特許第6129541号(P6129541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129541
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ダイシングシート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170508BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170508BHJP
   C09J 155/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   C09J7/02 Z
   C09J155/00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-274951(P2012-274951)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-120624(P2014-120624A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中西 勇人
(72)【発明者】
【氏名】横田 香織
(72)【発明者】
【氏名】金井 道生
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/110426(WO,A1)
【文献】 特開2010−258408(JP,A)
【文献】 特開2014−072221(JP,A)
【文献】 特開2000−068237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/02
C09J 155/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その片面に設けられた粘着剤層を構成層として含み、
基材が、塩化ビニル系樹脂からなるフィルムを含み、
粘着剤層が、主鎖または側鎖にエネルギー線重合性基を有するエネルギー線硬化型重合体を含有し、
エネルギー線硬化後の粘着剤層の23℃における引張弾性率E’が10MPaより大きく100MPa以下であるダイシングシート。
【請求項2】
エネルギー線硬化型重合体が、主鎖または側鎖にエネルギー線重合性基を有するアクリル重合体である請求項1に記載のダイシングシート。
【請求項3】
サファイアウエハのダイシングに用いる請求項1または2に記載のダイシングシート。
【請求項4】
エネルギー線硬化型重合体が、官能基含有モノマーから導かれる構造単位を1〜30質量%含有するアクリル重合体に、該官能基含有モノマーの官能基100当量に対して35〜70当量の重合性基含有化合物を付加したものである請求項1〜3のいずれかに記載のダイシングシート。
【請求項5】
半導体ウエハを0.5〜1mm角のチップにダイシングするために用いる請求項1〜4のいずれかに記載のダイシングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被着体にダイシングなどの加工を行う際に、被着体を固定するために使用されるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハは大径の状態で製造され、このウエハは素子小片(チップ)に切断分離(ダイシング)された後に次の工程であるマウント工程に移されている。この際、半導体ウエハは予め粘着シートに貼着された状態でダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンド、ピックアップ、マウンティングの各工程が加えられている。
【0003】
このような半導体ウエハのダイシング工程からピックアップ工程に至る工程で用いられる粘着シートとしては、ダイシング工程から乾燥工程まではチップに対して充分な粘着力を有しており、ピックアップ時にはチップに粘着剤が付着しない(糊残りが発生しない)程度の粘着力を有しているものが望まれている。
【0004】
このような粘着シートとして、特許文献1には、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体と、該官能基に反応する置換基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られるエネルギー線硬化型共重合体を含有する粘着剤層と基材とからなる粘着シートが記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の粘着シートを製造しても、エキスパンド工程における条件によっては、適切にエキスパンドを行うことができないことがあった。たとえば、特許文献1の実施例のように、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルムを粘着シートの基材として採用した場合、エキスパンド量が大きい条件でエキスパンドを行った際に、チップ間隔の拡張が不十分となるなどの問題が生じることがある。
【0006】
また、特許文献2には、シリコンウエハに対する糊残りを抑制するために、粘着剤層のエネルギー線硬化後の弾性率を所定範囲としたウエハ保護用粘着シートが記載されている。このウエハ保護用粘着シートは、半導体ウエハのバックグラインド工程で用いられる粘着シートであるが、ダイシングシートとして用いると、エキスパンド時に粘着剤層にかかる剪断力により、チップに糊残りが生じることがある。かかる剪断力の発生は、粘着剤層を完全に切断せずにダイシングを行う場合に、より顕著である。なぜならば、かかる場合は粘着剤層がカーフ(ウエハにダイシングが施された跡。)において分断されていない。そのため、エキスパンドによる変形が基材を介してではなく直接に粘着剤層を介して伝播するためである。また、ダイシングシートの基材によっては粘着剤層と基材との密着性が低下することに起因して、チップに対して糊残りが発生することがあった。
