(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0013】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0014】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0015】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0016】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0017】
以下の実施の形態で説明する技術はリードフレームを用いて製造する種々のパッケージタイプの半導体装置に適用可能であるが、本実施の形態では、一例として、外部端子である複数のリードが、封止体の側面において露出する、QFP(Quad Flat Package)型の半導体装置に適用した実施態様について説明する。
図1は本実施の形態の半導体装置の上面図、
図2は、
図1に示す半導体装置の下面図である。また、
図3は、
図1に示す封止体を取り除いた状態で半導体装置の内部構造を示す透視平面図である。また、
図4は
図1のA−A線に沿った断面図、
図5は
図1のB−B線に沿った断面図である。
【0018】
<半導体装置>
まず、本実施の形態の半導体装置1の構成の概要について、
図1〜
図5を用いて説明する。本実施の形態の半導体装置1は、ダイパッド(チップ搭載部、タブ)10(
図3〜
図5参照)と、ダイパッド10上にダイボンド材(接着材)8(
図3〜
図5参照)を介して搭載された半導体チップ3(
図3〜
図5参照)と、を備えている。また、半導体装置1は、半導体チップ3(ダイパッド10)の隣(周囲)に配置された複数のリード(端子、外部端子)4と、半導体チップ3の複数のパッド(電極、ボンディングパッド)PD(
図3、
図4参照)と複数のリード4とをそれぞれ電気的に接続する複数のワイヤ(導電性部材)5(
図3、
図4参照)と、を有している。また、半導体装置1は半導体チップ3および複数のワイヤ5を封止する封止体(樹脂体)7を備えている。また、ダイパッド10には、複数の吊りリード9が接続されている。
【0019】
<外観構造>
まず、半導体装置1の外観構造について説明する。
図1に示す封止体(樹脂体)7の平面形状は四角形である。詳細には、各角部が面取り加工されており、これにより封止体7の欠けを抑制している。封止体7は上面7aと、この上面7aとは反対側の下面(裏面、実装面)7b(
図2参照)と、この上面7aと下面7bとの間に位置する側面7cとを有している。側面7cは、
図4に示すように傾斜面となっている。封止体7の角部とは、封止体7の四辺(四つの主辺)のうち、交差する任意の二辺(二つの主辺)の交点である角の周辺領域を含んでいる。なお、厳密には、
図1に示すように、封止体7の角部は、一部が面取り加工されているので、主辺の交点は封止体7の角部よりも外側に配置される。しかし、面取り加工部は、主辺の長さと比較して十分に小さいため、本願では、面取り加工部の中心を封止体7の角と見做して説明する。つまり、本願においては、封止体7の四辺(四つの主辺)のうち、任意の二辺(二つの主辺)が交差する領域であって、該領域が面取り加工されている場合にはその面取り加工部が角部に相当し、該領域が面取り加工されていない場合には、任意の二辺(二つの主辺)の交点が角部に相当する。以下、本願において、封止体7の角部と説明するときは、特に異なる意味、内容で用いている旨を明記した場合を除き、上記と同様の意味、内容として用いる。
【0020】
また、
図1および
図2に示すように、半導体装置1では、封止体7の各辺(各主辺)に沿って、それぞれ複数のリード4が配置されている。複数のリード4は、それぞれ金属材料からなり、本実施の形態では、例えば銅(Cu)を主体とする金属からなる。また、
図1および
図2に示す例では、複数のリード4のそれぞれは、封止体7の側面7cから一部(アウタリード部4b)が外側に突出し、封止体7の外側において、ガルウィング状に形成されている。言い換えれば、複数のリード4のアウタリード部4bは、それぞれ複数の屈曲部を備え、アウタリード部4bの端部は、封止体7の下面7bよりも低い位置に配置される。またリード4の封止体7からの露出部(アウタリード部4b)には、金属膜SDが形成され、前記した基材の下面を覆っている。金属膜SDは、例えばめっき法により形成された半田膜(外装めっき膜)から成り、リード4を図示しない実装基板側の端子と接合する際に接合材として機能する。
【0021】
本実施の形態の金属膜SDは、鉛(Pb)を実質的に含まない、所謂、鉛フリー半田からなり、例えば錫(Sn)のみ、錫−ビスマス(Sn−Bi)、または錫−銅−銀(Sn−Cu−Ag)などである。ここで、鉛フリー半田とは、鉛(Pb)の含有量が0.1wt%以下のものを意味し、この含有量は、RoHS(Restriction of Hazardous Substances)指令の基準として定められている。
【0022】
また、
図2に示すように、ダイパッド(チップ搭載部、タブ)10の下面10bは、封止体7の下面7bにおいて、封止体7から露出している。つまり、半導体装置1は、ダイパッド露出型(タブ露出型)の半導体装置である。
【0023】
ダイパッド10は、封止体7よりも熱伝導率が高い金属材料からなり、本実施の形態では、例えば銅(Cu)、または銅(Cu)からなる基材の表面に例えばニッケル(Ni)からなる金属膜(図示は省略)が形成された積層金属膜から成る。このように、ダイパッド露出型の半導体装置は、熱伝導率が封止体7よりも高い、例えば、銅(Cu)などの金属部材(ダイパッド10)を露出させることで、ダイパッド10が露出しない半導体装置と比較して、パッケージの放熱性を向上させることができる。また、半導体装置1を図示しない実装基板に実装する際に、ダイパッド10の下面10bを実装基板の端子と、例えば半田材(接合材)を介して接続すれば、半導体装置1で発生した熱をさらに効率的に実装基板側に放熱することができる。
【0024】
また、
図3および
図4に示すように、本実施の形態では、半導体チップ3とダイパッド10を電気的に接続し、ダイパッド10を外部端子として利用する。このようにダイパッド10の下面10bを露出させて、図示しない実装基板と電気的に接続することで、半導体装置1の端子配置スペースを有効に活用することができる。また、ダイパッド10には、例えば、基準電位(例えば接地電位)が供給される。半導体装置1の電気的特性を向上させる観点から、基準電位を供給する端子は、伝送経路の面積を大きくすることが好ましい。つまり、
図3や
図4に示すように、基準電位が供給される外部端子として、ダイパッド10を利用することで、伝送経路の面積を拡大させて、半導体装置1の電気的特性を向上させることができる。
【0025】
また、
図2に示す例では、ダイパッド10の下面10bには、実装時に接合材として機能する金属膜SDが形成され、前記基材の下面を覆っている。金属膜SDは前記したように例えばめっき法により形成された半田膜である。このようにダイパッド10の露出面に金属膜SDを形成することで、ダイパッド10を図示しない実装基板の端子と接続し易くすることができる。
【0026】
<内部構造>
次に、半導体装置1の内部構造について説明する。
図3に示すように、ダイパッド10の上面(チップ搭載面)10aは、平面形状が四角形(四辺形)から成る。また、本実施の形態では、半導体チップ3の外形サイズ(
図4に示す裏面3bの平面サイズ)よりも、ダイパッド10の外形サイズ(平面サイズ)の方が大きい。このように半導体チップ3を、その外形サイズよりも大きい面積を有するダイパッド10に搭載し、
