンB2よりも活性酸素除去能力が約10倍強いこと見出しており、抗酸化作用が強く、生体内においても活性酸素除去作用を強力に発揮することができる。水素水も活性酸素を除去することが知られているが、これらを合わせることで、極めて強力な画期的な活性酸素除去剤、酸化ストレス除去剤を提供することができる。
2)様々な要因により生体内で発生する炎症性物質であるサイトカインに対しても、還元型ビタミンB2は、過剰なサイトカインを抑制し、ビタミンB2よりも約10倍抑制することを見出し、炎症や高サイトカイン血症を強力に抑制できる極めて有用な作用を有する。ビタミンB2は、効能が知られている各種疾病の治療に際して、多量に投与する必要があり、腎臓機能の低下などの副作用が懸念されている。他方、還元型ビタミンB2では、投与量を低くすることができ、ビタミンB2で問題になっていた副作用はなく、極めて進歩性が高い。
3)生体内においてエネルギー産生作用においてミトコンドリアの膜電位を測定する実験から、還元型ビタミンB2は、エネルギー産生作用が極めて強力であることを見出した。また過剰な乳酸を抑制することからも、細胞の疲労を抑制し、エネルギー産生を高めるという生物の根本的な営みに関与することが示された。このことは、スポーツをはじめ、疾患の治療、老化などに対して幅広く有用性が期待される。さらに、還元型ビタミンB2がミトコンドリアに対して、直接作用することを見出した。その結果、ミトコンドリアを、正常体質に維持する方向に活性化する。すなわち、還元型ビタミンB2は、ミトコンドリアの活性化剤であり、その効果、あらゆる方面の疾病の予防、改善、治療に効能がある。
4)還元型ビタミンB2は、血球数(赤血球、血小板、白血球など)の減少に対して、血球数を回復する作用を有する。このことは、血球数の減少を伴う疾病、また抗がん剤投与時や放射線療法の副作用防止などに対して、幅広く有用性が期待できる。
5)還元型ビタミンB2は、肝障害、腎障害に対して、治療的に回復作用を示し、これら疾患に対しても有用性が期待される。
6)還元型ビタミンB2は、血管内皮細胞の高グルコース負荷試験において、血管内皮細胞の生存率の上昇が認められた。このことは、還元型ビタミンB2が、高グルコース負荷によるダメージ(一つには活性酸素種が関与)から、血管内皮細胞を保護し、生存率を上昇させたことを示している。したがって、糖尿病、血糖スパイクに対しても、血管内皮細胞を糖から守り、血管を正常化させることから、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、また認知症などの脳疾患に対しても有用性が期待される。
【0016】
上記1)、2)、3)、4)の作用から、これらの病態、疾病に対して、予防剤、治療剤を提供することができる。適応疾病としては、老化・加齢に伴う疾患、炎症性疾患、糖尿病、免疫抑制疾患、癌疾患、パーキンソン病、動脈硬化、脳梗塞
、リウマチ、五十肩、変形性関節症、肩こり、腰痛、神経痛、むちうちまた、スポーツなどにおける筋力・体力の向上などに対して、極めて有用な解決方法を提供できる。
【0017】
本発明は、以上まとめると以下の病態、症状、疾患に適用でき、それ以外の症例にも適用できる
・呼吸器疾患(COPD,気管支喘息、肺気腫、肺繊維症、ARDS)
・ウィルス感染(単純ヘルペス、帯状疱疹、HIV、インフルエンザ、EBウィルス、サイトメガロウィルス)
・細菌感染症(急性、慢性)
・真菌、カンジダ感染症
・片頭痛、群発頭痛、血管性頭痛、側頭動脈炎
・脳血管疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脳梗塞
・循環器疾患(狭心症、不整脈、末梢動脈疾患)、動脈硬化、心筋梗塞
・糖尿病、腎炎
・多発性硬化症、慢性関節リウマチ、エリテマトーデス
・転移性がん、悪性リンパ腫、神経芽腫
・慢性疲労症候群
・消化器系:IBD、膵炎、肝炎、肝硬変、肝障害
・敗血症、外傷、熱症、歯槽膿漏、老化、肥満、アレルギー性疾患
・ビタミンB2不足、口内炎、肌あれ、にきび、口角炎、口唇炎、かぶれ、ただれ、湿疹、皮膚炎、舌炎、赤鼻、目の充血、目のかゆみ
・次の場合のビタミンB2の補給;肉体疲労時、妊娠、授乳期、病中病後の体力低下時
・血球数(赤血球、血小板、白血球など)の減少疾患
ただし、G6PD欠損症、甲状腺機能亢進症、妊婦への処方は忌避される。
【0018】
投与形態
