特許第6129477号(P6129477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6129477-空気入りタイヤ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129477
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/08 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   B60C9/08 J
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-58930(P2012-58930)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-189176(P2013-189176A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 達也
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−018104(JP,A)
【文献】 特開2003−312208(JP,A)
【文献】 特開2011−025823(JP,A)
【文献】 特開平06−227209(JP,A)
【文献】 特開2008−024063(JP,A)
【文献】 特開2007−290578(JP,A)
【文献】 特開2011−000958(JP,A)
【文献】 特開2000−211317(JP,A)
【文献】 米国特許第06568446(US,B1)
【文献】 特開2003−226117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード部間に掛け渡されるとともに、ビード部の外面から巻上げられた巻上げ部がベルト層の端部より内側に延びて終端する第1のカーカスプライと、
ビード部間にて実質上省かれるとともに、ビード部の外面から巻上げられた巻上げ端がベルト層の端部より内側に延びる第2のカーカスプライとからなり、
第1のカーカスプライにおけるタイヤ内面に沿って延びる部分と、第1のカーカスプライの巻上げ部と、第2のカーカスプライとは、バットレス部において、隣り合うプライ間で互いに接するように重ね合わされ、かつ、いずれも構成コードが、タイヤのラジアル方向に対して傾斜して配置されるとともに、ラジアル方向に対する構成コードの傾斜の向きが互い違いになるように重ね合わされており、
第1のカーカスプライの巻上げ部が、第2のカーカスプライの巻上げ端よりもさらにタイヤ幅方向内側へと突き出して突き出し部をなし、突き出し部中の構成コードが、第1のカーカスプライ中における他の部位の構成コードよりも、タイヤのラジアル方向に対して、より大きく傾斜して配置された
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
第1のカーカスプライの巻上げ部の構成コードが、第2のカーカスプライの巻上げ端からタイヤ幅方向内側に出る際に屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セミラジアルタイヤの構造を有する空気入りタイヤに関する。本発明は、また、高速走行時などにおける、旋回性、制動性及び直進性などの運動性能を実現するのに適した空気入りタイヤに関する。例えばレーシング用の四輪車などに関する。
【背景技術】
【0002】
ラジアルタイヤの長所と、バイアスタイヤの長所とを同時に実現するといった目的からセミラジアルタイヤ(バイアスベルテッドタイヤ(Bias belted tire))が用いられることがある。一方、高速走行時などにおける高い運動性能が求められるのに対応して、空気入りタイヤのカーカスプライやベルト層の構造の改良や、補強層を設けることなどが検討されている。
【0003】
下記特許文献1においては、カーカス層をなす2層のカーカスプライを、これらの構成コードが傾斜する向きが逆になるように重ね合わせるとともに、タイヤ内面側に補強層を設けることが提案されている。ここで、ビード部に先に巻き付けられている一方のカーカスプライはビードフィラーの外側面の途中まで巻上げられており、もう一方のカーカスプライは、ビードフィラーの上端とショルダーとの間の中間位置にまで巻上げられている。また、補強層は、ビードフィラーの内側面の途中からショルダー部に至る領域、すなわち、タイヤのフレックス性を発揮する領域に設けられている。特許文献1においては、このような構成により、操縦安定性を改善することができるとしている。
