(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129531
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】燃料電池車両の充填のための安全制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B60L 11/18 20060101AFI20170508BHJP
F17C 5/02 20060101ALI20170508BHJP
B60K 1/04 20060101ALI20170508BHJP
B60K 8/00 20060101ALI20170508BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20170508BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20170508BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20170508BHJP
【FI】
B60L11/18 G
F17C5/02 Z
B60K1/04 Z
B60K8/00
H01M8/06 R
H01M8/04 H
H01M8/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-264252(P2012-264252)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-73067(P2014-73067A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0108668
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 亨 基
(72)【発明者】
【氏名】黄 基 鎬
(72)【発明者】
【氏名】金 相 鉉
【審査官】
清水 康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−148980(JP,A)
【文献】
特開2010−177111(JP,A)
【文献】
特開2007−035445(JP,A)
【文献】
特開2001−351667(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0150373(US,A1)
【文献】
特開2011−094652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
H01M 8/00 − 8/06
B60K 1/04
B60K 8/00
F17C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池車両に設けられて水素タンクへの水素の充填時に操作する充填スイッチと、
現在の車速を検出する車速検出部と、
前記充填スイッチのオン/オフ操作による信号と前記車速検出部により検出される現在の車速の入力を受けて車両の作動制御を行う制御機と、
を含み、
前記制御機は前記充填スイッチのオン操作信号の入力状態で前記車速検出部により検出された現在の車速から車両が停車状態であると判断した場合、車両の作動をオフするように設定され、
前記燃料電池車両に設けられて前記制御機と充填所側の制御機との間の通信が行われる通信手段をさらに含み、
前記燃料電池車両の制御機は、前記充填スイッチのオフ状態で前記車速検出部により検出された現在の車速から車両が停車状態であると判断した場合、前記通信手段により充填中断信号を充填所側の制御機に伝送するように設定されたことを特徴とする燃料電池車両の充填のための安全制御システム。
【請求項2】
前記燃料電池車両に設けられて水素タンクの圧力を検出するタンク圧力検出部をさらに含み、
前記燃料電池車両の制御機は充填中断信号を伝送した後に前記タンク圧力検出部により検出される水素タンクの圧力で所定の基準値を超える圧力変化が発生したと判断した場合、車両の作動をオフするように設定されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の充填のための安全制御システム。
【請求項3】
前記制御機は、車両の停車状態で車両の作動をオフした後に充填スイッチのオフ操作信号が入力された場合にだけ運転者の車両始動操作により車両の再始動が行われるようにし、充填スイッチのオン操作状態が維持される場合には車両の始動を禁止する設定がなされたことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池車両の充填のための安全制御システム。
【請求項4】
