特許第6129546号(P6129546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129546半導体ウエハ加工用シートおよび半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129546
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】半導体ウエハ加工用シートおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170508BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170508BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   C09J7/02 Z
   C09J201/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-276915(P2012-276915)
(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公開番号】特開2014-120718(P2014-120718A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】根津 裕介
(72)【発明者】
【氏名】米山 裕之
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−152106(JP,A)
【文献】 特開2012−072206(JP,A)
【文献】 特開2009−239298(JP,A)
【文献】 特開2006−290958(JP,A)
【文献】 特開2011−054707(JP,A)
【文献】 特開2005−322853(JP,A)
【文献】 特開2006−140348(JP,A)
【文献】 特開2011−094057(JP,A)
【文献】 特開2005−014571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/02
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層のポリプロピレン系樹脂層を有する基材フィルムの少なくとも片面に、接着性樹脂層を有する半導体ウエハ加工用シートであって、
前記ポリプロピレン系樹脂層が酸化防止剤を含有し、
前記ポリプロピレン系樹脂層における酸化防止剤の含有量が、0.25質量%以下である半導体ウエハ加工用シート。
【請求項2】
前記基材フィルムが、さらにポリエチレン系樹脂層を有する請求項1に記載の半導体ウエハ加工用シート。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂層が、非晶性ポリプロピレン10〜50質量%と結晶性ポリプロピレン90〜50質量%とを含む請求項1または2に記載の半導体ウエハ加工用シート。
【請求項4】
前記接着性樹脂層が、基材フィルムから被着体に転写する工程を含むプロセスに使用される、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体ウエハ加工用シート。
【請求項5】
前記接着性樹脂層が、半導体チップを基板または他の半導体チップに固定するためのフィルム状接着剤として機能する請求項1〜4のいずれかに記載の半導体ウエハ加工用シート。
【請求項6】
ダイシング・ダイボンド兼用シートとして用いられる請求項5に記載の半導体ウエハ加工用シート。
【請求項7】
前記半導体チップが、半導体ウエハの表面に、個片化するチップの形状の外郭に合わせて溝を形成し、半導体ウエハの表面に保護シートを貼付し、次いで裏面側から溝に到達するまで薄化処理を行うことにより半導体ウエハをチップに個片化する工程を含む半導体チップの製造方法により得られた半導体チップである請求項5に記載の半導体ウエハ加工用シート。
【請求項8】
前記接着性樹脂層が、半導体ウエハまたはチップの保護膜として機能する請求項1〜4のいずれかに記載の半導体ウエハ加工用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ加工用シートに関し、さらに詳しくはリードフレームおよび他のチップ状部品などに半導体チップをダイボンディングする工程や、半導体チップに保護膜を形成する工程に使用されるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハをダイシングし、得られたチップをダイボンドする一連の工程では、各種の粘着シートやフィルム状接着剤が用いられている。
【0003】
たとえば、ダイシング工程に用いる粘着シートは、基材フィルムと粘着剤層とからなり、半導体ウエハをダイシングする際に、当該半導体ウエハを固定し、またダイシング後にはチップを保持するために用いられる。また、粘着シート上でダイシングされたチップを、該粘着シートから直接ピックアップすることや、チップを、半導体ピックアップ用粘着シートに転写した後に、ピックアップすることがある。
