(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1のカーテシアンループの負帰還増幅回路及び特許文献2のカーテシアンループの負帰還増幅器は、ベースバンド信号と帰還信号との位相を検出し、帰還信号の位相を制御することで、負帰還増幅器を安定に動作させるようにしている。しかし、製品の製造ばらつきや温度変化によって、ベースバンド信号の直交成分や帰還信号の直交成分は、比較器に入力されるまでの間にオフセットが生じる。このようなベースバンド信号の直交成分や帰還信号の直交成分におけるオフセットにより、比較器が位相ずれの誤検出を行うため、オフセットを調整しなければならないという問題があった。
【0006】
まず、従来の位相制御器111Bが位相ずれ量を検出する方法について、
図5と
図6を用いて説明する。
図5は、従来の位相制御器111Bの構成を示す図である。
図6は、位相制御器111Bにおける位相ずれの検出手順を示すタイムチャートである。従来の負帰還増幅器の構成は、
図1に示す実施形態1の負帰還増幅器10において、位相制御器111Aが位相制御器111Bに置き換わる以外は同じである。なお、
図1に示す負帰還増幅器10の構成の説明は、実施形態1で行っているので、ここでは省略する。
【0007】
従来の位相制御器111Bは、排他的論理和501、サンプルタイミング生成部502、サンプリング機能部503、位相ずれ検出タイミング生成部504、カウンタ505、ダウンエッジ検出部506、位相ずれ方向検出部507、及び位相制御情報計算部508から構成されている。
【0008】
排他的論理和501は、比較器110aからQ成分の信号と、比較器110bからq成分の信号とを入力すると、Q成分とq成分の排他的論理和(EOR:exclusive or)の演算を行うことで位相ずれ量を計算し、この位相ずれ量をパルス信号としてサンプリング機能部503に出力する。
サンプルタイミング生成部502は、排他的論理和501がサンプリング機能部503に出力するパルス信号をサンプリングするためのタイミングとなる信号(以下、サンプルタイミング信号という)を生成し、サンプリング機能部503に出力する。サンプルタイミング信号は、位相ずれを検出するためのトレーニング信号の周期に対して十分に速い周期の信号となるように生成される。
サンプリング機能部503は、排他的論理和501からパルス信号と、サンプルタイミング生成部502からサンプルタイミング信号とを入力すると、サンプルタイミング信号のタイミングで、パルス信号のHigh区間の幅を位相ずれ量としてサンプリングを行い、サンプリングにおける位相ずれ量をカウントする信号(以下、位相ずれ量カウント信号という)
を生成し、カウンタ505に出力する。
位相ずれ検出タイミング生成部504は、位相ずれ量を測定するためにトレーニング信号の有効区間をタイミング信号として生成し、検出区間の開始基準タイミングとなる信号(以下、スタートタイミング信号という)と、終了基準タイミングとなる信号(以下、ストップタイミング信号という)を生成し、カウンタ505に出力する。
カウンタ505は、位相ずれ検出タイミング生成部504からスタートタイミング信号を入力すると、カウント値を0クリアしカウントを開始し、サンプリング機能部503から位相ずれ量カウント信号を入力するとカウント値を更新し、位相ずれ検出タイミング生成部504からストップタイミング信号を入力すると、カウントを停止する。
ダウンエッジ検出部506は、比較器110aからQ成分の信号を入力すると、信号がHigh→Lowに変化するダウンエッジのタイミングを検出し、ダウンエッジのタイミングを示す信号(以下、ダウンエッジタイミング信号という)を生成し、位相ずれ方向検出部507に出力する。
位相ずれ方向検出部507は、比較器110bからq成分の信号、ダウンエッジ検出部506からダウンエッジタイミング信号を入力すると、q成分の信号の状態を保持し、次に入力するq成分の信号と保持しているq成分の信号とをダウンエッジタイミングで比較することで、2つの信号が位相の遅れ方向または進み方向のいずれの位相ずれ方向であるかを検出し、この位相ずれ方向を位相制御情報計算部508に出力する。
位相制御情報計算部508は、カウンタ505から位相ずれ量、位相ずれ方向検出部507から位相ずれ方向を入力すると、位相ずれ量と位相ずれ方向から位相制御情報を生成し、位相器114に出力する。
【0009】
次に、位相制御器111Bにおける位相ずれを検出する方法について、
図6を用いて説明する。
図6(a)は、比較器110aが入力するQ成分の信号と比較器110bが入力するq成分の信号がオフセットされていない場合において、位相制御器111Bが位相ずれを検出する手順を示すタイムチャートである。
図6(b)は、比較器110aが入力するQ成分の信号と比較器110bが入力するq成分の信号がオフセットされた場合において、位相制御器111Bが位相ずれを検出する手順を示すタイムチャートである。
【0010】
まず、
図6(a)に示すようにQ成分とq成分がオフセットされていない場合における位相制御器111Bの位相ずれ検出する手順について、以下説明する。Q成分正弦波601は、比較器110aがベースバンド信号発生器101から入力するベースバンド信号のQ成分の正弦波形である。Q成分矩形波602は、Q成分正弦波601と基準電圧Vsとを比較器110aに入力することで、比較器110aから出力される矩形波形である。q成分正弦波603は、比較器110bが直行復調器109から入力する帰還信号の成分qの正弦波形である。q成分矩形波604は、q成分正弦波603と基準電圧Vsとを比較器110bに入力することで、比較器110bから出力される矩形波形である。位相ずれ量検出矩形波605は、Q成分矩形波602とq成分矩形波604との排他的論理和の演算が行われた波形である。
