【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。なお、各図面を通じて類似の部材には類似の参照符号を付けてある。
【0029】
[
図1]はソーラパネル(P)の支持体(1)の背面に設けた取付具(2)に回動軸(3)を付け、それをフレーム(4)で軸支する従来公知のソーラパネルシステムの概念的側面図である。例えば、特許文献14(特開2010−283324号公報)にはソーラーパネル(101)の背面に設けた軸線(103)を中心にしてソーラーパネルを回動させる従来法が記載されている。この特許ではソーラーパネル(101)の上下端がV字型に配置された2本の回転押棒(106)を介して回転押圧ローラ(111)に固定されている。この回転押圧ローラ(111)が円形ローラガイドに沿って移動することでソーラーパネル(101)に傾斜角度が与えられる。
【0030】
この従来法では回動軸(3)に大きなストレスが加わり、ソーラパネル(P)と支持体(1)の組立体を回動させるのに大きな回転トルクを必要とする。また、数10年以上の長い年月にわたって台風や豪雪に耐えるだけの強度を与えるには頑丈なフレームが必要になり、その建設には多額の投資が必要になる。
【0031】
本発明者は、外見が「やじろべい」の形をしたソーラパネルシステムにすることによって従来法の上記欠点を解消できるということを見出し、本発明を完成した。
【0032】
本発明のソーラパネルの背面を支持する支持フレームと、ソーラパネルPとは反対側の支持フレームの背面から直角方向へ延び且つ支持フレームに固定された支持フレーム回動部材と、この支持フレーム回動部材の端部に位置したピボネット点とを有する。このピボット点と支持フレームの背面と距離は特に底されず、回動の容易さおよび街道角度に応じて適宜選択できる。一般には支持フレームの背面からの直角方向距離はソーラパネルPの長さ(上下方向寸法)の10〜100%にすることができる。 [
図2]は本発明のソーラパネルシステムの一つの基本形を示す概念的斜視図で、ソーラパネル(P)は本発明の直接の対象ではないので、図示していない。この図に示す本発明ソーラパネルシステムの基本形は、ソーラパネルの背面を支持する支持フレーム(20)と、この支持フレームの上下端近傍から下方へ向かって延びた一対の収束フレーム(21、22)と、この収束フレーム(21、22)の下端部と一体な回動軸部(23)とからなるやじろべいフレーム(30)を有している。
[
図15]は本発明のソーラパネルシステムの他の基本形を示す概念的側面図である。
【0033】
支持フレーム(20)はソーラパネル(P)を支持できるものであればとくに制限されない。ソーラパネル(P)の外周を支持する単なるL型フレームにすることもできるが、ソーラパネル(P)の背面を保護するための保護プレードを有するのが好ましい。さらにソーラパネル(P)の接続端子のシール、配線等を考慮した背面パネルを有することもできる。
やじろべいフレーム(30)は固定手段(26)を用いて固定基礎部(24)に所定位置に(調節自在に)固定される。固定基礎部(24)は従来公知の任意の手段で支持構造者、地表面、屋根、車両、船舶等の任意の固定物に固定することができる。
【0034】
[
図2]の場合には、やじろべいフレーム(30)の固定を簡単なバー(26、26')を用いて行う。[
図3]は[
図2]の取付部分の概念的側面図で、各バー(26、26')は支持フレーム(20)にピボット(261)されており、各バー(26、26')に形成された孔(262)に挿入されたピン(図示せず)を用いて固定基礎部(24)に対して位置自在に固定される。孔(262)の位置を春夏秋冬の季節に応じた太陽に対する平均仰角に合わせて形成するのが好ましい。あるいは、固定基礎部(24)に複数の孔を形成し、バー(26、26')に固定挿入ピンを取り付けることもできる。
【0035】
例えば、1260×980cmのソーラパネル(P)(図示せず)の場合、4枚のソーラパネル(P)を並べて配置すると、支持フレーム(20)の横の長さは約4mになる。
【0036】
実際の太陽光発電では上記のやじろべいフレーム(30)を多数並べて配置する。[
図4]は3列に並べたやじろべいフレーム(30)のセットを前後2列に並べた場合の概念的側面図である。日本で使用する場合には、隣接する2列のやじろべいフレーム(30)セットの間に例えば約4mの間隔を開けることで前方のソーラパネル(P)の影で後方のソーラパネル(P)が日陰になるのを避けることができる。
【0037】
[
図4]ではやじろべいフレーム(30)セットを3列に並べ、各やじろべいフレーム(30)セットの間に間隔を開けて配置する。そうすることでソーラパネル(P)上に積もった雪を上記の間隔から下へ容易に落下させることができるので、落雪が一カ所に集中することはない。
