(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハウジングは、前記上流側ポンプユニット及び下流側ポンプユニットを収容する凹部を有するハウジング本体と、前記介在部材と、前記ハウジング本体の開口を閉鎖するべく連結されるハウジングカバーとを含み、
前記排出口は、前記ハウジングカバーに設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のオイルポンプ。
【背景技術】
【0002】
エンジンのオイルポンプとしては、ハウジング、ハウジングに支持された回転軸(駆動軸)、回転軸により回転させられると共に外歯を有するインナーロータ、インナーロータの外歯と係合する内歯を有すると共にインナーロータと協働して容積の変化を伴うポンプ室を画定するアウターロータ等を備え、ハウジングに対して、オイルを吸入する吸入口、オイルを吐出する吐出口、オイルに混入した空気を排出する空気抜き孔(気泡排出口、脱気口)等を設け、回転軸を介してインナーロータを回転させ、インナーロータの回転に連動させてアウターロータを回転させることでポンプ作用を得て、吸入口からオイルを吸入して加圧し、吐出口から加圧されたオイルを吐出すると共に、オイルに混入した空気(気泡)等を空気抜き孔から排出するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等を参照)。
ところで、このオイルポンプは、インナーロータ及びアウターロータからなるポンプユニットを一組だけ備えた一段昇圧式のものであるため、適用されるエンジンによっては要求される吐出圧を満たさない虞がある。
【0003】
一方、高い吐出圧を確保できる流体ポンプとしては、ハウジング、ハウジングに支持された回転軸(駆動軸)、回転軸の軸線方向に配列された前段ポンプユニット及び後段ポンプユニットを備え、前段ポンプユニットを、一組又は二組のインナーロータ(インナーギヤ)及びアウターロータ(アウターギヤ)により構成し、後段ポンプユニットを、一組のインナーロータ(インナーギヤ)及びアウターロータ(アウターギヤ)により構成し、前段ポンプユニットの吐出量と後段ポンプの吐出量とが同じになるように設定し、ハウジングに、オイルを外部から吸入する一つ又は二つの吸入口、オイルを外部に吐出する一つの吐出口を設け、回転軸を介して前段及び後段のインナーロータ(インナーギヤ)を回転させ、インナーロータ(インナーギヤ)の回転に連動させて前段及び後段のアウターロータ(アウターギヤ)を回転させることで、前段ポンプユニットによる一段目のポンプ作用と後段ポンプユニットによる二段目のポンプ作用を得て、吸入口から流体を吸入して加圧し、吐出口から二倍に昇圧(加圧)された流体を吐出するようにしたものが知られている(例えば、特許文献4を参照)。
ところで、この二段昇圧式の流体ポンプにおいては、単に前段のポンプユニットと後段のポンプユニットの吐出量(吐出圧)を同じに設定するだけで、吸入される流体に空気等が混入した場合の吐出特性に及ぼす影響等が考慮されておらず、それ故に、空気が混入した場合には、所望の吐出特性(吐出量)を確保することができない虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、吸入されるオイルに空気等が混入しても所期のポンプ性能を保証でき、又、所望の高い吐出圧(吐出量)が得られるポンプ特性を備えたオイルポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るオイルポンプは、所定の軸線方向において隣接して配置された上流側ポンプユニット及び下流側ポンプユニットと、オイルを外部から吸入して上流側ポンプユニットに導くべく上流側ポンプユニットに臨むように形成された吸入口、上流側ポンプユニットから昇圧して吐出されるオイルを下流側ポンプユニットに導くべく連通する連通口、下流側ポンプユニットから昇圧して吐出されるオイルを外部に吐出するべく下流側ポンプユニットに臨むように形成された吐出口
と、空気が混入した空気混入オイルを外部に排出する排出口を有すると共に、上流側ポンプユニット及び下流側ポンプユニットを収容するハウジングを備え、上記ハウジングは、
上流側ポンプユニットと下流側ポンプユニットの間に介在して連通孔を有する介在部材を含み、吸入口は、介在部材に設けられ、排出口は、軸線方向において上流側ポンプユニットを挟んで吸入口と反対側に位置するハウジングの一部に設けられている、構成となっている。