図6(a)に示すように、q成分正弦波603がQ成分正弦波601に対して位相が遅れると、q成分矩形波604もQ成分矩形波602に対して位相が遅れた矩形波となる。このため、位相ずれ量は、Q成分矩形波602とq成分矩形波604との排他的論理和501の演算により位相ずれ量検出矩形波605として検出できる。
【0011】
また、位相ずれの方向の検出は、位相ずれ方向検出部507により行われる。位相ずれ方向検出部507は、
図6(a)に示すようにダウンエッジ検出部506から出力されるQ成分矩形波602のダウンエッジ(High→Lowの変化点)と比較器110bから出力されるq成分矩形波604の状態(High/Low)とを確認することで、位相の進み/遅れのずれ方向を検出する。
図6(a)のようにHigh状態を検出した場合qはQに対して位相が遅れていることを示し、逆にLow状態を検出した場合qはQに対して位相が進んでいることになる。また、位相ずれの方向検出方法は、必ずしも比較器110aから出力されるQ成分矩形波602のダウンエッジで検出する必要はなく、比較器110aから出力されるQ成分矩形波602のアップエッジで比較器110bから出力されるq成分矩形波604の状態(High/Low)を確認するか、または比較器110bから出力されるq成分矩形波604のアップエッジ/ダウンエッジで比較器110aから出力されるQ成分矩形波602の状態(High/Low)を確認することでも検出できる。
【0012】
次に、ベースバンド信号発生器101から、トレーニング信号として4KHzの正弦波における位相ずれ検出区間を正弦波の半周期以上で一周期以下に設定したときの位相ずれ量の検出例について説明する。4KHzの正弦波が1度(π/180ラジアン)ずれると、排他的論理和501の出力は、
図6(a)の「(比較器110a出力のQ成分) EOR (比較器110b出力のq成分)」からHighレベル694nsec幅のパルスとなる。また、このパルスは位相ずれ検出区間で2回得られるので、その総和は1388nsec(=694nsec×2)となる。この694nsec幅のパルス信号をサンプリングするためには、1.44MHz(≒1/(694nsec))以上のクロックが必要となる。例えば、694nsec幅のパルスに対して、十分に速い10MHzのクロックでサンプリングする場合、1クロックは100nsec(10MHz(≒1/(100nsec))となり、694nsec幅のパルスをカウントするには、6.9カウントが必要となる。
図6(a)の「(比較器110a出力のQ成分) EOR (比較器110b出力のq成分)」のようにHighのパルス区間は、位相ずれ検出区間で2度発生するので、それを累算すると13.8カウント(=6.9カウント×2)される。従って、カウント値が13.8カウント(実際には14カウント)以上の場合には、位相が1度以上変化したと判断し、1度分の位相ずれ量の位相ずれ情報により位相制御情報が生成され、位相器114に出力される。
【0013】
次に、
図6(b)に示すオフセットされた場合における位相制御器111Bが位相ずれを検出する手順について、以下説明する。Q’成分正弦波611は、比較器110aがベースバンド信号発生器101から入力する上側にオフセットされたベースバンド信号のQ’成分の正弦波形である。Q’成分矩形波612は、Q’成分正弦波611と基準電圧Vsとを比較器110aに入力することで、比較器110aから出力される矩形波形である。q’成分正弦波613は、比較器110bが直行復調器109から入力する下側にオフセットされた帰還信号の成分qの正弦波形である。q’成分矩形波614は、q’成分正弦波613と基準電圧Vsとを比較器110bに入力することで、比較器110bから出力される矩形波形である。位相ずれ量検出矩形波615は、Q’成分矩形波612とq’成分矩形波614との排他的論理和の演算がおこなわれた波形である。
図6(b)に示すように、基準電圧Vsに対して上側にオフセットされたQ’成分正弦波611が比較器110aに入力されると、比較器110aから出力されるQ’成分矩形波612はQ成分正弦波601に比べてHigh区間が長いパルス信号となる。また、基準電圧Vsに対して下側にオフセットされたq’成分信号613が比較器110bに入力されると、比較器110bから出力されるq’成分矩形波614はq成分矩形波604に比べてHigh区間が短いパルス信号となる。
【0014】
また、「(比較器110a出力のQ’成分)EOR(比較器110b出力のq’成分)」より得られる位相ずれ量を表すパルス信号において、1回目に出力されるパルス信号の位相ずれ量検出矩形波615は、
図6(a)の位相ずれ量検出矩形波605に比べて幅が広く、2回目に出力されるパルス信号の位相ずれ量検出矩形波615は、
図6(a)の位相ずれ量検出矩形波605に比べて幅が狭い。このパルス信号を位相ずれ検出区間で累算すると、
図6(a)と
図6(b)では、その位相ずれ量に差が発生する。また、Q’成分正弦波611のダウンエッジで比較器110bから出力されるq’成分正弦波613の状態はLowであるので、位相ずれ方向検出部507は、Q’成分に対してq’成分の位相は進んでいるといった誤った位相ずれ方向を検出しまう。このため、正しい位相補正が出来ないといった問題や、正しい位相補正を行うために比較器110a、比較器110bに入力する信号のオフセットが適正なレベルとなるように周辺デバイスを調整しなければならないという問題があった。
