(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129401
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】電子キー
(51)【国際特許分類】
E05B 19/00 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
E05B19/00 J
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-504575(P2016-504575)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公表番号】特表2016-514774(P2016-514774A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2014055481
(87)【国際公開番号】WO2014154542
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】102013205675.3
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング カイザー
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ レナー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン シュヴァイガー
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/132457(WO,A1)
【文献】
特開2013−020870(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0173613(US,A1)
【文献】
特開2001−182389(JP,A)
【文献】
特開2004−308368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キー(FZS)において、以下の特徴:すなわち、
キーハウジング(SLH)と、
該キーハウジング(SLH)内に設けられたスイッチハウジング(SGH)と
を備えており、該スイッチハウジング(SGH)が、
少なくとも1つの第1の貫通孔(DUX,DUY;D5)を備えた自体形状剛性的なフレーム(R)と、
撓み変形可能なメンブレン(M)と
を有しており、該メンブレン(M)が、フレーム(R)に配置されていて、前記少なくとも1つの第1の貫通孔(DUX,DUY;D5)を閉鎖し、該貫通孔(DUX,DUY;D5)の領域でメンブレン(M)に外部から作用した力を、フレーム(R)の内部に配置された電気的な切換エレメント(SE)に伝達するようになっており、
電子キー(FZS)が、さらに、機械的なエマージェンシーキー(NS)を有しており、該エマージェンシーキー(NS)が、少なくとも部分的にスイッチハウジング(SGH)に隣り合ってキーハウジング(SLH)内に収納されており、メンブレン(M)が、フレーム(R)の外側にエマージェンシーキー(NS)に隣接して、予め規定された1つ以上の第2の区分(EA21,EA22)を形成しており、該第2の区分(EA21,EA22)が、エマージェンシーキー(NS)に接触していて、該エマージェンシーキー(NS)の運動を減衰していることを特徴とする、電子キー。
【請求項2】
メンブレン(M)とフレーム(R)とが、二成分射出成形エレメントとして形成されており、メンブレン(M)が、二成分射出成形エレメントのうちの軟質構成要素を成しており、フレーム(R)が、二成分射出成形エレメントのうちの硬質構成要素を成している、請求項1記載の電子キー。
【請求項3】
メンブレン(M)が、フレーム(R)の外側に、予め規定された1つ以上の第1の区分(EA11,EA12,EA13,EA14)を形成しており、該第1の区分(EA11,EA12,EA13,EA14)でフレーム(R)が、キーハウジング(SLH)の内面に接触している、請求項1または2記載の電子キー。
【請求項4】
キーハウジング(SLH)が、さらに、
少なくとも部分的にスイッチハウジング(SGH)に隣り合って配置された取外し可能なカバー(ABD)と、
該カバー(ABD)を保持しかつ解放するための保持装置(HE)と
を有しており、
メンブレン(M)が、フレーム(R)の外側にカバー(ABD)に隣接して、予め規定された1つ以上の第3の区分(EA31)を形成しており、該第3の区分(EA31)が、カバー(ABD)に接触しており、保持装置(HE)が、カバー(ABD)を解放する際、第3の区分(EA31)が、カバー(ABD)をその位置から押圧するようになっている、請求項1から3までのいずれか1項記載の電子キー。
【請求項5】
保持装置(HE)が、係止突起(RN)を有しており、該係止突起(RN)が、カバー(ABD)を保持するために、該カバー(ABD)に設けられた対応する係止切欠き(RA)内に収容可能であり、カバー(ABD)を解放するために、係止切欠き(RA)から外れるように運動可能である、請求項4記載の電子キー。
【請求項6】
カバー(ABD)にエマージェンシーキー(NS)が固く結合されている、請求項4または5記載の電子キー。
【請求項7】
電子キー(FZS)が、電気的な切換エレメント(SE)を備えたプリント配線板(LP)を有しており、該プリント配線板(LP)が、スイッチハウジング(SGH)の内部でフレーム(R)に取り付けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の電子キー。
【請求項8】