図2に示すようにダイパッド10の下面10bを封止体7から露出させることで、放熱性を向上させることができる。ダイパッド10のその他の詳細な構造は後述する。
【0027】
また、
図3に示すようにダイパッド10の周囲(半導体チップ3の周囲)には、複数のリード4が配置される。
図4に示すように複数のリード4のそれぞれは、封止体7に封止されるインナリード部4aと、封止体7から露出するアウタリード部4bを備える。またアウタリード部4bの表面(上面、下面、および側面)には、金属膜SDが形成されている。また、インナリード部4aには、ワイヤ5を接合するワイヤボンディング部が含まれる。
【0028】
また、
図3に示すように、ダイパッド10には、複数の吊りリード9が接続(連結)されている。複数の吊りリード9は、それぞれ一方の端部が、平面視において四角形を成すダイパッド10の角部(角)に接続されている。また複数の吊りリード9はそれぞれ他方の端部が封止体7の角部に向かって延び、角部において封止体7から露出している。
【0029】
ところで、
図4に示すように、ダイパッド10は、インナリード部4aと異なる高さに配置(オフセット配置)されている。詳しくは、ダイパッド10は、インナリード部4aよりも低い位置に配置(ダウンセット配置)されている。本実施の形態のようにリード4がガルウィング状に形成されたパッケージでは、リード4は封止体7の側面7cにおいて、上面7aと下面7bの中間となる位置から導出することが好ましい。インナリード部4aを封止体7でしっかりと固定するためである。一方、ダイパッド10を、封止体7から露出させるためには、インナリード部4aと異なる高さに配置する必要がある。このため、本実施の形態では、ダイパッド10をオフセット配置(ダウンセット配置)している。
【0030】
このようにオフセット配置する方法として、本実施の形態では、ダイパッド10を支持する複数の吊りリード9のそれぞれに、傾斜部9a(
図5参照)を形成している。これにより、ダイパッド10をオフセット配置(ダウンセット配置)することができる。
【0031】
また、
図3に示すようにダイパッド10上には、半導体チップ3が搭載されている。半導体チップ3はダイパッド10の中央に位置するチップ搭載領域10d(
図4、
図5参照)上に搭載されている。
図4に示すように半導体チップ3は、裏面3bがダイパッド10の上面10aと対向した状態で、ダイボンド材(接着材)8を介してダイパッド10上に搭載されている。つまり、複数のパッドPDが形成された表面(主面)3aの反対面(裏面3b)をチップ搭載面(上面10a)と対向させる、所謂、フェイスアップ実装方式により搭載されている。このダイボンド材8は、半導体チップ3をダイボンディングする際の接着材であって、例えばエポキシ系の接着材、あるいは、エポキシ系の熱硬化性樹脂に、銀(Ag)などから成る金属粒子を含有させた導電性接着材を用いる。
【0032】
図3に示すように、ダイパッド10上に搭載される半導体チップ3の平面形状は四角形から成る。本実施の形態では、例えば、正方形である。また、
図4に示すように、半導体チップ3は、表面(主面、上面)3aと、表面3aとは反対側の裏面(主面、下面)3bと、この表面3aと裏面3bとの間に位置する側面とを有している。そして、
図3および
図4に示すように、半導体チップ3の表面3aには、複数のパッド(ボンディングパッド)PDが形成されており、本実施の形態では、複数のパッドPDが表面3aの各辺に沿って形成されている。また、図示は省略するが、半導体チップ3の主面(詳しくは、半導体チップ3の基材(半導体基板)の上面に設けられた半導体素子形成領域)には、複数の半導体素子(回路素子)が形成されている。そして、複数のパッドPDは、半導体チップ3の内部(詳しくは、表面3aと図示しない半導体素子形成領域の間)に配置される配線層に形成された配線(図示は省略)を介して、この半導体素子と電気的に接続されている。
【0033】
半導体チップ3(詳しくは、半導体チップ3の半導体基板)は、例えばシリコン(Si)から成る。また、表面3aには、半導体チップ3の基材および配線を覆う絶縁膜が形成されており、複数のパッドPDのそれぞれの表面は、この絶縁膜に形成された開口部において、絶縁膜から露出している。また、このパッドPDは金属からなり、本実施の形態では、例えばアルミニウム(Al)からなる。なお、パッドPDは、アルミニウム(Al)を主体とする合金層を採用してもよい。
【0034】
また、
図3に示すように、半導体チップ3の周囲(詳しくは、ダイパッド10の周囲)には、例えば、ダイパッド10と同じ銅(Cu)から成る複数のリード4が配置されている。そして、半導体チップ3の表面3aに形成された複数のパッド(ボンディングパッド)PDは、複数のリード4と、複数のワイヤ(導電性部材)5を介してそれぞれ電気的に接続されている。ワイヤ5は、例えば、金(Au)から成り、ワイヤ5の一部(例えば一方の端部)がパッドPDに接合され、他部(例えば他方の端部)がリード4のボンディング領域に接合されている。なお、図示は省略するが、リード4のボンディング領域の表面には、例えば、銀(Ag)、あるいは金(Au)から成るめっき膜を形成することが好ましい。リード4(インナリード部4a)のボンディング領域(ワイヤボンディング領域)の表面に、銀(Ag)や金(Au)から成るめっき膜を形成することにより、金(Au)からなるワイヤ5との接合強度を向上させることができる。
【0035】
また、本実施の形態では、複数のパッドPDのうちの一部は、ワイヤ(導電性部材)5bを介してダイパッド10のワイヤボンディング領域と電気的に接続されている。言い換えれば、半導体チップ3の複数のパッドPDに接続される複数のワイヤ5には、複数のパッドPDと複数のリード4を電気的に接続する複数のワイヤ5aと、パッドPDとダイパッド10を電気的に接続するワイヤ5bが含まれる。このようにワイヤ5bを介して半導体チップ3のパッドPDとダイパッド10を電気的に接続することにより、ダイパッド10を外部端子として活用する事ができる。例えば、前記したように、ダイパッド10には、基準電位(例えば接地電位)が供給され、ダイパッド10およびワイヤ5bを介して半導体チップ3に基準電位が供給される。
【0036】
<ダイパッドの詳細構造>
次に、
図2〜
図4に示すダイパッド10の詳細な構造と、その構造とすることにより得られる効果について説明する。
図6は、
図3に示すダイパッドを拡大して示す拡大平面図である。また、
図7は、
図6のA−A線に沿った拡大断面図である。また、
図8は、
図3のC部の拡大平面図、
図9は、
図8のA−A線に沿った拡大断面図である。なお、
図6では、中央部11と周縁部12の境界を判り易く示すため、周縁部12にドットパターンを付して示している。また、
図9では、ワイヤ5の一部(ワイヤ5a)がリード4に接続され、ワイヤ5の他の一部(ワイヤ5b)がダイパッド10に接続されることを明示するため、ワイヤ5aを点線で、ワイヤ5bを実線で示している。
【0037】
本実施の形態の半導体装置1は、
図1〜
図5を用いて説明したように、ダイパッド10の平面積が、半導体チップ3の裏面3bの平面積よりも大きい。そして、
図4に示すように半導体チップ3の平面積よりも大きいダイパッド10の下面10bを封止体7から露出させる。しかし、ダイパッド10の平面積が大きくなると、半導体チップ3を封止する封止体7とダイパッド10の剥離が発生し易くなり半導体装置1の信頼性低下が問題となる。例えば、半導体チップ3とダイパッド10は、線膨張係数が異なるので、温度サイクルが印加されることにより、半導体チップ3とダイパッド10の接着界面で剥離が生じ易くなる。詳しくは、半導体チップ3を接着固定するダイボンド材8とダイパッド10の接着界面において、温度サイクル負荷に起因する応力が発生し、該応力により剥離が発生する。この温度サイクル負荷に起因する応力は、ダイパッド10の平面積に比例して大きくなるので、ダイパッド10の平面積が大きくなると、剥離が発生し易くなる。