【0015】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の送信機は、ベースバンド信号の同相成分と直交成分とを入力し、ベースバンド信号を搬送波信号によって直交変調し、直交変調した
線形変調信号を所定電力レベルに増幅
する増幅器を有する送信機において、
前記増幅器は、非線形歪補償を行うカーテシアンループ方式の負帰還増幅器であって、送信機の出力信号の一部を帰還信号として取り出す方向性結合器と、前記方向性結合器によって分岐された前記帰還信号を前記搬送波信号によって帰還同相成分と帰還直交成分に直交復調する直交復調器と、前記ベースバンド信号と前記帰還信号の位相ずれ量と位相ずれ方向を検出する位相制御器と、前記検出された位相ずれと位相ずれ方向とにより前記直交復調器に入力される前記搬送波信号の位相を制御する位相器とを備え、前記位相制御器は、前記ベースバンド信号の同相成分又は直交成分の中心点タイミングを計算するベースバンド信号中心点タイミング計算手段と、前記帰還信号の同相成分又は直交成分の中心点タイミングを計算する帰還信号中心点タイミング計算手段と、前記ベースバンド信号の中心点タイミングと前記帰還信号の中心点タイミングと
の差を算出し、その差から、前記ベースバンド信号と前記帰還信号の同相成分又は直交成分の位相ずれ量と位相ずれ方向を計算する位相制御情報計算手段と、を備えることを特徴としている。
また、本発明の送信機の前記ベースバンド信号中心点タイミング計算手段は、前記ベースバンド信号と基準電圧を入力してベースバンド信号矩形波形に変換する第1の比較器と、前記ベースバンド信号矩形波形のアップエッジとダウンエッジのタイミングから、中心点タイミングを計算する第1の中心点タイミング計算手段とを備え、前記ベースバンド信号矩形波形の中心点タイミングを前記ベースバンド信号の中心点タイミングとし、前記帰還信号中心点タイミング計算手段は、前記帰還信号と基準電圧を入力して帰還信号矩形波形に変換する第2の比較器と、前記帰還信号矩形波形のアップエッジとダウンエッジのタイミングから、中心点タイミングを計算する第2の中心点タイミング計算手段とを備え、前記帰還信号矩形波形の中心点タイミングを前記帰還信号の中心点タイミングとすることを特徴としている。
また、本発明の送信機の前記第1の比較器は前記ベースバンド信号の前記同相成分を入力し、かつ前記第2の比較器は前記帰還信号の前記同相成分を入力するか、または、前記第1の比較器は前記ベースバンド信号の前記直交成分入力し、かつ前記第2の比較器は前記帰還信号の前記直交成分を入力することを特徴としている。
本発明の送信機は、ベースバンド信号の同相成分と直交成分とを入力し、ベースバンド信号を搬送波信号によって直交変調し、直交変調した
線形変調信号を所定電力レベルに増幅
する増幅器を有する送信機において、
前記増幅器は、非線形歪補償を行うカーテシアンループ方式の負帰還増幅器であって、送信機の出力信号の一部を帰還信号として取り出す方向性結合器と、前記方向性結合器によって分岐された前記帰還信号を前記搬送波信号によって帰還同相成分と帰還直交成分に直交復調する直交復調器と、前記ベースバンド信号と、前記ベースバンド信号と前記帰還信号とを加算した加算信号との位相ずれ量と位相ずれ方向を検出する位相制御器と、前記検出された位相ずれと位相ずれ方向とにより前記直交復調器に入力される前記搬送波信号の位相を制御する位相器とを備え、前記位相制御器は、前記ベースバンド信号の同相成分又は直交成分の中心点タイミングを計算するベースバンド信号中心点タイミング計算手段と、前記加算信号の同相成分又は直交成分の中心点タイミングを計算する加算信号中心点タイミング計算手段と、前記ベースバンド信号の中心点タイミングと前記加算信号の中心点タイミングとの
差を算出し、その差から、前記ベースバンド信号と前記加算信号の同相成分又は直交成分の位相ずれ量と位相ずれ方向を計算する位相制御情報計算手段と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の送信機は、比較器に入力される信号がオフセットされていても正しい位相ずれ量と位相ずれ方向を検出することができるので、製品の製造ばらつきや温度変化によりオフセットの調整が不要となり、比較器による位相ずれの誤検出を防止し、負帰還増幅器を安定に動作させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための第1の実施形態(以下、「実施形態1」という)を、図面を参照して説明する。送信機の負帰還増幅器において、負帰還ループを安定させるためには、入力信号(ベースバンド信号)の直交成分と帰還信号の直交成分とで位相差が生じた場合に、位相差を0にするように位相制御器により位相の調整を行っている。実施形態1の送信機の負帰還増幅器は、入力信号の直交成分と帰還信号の直交成分がオフセットされていても、位相制御器により位相の調整を可能とするものである。
【0020】
実施形態1におけるカーテシアンループの負帰還リニアライザ(Linearizer)方式を使ったデジタル無線装置の送信機(図示せず)の負帰還増幅器10について、
図1に示す送信機の負帰還増幅器10の構成を用いて説明する。負帰還増幅器10は、ベースバンド信号発生器101、加算器102a、加算器102b、直交変調器103、バンドパスフィルタ(BPF)104、電力増幅器(PA)105、アンテナ106、方向性結合器107、減衰器(ATT)108、直交復調器109、比較器110a、比較器110b、位相制御器111A、基準信号発生器112、PLL周波数シンセサイザ113、及び位相器114から構成されている。
【0021】
