特許第6129524号(P6129524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129524
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】車両のクラッチ制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/02 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   F16D48/02 640K
   F16D48/02 640L
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-253612(P2012-253612)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-66354(P2014-66354A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年9月3日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0106516
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 正 チョル
(72)【発明者】
【氏名】尹 永 ミン
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−094049(JP,A)
【文献】 特開平08−184333(JP,A)
【文献】 特表平11−508350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式クラッチを発進クラッチとして用いるダブルクラッチ変速機や自動化手動変速機を搭載した車両における前記乾式クラッチの制御方法であって
クリープ制御中に加速ペダルの操作があるか否かを判断する加速ペダル操作判断段階と、
前記加速ペダル操作判断段階の結果、前記クリープ制御中に前記加速ペダルの操作があると判断された場合、前記クリープ制御中のクラッチ制御トルクであるクリープトルクより、前記加速ペダルの操作量に基づいて計算された前記クラッチ制御トルクである発進トルクが大きくなる時点に、クラッチに加えられた前記クラッチ制御トルクを、前記クリープトルクから前記発進トルクへ漸進的に増加させて連結するように制御する連結制御段階と、を含み、
前記連結制御段階は
前記クリープ制御中に入力された前記加速ペダルの操作量に応じて前記クリープトルクを漸進的に増加させ、
前記クリープトルクに、前記クリープ制御中に入力された前記加速ペダルの操作量に応じたクリープ補償トルクを加えることにより、クリープ最終トルクを求め、
前記クリープ最終トルクを、前記加速ペダルの操作量に基づいて計算された前記発進トルクと比較して、
前記発進トルクが前記クリープ最終トルクより大きくなるときまでは前記クリープ最終トルクを前記クラッチ制御トルクとし、それ以後は、前記発進トルクを前記クラッチ制御トルクとして前記乾式クラッチを制御することを特徴とする車両のクラッチ制御方法。
【請求項2】
前記連結制御段階では、
前記クリープトルクに、前記クリープ制御中に入力された前記加速ペダルの操作量に応じたクリープ補償トルクを加えることにより、クリープ最終トルクを求め、
前記クリープ最終トルクと前記加速ペダルの操作量に基づいて計算された前記発進トルクのうち大きい値を前記クラッチ制御トルクとして前記クラッチを制御することを特徴とする請求項1に記載の車両のクラッチ制御方法。
【請求項3】
前記連結制御段階は現在のエンジン回転数がエンジンのアイドル目標回転数より大きい場合にのみ行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のクラッチ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のクラッチ制御方法に係り、より詳しくは、自動化手動変速機又はダブルクラッチ変速機搭載車両がクリープ走行中に加速ペダル操作による発進制御が行われた場合の車両のクラッチ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乾式クラッチを使用している自動化手動変速機(Automated Manual Transmission:AMT)やダブルクラッチ変速機(Dual Clutch Transmission:DCT)などでは、従来のトルクコンバーターを備えた自動変速機車両で発生するクリープ(creep)走行状態をクラッチの制御によって形成するので、運転者が加速ペダルを踏んでいない状態でもクラッチを制御して車両が徐々に進むように制御する(特許文献1〜4参照)。
前述したクリープ走行の際に運転者が加速ペダルを踏むと、その加速ペダルの操作量に応じた車両走行が行われるように制御するので、この際の制御を発進(Launch)制御という。