この構成によれば、オイルポンプが例えばエンジン(のオイルパン内のオイルを吸入加圧して供給する状態)に適用された場合において、オイル(潤滑油)は、上流側ポンプユニット(上流側インナーロータ及び上流側アウターロータ)のポンプ作用によりそのポンプ室に吸い込まれ、続いて、吸い込まれた空気混入のオイルは加圧されつつ排出口から外部に排出されてオイルパンに戻され、続いて、残りのオイルが、所定圧力(例えば、3.0MPa)に昇圧されて、上流側ポンプユニットから連通口を通して下流側ポンプユニット(上流側インナーロータ及び上流側アウターロータ)に圧送され、続いて、下流側ポンプユニットのポンプ作用によりそのポンプ室に吸い込まれ、さらに所定圧力(例えば、6.0MPa)に昇圧されて、吐出口から外部に吐出されて、種々の潤滑領域に向けて圧送される。
ここでは、空気混入のオイルを排出する排出口が、一段目の上流側ポンプユニットに臨むように形成されているため、オイルに混入している空気(気泡)の密度(質量)が小さく、すなわち、空気を遠心分離の作用でポンプ室の内側に容易に集めることができ、混入した空気を効率良く排出することができる。
特に、吸入口が上流側ポンプユニットと下流側ポンプユニットの間に介在して連通孔を有する介在部
材に設けられ、
排出口が軸線方向において上流側ポンプユニットを挟んで吸入口と反対側に位置するハウジングの一部に設けられている
ため、吸入口から吸い込まれたオイルを上流側ポンプユニット内において確実に加圧すると共に混入した空気を排出口から排出し、残りの昇圧されたオイルを、連通口を通して下流側ポンプユニットに送り出すことができ、全体としてのポンプ性能を向上させることができる。
【0007】
上記構成において、上流側ポンプユニットの理論吐出量は、下流側ポンプユニットの理論吐出量よりも大きくなるように設定されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、排出口が臨む上流側ポンプユニットの理論吐出量が下流側ポンプユニットの理論吐出量よりも大きいため、排出口から空気混入のオイルが外部に排出されても、下流側ポンプユニットにより所望の吐出量のオイルを吐出することができる。
【0008】
上記構成において、上流側ポンプユニットの理論吐出量をQu、下流側ポンプユニットの理論吐出量をQd、排出口から排出される排出量をQeとするとき、
Qu=Qd+Qe
を満足する、構成となっている。
この構成によれば、上流側ポンプユニットの理論吐出量Qu、下流側ポンプユニットの理論吐出量Qd、排出口からの排出量Qeの関係において、Qu=Qd+Qeを満たすように、すなわち、排出口からオイルパンに戻す戻し量(排出量)を見越した理論吐出量を設定しているため、二段昇圧による高圧化を達成しつつ所望の吐出量を外部に向けて供給(吐出)することができる。
【0009】
上記構成において、排出口から排出される排出量Qeは、上流側ポンプユニットの理論吐出量Quの20%以上に設定されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、上流側ポンプユニットによる吸入行程においてオイルに混入した空気(気泡)を、一層効率良く排出することができる。
【0010】
上記構成において、上流側ポンプユニットの軸線方向における厚さをWu、下流側ポンプユニットの軸線方向における厚さをWdとするとき、
Wu>Wd
を満足する、構成を採用することができる。
この構成によれば、上流側インナーロータ及び上流側アウターロータと下流側インナーロータ及び下流側アウターロータの基本仕様を同一にしつつ、その軸線方向の厚さのみを変更することで、上流側ポンプユニットの理論吐出量Quが下流側ポンプユニットの理論吐出量Qdよりも大きくなるように、容易に設定することができる。
【0011】
上記構成において、ハウジングは、上流側ポンプユニット及び下流側ポンプユニットを収容する凹部を有するハウジング本体と、上流側ポンプユニットと下流側ポンプユニットの間に介在
して連通孔を有する介在部材と、ハウジング本体の開口を閉鎖するべく連結されるハウジングカバーとを含
み、排出口は、ハウジングカバーに設けられている、構成を採用することができる。
この構成によれば、装置の外径寸法の小型化を達成しつつ、所望のポンプ特性を確保することができ、又、ハウジング本体に対して、上流側ポンプユニット、介在部材、下流側ポンプユニットを収容し、その上からハウジングカバーを取り付けるだけで、全体の組み付け作業を簡単に行うことができる。
【0013】
上記構成において、上流側ポンプユニット及び下流側ポンプユニットは、それぞれ、トロコイド式のインナーロータ及びアウターロータを含む4葉5節からなる、構成を採用することができる。