【0004】
また、下記特許文献2においては、「トラクション性能とサイドグリップ性能と」を向上させるべく、2層のカーカスプライとともに、ビード部を巻く3層の補強層を設けることが提案されている。また、一方のカーカスプライの巻上げ端を、ベルト層の端部より内側にまで延ばした例(図2、「超ハイターンアップ構造」)も示されている。
【0005】
さらに、下記特許文献3においては、「乗心地を犠牲にすることなく、タイヤの運動性能を高められる」ようにすべく、タイヤにおける車両の内側または外側の領域中にて、「カーカスプライのコードがプライ間で逆向きに交差するバイアス部」をなすようして非対称のタイヤとすることが提案されている。また、カーカスプライについて、「タイヤ幅方向に分断された中抜き構造」とした例も示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−024063公報
【特許文献2】特開2007−290578公報
【特許文献3】特開2011−000958公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本件発明者は、高速走行時などにおける、旋回性、制動性及び直進性などの運動性能をさらに改良すべく検討を続ける中で、さらなる剛性の向上と、さらなる軽量化とが必要と考えるに至った。すなわち、本件発明は、高い運動性能を実現すべく、高剛性と軽量化との両立を図ることのできる空気入りタイヤを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明者は、上記に鑑みさらに検討する中で、サイドウォール部にカーカスプライとは別途の補強層を設けずとも、必要な剛性を得ることが可能ではないかという着想を得た。そして、この着想に基づき鋭意検討する中で、2層のカーカスプライ及びその巻上げ部がいずれも互いに逆側のバイアス角をとりつつ重ねられるラジアルタイヤ構造とするとともに、いずれのカーカスプライもベルト層領域の端部より内側にまで延ばす(「超ハイターンアップ構造」)ということを試みた。すなわち、別途の補強層を用いない非常にシンプルな構造で必要な剛性を実現することを試みた。また、さらに軽量化を図るべく、一方のカーカスプライについてのみ中抜き構造を設け、この際、ビード部間に掛け渡された領域、特にはタイヤ内面に沿った領域の実質上全体にて省くということを試みた。この結果、意外にも、軽量化を実現しつつ、所望の横剛性及びこれに基づく操縦安定性が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明に係る空気入りタイヤは、ビード部間に掛け渡されるとともに、ビード部の外面から巻上げられた巻上げ部がベルト層の端部より内側にまで延びて終端する第1のカーカスプライと、ビード部間にて実質上省かれるとともに、ビード部の外面から巻上げられた巻上げ端がベルト層の端部より内側にまで延びる第2のカーカスプライとからなり、第1のカーカスプライにおけるタイヤ内面に沿って延びる部分と、第1のカーカスプライの巻上げ部と、第2のカーカスプライとは、バットレス部において、隣り合うプライ間で互いに接するように重ね合わされ、かつ、いずれも構成コードが、タイヤのラジアル方向(タイヤ周方向に直交する、タイヤ内面に沿った方向)に対して傾斜して配置されるとともに、ラジアル方向に対する構成コードの傾斜の向きが互い違いになるように重ね合わされており、第1のカーカスプライの巻上げ部が、第2のカーカスプライの巻上げ端よりもさらにタイヤ幅方向内側へと突き出して突き出し部をなし、突き出し部中の構成コードが、第1のカーカスプライ中における他の部位の構成コードよりも、タイヤのラジアル方向に対して、より大きく傾斜して配置されたことを特徴とする。
【0010】
ましい一実施形態において、第2のカーカスプライは、第1のカーカスプライの巻上げ部よりも外側に配置される。但し、場合によっては、第1のカーカスプライのタイヤ内面に沿って延びる部分と巻上げ部との間に挟まれるのであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高剛性と軽量化とを両立でき、これにより、旋回性、制動性及び直進性などの運動性能を高く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例4の空気入りタイヤについてのタイヤ幅方向の断面図である。