【0004】
ダイシング工程の終了後には、チップのダイボンドを行う。この際、液状の接着剤を用いることもあるが、近年はフィルム状接着剤が多用されている。フィルム状接着剤は、半導体ウエハの片面に貼着され、ダイシング工程においてウエハとともに切断され、その後、接着剤層付のチップとしてピックアップされ、接着剤層を介してチップは所定の部位に接着される。このようなフィルム状接着剤は、基材フィルムや粘着シート上にエポキシやポリイミドなどの接着剤を製膜、半固化した層を設けることにより得られる。
【0005】
さらに、ダイシング時のウエハ固定機能とダイボンド時のダイ接着機能とを同時に兼ね備えたダイシング・ダイボンド兼用シートも提案されている。ダイシング・ダイボンド兼用シートは、ウエハ固定機能とダイ接着機能とを兼ね備えた、接着剤層と、基材フィルムとからなる。接着剤層は、ダイシング工程においては半導体ウエハやチップを保持し、ダイボンド時にはチップを固着するための接着剤として機能する。接着剤層は、ダイシング時には、ウエハとともに切断され、切断されたチップと同形状の接着剤層が形成される。ダイシング終了後、チップのピックアップを行うと、接着剤層は、チップとともに基材フィルムから剥離する。接着剤層を伴ったチップを基板に載置し、加熱等を行い、チップと基板とを接着剤層を介して接着する。
【0006】
また、チップの表面に保護膜を形成するために、硬化性の樹脂層に半導体ウエハを貼付し、樹脂層を硬化させ、その後、半導体ウエハと樹脂層をダイシングし、硬化した樹脂層(保護膜)を有するチップを製造するプロセスも提案されている。このような保護膜形成用のシートは、基材フィルム上に保護膜となる接着性の樹脂層を有する。
【0007】
上記のようなフィルム状接着剤や、ダイシング・ダイボンド兼用シートあるいは保護膜形成用シートなどの半導体ウエハ加工用シートは、接着剤を製膜し半固化した層、接着剤層や樹脂層などの接着性樹脂層を基材フィルム上に有する。基材フィルムとしては、ポリオレフィン系フィルムが多用されており、特に、ポリプロピレンを用いたフィルムは、ダイシング・ダイボンド兼用シートとして用いた場合のダイシング時の糸状屑の発生を低減でき、耐熱性を有するなどの点で有用性を有している。かかるポリオレフィン系フィルムには劣化を防止するために一般に酸化防止剤が添加されている。
【0008】
たとえば、特許文献1の実施例1においては、ダイシング用粘着テープの基材フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体とポリプロピレンの混合樹脂)中に酸化防止剤を0.5質量%添加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−303999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、フィルム状接着剤や、ダイシング・ダイボンド兼用シートあるいは保護膜形成用シートなどの半導体ウエハ加工用シートについて鋭意検討を行った結果、かかる従来技術に基づく基材フィルムの課題を見出した。
【0011】
すなわち、上記のような半導体ウエハ加工用シートは、半導体ウエハや半導体チップなどの被着体に貼付され、被着体に所要の加工を施した後、接着性樹脂層を被着体に固着残存させて基材フィルムから剥離する。本発明者らは、接着性樹脂層を基材フィルムから剥離する際の応力(基材剥離力)に、基材フィルムの温度履歴等が影響し、高温保管された基材フィルムを用いて製造された半導体ウエハ加工用シートと、常温保管された基材フィルムを用いて製造された半導体ウエハ加工用シートでは、基材剥離力に大きな差異があり、この差異が、接着性樹脂層を基材フィルムから剥離する工程において不具合を誘発する要因となっていることを見出した。
【0012】
したがって、本発明は、ポリプロピレン系樹脂層を有する基材フィルムを高温保管した場合であっても、高温保管された基材フィルムと接着性樹脂層との間の基材剥離力と、常温保管された基材フィルムと接着性樹脂層との間の基材剥離力との差異が低減された半導体ウエハ加工用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、以下の要旨を含む。
〔1〕少なくとも一層のポリプロピレン系樹脂層を有する基材フィルムの少なくとも片面に、接着性樹脂層を有する半導体ウエハ加工用シートであって、
前記ポリプロピレン系樹脂層が酸化防止剤を含有し、
前記ポリプロピレン系樹脂層における酸化防止剤の含有量が、0.25質量%以下である半導体ウエハ加工用シート。
【0014】
〔2〕前記基材フィルムが、さらにポリエチレン系樹脂層を有する〔1〕に記載の半導体ウエハ加工用シート。
【0015】
〔3〕前記接着性樹脂層が、半導体チップを基板または他の半導体チップに固定するためのフィルム状接着剤として機能する〔1〕または〔2〕に記載の半導体ウエハ加工用シート。
【0016】
〔4〕ダイシング・ダイボンド兼用シートとして用いられる〔3〕に記載の半導体ウエハ加工用シート。
【0017】
