特許第6129562号(P6129562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129562
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】断線検出装置、および、断線検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/02 20060101AFI20170508BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20170508BHJP
   H02H 7/26 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   G01R31/02
   H02H3/00 L
   H02H7/26 D
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-513(P2013-513)
(22)【出願日】2013年1月7日
(65)【公開番号】特開2014-132242(P2014-132242A)
(43)【公開日】2014年7月17日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100115369
【弁理士】
【氏名又は名称】仙波 司
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】澤井 明雄
(72)【発明者】
【氏名】築山 大輔
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−3271(JP,A)
【文献】 特開2006−329893(JP,A)
【文献】 特開昭59−222024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/02
H02H 3/00
H02H 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線の断線を検出する断線検出装置であって、
前記配電線に配置された電気信号検出器が検出した電気信号に基づいて、前記配電線の前記電気信号検出器が配置された位置より下流側のインピーダンス値を検出するインピーダンス検出手段と、
前記インピーダンス検出手段によって検出されたインピーダンス値に基づいて、前記配電線が断線したか否かを判断する断線判断手段と、
を備えており、
前記インピーダンス検出手段は、三相の配電線のインピーダンス値をそれぞれ検出し、
前記断線判断手段は、
前記インピーダンス検出手段によって検出された3つのインピーダンス値がそれぞれ変化したか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段によってすべてが変化したと判別された場合に、前記配電線のいずれかが断線したと判断する判断手段と、
を備えていることを特徴とする断線検出装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記3つのインピーダンス値のリアクタンス成分がそれぞれ変化したか否かを判別する、
請求項1に記載の断線検出装置。
【請求項3】
前記判別手段は、前記リアクタンス成分の所定時間での変化量が所定値以上の場合に、変化したと判別する、
請求項2に記載の断線検出装置。
【請求項4】
各相の配電線の無効電力をそれぞれ検出する無効電力検出手段をさらに備え、
前記断線判断手段は、前記無効電力検出手段によって検出された3つの無効電力がそれぞれ変化したか否かを判別する第2の判別手段をさらに備え、
前記判断手段は、前記判別手段によってすべてが変化したと判別され、かつ、前記第2の判別手段によってすべてが変化したと判別された場合に、前記配電線のいずれかが断線したと判断する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の断線検出装置。
【請求項5】
前記3つのインピーダンス値の抵抗成分のうち最も変化した抵抗成分が検出された相を、配電線が断線した相として検出する断線相検出手段をさらに備えている、
請求項1ないし4のいずれかに記載の断線検出装置。
【請求項6】
各相の配電線の有効電力をそれぞれ検出する有効電力検出手段と、
前記有効電力検出手段によって検出された3つの有効電力のうち最も変化した有効電力が検出された相を、配電線が断線した相として検出する断線相検出手段と、
をさらに備えている、
請求項1ないし4のいずれかに記載の断線検出装置。
【請求項7】
配電線の断線を検出する断線検出装置であって、
前記配電線に配置された電気信号検出器が検出した電気信号に基づいて、前記配電線の前記電気信号検出器が配置された位置より下流側のインピーダンス値を検出するインピーダンス検出手段と、
前記インピーダンス検出手段によって検出されたインピーダンス値に基づいて、前記配電線が断線したか否かを判断する断線判断手段と、
を備えており、
前記断線判断手段は、
前記インピーダンス検出手段によって検出されたインピーダンス値のリアクタンス成分の微分値を算出する微分値算出手段と、
前記算出された微分値が正の値である状態が所定時間以上継続した後に負の値になった場合に、前記配電線が断線したと判断する判断手段と、
を備えていることを特徴とする断線検出装置。
【請求項8】
前記配電線の系統周波数を検出する周波数検出手段と、
前記電気信号検出器が検出した電流信号と電圧信号から、それぞれ前記系統周波数の成分を抽出するフィルタ手段と、
をさらに備えている、請求項1ないしのいずれかに記載の断線検出装置。
【請求項9】
配電線の断線を検出する断線検出方法であって、
前記配電線に配置された電気信号検出器が電気信号を検出する第1の工程と、
前記第1の工程において検出された電気信号に基づいて、前記配電線の前記電気信号検出器が配置された位置より下流側のインピーダンス値を検出する第2の工程と、
前記第2の工程において検出されたインピーダンス値に基づいて、前記配電線が断線したか否かを判断する第3の工程と、
を備えており、
前記第2の工程においては、三相の配電線のインピーダンス値をそれぞれ検出し、
前記第3の工程においては、
前記第2の工程によって検出された3つのインピーダンス値がそれぞれ変化したか否かを判別する第3−1の工程と、