経口剤(ドリンク、粉末、顆粒、錠剤)、注射液、点滴液、うがい液、吸入剤、洗浄液、点眼剤、入浴剤、塗布剤、クリーム剤、化粧水、育毛剤、ゼリー剤、飲料水など幅広い形態で投与、摂取可能である。
【0019】
以上のことから明らかなように、還元型ビタミンB2、及びその製剤は、製法、製剤、用途、いずれにおいても、従来にない優れた効果を奏し、医業、産業への貢献は極めて大きい。還元型ビタミンB2は、ビタミンB2より、低用量で、かつ活性、有効性が極めて高く、ビタミンB2の市場は、将来、還元型ビタミンB2に取って代わられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】酸化ストレス(H
2O
2)による大腸菌の致死抑制作用の確認試験結果である。
【
図2】マウスにおけるラジカル発生剤AAPHによる酸化ストレスに対する還元型ビタミンB2の抑制効果の確認試験結果である。
【
図3】還元型ビタミンB2のマウスマクロファージにおけるLPS添加時のIL6に及ぼす影響の確認試験結果である。
【
図4】ミトコンドリアの膜電位測定によるエネルギー産生作用の確認試験結果である。
【
図5】還元型ビタミンB2の過剰な乳酸の抑制効果の確認試験結果を表す、LPS添加時のマウスマクロファージ培養液中の乳酸濃度変化のグラフである。
【
図6】還元型ビタミンB2の骨髄抑制(血球数)に対する回復効果の確認試験結果である。
【
図7】還元型ビタミンB2の肝/腎障害に対する回復効果の確認試験結果である。
【
図8】還元型ビタミンB2の血管内皮細胞における高グルコース負荷に対する防御効果の確認試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
図1に示す試験結果は、大腸菌に過酸化水素水(H
2O
2)10mM/mlを添加して、菌数の減少を測定することにより、菌の酸化ストレスに対する影響を検討した結果である。
【0023】
還元型ビタミンB2(図中B2H2)は、H
2O
2の添加3時間前に2.5,10μg/mlを添加しておき、菌数測定は、H
2O
2添加1時間後に行った。対照薬として抗酸化剤であるビタミンC(C)を100μg/ml添加して比較した。なお、図中Cont.(左)はH
2O
2無添加、Cont.(右)はH
2O
2添加+抗酸化剤無添加である。
【0024】
その結果、還元型ビタミンB2は、低容量でビタミンCより生菌数の上昇が認められ、極めて強い酸化ストレス防止作用を示した。菌の致死を救ったことは、活性酸素を強力に除去したことが示唆される。
【0025】
このことは、還元型ビタミンB2、さらには本発明の還元型ビタミンB2製剤が、活性酸素の関与するすべての疾患・疾病の治療に利用できることを示している。
【実施例2】
【0026】
図2に示す試験結果は、マウスにラジカル発生剤AAPH(2,2’−azo−bis(2−amidinoprppane dihydrochloride)125mg/kgを腹腔内に投与し、その投与24時間前及び同時に還元型ビタミンB2(B2H2)2mg/kgを静脈内投与して、酸化ストレスに対する死亡率を測定した結果である。controlは、AAPHを投与しただけで、還元型ビタミンB2の投与がない。
【0027】
その結果、還元型ビタミンB2は、酸化ストレスに対して、顕著な防止作用(抗酸化)を示し、生体内においても活性酸素除去作用を強力に発揮することが認められた。
【0028】
このことは、還元型ビタミンB2、さらには本発明の還元型ビタミンB2製剤が、活性酸素が関与するすべての疾患・疾病の治療に利用できることを示している。
【実施例3】
【0029】
図3に示す試験結果は、マウスの腹腔マクロファージ(1×10
6/ml)に、毒素LPS(リポポリサッカライド)を0.01μg/ml添加すると、12時間後に培養液中に過剰なIL6(インターロイキン6)が放出されるため、これを利用して検討した結果である。
【0030】
これに対して、LPSと同時に還元型ビタミンB2(B2H2)2.5μg/ml添加すると、ビタミンB2(B2)の1/10量で優れた抑制効果が認められた。
【0031】
このことは、還元型ビタミンB2、さらには本発明の還元型ビタミンB2製剤が極めて低容量で、炎症や高サイトカイン血漿などに対して、有用な作用を示している。
【実施例4】
【0032】
図4に示す試験結果は、マウスに還元型ビタミンB2(B2H2)2mg/kgを静脈内に投与し、1日後にマウス腹腔マクロファージを取り出して、ミトコンドリアの膜電位をフローサイトメーターで測定した結果である。controlは、還元型ビタミンB2の投与がない。