【0007】
近年、半導体チップのサイズは微小化する傾向にある。微小チップをピックアップする際には、チップ間隔が大きくなるようにエキスパンド量を大きくすることが好ましいが、エキスパンド時に粘着シートにかかる剪断力が大きくなるため、糊残りの発生が顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−27239号公報
【特許文献2】特開平9−298173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであり、エキスパンド量が大きい場合であっても、エキスパンド適性に優れ、糊残りの発生を抑制できるダイシングシートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の要旨は、以下の通りである。
〔1〕基材と、その片面に設けられた粘着剤層を構成層として含み、
基材が、塩化ビニル系樹脂からなるフィルムを含み、
粘着剤層が、主鎖または側鎖にエネルギー線重合性基を有するエネルギー線硬化型重合体を含有し、
エネルギー線硬化後の粘着剤層の23℃における引張弾性率E’が100MPa以下であるダイシングシート。
【0011】
〔2〕エネルギー線硬化型重合体が、主鎖または側鎖にエネルギー線重合性基を有するアクリル重合体である〔1〕に記載のダイシングシート。
【0012】
〔3〕サファイアウエハのダイシングに用いる〔1〕または〔2〕に記載のダイシングシート。
【発明の効果】
【0013】
本発明のダイシングシートは、粘着剤層と基材との密着性に優れ、エキスパンド適性に優れると共に、エキスパンド量を大きくしても糊残りの発生が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係るダイシングシートについて、さらに具体的に説明する。
【0015】
(ダイシングシート)
本発明に係るダイシングシートは、基材と、その片面に設けられた粘着剤層を構成層として含む。
【0016】
(基材)
本発明に係るダイシングシートに用いる基材は、塩化ビニル系樹脂からなるフィルムを含む。基材としてこれらのフィルムを用いることで、本発明に係るダイシングシートに優れたエキスパンド適性を付与できる。
【0017】
塩化ビニル系樹脂からなるフィルム
本発明に用いられる塩化ビニル系樹脂とは、(−CH−CHCl−)で表される繰り返し単位を有するポリマーすべてを指し、塩化ビニルの単独重合体、及びエチレン−塩化ビニル共重合体等の塩化ビニルと重合性モノマーとの共重合体、並びに塩素化塩化ビニル共重合体等の単独および共重合体を改質したもの、さらには塩素化ポリエチレン等の構造上塩化ビニル樹脂と類似の塩素化ポリエチレンを包含する。また、これらの塩化ビニル系樹脂は数平均重合度で300〜3000が好ましく、さらには1000〜2500の重合度を有しているのがより好ましい。これらの塩化ビニル系樹脂を単独、または2種以上併用して基材を構成する塩化ビニル樹脂成分とすることができる。
【0018】
また、塩化ビニル系樹脂には通常可塑剤が配合される。可塑剤としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、混合アルキルフタレート等のフタル酸エステル、トリオクチルトリメリテート、トリオクチルピロメリテート等の芳香族カルボン酸エステル系、アジピン酸ジオクチル、アゼライン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基性エステル系を用いることができる。
【0019】
また、塩化ビニル系樹脂には、脂環族エステル化合物を可塑剤として配合することができる。可塑剤として用いられる脂環族エステルは、脂環族ジカルボン酸とアルコールとのエステルである。脂環族エステルとしては、シクロブタンジカルボン酸のエステル、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸と、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、イソノナノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール等のアルコールとのエステルが挙げられる。
【0020】
脂環族ジカルボン酸は、立体的な安定性の観点から好ましくはシクロヘキサンジカルボン酸であり、カルボキシル基の置換位は特に限定はされないが、好ましくは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸である。またアルコールとしては、炭素数6〜12のアルコールが好ましく、炭素数8〜10のアルコールがさらに好ましく、イソノナノールが特に好ましい。したがって、本発明において特に好ましく用いられる可塑剤は、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルである。
【0021】
脂環族エステルを用いることで、必然的に芳香族エステルであるフタル酸ジエステルが排除され、かつ不純物としてフタル酸を含有する可能性が激減し、環境負荷および有毒性の懸念がなく、塩化ビニル系樹脂を主成分とする基材を可塑化することができる。また、本発明のダイシングシートの製造の後、保管の最中に基材内部の可塑剤が粘着剤層内部に移行し、粘着剤層内部に取り込まれることがある。このような場合、その原理は明らかではないが、エステル類の選択によっては、基材の可塑剤として用いた場合に、ダイシングシートを半導体ウエハ等の被着体から剥離する際に粘着剤層の成分が被着体に残存する不具合(糊残り)が発生することがある。このような糊残り現象の発生は、ダイシングシートを作製後、経時により顕著となる傾向がある。脂環族エステルを用いた場合、このような被着体上の残渣物の発生を抑制することができる。