前記第3−1の工程によってすべてが変化したと判別された場合に、前記配電線のいずれかが断線したと判断する第3−2の工程と、
を備えていることを特徴とする断線検出方法。
【請求項10】
配電線の断線を検出する断線検出方法であって、
前記配電線に配置された電気信号検出器が電気信号を検出する第1の工程と、
前記第1の工程において検出された電気信号に基づいて、前記配電線の前記電気信号検出器が配置された位置より下流側のインピーダンス値を検出する第2の工程と、
前記第2の工程において検出されたインピーダンス値に基づいて、前記配電線が断線したか否かを判断する第3の工程と、
を備えており、
前記第3の工程においては、
前記第2の工程によって検出されたインピーダンス値のリアクタンス成分の微分値を算出する第3−1の工程と、
前記算出された微分値が正の値である状態が所定時間以上継続した後に負の値になった場合に、前記配電線が断線したと判断する第3−2の工程と、
を備えていることを特徴とする断線検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線の断線を検出する断線検出装置、および、断線検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配電網における配電線の断線を検出する断線検出装置が開発されている。例えば、配電線の各相の電圧を検出して断線を検出する方法がある(特許文献1参照)。しかし、この場合、電圧の検出点より上流側(電源側)の断線しか検出することができない。下流側(負荷側)の断線を検出するのは困難である。
【0003】
下流側(負荷側)の故障を検出する方法として、送電線の故障を検出する距離継電器が知られている(例えば、特許文献2参照)。距離継電器は、送電線の電圧と電流とを検出して、送電線の故障点までの距離に対応するインピーダンス値を演算し、インピーダンス値があらかじめ設定されたインピーダンス範囲内にある場合に、送電線上の監視区間内で事故が発生したと判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007‐282452号公報
【特許文献2】特開2012‐23923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
距離継電器は、公称されている送電線の距離当たりのインピーダンス値を利用して、演算されたインピーダンス値から故障点までの距離を推測し、故障点が監視区間内にある場合に作動する。負荷変動による送電線でのインピーダンス値の変化の影響は小さいので、負荷変動によって誤作動してしまうことはない。しかし、配電線での負荷変動によるインピーダンス値の変化の影響は大きいので、配電線に距離継電器を用いた場合には誤作動してしまう場合がある。つまり、負荷変動によるインピーダンス値の変化を、配電線の断線によるインピーダンス値の変化と判断して、作動してしまう場合がある。
【0006】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、配置された位置より下流側の断線を検出することができる、配電線の断線検出装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される断線検出装置は、配電線の断線を検出する断線検出装置であって、前記配電線に配置された電気信号検出器が検出した電気信号に基づいて、前記配電線の前記電気信号検出器が配置された位置より下流側のインピーダンス値を検出するインピーダンス検出手段と、前記インピーダンス検出手段によって検出されたインピーダンス値に基づいて、前記配電線が断線したか否かを判断する断線判断手段とを備えており、前記インピーダンス検出手段は、三相の配電線のインピーダンス値をそれぞれ検出し、前記断線判断手段は、前記インピーダンス検出手段によって検出された3つのインピーダンス値がそれぞれ変化したか否かを判別する判別手段と、前記判別手段によってすべてが変化したと判別された場合に、前記配電線のいずれかが断線したと判断する判断手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判別手段は、前記3つのインピーダンス値のリアクタンス成分がそれぞれ変化したか否かを判別する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判別手段は、前記リアクタンス成分の所定時間での変化量が所定値以上の場合に、変化したと判別する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、各相の配電線の無効電力をそれぞれ検出する無効電力検出手段をさらに備え、前記断線判断手段は、前記無効電力検出手段によって検出された3つの無効電力がそれぞれ変化したか否かを判別する第2の判別手段をさらに備え、前記判断手段は、前記判別手段によってすべてが変化したと判別され、かつ、前記第2の判別手段によってすべてが変化したと判別された場合に、前記配電線のいずれかが断線したと判断する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記3つのインピーダンス値の抵抗成分のうち最も変化した抵抗成分が検出された相を、配電線が断線した相として検出する断線相検出手段をさらに備えている。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、各相の配電線の有効電力をそれぞれ検出する有効電力検出手段と、前記有効電力検出手段によって検出された3つの有効電力のうち最も変化した有効電力が検出された相を、配電線が断線した相として検出する断線相検出手段と、をさらに備えている。
【0015】
本発明の第2の側面によって提供される断線検出装置は、配電線の断線を検出する断線検出装置であって、前記配電線に配置された電気信号検出器が検出した電気信号に基づいて、前記配電線の前記電気信号検出器が配置された位置より下流側のインピーダンス値を検出するインピーダンス検出手段と、前記インピーダンス検出手段によって検出されたインピーダンス値に基づいて、前記配電線が断線したか否かを判断する断線判断手段とを備えており、前記断線判断手段は、前記インピーダンス検出手段によって検出されたインピーダンス値のリアクタンス成分の微分値を算出する微分値算出手段と、前記算出された微分値が正の値である状態が所定時間以上継続した後に負の値になった場合に、前記配電線が断線したと判断する判断手段とを備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記配電線の系統周波数を検出する周波数検出手段と、前記電気信号検出器が検出した電流信号と電圧信号から、それぞれ前記系統周波数の成分を抽出するフィルタ手段とをさらに備えている。