ベースバンド信号発生器101は、ベースバンド信号の同相成分(以下、I成分という)を加算器102aに出力し、ベースバンド信号の直交成分(以下、Q成分という)を加算器102b及び比較器110aに出力する。
加算器102aは、ベースバンド信号発生器101から入力するI成分と直交復調器109から入力する帰還信号の同相成分(以下、i成分という)とを加算(i成分は加算器102aの減算入力側に入力して加算)した「I成分−i成分」を直交変調器103に出力する。
加算器102bは、ベースバンド信号発生器101から入力するQ成分と直交復調器109から入力する帰還信号の直交成分(以下、q成分という)とを加算(q成分は加算器102bの減算入力側に入力して加算)した「Q成分−q成分」を直交変調器103に出力する。
【0022】
基準信号発生器112は、基準周波数信号を発生し、PLL周波数シンセサイザ113に基準信号を出力する。
PLL周波数シンセサイザ113は、基準信号発生器112から基準信号を入力すると、基準信号に基づいて搬送波信号を発生させ、直交変調器103と位相器114に出力する。
直交変調器103は、加算器102aから「I成分−i成分」、加算器102bから「Q成分−q成分」を入力し、PLL周波数シンセサイザ113から搬送波信号を入力すると、「I成分−i成分」、「Q成分−q成分」、及び搬送波信号により所望の周波数に変換した信号をバンドパスフィルタ(BPF)104に出力する。
バンドパスフィルタ(BPF)104は、直交変調器103から所望の周波数に変換された信号を入力すると、この信号から不要なスプリアス成分を取り除き、電力増幅器(PA)105に出力する。
電力増幅器105は、バンドパスフィルタ(BPF)104から信号を入力し、信号を規定の出力レベルまで増幅して高周波変調信号とすると、高周波変調信号をアンテナ106に出力する。
アンテナ106は、高周波変調信号を入力すると、電力増幅器105から方向性結合器107を経由して高周波変調信号を電波で送出する。
【0023】
位相器114は、PLL周波数シンセサイザ113から搬送波信号を入力し、位相制御器111Aから位相制御情報を入力すると、位相制御情報により位相が制御された搬送波信号を直交復調器109に出力する。
方向性結合器107は、カーテシアンループによる負帰還リニアライザとしての機能を実現するために、電力増幅器105からアンテナ106に至る高周波変調信号の経路に設けられる。方向性結合器107は、電力増幅器105から高周波変調信号の一部を入力すると、減衰器(ATT)108に出力する。この方向性結合器107から減衰器(ATT)108に出力される信号が帰還信号である。
減衰器(ATT)108は、方向性結合器107から帰還信号を入力すると、帰還信号の電力レベルを適正な値に調整し、直交復調器109に入力する。
直交復調器109は、位相器114から位相が制御された搬送波信号を入力し、減衰器(ATT)108から電力レベルが適正な値に調整された帰還信号を入力して、帰還信号のi成分と、q成分を取り出す。直交復調器109は、帰還信号のi成分を加算器102aの減算入力側に出力し、帰還信号のq成分を加算器102bの減算入力側と比較器110bに出力する。
【0024】
比較器110aは、ベースバンド信号発生器101からベースバンド信号のQ成分を入力すると、ベースバンド信号のQ成分を基準電圧Vsに基づいて矩形波の信号に変換し、Q成分の矩形波の信号を位相制御器111Aに出力する。
比較器110bは、直交復調器109から帰還信号のq成分を入力すると、帰還信号のq成分を基準電圧Vsに基づいて矩形波の信号に変換し、q成分の矩形波の信号を位相制御器111Aに出力する。
位相制御器111Aは、比較器110aからQ成分の矩形波の信号、比較器110bからq成分の矩形波の信号を入力すると、Q成分の矩形波とq成分の矩形波との位相差を検出して位相制御情報を生成し、位相器114に出力する。なお、位相制御器111Aの構成については、後述する。
【0025】
このような構成の送信機の負帰還増幅器10は、ベースバンド信号発生器101が位相制御器111Aで位相制御情報を生成するために必要な無変調信号(以下、トレーニング信号という)を、予め決められた送信区間(以下、トレーニング区間という)のタイミングで出力する。
【0026】
次に、実施形態1の位相制御器111Aが位相ずれ量を検出する方法について、
図2と
図3を用いて説明する。
図2は、実施形態1の位相制御器111Aの構成を示す図である。
図3は、位相制御器111Aにおける位相ずれの検出手順を示すタイムチャートである。
【0027】
実施形態1の位相制御器111Aは、位相ずれ検出タイミング生成部201、アップエッジ検出部202a、ダウンエッジ検出部203a、アップエッジ検出部202b、ダウンエッジ検出部203b、パルス中心点検出部204a、パルス中心点検出部204b、及び位相制御情報計算部205から構成されている。
【0028】
位相ずれ検出タイミング生成部201は、位相ずれ量を測定するためのトレーニング信号の有効区間をタイミング信号として生成し、検出区間のスタートタイミング信号を生成し、アップエッジ検出部202a、ダウンエッジ検出部203a、アップエッジ検出部202b、及びダウンエッジ検出部203bに出力する。
【0029】
アップエッジ検出部202aは、比較器110aからQ成分の信号、位相ずれ検出タイミング生成部201からスタートタイミング信号を入力すると、スタートタイミング信号を基準タイミングとして、Q成分の信号がLow→Highに切り替わるアップエッジタイミングを検出する。具体的には位相ずれ検出タイミング生成部201から入力するスタートタイミング信号でカウンタを0クリアし、サンプリングタイミングでカウンタを1ずつ更新する。また、Q成分の信号をサンプリングして信号状態がLow→Highに切り替わるタイミングでカウンタを停止する。このようにカウントしたカウント値をアップエッジ検出情報としてパルス中心点検出部204aに出力する。