〔5〕前記半導体チップが、半導体ウエハの表面に、個片化するチップの形状の外郭に合わせて溝を形成し、半導体ウエハの表面に保護シートを貼付し、次いで裏面側から溝に到達するまで薄化処理を行うことにより半導体ウエハをチップに個片化する工程を含む半導体チップの製造方法により得られた半導体チップである〔3〕に記載の半導体ウエハ加工用シート。
【0018】
〔6〕前記接着性樹脂層が、半導体ウエハまたはチップの保護膜として機能する〔1〕または〔2〕に記載の半導体ウエハ加工用シート。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂層を有する基材フィルムを高温保管した場合であっても、高温保管された基材フィルムと接着性樹脂層との間の基材剥離力と、常温保管された基材フィルムと接着性樹脂層との間の基材剥離力との差異を低減でき、接着性樹脂層付半導体チップのピックアップ性を向上しうる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の半導体ウエハ加工用シートについてさらに具体的に説明する。
【0021】
本発明に係る半導体ウエハ加工用シートは、少なくとも一層のポリプロピレン系樹脂層を有する基材フィルムの少なくとも片面に、接着性樹脂層を有する。なお、「半導体ウエハ加工用」の語は、半導体ウエハを半導体装置に加工する一連の工程のうちの少なくともいずれかの工程の用に供されることを意味し、被着体が常に半導体ウエハであることを意味するものではない。たとえば、被着体は複数のチップ群であってもよい。
【0022】
(基材フィルム)
基材フィルムは少なくとも一層のポリプロピレン系樹脂層を有する。本発明に係る半導体ウエハ加工用シートは、半導体ウエハなどの被着体に貼付された状態で、被着体のダイシングが行われることがある。ポリプロピレン系樹脂層を有する基材フィルムを用いることで、ダイシング時に基材フィルムが切り込まれても、切断面に糸状屑が発生することを抑制できる。また、基材フィルムが耐熱性に優れたものとなる。
また、本発明におけるポリプロピレン系樹脂層は酸化防止剤を含有し、ポリプロピレン系樹脂層における酸化防止剤の含有量は0.25質量%以下である。
ポリプロピレン系樹脂層における酸化防止剤の含有量が0.25質量%を超える場合、その原理は明らかではないが、接着性樹脂層を基材フィルムから剥離する際の応力(基材剥離力)が増大することがある。本発明に係る半導体ウエハ加工用シートは、半導体ウエハや半導体チップなどの被着体に貼付され、被着体に所要の加工を施した後、接着性樹脂層を被着体に固着残存させて基材フィルムから剥離することがある。すなわち、接着性樹脂層を、基材フィルムから被着体に転写する工程を含むプロセスに好適に使用される。このため、基材剥離力が増大すると、接着性樹脂層を基材フィルムから剥離する工程(例えばピックアップ工程)を良好に行うことが困難になるおそれがある。このようなピックアップ不良現象の発生は、基材フィルムの高温保管により顕著となる傾向がある。加えて、ポリプロピレン系樹脂層は比較的剛直な機械的特性を有するために、ポリプロピレン系樹脂層を有する基材フィルムを用いた場合、元来ピックアップは困難となる傾向がある。したがって、かかるピックアップ不良現象が特に生じやすい。
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂層における酸化防止剤の含有量を0.25質量%以下、好ましくは0.12質量%以下とすることで、高温保管された基材フィルムと接着性樹脂層との間の基材剥離力と、常温保管された基材フィルムと接着性樹脂層との間の基材剥離力との差異を低減でき、ひいてはピックアップ不良現象の発生を抑制しうる。なお、酸化防止剤を含有しない基材フィルムを製造することは事実上困難であることから、酸化防止剤の含有量の下限は、通常0質量%より大きく、好ましくは0.01質量%である。
ポリプロピレン系樹脂層における酸化防止剤の含有量が0.25質量%を超えると、高温保管された基材フィルムと接着性樹脂層との間の基材剥離力と、常温保管された基材フィルムと接着性樹脂層との間の基材剥離力との差異を低減することが困難となる。
【0023】
本発明における酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、およびこれらの混合物が挙げられ、製品名としては、イルガノックス1076(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)、イルガフォス168(BASF社製、リン系熱安定剤)、イルガノックスB225(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系熱安定剤の混合物)が挙げられる。これらのうちでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系熱安定剤の混合物(イルガノックスB225)が、ラジカル捕捉作用と過酸化物分解作用を併せ持つという観点から好ましい。
【0024】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂層は、非晶性ポリプロピレン10〜50質量%と、結晶性ポリプロピレン90〜50質量%とを含むことが好ましい。