【0017】
本発明の第3の側面によって提供される断線検出方法は、配電線の断線を検出する断線検出方法であって、前記配電線に配置された電気信号検出器が電気信号を検出する第1の工程と、前記第1の工程において検出された電気信号に基づいて、前記配電線の前記電気信号検出器が配置された位置より下流側のインピーダンス値を検出する第2の工程と、前記第2の工程において検出されたインピーダンス値に基づいて、前記配電線が断線したか否かを判断する第3の工程とを備えており、前記第2の工程においては、三相の配電線のインピーダンス値をそれぞれ検出し、前記第3の工程においては、前記第2の工程によって検出された3つのインピーダンス値がそれぞれ変化したか否かを判別する第3−1の工程と、前記第3−1の工程によってすべてが変化したと判別された場合に、前記配電線のいずれかが断線したと判断する第3−2の工程とを備えていることを特徴とする。さらに、本発明の第4の側面によって提供される断線検出方法は、配電線の断線を検出する断線検出方法であって、前記配電線に配置された電気信号検出器が電気信号を検出する第1の工程と、前記第1の工程において検出された電気信号に基づいて、前記配電線の前記電気信号検出器が配置された位置より下流側のインピーダンス値を検出する第2の工程と、前記第2の工程において検出されたインピーダンス値に基づいて、前記配電線が断線したか否かを判断する第3の工程とを備えており、前記第3の工程においては、前記第2の工程によって検出されたインピーダンス値のリアクタンス成分の微分値を算出する第3−1の工程と、前記算出された微分値が正の値である状態が所定時間以上継続した後に負の値になった場合に、前記配電線が断線したと判断する第3−2の工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、インピーダンス検出手段が配電線の電気信号検出器の配置位置より下流側のインピーダンス値を検出し、断線判断手段が検出されたインピーダンス値に基づいて配電線が断線しているか否かを判断する。配電線が電気信号検出器の配置位置より下流側で断線した場合、検出されたインピーダンス値が特定の変化をするので、断線判断手段はこの特定の変化を検出することで断線したことを判断する。したがって、本発明に係る断線検出装置は、配置された位置より下流側の断線を検出することができる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る断線検出装置を説明するための図である。
図2】a相演算部の構成を説明するための機能ブロック図である。
図3】シミュレーションにおいて演算部で演算されたリアクタンス成分の時系列変化を示す波形図である。
図4】シミュレーションにおいて演算部で演算された抵抗成分の時系列変化を示す波形図である。
図5】判断部が行う断線判断処理を説明するためのフローチャートである。
図6】シミュレーションにおいて演算部で演算された無効電力値の時系列変化を示す波形図である。
図7】シミュレーションにおいて演算部で演算された有効電力値の時系列変化を示す波形図である。
図8】第2実施形態に係る断線検出装置を説明するための図である。
図9】第3実施形態に係る断線検出装置を説明するための図である。
図10】第4実施形態に係る断線検出装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1は、第1実施形態に係る断線検出装置を説明するための図であり、三相の配電線モデルに配置した状態を示している。
【0023】
断線検出装置A1は、配電線の下流側の断線を検出するものである。本実施形態では、断線検出装置A1が、a相の配電線a、b相の配電線bおよびc相の配電線cからなる三相の配電線の断線を検出する場合について説明する。
【0024】
配電線aと配電線bとの間には需要家R11および需要家R21が接続され、配電線bと配電線cとの間には需要家R12および需要家R22が接続され、配電線cと配電線aとの間には需要家R13および需要家R23が接続されている。配電線aには計器用変流器CT1が配置されており、配電線bには計器用変流器CT2が配置されており、配電線cには計器用変流器CT3が配置されている。計器用変流器CT1、CT2,CT3は、それぞれ配置された配電線を流れる電流を検出するものである。計器用変流器CT1、CT2,CT3によってそれぞれ検出された電流信号ia,ib,cは、断線検出装置A1に入力される。なお、計器用変流器CT1、CT2,CT3に代えて、他の電流検出装置(例えば、光電流測定など)を用いてもよい。また、配電線aと配電線bとの間には計器用変圧器PT1が配置されており、配電線bと配電線cとの間には計器用変圧器PT2が配置されており、配電線cと配電線aとの間には計器用変圧器PT3が配置されている。計器用変圧器PT1、PT2,PT3は、それぞれ配電線間の線間電圧を検出するものである。計器用変圧器PT1、PT2,PT3によってそれぞれ検出された電圧信号vab,vbc,caは、断線検出装置A1に入力される。なお、計器用変圧器PT1、PT2,PT3に代えて、他の電圧検出装置(例えば、コンデンサ分圧など)を用いてもよい。計器用変流器CT1、CT2,CT3および計器用変圧器PT1、PT2,PT3の下流側には、遮断器CB1,CB2,CB3が設けられている。遮断器CB1,CB2,CB3は、断線検出装置A1から入力される遮断指令に応じて、それぞれ配電線a,b,cを流れる電流を遮断する。
【0025】
図1においては、配電線aが需要家R11と需要家R21との間で断線することを、スイッチSW1が開放することとして模式的に表している。また、配電線aと配電線bとの間に接続された需要家R21の負荷変動を、需要家R21が電力を使用している状態(スイッチSW2が閉路)から、電力を使用しない状態(スイッチSW2が開放)に変化するとして、模式的に表している。
【0026】