メンブレン(M)が、フレーム(R)の内側に、予め規定された1つ以上の第4の区分(EA41,EA42,EA43,EA44)を形成しており、該第4の区分(EA41,EA42,EA43,EA44)にプリント配線板(LP)が接触している、請求項7記載の電子キー。
【請求項9】
スイッチハウジング(SGH)が、蓋(DE)を有しており、該蓋(DE)が、複数の突出部(DV1,DV2,DV3,DV4)を有していて、スイッチハウジング(SGH)への蓋(DE)の組付け状態で突出部(DV1,DV2,DV3,DV4)によってプリント配線板(LP)を、予め規定された1つ以上の第4の区分(EA41,EA42,EA43,EA44)に向かって押圧している、請求項8記載の電子キー。
【請求項10】
メンブレン(M)が、予め規定された少なくとも1つの第5の区分(EA51)を有しており、該第5の区分(EA51)が、スイッチハウジング(SGH)の内部で外向きに延びており、前記少なくとも1つの第5の区分(EA51)が、スイッチハウジング(SGH)の内部に入射区分(EKAS)を有していて、スイッチハウジング(SGH)の外部に放出区分(AAS)を有しており、スイッチハウジング(SGH)の内部に入射区分(EKAS)に隣り合って光源(LED)が配置されていて、光を、光導波路としてのメンブレン(M)を通して放出区分(AAS)に導くようになっている、請求項1から9までのいずれか1項記載の電子キー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における特定の機能をトリガするために、コード化された信号を車両と交換することができるID発信器としての電子キーに関する。
【0002】
今日、たとえば遠くから種々異なる車両機能をトリガすることができる、車両に用いられる電子キーもしくは無線キーのような持運び可能な電子式のユーザ(使用者)装置に対する需要がある。特に顧客の要望に応じて、任意のボタン形状を有する任意のデザインバリエーションが可能となることが望ましい。さらに、持運びの快適さを改善するために、電子キーのサイズ、特に電子キーの構造高さを低くすることがますます目標とされている。しかしながら、構成スペース基準値の減少にもかかわらず、電子キーの所要の高さの剛性を保証し続ける必要がある。さらに、電子キー内に必要となる電子装置がますます扱いにくくなっているので、この電子装置が環境影響に対して防護されていなければならない。
【0003】
したがって、本発明の課題は、構成スペース基準値が減じられているのと同時に、所要の高さの剛性と、環境影響に対する防護とを伴った電子キーを提供することである。
【0004】
この課題は、請求項1の対象によって解決される。有利な態様は、従属請求項の対象である。
【0005】
本願では、以下の特徴を備えた、特に車両に用いられる電子キーが開示される。この電子キーはハウジングもしくはキーハウジングを有している。さらに、電子キーは、キーハウジング内に収納されたスイッチハウジングを有している。このスイッチハウジングは、1つには、少なくとも1つの貫通孔を備えた自体形状剛性的なフレームと、撓み変形可能なもしくは弾性的なメンブレンとを有している。このメンブレンはフレームに配置されていて、少なくとも1つの第1の貫通孔を閉鎖し、この貫通孔の領域でメンブレンに外部から作用した力を、フレームの内部に配置された電気的な切換エレメントに伝達するようになっている。したがって、形状剛性的なフレームを備えたスイッチハウジングを設けることによって、キーハウジングの剛性が高められるかもしくは確保され、更には、少なくとも1つの第1の貫通孔を、その領域における弾性によってスイッチハウジングの内部に影響を与えることができるようにメンブレンで覆うことより、環境影響、たとえば水の侵入、腐食等に対する防護が付与されている。
【0006】
有利な態様によれば、メンブレンとフレームとが、二成分射出成形エレメントとして形成されており、メンブレンが、二成分射出成形エレメントのうちの軟質構成要素を成しており、フレームが、二成分射出成形エレメントのうちの硬質構成要素を成していることが可能である。こうして、両構成要素の極めて正確で効率のよい結合が達成される。さらに、それぞれ他方の構成要素に対する運動が阻止される。しかしながら、メンブレンをフレームに接着、摩擦圧接、クリップ、レーザ溶接法および/または超音波溶接法によって固定することも可能である。こうしても、フレームに対するメンブレンのずれ滑りが阻止され、少なくとも1つの貫通孔の領域でのメンブレンへの力作用時の電気的な切換エレメントの作動の確実性が改善される。
【0007】
フレームと協働させてスイッチハウジングを形成する際のメンブレンのシール機能に加えて、このメンブレンは、以下の有利な態様に基づき説明するような別の構造的な機能を果たすことができる。
【0008】
メンブレンが、フレームの外側に、予め規定された1つ以上の第1の区分を形成しており、この第1の区分でフレームが、キーハウジングの内面に接触しているかもしくはキーハウジングに結合されていることが可能である。したがって、キーハウジングへの撓み変形可能なもしくは弾性的なメンブレンの接触によって、キーハウジングに作用した機械的な振動が、すでにメンブレンによって予め規定された第1の区分の領域で吸収され、これにより、スイッチハウジング上にもしくはスイッチハウジング内に位置する構成要素が、機械的な環境影響に対しても防護される。予め規定された1つ以上の第1の区分を形成するために、フレームに1つ以上の第2の貫通孔が設けられており、この第2の貫通孔を通ってメンブレンが内部から外部に向かってスイッチハウジングを越えて延びていることが可能である。こうして、メンブレンが別の構造的な機能を有している。
【0009】