この構成によれば、混入した空気を効率良く排出できると共に、所望の高い吐出量を確保でき、ポンプ性能及び耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記構成をなすオイルポンプによれば、吸入されるオイルに空気等が混入しても所期のポンプ性能を保証でき、又、所望の高い吐出圧(吐出量)が得られるポンプ特性を備えたオイルポンプを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
この実施形態に係るオイルポンプは、
図1ないし
図3に示すように、ハウジングHをなすハウジング本体10及びハウジングカバー20、ハウジングHにより軸線S回りに回転自在に支持された回転軸30、ハウジングH内に組み込まれたロータケース40、ロータケース40の端面に当接するサイドプレート50、サイドプレート50を軸線Sの方向においてロータケース40側に付勢するOリング60、ロータケース40内に収容された上流側ポンプユニット70(第1インナーロータ71及び第1アウターロータ72)、軸線Sの方向において上流側ポンプユニット70に隣接してロータケース40内に収容された下流側ポンプユニット80(第2インナーロータ81及び第2アウターロータ82)等を備えている。
尚、ロータケース40及びサイドプレート50は、ハウジングHとは別体に形成されているが、上流側ポンプユニット70及び下流側ポンプユニット80を収容するものとして、ハウジングの一部を構成するものである。
【0017】
ハウジング本体10は、軽量化等のためアルミニウム材料を用いて、上流側ポンプユニット70及び下流側ポンプユニット80をロータケース40と一緒に収容し得る凹部をなすように形成されており、
図3及び
図4に示すように、回転軸30の一端部31を軸受Gを介して回動自在に支持する軸受孔11、ロータケース40を嵌め込む円筒状の内周面12、内周面12の奥側に段差をなすように縮径して形成され又軸受孔11の周りに形成された2つの環状の端面13、内周面12の一部を径方向外側に肉抜き及びドリル加工して形成されてオイルを吸入する吸入通路14、底側に形成されて加圧されたオイルを吐出する吐出通路15、サイドプレート50を位置決めする位置決め穴16、ハウジングカバー20を接合する接合面17、ハウジングカバー20を締結するボルトBを捩じ込むネジ穴18、ハウジングカバー20を位置決めする位置決め穴19等を備えている。
【0018】
ハウジングカバー20は、軽量化等のためハウジング本体10と同一のアルミニウム材料により形成されており、
図2、
図3、
図5に示すように、回転軸30の他端部32を軸受Gを介して回動自在に支持する軸受孔21、後述する吸入口44bと軸線Sの方向において対面する凹部22、後述する連通口44eと軸線Sの方向において対面する凹部23、吸入されたオイルに混入する空気(空気混入オイル)を排出するための排出口24、ボルトBを通す円孔25、ハウジング本体10との位置決めを行う位置決め穴26、ロータケース40を位置決めする位置決め穴27等を備えている。
【0019】
そして、ハウジングカバー20は、ハウジング本体10の開口を閉鎖するべく、位置決め穴19に嵌合された位置決めピンを位置決め穴26に嵌め込むようにかつロータケース40の位置決め穴45aに嵌合された位置決めピンを位置決め穴27に嵌め込むようにして接合面17に接合され、ボルトBを外側から円孔25に通してネジ穴18に捩じ込むことで、ハウジング本体10に連結されるようになっている。
ここで、排出口24は、
図5(a)及び
図9(a)に示すように、上流側ポンプユニット70に臨むように形成され、又、軸線Sを通る径方向に伸長すると共にその径方向外側端において上流側ポンプユニット70(第1インナーロータ71及び第1アウターロータ72)の回転方向(矢印方向)に伸長する略L字状に開口するように形成されている。
ここでは、空気混入のオイルを排出する排出口24が、一段目の上流側ポンプユニット70に臨むように形成されているため、オイルに混入している空気(気泡)の密度(質量)が小さく、すなわち、空気を遠心分離の作用でポンプ室の内側に容易に集めることができ、混入した空気を効率良く排出することができる。
尚、排出口としては、上記の形態をなす排出口24に限るものではなく、目標とする空気混入オイルの排出量に応じて適宜所望の形態を採用することができる。
【0020】
回転軸30は、鋼等を用いて、
