(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のポンプ装置では、回路基板を隔壁に固定するための締結機構が回路基板の中心に構成されている。また、回路基板の外周縁部分には、全周に渡って各駆動コイルの端子ピンが貫通している。この結果、回路基板上にまとまったスペースがなく、回路基板上に構成する駆動回路の配線パターンを設計する設計の自由度が低いという問題がある。
【0006】
かかる問題に鑑みて、本発明の課題は、回路基板に駆動回路を構成するためのまとまったスペースを確保できるポンプ装置およびポンプ装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のポンプ装置は、
羽根車が取り付けられているロータと、
環状に配置された複数の駆動コイルを備えるステータと、
前記複数の駆動コイルへの給電制御を行うための駆動回路を備え、前記複数の駆動コイ
ルの中心軸線方向から見たときに当該複数の駆動コイルと重なる位置で当該中心軸線方向と直交する状態に配置された回路基板と、
前記羽根車が配置されているポンプ室と前記回路基板および前記ステータとを隔てているとともに、前記回路基板および前記ステータが固定されている隔壁と、
前記回路基板に固定され、外部からの電力を前記駆動回路に供給するためのコネクタと、
前記ステータ、前記回路基板、および、前記コネクタの一部分を覆った状態で前記隔壁における前記ポンプ室とは反対側の面に固定された樹脂封止部材と、
を有し、
各駆動コイルは、コイル線の端末部分が絡げられた状態で前記中心軸線方向に突出している端子ピンを備え、
前記回路基板は、各駆動コイルの前記端子ピンを貫通させている複数の貫通孔と、前記コイル線の端末部分が電気的に接続されている前記駆動回路の配線パターンとを備え、
前記回路基板と前記隔壁とを締結している締結機構は、前記中心軸線から径方向の外側に離れた
位置、かつ、環状に配置された前記複数の駆動コイルの内側に設けられ、
前記コネクタは、前記回路基板において前記中心軸線を挟んで前記締結機構とは反対側に
位置する前記回路基板の外周縁部分に固定された状態で前記配線パターンと電気的に接続され、
前記樹脂封止部材のゲート跡は、前記回路基板よりも前記径方向の外側であって、前記コネクタよりも前記締結機構の近くに位置していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、回路基板を隔壁に固定するための締結機構は、中心軸線から径方向の外側に離れた位置に設けられているので、締結機構が中心軸線上に設けられる場合と比較して、回路基板上にまとまったスペースを確保することが容易となる。従って、回路基板上に駆動回路の配線パターンを形成する際に、配線パターンの設計の自由度が向上する。また、樹脂封止部材が設けられているため、ポンプ室を流通する液体が駆動コイルや回路基板にかからないようにすることができる。ま
た、コネクタは、前記中心軸線を挟んで締結機構とは反対側に位置する回路基板の外周縁部分に固定された状態で配線パターンと電気的に接続されている。このため、コネクタに近い部分に配線パターンを形成するためのまとまったスペースを確保することができるので、電力の損失を抑えることができる。さらに、樹脂封止部材のゲート跡は、回路基板よりも径方向の外側であって、コネクタよりも締結機構の近くに位置している。従って、金型を用いて樹脂封止部材を成型する際に、ゲートが締結機構の近くに構成され、樹脂が締結機構の近くから注入されることになる。それ故、注入される樹脂によって回路基板が撓むことを抑制できる。
【0009】
本発明において、前記駆動回路は、前記複数の駆動コイルへの給電を制御するための駆動ICを備え、前記駆動ICは、前記回路基板における前記中心軸線上に配置されていることが望ましい。このようにすれば、駆動ICのような比較的大型の電子素子を搭載することが容易となる。
【0012】