【0038】
そして、ダイパッド10とダイボンド材8の接着界面で剥離が発生した後、さらに温度サイクル負荷が印加されると、剥離の発生箇所を起点としてダイパッド10の周縁部(側面10c)に向かって(ダイパッド10の上面10aに沿って)、剥離が進展する。また、ダイパッド10のチップ搭載領域10dと側面10cの間では、封止体7とダイパッド10の上面10aが密着しているが、ダイパッド10と封止体7の密着強度は、ダイパッド10とダイボンド材8の密着強度と比較して同程度またはそれ以下である。このため、前記した剥離は、ダイパッド10と封止体7の密着界面まで進展する。
【0039】
ダイパッド10と封止体7の密着性が低下すると、ダイパッド10の封止体7からの脱落、等の原因となるため、半導体装置1の信頼性低下を抑制する観点からは、剥離の進展を防止または抑制することが好ましい。特に、本実施の形態のように、ダイパッド10の一部にワイヤ5bを接合する場合には、剥離がワイヤ5bとダイパッド10の接合部まで進展すると、ワイヤ5bが断線する原因になる。したがって、半導体装置1の電気的信頼性を向上させる観点から、剥離の進展を防止または抑制することが好ましい。
【0040】
ここで、本実施の形態の半導体装置1が備えるダイパッド10は、
図6に示すように、平面視において、チップ搭載領域10dを含む部分である中央部11と、中央部11を囲むように設けられている部分である周縁部12と、を有している。また、
図7に示すように、中央部11と周縁部12の境界には、中央部11の高さよりも周縁部12の高さが高くなるように、段差面13a、13bが設けられている。
【0041】
言い換えれば、
図7に示すように、ダイパッド10の中央部11は、チップ搭載面である上面11a、および上面11aの反対側に位置する下面11bを有している。また、中央部11よりも外側(側面10c側)に設けられた周縁部12は、中央部11の上面11aと同じ方向(
図7に示す例ではZ方向)を向く上面12a、および上面12aの反対側に位置する下面12bを有している。また中央部11と周縁部12の境界には、段差部13が形成されており、周縁部12の上面12aは中央部11の上面11aよりも高い位置にある。また、周縁部12の下面12bは中央部11の下面11bよりも高い位置にある。
【0042】
さらに言い換えれば、ダイパッド10の周縁部12の上面12aと中央部11の上面11aの間には、上面11aおよび上面12aに対して直交する、厚さ方向(
図7ではZ方向)に沿って段差面13aが形成されている。段差面13aは、周縁部12の上面12aおよび中央部11の上面11aにそれぞれ連なっている。また、ダイパッド10の周縁部12の下面12bと中央部11の下面11bの間には、下面11bおよび下面12bに対して直交する、厚さ方向(
図7ではZ方向)に沿って段差面13bが形成されている。段差面13bは、周縁部12の下面12bおよび中央部11の下面11bにそれぞれ連なっている。
【0043】
詳細は後述するが、段差部13は、図示しない治具(せん断治具)でダイパッド10の中央部11と周縁部12を押さえた状態でプレス加工を施す加工法(以下、ずらし加工と記載する)により形成される。このようにずらし加工により形成された段差部13の段差面13a、13bのそれぞれは、治具によりせん断された、せん断面になっている。
【0044】
また、本実施の形態の半導体装置1が備えるダイパッド10の周縁部12には、ワイヤ5b(
図8、
図9参照)を電気的に接続する領域である、ワイヤ接続領域10wbが設けられている。言い換えれば、本実施の形態の半導体装置1は、ダイパッド10の上面10a側に設けられたワイヤ接続領域10wbとチップ搭載領域10dとの間に、段差面13aを有する段差部13が配置されている。
【0045】
ここで、本実施の形態の半導体装置1(
図8参照)において、ダイパッド10とダイボンド材8の接着界面で剥離が発生した場合の剥離の進展の傾向について説明する。
図9に模式的に矢印を付して示すように、ダイパッド10とダイボンド材8の接着界面で剥離が発生すると、ダイパッド10の上面10aに沿って中央部11から周縁部12に向かって剥離が進展する。また、封止体7とダイパッド10の上面10aとの密着界面まで剥離が到達すると、封止体7とダイパッド10の剥離が進行する。
【0046】
この時、封止体7とダイパッド10の密着界面の剥離は、中央部11の上面11aに沿って、周縁部12に向かって平面的に進展する。したがって、本実施の形態のように、ワイヤ接続領域10wbとチップ搭載領域10d(
図7参照)の間に段差面13a(段差部13)が設けられていれば、段差面13aと上面11aの境界で剥離の進展を停止させ易くなる。
【0047】
また、
図6に示すように、本実施の形態の段差面13aは、チップ搭載領域10dの周囲、言い換えれば
図3に示す半導体チップ3の周囲を、連続的に囲むように設けられている。このため、例えば
図9に示す封止体7とダイパッド10の密着界面の剥離が、平面視において全方位に向かって進展した場合でも、ワイヤ接続領域10wbとチップ搭載領域10dの間には、必ず段差面13aが存在することになる。したがって、段差部13が設けられていない部分に回り込んで、剥離が進展することを防止できる。
【0048】
また、
図7に示すように、ずらし加工により形成された段差面13aと中央部11の上面11aとが成す角θ1は、例えば直角、あるいは、直角よりも小さい鋭角に形成されている。
図7に示す例では、段差面13aと中央部11の上面11aとが成す角θ1は、直角(90°)になっている。このように、剥離の進行方向に対して直角または鋭角を成すように設けられた段差面13aを配置すれば、さらに進展を抑制し易くなる。
【0049】
ところで、 周縁部12を中央部11よりも高い位置に配置して、周縁部12にワイヤ接続領域10wbを設ける構成としては、
図10に示す検討例のダイパッド10のように、周縁部12と中央部11の間に曲げ加工を施し、折り曲げ部13H1を形成した実施態様が考えられる。
図10は、
図9に対する検討例であるダイパッドの拡大断面図である。
図10に示すダイパッド10H1が有する折り曲げ部13H1は、
図4に示すリード4のアウタリード部4bと同様に、例えば、プレス加工による曲げ加工が施されている。折り曲げ部13H1の上面10aは、中央部11の上面11a、および周縁部12の上面12aに対して傾斜する、傾斜面13H1aになっている。
【0050】
ダイパッド10H1のように、周縁部12のワイヤ接続領域10wbと中央部11のチップ搭載領域10dの間に、傾斜面13H1aを設けた場合、図示しない平坦構造のダイパッドと比較すると、剥離の進展を抑制することができる。しかし、曲げ加工により形成された傾斜面13H1aは、
図7に示す段差面13aのように急峻な角度で形成することが難しい。このため、
図10に示すように、曲げ加工により形成された傾斜面13H1aと中央部11の上面11aとが成す角θ2は、直角よりも大きい、鈍角になるので、剥離の進展を抑制する効果は、
図7に示す実施態様と比較して相対的に低い。言い換えれば、
図7に示すようにずらし加工により段差面13aを形成すれば、
図10に示すように曲げ加工により傾斜面13H1aを形成する実施態様と比較して、剥離の進呈を抑制する効果が大きくなる。
【0051】
