(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、
図6(a)、(b)に示すように、ガラスレンズ3を筒状のレンズ枠6の内側に圧入するとともに、レンズ枠6を筒状のホルダ5の内側に圧入したレンズユニット100を検討している。この場合、圧入により、ガラスレンズ3、レンズ枠6またはホルダ5に過大な応力が加わるおそれがある。また、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3は、求められる機能が異なることから、異なる材質が用いられることが多く、その場合、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3の温度膨張係数が相違することになる。例えば、ホルダ5をアルミニウム等の金属製とし、レンズ枠6を樹脂製とすると、ガラスレンズ3、レンズ枠6、およびホルダ5の熱膨張係数は、以下の関係
レンズ枠6>ホルダ5>ガラスレンズ3
となる。その結果、
図6(a)、(b)に示すレンズユニット100においても、特許文献1に記載の構成で発生する問題点と同様、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3の温度膨張係数の違いによってホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3に過大な応力が加わって損傷するという問題がある。
【0005】
具体的には、温度変化が発生すると、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81において、ガラスレンズ3とレンズ枠6との温度膨張係数の違いによって応力が発生する。また、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82においては、レンズ枠6とホルダ5の温度膨張係数の違いによって応力が発生する。その結果、光軸Lに対して直交する方向からみたときに第1圧入部分81と第2圧入部分82とにおいて光軸方向で重なっている部分では、第1圧入部分81での応力と第2圧入部分82での応力が合成されてしまう。このため、
図7にシミュレーション結果を示すように、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3の特定個所に応力が集中して加わり、特定個所では応力限界値を超えるという事態が発生する。ここで、
図7(a)には、温度変化に伴ってホルダ5に加わる応力の最大値を実線La5で示し、ホルダ5の応力限界値を一点鎖線Lb5で示してある。
図7(b)には、温度変化に伴ってレンズ枠6に加わる応力の最大値を実線La6で示し、レンズ枠6の応力限界値を一点鎖線Lb6で示してある。
図7(c)には、温度変化に伴ってガラスレンズ3に加わる応力の最大値を実線La3で示し、ガラスレンズ3の応力限界値を一点鎖線Lb3で示してある。これらの結果からわかるように、温度が低下すると、ガラスレンズ3に加わる応力が応力限界値を超えるとともに(
図7(c)参照)、レンズ枠6に加わる応力が応力限界値を超える値となってしまう(
図7(b)参照)。
【0006】
一方、圧入を採用せずに単なる挿入とする方法もあるが、この場合、公差に起因するガタ付きにより、光軸方向に垂直な平面上での偏芯等が発生し、光学性能を損なってしまう。それ故、軽薄短小で高性能なレンズユニットを供給するためには、レンズや、レンズを保持するレンズ枠をホルダに圧入する構造を採用することが好ましい。
【0007】
なお、
図6(a)、(b)に示すレンズユニットは、本発明に対する参考例であり、従来構造ではない。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ガラスレンズをレンズ枠の内側に圧入するとともに、レンズ枠をホルダの内側に圧入した構造を採用した場合において、圧入時にガラスレンズ、レンズ枠およびホルダに過大な圧力が加わることを抑制するとともに、温度変化が発生した際にガラスレンズ、レンズ枠およびホルダの特定箇所への応力の集中を緩和することのできるレンズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るレンズユニットは、ガラスレンズと、該ガラスレンズが内側に圧入された筒状のレンズ枠と、該レンズ枠が内側に圧入された筒状のホルダと、を有し、前記ガラスレンズの前記レンズ枠に対する第1圧入部分と、前記レンズ枠の前記ホルダに対する第2圧入部分とは、光軸に対して直交する方向からみたとき、光軸方向でずれて径方向で重なっていない