本発明において、前記コネクタは、前記回路基板と平行に延びるコネクタ端子を備え、前記配線パターンは、前記回路基板の外周縁部分に前記コネクタ端子がハンダ付けされているコネクタ接続用ランドを備えていることが望ましい。このようにすれば、コネクタ端子とコネクタ接続用ランドの接続部分を長くすることにより、ハンダ付けによる結合強度を向上させることができる。
【0013】
本発明において、前記コネクタを前記回路基板に固定するためのコネクタ固定機構を備えており、前記コネクタ固定機構は、前記回路基板において前記コネクタ接続用ランドの周方向の両側に設けられた回路基板側固定部と、前記コネクタにおいて、前記コネクタ端子の周方向の両側に設けられたコネクタ側固定部とを備えるものとすることができる。このようなコネクタ固定機構を備えれば、コネクタと回路基板との固定を強固なものとすることができる。
【0015】
この場合において、前記ゲート跡は、前記中心軸線方向で前記回路基板よりも前記複数の駆動コイルの側に設けられており、前記配線パターンは、前記回路基板において前記複数の駆動コイルとは反対側の基板面に設けられていることが望ましい。このようにすれば、金型を用いて樹脂封止部材を成型する際に、ゲートが基板面とは反対側に構成され、樹脂が基板面とは反対側から注入されることになる。従って、注入される樹脂によって回路基板に設けられた配線パターンが剥がれてしまうことを防止或いは抑制できる。
【0016】
本発明において、駆動ICの回路基板からの剥離を抑制するためには、前記ゲート跡は、一箇所であり、前記中心軸線方向から見たときに、前記ゲート跡、前記締結機構、前記中心軸線、前記駆動ICおよび前記コネクタは直線上に位置していることが望ましい。
【0017】
この場合において、前記駆動ICは、前記中心軸線方向から見た平面形状が長方形であり、長手方向が前記ゲート跡、前記締結機構、前記中心軸線、前記駆動ICおよび前記コネクタを結ぶ仮想直線と直交していることが望ましい。このようにすれば、樹脂封止部材を成型する際に、回路基板が撓み易い方向における駆動ICの長さを短くすることができる。従って、駆動ICが基板から剥がれたり、損傷したりすることを防止できる。
【0018】
本発明において、各駆動コイルは、前記コイル線が巻き回されているコイルボビンを備えており、各駆動コイルの前記コイル線の端末部分は、前記コイルボビンと前記端子ピンとの間が弛んだ状態となっていることが望ましい。このようにすれば、樹脂封止部材を成型する際に、注入される樹脂によってコイル線の端末部分が切断されることを防止或いは抑制できる。
【0019】
次に、本発明は、上記のポンプ装置の製造方法において、
前記コネクタを前記回路基板に固定するとともに、前記隔壁に前記ステータおよび前記回路基板を固定し、
前記ステータおよび回路基板を金型内に配置するとともに、前記隔壁の外周縁部分および前記コネクタにおいて前記回路基板から外側に突出しているコネクタ接続部を金型によって保持した状態とし、
前記回路基板よりも前記径方向の外側であって、前記コネクタよりも前記締結機構に近い位置から樹脂を前記金型に注入して前記樹脂封止部材を成型することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、金型を用いて樹脂封止部材を成型する際に、樹脂が回路基板と隔壁を締結している締結機構の近くから注入されるので、注入される樹脂によって回路基板が撓むことを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回路基板上に駆動ICなどを配置することが可能なまとまったスペースを確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態のポンプ装置を説明する。
【0024】
(全体構成)
図1は本発明の実施の形態にかかるポンプ装置1の断面図である。以下の説明では、
図1の上側(Z1方向側)を「上」側、
図1の下側(Z2方向側)を「下」側とする。