別の有利な態様によれば、電子キーが、さらに、特に金属製のキービット(鍵棒)の形態の機械的なエマージェンシーキーを有しており、このエマージェンシーキーが、スイッチハウジングもしくはスイッチハウジングの一区分に隣り合ってキーハウジング内に収納されていることが可能である。これは、電子キーによって、遠くから車両機能、たとえば1つ以上の車両ドアの解錠を行うことがもはや不可能である場合に、機械的なエマージェンシーキーによって、少なくとも車両の相応のドアロックにおいて車両に乗り込むことが可能となることを意味している。機械的なエマージェンシーキーがスイッチハウジング(またはスイッチハウジングの一区分)に隣り合って収納される場合、この態様によれば、メンブレンが、フレームの外側にエマージェンシーキーに隣接して、予め規定された1つ以上の第2の区分を形成しており、この第2の区分が、エマージェンシーキーに接触していて、このエマージェンシーキーの運動(たとえば振動)を減衰することができる。特にエマージェンシーキーを予め規定された1つ以上の第2の区分によってキーハウジングの内壁に向かって押圧しかつメンブレンの弾性に基づきエマージェンシーキーにキーハウジングに向かって予荷重を加えることが可能である。こうして、エマージェンシーキーの運動が阻止されるので、これによって、「がたつき防止」が提供される。この態様でも、やはり、予め規定された1つ以上の第2の区分を形成するために、フレームが1つ以上の第3の貫通孔を有しており、この第3の貫通孔をメンブレンが内部から外部に向かって通過していることが可能となる。したがって、メンブレンが別の構造的な機能を有している。
【0010】
別の有利な態様によれば、キーハウジングが、スイッチハウジングに隣り合って配置された取外し可能なカバーを有しているように形成されている。このカバーは、キーハウジングの一部として形成されていてよい。さらに、カバーをキーハウジングに保持するかもしくは設定された位置に保持するための保持装置が設けられている。この保持装置によって、保持機能の解除も可能となる。有利には、メンブレンが、スイッチハウジングのフレームの外側にカバーに隣接して、予め規定された1つ以上の第3の区分を形成しており、この第3の区分が、カバーに接触しており、保持装置が、カバーを解放した後、第3の区分が、カバーをその位置から押圧する、つまり、接触位置から押し離すようになっている。これは、カバーが保持装置によって(予め規定された位置で)キーハウジングに保持された状態で、メンブレンの予め規定された1つ以上の第3の区分が、予め規定された力でカバーに向かって押圧されることを意味している。メンブレンは予め規定された第3の区分の領域で弾性変形させられ、変形に抗して作用するばね力を形成する。カバーが解放状態で保持装置によってもはや保持されなくなると、予め規定された第3の区分の、圧縮時に前もって形成されたばねエネルギが解き放たれ、カバーがその位置から押圧される、つまり、保持位置から押し離される。こうして、メンブレンが別の構造的な機能を果たしており、たとえば、カバーの自動的な解離のために通常使用されるような付加的なばねを節約することができる。さらに、メンブレンをばねとして使用することによって、装置技術的な手間が最小限に抑えられ、これによって、構成スペースを減らすこともできる。
【0011】
保持装置の有利な態様によれば、保持装置が、係止突起を有しており、この係止突起が、カバーを保持するかもしくは位置固定するために、このカバーに設けられた対応する係止切欠き内に収容可能もしくは運動可能である。カバーを再び解放するためには、係止突起が、係止切欠きから外れるように運動させられてよい。カバーの側の係止切欠きの代わりに、カバーに係止突出部を形成することも可能である。この係止突出部は、保持装置の係止突起と協働して、メンブレンの1つ以上の第3の区分によって予荷重が加えられている際に係止突起に向かって押圧され、これによって、カバーがその係止突出部と係止突起との相互作用によって保持位置に保持されるようになっている。
【0012】
別の有利な態様によれば、カバーにエマージェンシーキーもしくは機械的なキービットが固く結合されており、これによって、保持装置による解放後のカバーの自動的な解離により、エマージェンシーキーを電子的なキーハウジング内のコンパートメントから容易に取り出すことができる。
【0013】
別の有利な態様によれば、電子キーが、電気的な切換エレメントを備えたプリント配線板を有しており、このプリント配線板が、スイッチハウジングの内部でフレームに取り付けられている。特にプリント配線板は、電気的な切換エレメントが少なくとも1つの第1の貫通孔の下側に位置していて、弾性的なメンブレンによって操作されるように、フレームに取り付けられている。したがって、フレームは、スイッチハウジングの内部で、メンブレンの支承の機能だけでなく、フレームもしくはスイッチハウジングの内部で環境に起因した影響に対して防護されなければならない別の構成部材、特に電子的な構成部材に対する保持機能も有している。
【0014】
特にメンブレンが、フレームの内側(すなわち、スイッチハウジングの内部)に、予め規定された1つ以上の第4の区分を形成しており、この第4の区分にプリント配線板が接触していることが可能である。こうして、外部からキーハウジングを介してスイッチハウジングに作用した振動を、予め規定された第4の区分で再度減衰し、これによって、この機械的な振動を最小限に減らし、敏感な電気的なもしくは電子的な構成部材を可能な限り良好に防護することが同じく可能となる。したがって、メンブレンが別の構造的な機能を有している。
【0015】
スイッチハウジングの別の態様によれば、このスイッチハウジングが、蓋を有しており、この蓋が、複数の突出部を有していて、スイッチハウジングへの蓋の組付け状態で突出部によってプリント配線板を、メンブレンの予め規定された1つ以上の第4の区分に向かって押圧している。こうして、プリント配線板をスイッチハウジングの内部に良好に位置固定することができ、上述したように、外的な機械的なかつ別の影響、たとえば水の侵入等に対して防護することができる。