上記非晶性ポリプロピレンが、10質量%に満たない場合は十分な柔軟性が得られないことがあり、50質量%を超えると製膜時にべた付くことがあるため、本発明では上記の配合比率とすることが好ましく、より好ましい配合比率は10〜40質量%である。
結晶性ポリプロピレンの配合比率が、90〜50質量%の範囲にあることで、ダイシング時の糸状屑発生の抑制や、耐熱性が向上する傾向がある。一方で、基材フィルムの機械的特性がより剛直となる傾向があり、このような傾向は、ピックアップ不良現象の要因となる。本発明の半導体加工用シートは、高温保管された基材フィルムと接着性樹脂層との間の基材剥離力と、常温保管された基材フィルムと接着性樹脂層との間の基材剥離力との差異を低減できるため、ピックアップ不良現象を抑制しうる。結晶性ポリプロピレンの、より好ましい配合比率は90〜60質量%である。
【0025】
非晶性ポリプロピレンとしては、MFR(Melt Flow Rate:メルトフローレート)が好ましくは5.0未満、より好ましくは1.0〜3.0のものを用いる。また、非晶性ポリプロピレンとしてはアタクチックポリプロピレンが好ましい。
【0026】
アタクチックポリプロピレンは、ポリプロピレン製造時に副生するアタクチックポリプロピレンを用いてもよいし、原料から目的生産して用いてもよい。また、該当する好適な市販品があれば、適宜市販品を選択して用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
結晶性ポリプロピレンとしては、好ましくはMFRが5.0未満、より好ましくは1.0〜3.0のものを用いる。結晶性ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、3元共重合ポリプロピレン等が好ましく用いられ、本発明では、従来のポリプロピレンの製造方法により製造して用いてもよいし、該当する好適な市販品があれば、適宜市販品を選択して用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
また、本発明におけるポリプロピレン系樹脂層の、非晶性ポリプロピレン及び結晶性ポリプロピレンは、それぞれ変性したものを使用することができる。
例えば、これらポリプロピレンを、α−オレフィン、アクリル酸、メタアクリル酸、エタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸のエステル、酸無水物、金属塩等の誘導体、不飽和物のアミド、アミノ化合物、グリシジルメタアクリレート、ヒドロキシメタアクリレート等により変性して用いることができる。
【0029】
上記した非晶性ポリプロピレンと結晶性ポリプロピレンとの樹脂組成物の調整方法は、特に制限されるものではなく、従来のポリプロピレン組成物の製法で慣用されている方法、例えば、混練機、一軸又は二軸押出機などを用いて、加熱溶融混練して行えばよい。
【0030】
また、上記ポリプロピレン系樹脂層には、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどの無機充填剤等を効果的なかつ支障とならない範囲で添加してもよく、顔料、染料などで着色してもよい。
【0031】
本発明に係る半導体ウエハ加工用シートの基材フィルムは、上記のポリプロピレン系樹脂層の他に、少なくとも一層のポリエチレン系樹脂層を有することが好ましい。基材フィルムがポリエチレン系樹脂層を有することで、本発明に係る半導体ウエハ加工用シートのエキスパンド性を向上させることができる。
【0032】
ポリエチレン系樹脂層を構成するエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体であってもよく、エチレンを主成分とする共重合体であってもよい。
エチレンを主成分とする共重合体としては、例えば、エチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等のオレフィン、及びエチレンと(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等との共重合体又は多元重合体が挙げられ、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
上記の中でも、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体が、ダイシング特性上、好ましい。なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/またはメタクリル酸を意味する。
【0033】
上記ポリエチレン系樹脂層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどの無機充填剤等を効果的なかつ支障とならない範囲で添加してもよく、顔料、染料などで着色してもよい。
【0034】
本発明における基材フィルムは、少なくとも一層の上記ポリプロピレン系樹脂層を有し、必要に応じて、上記ポリエチレン系樹脂層が積層される。