燃料電池車両で水素タンクに水素を充填するために充填スイッチがオン操作される段階と、
制御機が前記充填スイッチのオン操作信号の入力を受け、車両の現在車速を検出する車速検出部の検出信号の入力を受けて現在車両が停車状態であると判断した場合、車両の作動をオフする段階と、
を含み、
前記制御機は、前記充填スイッチのオフ状態で前記車速検出部の検出信号から現在車両が停車状態であると判断した場合、車両内の通信手段により充填中断信号を充填所側の制御機に伝送するように設定されたことを特徴とする燃料電池車両の充填のための安全制御方法。
【請求項5】
前記制御機は、充填中断信号を伝送した後に水素タンクの圧力を検出するタンク圧力検出部の検出信号の入力を受けて水素タンクで所定の基準値を超える圧力変化が発生したと判断した場合、車両の作動をオフするように設定されることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池車両の充填のための安全制御方法。
【請求項6】
前記制御機は、車両の停車状態で車両の作動をオフした後に充填スイッチのオフ操作信号の入力を受けた場合にだけ運転者の車両始動操作による車両再始動が行われるようにし、充填スイッチのオン操作状態が維持される場合には車両の始動を禁止する設定がなされたことを特徴とする請求項4または5に記載の燃料電池車両の充填のための安全制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両の充填のための安全制御システム及び方法に係り、より詳しくは、燃料電池車両に水素を充填する間に車両の作動をオフすることにより、水素の充填時に車両の安全性を向上できる燃料電池車両の充填のための安全制御システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、内燃機関車両が、化石燃料と空気中の酸素の燃焼による爆発力から発生する内燃機関の回転動力を用いて走行することとは異なり、燃料電池車両は、燃料電池スタックで生成された電気エネルギーにより駆動される電気モータの回転動力を用いて走行する。
燃料電池車両の主動力源となる燃料電池スタックは、車両内の水素タンクまたは改質器を含む水素供給装置から供給される水素と、ブロワーまたは圧縮機などの空気供給装置から供給される空気中の酸素を電気化学反応により電気エネルギーを生成する。
したがって、燃料電池車両では、燃料の水素をより安全でコンパクト(compact)に貯蔵することが重要であり、車両の走行距離の増大と安全性を両方とも満足する様々な水素貯蔵技術が開発されている。
【0003】
これら技術のうち、水素を液体水素にして車両に貯蔵するか、吸蔵合金に吸蔵させる方法があるが、これは自然蒸発や吸蔵量などの側面で現在の技術では解決できない問題がある(特許文献1,2参照)。
現在、軽量及び高強度で、かつ高圧にも耐えられる水素タンクに水素を充填して使用することが一般的であり、乗車空間と十分な走行距離を確保するために、350barや700bar仕様などの水素を高圧で充填できる水素タンクを広く使用している(特許文献3参照)。
一方、通常のガソリン車両やディーゼル車両は、燃料を注入する場合に車両のエンジン作動をオフするか、燃料の注入中に作動をオフするように法規により制限されているわけではない。安全上の理由で燃料の注入時に運転者がエンジン作動をオフするように勧めている。
【0004】
しかし、燃料電池車両に対しては燃料の充填中に推進システムの作動、車両の移動などを制限する法規があり、ガソリン車両やディーゼル車両の作動制御ロジックを燃料電池車両にそのまま適用することはできない。
従来、燃料電池車両の作動を制御する場合、燃料の充填を感知する部分を備えていないため、燃料を充填する間にシステムにより車両の作動を制限することができない。法規制によって法規に抵触するため、早急なシステムの改善が必要である(特許文献4参照)。
上述のとおり、燃料電池車両はEC79/2009やEC406/2010などの関連法規を満足しなければならず、EC406/2010の9.5節の内容を基すると、燃料電池車両は燃料の充填を行っている間には推進システムの作動、さらに車両の移動は不可能であると規定している。
しかし、従来の燃料電池車両は水素充填が行われていることを感知するロジックが適用されておらず、このような法規に従うことが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−088196号公報
【特許文献2】特開2001−291524号公報
【特許文献3】特開2002−089793号公報