【0022】
基材における可塑剤の含有量は、基材を構成する塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、さらに好ましくは10〜50質量部、特に好ましくは20〜40質量部である。基材における可塑剤の含有量が過小であると、基材の柔軟性がなく、ダイシングシートのエキスパンド適性が不十分になることがある。基材における可塑剤の含有量が過大であると、基材が過度に柔らかくなりハンドリング性が低下したり、基材の可塑剤が粘着剤層に移行し、粘着剤層の性能が経時的に変化したりすることがある。
【0023】
また、塩化ビニル系樹脂からなるフィルムには、さらに強度を向上するための充填剤が含まれていてもよい。さらに化学的安定性付与のために、バリウム・亜鉛系安定剤、カルシウム・亜鉛系安定剤などが配合されていてもよい。このような安定剤は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、1.5〜3.5質量部程度の割合で含まれていてもよい。また、これらの他にも、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤が含まれていてもよい。これらの充填剤、安定剤、添加剤等は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、1.0〜8.0質量部程度の割合で含まれていてもよい。
【0024】
塩化ビニル系樹脂からなるフィルムの製法は特に限定はされないが、前記塩化ビニル系樹脂やその他の添加剤(可塑剤や安定剤等)を混合し、得られた混合物を製膜して得られる。
【0025】
各成分の混合は、一般的には機械的溶融混練方法により、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダー、ブラベンダー、カレンダーロール等が用いられる。この際、各成分の添加順序には制限がない。また、溶融混練する温度は140〜220℃の中から好適に選ぶことができる。
【0026】
得られた混合物をシート状に加工して、基材が得られる。シート加工は、押し出し成形、カレンダー成形、インフレーション成型など一般成形加工法によって行えばよい。
【0027】
また、製膜の方法は上記に例示した混合物を溶液あるいは溶融状態とし、ナイフコーター等の塗工手段により塗工を行うことによるものであってもよい。
【0028】
かかる塩化ビニル系樹脂からなるフィルムを含む基材の厚みは、通常50〜150μm程度である。
【0029】
(粘着剤層)
粘着剤層は、重合体の主鎖または側鎖にエネルギー線重合性基を有するエネルギー線硬化型重合体を含有する。エネルギー線硬化型重合体からなる粘着剤層によれば、従来のエネルギー線重合性化合物を含む粘着剤と比較してオリゴマー成分(低分子量成分)が少ないため、半導体ウエハ等の被着体に対する糊残りを防止できる。
【0030】
また、エネルギー線硬化後の粘着剤層の23℃における引張弾性率E’は、100MPa以下、好ましくは50MPa未満、より好ましくは10MPaより大きく50MPa未満である。エネルギー線硬化後の粘着剤層の23℃における引張弾性率E’が100MPaを超えると、エキスパンド時にダイシングシートにかかる剪断力により、被着体に対する糊残りが発生する。これは、エキスパンド時に粘着剤層にかかる剪断力が、分散せずに一点に集中する結果、その剪断力の集中した部分で被着体に近い粘着剤と被着体から遠い粘着剤との間に破壊が生じるためと考えられる。
エネルギー線硬化後の粘着剤層の23℃における引張弾性率E’は、後述するアクリル重合体を構成する官能基含有モノマーの種類や量、アクリル重合体のガラス転移温度、重合性基含有化合物の種類や量などにより調整できる。
【0031】
粘着剤層は、エネルギー線硬化型重合体と必要に応じ光重合開始剤とを配合した粘着剤組成物を用いて形成される。さらに、上記粘着剤組成物には、各種物性を改良するため、必要に応じ、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては架橋剤が好ましい。
【0032】
エネルギー線硬化型重合体の主骨格は特に限定されず、粘着剤として汎用されているアクリル重合体であってもよく、またエステル型、エーテル型の何れであってもよいが、合成および粘着物性の制御が容易であることから、アクリル重合体を主骨格とすることが好ましい。
【0033】
エネルギー線硬化型重合体の主鎖または側鎖に結合するエネルギー線重合性基は、たとえばエネルギー線硬化性の炭素−炭素二重結合を含む基であり、具体的には(メタ)アクリロイル基等を例示することができる。エネルギー線重合性基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基を介してエネルギー線硬化型重合体に結合していてもよい。
【0034】
エネルギー線重合性基が結合されたエネルギー線硬化型重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。エネルギー線硬化型重合体のMwを上記範囲とすることで、エネルギー線硬化後の粘着剤層の23℃における引張弾性率E’を上述した範囲に調整することが容易となる。
【0035】
エネルギー線硬化型重合体は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有するアクリル重合体と、該官能基と反応する置換基とエネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を1分子毎に1〜5個を有する重合性基含有化合物とを反応させて得られる。アクリル重合体は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体(以下において、「官能基含有モノマー」と記載することがある。)と、これと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とからなる共重合体であることが好ましい。