また、曲げ加工により傾斜面13H1aを形成した場合、平面視において、折り曲げ部13H1の配置スペースが必要になるので、ダイパッド10H1の平面サイズが大きくなる。一方、
図7に示すようにずらし加工により段差面13aを形成すれば、平面視において、段差部13の配置スペースは殆ど必要ないので、ダイパッド10の平面サイズを小さくできる。
【0052】
また、曲げ加工により傾斜面13H1aを形成した場合、上面11aに対して直交する方向の断面視(すなわち、
図10に示す断面視)において、中央部11の上面11aと傾斜面13H1aとの境界の角が丸くなり易い。一方、
図7に示すように、ずらし加工によりせん断面である段差面13aを形成した場合には、中央部11の上面11aと段差面13aの境界の角は丸くなり難い。なお、ずらし加工の場合でも、微視的には角が丸くなる場合もあるが、曲げ加工の場合と比較すると、丸くなった部分の半径(R径)が極めて小さい。言い換えると、
図7に示す例では、中央部11の上面11aと段差面13aの境界には、上面11aに対する傾斜角度が変化する、変局点(変局線)が存在する。
【0053】
このように、剥離の進行方向に対して傾斜角度が変化する変局点が存在するように段差面13aを形成することにより、変局点において、剥離の進展を抑制し易くなる。また、図示は省略するが、 例えば
図7に示す段差面13aのように、中央部11の上面11aに対して、直角を成す段差面13aを形成する方法として、エッチング処理など、化学反応を利用した除去処理により、ダイパッド10の中央部11の一部を除去して形成する実施態様も考えられる。ただし、エッチング処理で段差面13aを形成した場合には、中央部11の上面11aと段差面13aの境界は、角が丸くなり易い。したがって、剥離の進展を抑制する観点からは、
図7に示すようにずらし加工により、段差面13aを形成することが、特に好ましい。
【0054】
また、
図7に示す中央部11と周縁部12のずらし量、すなわち、段差面13a、13bの高さは、ダイパッド10の板厚(
図7に示す例ではZ方向の長さ)に対して、半分以下、例えば、1/3程度となっている。
図7に示す例では、中央部11および周縁部12の板厚は、それぞれ150μm程度である。これに対して、段差面13a、13bの高さ、すなわち、Z方向の長さは、50μm程度になっている。
【0055】
図7に示すように、ずらし加工を施す場合、段差面13a、13bの間に位置する連結部13jの厚さは、被加工物(本実施の形態ではダイパッド10)の板厚よりも薄くなる。したがって、ダイパッド10の中央部11と周縁部12を連結する連結部13jの強度を向上させる観点からは、段差面13a、13bの高さを、それぞれダイパッド10の板厚の半分以下にすることが好ましい。
図7に示す例では、連結部13jの厚さは、100μm程度になっている。
【0056】
また、
図7に示す例では、ワイヤ接続領域10wbと段差面13aの間に、複数のスリット15が形成されている。スリット15は、ダイパッド10の周縁部12が有する上面12aと下面12bのうち、一方の面から他方の面までを貫通するように形成された貫通溝である。
【0057】
上記したように、本実施の形態では、ずらし加工により、段差面13a、13bを形成するので、周縁部12の下面12bの位置は、中央部11の下面11bよりも高い位置に配置されている。したがって、
図9に示すように、周縁部12の下面12bは、封止体7に覆われている。また、本実施の形態では、周縁部12にワイヤ接続領域10wbを設けているので、周縁部12の幅(延在方向に対して直交する方向の長さ、
図7ではX方向の長さ)は、長くなる。例えば
図7に示す例では、周縁部12の幅は、周縁部12の厚さよりも大きく、2mm程度である。
【0058】
ところで、ダイパッド10と封止体7が剥離する原因として、半導体チップ3とダイパッド10の接着部で剥離が発生し、該剥離がダイパッド10の周縁部12に向かって進展するモードについて説明した。しかし、本実施の形態のようにダイパッド10の下面10bの一部(下面11b)を封止体7から露出させるタイプの半導体装置の場合、ダイパッド10と封止体7が剥離する原因には、他のモードがある。すなわち、ダイパッド10の露出部(下面11b)における封止体7とダイパッド10の密着界面から水分が侵入し、この水分により封止体7とダイパッド10が剥離する場合がある。この下面11b側からの剥離モードの原因となる水分は、主にパッケージの外部から侵入する。ダイパッド10の露出部の端部において、封止体7とダイパッド10が密着していれば水分の侵入を防止できる。しかし、ダイパッド10と封止体7の間に隙間がある場合、隙間に侵入した水分がダイパッド10に沿って内部に侵入し、ダイパッド10と封止体7の密着性を低下させる。
【0059】
詳細は後述するが、本実施の形態では、図示しない成形金型内に軟化した樹脂を圧入した後、硬化させる、所謂、トランスファモールド方式により、
図9に示す封止体7を形成する。この場合、本実施の形態のように、周縁部12の下面12bの面積が広くなると、下面12bの全体を覆うように樹脂を供給することが難しくなる。そして、周縁部12と封止体7の間に隙間が生じると、上記したように、隙間から水分が侵入し、ダイパッド10と封止体7の密着性を低下させる原因になることが懸念される。
【0060】
そこで、水分侵入の原因となる、封止体7とダイパッド10の間の隙間を低減する観点から、本実施の形態のように、面積が大きい周縁部12の下面12b側に樹脂を供給し易くするため、ワイヤ接続領域10wbと段差面13aの間に、スリット15を設けていることが好ましい。スリット15を設ければ、トランスファモールド方式により封止体7を形成する際に、スリット15を樹脂またはガスの流路として活用することができる。このため、周縁部12の下面12b側への樹脂の充填性が向上する。
【0061】
また、
図9に示す例では、スリット15は、ワイヤ接続領域10wbと中央部11の間、すなわち、周縁部12のうち、中央部11に側面10cよりも段差面13aに近い位置に設けられている。これにより、周縁部12の下面12b側への樹脂の充填性がさらに向上し、周縁部12の下面12bおよび下面10b側の段差面13bを樹脂(封止体7)で覆うことができる。
【0062】
また、仮に、上記した剥離の進展が、段差面13aを乗り越えて、周縁部12の上面12a側にまで進展した場合には、ワイヤ接続領域10wbと段差面13aの間にスリット15を設けることで、スリット15により剥離の進展を抑制することができる。ただし、周縁部12にワイヤ接続領域10wbを設け、かつ中央部11の下面11bと周縁部12を電気的に接続するためには、スリット15を平面視において、段差部13の周囲を囲むように連続的に設けることはできない。
【0063】
例えば、
図6に示す例では、吊りリード9の延長線上には、スリット15は形成されていない。また、ダイパッド10の各辺の中央部分には、ワイヤ接続領域10wbと中央部11を連結する連結部12jが設けられている。言い換えれば、本実施の形態では、ダイパッド10は、中央部11の周囲を断続的に囲むように、複数のスリット15が配置されている。
【0064】
したがって、例えば、
図6に示す段差部13のようにチップ搭載領域10dの周囲を連続的に囲む部分を設けず、単にスリット15のみで剥離の進展を防止しようとした場合には、吊りリード9の延長線上の部分や、連結部12jから回り込んでワイヤ接続領域10wbまで剥離が進展してしまう。つまり、本実施の形態では、チップ搭載領域10dの周囲を連続的に囲むように段差面13a(段差部13)を設け、かつ、段差面13aとワイヤ接続領域10wbの間にスリット15を設けることで、剥離がワイヤ接続領域10wbまで進展することを、さらに確実に防止できる。