【0025】
本形態のポンプ装置1は、キャンドポンプと呼ばれるタイプのポンプであり、駆動マグネット2を備えるロータ3と、環状に配置された複数の駆動コイル4を備えるステータ5と、複数の駆動コイル4への給電を制御するための駆動回路6を備える回路基板7を有している。ロータ3には羽根車8が取り付けられており、回路基板7には外部から駆動回路6に電力を供給するためのコネクタ9が取り付けられている。羽根車8、ロータ3、ステータ5および回路基板7はケース体11の内側に配置されており、コネクタ9において外部との接続部となっているコネクタ接続部9aはケース体11から露出している。ケース体11は、ハウジング12と、ハウジング12の上部を覆う上ケース13を備えており、ハウジング12と上ケース13はネジ14によって互いに固定されている。
【0026】
上ケース13には、流体の吸入部13aと、流体の吐出部13bが形成されている。ハウジング12と上ケース13の間には、吸入部13aから吸入された流体が吐出部13bに向かって通過するポンプ室15が形成されている。ハウジング12と上ケース13の接合部分には、ポンプ室15の密閉性を確保するためのシール部材(Oリング)16が配置されている。ハウジング12は、隔壁18と、隔壁18の下面および側面を覆う状態で隔壁18に固定された樹脂封止部材19を備えている。隔壁18は、中心軸線Lと同軸に設けられた環状壁部20と、環状壁部20の下端を塞ぐ円盤状の板状壁部21と、環状壁部20の上端部分から径方向の外側に向かって広がる隔壁鍔部22を備えており、隔壁鍔部22の上方がポンプ室15となっている。隔壁18は、ポンプ室15、羽根車8およびロータ3と、ステータ5および回路基板7との間を隔てている。
【0027】
駆動回路6を介して複数の駆動コイル4への給電が行われると、中心軸線L回りにロータ3が回転する。これによりポンプ室15内で羽根車8が回転すると、流体は吸入部13aからポンプ室15に吸い込まれて、吐出部13bから吐出される。
【0028】
(ロータ)
図1に示すように、ロータ3は、駆動マグネット2、スリーブ24、および、駆動マグネット2およびスリーブ24を保持する保持部材25を備えている。保持部材25は、筒部26と筒部26の上方で径方向に広がっている鍔部27を備えており、羽根車8は鍔部27に固定されている。駆動マグネット2は筒部26の外周側に固定されている。スリーブ24は円筒状であり、筒部26の内周側に固定されている。
【0029】
ロータ3は固定軸28に回転可能に支持されている。固定軸28の上端は上ケース13に保持され、固定軸28の下端は隔壁18の板状壁部21の上面部分に保持されている。固定軸28の軸線は上下方向に延びている。ここで、固定軸28の軸線は、ロータ3の回転中心線であり、円環状に配置された複数の駆動コイル4の中心軸線Lである。
【0030】
固定軸28は、スリーブ24の内周側に挿通されている。また、固定軸28には、上下方向でスリーブ24を挟むように2個のスラスト軸受部材29が取り付けられている。本形態では、スリーブ24がロータ3のラジアル軸受として機能し、スリーブ24およびスラスト軸受部材29がロータ3のスラスト軸受として機能している。羽根車8はポンプ室15の内部に配置されている。すなわち、羽根車8は中心軸線L方向で環状壁部20の外側(上側)に配置されている。ロータ3の駆動マグネット2は隔壁18の環状壁部20の内側に配置されている。すなわち、駆動マグネット2は中心軸線L方向でポンプ室15から下方に外れた位置に配置されている。
【0031】
(ステータ)
図2は隔壁18、ステータ5、回路基板7、および、コネクタ9の斜視図である。
図3は隔壁18およびステータ5の分解斜視図である。
図1、
図3に示すように、ステータ5は円環状に配置された複数の駆動コイル4と、これら複数の駆動コイル4を支持するステータコア30を備えている。
図2、