【0036】
アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万〜150万、より好ましくは30万〜100万である。また、アクリル重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−70〜−10℃、より好ましくは−50〜−30℃である。アクリル重合体のMwやTgを上記範囲とすることで、本発明に係るダイシングシートの粘着力を調整することが容易になる。
なお、アクリル重合体のMwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。また、アクリル重合体のTgは、FOXの式から求めた値である。
【0037】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0038】
上記モノマーと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;環状骨格を有する(メタ)アクリレート、具体的にはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イミドアクリレートなどが挙げられる。
【0039】
重合性基含有化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0040】
アクリル重合体は、上記の官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%の割合で含有し、これと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーあるいはその誘導体から導かれる構成単位を通常70〜99質量%、好ましくは80〜95質量%、特に好ましくは85〜95質量%の割合で含有してなる。
アクリル重合体は、上記のような官能基含有モノマーと、これと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーあるいはその誘導体とを常法にて共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にも少量(たとえば10質量%以下、好ましくは5質量%以下)の割合で、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等が共重合されていてもよい。
アクリル重合体の製造方法については、特に限定されるものではなく、例えば溶剤、連鎖移動剤、重合開始剤等の存在下で溶液重合する方法や、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、分散剤等の存在下の水系でエマルション重合する方法にて製造される。なお、重合時のモノマーの濃度は、通常30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%程度が適当である。また、重合の際に使用される重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の過酸化物、過硫酸アンモニウムと亜硫酸ソーダ、酸性亜硫酸ソーダ等との組み合わせからなる、所謂レドックス系の重合開始剤等が挙げられる。上記重合開始剤の使用量は、通常重合に供するモノマー全量に対して、0.2〜2質量%、好ましくは0.3〜1質量%の範囲で調節される。さらに、共重合に際して添加する連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸ノニル、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、β−メルカプトプロピオン酸−2−エチルヘキシル等のチオグリコール酸エステル類、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセン等を挙げることができる。特に、チオグリコール酸エステル類、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセンを使用した場合には、得られる共重合体が低臭気となり好ましい。なお、連鎖移動剤の使用量は、重合させる全モノマーの0.001〜3質量%程度の範囲で調節される。なお、重合反応は、通常60〜100℃の温度条件下、2〜8時間かけて行われる。さらに、増粘剤、濡れ剤、レベリング剤、消泡剤等を適宜添加することができる。
【0041】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル重合体を、上記の重合性基含有化合物と反応させることによりエネルギー線硬化型重合体が得られる。
重合性基含有化合物は、その官能基が上記アクリル重合体の官能基含有モノマーの官能基100当量当たり、通常10〜95当量、好ましくは30〜90当量、より好ましくは35〜80当量、特に好ましくは35〜70当量となる割合で用いられる。重合性基含有化合物の官能基の、上記アクリル重合体の官能基含有モノマーの官能基当たりの割合がこのような範囲にあることで、エネルギー線硬化後の粘着剤層の23℃における引張弾性率E’を上述した範囲に調整することが容易となる。アクリル重合体と重合性基含有化合物との反応は、通常は、室温程度の温度で、常圧にて、24時間程度行なわれる。この反応は、例えば酢酸エチル等の溶液中で、ジブチル錫ラウレート等の触媒を用いて行なうことが好ましい。その結果、アクリル重合体中の主鎖または側鎖に存在する官能基と、重合性基含有化合物中の置換基とが反応し、エネルギー線重合性基がアクリル重合体中の主鎖または側鎖に導入され、エネルギー線硬化型重合体が得られる。