【0003】
図1は従来の技術に係る車両のクラッチ制御方法を説明する順序図、図2図1の制御方法によるクラッチ制御トルクと、エンジンの回転数及び変速機入力軸の回転速度の変化を示すグラフである。
図1に示したとおり、コントローラが、クリープ制御中のクラッチ制御トルクであるクリープトルクを算出し、それに基づいてクラッチを制御することにより、クリープ走行が行われる。その途中で、運転者の加速ペダルの操作で加速ペダル位置センサ(Accel−pedal Position Sensor:以下、APSと略すことがある)がオンにされて発進制御を行わなければならない状況になると、コントローラは、クリープ走行中のクラッチ制御トルクであるクリープトルクと、加速ペダルの操作による発進制御のためのクラッチ制御トルクである発進トルクをそれぞれ計算した後、これらのうち大きい値をクラッチ制御トルクとしてクラッチを制御する。
【0004】
前述した制御によって、従来技術では、クリープ制御が行われている間に運転者の加速ペダルの操作によって発進制御に転換されると、クリープ走行中のクラッチ制御トルクに比べて非常に大きいクラッチ制御トルクに急激に転換されるため、図2に示したとおり変速機入力軸の回転振動を誘発し、結果として車両のサージ(surge)が発生する。
したがって、クリープ走行中に加速ペダルを操作すると、車両のサージ発生によって車両の乗車感が低下し、これによって車両の商品性を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−009157号公報
【特許文献2】特開平10−246326号公報
【特許文献3】特開平05−280558号公報
【特許文献4】特開平05−256324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、乾式クラッチを発進クラッチとして用いるダブルクラッチ変速機や自動化手動変速機などの変速機を搭載した車両において、車両のサージを防止し、乗車感を向上させて車両の高級感を高めた、車両のクラッチ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するためになされた本発明の車両のクラッチ制御方法は、クリープ制御中に加速ペダルの操作があるか否かを判断する加速ペダル操作判断段階と、加速ペダル操作判断段階の結果、クリープ制御中に加速ペダルの操作があると判断された場合、クリープ制御中のクラッチ制御トルクであるクリープトルクより、加速ペダルの操作量に基づいて計算されたクラッチ制御トルクである発進トルクが大きくなる時点に、クラッチに加えられたクラッチ制御トルクを、クリープトルクから発進トルクへ漸進的に増加させて連結するように制御する連結制御段階と、を含んでなることを特徴とする。
【0008】
連結制御段階では、クリープ制御中に入力された加速ペダルの操作量に応じてクリープトルクを漸進的に増加させることを特徴とする。
連結制御段階では、クリープトルクに、クリープ制御中に入力された加速ペダルの操作量に応じたクリープ補償トルクを加えることにより、クリープ最終トルクを求め、クリープ最終トルクを、加速ペダルの操作量に基づいて計算された発進トルクと比較して、発進トルクが前記クリープ最終トルクより大きくなるときまではクリープ最終トルクをクラッチ制御トルクとし、それ以後は、発進トルクをクラッチ制御トルクとしてクラッチを制御することを特徴とする。
【0009】
連結制御段階では、クリープトルクに、クリープ制御中に入力された加速ペダルの操作量に応じたクリープ補償トルクを加えることにより、クリープ最終トルクを求め、クリープ最終トルクと加速ペダルの操作量に基づいて計算された発進トルクのうち大きい値をクラッチ制御トルクとしてクラッチを制御することを特徴とする。
連結制御段階は、現在のエンジン回転数がエンジンのアイドル目標回転数より大きい場合にのみ行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両のクラッチ制御方法によると、乾式クラッチを発進クラッチとして用いるダブルクラッチ変速機や自動化手動変速機などの変速機を搭載した車両において、制御ロジックによってクリープ走行を実現する途中で運転者の加速ペダルの操作による発進制御への転換の際に、クラッチ制御トルクの緩やかな変化を実現することにより、車両のサージを防止し、乗車感を向上させて車両の高級感を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の技術に係る車両のクラッチ制御方法を説明する順序図である。
図2図1の制御方法によるクラッチ制御トルクと、エンジンの回転数及び変速機入力軸の回転速度の変化を示すグラフである。
図3】本発明に係る車両のクラッチ制御方法の実施例を説明する順序図である。
図4図3の制御方法によるクラッチ制御トルクと、エンジンの回転数及び変速機入力軸の回転速度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図3は、本発明に係る車両のクラッチ制御方法の実施例を説明する順序図であり、