【0016】
最後に、別の有利な態様によれば、メンブレンが、予め規定された少なくとも1つの第5の区分を有しており、この第5の区分が、スイッチハウジングの内部から外向きに延びており、少なくとも1つの第5の区分が、スイッチハウジングの内部に入射区分を有していて、スイッチハウジングの外部に放出区分を有しており、スイッチハウジングの内部、特にプリント配線板上に入射区分に隣り合って光源(たとえばLED)が配置されていて、光を、光導波路としてのメンブレンを通して放出区分に導くようになっている。したがって、メンブレンが光導波路として光を放出区分に導くことができ、そこから、光を最終的に出射することができる。こうして、メンブレンが、種々異なるシール・保持機能に加えて、光導波路の機能も引き受けることができ、これによって、別個の光導波路構成部材を節約することができる。
【0017】
次いで、以下に、本発明の例示的な実施の形態を添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電子キーのボタンパッドに設けられた複数のボタンもしくはボタンキャップの概略図であり、
図1Aには、ボタンの正面図が示してあり、
図1Bには、ボタンの背面図が示してある。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電子キーの、ボタン(
図1参照)を支承するスイッチハウジングの主要な構成要素を示す図であり、
図2の左側には、メンブレンとフレームとの分解図が示してあり、
図2の右側には、組立て状態が示してある。
【
図3】
図2に示した電子キーのスイッチハウジングの一部の主要な構成要素を示す図であり、
図3Aの左側には、メンブレンとフレームとの分解図が示してあり、
図3Aの右側には、組立て状態の表側が示してあり、
図3Bには、組立て状態の裏側が示してある。
【
図4】
図2に示したスイッチハウジングを上方から見た平面図である。
【
図5】内部にスイッチハウジングを組み込んだ本発明の実施の形態によるキーハウジングの横断面図である。
【
図6】スイッチハウジングもしくはスイッチハウジング内に設けられた構成要素の詳細図であり、
図6Aには、
図4に示したスイッチハウジングを180°だけ反転させた背面図が示してあり、
図6Bには、スイッチハウジングと、プリント配線板と、蓋エレメントとの分解図が示してあり、
図6Cには、スイッチハウジングの組立て状態が示してある。
【
図7】スイッチハウジングのメンブレンが光導波路として使用される領域におけるスイッチハウジングの横断面図である。
【0019】
以下に、車両に用いられる電子キーについて説明する。車両に用いられる電子キーは、通常、電子部品を有している。この電子部品には、エネルギ蓄え器、たとえばバッテリまたは二次電池からエネルギが供給される。付加的に、このような電子キーは、車両の制御装置との通信のために、信号、特に無線信号を交換するための送信装置および/または受信装置を有している。これによって、キーの電子的なメモリに記憶されているコードが、アクティブエントリシステムの場合には、車両に一方向で送信され、パッシブエントリシステムの範囲内では、電子キーと車両との間での双方向の交換コード法で交換される。それぞれ正しい認証が行われた後、車両内の制御装置がロックを解錠し、これによって、車両ユーザがドアを開けることができる。この認証過程は、(アクティブエントリシステムの範囲内では)電子キーにおけるボタンを押すことによって開始することができ、パッシブエントリシステムを備えた車両の場合には、この車両が複数のセンサを介してユーザまたは電子キーの接近を検知した際に車両によってトリガされる。このためには、車両ユーザが、ボタンパッドと、場合によっては、組み込まれた機械的なエマージェンシーキーとを備えた電子キーを携行している。
【0020】
したがって、すでに述べたように、電子キーは、1つには、車両ドアを解錠する(施錠もする)ための機能を有することができるものの、別の車両機能を制御する、たとえば警報装置を制御する、ブロックヒータを作動させる等のための遠隔操作装置として使用することもできる。これらの機能を遠隔制御するためには、電子キーが、各機能をトリガするために、ユーザによって操作することができる1つ以上のボタンを有している。
【0021】
以下に、本発明に係る電子キーの実施の形態について説明する。この電子キーでは、少ない構成スペースにもかかわらず、キー装置全体の必要な高い剛性と、環境影響に対する敏感な電子構成要素の防護とが付与されている。
【0022】
まず、
図1を参照すると、そこには、電子キーのボタンパッドもしくは操作フィールドに設けられた複数のボタンの概略図が示してある。
図1Aには、ボタンの正面図が示してあるのに対して、
図1Bには、ボタンの背面図が示してある。
【0023】
図1Aに示したボタンパッドは、特定のボタンを押した際にどの機能がトリガされるのかをユーザが判るように、それぞれ対応した機能ピクトグラムP1(ドア施錠機能に対応),P2(リヤリッド開放機能に対応),P3(ドア解錠機能に対応)を備えた3つのボタンTA11,TA21,TA31を有している。より正確に云うと、これらのボタンTA11〜TA31の各々は、それぞれ上面側のボタン区分TO1,TO2,TO3と下面側のボタン区分TU1,TU2,TU3とを有している。上面側のボタン区分TO1〜TO3には、ピクトグラムが被着されている。また、上面側のボタン区分TO1〜TO3は、ユーザによる操作のための各操作面を提供している。下面側のボタン区分TU1〜TU3は、電子キーの組立て状態でハウジング内部に向けられていて、