位置に設けられ、前記第2圧入部分は、前記第1圧入部分より光軸方向の像側に位置し、前記レンズ枠は、内周面が前記第1圧入部分とされる筒状のレンズ保持部と、外周面が前記第2圧入部分とされる像側筒部と、を備え、前記像側筒部の内径寸法は、前記レンズ保持部の内径寸法より小であることを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るレンズユニットは、ガラスレンズと、該ガラスレンズが内側に圧入された筒状のレンズ枠と、該レンズ枠が内側に圧入された筒状のホルダと、を有し、前記ガラスレンズの前記レンズ枠に対する第1圧入部分と、前記レンズ枠の前記ホルダに対する第2圧入部分とは、光軸に対して直交する方向からみたとき、光軸方向でずれて径方向で重なっていない位置に設けられ、前記第2圧入部分は、前記第1圧入部分より光軸方向の物体側に位置し、前記レンズ枠は、内周面が前記第1圧入部分とされる筒状のレンズ保持部と、外周面が前記第2圧入部分とされる物体側筒部と、を備え、前記物体側筒部の内径寸法は、前記レンズ保持部の内径寸法より大であり、前記レンズ枠の前記レンズ保持部と前記物体側筒部との間には、底部が光軸方向の像側に湾曲した溝が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明
では、ガラスレンズのレンズ枠に対する第1圧入部分と、レンズ枠のホルダに対する第2圧入部分とは、光軸に対して直交する方向からみたとき、光軸方向でずれて径方向で重なっていないため、圧入時、ガラスレンズ、レンズ枠およびホルダに過大な圧力が加わることを抑制することができる。また、温度変化が発生した際、ガラスレンズとレンズ枠との温度膨張係数の違いに起因する第1圧入部分での応力と、レンズ枠とホルダとの温度膨張係数の違いに起因する第2圧入部分での応力とが合成されにくいので、ホルダ、レンズ枠およびガラスレンズの特定個所に応力が集中することを緩和することができる。それ故、ホルダ、レンズ枠およびガラスレンズが応力の集中によって損傷することを抑制することができる。
【0012】
また、本発明では、前記第2圧入部分は、前記第1圧入部分より光軸方向の像側に位置し、前記レンズ枠は、内周面が前記第1圧入部分とされる筒状のレンズ保持部と、外周面が前記第2圧入部分とされる像側筒部と、を備え、前記像側筒部の内径寸法は、前記レンズ保持部の内径寸法より小である。このため、レンズ枠に極端に強度が低い個所が発生しないとともに、応力が分散する。このため、応力に起因するレンズ枠の損傷を防止することができる。あるいは、本発明では、前記第2圧入部分は、第1圧入部分より光軸方向の物体側に位置し、前記レンズ枠は、内周面が前記第1圧入部分とされる筒状のレンズ保持部と、外周面が前記第2圧入部分とされる物体側筒部と、を備え、前記物体側筒部の内径寸法は、前記レンズ保持部の内径寸法より大であり、前記レンズ枠の前記レンズ保持部と前記物体側筒部との間には、底部が光軸方向の像側に湾曲した溝が形成されている。このため、物体側筒部が径方向に変形しやすいので、第2圧入部分で発生した応力を物体側筒部の変形によって吸収することができる。
【0013】
本発明
は、前記ガラスレンズ、前記レンズ枠、および前記ホルダの材質が全て相違する場合に適用すると効果的である。ガラスレンズ、レンズ枠、およびホルダの材質が全て相違すると、第1圧入部分での応力と第2圧入部分での応力とが合成される結果、ホルダ、レンズ枠およびガラスレンズの特定個所に大きな応力が集中しようとするが、本発明によれば、かかる応力の集中を抑制することができる。
【0014】
本発明
は、前記ガラスレンズ、前記レンズ枠、および前記ホルダの熱膨張係数が、以下の関係
前記レンズ枠>前記ホルダ>前記ガラスレンズ
を有している場合に適用すると効果的である。ガラスレンズ、レンズ枠、およびホルダの熱膨張係数が、上記の関係を有する場合、レンズ枠とガラスレンズとの温度膨張係数の差
が大きく、第1圧入部分で大きな応力が発生するが、このような場合でも、本発明によれば、ホルダ、レンズ枠およびガラスレンズの特定個所に大きな応力が集中しようとするのを抑制することができる。
【0015】
本発明において、前記レンズ枠は、光軸方向の物体側の端面および光軸方向の像側の端面のうちの少なくとも一方には光軸に直交する面が形成されており、当該面は、前記ホルダの内側に搭載された光学部品、あるいは前記ホルダに当接していることが好ましい。かかる構成によれば、レンズ枠の傾き(ガラスレンズの光軸の傾き)を、ホルダの内側に搭載された光学部品、あるいはホルダとレンズ枠との当接によって防止することができる。
【0016】
本発明において、前記レンズ枠は、前記第2圧入部分のみで前記ホルダに接していることが好ましい。かかる構成によれば、第2圧入部分以外でレンズ枠とホルダとの間に応力が発生することを防止することができる。