【0038】
やじろべいフレーム(30)の一対の収束フレーム(21、22)の間の角度に格別な制限はない。本発明の「やじろべい式」ソーラパネルシステムの一対の収束フレームは同じ長さである必要はないが、部品点数を減らすために一対の収束フレームは互いに同じ長さにするのが好ましい。各収束フレームは直線状でも、湾曲していてもよく、例えば円弧にすることもできる。
【0039】
[
図5]は本発明の他の観点から提供されるソーラパネル集合体の概念的斜視図である。本発明のソーラパネル集合体では、やじろべい式ソーラパネルシステムの固定基礎部(24)が構造フレームによって地面に対して斜めに支持される。
【0040】
[
図5]の実施例では、やじろべいフレーム(30)セットを4列に並べた固定基礎部(24)を構造フレームによって地面に対して斜めに支持している。下側構造フレーム部材(243)はやじろべいフレーム(30)セットの下端が地表から例えば約50cmの高さとなるような長さを有している。上側構造フレーム部材(241)は各やじろべいフレーム(30)が有効に太陽光を受光できるように高さを有している。この高さは設置する場所の緯度に依存する。上側と下側の構造フレーム部材との間を連接構造フレーム部(242)で連結することもできる。
【0041】
固定基礎部(24)および構造フレームは本発明のソーラパネル集合体の左右両端に必要である。強度を上げるために複数の固定基礎部(24)および構造フレームを用いることができる。[
図4]では中間に2つの固定基礎部(24)および構造フレームを用いている。各構造フレームを横断ビームで連結することもできる。
【0042】
ソーラパネマ(P)を地表と平行にした場合、本発明の「やじろべいフレーム」は手で容易に動かすことができるが、赤道直下でない地域では一般にはソーラパネマ(P)を一定角度だけ傾斜させる必要があるので、「やじろべいフレーム」を手で容易に動かすことができるようにするためには「カウンターバランス(重り)」を付ける必要がある。
【0043】
[
図6]は「カウンターバランス(重り)W」を付けた時の「やじろべいフレーム」の概念的側面図で、カウンターバランスWはロッド(29)、例えば鉄の棒、一端部に固定されている。その固定位置を調節自在にすることきもできる。このカウンターバランスWは「やじろべいフレーム」に常時固定しておくこともできる。この「カウンターバランス」を付けることによって設置作業やメンテナンス作業が容易になり、「やじろべいフレーム」をモータ駆動する場合の電力消費量を大幅に減らすことができる。
【0044】
また、「カウンターバランスw」をソーラパネルシステムの設置時やメンテナンス時等の必要な時にだけ付けることもできる。この場合には「カウンターバランスW」を付けたロッドを(29)をやじろべいフレーム(20)に設けた取付部、例えばロッドを収容する収容パイプや収容孔に挿入する。作業終了時やじろべいフレームをバーで固定し終わった後に「カウンターバランスW」を付けたロッド(29)を取り外すことができる。
【0045】
[
図7]は[
図6]の変形例で、本発明のソーラパネルシステムの収束フレームの一方(22)の長さを他方(21)より短くした場合を示している。
【0046】
[
図6]および[
図7]には、支持フレーム(20)にピボット(261)されたバー(26)が示されている。このバー(26)には長孔(263)で形成されている。図示した実施例では、支持フレーム(20)を所定傾斜角度にセットする場合には、固定基礎部(24)に固定したネジ付きシャフト(264)([
図8]参照)を上記長孔(263)中でスライドさせ、所定位置でネジ付きハンドル(262)を締付けて固定する。必要に応じて、この長孔(263)にはノッチまたは歯を形成して、ネジ付きシャフト(264)の固定を確実にすることができる。また、バー(26)、シャフト(264)、ハンドル(262)の固定をクランプ等の押圧摩擦力で行うこともできる。
【0047】
[
図8]は[
図6]および[
図7]で説明したバー(26)の固定方法を説明するための本発明のソーラパネルシステムの概念的正面図である。
【0048】
[
図9]は[
図8]の変形例で、バー(26)を固定基礎部(24)に固定したモータ(M)で行う場合である。この場合にはモータ(M)の出力シャフトにピニオン(264)を取付、このピニオン(264)を長孔(263)中に形成したラックと噛み合わせる。バー(26)は直線以外の任意形、湾曲していてもよい。また、モータ(M)をバー(26)側に固定し、固定基礎部(24)にラックを取付てもよい。
【0049】