ダウンエッジ検出部203aは、比較器110aからQ成分の信号、位相ずれ検出タイミング生成部201からスタートタイミング信号を入力すると、スタートタイミング信号を基準タイミングとして、Q成分の信号がHigh→Lowに切り替わるダウンエッジタイミングを検出する。具体的には位相ずれ検出タイミング生成部201から入力するスタートタイミング信号でカウンタを0クリアし、サンプリングタイミングでカウンタを1ずつ更新する。また、Q成分の信号をサンプリングして信号状態がLHigh→Lowに切り替わるタイミングでカウンタを停止する。このようにカウントしたカウント値をダウンエッジ検出情報としてパルス中心点検出部204aに出力する。
【0030】
アップエッジ検出部202bは、比較器110bからq成分の信号、位相ずれ検出タイミング生成部201からスタートタイミング信号を入力すると、スタートタイミング信号を基準タイミングとして、q成分の信号がLow→Highに切り替わるアップエッジタイミングを検出する。具体的には位相ずれ検出タイミング生成部201から入力するスタートタイミング信号でカウンタを0クリアし、サンプリングタイミングでカウンタを1ずつ更新する。また、q成分の信号をサンプリングして信号状態がLow→Highに切り替わるタイミングでカウンタを停止する。このようにカウントしたカウント値をアップエッジ検出情報としてパルス中心点検出部204bに出力する。
ダウンエッジ検出部203bは、比較器110bからq成分の信号、位相ずれ検出タイミング生成部201からスタートタイミング信号を入力すると、スタートタイミング信号を基準タイミングとして、q成分の信号がHigh→Lowに切り替わるダウンエッジタイミングを検出する。具体的には位相ずれ検出タイミング生成部201から入力するスタートタイミング信号でカウンタを0クリアし、サンプリングタイミングでカウンタを1ずつ更新する。また、Q成分の信号をサンプリングして信号状態がLHigh→Lowに切り替わるタイミングでカウンタを停止する。このようにカウントしたカウント値をダウンエッジ検出情報としてパルス中心点検出部204bに出力する。
【0031】
パルス中心点検出部204aは、アップエッジ検出部202aからQ成分の信号のアップエッジタイミング情報、ダウンエッジ検出部202bからQ成分の信号のダウンエッジタイミング情報を入力すると、Q成分の信号におけるパルス信号High区間の中心点のタイミングを計算し、位相制御情報計算部205に出力する。
パルス中心点検出部204bは、アップエッジ検出部202bからq成分の信号のアップエッジタイミング情報、ダウンエッジ検出部202bからq成分の信号のダウンエッジタイミング情報を入力すると、q成分の信号におけるパルス信号High区間の中心点のタイミングを計算し、位相情報計算部205に出力する。
位相情報計算部205は、パルス中心点検出部204aからQ成分の信号の中心点タイミング情報と、パルス中心点検出部204bからq成分の信号の中心点タイミング情報を入力すると、Q成分の信号とq成分の信号の中心点タイミング情報により位相制御情報を設定し、位相器114に出力する。
【0032】
次に、位相制御器111Aにおける位相ずれを検出する方法について、
図3を用いて説明する。
図3(a)は、比較器110aが入力するQ成分の信号と比較器110bが入力するq成分の信号がオフセットされていない場合において、位相制御器111Aが位相ずれを検出する手順を示すタイムチャートである。
図3(b)は、比較器110aが入力するQ成分の信号と比較器110bが入力するq成分の信号がオフセットされた場合において、位相制御器111Aが位相ずれを検出する手順を示すタイムチャートである。
【0033】
まず、
図3(a)に示すオフセットされない場合における位相制御器111Aが位相ずれを検出する手順について、以下説明する。Q成分正弦波301は、比較器110aがベースバンド信号発生器101から入力するベースバンド信号のQ成分の正弦波形である。Q成分矩形波302は、Q成分正弦波301と基準電圧Vsとを比較器110aに入力することで、比較器110aから出力される矩形波形である。q成分正弦波303は、比較器110bが直行復調器109から入力する帰還信号の成分qの正弦波形である。q成分矩形波304は、q成分正弦波603と基準電圧Vsとを比較器110bに入力することで、比較器110bから出力される矩形波形である。位相ずれ量検出矩形波304は、Q成分矩形波302とq成分矩形波304との排他的論理和の演算が行われた波形である。
図3(a)に示すように、q成分正弦波303がQ成分正弦波301に対して位相が遅れると、q成分矩形波304もQ成分矩形波302に対して位相が遅れた矩形波となる。このため、位相ずれ量は、Q成分矩形波302の中心305と位相ずれ量検出矩形波304の中心306との位相差により位相ずれ量を検出する。
【0034】
次に、位相制御器111Aが位相ずれ量を検出する手順について、