【0017】
本発明において、前記レンズ枠は、樹脂製であり、前記ガラスレンズの光軸方向の物体側の面には、前記レンズ枠に対するカシメ部分が被さっていることが好ましい。かかる構成によれば、ガラスレンズをレンズ枠に確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、ガラスレンズのレンズ枠に対する第1圧入部分と、レンズ枠のホルダに対する第2圧入部分とは、光軸に対して直交する方向からみたとき、光軸方向でずれて径方向で重なっていないため、圧入時、ガラスレンズ、レンズ枠およびホルダに過大な圧力が加わることを抑制することができる。また、温度変化が発生した際、ガラスレンズとレンズ枠との温度膨張係数の違いに起因する第1圧入部分での応力と、レンズ枠とホルダとの温度膨張係数の違いに起因する第2圧入部分での応力とが合成されにくいので、ホルダ、レンズ枠およびガラスレンズの特定個所に応力が集中することを緩和することができる。それ故、ホルダ、レンズ枠およびガラスレンズが応力の集中によって損傷することを抑制することができる。
また、第2圧入部分が第1圧入部分より光軸方向の像側に位置し、レンズ枠は、内周面が第1圧入部分とされる筒状のレンズ保持部と、外周面が第2圧入部分とされる像側筒部と、を備え、像側筒部の内径寸法は、レンズ保持部の内径寸法より小である構成を採用することにより、レンズ枠に極端に強度が低い個所が発生せず、応力が分散するため、応力に起因するレンズ枠の損傷を防止することができる。あるいは、第2圧入部分が第1圧入部分より光軸方向の物体側に位置し、レンズ枠は、内周面が第1圧入部分とされる筒状のレンズ保持部と、外周面が第2圧入部分とされる物体側筒部と、を備え、物体側筒部の内径寸法はレンズ保持部の内径寸法より大であり、レンズ枠のレンズ保持部と物体側筒部との間には、底部が光軸方向の像側に湾曲した溝が形成されている構成を採用することにより、物体側筒部が径方向に変形しやすいため、第2圧入部分で発生した応力を物体側筒部の変形によって吸収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明を適用したレンズユニットを説明する。以下の説明において、
図6を参照して説明した構成との対応が分かりやすいように、対応する部分には同一の符号を付して説明する。
【0021】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るレンズユニットの説明図であり、
図1(a)、(b)、(c)は、本発明の実施の形態1に係るレンズユニットの断面図、本発明の実施の形態1に係るレンズユニットのガラスレンズ周辺の構成を拡大して示す断面図、および本発明の比較例に係るレンズユニットのガラスレンズ周辺の別の構成を拡大して示す断面図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係るレンズユニットの温度変化に伴う各部材に加わる最大応力のシミュレーション結果を示すグラフであり、
図2(a)、(b)、(c)は、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3に加わる最大応力を示すグラフである。
図3は、本発明の比較例に係るレンズユニットの温度変化に伴う各部材に加わる最大応力のシミュレーション結果を示すグラフであり、
図3(a)、(b)、(c)は、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3に加わる最大応力を示すグラフである。なお、
図2(a)、
図3(a)、および後述する
図5(a)には、ホルダ5に加わる応力の最大値を実線La5で示し、ホルダ5の応力限界値を一点鎖線Lb5で示してある。
図2(b)、
図3(b)および後述する
図5(b)には、温度変化に伴ってレンズ枠6に加わる応力の最大値を実線La6で示し、レンズ枠6の応力限界値を一点鎖線Lb6で示してある。
図2(c)、
図3(c)および後述する
図5(c)には、温度変化に伴ってガラスレンズ3に加わる応力の最大値を実線La3で示し、ガラスレンズ3の応力限界値を一点鎖線Lb3で示してある。なお、最大応力のシミュレーションの際には、温度による許容応力の変化、あるいは、弾性率の変化がないものとして計算をしているが、これにより、本説明における主旨や意味あいが現実から大きく逸脱することはない。
【0022】
(レンズユニットの全体構成)
図1(a)、(b)に示すように、本形態のレンズユニット100は、光軸Lに沿って配置された複数のレンズ(レンズ1、2、4およびガラスレンズ3)を有しており、これらのレンズは、筒状のホルダ5に保持されている。本形態において、レンズ1、2、4およびガラスレンズ3は、画角が130〜190°の広角レンズを構成している。