断線検出装置A1は、計器用変流器CT1、CT2,CT3からそれぞれ入力される電流信号ia,ib,c、および、計器用変圧器PT1、PT2,PT3からそれぞれ入力される電圧信号vab,vbc,caに基づいて断線を検出し、通常時は閉路されている遮断器CB1,CB2,CB3を開放させるための遮断指令を出力する。断線検出装置A1は、演算部1、判断部2、遮断指令部3、および報知部4を備えている。
【0027】
演算部1は、入力される電圧信号および電流信号に基づいて、インピーダンス値と有効電力値、無効電力値を演算するものである。演算部1は、相ごとにこれらの値を演算するために、a相の配電線aの各値を演算するa相演算部11、b相の配電線bの各値を演算するb相演算部12、および、c相の配電線cの各値を演算するc相演算部13を備えている。
【0028】
図2は、a相演算部11の構成を説明するための機能ブロック図である。なお、b相演算部12およびc相演算部13の構成もa相演算部11の構成と同様なので、説明を省略する。
【0029】
a相演算部11は、計器用変流器CT1が検出した電流信号iaおよび計器用変圧器PT1が検出した電圧信号vabを入力され、配電線aの計器用変流器CT1および計器用変圧器PT1の配置位置(以下では、「検出位置」とする。)より下流側のインピーダンス値(抵抗成分Raおよびリアクタンス成分Xa)、配電線aによって供給される有効電力値Paおよび無効電力値Qaを演算して、判断部2に出力する。a相演算部11は、A/D変換部111,112、フィルタ部113,114、インピーダンス演算部115、および電力演算部116を備えている。
【0030】
A/D変換部111は、計器用変圧器PT1より入力されるアナログ信号である電圧信号vabをデジタル信号に変換する。すなわち、電圧信号vabを所定のタイミングでサンプリングして、デジタル電圧信号に変換する。A/D変換部112は、計器用変流器CT1より入力されるアナログ信号である電流信号iaをデジタル信号に変換する。すなわち、電流信号iaを所定のタイミングでサンプリングして、デジタル電流信号に変換する。
【0031】
フィルタ部113は、ローパスフィルタであり、A/D変換部111より入力されるデジタル電圧信号から高調波成分を除去して、インピーダンス演算部115および電力演算部116に出力する。フィルタ部114は、ローパスフィルタであり、A/D変換部112より入力されるデジタル電流信号から高調波成分を除去して、インピーダンス演算部115および電力演算部116に出力する。本実施形態では、フィルタ部113,114をデジタルフィルタとして、A/D変換後のデジタル信号にフィルタリングを行っているが、これに限られない。フィルタ部113,114に代えて、または、これに加えて、A/D変換部111,112の前段にアナログフィルタを設けるようにしてもよい。
【0032】
インピーダンス演算部115は、フィルタ部113より入力されるデジタル電圧信号と、フィルタ部114より入力されるデジタル電流信号とから、インピーダンス値(抵抗成分Raおよびリアクタンス成分Xa)を算出して、判断部2に出力する。本実施形態では、デジタル電圧信号とデジタル電流信号とから、a相とb相の線間電圧の電圧実効値Vab、a相の相電流の電流実効値Ia、および、線間電圧と相電流の位相差φを演算し、これらの演算結果から抵抗成分Raおよびリアクタンス成分Xaを演算している。なお、インピーダンス値の演算方法はこれに限られず、微分方程式や積分方程式を用いて演算するようにしてもよい。
【0033】
電力演算部116は、フィルタ部113より入力されるデジタル電圧信号と、フィルタ部114より入力されるデジタル電流信号とから、有効電力値Paおよび無効電力値Qaを演算して、判断部2に出力する。本実施形態では、インピーダンス演算部115と同様に、電圧実効値Vab、電流実効値Ia、および位相差φを演算して、これらの演算結果から有効電力値Paおよび無効電力値Qaを演算している。なお、インピーダンス演算部115が算出した電圧実効値Vab、電流実効値Ia、および位相差φを用いて演算するようにしてもよいし、瞬時値であるデジタル電圧信号とデジタル電流信号とから演算するようにしてもよい。
【0034】
図1に戻って、判断部2は、断線の発生を判断し、断線した配電線の特定を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。判断部2は、a相演算部11より入力される抵抗成分Ra、リアクタンス成分Xa、有効電力値Pa、および無効電力値Qaと、b相演算部12より入力される抵抗成分Rb、リアクタンス成分Xb、有効電力値Pb、および無効電力値Qbと、c相演算部13より入力される抵抗成分Rc、リアクタンス成分Xc、有効電力値Pc、および無効電力値Qcとに基づいて判断を行う。判断部2は、断線発生時のインピーダンスの特徴的な変化を捉えて、断線の発生を判断する。判断部2は、断線が発生したと判断した場合、断線が発生したこと、および、断線が発生した配電線の情報を、遮断指令部3および報知部4に出力する。
【0035】
三相の配電線a,b,cにおいて断線が発生した場合、三相のインピーダンスのリアクタンス成分Xa,Xb,Xcがいずれも大きく変化することが、発明者らの実験により判っている。一方、配電線a,b,cの線間に接続された需要家R11〜R23のいずれかの負荷が大きく変動した場合、負荷が変動した需要家が接続している二相の配電線に対応するリアクタンス成分は大きく変化するが、もう一相の配電線に対応するリアクタンス成分はあまり変化しないことが判っている。
【0036】
図1に示す三相の配電線モデルにおいて、スイッチSW1を開放することで配電線aの断線を模擬し、スイッチSW2を開放することで配電線aと配電線bとの間に接続された需要家R21の負荷変動を模擬して、シミュレーションを行った。図3に示す波形は、当該シミュレーションにおいて演算部1で演算されたリアクタンス成分Xa,Xb,Xcの時系列変化を示している。同図(a)は断線発生時の波形であり、同図(b)は負荷変動時の波形である。各リアクタンス成分Xa,Xb,Xcがいずれも30Ωで安定している状態で、0.05sのときに、スイッチSW1またはSW2を開放している。
【0037】
同図(a)に示すように、スイッチSW1が開放される(すなわち、配電線aで断線が発生する)と、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcがすべて大きく変化している。一方、同図(b)に示すように、スイッチSW2が開放される(すなわち、配電線aと配電線bとの間に接続された需要家R21の負荷変動が発生する)と、リアクタンス成分Xa,Xbは大きく変化しているが、リアクタンス成分Xcはあまり変化していない。