図3に示すように、本例では、ステータ5は12個の駆動コイル4(1)〜4(12)を備えている。ステータ5は隔壁18の環状壁部20の外周側に取り付けられており、複数の駆動コイル4(1)〜4(12)は環状壁部20を介して径方向でロータ3の駆動マグネット2と対向している(
図1参照)。
【0032】
ステータコア30は、磁性材料からなる薄い磁性板が積層されて形成された積層コアである。ステータコア30は、
図3に示すように、円環部31と、円環部31から径方向の内側へ突出する複数の突極32を備えている。円環部31の環状外周面がステータコア30の環状外周面となっている。ステータコア30の外周面は円環部31の外周面によって規定されている。複数の突極32は等角度間隔で形成されている。複数の突極32のそれぞれには駆動コイル4(1)〜4(12)がそれぞれ支持されている。
【0033】
各駆動コイル4は、コイルボビン33と、コイルボビン33に巻き回されているコイル線34と、コイルボビン33の端末部分が絡げられている一対の端子ピン35を備えている。コイルボビン33は、樹脂等の絶縁性材料で形成されており、径方向に軸線を向けている筒部36と、筒部36の軸線方向の両側から軸線と直交する方向に広がっている一対の鍔部37と、筒部36の軸線方向の一方の鍔部37の上側部分に設けられた端子ピン固定部38を備えている。端子ピン固定部38は一方の鍔部37から径方向に突出している。
【0034】
コイル線34は一対の鍔部37の間において筒部36の外周側に巻き回されている。一対の端子ピン35は、端子ピン固定部38に設けられた固定孔38aに圧入されており、中心軸線L方向に突出している。端子ピン35には、コイル線34の端末部分が絡げられている。コイル線34の端末部分は、コイルボビン33と端子ピン35の間が弛んだ状態となっている。各駆動コイル4は、コイルボビン33の筒部36が径方向の内側から突極32に挿通されて、ステータコア30に支持されている。この結果、コイル線34はコイルボビン33を介して突極32に巻き回された状態となっている。
【0035】
ここで、複数の駆動コイル4(1)〜4(12)は、それぞれが互いに同一形状をしているが、中心軸線L方向から見たときにコネクタ9と重なる位置に配置される3個の駆動コイル4(1)〜4(3)は、突極32への挿入方向が他の9個の駆動コイル4(4)〜4(12)とは反対となっている。すなわち、3個の駆動コイル4(1)〜4(3)は端子ピン固定部38を径方向の内側に位置させた状態で突極32に挿入されており、端子ピン固定部38が形成されていない側の鍔部37を円環部31に当接させている。9個の駆動コイル4(4)〜4(12)は端子ピン固定部38を径方向の外側に位置させた状態で突極32に挿入されており、端子ピン固定部38が形成されている側の鍔部37を円環部31に当接させている。9個の駆動コイル4(4)〜4(12)においてコイルボビン33の端子ピン固定部38は、
図2に示すように、その上端面38b(ステータコア30側の面)をステータコア30の円環部31の下端面31aに当接させている。
【0036】
(回路基板)
図4は隔壁18、ステータ5、回路基板7およびコネクタ9を中心軸線L方向の下方から見た平面図である。回路基板7は剛性のリジット基板であり、全体として略円形の平面形状を備えている。回路基板7は、中心軸線L方向から見たときに複数の駆動コイル4(1)〜4(12)と重なる位置で、中心軸線L方向と直交する状態に配置されている。回路基板7は駆動回路6の配線パターン43が両面に形成された両面基板である。
【0037】
図4に示すように、駆動回路6は、複数の駆動コイル4(1)〜4(12)への給電を制御するための駆動IC40、駆動マグネット2の磁力に基づいて中心軸線L回りのロータ3の回転角度を検出するホール素子(電子素子)41、および抵抗42を備えており、回路基板7にはこれらが搭載されている。
【0038】
図2、