【0065】
また、
図6および
図7に示す例では、周縁部12の上面12aの一部に設けられたワイヤ接続領域10wbには、例えば、銀(Ag)、あるいは金(Au)から成るめっき膜である、金属膜14が形成されている。ダイパッド10のワイヤ接続領域10wbの表面に、銀(Ag)や金(Au)から成る金属膜14を形成することにより、金(Au)からなるワイヤ5との接合強度を向上させることができる。
【0066】
<半導体装置の製造工程>
次に、
図1〜
図9を用いて説明した半導体装置1の製造工程について、説明する。本実施の形態における半導体装置1は、
図11に示す組立てフローに沿って製造される。
図11は、
図1〜
図9に示す半導体装置の組み立てフローを示す説明図である。
【0067】
1.リードフレーム準備工程;
まず、
図11に示すリードフレーム準備工程として、
図12に示すようなリードフレーム20を準備する。
図12は、
図11のリードフレーム準備工程で準備するリードフレームの全体構造を示す平面図、
図13は、
図12に示す複数の製品形成部のうちの一部の拡大平面図である。また、
図14は、
図11に示す段差面形成工程で段差面を形成する直前の状態を示す拡大断面図である。また、
図15は、
図14に示すダイパッドにプレス加工を施して段差面を形成した状態を示す拡大断面図である。また、
図16は、
図13に示すリードフレームのリードの延在方向に沿った拡大断面図である。また、
図17は、
図13に示すリードフレームの吊りリードの延在方向に沿った拡大断面図である。
【0068】
本工程で準備するリードフレーム20は、外枠20bの内側に複数の製品形成部20aを備えている。
図12に示す例では、リードフレーム20は、行方向に14個、列方向に4個の製品形成部20aが、マトリクス状に配置され、合計56個の製品形成部20aを備えている。リードフレーム20は、例えば銅(Cu)を主体とする金属膜から成る。
【0069】
また、各製品形成部20aの間には、各製品形成部20aの周囲をそれぞれ囲む枠部(ダム部)20cが配置されている。
図13に示すように枠部20cは、複数のリード4の周囲を囲むように形成され、
図12に示す外枠20bと一体に形成されている。
【0070】
また、
図13に示すように、各製品形成部20aの中央部には、平面視において四角形を成すダイパッド10が形成されている。ダイパッド10の4つの角部には、それぞれ複数の吊りリード9が接続され、製品形成部20aの角部に向かって延びるように配置されている。また、ダイパッド10の周囲には、複数の吊りリード9の間に、それぞれ複数のリード4が形成されている。また、複数のリード4は、ダイパッド10に対して、複数のリード4よりも外側に配置される枠部20cにそれぞれ接続されている。言い換えれば、リードフレーム20は、枠部20c、平面視において枠部20cの内側に配置されたダイパッド10、ダイパッド10と枠部20cを連結する複数の吊りリード9、およびダイパッド10と枠部20cの間に配置され枠部20cに接続される複数のリード4、を備えている。また、複数のリード4は、タイバー(ダム部)21を介して連結されている。このタイバー21は、後述する封止体形成工程において、樹脂の漏れを堰き止めるダム部として機能する。つまり、平面視における封止体7(
図1参照)の輪郭は、ダイパッド10の周囲を囲むタイバー21により規定される。
【0071】
また、各製品形成部20aの中央に配置されるダイパッド10の上面10aは、平面視において、チップ搭載領域10dを含む部分である中央部11と、中央部11を囲むように設けられている部分である周縁部12と、を有している。また、中央部11と周縁部12の境界には、中央部11の高さよりも周縁部12の高さが高くなるように、段差面13a(段差部13)が設けられている。また、
図7を用いて説明したように、ダイパッド10の下面10b側において、また、中央部11と周縁部12の境界には、中央部11の下面11bよりも周縁部12の下面12bの方が高い位置に配置されるように、段差面13b(段差部13)が設けられている。
【0072】
また、周縁部12の上面12aには、後述するワイヤボンディング工程でワイヤを接合するワイヤ接続領域(ワイヤボンディング領域)10wbが設けられている。周縁部12の上面12aの一部に設けられたワイヤ接続領域10wbには、例えば、銀(Ag)、あるいは金(Au)から成るめっき膜である、金属膜14が形成されている。また、ワイヤ接続領域10wbと段差面13aの間には、
図7に示すように、周縁部の上面12aと下面12bのうち、一方の面から他方の面までを貫通する複数のスリット15が形成されている。
【0073】
上記したリードフレーム20は、例えば
図11に示すフローによって製造される。まず、パターニング工程では、基材となる金属板(図示は省略)を準備して、該金属板に
図13に示す製品形成部20a内の構成部材(ダイパッド10、複数のリード4およびタイバー21)の外形形状を成形する。成形方法は特に限定されないが、例えばパンチとダイを用いたプレス加工、あるいはエッチングにより成形することができる。
図13に示す複数のスリット15は、本工程において複数のリード4と一括して形成することができる。
【0074】
次に、段差面形成工程では、
図7に示すようにダイパッド10の上面10aに段差面13aを、ダイパッド10の下面10bに段差面13bを、それぞれ形成する。
図7に示す段差部13は、
図14および
図15に示すように、それぞれ独立した治具(せん断治具)31、32で周縁部12と中央部11を押さえた状態でプレス加工を施すことにより形成される。
【0075】
図14および
図15に示すように、周縁部12を治具31で、中央部11を治具32で挟み込んで押さえる。治具31は、上治具31aと下治具31bを有し、上治具31aを周縁部12の被保持面である上面12aに、下治具31bを周縁部12の被保持面である下面12bに、それぞれ当接させた状態で周縁部12を挟み込んで固定する。一方、治具32は、上治具32aと下治具32bを有し、上治具32aを中央部11の上面11aに、下治具32bを中央部11の下面11bに、それぞれ当接させた状態でチップ接続部12を挟み込んで固定する。
【0076】
また、治具31、32は、互いに独立して移動させる事が可能な構造になっており、
図14に矢印を付して模式的に示すように、ダイパッド10の厚さ方向(Z方向)に沿って治具31、32の相対的な位置関係をずらすことができる。
図14に示すように、治具31、32で周縁部12と中央部11をそれぞれ別々に押さえた状態で、ダイパッド10の厚さ方向に治具31、32に押圧力を印加する(すなわち、プレス加工を施す)。この時、ダイパッド10の周縁部12と中央部11の境界部分には、治具31、32から押圧力が集中的に印加されるので、周縁部12と中央部11の厚さ方向における位置関係がずらされる。
【0077】
またこの時、ダイパッド10の周縁部12と中央部11の境界部分では、治具31、32から伝達された押圧力により、境界部分の一部がせん断変形する。ただし、治具31、32のずらし量を調整することにより、周縁部12と中央部11の境界部分を完全には切断せず、一部が連結された状態で残すことができる。
【0078】
つまり、ずらし加工を施すと、
図15に示すように、ダイパッド10には、周縁部12と中央部11を連結する連結部13jと、連結部13jの下方に向かう、段差面13bと、連結部13jの上端から上方に向かう段差面13aが、一括して形成される。
【0079】
