(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129625
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】燃料電池車両の給気装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20170508BHJP
H01M 8/04119 20160101ALI20170508BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 J
H01M8/04 K
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-81974(P2013-81974)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-116280(P2014-116280A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2016年2月9日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0141535
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】具 珍 祐
(72)【発明者】
【氏名】金 賢 裕
(72)【発明者】
【氏名】權 赫 律
【審査官】
久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−521004(JP,A)
【文献】
特開2012−164457(JP,A)
【文献】
特開2012−099394(JP,A)
【文献】
特開2009−064766(JP,A)
【文献】
特開2011−155011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された空気を圧縮する圧縮機と、
燃料電池の凝縮水を排出するドレーンバルブと、
前記圧縮機で圧縮された空気の一部と前記燃料電池からの凝縮水が導入され、前記凝縮水の蒸発によって加湿された空気を前記燃料電池に送る蒸発器と、
前記圧縮機で圧縮された空気の一部が導入され、前記蒸発器に熱を伝達すると共に、冷却された空気を吐出する熱交換器と、
前記熱交換器からの冷却された空気が導入されて、これを加湿した後、前記燃料電池に送る加湿器と、を有して構成され、
前記圧縮機は、前記熱交換器と主ラインで連結され、前記主ラインから補助ラインが分岐して前記蒸発器と連結されていることを特徴とする燃料電池車両の給気装置。
【請求項2】
前記熱交換器は、圧縮された空気を導入する導入部と、冷却された空気を吐出する吐出部と、及び空気が循環する循環部とで構成され、前記蒸発器は、前記循環部に接して設置されて熱の伝達を受けて凝縮水を蒸発させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の給気装置。
【請求項3】
前記ドレーンバルブは、前記燃料電池の燃料極に連結されて凝縮水を保存するリザーバーに設置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の給気装置。
【請求項4】
前記加湿器は、前記ドレーンバルブから凝縮水の一部を導入することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の給気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両の給気装置に関し、特に圧縮された空気を冷却すると共に加湿することができる燃料電池車両の給気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両では、急激な出力の要請がなされた時、圧縮機を通じて空気を送るシステムで構成される。このような空気圧縮機を使用した空気では、加湿器を出た後に空気圧制御バルブを有していて、空気の圧力が高められたときには、燃料電池スタックに供給される空気中の水蒸気分圧が高くなり相対湿度が高くなる利点がある。
【0003】
しかし、高出力運転条件では、空気圧縮機の圧縮比が高くなることから圧縮機出口の空気温度が上昇するようになる。高温空気は、後続する加湿器の性能低下の原因になるため、空気の温度を下げなければならず、インタクーラーを使用することが多い。
【0004】
インタクーラーは、占める体積が大きく、さらに付加的に冷却水の流路が必要であり、その冷却水としてスタックの冷却水を活用するためラジエータの冷却負荷を増加させることになる。ウォーターポンプの負荷が増えると、パッケージとするに不利であり、冷却水のバイパスラインの設置などこのシステム全体が複雑となる短所がある。
【0005】
燃料電池に送る圧縮空気を冷却することに関しての従来技術では、外部空気を圧縮する圧縮機と、圧縮機の下流側に配置されて圧縮空気を低温空気と高温空気に分離する第1冷却ユニットと、及び第1冷却ユニットの下流側に配置され、第1冷却ユニットからの低温空気を冷却水によってさらに冷却する第2冷却ユニットとでなる構成の燃料電池用空気供給装置〔特許文献1〕の提案がある。この他、燃料電池に供給する圧縮空気の冷却について、圧縮空気を燃料電池の排出ガスから分離した水を用いて冷却する燃料電池用吸気装置〔特許文献2〕、圧縮機により生成した加圧空気流と燃料電池の排気流とを熱交換させる多段圧縮機システム〔特許文献3〕の提案もある。