図2図1の空気入りタイヤにおける要部の積層構造を説明するための模式的な断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいては、第1のカーカスプライの巻上げ端、及び、第2のカーカスプライの巻上げ端をいずれもベルト層の外側端よりもタイヤ幅方向内側の位置にまで延ばすことにより、横方向(タイヤ幅方向)のタイヤの剛性を向上させており、また、タイヤのバットレス部(ビード部上端からトレッド端部に至る領域)の剛性を均一にすることができる。なお、バットレス部は、タイヤのフレックス性を発現するための領域ということができる。このよに、タイヤの変形を担う部分にて剛性が均一であることから、変形が一部分に集中することが防止されており、操縦安定性、乗り心地及び耐久性能を実現する上で有利となっている。
【0014】
好ましい実施形態において、第1のカーカスプライの構成コード、及び、第2のカーカスプライの構成コードが、タイヤ周方向に対してなす角度は、いずれも60〜85°に設定される。この範囲であると、セミラジアルタイヤ構造による剛性付与にとり有利である。構成コードは、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、または、各種ナイロンなどのポリアミド樹脂からなる。
【0015】
また、好ましい実施形態において、第1のカーカスプライは、構成コードの傾斜角が実質上均一であるシート部材をビード部のまわりに巻き付けてなるものであり、タイヤ内面に沿った部分と、巻上げ部分とでは、構成コードがタイヤのラジアル方向に対して、互いに逆向きに傾斜する。そして、第1のカーカスプライの巻上げ部の外側に、第2のカーカスプライが重ね合わされるにあたり、これらの構成コードがタイヤのラジアル方向に対して、互いに逆向きに傾斜するように配置される。
【0016】
したがって、好ましい一実施形態において、第1のカーカスプライにおけるタイヤ内面に沿った部分と、第2のカーカスプライとでは、構成コードが、平行またはほぼ平行である。このようにして、バットレス部の全領域にわたって、互いに接するように重ね合わされる構成コード層は、互いに、構成コードが交差している。このため、タイヤの横剛性の向上を極大化することが可能となっている。
【0017】
好ましい実施形態において、第1のカーカスプライの巻上げ端は、第2のカーカスプライの巻上げ端よりもタイヤ幅方向内側に位置する。すなわち、ベルト層の端部近傍の領域中で、第1のカーカスプライにおけるタイヤ内面側の部分と、第1のカーカスプライとの2枚重ねとなり、第2のカーカスプライが存在しない、帯状の突き出し部が形成される。特に好ましい実施形態において、この突き出し部中では、構成コードが、タイヤラジアル方向に対して、第1のカーカスプライの巻上げ部中の他の部位よりも、大きく傾斜する。好ましくは、タイヤ周方向に対して構成コードは、他の部位にて60〜85°傾斜するとともに、突き出し部中にて20〜55°傾斜し、より好ましくは30〜50°傾斜する。このような突き出し部の構成により、トレッドの両端部における剛性分布を均等化することが可能となり、運動性能をさらに向上することが可能である。
【実施例】
【0018】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0019】
まず、実施例4(後述の試験結果中に表示)に係る空気入りタイヤ10の構成について、図1〜2を用いて説明する。図1に示すように、本実施例の空気入りタイヤ10は、カーカス層が、第1のカーカスプライ1と、第2のカーカスプライ13とからなり、サイドウォール部29にこれら以外の補強層を有していない。第1のカーカスプライ1は、中抜き部を有さないため、ビード部25の間を掛け渡すようにタイヤ内面に沿って延びるカーカス内側部11と、ビード部25からトレッド33の側へと延びる巻上げ部12とからなる。図示の具体例で、巻上げ部12は、ビードフィラー27の尖端より、ショルダー28側へと少し離間した箇所から、カーカス内側部11に直接接している。一方、巻上げ部12のタイヤ幅方向内側端(巻上げ端16)は、ベルト層2の縁24から、タイヤ幅方向内側に、所定寸法D1だけ離れた位置にある。四輪乗用車用のタイヤにおいて、好ましくは、10〜40mm離れた位置にあり、また、タイヤ子午線31から50mm以上離れている。
【0020】