基材フィルムが、ポリプロピレン系樹脂層とポリエチレン系樹脂層の2層構造の場合、ポリプロピレン系樹脂層上に接着性樹脂層を設けることが好ましい。また、本発明の作用効果がより効率的に奏されるためには、ポリプロピレン系樹脂層上に直接に接着性樹脂層が積層されていることが好ましい。
【0035】
このような基材フィルムの厚さについては、特に限定されるものではないが、好ましくは0.03〜0.3mm程度である。
【0036】
上記ポリプロピレン系樹脂層やポリエチレン系樹脂層により、基材フィルムの構造が2層以上である場合には、基材フィルムにおける各層の比率は、(ポリプロピレン系樹脂層):(ポリエチレン系樹脂層)=1:1〜1:8であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂層が厚すぎても、薄すぎても、ポリエチレン系樹脂層との所望の相乗作用を得ることができなくなるため、より好ましい上記の層比は3:7〜5:5である。
【0037】
基材フィルムの成形方法は、特に限定されるものではない。
例えば、共押出積層法、カレンダー法、共押出インフレーション法などの公知の方法が挙げられ、溶融状態で積層した後、冷却ロール、水冷または空冷で冷却する方法を用いて、積層フィルムとしてもよい。
【0038】
また、基材フィルムにおいては、印刷性、接着性樹脂層の塗布性を向上させるために表面処理を行ってもよい。
【0039】
(接着性樹脂層)
半導体ウエハ加工用シートにおける接着性樹脂層は、シートの用途に応じて様々な機能を有する樹脂の中から適宜に選択される。
【0040】
フィルム状接着剤
接着性樹脂層は、フィルム状接着剤であってもよい。このようなフィルム状接着剤は、チップのダイボンド工程において近年多用されている。このようなフィルム状接着剤は、好ましくはエポキシ系接着剤またはポリイミド系接着剤を製膜したものであり、基材フィルム上に剥離可能に形成され、本発明の半導体ウエハ加工用シートが得られる。
【0041】
フィルム状接着剤は、半導体ウエハまたは複数のチップ群などの被着体に貼付される。フィルム状接着剤を半導体ウエハに貼付する場合には、その半導体ウエハとフィルム状接着剤とをチップサイズに分割することで、接着剤層付のチップが得られ、これを、接着剤層を介して所定の位置(搭載部)に固着する。フィルム状接着剤を複数のチップ群に貼付する場合には、フィルム状接着剤をチップサイズに分割することで、接着剤層付のチップが得られ、これを、接着剤層を介して所定の位置(搭載部)に固着する。
【0042】
本発明の半導体ウエハ加工用シートは、ダイシング時のウエハ固定機能とダイボンド時のダイ接着機能とを同時に兼ね備えたダイシング・ダイボンド兼用シートであってもよい。この場合、フィルム状接着剤を、粘着性を有し、又は加熱により軟化して被着体に付着することのできる性状とすることで、ダイシング工程において半導体ウエハやチップを保持することができる。そして、ダイボンド時にはチップを固着するための接着剤として機能する。以下このように半導体ウエハ加工用シートの構成要素となったフィルム状接着剤を接着剤層ともいう。接着剤層は、ダイシング時には、ウエハとともに切断され、切断されたチップと同形状の接着剤層が形成される。ダイシング終了後、チップのピックアップを行うと、接着剤層は、チップとともに基材フィルムから剥離する。接着剤層を伴ったチップを基板等の搭載部や他のチップ等に載置し、加熱等を行い、チップと、基板等の搭載部や他のチップ等とを接着剤層を介して接着する。このようなダイシング・ダイボンド兼用シートは、基材フィルム上に、ウエハ固定機能とダイ接着機能とを兼ね備えた、接着剤層が形成されてなる。
【0043】
半導体ウエハの表面に、個片化するチップの形状の外郭に合わせて溝を形成し、半導体ウエハの表面に保護シートを貼付し、次いで裏面側から溝に到達するまで薄化処理を行うことにより半導体ウエハをチップに個片化する、いわゆる先ダイシング法により得られた複数のチップ群に本発明の半導体加工用シートを適用することもできる。この場合、半導体加工用シートにおける接着剤層をチップ群に貼付した後、保護シートからチップ群を半導体加工用シートに転写する。この際に、半導体加工用シートを40〜90℃程度に加熱しながらチップ群に貼付することがある。この工程およびこれに次ぐ保護シートをチップ群から剥離する工程において、チップ群の整列性が乱れてしまうことがあるが、本発明の半導体加工用シートは基材フィルムの耐熱性に優れるため、このような問題を回避することができる。次いで接着剤層をチップの形状に合わせて分割する。分割手段としては、レーザー照射により切断する手段が一般的である。その後、チップのピックアップを行うと、接着剤層は、チップとともに基材フィルムから剥離する。接着剤層を伴ったチップを基板等の搭載部や他のチップ等に載置し、加熱等を行い、チップと、基板や他のチップ等とを接着剤層を介して接着する。ピックアップ時には、基材フィルムのエキスパンドを行うことが好ましい。
【0044】