本発明ソーラパネルシステムの一つの利点は市販の汎用品を用いて極めて安価に構築できることである。支持フレーム(20)および収束フレーム(21、22)は市販のL形アングル材で作ることができ、回動軸部(23)も市販のパイプで作ることができ、固定基礎部(24)も通常のものである。従って、投資資金を短期間に回収できる。
【0050】
さらに他の利点メンテナンスが容易な点にある。既に述べたように、ソーラーパネルシステムは原則として無人の状態で運転され、メンテナンスは不要であるが、野外に設置した場合、夏場には雑草成長、特に蔦や蔓草が伸びてソーラーパネルへの太陽光の入射を遮断することがあり、パネル上に付着した鳥の糞や汚れを清掃する必要もある。従って、定期的に設置状態を点検し、メンテナンスする必要がある。このメンテナンスに専門のオペレータを雇うことが困難な地方自治体や第3セクターでは、メンテナンスを地方自治体の職員が自らできることは大きな利点である。
【0051】
[
図10]は本発明のソーラパネルシステムの概念を説明するための概念的斜視図で、[
図2]に示した基本形と同じものに、オプションとして使用されるリング状ガイド(26)を付け加えたものである。図ではリング状ガイド(26)は軌道のみを示してある。実際のリング状ガイド(26)の例は[
図11]に示してある。
【0052】
[
図11]はリング状ガイド(26)を断面がL形の異形材から成るリング(270)にした実施例の概念的側面図である。この図の場合には支持フレーム(20)の左右端の少なくとも1方からシャフト(39)を延長させ、その先端部にロ−ラ(31)を取付け、このロ−ラ(31)をL形の異形材リング(270)の円形軌道面上を転動できるようにしている。すなわち、春夏秋冬で変化する太陽高度に合わせてソーラパネ(P)の表面を傾斜角度を無断回で調節できるようしている。角度の固定は例えば手動の固定用クランプで行うことができる。[
図11]に示した固定用クランプはシャフト(39)に形成した貫通孔に挿入したピンにピボットした回動レバー(32)と、この回動レバー(32)を円軌道ガイド(26)にスナップフィトさせるバネ手段(51)とで構成されている。ソーラパネ(P)の角度を変える時には回動レバー(32)を上に上げてロックを解除する。角度が決定された後は回動レバー(32)を下げてバネ手段(51)で摩擦固定する。強固な固定が必要な場合にはバネ手段(51)にネジ等で付けて、異形材リング(270)に強固に固定することもできる。
【0053】
[
図12]はさらに他のオプションを示す図で、角度の調節をモータ駆動で行う場合の例を示す概念的側面図である。この場合にはシャフト(39)の自由端に小型モータ(4)を取付け、このモータ(4)を用いて、シャフト(39)および小型モータ(4)に対して相対回転可能状態で小型モータ(4)に支持されたピニオン(41)を駆動する。このピニオン(41)は円軌道ガイド(26)に固定されたラック(42)と螺合する。ピニオン(41)およびラック(42)をプラスチック製にすることで製造コストを下げることができ、取付け、交換が容易になる。
【0054】
[
図13]は円軌道ガイド(26)が円形溝付きリング(280)から成る実施例の側面概念図である。この場合には上記ロ−ラ(31)を円形溝付きリング(280)に形成された円形溝(281)中をガイドさせる。
[
図14]はこのリング状ガイドをガイド溝(281)の概念的正面図である。
【0055】
[
図15]に示す本発明のソーラパネルシステムの変形例では、上記で説明した収束フレーム(21、22)の代わりに垂直板(211)を用いている。この垂直板(211)をソーラパネルの支持フレーム(20)に取り付ける位置はソーラパネルの上下方向中央である必要は無い。垂直板(211)をソーラパネルの支持フレーム(20)の上端近傍または下端近傍に配置した場合には上記の固定手段(26)またはバー(26、26')の一方を省略することもできる。
【0056】
本発明のソーラーパネルシステムは人の手で容易に動かすことができるので清掃等のメンテナンスが容易である。また、多数のパネルを効率よくメンテナンスできるので時間が節約になる。
【0057】
本発明のソーラーパネルシステムでは、設置後に、資金の余裕ができた時に追加のオプションパーツを取り付けることが容易にできる。例えば、冬場にはソーラーパネル上に雪が積もって太陽光を遮断したり、豪雪地帯で、雪の重みでソーラーパネルシステムが破損する危険がある場合には荷重センサまたは積雪計を用い、モータを駆動してやじろべいフレーム(30)を自動的に回動して雪を落下させることもできる。台風の多い地域では風の向きに従って風圧が少なくなる方向へやじろべいフレーム(30)を回動させることもできる。さらに、従来技術に記載の太陽追尾システムと組み合わせて発電効率を上げることもできる。