【0042】
上記のようなエネルギー線硬化型重合体を含む粘着剤層は、エネルギー線照射により硬化する。エネルギー線としては、具体的には紫外線、電子線等が用いられる。
【0043】
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示できる。エネルギー線として紫外線を用いる場合に、光重合開始剤を配合することにより照射時間、照射量を少なくすることができる。
【0044】
光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化型重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。光重合開始剤の含有量が前記範囲を下回ると光重合の不足で満足なピックアップ性が得られないことがあり、前記範囲を上回ると光重合に寄与しない残留物が生成し、粘着剤層の硬化性が不充分となることがある。
【0045】
架橋剤としては、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物等が挙げられ、有機多価イソシアネート化合物が好ましい。
【0046】
有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0047】
有機多価イソシアネート化合物のさらに具体的な例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネートおよびリジンイソシアネートが挙げられる。
【0048】
有機多価エポキシ化合物の具体的な例としては、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
【0049】
有機多価イミン化合物の具体的な例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
【0050】
架橋剤はエネルギー線硬化型重合体100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8〜35質量部、特に好ましくは12〜30質量部の比率で用いられる。架橋剤の配合量を上記範囲とすることで、粘着剤層の23℃における引張弾性率E’を好ましい範囲に調整することが容易となる。
【0051】
また、他の成分として、架橋剤のほかに染料、顔料、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等を添加してもよい。
【0052】
かかる粘着剤層の厚みは、通常3〜50μm程度である。
【0053】
また、粘着剤層には、その使用前に粘着剤層を保護するために剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
【0054】
(基材と粘着剤層の密着性)
本発明に係るダイシングシートは、上述のとおり基材が塩化ビニル系樹脂からなるフィルムを含むものである。塩化ビニル系樹脂を基材に用いると、基材と粘着剤層の密着性が低くなる傾向がある。しかしながら、本発明に係るダイシングシートは、エネルギー線硬化後の粘着剤層の23℃における引張弾性率E’が所定の範囲にあることにより、基材と粘着剤層の密着性が維持される傾向がある。
【0055】
(ダイシングシートの特性)
ダイシングシートのエネルギー線照射前における粘着力は、好ましくは500mN/25mm以上であり、より好ましくは1000mN/25mm以上である。また、エネルギー線照射後における粘着力は、好ましくは1000mN/25mm以下であり、より好ましくは500mN/25mm以下である。ダイシングシートの粘着力を上記範囲とすることで、ダイシング性とピックアップ性に優れる。粘着力は、JIS Z 0237;2009に準拠して、被着体(シリコンウエハ(鏡面))に貼付して30分経過後におけるダイシングシートの23℃、相対湿度50%での180°引き剥がし法による粘着力である。
【0056】
(ダイシングシートの製造)
本発明に係るダイシングシートは、上記基材の表面に粘着剤層を設けることで得られる。基材の表面に粘着剤層を設ける方法は、粘着剤層を構成する粘着剤組成物を剥離シート上に所定の膜厚になるように塗布して粘着剤層を形成し、上記基材の表面に転写しても構わないし、上記基材の表面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成しても構わない。粘着剤組成物は、上記の各成分を適宜の割合で混合して得られる。混合に際しては、各成分を予め分散媒や溶媒を用いて希釈しておいてもよく、また混合時に分散媒や溶媒を加えてもよい。主鎖または側鎖にエネルギー線重合性基を有するエネルギー線硬化型重合体を均一に混合できる観点から溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソブタノール、n−ブタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤層の厚さは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
【0057】
(半導体装置の製造方法)
次に、本発明に係るダイシングシートを利用した半導体装置の製造方法について説明する。
【0058】
本発明においては、まず、被着体となるべきワークを準備する。ワークは、シリコンウエハであってもよく、ガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハや、サファイアウエハであってもよい。これらの中でも、本発明に係るダイシングシートは、サファイアウエハのダイシングに用いることが好ましい。サファイアウエハは、LED素子を製造するために用いられ、シリコンウエハ等に比べて微小チップ(例えば0.5〜1mm角)にダイシングされる。そのため、チップをピックアップする際にダイシングシートには高いエキスパンド適性(例えば、引き落とし量:10〜60mm、エキスパンド速度:5〜20mm/分)と、チップに対する糊残りの発生を抑制することが求められる。