図3に示すように、軸線Sの方向に伸長して形成されており、ハウジング本体10の軸受孔11に軸受Gを介して支持される一端部31、ハウジングカバー20の軸受孔21に軸受Gを介して支持される他端部32、上流側ポンプユニット70の第1インナーロータ71を一体的に回転させる軸部33、下流側ポンプユニット80の第2インナーロータ81を一体的に回転させる軸部34、軸受Gに支持される軸部35等を備えている。そして、回転軸30は、エンジンの一部をなす回転部材等に連結されて回転駆動されるようになっている。
【0021】
ロータケース40は、鋼、鋳鉄、焼結鋼等を用いて形成されており、
図3、
図6、
図7に示すように、軸線Sを中心とする円筒部41、円筒部41の内側において軸線Sから所定量だけ偏倚した軸線L1を中心とする内周面42、円筒部41の内側において軸線Sから所定量だけ偏倚した軸線L2を中心とする内周面43、軸線S方向において内周面42と内周面43との間に形成された介在部材としての中間壁部44、中間壁部44に設けられた軸受孔44a、中間壁部44に設けられた吸入口44b、中間壁部44に設けられた(上流側ポンプユニット70の)上流側吐出口44c、中間壁部44に設けられた(下流側ポンプユニット80の)下流側吸入口44d、上流側吐出口44cと下流側吸入口44dとが互いに連通する連通口44e、ハウジングカバー20が当接する端面45、端面45に形成された位置決め穴45a、サイドプレート50が当接する端面46、端面46に形成された位置決め穴46a等を備えている。
【0022】
円筒部41は、ハウジング本体10の内周面12に密接しつつハウジング本体10とロータケース40との熱変形量(膨張、収縮)の違いに応じて軸線S方向に相対的に移動し得るように嵌め込まれる外径寸法に形成されている。
内周面42は、上流側ポンプユニット70の第1アウターロータ72を軸線L1回りに回動(摺動)自在に内接させる寸法に形成されている。
内周面43は、下流側ポンプユニット80の第2アウターロータ82を軸線L2回りに回動(摺動)自在に内接させる寸法に形成されている。
吸入口44bは、吸入通路14に連通すると共に、上流側ポンプユニット70(のポンプ室P)に臨むように形成されている。
このように、吸入口44bは、軸線S方向において上流側ポンプユニット70を挟んで排出口24と反対側に位置するように中間壁部44に設けられているため
(言い換えれば、排出口24は、軸線S方向において上流側ポンプユニット70を挟んで中間壁部44とすなわち下流側ポンプユニット80と反対側に設けられているため)、吸入口44bから吸い込まれたオイルを上流側ポンプユニット70内において確実に加圧し連通口44eを通して下流側ポンプユニット80に送り出すことができ、全体としてのポンプ性能を向上させることができる。
連通口44eは、上流側吐出口44cと下流側吸入口44dとを連通させて、上流側ポンプユニット70から吐出されたオイルを下流側ポンプユニット80に導くように形成されている。
そして、ロータケース40は、回転軸30と共に内周面42に上流側ポンプユニット70及び内周面43に下流側ポンプユニット80を収容した状態で、端面13と協働して、Oリング60及びサイドプレート50を挟み込みつつ位置決め穴16に嵌合された位置決めピンを位置決め穴46aに嵌め込むようにして、ハウジング本体10の内周面12に組み付けられる(嵌め込まれる)ようになっている。
【0023】
サイドプレート50は、鋼、鋳鉄、焼結鋼、アルミニウム合金等を用いて円板状に形成されており、
図3及び
図8に示すように、回転軸30を通す円孔51、下流側ポンプユニット80により加圧されたオイルを吐出する吐出口52、位置決め孔53、軸受Gの一端側を受け入れる凹部54等を備えている。
そして、サイドプレート50は、ハウジング本体10の位置決め穴16に嵌合された位置決めピンを位置決め孔53に通して、端面13との間にOリング60を挟み込むようにしてハウジング本体10に組み付けられるようになっている。
【0024】
Oリング60は、弾性変形可能なゴム材料等により環状に形成されており、ハウジング本体10の端面13とサイドプレート50との間に配置されて、サイドプレート50をロータケース40の端面46に向けて付勢するべく、軸線S方向において所定の圧縮量だけ圧縮されて組み付けられるようになっている。
【0025】
上流側ポンプユニット70は、鋼又は焼結鋼等を用いて形成されており、
図9(a)に示すように、第1インナーロータ71と、第1アウターロータ72と、から構成された4葉5節のトロコイドポンプを構成するものである。
第1インナーロータ71は、回転軸30の軸部33を嵌合させる嵌合孔71aを有すると共にその外周に4つの山及び谷(凹み)をもつ外歯車として形成されている。