【0033】
その結果、還元型ビタミンB2は、controlに比べミトコンドリアの膜電位を顕著に(約1.7倍)上昇させることが見出され、細胞のエネルギー産生を高める作用が認められた。
【0034】
このことは、還元型ビタミンB2、さらには本発明の還元型ビタミンB2製剤が疲労回復に有効であることを示している。
【実施例5】
【0035】
図5は、還元型ビタミンB2の過剰な乳酸の抑制効果の確認試験結果である。マウスの腹腔マクロファージに、毒素LPS(リポポリサッカライド)を0.01μg/ml添加すると、12時間後に培養液中に過剰な乳酸が放出された。これに対して、還元型ビタミンB2(B2H2)2.5μg/mをLPSと同時に加えたところ、急激な乳酸の減少が認められた。controlは、毒素LPSの添加及び還元型ビタミンB2の投与がない。
【0036】
このことは、還元型ビタミンB2は、異常な代謝における乳酸の産生を抑制し、細胞の疲労度を回復させることが示唆された。かつ、ミトコンドリアの膜電位を上げることからも、細胞の疲労を抑制し、エネルギー産生を高めるという生物の根本的な営みに関与することが示唆された。すなわち、還元型ビタミンB2及び本願発明の製剤は、ミトコンドリアへの作用を介して、あらゆる方面の疾病、疾患の予防、治療、改善に関与できる。
【0037】
また、還元型ビタミンB2、さらには本発明の還元型ビタミンB2製剤がスポーツをはじめ、疾患の治療、老化などに対して幅広く有用性であることを示している。
【実施例6】
【0038】
図6に示す試験結果は、マウス(5匹)にシクロフォスファミド(CY)125mg/kgを腹腔内に投与し、その1,2,3日後の3回、還元型ビタミンB2(B2H2)2mg/kgを静脈内に投与して、4,5,6日後に血球数(好中球数)を測定した結果である。
【0039】
その結果、CYによる骨髄抑制に対して、還元型ビタミンB2は、血球数(好中球数)の回復を5日目、及び6日目に回復が認められた。
【0040】
このことは、還元型ビタミンB2、さらには本発明の還元型ビタミンB2製剤が骨髄抑制による赤血球、血小板、白血球などの血球数の回復に有効であることを示している。
【実施例7】
【0041】
図7は、還元型ビタミンB2の肝/腎障害に対する回復効果の確認試験結果である。マウス(5〜8匹)に毒素LPS(リポポリサッカライド)12mg/kgを静脈内に投与し、肝/腎障害を作成した。これに対して、還元型ビタミンB2(B2H2)2mg/kgを静脈内に6時間後の治療的に投与したところ、LPS投与24時間後の血漿中の生化学検査指標(ALP、GOT、GPT、CPKUN,CRNNなど)の顕著な改善が認められた。
【0042】
このことは、還元型ビタミンB2は肝障害、腎障害の治療的回復が認められた。すなわち、還元型ビタミンB2、さらには本発明の還元型ビタミンB2製剤が障害、腎障害の治療に有効であることを示している。
【実施例8】
【0043】
図8の試験結果は、血管内皮細胞の高グルコース負荷試験において、細胞生存率を測定することによって、還元型ビタミンB2の耐糖能試験を実施した結果である。
【0044】
その結果、高グルコース負荷に対して、血管内皮細胞は、生存率を急激に減少させたが、同時に還元型ビタミンB2(B2H2)を10μg/ml添加することによって、血管内皮細胞の生存率を顕著に上昇させた。
【0045】
このことは、還元型ビタミンB2が、高グルコース負荷によるダメージから、血管内皮細胞を保護し、生存率を上昇させたことを示している。すなわち還元型ビタミンB2、さらには本発明の還元型ビタミンB2製剤が血管内皮細胞保護回復剤として有効であること示している。
【要約】
【課題】還元型ビタミンB2を簡易、低コストで製造し、長期間安定保管、流通でき、さらに安全に投与できる、還元型ビタミンB2を含む製剤を提供する。さらに、知られていない還元型ビタミンB2の新たな用途も提供する。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するため、水素水と、前記水素水に溶解した還元型ビタミンB2を含むことを特徴とする
ミトコンドリア活性化に起因した血管内皮細胞保護回復用還元型ビタミンB2製剤とした。同時に本発明は、活性酸素除去剤、酸化ストレス除去剤、過剰サイトカイン抑制剤、疲労回復剤、血球数回復剤、肝・
腎障害回復剤、癌疾患或いは認知症の予防又は治療剤としても作用する。
【選択図】図
8