第2のカーカスプライ13は、タイヤ内面に沿った部分が全て省かれた形の中抜き構造を有しており、図示の具体例において、ビード部25の側の端部15が、タイヤ内面の端部に位置している。すなわち、ビードコア26と、ホイールのリムとに挟まれる領域の全体を確実にカバーするように延びている。また、第1のカーカスプライ1の巻上げ部12の外側面に接するようにして、ベルト層2の端部近傍の領域中にまで延びている。すなわち、第2のカーカスプライ13の巻上げ端14は、ベルト層2の縁(端部)24よりタイヤ幅方向内側にある。四輪乗用車用のタイヤにおいて、好ましくは5〜40mm離れた位置にある。このようにして、ビード部25から、ベルト層2の端部の領域へと、第1のカーカスプライ1の巻上げ部12と、第2のカーカスプライ13とが、確実に掛け渡されて耐力構造をなして入る。しかも、サイドウォール部29中にて補強層が3層だけという最小限の構成により強力な耐力構造を形成している。なお、図示の例において、ベルト層2は、2層のベルトプライ21、22からなり、これらの外面にはキャッププライ23がかぶせられている。しかし、ベルト層の縁24という場合、キャッププライ23は無視し、タイヤ幅方向に最も外側まで延びるベルトプライ21の縁を指すものとする。
【0021】
本実施例において、第2のカーカスプライ13の巻上げ端14が、ベルト層2の縁24と、第1のカーカスプライ1の巻上げ端16との間に位置する。このような構成の四輪乗用車用のタイヤの好ましい例において、ベルト層2の縁24から第2のカーカスプライ13の巻上げ端14の距離D2は、5〜20mm、ベルト層2の縁24から第1のカーカスプライ1の巻上げ端16までの距離D1の1.5〜2.5倍である。
【0022】
次に、図2を用いて、バットレス部のプライ積層構造について、特には、具体的な構成コードの配向の例について説明する。後述の実施例4に対応する図示の具体例において、カーカス内側部11中の構成コード11Aと、第2のカーカスプライ13の構成コード13Aとは、互いに平行に配置され、いずれも、タイヤ周方向32に対して70°傾斜している。一方、カーカス内側部11と第2のカーカスプライ13との間に挟まれる巻上げ部12では、構成コード12Aが、逆側に、タイヤ周方向32に対して70°傾斜している。このようにして、直接接して重ねあわされるプライ間では、構成コードが交差している。
【0023】
図2中に示すように、巻上げ部12が、第2のカーカスプライ13の巻上げ端14から突き出す突き出し部12B中では、構成コード12Aの配向が、巻上げ部12の他の部位と異なっている。すなわち、構成コード12Aの配向が、第2のカーカスプライ13に覆われる領域から出る際に、構成コード12Aが屈曲している。図示の具体例において、突き出し部12B中の構成コード12Aは、タイヤ周方向32に対して40°傾斜している。すなわち、第2のカーカスプライ13に覆われる領域から出る際に、構成コード12Aが30°屈曲している。このような構成とするならば、図2から知られるように、タイヤ幅方向での構成コードの打ち込み密度が大きくなる。そのため、2層重ねの領域での補強効果を大きくすることができる。
【0024】
以下に、具体的な試験及びその結果について説明する。ここで、実施例4は、図1〜2に示す上述の具体例である。同様の構成において、実施例3は、第1のカーカス1の突き出し部12Bにおける構成コード12Aの配向を、タイヤ周方向に対して50°に変更したものであり、実施例2は、突き出し部12Bにおける構成コード12Aの配向を、他の部位と同じ70°に変更したものである。また、実施例1は、実施例2と同様の構成において、第1のカーカス1の巻上げ端16の位置と、第2のカーカス13の巻上げ端14の位置とを入れ替えたものである。
【0025】
一方、実施例5は、実施例1と同様の構成において、第1のカーカス1の巻上げ部12におけるベルト層2の縁24から巻上げ端16までの10mmの領域にて、構成コード12Aの配向をタイヤ周方向に対して40°に変更したものである。
【0026】
比較例1は、実施例1と同様の構成において、いずれのカーカスプライ1、13についても、またいずれの部位でも構成コードの配向をタイヤのラジアル方向とし、第1のカーカスプライ1の巻上げ端16について、ベルト層2の縁24よりも20mmだけビード25の側に離れた位置としたものである。
【0027】
比較例2は、実施例1と同様の構成において、第1のカーカスプライ1の巻上げ端16について、ベルト層2の縁24よりも20mmだけビード25の側に離れた位置としたものである。また、比較例3は、比較例2と同様の構成において、第2のカーカスプライ13の構成コードの配向を、カーカス内側部11における構成コードの配向と同一となるようにしたものである。一方、比較例4は、実施例1と同様の構成において、第2のカーカスプライ13の構成コードの配向を、巻上げ部12における構成コードの配向と同一となるようにしたものである。