【特許文献3】特開2010−177111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、燃料電池車両に水素を充填する間に車両の作動をオフすることにより、水素の充填時に車両の安全性を向上させる燃料電池車両の充填のための安全制御システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するためになされた本発明の燃料電池車両の充填のための安全制御システムは、燃料電池車両に設けられて水素タンクへの水素の充填時に操作する充填スイッチと、現在の車速を検出する車速検出部と、充填スイッチのオン/オフ操作による信号と車速検出部により検出される現在の車速の入力を受けて車両の作動制御を行う制御機と、を含み、制御機は充填スイッチのオン操作信号の入力状態で車速検出部により検出された現在の車速から車両が停車状態であると判断した場合、車両の作動をオフするように設定されたことを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい実施例における燃料電池車両の充填のための安全制御システムは、燃料電池車両に設けられて制御機と充填所側の制御機との間の通信が行われるようにする通信手段をさらに含み、燃料電池車両の制御機は、充填スイッチのオフ状態で車速検出部により検出された現在の車速から車両が停車状態であると判断した場合、通信手段により充填中断信号を充填所側の制御機に伝送するように設定されたことを特徴とする。
また、燃料電池車両の充填のための安全制御システムは、燃料電池車両に設けられて水素タンクの圧力を検出するタンク圧力検出部をさらに含み、燃料電池車両の制御機は充填中断信号を伝送した後にタンク圧力検出部により検出される水素タンクの圧力で所定の基準値を超える圧力変化が発生したと判断した場合、車両の作動をオフするように設定されたことを特徴とする。
制御機は、車両の停車状態で車両の作動をオフした後に充填スイッチのオフ操作信号が入力された場合にだけ運転者の車両始動操作により車両の再始動が行われるようにし、充填スイッチのオン操作状態が維持される場合には車両の始動を禁止する設定がなされたことを特徴とする。
【0009】
そして、本発明の燃料電池車両の充填のための安全制御方法は、燃料電池車両で水素タンクに水素を充填するために充填スイッチがオン操作される段階と、制御機が充填スイッチのオン操作信号の入力を受け、車両の現在車速を検出する車速検出部の検出信号の入力を受けて現在車両が停車状態であると判断した場合、車両の作動をオフする段階と、を含むことを特徴とする。
制御機は、充填スイッチのオフ状態で車速検出部の検出信号から現在車両が停車状態であると判断した場合、車両内の通信手段により充填中断信号を充填所側の制御機に伝送するように設定されたことを特徴とする。
【0010】
また、制御機は、充填中断信号を伝送した後に水素タンクの圧力を検出するタンク圧力検出部の検出信号の入力を受けて水素タンクで所定の基準値を超える圧力変化が発生したと判断した場合、車両の作動をオフするように設定されたことを特徴とする。
また、制御機は、車両の停車状態で車両の作動をオフした後に充填スイッチのオフ操作信号の入力を受けた場合にだけ運転者の車両始動操作による車両再始動が行われるようにし、充填スイッチのオン操作状態が維持される場合には車両再始動を禁止する設定がなされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による燃料電池車両の充填のための安全制御システム及び方法によれば、燃料電池車両で水素の充填時に操作する充填スイッチを設け、充填スイッチのオン操作状態で車両が停車状態である場合、車両の作動を自動でオフするように構成されることで、水素の充填時に車両の安全性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による充填のための安全制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明による充填のための安全制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施例について詳細に説明する。
図1は、本発明による充填のための安全制御システムの構成を示すブロック図であり、
図2は、本発明による充填のための安全制御方法を示すフローチャートである。
本発明による充填のための安全制御システムは、燃料電池車両への水素の充填時に運転者が操作する充填スイッチ11を含む。
具体的には、燃料電池車両で燃料の水素を充填する場合、運転者が操作する充填スイッチ11を車両室内の運転席の周辺に設置するが、これは車両室内でクラッシュパッド(crash pad)などの運転者が容易に操作する位置に設置される。
【0014】
本発明で充填スイッチ11が設置される位置は、クラッシュパッドの他、運転者が容易に操作できる車両室内の位置、例えばクラスターやセンターファシア(center fascia)、ドアの内側面、運転席と助手席との間のトレイ、またはコンソールボックスなどの運転席の周辺の位置にしてもよい。