【0023】
ホルダ5は、アルミニウム等の金属製であり、ホルダ5の内側には、像側L2から物体側L1に向かって、小径部51、小径部51より内径が大の中径部52、および中径部52より内径が大の大径部53が順に形成されている。このため、小径部51と中径部52との間には、物体側L1に向く段部56が形成され、中径部52と大径部53との間には、物体側L1に向く段部57が形成されている。本形態において、段部56、57はいずれも、光軸Lに直交する面である。
【0024】
ホルダ5は最も物体側L1に大径のフランジ部58を有しており、フランジ部58の外周端よりの位置から物体側L1に向けて環状凸部59が形成されている。ホルダ5は像側L2に底板部54を有しており、かかる底板部54には、光を撮像素子(図示せず)に導く開口部54bが形成されている。
【0025】
本形態において、レンズ1(第1群)は、負のパワーをもつガラスレンズからなる。具体的には、レンズ1は、物体側L1のレンズ面1aが凸状の球面であり、像側L2のレンズ面1bが凹状の球面である。レンズ1は、ホルダ5の環状凸部59の内側に嵌っている。
【0026】
レンズ2(第2群)は、負のパワーをもつプラスチックレンズからなる。具体的には、レンズ2は、物体側L1のレンズ面2aが小さなパワーを有する凸面あるいは凹面からなり、像側L2のレンズ面2bは凹状の球面あるいは非球面である。レンズ2は、ホルダ5の大径部53の内側に嵌っている。
【0027】
ガラスレンズ3(第3群)は、正のパワーを有している。具体的には、ガラスレンズ3は、物体側L1のレンズ面3aが凸状の球面であり、像側L2のレンズ面3bも凸状の球面である。本形態において、ガラスレンズ3は、筒状の樹脂製のレンズ枠6の内側に圧入され、かかるレンズ枠6がホルダ5の中径部52と大径部53とに跨るように配置されている。
【0028】
本形態において、レンズ枠6は、光軸方向の中央部分に内側にレンズを保持するレンズ保持部60と、レンズ保持部60から光軸方向の像側L2に突出した像側筒部61と、レンズ保持部60から光軸方向の物体側L1に突出した物体側筒部62とを有している。また、レンズ枠6は、像側筒部61の内側に、光軸方向の物体側L1に斜面を向けるテーパ面を備えた受け部63を備えており、ガラスレンズ3の像側L2の面の外周部分は受け部63によって像側L2で支持されている。このように構成したレンズ枠6では、像側筒部61の内径寸法、レンズ保持部60の内径寸法、および物体側筒部62の内径寸法は、以下の関係
像側筒部61の内径寸法<レンズ保持部60の内径寸法<物体側筒部62の内径寸法
を有している。
【0029】
また、レンズ枠6において、物体側L1の面には、レンズ保持部60と物体側筒部62との間に周方向に延在する溝68が形成されており、かかる溝68の底部は、像側L2に湾曲した凹曲面になっている。また、レンズ保持部60の物体側L1の縁には、熱カシメ加工によりガラスレンズ3の物体側L1のレンズ面3aの外周端部に被さるカシメ部分66が形成されており、ガラスレンズ3はカシメ部分66によって物体側L1で支持されている。ここで、物体側筒部62の内径寸法は、レンズ保持部60の内径寸法より大であるため、熱溶融によりカシメ部分66を形成する際、加熱ヘッドが物体側筒部62の内側に容易に進入することができる。
【0030】
本形態では、レンズ枠6の像側L2の端面(像側筒部61の端面)の外周側には、周方向に延在した凸部69、あるいは周方向に離間した複数の凸部69が形成されており、かかる凸部69の像側L2の面は、光軸方向に直交する同一平面内に位置する。また、レンズ枠6の物体側L1の端面(物体側筒部62の物体側L1の端面)は、光軸方向に直交する同一平面内に位置する。
【0031】
なお、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する圧入構造やレンズ枠6のさらなる詳細な構成については、
図1(b)を参照して後述する。
【0032】
レンズ4(第4群)は、第1レンズ41の凹面と第2レンズ42の凸面とが接着剤により接合された接合レンズである。第1レンズ41は、負のパワーを有するプラスチックレンズであり、第2レンズ42は、正のパワーを有するプラスチックレンズである。より具体的には、第1レンズ41は、物体側L1のレンズ面41aが凸状の球面または非球面であり、像側L2のレンズ面41bは凹状の球面または非球面である。第2レンズ42は、物体側L1のレンズ面42aが凸状の球面または非球面であり、像側L2のレンズ面42bは凸状の球面または非球面である。
【0033】