【0038】
したがって、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcの変化をみることで、負荷変動による変化を除外して、断線発生時のインピーダンスの特徴的な変化を捉えることができる。なお、本実施形態での断線判断は10ミリ秒ごとに行っており、この短い時間で2つ以上の需要家で同時に負荷の変動が生じることはほぼありえないので、いずれか1つの需要家での負荷変動を想定している。
【0039】
判断部2は、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcがいずれも変化した場合にのみ、断線が発生したと判断する。本実施形態では、前回の断線判断のタイミングで取得したリアクタンス成分Xa,Xb,Xcとの差をそれぞれ算出し、当該差の絶対値が所定の閾値以上の場合に変化したと判別する。例えば、10ミリ秒ごとに断線判断を行い、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcが前回より2Ω以上増減した場合に当該リアクタンス成分は変化したと判別する。
【0040】
図3(a)においては、0.06sのタイミング時に、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcがいずれも2Ω以上増減しているので、断線が発生したと判断される。一方、図3(b)においては、0.06sのタイミング時にリアクタンス成分Xaが2Ω以上増加しているが、リアクタンス成分Xb,Xcの増減は2Ω未満であり、0.07sのタイミング時にリアクタンス成分Xa, Xbが2Ω以上増減しているが、リアクタンス成分Xcの増減は2Ω未満なので、断線が発生したと判断されない。
【0041】
なお、本実施形態では、10ミリ秒ごとに断線判断を行うようにしているが、断線判断のタイミングはこれに限られない。また、変化したか否かを判別するための増減の閾値も2Ωに限定されない。より繊細な変化を検出するのであれば、断線判断のタイミングの間隔を短くして、閾値をより小さい値にすればよいし、より大きな変化を検出するのであれば、断線判断のタイミングの間隔を長くして、閾値をより大きい値にすればよい。また、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcがいずれも変化したとの判別が複数回継続した場合にのみ断線が発生したと判断するようにしてもよいし、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcがいずれも変化したとの判別が所定時間の間継続した場合にのみ断線が発生したと判断するようにしてもよい。変化したか否かの判別方法は、上述したものに限られない。各リアクタンス成分Xa,Xb,Xcが、それぞれ設定された範囲を超えた場合に、変化したと判別するようにしてもよい。また、各リアクタンス成分Xa,Xb,Xcの微分値が、それぞれ設定された範囲を超えた場合に、変化したと判別するようにしてもよい。
【0042】
また、断線が発生した配電線に対応する抵抗成分が他の配電線に対応する抵抗成分より変化することも、発明者らの実験により判っている。
【0043】
図4に示す波形は、図3で説明したシミュレーションにおいて演算部1で演算された抵抗成分Ra,Rb,Rcの時系列変化を示している。同図(a)は断線発生時の波形であり、同図(b)は負荷変動時の波形である。各抵抗成分Ra,Rb,Rcがいずれも50Ωで安定している状態で、0.05sのときに、スイッチSW1またはSW2を開放している。
【0044】
同図(a)に示すように、スイッチSW1が開放される(すなわち、配電線aで断線が発生する)と、配電線aに対応する抵抗成分Raが、配電線bに対応する抵抗成分Rbおよび配電線cに対応する抵抗成分Rcより、大きく変化している。
【0045】
したがって、抵抗成分Ra,Rb,Rcの変化をみることで、断線が発生した配電線を特定することができる。判断部2は、断線が発生したと判断した場合に、抵抗成分Ra,Rb,Rcのうち一番変化が大きかった相の配電線が断線したと判断する。本実施形態では、前回の断線判断のタイミングで取得した抵抗成分Ra,Rb,Rcとの差をそれぞれ算出し、当該差の絶対値が一番大きい場合に一番変化が大きかったと判断する。
【0046】
図4(a)においては、抵抗成分Raの0.06sのタイミング時(断線が発生したと判断されたタイミング時)と0.05Sのタイミング時との差の絶対値が、抵抗成分Rb,Rcのものより大きいので、抵抗成分Raの変化が一番大きかったと判断され、抵抗成分Raに対応するa相の配電線aが断線したと判断される。
【0047】
図5は、判断部2が行う断線判断処理を説明するためのフローチャートである。断線判断処理は、断線検出装置A1が起動された時に実行を開始する。
【0048】
まず、演算部1で演算された演算値が取得される(S1)。本実施形態では、10ミリ秒ごとに断線判断を行うようにしているので、演算値の取得を10ミリ秒ごととしている。
【0049】
次に、リアクタンス成分Xaが変化したか否かが判別される(S2)。リアクタンス成分Xaが変化したと判別された場合(S2:YES)、リアクタンス成分Xbが変化したか否かが判別される(S3)。リアクタンス成分Xbが変化したと判別された場合(S3:YES)、リアクタンス成分Xcが変化したか否かが判別される(S4)。リアクタンス成分Xcが変化したと判別された場合(S4:YES)、ステップS5に進む。ステップS2、S3、S4において、変化しなかったと判別された場合(S2:NO、S3:NO、または、S4:NO)、断線が発生していないと判断されて、ステップS1に戻る。つまり、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcのいずれもが変化したと判別された場合にのみ、断線が発生したと判断されて、ステップS5〜S9の断線が発生した配電線を特定するステップに進む。
【0050】