第1アウターロータ72は、ロータケース40の内周面42に摺動自在に嵌合される外周面72aを有すると共にその内周において第1インナーロータ71の4つの山(外歯)及び谷(凹み)と噛み合う5つの山(内歯)及び谷(凹み)をもつ内歯車として形成されている。
【0026】
そして、第1インナーロータ71が回転軸30と一緒に、軸線Sを中心として矢印方向(
図9(a)中の反時計回り)に回転すると、第1アウターロータ72が連動して軸線L1を中心として矢印方向(
図9(a)中の反時計回り)に回転することで、両者により画定されるポンプ室Pの容積が変化し、オイルが吸入口44bから吸い込まれ、続いて加圧され、加圧過程で空気混入オイルが排出口24から排出され、続いて残りのオイルが上流側吐出口44cから下流側ポンプユニット80に向けて吐出され、この行程が連続的に繰り返されるようになっている。
【0027】
下流側ポンプユニット80は、鋼又は焼結鋼等を用いて形成されており、
図9(b)に示すように、第2インナーロータ81と、第2アウターロータ82と、から構成された4葉5節のトロコイドポンプを構成するものである。
第2インナーロータ81は、回転軸30の軸部34を嵌合させる嵌合孔81aを有すると共に外周に4つの山及び谷(凹み)をもつ外歯車として形成されている。
第2アウターロータ82は、ロータケース40の内周面43に摺動自在に嵌合される外周面82aを有すると共に内周において第2インナーロータ81の4つの山(外歯)及び谷(凹み)と噛み合う5つの山(内歯)及び谷(凹み)をもつ内歯車として形成されている。
【0028】
そして、第2インナーロータ81が回転軸30と一緒に、軸線Sを中心として矢印方向(
図9(b)中の時計回り)に回転すると、第2アウターロータ82が連動して軸線L2を中心として矢印方向(
図9(b)中の時計回り)に回転することで、両者により画定されるポンプ室Pの容積が変化し、オイルが下流側吸入口44dから吸い込まれ、続いて加圧され、続いてオイルが吐出口52から外部の潤滑領域に向けて吐出され、この行程が連続的に繰り返されるようになっている。
【0029】
上記構成において、上流側ポンプユニット70の理論吐出量(吸入量)をQu、下流側ポンプユニット80の理論吐出量(吸入量)をQd、排出口24から排出される(空気混入オイルの)排出量をQeとするとき、
Qu=Qd+Qe
を満足するように形成されている。
このように、排出口24からオイルパンOPに戻す戻し量(排出量Qe)を見越した理論吐出量Qu,Qdを設定しているため、二段昇圧による高圧化を達成しつつ所望の吐出量Qdを外部に向けて供給(吐出)することができる。
ここで、排出口24から排出される排出量Qeは、上流側ポンプユニット70の理論吐出量Quの20%以上〜50%以下の範囲に設定されるのが好ましい。
これにより、上流側ポンプユニット70による吸入行程においてオイルに混入した空気(泡)を、一層効率良く排出することができる。
【0030】
また、上記構成において、
図6に示すように、上流側ポンプユニット70の軸線S方向における厚さをWu、下流側ポンプユニット80の軸線S方向における厚さをWdとするとき、
Wu>Wd
を満足するように形成されている。
このように、軸線S方向の厚さWu,Wdを変更することで、上流側インナーロータ71及び上流側アウターロータ72と下流側インナーロータ81及び下流側アウターロータ82の基本仕様を同一にしつつ、上流側ポンプユニット70の理論吐出量Quが下流側ポンプユニット80の理論吐出量Qdよりも大きくなるように、容易に設定することができる。
【0031】
上記構成をなすオイルポンプによれば、
図1に示すように、オイルパンOPを備えたエンジンに搭載された場合に、オイル(潤滑油)は、先ず、上流側ポンプユニット70のポンプ作用によりそのポンプ室Pに吸い込まれ、続いて、吸い込まれた空気混入のオイルは加圧されつつ排出口24から外部に排出されてオイルパンOPに戻され、続いて、残りのオイルが、所定圧力(例えば、3.0MPa)に昇圧されて、上流側ポンプユニット70から連通口44eを通して下流側ポンプユニット80に圧送され、続いて、下流側ポンプユニット80のポンプ作用によりそのポンプ室Pに吸い込まれ、さらに所定圧力(例えば、6.0MPa)に昇圧されて、吐出口52から外部に吐出されて、種々の潤滑領域に向けて圧送されるようになっている。
【0032】