図4に示すように、回路基板7は、回路基板7の外周の一部分に、直線状に切り欠かれた第1の切り欠き部45を備えている。また、中心軸線Lを挟んで第1の切り欠き部45とは反対側に直線状に切り欠かれた第2の切り欠き部46を備えている。第1の切り欠き部45および第2の切り欠き部46は回路基板7に配線パターン43などを形成する際の位置決めに用いられる。或いは、第1の切り欠き部45および第2の切り欠き部46は駆動回路6の電子部品を回路基板7に搭載する際の位置決めに用いられる。また、回路基板7には、
図4に示すように、各駆動コイル4の端子ピン35を貫通させる複数の端子ピン用貫通孔(貫通孔)47、ホール素子41の端子を貫通させる複数のホール素子用貫通孔48、回路基板7を隔壁18に固定する締結機構49を構成している締結孔50、回路基板7を隔壁18に対して位置決めするための2つの位置決め孔51、および、コネクタ9を固定するためのコネクタ固定機構52を構成する2つのコネクタ固定孔53が形成されている。各端子ピン35およびホール素子41の端子は、端子ピン用貫通孔47およびホール素子用貫通孔48を介して回路基板7を貫通した状態とされ、各端子ピン35に絡げられたコイル線34の端末部分およびホール素子41の端子は、各駆動コイル4とは反対側に位置する基板面の配線パターン43にハンダ付けされる。
【0039】
配線パターン43において各駆動コイル4の端末部分との接続部分となるコイル線用ランド43aは、
図4に示すように、各端子ピン用貫通孔47の開口縁に形成されている。また、配線パターン43においてホール素子41の端子との接続部分となるホール素子用ランド43bは、ホール素子用貫通孔48の開口縁に形成されている。また、配線パターン43においてコネクタ9との接続部分となるコネクタ接続用ランド43cは、第1の切り欠き部45の縁部分から、切り欠きに直交する方向に延びるように形成されている。コネクタ固定孔53は、
図2に示すように、コネクタ接続用ランド43cの周方向の両側に設けられている。ここで、コネクタ9は、回路基板7と平行に延びているコネクタ端子55と、コネクタ端子55を周方向で挟む両側に設けられた固定用フック56を備えており、コネクタ端子55がコネクタ接続用ランド43cにハンダ付けされ、固定用フック56がコネクタ固定孔53に嵌め込まれることにより、回路基板7に取り付けられている。すなわち、固定用フック56とコネクタ固定孔53はコネクタ9を回路基板7に固定するコネクタ固定機構52を構成している。
【0040】
図4に示すように、回路基板7に形成されている複数の端子ピン用貫通孔47のうち、中心軸線L方向から見たときにコネクタ9と重なる位置に配置される3個の駆動コイル4(1)〜4(3)の端子ピン35を貫通させるための端子ピン用貫通孔47(1)〜47(3)は、コネクタ接続用ランド43cの内側に形成されている。3個の駆動コイル4(1)〜4(3)の各端子ピン35は端子ピン用貫通孔47(1)〜47(3)のそれぞれを貫通して下方に延びている。各端子ピン35に絡げられたコイル線34の端末部分は各端子ピン用貫通孔47(1)〜47(3)の開口縁に設けられたコイル線用ランド43aに接続されている。
【0041】
3個の駆動コイル4(1)〜4(3)を除いた9個の駆動コイル4(4)〜4(12)の端子ピン35を貫通させる端子ピン用貫通孔47(4)〜47(12)は、回路基板7の外周縁部分に形成されており、外周縁に沿って周方向に配列されている。これら回路基板7の外周縁部分に設けられている端子ピン用貫通孔47(4)〜47(12)は、回路基板7を外周側から切り欠いて形成されており、外周側に向って開口している。9個の駆動コイル4(4)〜4(12)の各端子ピン35は、これら端子ピン用貫通孔47(4)〜47(12)のそれぞれを貫通して下方に延びている。各端子ピン35に絡げられたコイル線34の端末部分は各端子ピン用貫通孔47(4)〜47(12)の開口縁に設けられたコイル線用ランド43aに接続されている。
【0042】