充填スイッチ11は、運転者が水素を充填するために操作しなければならないスイッチであるため、その位置を運転者が容易に操作できる車両室内の位置に設定される。
その他、充填スイッチ11が水素の充填時に必ず操作しなければならないスイッチであることを考慮して、車両の室内でなく、車両の水素注入口の燃料ドア内側など、車両の室外に設置してもよく、この場合、運転者や水素の充填者(既存のガソリン車両やディーゼル車両の給油員に該当する燃料注入者)が必ず燃料ドアの開放状態で充填スイッチ11を操作する。
【0015】
以下、本明細書では、燃料の水素を充填するために充填スイッチを操作する場合は充填スイッチのオン(on)状態であり、車両を走行して水素を充填する前に充填スイッチ11を操作していない状態、またはオン状態を解除するために充填スイッチのオン操作を行った後にさらに操作が行われる状態を充填スイッチのオフ(off)状態であると説明する。
また、充填スイッチ11のオン/オフ操作状態は、車両の制御機20がスイッチ操作信号の入力を受けることにより認知するが、この際、車両の制御機20は、車両の作動制御を担当する制御機であって、後述するように充填スイッチ11の操作状態に応じて車両の作動を制御する。
【0016】
具体的には、制御機20が充填スイッチ11のオン/オフ操作状態に応じて、車両が水素充填中であるか、または水素充填中でないことを認知し、充填スイッチ11のオン状態及び水素充填中状態は車両を作動オフ状態に制御する。
例えば、充填スイッチ11のオン状態及び水素充填中状態では、車両の作動がオン状態である場合は車両の作動をオフにし、充填スイッチ11のオフ操作時まで車両の作動をオフして車両の作動を禁止する。
反面、充填スイッチ11のオフ状態では、制御機20が別途の制御動作を行わないが、車両が移動中であれば(車速>0の状態)充填スイッチ11のオフ状態で正常な車両走行が行われる。
【0017】
また、それと共に充填スイッチ11のオフ状態で車両が停止している状態(車速=0の状態)であれば、水素の充填が行われる可能性があると仮定し、充填操作が行われても水素が充填されないように通信手段21を介して充填中断信号を充填所側に伝送する。
また、運転者が水素の充填時に充填スイッチ11をオンしていない状態、すなわち充填スイッチ11のオフ状態で充填中断信号を充填所側に伝送しても、水素の充填が行われていると判断した場合は制御機20が自動で車両の作動をオフする。
本発明で水素を充填する間に制御機により車両の作動がオフされるということは、燃料電池システムのシャットダウン状態を含んで燃料電池車両でキーオフ操作時のような作動オフ状態を意味する。ただし、充填スイッチのオン状態及び水素の充填により車両の作動がオフされるとしても制御機への電源供給は維持される。
さらに、本明細書では制御機20が車両側に設けられる1つの統合制御機であると説明しているが、本発明で車両側の制御機20は燃料電池システムの制御機と水素貯蔵システムの制御機のように複数の制御機であってもよく、これらの制御機の協調制御により本発明の制御過程が行われる。
【0018】
一方、本発明の充填のための安全制御システムは、燃料電池車両に設けられて現在の車速を検出する車速検出部12及び水素タンクの圧力を検出するタンク圧力検出部13と、燃料電池車両で車両側の制御機20と充填所側の制御機30との間の通信、特に後述するように車両側の制御機20が出力する充填中断信号を充填所側の通信手段31を介して充填所側の制御機30に伝送するための車両側通信手段21と、をさらに含む。
車速検出部12は、通常の車両のように車輪の速度センサであってもよく、制御機20は車輪の速度センサの信号値を受信し、現在の車速を計算して車両の作動を制御するための変数として使用する。
【0019】
また、タンク圧力検出部13は、通常の燃料電池車両で水素タンクに設置された圧力センサであってもよく、制御機20がタンク圧力検出部13の信号を受信して水素タンクの圧力状態に応じて車両の作動を制御する。
また、通信手段21は、有線または無線の通信手段であってもよいが、これは通常の燃料電池車両で充填所側の制御機30との通信のために設けられるIR(Infrared)通信モジュールであってもよい。
【0020】
本発明で制御機20が、統合された1つの制御機の形態でなく、車両の作動を制御する燃料電池システムの制御機と、車両への水素の充填を制御する水素貯蔵システムの制御機に分けられる場合は、充填スイッチ11のオン/オフ操作信号、車速検出部12の信号は燃料電池システムの制御機に入力され、この際、燃料電池システムの制御機がこれら信号に基づいて車両の作動を制御する。