【0059】
加えて、サファイアウエハのダイシングの際には、回転丸刃やレーザー光を用いてウエハをハーフカットし、ブレーキングすることでウエハのチップ化を行う方法がとられることがある。このような方法では、粘着剤とダイシングブレードが接触することはない。したがって、ダイシング後におけるダイシングシートの粘着剤層は、ダイシング前と同様に、分断されずに連続状態を保持している。このような場合、エキスパンド時に粘着剤層に強い剪断力がかかり、糊残りの発生の原因となる。本発明に係るダイシングシートはエキスパンド適性に優れ、糊残りの発生を抑制できるため、サファイアウエハのダイシングに好適に用いることができる。
【0060】
ワークが半導体ウエハである場合には、ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。半導体ウエハの回路形成工程において、ウエハ表面に所定の回路が形成される。回路は、ウエハの内周部表面に格子状に形成され、外周端から数mmの範囲には回路が存在しない余剰部分が残存する。ウエハの研削前の厚みは特に限定はされないが、通常は500〜1000μm程度である。
【0061】
次いで、半導体ウエハの裏面を研削する(裏面研削工程)。裏面研削時には、表面の回路を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハの回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。裏面研削工程の後、研削によって研削面(ウエア裏面)に生成した破砕層を除去する処理が行われてもよい。研削後のウエハの厚みは特に限定されないが、通常、25〜200μm程度である。
【0062】
裏面研削工程に続いて、必要に応じ裏面にエッチング処理などの発熱を伴う加工処理や、裏面への金属膜の蒸着のように高温で行われる処理を施してもよい。なお、高温での処理を行う場合には、表面保護シートを剥離した後に、裏面への処理を行う。
【0063】
裏面研削工程後、ウエハの研削面側に本発明のダイシングシートを貼付し、ウエハのダイシングを行う。なお、表面に貼付されている表面保護シートは、ダイシングシートの貼付前に剥離してもよく、ダイシングシートの貼付後に剥離してもよい。また、ダイシング工程の終了後に個片化されたチップ表面から表面保護シートを剥離してもよい。さらに、ダイシングシートの貼付前に表面保護シートを剥離し、ウエハの表面にダイシングシートを貼付してもよい。
【0064】
ダイシングシートのウエハ裏面への貼付は、マウンターと呼ばれる装置により行われるのが一般的だが特に限定はされない。また、半導体ウエハのダイシング方法は特に限定はされない。例えば、ウエハのダイシング時にはダイシングテープの周辺部をリングフレームにより固定した後、ダイシングブレードなどの回転丸刃を用いるなどの公知の手法によりウエハのチップ化を行う方法などが挙げられる。また、上述のサファイアウエハのダイシングの場合と同様、回転丸刃やレーザー光を用いてウエハをハーフカットし、ブレーキングすることでウエハのチップ化を行う方法も挙げられる。本発明のダイシングシートによれば、ダイシング時にウエハおよびチップを確実に保持できるため、チップの歩留まりが向上し、またチップの飛散によるダイシング装置の破損を防止できる。
【0065】
次いでダイシングシートからチップをピックアップする。なお、ピックアップに先立ち、粘着剤層にエネルギー線を照射して粘着力を低下した後にチップのピックアップを行う。
【0066】
また、ピックアップに先立ち、ダイシングシートのエキスパンドを行うと、チップ間隔が拡張し、チップのピックアップをさらに容易に行えるようになる。
【0067】
また、ダイシング終了後に、ダイシングシート上に整列しているチップ群を、ピックアップ用の他の粘着シートに転写した後に、エキスパンドおよびチップのピックアップを行ってもよい。
【0068】
ピックアップされたチップはその後、常法によりダイボンド、樹脂封止がされ半導体装置が製造される。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本発明において採用した測定、評価方法は以下の通りである。
【0070】
<引張弾性率E’>
実施例および比較例の粘着剤組成物を厚さ38μmの剥離フィルム(リンテック社製 SP−PET381031)に、乾燥後の厚みが40μmとなるように塗布・乾燥(乾燥条件:100℃、1分間)して、剥離フィルム上に形成された粘着剤層を得た。この粘着剤層を5層積層して厚さ200μmの積層体を得た。これに、紫外線照射装置(リンテック社製、RAD−2000m/12)により紫外線照射(照度230mW/cm、光量600mJ/cmで3回)を行い、測定試料とした。エネルギー線硬化後の粘着剤層の23℃における引張弾性率E’は、動的粘弾性自動測定器(オリエンテック社製、バイブロンDDV−01FP)により、周波数11Hzで測定した。
【0071】
<糊残りおよびエキスパンド適性>
直径6インチのシリコンウエハ(厚み:700μm)を350μmに研削(#2000研磨)後、ダイサー(DISCO社製、DFD651)により実施例および比較例のダイシングシートにマウントし、1mm×1mmにハーフカットダイシング(30μm残し)を行った。次いで、ダイシングシートごしにブレーキングを行ってウエハを割断し、エキスパンド装置(JCM社製 SE−100)にてエキスパンドを行った(引き落とし量:50mm、エキスパンド速度:10mm/分)。このときのチップ間隔を測定することによりエキスパンド適性を評価した。具体的には、いずれかのチップ間隔が100μm以上であればA、いずれのチップ間隔も100μm未満である場合をBとした。その後、紫外線照射装置(リンテック社製、RAD−2000m/12)により紫外線照射(照度120mW/cm、光量70mJ/cm)を行い、転写用の粘着テープ(PET50(A)PLシン 8LK(リンテック社製))にチップを移し替えた。150個のチップについて裏面の糊残りをデジタル顕微鏡(キーエンス社製)にて確認した。10個未満を「良好」、10個以上を「不良」と評価した。