これらの半導体加工用シートに用いられるウエハまたはチップ固定機能とダイ接着機能とを兼ね備えた接着剤は、たとえば重合体と、エポキシ系接着剤を含み、また必要に応じ、エネルギー線硬化性成分を含む。重合体としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の重合体が用いられる。これらの中でも粘着力の制御が容易なアクリル系重合体が特に好ましい。
【0045】
アクリル系重合体は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ミリスチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのエステル構造に炭化水素のみが付加した(メタ)アクリル酸エステルの1種以上の単量体と、必要に応じて、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシブチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有化合物;アクリルアミドなどのアミド基含有化合物;スチレン、ビニルピリジンなどの芳香族化合物などの重合性単量体から選ばれる1種以上の単量体の共重合体などが挙げられる。なお、重合性単量体が1種である場合には狭義の共重合体ではないが、そのような場合も含めて共重合体と総称する。
【0046】
アクリル系重合体におけるエステル構造に炭化水素のみが付加した(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有割合は、10〜98質量%が好ましく、20〜95質量%がより好ましく、50〜93質量%がさらに好ましい。アクリル系重合体の重量平均分子量は、10万〜250万が好ましく、20万〜150万がより好ましく、30万〜100万が特に好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0047】
これらの重合体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アクリル系重合体を、エポキシ系架橋剤、ポリイソシアナート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤などの架橋剤の1種以上で架橋させてもよい。
【0048】
エポキシ系架橋剤としては、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラグリジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアネート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0049】
ポリイソシアナート系架橋剤としては、トリレンジイソシアナート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、キシリレンジイソシアナート(XDI)、水素化トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート及びその水添体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、ナフチレン−1,5−ジイソシアナート、ポリイソシアナートプレポリマー、ポリメチロールプロパン変性TDIなどが挙げられる。
【0050】
架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤の使用量は、架橋前のアクリル系重合体100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましい。
【0051】
エポキシ系接着剤は、エポキシ基を有する化合物を含有し、エポキシ基を有する化合物と熱硬化剤を組み合わせたものを用いることが好ましい。
【0052】
エポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」ということがある。)としては、従来公知のものを用いることができる。具体的には、多官能系エポキシ樹脂や、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂など、分子中に2官能以上有するエポキシ化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
エポキシ化合物を用いる場合には、接着剤層には、重合体100質量部に対して、エポキシ化合物が、好ましくは1〜1500質量部含まれ、より好ましくは3〜1200質量部含まれる。
【0054】
熱硬化剤は、エポキシ化合物に対する硬化剤として機能する。好ましい熱硬化剤としては、1分子中にエポキシ基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。その官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基および酸無水物などが挙げられる。これらのうち好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基、酸無水物などが挙げられ、さらに好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基が挙げられる。