図4は、図3の制御方法によるクラッチ制御トルクと、エンジンの回転数及び変速機入力軸の回転速度の変化を示すグラフである。
図3及び図4に示したとおり、本発明に係る車両のクラッチ制御方法は、クリープ制御中に加速ペダルの操作があるか否かを判断する加速ペダル操作判断段階(S10)と、加速ペダル操作判断段階(S10)の結果、クリープ制御中に加速ペダルの操作があると判断された場合、クリープ制御中のクラッチ制御トルクであるクリープトルクより、加速ペダルの操作量(f)に基づいて計算されたクラッチ制御トルクである発進トルクが大きくなる時点に、実際クラッチに加えられたクラッチ制御トルクを、クリープトルクから発進トルクへ漸進的に増大しながら連結するように制御する連結制御段階(S20)とを含んでなる。
すなわち、クリープ制御中に加速ペダルの操作があって発進制御に遷移する間に、従来のようにクリープ制御から何らの措置もなく急激に発進制御に転換されるのではなく、クリープ制御と発進制御との間に連結制御段階(S20)を行うことにより、クラッチ制御トルクを緩やかに変化させ、変速機入力軸の回転振動を防止し、これにより車両のサージを防止して乗車感を向上させる。
【0013】
クリープ制御状況では、エンジンの回転数と変速機入力軸の回転数に差が生ずることを前提にクラッチのスリップ制御が行われており、一方、発進制御の際には徐々に変速機入力軸の回転数をエンジンの回転数と同期させるように制御する。
連結制御段階(S20)では、クリープ制御中に入力された加速ペダルの操作量に応じてクリープトルクを漸進的に増加させる方法によって、クリープ制御から発進制御へ転換する。
すなわち、連結制御段階(S20)では、クリープトルクに、クリープ制御中に入力された加速ペダルの操作量に応じたクリープ補償トルクを加えることにより、クリープ最終トルクを求める。このクリープ最終トルクと加速ペダルの操作量に基づいて計算された発進トルクとを比較して、発進トルクがクリープ最終トルクより大きくなるときまではクリープ最終トルクをクラッチ制御トルクとし、それ以後は、発進トルクをクラッチ制御トルクとしてクラッチを制御する。
【0014】
このような制御のために、コントローラは、クリープ最終トルク及び加速ペダルの操作量に基づいて計算される発進トルクのうち大きい値をクラッチ制御トルクとして設定してクラッチを制御する。発進トルクがクリープ最終トルクより大きくなるときまではクリープ最終トルクをクラッチ制御トルクとし、それ以後は、発進トルクをクラッチ制御トルクとしてクラッチを制御する。
【0015】
図4に基づいて本発明の制御方法について説明する。クリープ制御中に運転者が加速ペダルを踏んで加速ペダル位置センサ(APS)信号が発生すると、このAPS信号によって計算された発進制御に使用される発進トルクは、最初はクリープトルクより小さいが、時間経過に伴って次第に大きくなってクリープトルクより大きくなる。従来技術では、このように発進トルクがクリープトルクより大きくなると、クラッチ制御トルクをクリープトルクから発進トルクへ一気に転換することにより、クリープ制御から発進制御へ急激に転換され、サージが発生した。これに対し、本発明では、APS信号で代表される加速ペダルの操作量に基づいてクリープ補償トルクを計算し、これをクリープトルクに加えてクリープ最終トルクを求めることにより、実質的にクリープトルクがAPS信号に応じて徐々に増加し、発進トルクへ連結される。クラッチ制御トルクは、図4において、クリープトルクからAPS信号に応じて増加するクリープトルクを経て発進トルクに繋がる緩やかな曲線を描く。
勿論、前述したようにクラッチ制御トルクが緩やかに変化するにつれて、クラッチの緩やかな作動で変速機入力軸の回転振動の発生が防止され、これにより車両のサージが解消されて車両の乗車感が改善される。
【0016】
一方、連結制御段階(S20)は、現在のエンジン回転数がエンジンのアイドル目標回転数より大きい場合にのみ行う。
これは、現在のエンジン回転数がエンジンのアイドル目標回転数以下の場合に、クリープ補償トルクをクリープトルクに加えてクラッチ制御トルクを計算すると、エンジンに急激な回転数の増加が要求され、エンジンに過度な負荷が作用してエンジンが停止することがあるためであり、このような状況を避けるために、連結制御段階(S20)は、現在のエンジン回転数がエンジンのアイドル目標回転数より大きい場合にのみ行われる。
【0017】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって解釈されなければならない。また、この技術分野で通常の知識を有する者なら、本発明の技術的範囲内で多くの修正と変形ができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0018】
APS 加速ペダル位置センサ
f 加速ペダルの操作量
RPM 回転数
S10 加速ペダル操作判断段階
S20 連結制御段階
図1
図2
図3
図4