図1Bに認めることができるように、電気的な切換エレメントを支承するかもしくは操作するための対応する力伝達ドームもしくは切換ドームを有している。各上下のボタン区分は、有利には自体形状剛性的であり、全体として二成分射出成形エレメントとして形成されている。
【0024】
あとで、たとえば
図3に関連してさらに詳しく説明するように、ボタンは、対応する弾性変形可能なもしくは撓み変形可能なメンブレン、たとえば
図3ではメンブレンM12によって支承されるかもしくは支持される。この目的のためには、各ボタンTA11,TA21,TA31もしくはその下面側のボタン区分TU1,TU2,TU3が、ボタン側の突出部または力伝達ドーム(力伝達バー)を有している。この力伝達ドームは、ボタンとメンブレンとの組立て状態で各ボタンTA11〜TA31の各操作面BTF1,BTF2,BTF3の下側に配置されている。特に力伝達ドームは、可能な限り大きな面積を展開するように、縁領域の下側にもしくは縁領域の近傍にまたは、角形の操作面の場合には、ボタンの操作面の角隅の領域に配置されており、これによって、1つのボタンの偏心的な操作時にも、ユーザの力の伝達が可能な限り全ての力伝達ドームへと行われ、ひいては、予め規定された力特性線もしくは感触特性線を得ることができる。
図1Bに認めることができるように、各力伝達ドームは、主として、各メンブレンの角隅区分にかつ、対応して、メンブレンの上方に位置するボタンTA11〜TA31の操作面の角隅区分の下側にも配置されている。力伝達ドームは、電気的な切換エレメントの上方もしくは電気的な切換エレメントの切換軸線には位置決めされていない。
【0025】
第1のボタンTA11が力伝達ドームK11,K12,K13,K14を有していて、第2のボタンTA21が力伝達ドームK21,K22,K23,K24を有しているのに対して、第3のボタンTA31は力伝達ドームK31,K32,K33,K34を有している。さらに、突出部として形成された力伝達ドームのほかに、各ボタンは、切換バーとして働く突出部、すなわち、ボタン操作、より正確に云うと、バーの方向へのボタンの運動を、その下方に位置する電気的な切換エレメントに伝達する突出部を有している。各電気的な切換ベルトの確実な作動のためには、各切換バーS1,S2,S3が、有利には、力伝達ドームにより展開される面積の面積重心に配置されている。特にこのような面積重心は、各ボタンの反対の側に位置する操作面の重心にも完全に等しい。たとえば、切換バーは、力伝達ドームK11〜K14により展開された面積の面積重心SWP1に合致している。
【0026】
次いで、
図2を参照すると、そこには、電子キーのスイッチハウジングの主要な構成要素の分解図が示してある。まず、
図2の左側の部分を見てみると、上側の部分にメンブレンMを認めることができる。このメンブレンMは弾性的な材料から形成されていて、ひいては、撓み変形可能である。
図2の左側における下側の部分には、自体形状剛性的なフレームRを認めることができる。このフレームRは多数の貫通孔を有している。これらの貫通孔は、メンブレンMとフレームRとの組立て状態でメンブレンMの区分によって覆われるかもしくは閉鎖される。特にフレームRは、上面に設けられた複数の貫通孔DUXと、上面に対して90°だけ傾けられた側面SFに設けられた複数の貫通孔DUYとを有している。これらの貫通孔DUX,DUYの背後には、フレームR内に配置された複数の電気的な切換エレメント、たとえばマイクロスイッチ("Micro Switches")が設けられている。これらの電気的な切換エレメントは、その上方に位置するメンブレン区分の運動もしくは操作を介して操作することができる。フレームRの、ボタン操作のために設けられた領域を閉鎖するために、メンブレンMは複数のメンブレン区分もしくは分割メンブレンを有している。これらの分割メンブレンM11,M12,M13は、ボタン機能のために上面に位置する貫通孔、特に貫通孔DUXを覆うために設けられており、分割メンブレンMST1,MST2は、側面SFでのボタン機能のための貫通孔DUYを閉鎖するために設けられている。
【0027】
フレームRは上側もしくは上面OFに凹部VTFを有している。この凹部VTF内には、メンブレンM、特に分割メンブレンM11,M12,M13が収容されている。両構成要素、つまり、メンブレンMとフレームRとの組立て状態は、
図2の右側に認めることができる。これら両構成要素は、上方で密封されたスイッチハウジングSGHを形成している。したがって、
図2から認めることができるように、メンブレンMは第1の構造的な機能を有している。この機能は、以下でさらに詳しく説明するように、敏感な電気的なもしくは電子的な構成要素が内部に位置し得るスイッチハウジングSGHの密封にある。
【0028】
次いで、
図3Aおよび
図3Bを参照し、両図において、スイッチハウジングの主要な構成要素、特に第2のボタンの、メンブレンM12が機能的に形成されている領域の別の分解図に基づき、スイッチハウジングにおけるメンブレンの別の構造的な機能を説明する。まず、
図3Aを見てみると、そこでは、図面の左側にメンブレンM12を認めることができる。このメンブレンM12は、電子キーのボタンパッドを実現するために、フレームRの、第2のボタンの領域における部分を形成するフレームRA2と組立て可能である。すでに述べたように、メンブレンとフレームとは、二成分射出成形エレメントとして形成することができる。この二成分射出成形エレメントでは、メンブレンが二成分射出成形エレメントのうちの軟質構成要素を成していて、フレームが硬質構成要素を成している。メンブレンM12は、第1の面MS1に4つの力伝達ドームK1,K2,K3,K4を有している。これらの力伝達ドームK1,K2,K3,K4には、(