【0055】
フェノール系硬化剤の具体的な例としては、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂が挙げられる。アミン系硬化剤の具体的な例としては、DICY(ジシアンジアミド)が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0056】
熱硬化剤の含有量は、エポキシ化合物100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましい。
【0057】
硬化促進剤を、接着剤層の熱硬化の速度を調整するためにエポキシ系接着剤に含有させてもよい。
【0058】
好ましい硬化促進剤としては、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0059】
硬化促進剤は、エポキシ化合物および熱硬化剤の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部の量で含まれる。
【0060】
接着剤層には、このほかフィラー、カップリング剤、その他添加剤等(以下併せて「フィラー等」ともいう。)が含まれていてもよい。
【0061】
接着剤層のチップへの転写を容易にするため、半導体加工用シートにおける基材フィルムは剥離処理されていてもよい。なお、接着剤層付チップのピックアップ時には、基材フィルムのエキスパンドを行うことが好ましい。エキスパンドによりチップ間隔が離間し、チップの認識が容易になり、またチップ同士の接触による破損も低減され歩留りも向上する。
【0062】
保護膜形成層
さらに、本発明に係る半導体ウエハ加工用シートの接着性樹脂層は、チップの裏面に保護膜を形成するための保護膜形成層であってもよい。この場合、例えば、接着性樹脂層に半導体ウエハを貼付し、接着性樹脂層を硬化させて樹脂膜とし、その後、半導体ウエハと樹脂膜をダイシングし、樹脂膜(保護膜)を有するチップを得る。このような保護膜形成用のシートは、基材フィルム上に保護膜となる接着性の樹脂層を有する。保護膜となる接着性樹脂層は、たとえば前記したアクリル系重合体と、エポキシ系接着剤を含み、また必要に応じ着色剤やフィラー等が含まれていてもよい。
【0063】
本発明の半導体ウエハ加工用シートにおける接着性樹脂層の厚みは、その用途により様々であり、例えば、ダイシング・ダイボンド兼用シートとして用いる場合には、好ましくは10〜50μmであり、より好ましくは15〜40μmである。接着性樹脂層の厚みが薄すぎると、チップと搭載部との間の接着力が低下し、チップが搭載部から剥離するおそれがある。また、接着性樹脂層の厚みが厚すぎると、チップを他のチップ上にさらに多段積層すると半導体装置のサイズが大きくなってしまうおそれがある。
【0064】
(半導体加工用シートの構成・製造方法)
半導体加工用シートの使用前に、接着性樹脂層を保護するために、接着性樹脂層の基材フィルムと対向しているのとは逆の面に剥離フィルムを積層しておいてもよい。半導体加工用シートの製造方法は特に限定はされず、基材フィルム上に、接着性樹脂層を形成するための組成物を塗布乾燥することで製造してもよく、また、接着性樹脂層を剥離フィルム上に設け、これを基材フィルムに転写することで製造してもよい。
【0065】
接着性樹脂層の表面外周部には、リングフレームなどの他の治具を固定するために別途粘着剤層や両面粘着テープが設けられていてもよい。接着性樹脂層は基材フィルム上の全面に設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。接着性樹脂層が基材フィルム上の一部に設けられている場合において、接着性樹脂層が、被着体と略同形状となるように設計されていてもよい。
【0066】
(被着体)
本発明の半導体ウエハ加工用シートの貼付される被着体である半導体ウエハまたはチッの厚さは特に限定されないが、10〜500μmであることが好ましく、チップを他のチップ上にさらに多段積層する場合には、10〜100μmであることがより好ましい。特に、厚みの小さいチップではピックアップの際の破損の懸念が大きいために、ピックアップ不良現象の発生を抑制しうる本発明の半導体ウエハ加工用シートが好適である。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明において採用した測定、評価方法は次の通りである。
【0068】
<基材剥離力測定>
温度履歴を模した条件として、実施例および比較例で得た基材フィルムを通常条件および促進条件(23℃14日および60℃1日)に投入した。
その後、基材フィルムの片面に接着性樹脂層(接着剤層)を形成して半導体ウエハ加工用シートを作成し、該シートを幅25mmで長さ250mmにカットして試料を得た。試料における接着剤層を固定板に両面テープで貼り合わせ、基材フィルムを剥離して剥離力を測定した。具体的には、JIS Z 0237;2009に基づき、万能引張試験機(島津製作所社製オートグラフ)を用いて、23℃相対湿度50%の環境下において剥離速度300mm/分、剥離角度180°にて基材フィルムを引き剥がした際の力(基材剥離力)を測定した。