【0006】
しかし、これまでの技術によっても冷却のためにインタクーラーのような別途の装備が必要であり、システムの構成が複雑、かつ重量が増えるといった短所は解決されていない。したがって、比較的簡単なシステムで効率よく空気を冷却することができる燃料電池車両の給気装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許公開10−2012−0111169A号明細書
【特許文献2】特開2001−176534号公報
【特許文献3】特開2005−135910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題点を解決するためになされた本発明の目的は、圧縮空気を効果的に冷却すると共に、加湿も同時することができる燃料電池車両の給気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明による燃料電池車両の給気装置は、導入された空気を圧縮する圧縮機と、燃料電池の凝縮水を排出するドレーンバルブと、圧縮機で圧縮された空気の一部と燃料電池からの凝縮水が導入され、凝縮水の蒸発によって加湿された空気を燃料電池に送る蒸発器と、圧縮機で圧縮された空気の一部が導入され、蒸発器に熱を伝達すると共に、冷却された空気を吐出する熱交換器と、熱交換器からの冷却された空気が導入されて、これを加湿した後、燃料電池に送る加湿器と、を有して構成される。
【0010】
さらに好ましい形態を挙げると、圧縮機は、熱交換器と主ラインで連結され、主ラインから補助ラインが分岐して蒸発器と連結する。熱交換器は、圧縮された空気を導入する導入部と、冷却された空気を吐出する吐出部と、及び空気が循環する循環部とで構成され、蒸発器は、その循環部に接して設置されて熱の伝達を受けて凝縮水を蒸発させる。ドレーンバルブは、燃料電池の燃料極に連結されて凝縮水を保存するリザーバーに設置される。加湿器は、ドレーンバルブから凝縮水の一部を導入する。
【発明の効果】
【0011】
上記の構造からなる燃料電池車両の給気装置によれば、熱交換器により空気の温度を下げることにより加湿器の効率及び性能向上がなされる。また、空気が加湿されて燃料電池の空気極に供給されることにより、スタックに十分な水気供給が可能になる。特に、最大負荷条件で、空気が冷却され、かつ加湿されて供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による燃料電池車両の給気装置の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による燃料電池車両の給気装置を、望ましい実施形態を挙げ、添付した図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0014】
本発明の燃料電池車両の給気装置は、導入された空気を圧縮する圧縮機100と、燃料電池300の凝縮水を排出するドレーンバルブ200と、圧縮機100で圧縮された空気の一部Bと、燃料電池300からの凝縮水Cを導入して、凝縮水の蒸発によって加湿された空気を燃料電池300に送る蒸発器400と、圧縮機100からの圧縮された空気の一部Aを導入して蒸発器400に熱を伝えると共に、冷却された空気を吐出する熱交換器500と、熱交換器500からの冷却された空気を導入して加湿して燃料電池300に送る加湿器600と、を有する構成である。
【0015】
本発明の燃料電池車両の給気装置では、圧縮機100は、基本的に空気の供給が必要な場合に選択的に作動するものであり、必要時に外部空気をフィルター10、消音器20を通って導入し、圧縮された空気して吐出する。
【0016】
圧縮機100を経て圧縮された空気は、高温/高圧であって、加湿器にすぐ伝達されると、加湿器の効率が落ち、さらに耐久性にも問題となり得る。したがって、従来は、この空気を冷却するために、圧縮機の後端にインタクーラーを設置していたが、インタクーラーのための冷却ラインを別途に設けなければならないなどの煩わしさがあり、このための設備費が必要であった。
【0017】
本発明では、圧縮機100から吐出された高温高圧の空気を、蒸発器400と加湿器600に分岐するようにしている。
【0018】
圧縮機100から蒸発器400側に送られた圧縮された空気は、蒸発器400において燃料電池での凝縮水により加湿されて燃料電池300に送られる。
【0019】
燃料電池では、反応によって凝縮水が発生しており、この凝縮水を排出させるためにドレーンバルブ200が設けられる。そこで、蒸発器400では、ドレーンバルブ200から吐出された凝縮水Cと、圧縮機100からの高温の圧縮された空気の一部Bが導入され、熱交換器500から熱の伝達を受けて凝縮水を蒸発させて湿った空気を作り出す。この湿った空気は、別の加湿器を経なくてもそのまま燃料電池に供給することができる。
【0020】
圧縮機100から加湿器600側に送られた圧縮された空気は、先ず、熱交換器500において蒸発器400に熱を伝達し、これにより別途のインタクーラーがなくも充分に冷却されて加湿器600に送られる。
【0021】
加湿器600では、熱交換器500で熱を奪われて冷却された空気が導入され、これを加湿することにより、加湿の効率が上昇し、加湿器600の耐久性にも問題が生じない。このとき、加湿器に圧力調節バルブ620を設けることができる。
【0022】