図1に示した)ボタンエレメントを支承することができるかもしくは支持することができる。各力伝達ドームは、メンブレンM12の、支承区分とも呼ばれる区分LA1,LA2,LA3,LA4に位置している。メンブレンM12の中心には、操作区分BTAを認めることができる。この操作区分BTAの下側には、キーの組立て状態で(実線の形態で示したような)電気的な切換エレメントSEが位置している。念のために付言しておくと、支承区分の下方ではなく、操作区分BTAの下側にだけ、電気的な切換エレメントSEが位置している(このことは、別のボタンにも云える)。さらに、念のために付言しておくと、(
図3Aには示していないにもかかわらず)1つの可能な形態によれば、操作区分BTAの領域で第1の面MS1に、ボタン側の複数の切換バーS1;S2;S3のうちの1つの切換バーと協働するメンブレン側の上側の切換バーまたは切換ドームとしての隆起部もしくは突出部が形成されていてよい。
【0029】
次いで、フレームRA2を見てみると、このフレームRA2とメンブレンM12との組立て状態では、各支承区分の下側に複数の貫通孔D1,D2,D3,D4が位置していて、操作区分BTAの下側に別の貫通孔D5が位置していることが認められる。
【0030】
両構成要素の組立て状態は、
図3Aの右側に認めることができる。この組立て状態では、メンブレンM12の第1の面MS1がフレームRA2と反対の側に向けられている。第1の面MS1から離れる方向に複数の突出部もしくは力伝達ドームK1,K2,K3,K4が突出している。
【0031】
次いで、
図3Bでは、メンブレンM12とフレームRA2との組立て状態を裏側もしくは下側から見ることができる。
図3Bに認めることができるように、各支承区分LA1,LA2,LA3,LA4は、フレームR2の貫通孔D1,D2,D3,D4に隣接して位置しており、操作区分BTAは、別の貫通孔D5に隣接して位置している。メンブレンM12は、その第1の面MS1と反対側の第2の面MS2でフレームRA2によって支持される。操作区分BTAの裏側の中心には、操作突出部BTV(またはメンブレン側の下側の切換バー)を認めることができる。この操作突出部BTVは、その上方に位置するボタンの操作時に、その下方に位置する切換エレメントの方向に運動可能であり、これによって、この切換エレメントが作動させられる。操作突出部BTVの中心軸線の位置と、その下方に位置する切換エレメント、たとえばマイクロスイッチの中心軸線の位置とは、好ましくは合致している。
【0032】
メンブレンM12、より正確に云うと、力伝達ドームK1,K2,K3,K4に支承されたボタンが操作されると、各力伝達ドームもしくはそれを取り囲むように位置する支承区分が、ボタンの操作に際して、フレームの、それぞれ支承区分の下側に位置する貫通孔を通して運動させられる。その際、メンブレンの各支承区分が変形させられる。この変形によって、貫通孔のサイズおよび/または形状とメンブレン材料もしくはメンブレン厚さとに応じた反力が発生させられる。別の表現をすると、少なくとも1つの支承区分の領域でバーによって少なくとも1つの第1の貫通孔を通して形状が崩されたメンブレンが、ボタンの方向ひいてはボタンを操作するユーザの指に作用するばね力を提供する。たとえば、貫通孔のサイズもしくは貫通孔の直径が、バー直径と比べて小さく形成されている場合には、ボタンの操作に際して、メンブレンの比較的少ない材料しか第1の貫通孔を通して運動させられない。これによって、この少ない材料が強く変形させられ、高いばね力もしくは戻し力が得られる。これに対して、支承区分がバーもしくは力伝達ドームと比べて大きい場合には、説明したばかりの第1の形態と比べて、比較的多くのメンブレン材料が貫通孔を通して運動させられ、これによって、この材料がほんの僅かしか変形させられず、ひいては、戻し力も少なく保たれる。したがって、メンブレンは、特に支承区分の領域において、ボタン操作時にばね力もしくは戻し力を提供するために働き、これによって、別の構造的な機能を有している。
【0033】
次いで、
図4を参照すると、そこには、
図2のスイッチハウジングSGHの上側もしくは上面OFの概略図が示してある。
図4に認めることができるように、上面OFは、フレームRの複数の部分と、これらの部分の間に位置するメンブレンMの分割メンブレンM11,M12,M13とから形成される。すでに前図で説明したメンブレンMのボタン関連機能のほかに、
図4に基づき、メンブレンMの更なる構造的な機能を説明する。
図2の左側の部分にすでに認めることができたように、フレームRは多数の貫通孔を有している。これらの貫通孔を通って、メンブレンの区分がフレームに対して内側から外側に向かって延びていて、フレームの外側に特定の機能的な区分を形成している。フレームは複数の貫通孔D11,D12,D13,D14を有している。これらの貫通孔D11,D12,D13,D14を通って、内側から外側に向かって、第1の区分EA11,EA12,EA13,EA14がフレームの上面OFにまで延びている。
【0034】
さらに、
図5にも認めることができるように、スイッチハウジングSGHは、キーハウジングSLHとも略称されるキーのハウジングの内部に収納されている。有利な形態によれば、スイッチハウジングSGHは、特に
図4に示した第1の区分EA11,EA12,EA13,EA14で支承されているかもしくは保持されている。これは、スイッチハウジングSGHがキーハウジングSLHの内部に位置固定されていて、このキーハウジングSLHの内部で運動することができないという利点を有している。これによって、「がたつき防止」が付与されている。スイッチハウジングSGHの支承部がメンブレンの弾性的なもしくは変形可能な区分EA11〜EA14を介して形成されるという事実は、キーハウジングSLHに対するスイッチハウジングSGHの誤差補償が付与されているという更なる利点を有している。さらに、キーハウジングSLHに作用する機械的な振動を弾性的な第1の区分EA11〜EA14ですでに少なくとも部分的に吸収することができる。