ここで、第1レンズ41の像側L2の面では、レンズ面41bの外周部分が光軸Lに直交する環状の平坦面41eになっている。これに対して、第1レンズ41の物体側L1の面では、レンズ面41aの外周部分に光軸Lに直交する環状の平坦面41fが形成されており、レンズ面41aの中心部分は、平坦面41fと概ね同一平面上に位置する。
【0034】
(レンズユニット100の製造方法)
本形態のレンズユニット100を製造するにあたっては、以下に説明するように、ホルダ5の内側にレンズ4、ガラスレンズ3、レンズ2およびレンズ1を順に配置した後、外枠7でレンズ1を軸方向の像側L2の方向に押さえて、レンズ1、2、4およびガラスレンズ3をホルダ5の内部に固定する。
【0035】
より具体的には、まず、ホルダ5の内側にレンズ4を圧入固定する。その結果、レンズ4は、適正な姿勢でホルダ5の内側に固定される。また、レンズ4の平坦面41eは、段部56に当接し、光軸方向で位置決めされるとともに、適正な姿勢でホルダ5の内側に固定される。本形態では、ホルダ5の内側にレンズ4を配置するにあたって、第1レンズ41および第2レンズ42のうちの一方のレンズのみがホルダ5の内側に圧入されることにより、レンズ4がホルダ5に保持されている。本形態では、第1レンズ41および第2レンズ42のうち、外径寸法の大きな第1レンズ41のみがホルダ5の中径部52の内側に圧入されることにより、レンズ4がホルダ5に保持されている。この状態で、第2レンズ42とホルダ5の小径部51との間には隙間があいている。このような圧入構造を採用するにあたって、本形態では、第1レンズ41の外周面のうち、物体側L1(接合面40とは反対側)に位置する部分をホルダ5に対する圧入部分45として利用する。このため、第1レンズ41において、ホルダ5への圧入部分45に対して径方向内側で重なる部分の光軸方向の50%以上が、光軸方向に直交する方向の全体にわたってレンズ4(接合レンズ)の接合面40から光軸方向に離間した仮想の板状部分からなる。本形態では、第1レンズ41において、ホルダ5への圧入部分45に対して径方向内側で重なる部分の光軸方向の全体が、光軸方向に直交する方向の全体にわたってレンズ4(接合レンズ)の接合面40から光軸方向に離間した仮想の板状部分からなる。
【0036】
次に、ガラスレンズ3を保持するレンズ枠6をホルダ5の内側に圧入する。その結果、ガラスレンズ3は、ホルダ5の内側に対して偏芯なくホルダ5の内側に固定される。また、レンズ枠6の像側L2の端面に形成した凸部69の光軸Lに直交する面がレンズ4の物体側L1の平坦面41fの外周側に当接するので、ガラスレンズ3およびレンズ枠6は、光軸方向で位置決めされるとともに、光軸に対する角度偏差がない適正な姿勢でホルダ5の内側に固定される。
【0037】
次に、ホルダ5の大径部53の内側にレンズ2を圧入固定する。その結果、レンズ2は、ホルダ5の内側に対して偏芯なくホルダ5の内側に固定される。また、レンズ2は、レンズ枠6の物体側筒部62の光軸Lに直交する先端面(物体側L1の面)に当接するので、光軸方向で位置決めされるとともに、光軸に対する角度偏差がない適正な姿勢でホルダ5の内側に固定される。
【0038】
次に、ホルダ5の環状凸部59の内側にレンズ1を挿入する。その際、レンズ1とホルダ5のフランジ部58との間にOリングからなるシール部材9を配置しておく。
【0039】
しかる後に、レンズ1に対して物体側L1から外枠7を被せ、外枠7をホルダ5に固定する。その際、外枠7の胴部71の内周面に雌ネジを形成しておく一方、ホルダ5のフランジ部58の外周面に雄ネジを形成しておき、外枠7をホルダ5にねじ込んで固定する。その結果、レンズ1は、上記の外枠7のホルダ5のねじ込みにより、光軸方向に固定力を受け、ホルダ5の内部に固定される。また、レンズ2、4およびガラスレンズ3を保持するレンズ枠6は、その固定力によりホルダ5の内部に固定される。
【0040】
このようにして、レンズユニット100を製造した際、レンズ枠6は、物体側L1の端面(物体側筒部62の物体側L1の端面)でレンズ2の像側L2の平面と当接し、レンズ枠6の像側L2の端面は、凸部69でレンズ4の物体側L1の平面と当接する。このため、レンズ枠6は、レンズ2から光軸方向に固定力を受け、レンズ4で支持される。従って、レンズ枠6は、光軸方向の位置、および光軸Lに対する角度が安定した状態で固定される。また、上記の固定力は、物体側L1の端面(物体側筒部62の物体側L1の端面)から、レンズ枠6の像側L2の端面の凸部69との間で、レンズ枠6の外周側に働くように限定している。そうすることで、それ以外の部分で、上記固定力によるレンズ枠やレンズ3の歪みなどが生じても、レンズ3の光軸方向の高さや傾きが変わってしまうことを回避することができる。また、レンズ枠6においては、レンズ2やレンズ4との当接面積が限定されるので、精度が必要な面積が小さくてよい。それ故、レンズ枠6においては、位置や傾き等に影響を及ぼす個所を高い精度で製造することができる。