図3を用いて具体的に説明する。位相ずれ検出区間内で、検出区間の先頭(t0)を基準として、アップエッジ検出部202aがQ成分正弦波301のアップエッジ(Low→High)のタイミング(t1)を検出し、ダウンエッジ検出部203aがQ成分正弦波301のダウンエッジ(High→Low)のタイミング(t2)を検出する。同様に、アップエッジ検出部202bがq成分正弦波303のアップエッジ(Low→High)のタイミング(t3)を検出し、ダウンエッジ検出部203bがq成分正弦波303のダウンエッジ(High→Low)のタイミング(t4)を検出する。また、パルス中心点検出部204aは、Q成分正弦波301のアップエッジのタイミング(t1)と、Q成分正弦波301のダウンエッジのタイミング(t2)から、High区間(パルス信号)の中心点タイミングQ_center(=t1+(t2−t1)/2)を計算する。同様に、パルス中心点検出部204bは、q成分正弦波303のアップエッジのタイミング(t3)と、q成分正弦波303のダウンエッジのタイミング(t4)から、High区間(パルス信号)の中心点タイミングq_center(=t3+(t4−t3)/2)を計算する。位相制御情報計算部205は、計算されたQ_centerとq_centerから、位相ずれ量であるq_center−Q_center(=(t4+t3−t2−t1)/2)を計算し、q_center−Q_centerの符号から位相の進み/遅れの方向を検出する。
【0035】
次に、ベースバンド信号発生器101から、トレーニング信号として4KHzの正弦波における位相ずれ検出区間を正弦波の半周期以上で一周期以下に設定したときの位相ずれ量の検出例について説明する。ずれ量を計算するために、比較器110aと比較器110bの出力のパルス信号を10MHzのクロックでサンプリングしながらカウンタを動作させる。4KHzの正弦波を10MHzのクロックでサンプリングすると、カウンタは一周期で2500カウントする。
例えば、
位相ずれ検出区間の先頭: t0 = 0
比較器110a出力のQ成分アップエッジタイミング: t1 = 417
比較器110a出力のQ成分ダウンエッジタイミング: t2 = 1667
比較器110b出力のq成分アップエッジタイミング: t3 = 625
比較器110b出力のq成分ダウンエッジタイミング: t4 = 1875
Q_center = t1+(t2−t1)/2 = 417+(1667−417)/2
= 1042
q_center = t3+(t4−t3)/2 = 625+(1875−625)/2
= 1250
q_center−Q_center = 1250−1042 = 208
により、
位相ずれ量: 360×208/2500 = 30度
位相ずれ方向:Q成分に対してq成分は遅れる方向
が検出され、位相ずれ量が「30度」、位相ずれ方向が「Q成分に対してq成分は遅れる方向」の位相ずれ情報により位相制御情報が生成され、位相器114に出力される。
【0036】
次に、
図3(b)に示すオフセットされた場合における位相制御器111Aが位相ずれを検出する手順について、以下説明する。Q’成分正弦波311は、比較器110aがベースバンド信号発生器101から入力する上側にオフセットされたベースバンド信号のQ’成分の正弦波形である。Q’成分矩形波312は、Q’成分正弦波311と基準電圧Vsとを比較器110aに入力することで、比較器110aから出力される矩形波形である。q’成分正弦波313は、比較器110bが直行復調器109から入力する下側にオフセットされた帰還信号の成分q’の正弦波形である。q’成分矩形波314は、q’成分正弦波313と基準電圧Vsとを比較器110bに入力することで、比較器110bから出力される矩形波形である。
図3(b)に示すように、q’成分正弦波313がQ’成分正弦波311に対して位相が遅れると、q’成分矩形波314もQ’成分矩形波312に対して位相が遅れた矩形波となる。このため、位相ずれ量は、Q’成分矩形波312の中心315と位相ずれ量検出矩形波314の中心316との位相差により位相ずれ量を検出する。
【0037】
次に、位相制御器111Aが位相ずれ量を検出する手順について、
図3を用いて具体的に説明する。位相ずれ検出区間内で、検出区間の先頭(t0’)を基準として、アップエッジ検出部202aがQ’成分正弦波311のアップエッジ(Low→High)のタイミング(t1’)を検出し、ダウンエッジ検出部203aがQ’成分正弦波311のダウンエッジ(High→Low)のタイミング(t2’)を検出する。同様に、アップエッジ検出部202bがq’成分正弦波313のアップエッジ(Low→High)のタイミング(t3’)を検出し、ダウンエッジ検出部203bがq’成分正弦波313のダウンエッジ(High→Low)のタイミング(t4’)を検出する。パルス中心点検出部204aは、Q’成分正弦波311のアップエッジのタイミング(t1’)と、Q’成分正弦波311のダウンエッジのタイミング(t2’)から、High区間(パルス信号)の中心点タイミングQ_center(=t1’+(t2’−t1’)/2)を計算する。同様に、パルス中心点検出部204bは、q’成分正弦波313のアップエッジのタイミング(t3’)と、q’成分正弦波313のダウンエッジのタイミング(t4’)から、High区間(パルス信号)の中心点タイミングq_center(=t3’+(t4’−t3’)/2)を計算する。位相制御情報計算部205は、計算されたQ_centerとq_centerから、位相ずれ量であるq_center−Q_center(=(t4’+t3’−t2’−t1’)/2)と、q_center−Q_centerの符号から位相の進み/遅れの方向を検出する。
【0038】
次に、ベースバンド信号発生器101から、トレーニング信号として4KHzの正弦波における位相ずれ検出区間を正弦波の半周期以上で一周期以下に設定したときの位相ずれ量の検出例について説明する。ずれ量を計算するために、比較器110aと比較器110bの出力のパルス信号を10MHzのクロックでサンプリングしながらカウンタを動作させる。4KHzの正弦波を10MHzのクロックでサンプリングすると、カウンタは一周期で2500カウントする。