段差面13aは、上治具32aが下方に押し込まれ、ダイパッド10の上面10a側の一部がせん断変形することにより形成された、せん断面であって、高さの異なる周縁部12の上面12aと中央部11の上面11aにそれぞれ連なる。また、段差面13aは、せん断変形により形成されるので、上面11aや上面12aとの間で成す角度を急峻にすることができる。例えば、上面11aおよび上面12aと、段差面13aが成す角度をそれぞれ90°にすることができる。
【0080】
また、段差面13bは、下治具31bが上方に押し込まれ、ダイパッド10の下面10b側の一部がせん断変形することにより形成された、せん断面であって、高さの異なる周縁部12の下面12bと中央部11の下面11bにそれぞれ連なる。また、段差面13bは、せん断変形により形成されるので、下面11bや下面12bとの間で成す角度を急峻にすることができる。例えば、下面11bおよび下面12bと、段差面13bが成す角度をそれぞれ90°にすることができる。
【0081】
このように、段差部13は、上記した通り、ずらし加工により形成するので、平面視における段差部13の配置スペースは殆ど必要ない(
図6参照)。また、上記した、ずらし加工は、治具31、32でダイパッド10を挟んだ状態で厚さ方向に変形させるので、変形用の治具の形状が異なる点を除けば、
図11に示すオフセット工程で
図17に示す吊りリード9に曲げ加工を施す工程と同様の工程で形成することができる。
【0082】
また、上記したずらし加工法の場合、ダイパッド10の一部をせん断変形させるので、ずらし加工後の反発力、すなわち、加工後のダイパッド10が元の形状に戻ろうとする力が小さい(殆ど無い)。したがって、治具31、32の移動量を制御すれば、中央部11の下面11bと周縁部12の下面12bの高低差を精度良く制御することができる。
【0083】
次に、オフセット工程では、
図16に示すように、ダイパッド10の上面10a位置(高さ)が、リード4(インナリード部4a)の位置(高さ)よりも低い位置となるように加工(オフセット加工)する。オフセット加工の方法は、例えば、成形金型を用いてプレス加工することにより、
図17に示す吊りリード9を変形させて、オフセット(ダウンセット)することができる。
【0084】
2.半導体チップ搭載;
次に、
図11に示す半導体チップ搭載工程として、
図18および
図19に示すように半導体チップ3を、ダイパッド10上にダイボンド材8を介して搭載する。
図18は、
図13に示すダイパッド上に、ボンディング材を介して半導体チップを搭載した状態を示す拡大平面図、
図19は、
図16に示すダイパッド上に、ボンディング材を介して半導体チップを搭載した状態を示す拡大断面図である。
【0085】
本実施の形態では、
図19に示すように、半導体チップ3の裏面3b(複数のパッドPDが形成された表面3aの反対側の面)をダイパッド10の上面10aと対向させた状態で搭載する、所謂フェイスアップ実装方式で搭載する。また、
図18に示すように、半導体チップ3はダイパッド10の中央部11のチップ搭載領域10dに、表面3aの各辺が、ダイパッド10の各辺に沿って配置されるように搭載する。
【0086】
本実施の形態では、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂であるダイボンド材8(
図19参照)を介して半導体チップ3を搭載するが、ダイボンド材8は、硬化(熱硬化)させる前には流動性を有するペースト材である。このようにペースト材をダイボンド材8として用いる場合には、まず、ダイパッド10上に、ダイボンド材8を塗布し、その後、半導体チップ3の裏面3bをダイパッド10の上面10aに接着する。そして、接着後に、ダイボンド材8を硬化させる(例えば熱処理を施す)と、
図19に示すように、半導体チップ3はダイボンド材8を介してダイパッド10上に固定される。
【0087】
なお、本実施の形態では、ダイボンド材8に、熱硬化性樹脂からなるペースト材を用いる実施態様について説明したが、種々の変形例を適用することができる。例えば、ペースト材ではなく、両面に接着層を備えるテープ材(フィルム材)である接着材を、予め半導体チップ3の裏面3bに貼り付けておき、テープ材を介して半導体チップ3をダイパッド10上に搭載しても良い。
【0088】
また、本実施の形態では、チップ搭載領域10dを含む上面10aの全体が粗面化された状態で半導体チップ3を搭載する。このため、ダイボンド材8とダイパッド10の密着界面の面積が増加するので、ダイボンド材8の剥離を抑制できる。したがって、剥離の進展を止める観点からは、チップ搭載領域10dの表面粗さは問わないが、ダイボンド材8とダイパッド10の剥離を抑制する観点からは、チップ搭載領域10dの表面粗さを下面10bよりも粗くすることが好ましい。
【0089】
3.ワイヤボンディング工程;
次に、
図11に示すワイヤボンディング工程として、
図20および
図21に示すように、半導体チップ3の複数のパッドPDと複数のリード4とを、複数のワイヤ(導電性部材)5aを介して、それぞれ電気的に接続する。また、本工程では、ワイヤ5bを介して半導体チップ3とダイパッド10を電気的に接続する。
図20は、
図18に示す半導体チップと、複数のリードおよびダイパッドを、ワイヤを介して電気的に接続した状態を示す拡大平面図、
図21は、
図19に示す半導体チップと複数のリードを、ワイヤを介して電気的に接続した状態を示す拡大断面図である。また、
図22は、
図21のダイパッドのワイヤ接続領域周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【0090】
本工程では、例えば
図21に示すように、各製品形成部20aのダイパッド10上に半導体チップ3が搭載されたリードフレーム20を、ヒートステージ(加熱台)HSに配置する。そして、半導体チップ3の複数のパッドPDと複数のリード4とを、複数のワイヤ5aを介して電気的に接続する。また本工程では、複数のパッドPDの一部とダイパッド10のワイヤ接続領域10wb(
図22参照)を、ワイヤ5bを介して電気的に接続する。ワイヤ5は金属からなり、本実施の形態では、例えば金(Au)からなる。また、
図22に示すように、ワイヤ接続領域10wbの上面12aには、金属膜14が形成されており、本工程では、ワイヤ5を金属膜14に接合する。
【0091】
ワイヤ5の接続方式は、例えば
図21に示すキャピラリCPを介してワイヤ5を供給し、超音波と熱圧着を併用してワイヤ5を接合する、所謂、ネイルヘッドボンディング方式によりワイヤ5を接続する。本実施の形態では、接合強度を向上させるため、接合対象物であるパッドPD、リード4およびダイパッド10のワイヤ接続領域10wbをそれぞれ加熱した状態で接合する。
【0092】
パッドPD、リード4およびダイパッド10に熱を供給する熱源は、例えば、ヒートステージHSに内蔵されたヒータ(熱源)HTである。詳しくは、ヒートステージHSのダイパッド保持面HSaとダイパッド10の下面10bを密着させることで、ダイパッド10の下面10b側からダイパッド10および半導体チップ3が備えるパッドPDを加熱する。また、ヒートステージHSのリード保持面HSbとリード4の下面を密着させることで、リード4の下面側からリード4の上面(ワイヤ5aを接続する面)を加熱する。このように被接合部材であるパッドPD、リード4、およびダイパッド10のワイヤボンディング領域を加熱することで、ワイヤ5と、被接合物の接合強度を向上させることができる。
【0093】
また、本実施の形態では、 上記したように中央部11と周縁部12の高さが異なり、相対的に高い位置に配置される周縁部12にワイヤ5を接続するので、ヒートステージHSは、
図22に示すように、ダイパッド保持面HSaよりも高い位置に配置される周縁部保持面HScを有している。この周縁部保持面HScは、ダイパッド保持面HSaよりも高く、かつ、