具体的に図に示した例では、圧縮機100は、熱交換器500と主ラインAで連結され、主ラインAから補助ラインBが分岐して蒸発器400と連結される。すなわち、高温高圧に圧縮された空気は、一部が主ラインAを流れて熱交換器500に、残りが補助ラインBを流れて蒸発器400に通じている。そして主ラインAの圧縮された空気は、熱交換器500で熱を奪われて冷却されて、加湿器600で加湿されて燃料電池300に供給される。補助ラインBを流れる圧縮された空気は、燃料電池300からの凝縮水が加わり、凝縮水の蒸発によって加湿された空気となって加湿器600を経ずにそのまま燃料電池300に供給することができる。
【0023】
従って、燃料電池300では、圧縮機100からの圧縮された空気が、蒸発器400と加湿器600のいずれかを経て加湿された空気として導入される。
【0024】
本発明では、従来のインタクーラーが搭載されたシステムに比べて重量が軽く、加湿効率が高く、早い給気が可能になって全般的なシステム出力効率が上昇する利点を有している。
【0025】
熱交換器500は、圧縮された空気を導入する導入部520と、冷却された空気を吐出する吐出部540と、空気が循環する循環部560とで構成され、循環部560上に蒸発器400が設置されて、循環する高温の空気からの熱が蒸発器400に伝達される。そして、熱が奪われて冷却された空気が、吐出部540から加湿器600に吐出することになる。
【0026】
蒸発器400は、熱交換器500の循環部560に接して設けられ、圧縮機100からの圧縮された空気と燃料電池300からの凝縮水を受けて、循環部560から伝達された熱により凝縮水が蒸発されて加湿された空気となり、そのまま燃料電池の空気極330に送ることができる。
【0027】
すなわち、蒸発器400は、熱交換器500と熱交換することができるように配置されるので、蒸発器400の役割を熱交換器500の内部、具体的には循環部560に統合して熱交換器500と蒸発器400が一体に構成することも可能である。
【0028】
ドレーンバルブ200は、燃料電池300の燃料極320に連結されて凝縮水を保存するリザーバー322に設けられ、蒸発器400に凝縮水を送るが、一部を加湿器600に導入するようにすることも可能である。また、加湿器600は、燃料極出口に設けられる水素ファジーバルブ(図示していない)から凝縮水の導入を受けたり、燃料電池300の空気極330から凝縮水を導入することも可能である。すなわち、本発明の場合、多様なレイアウトの燃料電池システムに適用が可能である。そして、主ラインAと補助ラインBの流量を調節するために分岐点に調節バルブ(図示していない)を設けることもできる。
【0029】
本発明の作用をもう一度整理すると、高出力運転で空気の圧力が非常に高くなったとき、これに伴って空気温度が高くなり、加湿器の性能維持のために冷却が必要となる。このとき熱交換器を用いて高温の空気を冷却する。
【0030】
特に、空気を冷却することの必要性は、出力が増加するほど大きくなるので、システムデザインする時には出力が非常に大きい側に合わせて熱交換と加湿条件が適切になるようにすることが望ましい。
高出力区間では、空気圧縮機で発生した熱を蒸発器で吸収して凝縮水が充分に蒸発するようにする。
【0031】
圧縮機100により高温の圧縮された空気の一部は、補助ラインBを通して蒸発器400に供給され、燃料電池300で発生した凝縮水と一緒になる。そして、熱交換器500において高温の圧縮空気からの熱を受けて蒸発し(蒸発冷却効果の利用)、蒸発器400から加湿された空気として燃料電池300の空気極330に供給される。
【0032】
蒸発器400で凝縮水蒸発に必要な熱は、蒸発器400の外部を流れる高温の圧縮空気(熱交換器500)から供給されるようになり、これによって高温の圧縮空気は熱交換器500で冷却する効果を得ることができる。
【0033】
上記したように、本発明は、圧縮機100を通過した高温の圧縮された空気を利用して燃料電池300の凝縮水が蒸発器400で蒸発するようにし、水の蒸発潜熱によって冷却された空気を加湿して燃料電池300の空気極330への供給を同時に実現することができるようにしたシステムである。
【0034】
本発明の燃料電池車両の給気装置によれば、熱交換器500を通して空気の供給温度を下げることにより加湿器600の効率及び性能の維持向上ができる。また、加湿された空気が燃料電池300に供給されることにより、空気極330に十分な水分供給が可能になる。特に最大負荷条件でも冷却された空気によって燃料電池300の出力の向上がなされる。
【0035】
本発明は、特定の実施例に関して図示して説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想を脱しない限度内で、本発明が多様に改良及び変化されることができるということは当業界で通常の知識を有する者において自明なことである。
【符号の説明】
【0036】
10:フィルター
20:消音器
100:圧縮機
200:ドレーンバルブ
300:燃料電池
310:(燃料電池の)冷却流路
320:(燃料電池の)燃料極
322:(燃料電池からの凝縮水を保存する)リザーバー
330:(燃料電池の)空気極
400:蒸発器
500:熱交換器
520:(熱交換器における圧縮された空気の)導入部
540:(熱交換器で冷却された空気の)吐出部
560:(熱交換器での空気の)循環部
600:加湿器
620:圧力調節バルブ
A:圧縮機から熱交換器への圧縮された空気の主ライン
B:圧縮機から蒸発器への圧縮された空気の補助ライン
C:ドレーンバルブから蒸発器への凝縮水のライン