図4に示した第1の区分EA11〜EA14のほかに、上述した利点をさらに改善するために、キーハウジングSLHに対するスイッチハウジングSGHの支承のためのさらに別の第1の区分を設けることも可能である。
【0035】
図5でさらに詳しく説明するように、フレームRには、別の貫通孔D21が設けられている。この貫通孔D21を通って、内側から外側に向かって、メンブレンの一部が延びており、これによって、第2の区分EA21,EA22が形成されている。この第2の区分EA21,EA22は、
図5に示したエマージェンシーキーNSに当て付けられてよい。
【0036】
さらに、フレームRは貫通孔D31を有している。この貫通孔D31はメンブレンの一部によって貫かれており、これによって、第3の区分EA31が形成されている。この第3の区分EA31は、キーハウジングSLHのカバーABDに当て付けられてよい。第3の区分EA31は、カバーABDの閉鎖状態で当付け圧によって変形させられ、相応のばね力もしくは反力を形成する。
【0037】
引き続き、
図5を参照すると、そこには、車両キーFZSの横断面図が示してある。この車両キーFZSはキーハウジングSLHを有している。このキーハウジングSLHの内部には、スイッチハウジングSGHが設けられている。すでに複数の図面において上述したように、このスイッチハウジングSGHは、支持エレメントとしてのフレームRから成っている。このフレームRは複数の貫通孔を有している。これらの貫通孔を通って、弾性的な構成要素としてのメンブレンの一部が延びており、これによって、フレームRの外側に複数の特定の機能的な区分が提供される。ここで、これらの区分のうちの幾つかの区分を詳しく説明する。
【0038】
いま、
図5の右側の部分を見てみると、金属製のキービット(鍵棒)の形態のエマージェンシーキーNSが、キーハウジングSLHに設けられた収容部SAF内に少なくとも部分的に収容されていることを認めることができる。この収容部SAFに対するエマージェンシーキーNSの容易な押込みもしくは引出しを可能にするためには、エマージェンシーキー寸法に関連して、収容部SAFの寸法に、ある程度のクリアランスが設けられている。しかしながら、このクリアランスに起因して、エマージェンシーキーNSには、このエマージェンシーキーNSが振動に基づき運動させられ、その際、ハウジングの内壁を打撃し、「がたつき」が起こることが生じてしまう。これを解消するために、スイッチハウジングSGHの、エマージェンシーキーNSに隣り合って配置された部分に、特別な予防策が講じられている。すでに
図4に関して述べたように、スイッチハウジングSGHの、エマージェンシーキーNSに隣り合った当該部分が、1つ以上の貫通孔を有している。これらの貫通孔は弾性的なメンブレンの一部によって貫かれてよく、これによって、上述した第2の区分EA21,EA22がフレームRの外側に形成されている。第2の区分EA21,EA22はエマージェンシーキーNSに当て付けられており、これによって、このエマージェンシーキーNSの運動が吸収され、ひいては、エマージェンシーキーNSのがたつきが阻止されるかまたは最小限に抑えられる。特に第2の区分EA21,EA22がエマージェンシーキーNSをエマージェンシーキー収容部SAFの内壁に向かって押圧することが可能である。第2の区分EA21,EA22が弾性的なエレメントとして形成されていることによっても、(図面で見て上方への)収容部SAFからのエマージェンシーキーNSの取出しが同じく容易に可能となる。こうして、メンブレンが別の構造的な機能、つまり、エマージェンシーキーNSのがたつき防止を提供する機能を果たしている。
【0039】
図5の上側の区分に認めることができるように、キーハウジングSLHは、カバーABDを保持するための保持装置HEを有している。
図5の実施の形態ではキーハウジングSLHの一部として形成されていてよいカバーABDは、本発明の実施の形態によれば、エマージェンシーキーNSに固く結合されている。図中左上に認めることができるように、保持装置HEは、固定された保持区分HAを有している。この保持区分HAはレールSIEを有しており、このレールSIEに沿って、係止エレメントREが(図面で見て左右に)運動することができる。この係止エレメントREには、ばねFEによって、図面で見て右向きに、より正確に云うと、カバーABDの係止突起RNの方向に予荷重が加えられている。
図5に認めることができるように、カバーABDは、対応する係止切欠きRA内への係止突起RNの係合に基づき、図面で見て上方へ運動することができず、エマージェンシーキーNSとの結合に基づき、図面で見て右方へ運動することができないので、係止切欠きRA内への係止突起RNの係合時には、カバーABDは、キーハウジングSLHにおける予め規定された位置に保持される。
【0040】
次いで、すでに
図4において述べたメンブレンの第3の区分EA31を参照する。この第3の区分EA31は貫通孔D31を通って延びていて、カバーABDに隣接して貫通孔D31から進出している。このカバーABDが、図面で見て上側から下側に向かってキーハウジングSLHに取り付けられる(このとき、エマージェンシーキーNSが収容部SAF内に押し進められる)と、弾性変形可能な第3の区分EA31が圧縮され、図面で見て下方から上方に反力FRを発生させる。これは、(係止突起RNが係止切欠きRA内に収容されている)
図5に示したようなカバーABDの保持状態において、このカバーABDもしくは係止切欠きRAの下側の部分に第3の区分EA31によって常に係止突起RNに向かって予荷重が加えられることを意味している。
【0041】