図21に示すリード保持面HSbよりも低い位置に配置され、ダイパッド10の周縁部12の下面12bを密着させることができる高さに設けられている。
【0094】
このように、周縁部12の下面12b、言い換えればダイパッド10のワイヤ接続領域10wbの反対側の面に、ヒートステージHSの一部を密着させることで、ワイヤ接続領域10wbを効率的に加熱することができる。
【0095】
4.封止工程;
次に、
図11に示す封止工程(封止体形成工程)として、
図23および
図24に示すように、封止体(樹脂体)7を形成し、半導体チップ3(
図24参照)、複数のワイヤ5(
図24参照)、リード4のインナリード部4a、およびダイパッド10(
図24参照)の上面10a(
図24参照)を封止する。
図23は、
図20に示すリードフレームの製品形成部に、封止体を形成した状態を示す拡大平面図、
図24は
図21に示すリードフレームの製品形成部に、封止体を形成した状態を示す拡大断面図である。また、
図25は、
図24の一部を拡大した断面において、封止用の樹脂の流れを模式的に示す説明図である。
【0096】
本工程では、まず、
図24に示すように、金型面(第1金型面)36a、およびこの金型面36aに形成されたキャビティ(凹部)36bを有する上型(第1金型)36と、上型36の金型面36aに対向する金型面(第2金型面)37a、およびこの金型面37aに形成されたキャビティ(凹部)37bを有する下型(第2金型)37とを備えた成形金型35を準備する。そして、半導体チップ3およびダイパッド10が上型36のキャビティ36bおよび下型37のキャビティ37b内に位置するように、ワイヤボンディング工程を施したリードフレーム20を成形金型35の内部(上型36と下型37との間)に配置する。ここで、本実施の形態では、ダイパッド10の下面10bを、封止体7の下面7b側において露出させるため、下面10bは、下型37のキャビティ37bの底面に当接させる。
【0097】
次に、リードフレーム20を上型36と下型37とでクランプする。このとき、リードフレーム20をクランプする際には、リードフレーム20に形成された複数のリード4の一部(少なくとも
図23に示すタイバー21と重なる部分)をクランプしている。そして、リード4の一部(インナリード部4a)はキャビティ36b、37b内に配置され、リード4の他部(アウタリード部4b)は、キャビティ36b、37bの外側で、成形金型35により、クランプされる。また、キャビティ37bは、その深さ(金型面37aの高さからキャビティ37bの底面の高さまでの距離)が、ダイパッド10のオフセット量に応じて(オフセット量とキャビティ37bの深さが同じになるように)形成されている。このため、リードフレーム20を上型36と下型37とでクランプすると、ダイパッド10の下面10bは、下型37のキャビティ37bの底面と密着する。
【0098】
次に、リードフレーム20を上型36と下型37とでクランプした状態で、上型36のキャビティ36bおよび下型37のキャビティ37bを重ね合わせて形成される空間内に樹脂(例えば加熱により軟化させた樹脂)7p(
図24参照)を供給する。そして、半導体チップ3、複数のワイヤ5、複数のリード4の一部(インナリード部4a)、およびダイパッド10の上面10aをこの封止用の樹脂7pで封止する。最後に、供給された樹脂7pを熱硬化させることで、封止体7を形成する。このような封止方式をトランスファモールド方式と呼ぶ。
【0099】
トランスファモールド方式では、供給部(ゲート部)からキャビティ36b、37b内部に樹脂を供給(圧入)し、排出部(ベント部)からキャビティ36b、37b内の残ガスや余剰な樹脂7pを排出する。キャビティ36b、37bに対する供給部の位置により分類すると、キャビティの36bの上方に供給部を配置するトップゲート方式、およびキャビティ36b、37bの側面側に供給部を配置するサイドゲート方式に大別できる。本実施の形態では、成形金型の小型化の観点、あるいは、成形金型のメンテナンスの容易さの観点で有利なサイドゲート方式を適用している。
【0100】
本実施の形態では、
図24に示すようにダイパッド10の下面10bの一部、詳しくは中央部11の下面11bが露出するように封止体7を形成するが、上記したように、スリット15を設けない場合には、周縁部12の幅が大きい場合には、周縁部12の下面12bの全体を覆うように樹脂7pを供給することが難しくなる。例えば、
図25に示す例では、周縁部12の幅(延在方向と直交する方向の長さ)は、ダイパッド10の厚さよりも大きく、例えば2倍程度である。
【0101】
図25に示すように、周縁部12の下面12b側の空間は、周縁部12の下面12b、段差面13b、および下型37のキャビティ37bに囲まれている。このため、側面10c側から樹脂7pを供給する場合、樹脂7pの供給口から、空間内の残存ガスの排出する必要がある。そして、周縁部12の幅が大きくなる程、供給圧力の反対方向に作用する圧力(静圧)が大きくなるので、残存ガスの排出が困難になって、樹脂7pの充填性が低下する。
【0102】
また、樹脂7pは封止体7の線膨張係数を半導体チップ3の線膨張係数に近づけるため、シリカなど、多数のフィラ粒子7fを含有している。そして、フィラ粒子7fが周縁部12の下面12bと、下型37のキャビティ37bの間に挟まると、フィラ粒子7fが樹脂7pの流れを堰き止める場合がある。
【0103】
そこで、本実施の形態では、面積が大きい周縁部12の下面12b側に樹脂を供給し易くするため、ワイヤ接続領域10wbと段差面13aの間に、スリット15を設けている。スリット15を設ければ、例えば、ダイパッド10の側面10cと下型37の間から樹脂7pを供給する場合には、スリット15は、残存ガスなどを排出するベント部として機能する。また、スリット15から樹脂7pが供給された場合には、ダイパッド10の側面10cと下型37の間の開口部が、残存ガスなどを排出するベント部として機能する。これにより、周縁部12の下面12b側への樹脂の充填性を向上させることができる。
【0104】
また、スリット15は、ワイヤ接続領域10wbと中央部11の間、すなわち、周縁部12のうち、中央部11に側面10cよりも段差面13aに近い位置に設けられている。これにより、仮に、フィラ粒子7fが周縁部12の下面12bと、下型37のキャビティ37bの間に挟まった場合でも、樹脂7pの供給圧力の反対方向に作用する静圧を小さくすることができるので、周縁部12の下面12b側への樹脂の充填性をさらに向上させることができる。つまり、本実施の形態によれば、ワイヤ接続領域10wbと段差面13aの間に、スリット15を設けることにより、水分侵入の原因となる、封止体7とダイパッド10の間の隙間を低減することができる。
【0105】
次に、キャビティ36b、37b内に供給された樹脂7pを硬化させることで、
図23および
図24に示す封止体7が得られる。樹脂7pに、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂を用いれば、加熱処理を施すことで、硬化させることができる。
【0106】
5.外装めっき工程;
次に、
図11に示す外装めっき工程として、
図26に示すように封止体7から露出する複数のリード4の露出面(アウタリード部4b)に金属膜(外装めっき膜、半田膜)SDを形成する。
図26は、
図24に示す封止体から露出する複数のリードおよびダイパッドの露出面に金属膜(外装めっき膜、半田膜)を形成した状態を示す拡大断面図である。
【0107】