【0041】
(ガラスレンズ3およびレンズ枠6の圧入構造)
図1(b)に示すように、本形態では、ガラスレンズ3がレンズ枠6の内側に圧入され、レンズ枠6は、ホルダ5の内側に圧入されている。ここで、ガラスレンズ3、レンズ枠6、およびホルダ5は、材質が全て相違している。本形態では、レンズ枠6は樹脂製であり、ホルダ5はアルミニウム製である。このため、ガラスレンズ3、レンズ枠6、およびホルダ5は、熱膨張係数が全て相違しており、ガラスレンズ3、レンズ枠6、およびホルダ5の熱膨張係数は、以下の関係
レンズ枠6>ホルダ5>ガラスレンズ3
を有している。このような構成の場合、温度変化が発生すると、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81において、ガラスレンズ3とレンズ枠6との温度膨張係数の違いによって応力が発生する。また、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82においては、レンズ枠6とホルダ5の温度膨張係数の違いによって応力が発生する。
【0042】
そこで、本形態では、ガラスレンズ3の外周面とレンズ枠6のレンズ保持部60の内周面とを利用して、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81とし、レンズ枠6の像側筒部61の外周面のうち、像側L2に位置する部分と、ホルダ5の中径部52の内周面とを利用して、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82としている。このため、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81と、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82とは、光軸Lに対して直交する方向からみたとき、光軸方向でずれて径方向で重なっていない。本形態では、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81と、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82とは、光軸方向で所定の寸法、離間しており、第1圧入部分81と第2圧入部分82とは、光軸Lに対して直交する方向からみたとき、光軸方向で完全にずれて径方向で一切重なっていない。
【0043】
また、本形態では、ホルダ5は、レンズ枠6と対向する中径部52の内周面のうち、第2圧入部分82以外の部分をわずかに大径としてある。すなわち、圧入部分82より物体側L1は、わずかに大径である。また、ホルダ5の内周面とレンズ保持部60の外周面との間、およびホルダ5の内周面と物体側筒部62の間には隙間があいている。従って、レンズ枠6は、第2圧入部分82のみでホルダ5に接している。
【0044】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のレンズユニット100では、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81と、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82とは、光軸Lに対して直交する方向からみたとき、光軸方向でずれて径方向で重なっていない。このため、圧入時、ガラスレンズ3、レンズ枠6およびホルダ5に過大な圧力が加わることを抑制することができる。
【0045】
また、温度変化が発生した際、ガラスレンズ3とレンズ枠6との温度膨張係数の違いに起因して第1圧入部分81で応力が発生し、レンズ枠6とホルダ5との温度膨張係数の違いに起因して第2圧入部分82で応力が発生しても、第1圧入部分81で発生した応力と、第2圧入部分82で発生した応力とが合成されにくい。このため、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3の特定個所に応力が集中することを緩和することができる。また、レンズ枠6は、第2圧入部分82のみでホルダ5に接しているため、第2圧入部分82以外でレンズ枠6とホルダ5との間に応力が発生することを防止することができる。それ故、
図2にシミュレーション結果を示すように、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3に加わる最大応力が応力限界値を超えるという事態が発生しにくい。より具体的には、