次に、抵抗成分Raの変化が抵抗成分Rb,Rcの変化より大きかったか否かが判別される(S5)。抵抗成分Raの変化が最大の場合(S5:YES)、a相の配電線aで断線が発生したと判断され、その旨の情報が出力されて(S6)、断線判断処理は終了する。抵抗成分Raの変化が最大でない場合(S5:NO)、抵抗成分Rbの変化が抵抗成分Ra,Rcの変化より大きかったか否かが判別される(S7)。抵抗成分Rbの変化が最大の場合(S7:YES)、b相の配電線bで断線が発生したと判断され、その旨の情報が出力されて(S8)、断線判断処理は終了する。抵抗成分Rbの変化が最大でない場合(S7:NO)、抵抗成分Rcの変化が最大になるので、c相の配電線cで断線が発生したと判断され、その旨の情報が出力されて(S9)、断線判断処理は終了する。つまり、変化が最大である抵抗成分に対応する配電線で断線が発生したことを示す情報を出力して、断線判断処理は終了する。なお、断線判断処理のフローチャートは、図5に示したものに限定されない。
【0051】
また、三相の配電線a,b,cにおいて断線が発生した場合、三相の無効電力値Qa,Qb,Qcがいずれも大きく変化することも、発明者らの実験により判っている。一方、配電線a,b,cの線間に接続された需要家R11〜R23のいずれかの負荷が大きく変動した場合、負荷が変動した需要家が接続している二相の配電線に対応する無効電力値は大きく変化するが、もう一相の配電線に対応する無効電力値はあまり変化しないことも判っている。
【0052】
図6に示す波形は、図3で説明したシミュレーションにおいて演算部1で演算された無効電力値Qa,Qb,Qcの時系列変化を示している。同図(a)は断線発生時の波形であり、同図(b)は負荷変動時の波形である。各無効電力値Qa,Qb,Qcがいずれも650varで安定している状態で、0.05sのときに、スイッチSW1またはSW2を開放している。
【0053】
同図(a)に示すように、スイッチSW1が開放される(すなわち、配電線aで断線が発生する)と、無効電力値Qa,Qb,Qcがすべて大きく変化している。一方、同図(b)に示すように、スイッチSW2が開放される(すなわち、配電線aと配電線bとの間に接続された需要家R21の負荷変動が発生する)と、無効電力値Qa,Qbは大きく変化しているが、無効電力値Qcはあまり変化していない。
【0054】
したがって、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcの変化による断線の判断に加えて、さらに、無効電力値Qa,Qb,Qcの変化による断線の判断を行うようにしてもよい。具体的には、図5に示すフローチャートのステップS4で「YES」の場合にステップS5に進む前に、無効電力値Qa,Qb,Qcのすべてが変化したか否かを判別するステップを追加することになる。無効電力値Qa,Qb,Qcのすべてが変化した場合はステップS5に進んで、いずれか一つでも変化しなかった場合は、ステップS1に戻るようにすればよい。
【0055】
各無効電力値Qa,Qb,Qcが変化したか否かの判別は、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcの場合の判別と同様の方法で行ってもよいし、他の方法で判別するようにしてもよい。例えば、10ミリ秒ごとに断線判断を行い、無効電力値Qa,Qb,Qcが前回より100var以上増減した場合に当該リアクタンス成分は変化したと判別してもよい。
【0056】
図6(a)においては、0.05sのタイミング時(リアクタンス成分Xa,Xb,Xcの変化によって断線が発生したと判断されたタイミング時)に、無効電力値Qa,Qb,Qcがいずれも100var以上増減しているので、断線が発生したと判断される。
【0057】
なお、図6(b)においては、0.06sのタイミング時および0.07Sのタイミング時において、無効電力値Qbが100var以上減少しているが、無効電力値Qa,Qcの増減はそれぞれ100var未満なので、断線が発生したと判断されない。したがって、リアクタンス成分Xa,Xb,Xcの変化による断線の判断を行うことなく、無効電力値Qa,Qb,Qcの変化による断線の判断のみを行うようにしてもよい。
【0058】
また、断線が発生した配電線に対応する有効電力値が他の配電線に対応する有効電力値より変化することも、発明者らの実験により判っている。
【0059】
図7に示す波形は、図3で説明したシミュレーションにおいて演算部1で演算された有効電力値Pa,Pb,Pcの時系列変化を示している。同図(a)は断線発生時の波形であり、同図(b)は負荷変動時の波形である。各有効電力値Pa,Pb,Pcがいずれも1000Wで安定している状態で、0.05sのときに、スイッチSW1またはSW2を開放している。
【0060】
同図(a)に示すように、スイッチSW1が開放される(すなわち、配電線aで断線が発生する)と、配電線aに対応する有効電力値Paが、配電線bに対応する有効電力値Pbおよび配電線cに対応する有効電力値Pcより、大きく変化している。
【0061】
したがって、抵抗成分Ra,Rb,Rcの変化による断線配電線の特定に代えて、有効電力値Pa,Pb,Pcの変化による断線配電線の特定を行うようにしてもよい。具体的には、図5に示すフローチャートのステップS5で有効電力値Paの変化が最大であるか否かを判別するようにし、ステップS7で有効電力値Pbの変化が最大であるか否かを判別するように変更すればよい。
【0062】
各有効電力値Pa,Pb,Pcのいずれの変化が最大であるかの判別は、抵抗成分Ra,Rb,Rcの場合の判別と同様の方法で行ってもよいし、他の方法で判別するようにしてもよい。例えば、前回の断線判断のタイミングで取得した有効電力値Pa,Pb,Pcとの差をそれぞれ算出し、当該差の絶対値が一番大きい場合に一番変化が大きかったと判別してもよい。
【0063】
図7(a)においては、有効電力値Paの0.06sのタイミング時(断線が発生したと判断されたタイミング時)と0.05Sのタイミング時との差の絶対値が、有効電力値Pb,Pcのものより大きいので、有効電力値Paの変化が一番大きかったと判断され、有効電力値Paに対応するa相の配電線aが断線したと判断される。
【0064】
なお、判断部2における断線発生の判断方法、および、断線が発生した配電線の特定方法は、上述したものに限定されない。判断部2は、断線発生時のインピーダンスの特徴的な変化を捉えて、断線の発生を判断できればよい。
【0065】