いま、係止エレメントREが、溝付けされた上面においてユーザの指により(ばねFEの力に抗して)図面で見て右方から左方に移動させられると、係止突起RNが係止切欠きRAから押し出され、最終的に、係止突起RNと係止切欠きRAとの相互作用がもはや存在しなくなる。その後、係止エレメントREのこの位置においてカバーABDが解放され、第3の区分EA31による予荷重力FRに基づき、エマージェンシーキーNSを含めてキーハウジングSLHから図面で見て上方に押し離される。いまや、ユーザが、エマージェンシーキーNSを含めてカバーABDを容易に把持することができ、ひいては、たとえば車両を機械的に開けるために、エマージェンシーキーNSをその収容部SAFから取り出すことができる。したがって、メンブレンが別の構造的な機能、つまり、エマージェンシーキーNSに対する突出し機能もしくはカバーABDの自動的な持上り機能を果たしており、これによって、別の付加的な構成部材、たとえばばねを節約することができる。
【0042】
次いで、
図6を参照し、この
図6において、スイッチハウジングの内部を詳しく説明する。
【0043】
まず、
図6Aを見てみると、そこには、背面図、すなわち、
図4に示したスイッチハウジングSGHを図平面内にある軸線を中心として180°だけ回動させた図が示してある。すでに上述した第2の区分EA21,EA22および第3の区分EA31のほかに、フレームRもしくはスイッチハウジングSGHの内部のメンブレンによって、複数の第4の区分EA41,EA42,EA43,EA44が形成される。これらの第4の区分EA41〜EA44には、プリント配線板LPが支承され、このプリント配線板LPには、電気的な切換エレメントと、場合によっては、別の電気的なまたは電子的な構成要素とを被着することができる。
図6Bの分解図に基づき認めることができるように、このプリント配線板LPは、フレームRもしくはスイッチハウジングSGHの内部に挿入することができ、これによって、第4の区分EA41〜EA44に支承される。その後、プリント配線板LP上に蓋エレメントDEが取り付けられる。この蓋エレメントDEは4つの突出部を有している。これらの突出部のうち、
図6Bには、突出部DV2,DV3,DV4を認めることができる。蓋エレメントDEは、中心にさらに孔BANを有している。この孔BAN内には、たとえば、電子キー内のエネルギ蓄え器としてのバッテリが設けられる。
【0044】
次いで、
図6Cには、
図6Bに示したスイッチハウジングSGHの組立て状態を認めることができる。
図6Cに認めることができるように、プリント配線板LPは、片側で上方からメンブレンの第4の区分(
図6Cには、第4の区分EA42,EA43により示した)によって保持され、下方からは、プリント配線板LPによって、蓋エレメントDEの突出部(
図6Cには、突出部DV2,DV3によって示した)が保持される。特に第4の区分EA42,EA43はスイッチハウジングSGHの組立て時に変形させられていて、プリント配線板LPを蓋エレメントDEの突出部DV2,DV3に向かって押圧している。第4の区分EA42,EA43が変形可能であるので、この第4の区分EA42,EA43によって、誤差補償を伴ったプリント配線板支持が提供される。さらに、第4の区分EA42,EA43は、キーハウジングSLHを介してスイッチハウジングSGHに伝達される振動を吸収することができ、したがって、外部からの環境影響に対する更なる防護を提供している。これによって、メンブレンは、プリント配線板LPに対する防護と誤差補償とを保証する別の構造的な機能を引き受けている。
【0045】
最後に
図7を参照すると、そこには、
図4に示した切断線A−Aの断面図が示してある。この断面図には、スイッチハウジングSGHを認めることができる。このスイッチハウジングSGHでは、フレームRが下側で蓋エレメントDEによって覆われる。プリント配線板LPはメンブレンの第4の区分EA41によって上側で保持され、蓋エレメントDEの突出部DV1によって下側から保持される。プリント配線板LP上には、特にLED(「発光ダイオード」)として形成されていてよい光源LEDが位置している。
図7に示した切断面の特別な特徴は、フレームRの貫通孔D51を通って延びるメンブレン区分である。メンブレンのこの第5の区分EA51は、スイッチハウジングSGHの内部に、光に対する入射区分EKASを有している。この入射区分EKASは光源LEDに隣り合って配置されている。光Lはメンブレンの第5の区分EA51を通って放出区分AASに導かれ、この放出区分AASで最終的に再び出射する。こうして、メンブレンが第5の区分EA51の領域で付加的に光導波路として使用され、これによって、更なる構造的な機能を果たしており、この機能によって、付加的な構成部材、たとえば特殊な光導波路を節約することが可能となる。
【0046】
したがって、図面の説明によれば、電子キーの内部で多数の構造的な機能を引き受けるスイッチハウジングが示してある。特に撓み変形可能なもしくは弾性的なメンブレンの使用が多種多様であり、付加的な部材の省略に繋がる。さらに、メンブレンの多面的な使用によって、部材の削減のほかに、付加的な部材が必要とすることになる構成スペースの減少も可能となる。最後に、すでに冒頭で述べたように、メンブレンによる、フレームに設けられた貫通孔の閉鎖によって、環境影響、たとえば水の侵入に対する防護が保証され、種々異なる構成要素をキーハウジングの内部に支承することによって、メンブレンの支持により、振動の吸収が可能となる。特に(主構成要素としての)フレームと、このフレームに結合される(軟質構成要素としての)メンブレンとを形成するための二成分支持注型法によって、スイッチハウジングSGHを簡単に製造することができ、上述した数多くの構造的な機能を引き受けることができる。