図2(a)には、温度変化に伴ってホルダ5に加わる応力の最大値を実線La5で示し、ホルダ5の応力限界値を一点鎖線Lb5で示してあり、ホルダ5に加わる応力とホルダ5の応力限界値との間には十分な余裕がある。また、
図2(b)には、温度変化に伴ってレンズ枠6に加わる応力の最大値を実線La6で示し、レンズ枠6の応力限界値を一点鎖線Lb6で示してあり、レンズ枠6に加わる応力とレンズ枠6の応力限界値との間には十分な余裕がある。また、
図2(c)には、温度変化に伴ってガラスレンズ3に加わる応力の最大値を実線La3で示し、ガラスレンズ3の応力限界値を一点鎖線Lb3で示してあり、ガラスレンズ3に加わる応力とガラスレンズ3の応力限界値との間には十分な余裕がある。
【0046】
なお、
図1(c)に比較例として示すように、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81と、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82とが、光軸Lに対して直交する方向からみたとき、第1圧入部分81と第2圧入部分82とが光軸方向で部分的に重なっているように構成した場合、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3に加わる最大応力のシミュレーション結果は
図3に示す通りである。
図3から分かるように、第1圧入部分81と第2圧入部分82とが光軸方向で部分的に重なっている場合、温度が低下すると、ガラスレンズ3に加わる応力が応力限界値を超えてしまう(
図3(c)参照)。
【0047】
また、本形態では、第2圧入部分82は、第1圧入部分81より光軸方向の像側L2に位置し、像側筒部61の内径寸法は、レンズ保持部60の内径寸法より小である。このため、レンズ枠6に極端に強度が低い個所が発生しないとともに、応力が分散する。このため、応力に起因するレンズ枠6の損傷を防止することができる。
【0048】
また、レンズユニット100を構成した際、レンズ枠6の像側L2の端面に形成した凸部69の光軸Lに直交する面がレンズ4の物体側L1の平坦面41fの外周側に当接する。このため、第2圧入部分82だけでは、レンズ枠6の姿勢を適正に規定できない場合でも、ガラスレンズ3およびレンズ枠6は、適正な姿勢でホルダ5の内側に固定される。また、レンズ2は、レンズ枠6の物体側筒部62の光軸Lに直交する先端面(物体側L1の面)に当接する。このため、第2圧入部分82だけでは、レンズ枠6の姿勢を適正に規定できない場合でも、レンズ枠6は、レンズ2を基準に姿勢が補正されるので、ガラスレンズ3およびレンズ枠6は、適正な姿勢でホルダ5の内側に固定される。
【0049】
また、ガラスレンズ3の物体側L1の面にはレンズ枠6のカシメ部分66が被さっているので、ガラスレンズ3は、確実にレンズ枠6に固定される。
【0050】
[実施の形態2]
図4は、本発明の実施の形態2に係るレンズユニットの説明図であり、
図4(a)、(b)は、本発明の実施の形態2に係るレンズユニットの断面図、および本発明の実施の形態2に係るレンズユニットのガラスレンズ周辺の構成を拡大して示す断面図である。
図5は、本発明の実施の形態2に係るレンズユニットの温度変化に伴う各部材に加わる最大応力のシミュレーション結果を示すグラフであり、
図5(a)、(b)、(c)は、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3に加わる最大応力を示すグラフである。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0051】
図4(a)、(b)に示すように、本形態のレンズユニット100も、実施の形態1と同様、光軸Lに沿って配置された複数のレンズ(レンズ1、2、4およびガラスレンズ3)を有しており、これらのレンズは、筒状のホルダ5に保持されている。また、本形態においても、実施の形態1と同様、ガラスレンズ3がレンズ枠6の内側に圧入され、レンズ枠6は、ホルダ5の内側に圧入されている。本形態では、レンズ枠6は樹脂製であり、ホルダ5はアルミニウム製である。このため、ガラスレンズ3、レンズ枠6、およびホルダ5は、熱膨張係数が全て相違しており、ガラスレンズ3、レンズ枠6、およびホルダ5の熱膨張係数は、以下の関係
レンズ枠6>ホルダ5>ガラスレンズ3
を有している。
【0052】