図1に戻って、遮断指令部3は、判断部2より入力される情報に基づいて、遮断器CB1、CB2、CB3に遮断指令を出力するものである。遮断指令部3は、配電線aで断線が発生したことを示す情報が入力された場合、遮断器CB1に遮断指令を出力し、遮断器CB1を開放させる。同様に、配電線bで断線が発生したことを示す情報が入力された場合、遮断器CB2に遮断指令を出力して遮断器CB2を開放させ、配電線cで断線が発生したことを示す情報が入力された場合、遮断器CB3に遮断指令を出力して遮断器CB3を開放させる。
【0066】
報知部4は、判断部2より入力される情報に基づいて、断線が発生したこと、および、断線が発生した配電線の情報を報知するものである。本実施形態では、報知部4はモニタおよびブザーであり、断線が発生したことをブザーで警告し、断線が発生した配電線をモニタ画面に表示する。なお、音声で断線が発生した配電線を知らせるようにしてもよい。
【0067】
なお、断線検出装置A1の各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを断線検出装置A1として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0068】
本実施形態において、a相演算部11のインピーダンス演算部115は配電線aの検出位置より下流側のインピーダンス値(抵抗成分Raおよびリアクタンス成分Xa)を演算する。また、b相演算部12の図示しないインピーダンス演算部が配電線bの検出位置より下流側のインピーダンス値(抵抗成分Rbおよびリアクタンス成分Xb)を演算し、c相演算部13の図示しないインピーダンス演算部が配電線cの検出位置より下流側のインピーダンス値(抵抗成分Rcおよびリアクタンス成分Xc)を演算する。判断部2は、演算されたリアクタンス成分Xa,Xb,Xcがいずれも大きく変化した場合に、検出位置より下流側で断線が発生したと判断する。したがって、断線検出装置A1は、検出位置より下流側の断線を検出することができる。
【0069】
リアクタンス成分Xa,Xb,Xcは、断線が発生した場合にすべてが大きく変化するが、負荷変動の場合にはいずれか2つが大きく変化して、1つはあまり変化しないという特性がある。したがって、断線検出装置A1は、負荷変動と区別して断線を検出することができ、負荷変動による誤検出を抑制することができる。
【0070】
また、判断部2は、断線が発生したと判断した場合に、抵抗成分Ra,Rb,Rcのうち一番変化が大きかった相の配電線が断線したと判断する。断線が発生した配電線に対応する抵抗成分が一番大きく変化するという特性があるので、断線検出装置A1は、断線が発生した配電線を適切に特定することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、判断部2が演算部1から抵抗成分Ra,Rb,Rc、リアクタンス成分Xa,Xb,Xc、有効電力値Pa,Pb,Pc、および無効電力値Qa,Qb,Qcのすべてを入力される場合について説明したが、これに限られない。判断部2での判断に必要でないものは入力されなくてもよいし、演算部1で算出しなくてもよい。例えば、抵抗成分Ra,Rb,Rcの変化で断線配電線の特定を行う場合は、有効電力値Pa,Pb,Pcの算出をしなくてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、判断部2が断線判断に加えて、断線した配電線の特定まで行う場合について説明したが、これに限られない。例えば、断線が発生した場合に、すべての遮断器CB1、CB2、CB3を開放させて、配電線a,b,cの電流をすべて遮断する場合には、断線した配電線を特定する必要がない。したがって、判断部2が断線判断だけを行うようにしてもよい。この場合、判断部2は断線が発生したことを示す情報を遮断指令部3および報知部4に出力し、遮断指令部3は遮断器CB1、CB2、CB3に遮断指令を出力して遮断器CB1、CB2、CB3を開放させ、報知部4は断線が発生したことを報知する。
【0073】
本実施形態では、計器用変圧器PT1、PT2,PT3がそれぞれ配電線間の線間電圧を検出する場合について説明したが、計器用変圧器PT1、PT2,PT3がそれぞれ配電線の相電圧を検出するようにしてもよい。
【0074】
実際の配電線においては系統周波数(電力系統の周波数)が変化するので、演算部1で算出される各値の精度が悪くなる場合がある。演算部1で算出される各値の精度を改善した場合を、第2実施形態として以下に説明する。
【0075】
図8は、第2実施形態に係る断線検出装置を説明するための図である。同図において、第1実施形態に係る断線検出装置A1(図1、2参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0076】
図8に示す断線検出装置A2は、周波数検出部5を備えている点と、ローパスフィルタであるフィルタ部113,114に代えて、バンドパスフィルタであるフィルタ部113’、114’を備えている点で、第1実施形態に係る断線検出装置A1と異なる。
【0077】
周波数検出部5は、系統周波数を検出するものである。周波数検出部5は、計器用変圧器PT1より入力される電圧信号vabに基づいて、系統周波数を検出する。周波数検出の方法は限定されず、PLL方式であってもよいし、ゼロクロス点間カウント方式であってもよい。周波数検出部5は、検出した系統周波数をフィルタ部113’、114’に出力する。
【0078】
フィルタ部113’,114’は、通過帯域を変更することができるバンドパスフィルタである。フィルタ部113’,114’は、周波数検出部5より入力される系統周波数を、通過帯域の中心周波数に設定する。フィルタ部113’は、A/D変換部111より入力されるデジタル電圧信号から系統周波数成分以外の周波数成分を除去して、インピーダンス演算部115および電力演算部116に出力する。フィルタ部114’は、A/D変換部112より入力されるデジタル電流信号から系統周波数成分以外の周波数成分を除去して、インピーダンス演算部115および電力演算部116に出力する。
【0079】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、インピーダンス演算部115および電力演算部116が系統周波数成分以外の周波数成分を除去した各デジタル信号に基づいて各値を演算するので、演算部1で算出される各値の精度が良くなる。
【0080】
なお、フィルタ部113’,114’を適応型デジタルフィルタとして、通過帯域の中心周波数を、入力される各デジタル信号の基本波周波数に追従させるようにしてもよい。