ここで、駆動コイル4(1)、駆動コイル4(4)、駆動コイル4(7)、および、駆動コイル4(10)は、配線パターン43により電気的に接続され、U相、V相、W相のうちの、例えば、U相を構成する。駆動コイル4(2)、駆動コイル4(5)、駆動コイル4(8)、および、駆動コイル4(11)は、配線パターン43により電気的に接続されており、U相、V相、W相のうちの、例えば、V相を構成する。駆動コイル4(3)、駆動コイル4(6)、駆動コイル4(9)、および、駆動コイル4(12)は、配線パターン43により電気的に接続されており、U相、V相、W相のうちの、例えば、W相を構成する。従って、中心軸線L方向から見たときにコネクタ9と重なる位置に配置される3個の駆動コイル4(1)〜4(3)は、それぞれが異なる相の駆動コイルとなっている。
【0043】
径方向の内側に形成された端子ピン用貫通孔47(1)〜47(3)の周方向の一方側には、ホール素子用貫通孔48が形成されている。端子ピン用貫通孔47(1)〜47(3)の周方向の他方側には、抵抗42が搭載されている。ホール素子41は環状壁部20の内側に位置する駆動マグネット2の磁力を検出するために、
図2に示すように、隔壁18の環状壁部20に近接配置されている。ホール素子41の端子はホール素子用貫通孔48を貫通して下方に延びており、端子はホール素子用貫通孔48の開口縁に設けられたホール素子用ランド43bに接続されている。
【0044】
回路基板7の中心軸線L上には平面形状が長方形の駆動IC40が配置されている。駆動IC40は、回路基板7において端子ピン用貫通孔47(1)〜47(12)の内側のスペースに配置されている。
図2に示すように、回路基板7において、第2の切り欠き部46と駆動IC40の間、すなわち、中心軸線Lから径方向の外側に離れた位置には、締結孔50が設けられている。締結孔50は、環状に配置された複数の駆動コイル4(1)〜4(12)の内側で、コネクタ9から最も離れた駆動コイル4(8)側に位置している。また、
図2に示すように、第1の切り欠き部45と中心軸線Lの間には2つの位置決め孔51が形成されている。ここで、締結孔50の中心、駆動IC40、中心軸線L、およびコネクタ9は直線上に位置しており、駆動IC40は、その長手方向が締結孔50の中心、駆動IC40、中心軸線L、およびコネクタ9を結ぶ仮想直線L1上と直交するように配置されている。駆動IC40の端子40a、40bは、当該駆動IC40の短手方向で対向する一対の側面にそれぞれ設けられており、コネクタ9と対向する側面に設けられた端子40aは、配線パターン43によってコネクタ端子55に電気的に接続される。2つの位置決め孔51は中心軸線L方向から見たときに駆動IC40と重なっているとともに、仮想直線L1を挟んだ両側にそれぞれ形成されている。
【0045】
(ハウジング)
図5は隔壁18、ステータ5、回路基板7およびコネクタ9の断面図である。
図2、
図3、
図5に示すように、隔壁18の板状壁部21の下面には、回路基板7を隔壁18に固定するための1つの締結用突起60と、回路基板7を位置決めするための2つの位置決め用突起61が形成されている。締結用突起60は板状壁部21の下面において回路基板7の締結孔50に対応する位置に形成されており、位置決め用突起61は板状壁部21の下面において位置決め孔51に対応する位置に形成されている。
【0046】
図3、
図5に示すように、締結用突起60の先端部分には円環状段部60aが形成されており、締結用突起60において円環状段部60aの先端側は、円環状段部60aの基端側よりも径の小さい小径部分60bとなっている。小径部分60bの高さ寸法は回路基板7の厚さ寸法よりも短く、小径部分60bの先端面にはネジ孔60cが形成されている。また、
図3に示すように、位置決め用突起61の先端部分には円環状段部61aが形成されており、円環状段部61aの先端側は、円環状段部61aの基端側よりも径の小さい小径部分61bとなっている。位置決め用突起61の小径部分61bの高さ寸法は回路基板7の厚さ寸法よりも短い。
【0047】
ここで、回路基板7は、