例えば、
位相ずれ検出区間の先頭: t0’ = 0
比較器110a出力のQ’成分アップエッジタイミング: t1’ = 313
比較器110a出力のQ’成分ダウンエッジタイミング: t2’ = 1771
比較器110b出力のq’成分アップエッジタイミング: t3’ = 833
比較器110b出力のq’成分ダウンエッジタイミング: t4’ = 1667
Q’_center = t1’+(t2’−t1’)/2 = 313+(1771−313)/2
= 1042
q’_center = t3’+(t4’−t3’)/2 = 833+(1667−833)/2
= 1250
q’_center−Q’_center = 1250−1042 = 208
により、
位相ずれ量: 360×208/2500 = 30度
位相ずれ方向:Q’成分に対してq’成分は遅れる方向
が検出され、位相ずれ量が「30度」、位相ずれ方向が「Q’成分に対してq’成分は遅れる方向」の位相ずれ情報により位相制御情報が生成され、位相器114に出力される。
【0039】
図3に示すように、Q’成分が基準電圧Vsに対して上側にオフセットされて比較器110aに入力されると、
図3(b)の比較器110aが出力するQ’成分は、
図3(a)の比較器110aが出力するQ成分に比べてHigh区間が長いパルス信号となる。しかし、High区間(パルス信号)の中心点タイミングQ’_centerを計算すると、
図3(a)で計算したQ_centerと同じタイミングとなる。また、q’成分が基準電圧Vsに対して下側にオフセットされて比較器110bに入力されると、
図3(b)の比較器110bが出力q’成分は、
図3(a)の比較器110bが出力するq成分に比べてHigh区間が短いパルス信号となる。しかしHigh区間(パルス信号)の中心点タイミングq’_centerを計算すると、
図3(a)で計算したq_centerと同じタイミングとなる。このように、比較器110aに入力されるQ成分の信号が基準電圧Vsに対してオフセットされた信号であっても、または比較器110bに入力されるq成分の信号が基準電圧Vsに対してオフセットされた信号であっても、Highパルス信号の中心点タイミングを検出して位相ずれを計算することで、正確な位相ずれ量、及び位相ずれの方向を検出することができる。
【0040】
実施形態1では、Q成分とq成分、又はQ’成分とq’成分における位相のずれを分かりやすく説明するために位相差を大きく図示し、位相ずれ量が30度となる例を用いて説明した。しかし、実際には予め決められた閾値以上の位相ずれを検出した場合に、その都度一定量の位相を補正する。例えば、4KHzの正弦波が1度(π/180ラジアン)ずれたときに位相補正を行う場合では、4KHzの正弦波を10MHzのクロックでサンプリングすると、一周期でカウンタは2500カウントとなるので、1度ずれではq_center−Q_center = 2500/360 = 6.9カウントとなる。従って、カウント値が6.9以上カウント(実際には7カウント)以上の場合には、位相が1度以上変化したと判断し、1度分の位相ずれ量の位相ずれ情報により位相制御情報が生成され、位相器114に出力される。
【0041】
以下、本発明を実施するための第2の実施形態(以下、「実施形態2」という)を、図面を参照して説明する。実施形態2は、送信機の負帰還増幅器20において、入力信号(ベースバンド信号)の直交成分と、入力信号の直交成分と帰還信号の直交成分とを加算した直交成分との位相ずれを検出し、オフセットされた入力信号の直交成分と帰還信号の直交成分においても、位相制御器により位相の調整を可能とするものである。
【0042】
実施形態2におけるカーテシアン方式の負帰還リニアライザ(Linearizer)方式を使ったデジタル無線装置の送信機の負帰還回路20について、
図4に示す送信機の負帰還増幅器20の構成を用いて説明する。負帰還回路20は、実施形態1の負帰還増幅器10と同様に、ベースバンド信号発生器101、加算器102a、加算器102b、直交変調器103、バンドパスフィルタ(BPF)104、電力増幅器(PA)105、アンテナ106、方向性結合器107、減衰器(ATT)108、直交復調器109、比較器110a、比較器110b、位相制御器111A、基準信号発生器112、PLL周波数シンセサイザ113、及び位相器114から構成されている。
【0043】
しかし、実施形態2においては、比較器110bは、実施形態1のように直交復調器109から帰還信号のq成分の信号を入力するのでなく、加算器102bの出力からQ成分とq成分の加算された信号を入力し、比較器110bは、Q成分とq成分の加算された信号と基準電圧Vsとを比較する。このような構成とすることで、位相制御器111Aは、入力直交成分と、入力直交成分と帰還直交成分とを加算した成分との位相ずれを検出し、オフセットされた入力信号においても位相の調整を行うことができる。
【0044】
なお、実施形態1においては入力直交成分Qと帰還直交成分qの位相ずれを検出する構成としたが、入力同相成分Iと帰還同相成分iの位相ずれを検出する構成とすることも可能である。また、実施形態2においては入力直交成分Qと、入力直交成分Qと帰還直交成分qとを加算した信号Q−qの位相ずれを検出する構成としたが、入力同相成分Iと、入力同相成分Iと帰還同相成分iとを加算した信号I-iの位相ずれを検出する構成とすることも可能である。
【0045】
以上をまとめると、本発明は次のような特徴を有する。