本形態では、ガラスレンズ3をレンズ枠6に圧入するにあたって、実施の形態1と同様、ガラスレンズ3の外周面とレンズ枠6のレンズ保持部60の内周面とを利用して、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81としている。これに対して、レンズ枠6をホルダ5に圧入するにあたって、レンズ枠6の物体側筒部62の外周面のうち、物体側L1に位置する部分と、ホルダ5の大径部53の内周面とを利用して、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82としてある。
【0053】
このため、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81と、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82とは、光軸Lに対して直交する方向からみたとき、光軸方向でずれて径方向で重なっていない。本形態では、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81と、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82とは、光軸方向で所定の寸法、離間しており、第1圧入部分81と第2圧入部分82とは、光軸Lに対して直交する方向からみたとき、光軸方向で完全にずれて径方向で一切重なっていない。
【0054】
また、本形態では、第2圧入部分82以外の部分では、ホルダ5の内周面とレンズ枠6との間に隙間があいている。従って、レンズ枠6は、第2圧入部分82のみでホルダ5に接している。
【0055】
このように、本形態のレンズユニット100では、ガラスレンズ3のレンズ枠6に対する第1圧入部分81と、レンズ枠6のホルダ5に対する第2圧入部分82とは、光軸Lに対して直交する方向からみたとき、光軸方向でずれて径方向で重なっていない。このため、圧入時、ガラスレンズ3、レンズ枠6およびホルダ5に過大な圧力が加わることを抑制することができる。また、温度変化が発生した際、ガラスレンズ3とレンズ枠6との温度膨張係数の違いに起因して第1圧入部分81で応力が発生し、レンズ枠6とホルダ5との温度膨張係数の違いに起因して第2圧入部分82で応力が発生しても、第1圧入部分81で発生した応力と、第2圧入部分82で発生した応力とが合成されにくい等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0056】
また、本形態において、第2圧入部分82は、第1圧入部分81より光軸方向の物体側L1に位置しており、レンズ枠6の物体側筒部62の外周面を利用して第2圧入部分82が構成されている。また、物体側筒部62の内径寸法は、レンズ保持部60の内径寸法より大である。さらに、レンズ枠6のレンズ保持部60と物体側筒部62との間には、底部が光軸方向の像側L2に湾曲した溝68が形成されている。このため、物体側筒部62の根元は湾曲した部分で構成されているので、径方向に変形しやすい。従って、第2圧入部分82で発生した応力を物体側筒部62の変形によって吸収することができる。
【0057】
このため、本形態によれば、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3の特定個所に応力が集中することを緩和することができる。それ故、
図5にシミュレーション結果を示すように、ホルダ5、レンズ枠6およびガラスレンズ3に加わる最大応力が応力限界値を超えるという事態が発生しにくい。より具体的には、
図5(a)には、温度変化に伴ってホルダ5に加わる応力の最大値を実線La5で示し、ホルダ5の応力限界値を一点鎖線Lb5で示してあり、ホルダ5に加わる応力とホルダ5の応力限界値との間には十分な余裕がある。また、
図5(b)には、温度変化に伴ってレンズ枠6に加わる応力の最大値を実線La6で示し、レンズ枠6の応力限界値を一点鎖線Lb6で示してあり、レンズ枠6に加わる応力とレンズ枠6の応力限界値との間には十分な余裕がある。また、
図5(c)には、温度変化に伴ってガラスレンズ3に加わる応力の最大値を実線La3で示し、ガラスレンズ3の応力限界値を一点鎖線Lb3で示してあり、ガラスレンズ3に加わる応力とガラスレンズ3の応力限界値との間には十分な余裕がある。
【0058】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、ホルダ5が金属製であったが、ガラスやカーボンなどで強化された樹脂のホルダ5を用いた場合に本発明を適用してもよい。また、レンズ枠6についても、ガラスやカーボンなどで強化された樹脂を用いてもよい。また、上記実施の形態では、レンズ枠6の光軸Lに対して直交する面(凸部69や物体側筒部62の先端面)がレンズ4やレンズ2等、ホルダ5に搭載された光学部品に当接している構成であったが、レンズ枠6の光軸Lに対して直交する面がホルダ5に当接している構成を採用してもよい。