図5に示すように、締結孔50に締結用突起60の小径部分60bが挿入され、位置決め孔51に位置決め用突起61の小径部分61bが挿入された状態とされ、配線パターン43が形成されている基板面7aの側からワッシャー62を介してネジ孔60cにネジ込まれた有頭ネジ63によって隔壁18に締結される。すなわち、締結用突起60、ワッシャー62および有頭ネジ63は締結孔50とともに回路基板7を隔壁18に固定する締結機構49を構成している。回路基板7が隔壁18に固定された状態では、回路基板7は、中心軸線L方向において板状壁部21の下面に対して一定間隔をあけた位置において、板状壁部21と平行な姿勢に位置決めされているとともに、中心軸線L回りにおいても位置決めされた状態となる。
【0048】
隔壁18の環状壁部20の環状外周面には、
図3および
図5に示すように、縦溝(位置決め部)64が形成されている。各縦溝64は、上下方向に延びる角溝であり、板状壁部21の側の一部分および隔壁鍔部22の側の一部分を除いて形成されている。また、複数の縦溝64は、等角度間隔で環状壁部20の全周に形成されている。複数の縦溝64の間は凸部65となっている。
【0049】
ここで、
図5に示すように、ステータコア30が駆動コイル4を支持した状態では、突極32はコイルボビン33の筒部36から径方向の内側に突出する突出部分32aを備えており、ステータコア30は、この突出部分32aが縦溝64に下方から嵌め込まれることによって、隔壁18に位置決めされた状態で支持されている。すなわち、縦溝64は突極32の突出部分32aと嵌合可能となっており、突出部分32aが嵌合に嵌め込まれることにより、ステータ5が隔壁18に対して中心軸線L回りで位置決めされる。また、突出部分32aが縦溝64の上端の内周面部分64aに当接することにより、ステータ5が隔壁18に対して中心軸線L方向で位置決めされる。ステータ5が隔壁18に位置決めされた状態では、中心軸線L方向から見たときにコネクタ9と重なる位置に配置されている3個の駆動コイル4(1)〜4(3)において径方向の内側に位置する鍔部37に設けられている端子ピン固定部38は、中心軸線L方向で内周面部分64aと重なっており、その上端面38bの周方向の両端部分が凸部65の下端面部分65a(
図3参照)に当接した状態となる。また、コネクタ9と重ならない位置に配置されている9個の駆動コイル4(4)〜4(12)において径方向の内側に位置する鍔部37は凸部65の円弧状の外周面部分に当接した状態となる。
【0050】
樹脂封止部材19は駆動コイル4および回路基板7を流体から保護するためのものであり、不飽和ポリエステル樹脂等の樹脂からなる。樹脂封止部材19は、ステータ5および回路基板7が固定された状態の隔壁18に対して、樹脂を射出することにより形成されている。また、樹脂封止部材19は、駆動コイル4および回路基板7を完全に覆うとともに、コネクタ9において回路基板7から外側に突出しているコネクタ接続部9aを除くコネクタ9の一部分を覆っている。
【0051】
樹脂封止部材19を射出成型する際には、コネクタ9を回路基板7に固定するとともに、回路基板7およびステータ5を、隔壁18に固定する。次に、隔壁鍔部22の外周縁部分22a(
図5参照)およびコネクタ9のコネクタ接続部9aを金型(不図示)によって保持した状態として、ステータ5および回路基板7を金型内に配置する。しかる後に、金型に設けられた1つのゲートから樹脂を金型に注入して硬化させることにより、樹脂封止部材19を形成する。
【0052】
ここで、ゲートは、回路基板7よりも径方向の外側であって、コネクタ9よりも締結孔50に近い位置に設けられている。また、ゲートは、駆動コイル4の外周側に設けられている。この結果、樹脂封止部材19において、駆動コイル4の外周側であって、コネクタ9よりも締結孔50に近い位置には、
図1、
図5に示すように、ゲート跡70が形成されている。本例において、ゲート跡70、締結孔50の中心、中心軸線L、駆動IC40、および、コネクタ9は直線上に位置している。