【0081】
上記第1および第2実施形態では、断線発生時の三相のインピーダンス値の特徴的な変化を捉えて断線を検出する場合について説明したが、これに限られない。相ごとのインピーダンス値の特徴的な変化を捉えて、当該相の断線を検出するようにしてもよい。相ごとに断線を検出する場合を、第3実施形態として以下に説明する。
【0082】
図9は、第3実施形態に係る断線検出装置を説明するための図である。同図において、第1実施形態に係る断線検出装置A1(図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0083】
図9に示す断線検出装置A3は、判断部2’が相ごとに断線の発生の判断を行う点で、第1実施形態に係る断線検出装置A1と異なる。
【0084】
判断部2’は、a相の配電線aの断線の発生を判断するa相判断部21、b相の配電線bの断線の発生を判断するb相判断部22、および、c相の配電線cの断線の発生を判断するc相判断部23を備えている。a相判断部21は、a相演算部11より入力される抵抗成分Ra、リアクタンス成分Xa、有効電力値Pa、および無効電力値Qaに基づいて判断を行う。a相判断部21は、断線発生時のインピーダンスの特徴的な変化を捉えて、断線の発生を判断する。a相判断部21は、断線が発生したと判断した場合、配電線aで断線が発生したことを示す情報を、遮断指令部3および報知部4に出力する。なお、b相判断部22およびc相判断部23の構成もa相判断部21の構成と同様なので、説明を省略する。
【0085】
図3(a)のリアクタンス成分Xaの波形が示すように、断線が発生した配電線に対応するリアクタンス成分の波形にはオーバーシュートが発生するが、その他の波形にはオーバーシュートが発生しない。また、図3(b)の各波形が示すように、負荷変動の場合はオーバーシュートが発生しない。したがって、各リアクタンス成分Xa,Xb,Xcの波形にオーバーシュートが発生した場合、当該リアクタンス成分に対応する配電線で断線が発生したと判断することができる。a相判断部21は、リアクタンス成分Xaの波形にオーバーシュートが発生した場合に、配電線aで断線が発生したと判断する。本実施形態では、リアクタンス成分Xaの微分値が正の値である状態が所定時間以上継続した後に負の値になった場合(または、微分値が負の値である状態が所定時間以上継続した後に正の値になった場合)に、オーバーシュートが発生したと判断する。図3(a)においては、リアクタンス成分Xaが0.05sのタイミング時から上昇し(すなわち、微分値が正の値となっており)、0.057s頃に下降に転じている(すなわち、微分値が負の値になった)ので、オーバーシュートが発生したと判断され、配電線aで断線が発生したと判断される。なお、オーバーシュートが2回発生した場合に断線が発生したと判断するようにしてもよい。
【0086】
なお、判断部2’における断線発生の判断方法は、上述したものに限定されない。判断部2’は、断線発生時のインピーダンスの特徴的な変化を捉えて、断線の発生を判断できればよい。例えば、断線発生時のリアクタンス成分の時系列変化の波形(図3(a)参照)をあらかじめ記録しておいて、リアクタンス成分の時系列変化の波形を記録された断線発生時の波形とパターンマッチングなどの手法で比較して、同様の波形であれば断線が発生したと判断するようにしてもよい。
【0087】
第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0088】
上記第1〜第3実施形態においては、三相の配電線a,b,cでの断線を検出する場合について説明したが、これに限られない。本発明は、単相の配電線での断線を検出する場合にも用いることができる。単相の配電線での断線を検出する場合を、第4実施形態として以下に説明する。
【0089】
図10は、第4実施形態に係る断線検出装置を説明するための図である。同図において、第1実施形態に係る断線検出装置A1(図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0090】
図10に示す断線検出装置A4は、単相の配電線dに配置されている点と、演算部1’および判断部2”が単相に対応している点で、第1実施形態に係る断線検出装置A1と異なる。
【0091】
演算部1’は、a相演算部11(図2参照)と同様の構成であり、計器用変流器CTが検出した電流信号iおよび計器用変圧器PTが検出した電圧信号vを入力され、配電線dの検出位置より下流側のインピーダンス値(抵抗成分Rおよびリアクタンス成分X)、配電線dによって供給される有効電力値Pおよび無効電力値Qを演算して、判断部2”に出力する。判断部2”は、第3実施形態に係るa相判断部21(図9参照)と同様の構成であり、演算部1’より抵抗成分R、リアクタンス成分X、有効電力値P、および無効電力値Qを入力されて、断線発生時のインピーダンスの特徴的な変化に基づいて断線の発生を判断し、断線が発生したことを示す情報を遮断指令部3および報知部4に出力する。
【0092】
第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0093】
本発明に係る断線検出装置および断線検出方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る断線検出装置および断線検出方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0094】
A1,A2,A3,A4 断線検出装置
1,1’ 演算部
11 a相演算部
111,112 A/D変換部
113,114,113’,114’ フィルタ部
115 インピーダンス演算部(インピーダンス検出手段)
116 電力演算部(無効電力検出手段、有効電力検出手段)
12 b相演算部
13 c相演算部
2,2’,2” 判断部(断線判断手段、判別手段、判断手段、第2の判別手段、断線相検出手段、微分値算出手段)
21 a相判断部
22 b相判断部
23 c相判断部
3 遮断指令部
4 報知部
5 周波数検出部
a,b,c 配電線
CT1、CT2,CT3 計器用変流器(電気信号検出器)
PT1、PT2,PT3 計器用変圧器(電気信号検出器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10