【0072】
<密着試験>
実施例および比較例のダイシングシートに紫外線照射(照度120mW/cm、光量70mJ/cm)を行い、基材の粘着剤層と貼り合わせたのとは反対側の面にPET50(A)PLシン 8LK(リンテック社製)を貼付し、粘着剤層にカッターナイフを用いて、基材との界面まで切り込むように5mm×5mm四方の碁盤目の切り傷を入れ、200マスを作成した。その後、粘着剤層にセロハンテープの粘着剤が十分に密着するように、セロハンテープを貼付した。貼付の20分後に60°の角度でテープの端をつかんで剥離し、その際に粘着剤層の剥がれたマスの数をカウントした。50個未満を「良好」、50個以上を「不良」と評価した。
【0073】
(実施例1)
〔粘着剤組成物の作製〕
ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=80/20(質量比)を反応させて得られたアクリル重合体と、該アクリル重合体100g当たり12.9g(アクリル重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり60モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて得られたエネルギー線硬化型重合体(重量平均分子量:80万)を有機溶媒で希釈した35質量%の溶液100質量部、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び架橋剤(トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(固形分37.5%))1質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。
なお、重量平均分子量は、市販の分子量測定機(本体製品名「HLC−8220GPC」、東ソー(株)製;カラム製品名「TSKGel SuperHZM-M」、東ソー(株)製;展開溶媒 テトラヒドロフラン)を用いて得た値である(以下、同様。)。また、質量部数は溶媒希釈された荷姿のものであっても、すべて固形分換算の値である(以下、同様。)。
【0074】
〔ダイシングシートの作製〕
上記の粘着剤組成物を、厚さ38μmの剥離フィルム(リンテック社製 SP−PET381031)に、乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布・乾燥(乾燥条件:100℃、1分間)して、剥離フィルム上に形成された粘着剤層を得た。
【0075】
基材として、厚さ70μmのポリ塩化ビニルフィルムを準備し、基材と剥離フィルム上の粘着剤層とを貼り合わせ、剥離フィルムを除去してダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例2)
以下の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にダイシングシートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0077】
〔粘着剤組成物の作製〕
2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=80/20(質量比)を反応させて得られたアクリル重合体と、該アクリル重合体100g当たり8.6g(アクリル重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり40モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて得られたエネルギー線硬化型重合体(重量平均分子量:80万)を有機溶媒で希釈した35質量%の溶液100質量部、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び架橋剤(トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(固形分37.5%))1質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。
【0078】
(実施例3)
以下の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にダイシングシートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0079】
〔粘着剤組成物の作製〕
2−エチルヘキシルアクリレート/酢酸ビニル/2−ヒドロキシエチルアクリレート=60/20/20(質量比)を反応させて得られたアクリル重合体と、該アクリル重合体100g当たり8.6g(アクリル重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり40モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて得られたエネルギー線硬化型重合体(重量平均分子量:80万)を有機溶媒で希釈した35質量%の溶液100質量部、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び架橋剤(トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(固形分37.5%))1質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。