【0053】
(作用効果)
本例によれば、回路基板7を隔壁18に固定するための締結機構49は、中心軸線Lから径方向の外側に外れた位置に設けられている。従って、締結機構49が中心軸線L上に設けられる場合と比較して、回路基板7上にまとまったスペースを確保することができる。従って、比較的大きな部品となる駆動IC40を回路基板7に配置することが容易である。また、回路基板7上に駆動回路6の配線パターン43を形成する際に、配線パターン43の設計の自由度が向上している。
【0054】
また、本例によれば、締結機構49が中心軸線Lを挟んでコネクタ9とは反対側に設けられているので、コネクタ9に近い部分にまとまったスペースを確保することができ、電力の損失を抑えることができる。
【0055】
さらに、本例によれば、コネクタ9は回路基板7と平行に延びるコネクタ端子55を備え、このコネクタ端子55が、コネクタ接続用ランド43cにハンダ付けされている。従って、コネクタ端子55とコネクタ接続用ランド43cの接続部分が長くなり、ハンダ付けによる結合強度が向上している。また、コネクタ9は、コネクタ9に設けた固定用フック56と基板に設けたコネクタ固定孔53の係合によって回路基板7に取り付けられている。従って、コネクタ9と回路基板7との固定が強固となっており、樹脂封止部材19を成型する際に、金型によってコネクタ9のコネクタ接続部9aを保持しても、コネクタ9が回路基板7から外れることがない。
【0056】
次に、本例では、金型を用いて樹脂封止部材19を成型する際に、樹脂は、回路基板7よりも径方向の外側であって、コネクタ9よりも締結機構49に近い側から注入される。また、中心軸線L方向から見たときに、ゲート(ゲート跡70)、締結孔50の中心、中心軸線L、およびコネクタ9は直線上に位置している。従って、注入される樹脂によって回路基板7が撓むことを抑制できる。また、樹脂は、中心軸線L方向で回路基板7よりも駆動コイル4の側から注入されており、駆動回路6の配線パターン43は、回路基板7において複数の駆動コイル4(1)〜4(12)とは反対側の基板面7aに設けられている。従って、金型を用いて樹脂封止部材19を成型する際に、注入される樹脂によって回路基板7に設けられた配線パターン43が剥がれてしまうことが防止或いは抑制されている。
【0057】
また、駆動IC40の長手方向がゲート(ゲート跡70)、締結孔50の中心、中心軸線L、およびコネクタ9を結ぶ仮想直線L1と直交しているので、樹脂封止部材19を成型する際に、回路基板7が撓む方向における駆動IC40の長さが短い。この結果、駆動IC40が基板から剥がれたり、損傷したりすることが防止されている。
【0058】
さらに、各駆動コイル4のコイル線34の端末部分は、弛んだ状態で端子ピン35に絡げられているので、樹脂封止部材19を成型する際に、注入される樹脂によってコイル線34の端末部分が切断されることが防止或いは抑制されている。
【0059】
(その他の実施の形態)
なお、上記の例では、ロータ3の駆動マグネット2が環状に配置された複数の駆動コイル4(1)〜4(12)の内側に配置されているが、ロータ3の駆動マグネット2が環状に配置された複数の駆動コイル4(1)〜4(12)の外側に配置されている構成(アウターローター)のポンプ装置1にも本発明を適用できる。
【0060】
また、上記の例では、回路基板7を隔壁18に固定するための締結機構49は、締結孔50、締結用突起60、有頭ネジ63から構成されているが、締結機構49は、圧入やカシメなどにより回路基板7を隔壁18に固定するものであってもよい。
【0061】
さらに、上記の例では、金型において樹脂を注入するゲートは一箇所であるが、ゲートを複数備える金型を用いて樹脂封止部材19を成型してもよい。この場合には、少なくとも1つのゲートを回路基板7よりも径方向の外側であって、コネクタ9よりも締結孔50に近い位置に設ければ、樹脂封止部材19の成型に際して回路基板7が撓むことを抑制することができる。