23℃14日の促進条件の基材フィルムを用いて作成された半導体ウエハ加工用シートの基材剥離力を「基材剥離力a」、60℃1日の促進条件の基材フィルムを用いて作成された半導体ウエハ加工用シートの基材剥離力を「基材剥離力b」とし、b/aを算出し、b/aが2以下の場合を良好、2を超えた場合を不良と評価した。
【0069】
(実施例1)
(基材フィルム)
ポリプロピレン系樹脂層
非晶性ポリプロピレンA(ランダムアタクチックポリプロピレン(住友化学製商品名“タフセレンH3002” MFR:2.0))と結晶性ポリプロピレンB(ランダムポリプロピレン(住友化学製商品名“S131” MFR:1.2 融点:137℃))とを質量比(A:B)が20:80となるように混合した混合物100質量部に対して、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系熱安定剤の混合物(BASF社製、イルガノックスB225)を0.1質量部添加し、温度200℃にて30分間溶融混練して、樹脂組成物1を調整した。
【0070】
ポリエチレン系樹脂層
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル社製 商品名“ニュクレル”)を、温度200℃にて30分間溶融混練して、樹脂組成物2を調整した。
【0071】
上記調整した樹脂組成物1と樹脂組成物2を、テスト押出機(サーモプラスチックス工業(株)製 商品名“テストφ40mm押出機”)を用いて、ポリプロピレン系樹脂層とポリエチレン系樹脂層との比が4:6となるように、厚さ0.1mmの2層構造フィルムに加工し、基材フィルムを得た。
【0072】
(フィルム状接着剤)
アクリル酸エステル共重合体(n−ブチルアクリレート:55質量部、メチルアクリレート:10質量部、グリシジルメタクリレート:20質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部から得られる共重合体、重量平均分子量:90万、ガラス転移温度:−29°)40質量部、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製 jER828、エポキシ当量:189g/eq)50質量部、エポキシ樹脂としてフェニレン骨格型エポキシ樹脂(日本化薬社製 EPPN−502H、エポキシ当量:167g/eq)50質量部、熱硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子製 BRG−556、フェノール性水酸基当量:103g/eq)50質量部、硬化促進剤として2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製 キュアゾール2PHZ−PW)0.5質量部、及びカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBE−403)1.5質量部を配合(固形質量比)してフィルム状接着剤を形成するための組成物を得た。
【0073】
(半導体ウエハ加工用シートの作成)
上記の組成物を溶剤で希釈して、シリコーン処理された剥離フィルム(リンテック社製 SP−PET381031)上に20μmの厚みになるように塗布、乾燥(乾燥条件:オーブンにて100℃1分間)してフィルム状接着剤を得た。その後、フィルム状接着剤面と上記基材フィルムのポリプロピレン系樹脂層とが対向するように積層し、フィルム状接着剤を基材フィルムに転写することで、半導体ウエハ加工用シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2)
上記樹脂組成物1の代わりに、非晶性ポリプロピレンAと結晶性ポリプロピレンBとを質量比(A:B)が40:60となるように混合した混合物を用いて樹脂組成物を調整したこと以外は、実施例1と同様にして半導体ウエハ加工用シートを得た。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例1)
基材フィルムの製造において、非晶性ポリプロピレンAの代わりにプロピレン及び/又はオクテンからなる非晶質ポリオレフィン(デュポンダウ製 商品名“エンゲージ8200” MFR:5.0 融点:60℃)を用い、酸化防止剤の添加量を0.5質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして半導体ウエハ加工用シートを得た。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例2)
基材フィルムの製造において、非晶性ポリプロピレンAの代わりにプロピレン及び/又はオクテンからなる非晶質ポリオレフィン(デュポンダウ製 商品名“エンゲージ8200” MFR:5.0 融点:60℃)を用い、酸化防止剤の添加量を0.5質量部としたこと以外は、実施例2と同様にして半導体ウエハ加工用シートを得た。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】