上記構成をなすオイルポンプの組み付けに際しては、ハウジングHがハウジング本体10とハウジングカバー20により構成され、上流側ポンプユニット70と下流側ポンプユニット80とが、介在部材としての中間壁部44を画定するロータケース40に予め分離して収容される構成を採用しているため、上流側ポンプユニット70及び下流側ポンプユニット80を回転軸30と一緒にロータケース40に配置し、Oリング60、サイドプレート50、ロータケース40を、順次にハウジング本体10に収容し、その後、その上からハウジングカバー20を取り付けるだけで、簡単に組付け作業を行うことができる。
【0033】
次に、オイルポンプの動作について、
図9(a),(b)を参照しつつ説明する。
先ず、エンジンにより回転軸30が回転駆動されると、上流側ポンプユニット70(第1インナーロータ71及び第1アウターロータ72)が、
図9(a)において反時計回りに回転することにより、オイルが、吸入通路14→吸入口44bを経て、上流側ポンプユニット70のポンプ室P内に吸い込まれる。
そして、上流側ポンプユニット70の連続的な回転により、ポンプ室Pに吸入されたオイルは加圧され、この加圧過程で空気混入オイルが、所定の排出量Qeとして積極的に排出口24から外部に排出され、さらに、理論吐出量Quから排出量Qeを差し引いた量(Qu−Qe)の残りのオイルが、上流側吐出口44c→連通口44e→下流側吸入口44dを経て、下流側ポンプユニット80に向けて、所定の吐出圧(約3.0MPa)に昇圧されて吐出(供給)される。
【0034】
続いて、下流側ポンプユニット80(第2インナーロータ81及び第2アウターロータ82)が、
図9(b)において時計回りに回転することにより、オイルが、下流側吸入口44dから下流側ポンプユニット80のポンプ室P内に吸い込まれる。
そして、下流側ポンプユニット80の連続的な回転により、ポンプ室Pに吸入されたオイルは加圧され、吐出口52→吐出通路15を経て、外部の潤滑領域に向けて、所定の吐出圧(約6.0MPa)かつ所定の吐出量(理論吐出量Qd)にて吐出(供給)される。
【0035】
実際には、上流側ポンプユニット70(第1インナーロータ71及び第1アウターロータ72)と下流側ポンプユニット80(第2インナーロータ81及び第2アウターロータ82)との協働作用により、一段目におけるオイルパンOPからのオイルの吸入→一段目におけるオイルの加圧→一段目における混入した空気及びオイル(空気混入オイル)の排出→一段目における残りのオイルの下流側への吐出(二段目におけるオイルの吸入)→二段目におけるオイルの加圧→二段目におけるオイルの吐出という、一連の行程を連続的に行っている。
【0036】
このように、オイルに混入した空気(気泡)がオイルと一緒に(空気混入オイルとして)一段目の上流側ポンプユニット70に臨む排出口24から排出されため、オイルに混入している空気(気泡)の密度(質量)が小さく、空気を遠心分離の作用でポンプ室の内側に容易に集めて、混入した空気を効率良く排出することができ、又、排出口24からオイルパンOPに戻す戻し量(排出量Qe)を見越した理論吐出量Qu,Qdを設定しているため、二段昇圧による高圧化を達成しつつ、所望の吐出量Qdを外部に向けて供給(吐出)することができる。
【0037】
上記実施形態においては、ハウジング(ハウジング本体10及びハウジングカバー20)の内側において第2のハウジングとしてロータケース40及びサイドプレート50等を備えた構成において、本発明を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、ロータケース40及びサイドプレート50等を廃止した構成において、本発明を適用してもよい。
上記実施形態においては、上流側ポンプ70(第1インナーロータ71及び第1アウターロータ72)及び下流側ポンプ80(第2インナーロータ81及び第2アウターロータ82)を備えた二段のトロコイド式ポンプにおいて、本発明を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、内接ギヤ(インンボリュート)式のインナーロータ及びアウターロータ等を備えた構成において、本発明を適用してもよい。
【0038】
上記実施形態においては、ハウジングをハウジング本体とハウジングカバーとに分離した構成において、本発明を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、それぞれ凹部を画定する二分割の第1ハウジング半体及び第2ハウジング半体からなるハウジングを備えた構成において、本発明を適用してもよい。
上記実施形態においては、本発明に係るオイルポンプを自動車等に搭載されるエンジンに適用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、エンジン以外の例えば無段変速機(CVT)等にも適用することができる。