さらに、充填スイッチ11のオン/オフ操作信号は水素貯蔵システムの制御機にも入力され、タンク圧力検出部13の検出信号は基本的に水素貯蔵システムの制御機に入力されるが、水素タンクの圧力状態が車両の作動にも関与するため、タンク圧力検出部13により検出された水素タンクの圧力情報が燃料電池システムの制御機にも伝達されるようにする。
この際、燃料電池システムの制御機は、水素タンクの圧力情報に基づいて後述するように車両の水素タンクで基準値を超える圧力変化が発生したと認知した場合に車両の作動をオフする。
【0021】
また、車速検出部12の検出信号は、基本的に燃料電池システムの制御機に入力され、それと共に水素貯蔵システムの制御機に車速検出部12の車速信号が直接入力されるか、燃料電池システムの制御機から伝達されるように設定される。
また、水素貯蔵システムの制御機が通信手段21により水素の充填を中断するための信号、すなわち充填中断信号を充填所側の制御機30に伝送し、充填所側の制御機30は通信手段31により車両側から充填中断信号を受信した場合に車両に対する水素充填動作を中断する。
【0022】
以下、本発明による燃料電池車両の充填のための安全制御過程について
図2に基づいて説明する。
先ず、車両の水素タンクに水素を充填するために運転者が充填スイッチ11を押してオン(on)すると、制御機(燃料電池システムの制御機及び水素貯蔵システムの制御機)が充填スイッチ11のオン操作信号の入力を受信する。
次に、充填スイッチ11がオン操作されたと認知した状態で制御機(燃料電池システムの制御機)は現在車両が停車状態である場合、すなわち車速検出部の検出信号が入力されて車速が0であると確認した場合、車両の作動がオフ状態でなければオフする(S11、S12、S16)。
【0023】
反面、充填スイッチ11のオフ状態、すなわち運転者が充填スイッチ11をオンしていない場合で、かつ車速が0であれば(車両の停車状態)、運転者が水素の充填を試みても充填が行われないように車両の制御機20(水素貯蔵システムの制御機)が通信手段21を介して充填中断信号を充填所側の制御機30に伝送する(S11、S13、S14)。
充填所側の制御機30は、車両に対する水素の充填が行われないようにするが、結局、本発明の充填のための安全制御システムは、運転者が水素の充填を試みても充填スイッチ11のオン操作が行われていない状態であれば、水素の充填を不可能にして車両の安全を図ることができる。
【0024】
また、水素充填操作を行った状態で、車両側の制御機20と充填所側の制御機30との間の通信異常や通信不能などにより車両側の制御機20から充填中断信号が正常に充填所側の制御機30に伝達されない場合、または充填所側の制御機30の故障などが発生した場合は車両への水素の充填が非正常的に行われる。
この場合、水素の充填により車両の水素タンク内の圧力が上昇するが、この際、車両側の制御機20はタンク圧力検出部13の信号から水素タンクで基準値(例えば、5MPa)を超える圧力変化が発生したと感知した場合、非正常的な水素の充填が行われていると判断して車両の作動を自動でオフする(S15、S16)。
したがって、本発明では非正常的な水素の充填が行われても作動をオフすることにより車両の安全を図ることができる。
【0025】
表1に上述した内容を整理し、充填前の作動制御を含む車両側の制御状態を示した。
【表1】
一方、充填が行われた後、運転者が充填スイッチ11をオフして運転者の始動キー操作(車両始動操作)による再始動が可能となり(S17、S18)、もし充填スイッチ11のオフ操作が行われない状態、すなわち充填スイッチ11のオン操作状態が維持される場合は車両の作動を禁止する(S19)。
【0026】
表2に充填後の車両の作動の制御を示し、充填スイッチ11をオフして再始動が可能となることを示している。
【表2】
本発明では、水素の充填時に操作する別途の充填スイッチを車両に設置することにより、運転者がこれを操作する場合にだけ水素の充填が行われるようにすると共に車両の作動を自動でオフするため、さらに安全な水素の充填が行われる。
また、運転者が充填スイッチを操作しない場合は、水素の充填が行われないようにし、さらに充填スイッチを操作しない状態で非正常的な水素の充填が行われても車両の作動を自動でオフするため、車両の安全を図ることができる。
【0027】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって解釈されなければならない。また、この技術分野で通常の知識を有する者なら、本発明の技術的範囲内で多くの修正と変形ができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0028】
11 充填スイッチ
12 車速検出部
13 タンク圧力検出部
20 制御機(車両側)
21 通信手段(車両側)
30 制御機(充填所側)
31 通信手段(充填所側)