【0080】
(比較例1)
以下の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にダイシングシートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0081】
〔粘着剤組成物の作製〕
2−エチルヘキシルアクリレート/酢酸ビニル/2−ヒドロキシエチルアクリレート=60/20/20(質量比)を反応させて得られたアクリル重合体と、該アクリル重合体100g当たり12.9g(アクリル重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり60モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて得られたエネルギー線硬化型重合体(重量平均分子量:80万)を有機溶媒で希釈した35質量%の溶液100質量部、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び架橋剤(トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(固形分37.5%))1質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。
【0082】
(比較例2)
以下の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にダイシングシートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0083】
〔粘着剤組成物の作製〕
ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=65/20/15(質量比)を反応させて得られたアクリル重合体と、該アクリル重合体100g当たり12.9g(アクリル重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり80モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて得られたエネルギー線硬化型重合体(重量平均分子量:80万)を有機溶媒で希釈した35質量%の溶液100質量部、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び架橋剤(多価イソシアネート化合物(トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(固形分37.5%))1質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。
【0084】
(比較例3)
以下の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にダイシングシートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0085】
〔粘着剤組成物の作製〕
ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=52/20/28(質量比)を反応させて得られたアクリル重合体と、該アクリル重合体100g当たり27.1g(アクリル重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり90モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて得られたエネルギー線硬化型重合体(重量平均分子量:80万)を有機溶媒で希釈した35質量%の溶液100質量部、固形分40質量%の2官能ウレタンアクリレートおよび、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び架橋剤(多価イソシアネート化合物(トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(固形分37.5%))1質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。
【0086】
(比較例4)
以下の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にダイシングシートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0087】
〔粘着剤組成物の作製〕
ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート=82/10/3/5(質量比)を反応させて得られたアクリル重合体(重量平均分子量:80万)を有機溶媒で希釈した35質量%の溶液100質量部、2官能ウレタンアクリレート化合物、3官能ウレタンアクリレート化合物および光重合開始剤の混合物(固形分40質量%、ウレタンアクリレート化合物の重量平均分子量:8000)125質量部、及び架橋剤(トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(固形分37.5%))5質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。
【0088】
(比較例5)
基材として、ポリ塩化ビニルフィルムの代わりに、厚さ70μmのエチレン−メタクリル酸共重合体フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを作成した。各評価結果を表1に示す。
【0089】
【表1】