【0028】
タイヤ成形用ドラム上で所定の構造のタイヤを成形し、160℃×30分の加硫成形により、タイヤサイズが245/640R18のレース用車両専用の空気入りタイヤを作製した。そして、下記の方法にて試験を行った。
【0029】
<タイヤ剛性>
圧縮試験機を用いてタイヤに基準負荷(710kgf)の110%及び90%の荷重をかけてそれぞれの縦撓み量を測定し、それらの平均値で基準負荷値を除して縦剛性を測定した。また、タイヤに基準負荷値をかけた状態で、基準負荷の30%の横方向の力を更にタイヤにかけて横撓み量を測定し、その横撓み量の値で横方向の力を除して横剛性を測定した。いずれも比較例1の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど剛性が高いことを示す。
【0030】
<操縦安定性>
テストタイヤを車両に装着して旋回走行、制動及び直進走行を実施した後、ドライバーの官能試験により総合評価した。比較例1の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど操縦安定性に優れていることを示す。
【0031】
【表1】
【0032】
上記比較例1は、タイヤ剛性及び操縦安定性などの性能において、概ね、従来の一般的なレース用タイヤ製品と同程度のものである。上記比較例2においては、比較例1と同様の構成において、ラジアルタイヤ構造とし、第2カーカスプライ13の構成コードの配向を、第1カーカスプライの巻上げ部12と同一にした。その結果、タイヤの縦剛性及び横剛性は大きく向上したが、操縦安定性の向上は、タイヤ剛性の増加ほど顕著でなかった。
【0033】
上記比較例3においては、比較例2と同様の構成において、第2カーカスプライ13の構成コードを、巻上げ部12の構成コードと交差する配向とした結果、タイヤの縦剛性及び横剛性がさらに向上し、操縦安定性も少し向上した。一方、比較例4においては、比較例2と同様の構成において、第1カーカスプライの巻上げ端16を、ベルト層の端部の領域まで延ばしたところ、ほぼ、比較例3と同程度の性能が得られた。
【0034】
これに対し、実施例1では、比較例のように構成コードを交差配向としつつ、比較例のように第1カーカスプライの巻上げ端16を、ベルト層の端部の領域まで延ばした結果、タイヤ剛性が、比較例及びのいずれに比べても向上し、操縦安定性もさらに向上した。実施例1のものは、従来の一般的なレース用タイヤ製品と比べて、際立って優れた性能を有しているといえる。
【0035】
実施例2では、実施例1と同様の構成において、図1のように巻上げ部12が突き出し部12Bを有するようにした結果、タイヤ剛性は同一であったものの、操縦安定性が少し向上した。一方、実施例3〜4では、図2に示すように、突き出し部12の構成コードについて他の部位よりもタイヤ周方向に対する角度を小さくした結果、タイヤ剛性及び操縦安定性のいずれにおいても最も良好な結果が得られた。突き出し部12の構成コードの配向角を50°とした実施例3と、40°とした実施例4とでは、タイヤ性能にほとんど差はなかった。但し、タイヤ剛性の点で、実施例4が少し優れていると考えられた。
【0036】
実施例5では、巻上げ端14,16の位置を実施例1と同様とし、巻上げ部12における巻上げ端16の近傍を実施例4と同様としたところ、実施例2と同一の性能が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の空気入りタイヤは、レース用車両またはその他の乗用車に装着し使用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1...第1カーカスプライ; 10...空気入りタイヤ; 11...カーカス内側部;
11A,12A,13A...構成コード; 12...巻上げ部;
12B...突き出し部; 13...第2カーカスプライ;
14...第2カーカスプライの巻上げ端; 15...第2カーカスプライの下端;
16...第1カーカスプライの巻上げ端; 2...ベルト層;
21...第1ベルトプライ; 22...第2ベルトプライ; 23...キャッププライ;
25...ビード; 26...ビードコア; 27...ビードフィラー;
28...ショルダー; 29...サイドウォール; 31...タイヤ子午線;
32...タイヤ周方向; 33...トレッド; D1,D2...ベルト層の縁からの距離
図1
図2