(1): 本発明の送信機は、ベースバンド信号の同相成分と直交成分とを入力し、ベースバンド信号を搬送波信号によって直交変調し、直交変調した信号を所定電力レベルに増幅して送信する送信機において、送信機の出力信号の一部を帰還信号として取り出す方向性結合器と、前記方向性結合器によって分岐された前記帰還信号を前記搬送波信号によって帰還同相成分と帰還直交成分に直交復調する直交復調器と、前記ベースバンド信号と前記帰還信号の位相ずれ量と位相ずれ方向を検出する位相制御器と、前記検出された位相ずれと位相ずれ方向とにより前記直交復調器に入力される前記搬送波信号の位相を制御する位相器とを備え、前記位相制御器は、前記ベースバンド信号の同相成分又は直交成分の中心点タイミングを計算するベースバンド信号中心点タイミング計算手段と、前記帰還信号の同相成分又は直交成分の中心点タイミングを計算する帰還信号中心点タイミング計算手段と、前記ベースバンド信号の中心点タイミングと前記帰還信号の中心点タイミングとから、前記ベースバンド信号と前記帰還信号の同相成分又は直交成分の位相ずれ量と位相ずれ方向を計算する位相制御情報計算手段と、を備えることを特徴としている。
(2):(1)の本発明の送信機の前記ベースバンド信号中心点タイミング計算手段は、前記ベースバンド信号と基準電圧を入力してベースバンド信号矩形波形に変換する第1の比較器と、前記ベースバンド信号矩形波形のアップエッジとダウンエッジのタイミングから、中心点タイミングを計算する第1の中心点タイミング計算手段とを備え、前記ベースバンド信号矩形波形の中心点タイミングを前記ベースバンド信号の中心点タイミングとし、前記帰還信号中心点タイミング計算手段は、前記帰還信号と基準電圧を入力して帰還信号矩形波形に変換する第2の比較器と、前記帰還信号矩形波形のアップエッジとダウンエッジのタイミングから、中心点タイミングを計算する第2の中心点タイミング計算手段とを備え、前記帰還信号矩形波形の中心点タイミングを前記帰還信号の中心点タイミングとすることを特徴としている。
(3):(2)の本発明の送信機の前記第1の比較器は前記第1の比較器は前記ベースバンド信号の前記同相成分を入力し、かつ前記第2の比較器は前記帰還信号の前記同相成分を入力するか、または、前記第1の比較器は前記ベースバンド信号の前記直交成分入力し、かつ前記第2の比較器は前記帰還信号の前記直交成分を入力することを特徴としている。
(4):本発明の送信機は、ベースバンド信号の同相成分と直交成分とを入力し、ベースバンド信号を搬送波信号によって直交変調し、直交変調した信号を所定電力レベルに増幅して送信する送信機において、送信機の出力信号の一部を帰還信号として取り出す方向性結合器と、前記方向性結合器によって分岐された前記帰還信号を前記搬送波信号によって帰還同相成分と帰還直交成分に直交復調する直交復調器と、前記ベースバンド信号と、前記ベースバンド信号と前記帰還信号とを加算した加算信号との位相ずれ量と位相ずれ方向を検出する位相制御器と、前記検出された位相ずれと位相ずれ方向とにより前記直交復調器に入力される前記搬送波信号の位相を制御する位相器とを備え、前記位相制御器は、前記ベースバンド信号の同相成分又は直交成分の中心点タイミングを計算するベースバンド信号中心点タイミング計算手段と、前記加算信号の同相成分又は直交成分の中心点タイミングを計算する加算信号中心点タイミング計算手段と、前記ベースバンド信号の中心点タイミングと前記加算信号の中心点タイミングとから、前記ベースバンド信号と前記加算信号の同相成分又は直交成分の位相ずれ量と位相ずれ方向を計算する位相制御情報計算手段と、を備えることを特徴としている。
(5):(4)の本発明の送信機の前記ベースバンド信号中心点タイミング計算手段は、前記ベースバンド信号と基準電圧を入力してベースバンド信号矩形波形に変換する第1の比較器と、前記ベースバンド信号矩形波形のアップエッジとダウンエッジのタイミングから、中心点タイミングを計算する第1の中心点タイミング計算手段とを備え、前記ベースバンド信号矩形波形の中心点タイミングを前記ベースバンド信号の中心点タイミングとし、前記加算信号中心点タイミング計算手段は、前記加算信号と基準電圧を入力して加算信号矩形波形に変換する第2の比較器と、前記加算信号矩形波形のアップエッジとダウンエッジのタイミングから、中心点タイミングを計算する第2の中心点タイミング計算手段とを備え、前記加算信号矩形波形の中心点タイミングを前記加算信号の中心点タイミングとすることを特徴としている。
(6):(5)の本発明の送信機の前記第1の比較器は前記ベースバンド信号の前記同相成分を入力し、かつ前記第2の比較器は前記ベースバンド信号の前記同相成分と前記帰還信号の前記同相成分とを加算したものを前記加算信号とし、その前記同相成分を入力するか、または、前記第1の比較器は前記ベースバンド信号の前記直交成分入力し、かつ前記第2の比較器は前記ベースバンド信号の前記直交成分と前記帰還信号の前記直交成分とを加算したものを前記加算信号とし、その前記直交成分を入力することを特徴としている。
【0046】
以上により、本発明は、負帰還回路を備えた送信機において、位相ずれの検出を、パルス化した比較器出力信号の中心点タイミングを検出することで、比較器にオフセットされた信号からでも正しい位相ずれ量と位相ずれ方向を検出することが可能となるので、位相ずれ検出の誤検出や、比較器に入力する信号のオフセットを調整する必要がなく、負帰還増幅器を安定に動作させることができる。更に、温度変化による特性の変動を調整し、また製品ごとの特性のばらつきを調整することができる。
【0047】
具体的な実施の形態により本発明を説明したが、上記実施の形態は本発明の例示であり、この実施の形態に限定されないことは言うまでもない。