本工程では、被めっき加工物であるリードフレーム20を、めっき液(図示は省略)が入っためっき槽(図示は省略)内に配置して、例えば、電解めっき法により金属膜SDを形成する。この電解めっき法によれば、封止体7から露出しているリードフレーム20の各領域に一括して外装めっき膜を形成することができる。したがって、リード4の露出部に加え、ダイパッド10の露出部(中央部11の下面11b)を覆うように金属膜SDが形成される。また、枠部20c(
図23参照)にも金属膜SDが形成される。
【0108】
6.リード成形工程;
次に、リード成形工程として、リードフレーム20の枠部20cに連結された複数のリード4の連結部を切断した後、リード4に曲げ加工を施して成形する。
図27は、
図11に示す外装めっき工程で金属膜を形成した複数のリードを、リードフレームの枠部から切断し、成形した状態を示す拡大平面図である。なお、
図23に対する断面図は、
図4と同様なので図示は省略する。また、
図27は、
図11に示す個片化工程が完了した状態を示しており、
図23に示す吊りリード9も切断されている。
【0109】
本工程では、まず、枠部20cにそれぞれ連結されて一体化している複数のリード4を連結部で切断し、それぞれ独立した部材とする(リードカット工程)。なお、複数のリード4を連結するタイバー21は、封止体工程の後、かつ、外装めっき工程の前に隣り合うリードの間で切断しておく(タイバーカット工程)。このタイバーカット工程は、外装めっき工程の後で行うこともできるが、外装めっき工程の前にタイバー21を切断することで、切断面にも金属膜SDが形成される。したがって、
図1に示す半導体装置1を実装する際の半田の濡れ性を向上させる観点からは、外装めっき工程の前にタイバー21を切断することが好ましい。
【0110】
タイバーカット工程およびリードカット工程では、リードフレーム20の一方の面(例えば下面)側にダイ(支持部材;図示は省略)、他方の面(例えば上面)側にパンチ(切断刃;図示は省略)をそれぞれ配置してプレスすることでリード4を切断する。このようにプレス加工により切断されたリード4の端部は、
図4に示すように、略平坦な切断面を有し、切断面において、リード4の基材が金属膜SDから露出する。本工程により、複数のリード4は、それぞれが分離した独立部材となる。
【0111】
次に、切断された複数のリード4に曲げ加工を施して成形する(曲げ加工工程)。本実施の形態では、例えば、
図4に示すようにアウタリード部4bをガルウィング状に成形する。また、必要に応じて、リード4(アウタリード部4b)の先端をさらに切断し、リード4の長さを調整する工程を行っても良い。
【0112】
7.個片化工程;
次に、
図11に示す個片化工程として、
図27に示すように、枠部20cに連結されている複数の吊りリード9(
図23参照)を切断し、製品形成部20a毎に個片化して複数の半導体装置1を取得する。
【0113】
個片化方法は特に限定されないが、前記したリードカット工程と同様に、図示しない切断金型を用いてプレス加工により切断する方法を適用することができる。本工程の後、外観検査、電気的試験など、必要な検査、試験を行い、合格したものが、
図1〜
図9に示す完成品の半導体装置1となる。そして、半導体装置1は出荷され、あるいは図示しない実装基板に実装される。
【0114】
<変形例>
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0115】
例えば、上記実施の形態では、ダイパッド10の下面10bが露出する半導体パッケージの例としてQFP型の半導体装置1を取り上げて説明したが、適用される半導体パッケージはQFP型には限定されない。図示は省略するが、例えば複数のリードの一部が、封止体7の下面(実装面)において露出する、QFN(Quad Flat Non-leaded package)型の半導体装置に適用することができる。
【0116】
また、例えば、上記実施の形態では、中央部11の周囲を連続的に囲むように段差面13aを形成する実施態様について説明した。例えば
図6に示すダイパッド10のように、平面視において、四辺形を成すダイパッド10の四辺のそれぞれに、ワイヤ接続領域10wbを設ける場合には、複数のワイヤ接続領域10wbのそれぞれに、剥離が進展することを抑制する観点からは、中央部11の周囲を段差面13aで連続的に囲むことが好ましい。ただし、変形例として、四辺のうちの一部(例えば一辺)にワイヤ接続領域10wbを設け、他の辺には、ワイヤ接続領域10wbを設けない場合もある。この場合には、ワイヤ接続領域10wbが形成された辺において、ワイヤ接続領域10wbと中央部11との間に段差面13aが形成されていれば、他の辺には段差面13aは形成されていなくても良い。
【0117】
また、例えば、上記実施の形態では、ダイパッド10の周縁部12を挟んでずらし加工を施し、中央部11との境界をせん断変形させることで、段差面13aを形成する実施態様について説明した。この場合、周縁部12の下面12bと中央部11の下面11bの間には、段差面13bが形成されている。しかし、中央部11の上面11a側における剥離の進展を抑制する観点からは、ダイパッド10の下面10b側には、段差面13bが形成されていなくても良い。例えば、上記実施の形態に対する変形例として、周縁部12の上面12a側に段差面13aを形成し、周縁部12の下面12b側には段差面13bを形成しない実施態様を適用することができる。この場合、周縁部12の下面12bは、中央部11の下面11bと同じ高さに位置することになる。ただし、ダイパッド10が封止体7から脱落することを防止する観点、およびダイパッド10の下面10b側からの水分の侵入を抑制する観点からは、上記実施の形態で説明したように、周縁部12の下面12bを中央部11の下面11bよりも高い位置に配置し、下面11bを封止体7で覆うことが好ましい。
【0118】
また、例えば、上記実施の形態では、ダイパッド10の表面の平坦度については、特に言及していないが、ダイパッド10と封止体7との密着界面に対して粗面化処理を施し、ダイパッド10と封止体7の密着性をさらに向上させることもできる。つまり、ダイパッド10の中央部11の上面11aの表面粗さを、下面11bの表面粗さよりも大きく(粗く)することができる。ただし、ワイヤ接続領域10wbに粗面化処理を施すと、ワイヤ5の接続強度が低下する懸念があるので、中央部11の上面11aに粗面化処理を施す場合でも、周縁部12の上面12aには粗面化処理を施さないことが好ましい。つまり、上面11aの表面粗さを、上面12aの表面粗さよりも大きく(粗く)することが好ましい。
【0119】
また、前記実施の形態では、封止体7を形成した後で、例えば半田から成る金属膜(外装めっき膜)SDを形成することで、図示しない実装基板に実装する際の半田の濡れ性を向上させる方法(後めっき法)について説明したが、以下の変形例を適用することができる。すなわち、半導体装置の端子表面における半田の濡れ性を向上させる技術として前述した、後めっき法の他、リードフレームの表面にあらかじめ金属膜を形成しておく、所謂、先めっき法がある。前記実施の形態で説明した技術は、この先めっき法の場合にも適用することができる。
【0120】
先めっき法を適用した場合には、
図11に示すリードフレーム準備工程において、例えば段差面形成工程またはオフセット工程の後に、半田の濡れ性を向上させる表面金属膜をリードフレームの露出面全体に形成する、表面金属膜形成工程が追加される。この表面金属膜形成工程では、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)からなる表面金属膜をめっき法により形成する。また、先めっき法を適用した場合には、
図11に示す外装めっき工程を省略できる。このため、先めっき法を適用した半導体装置の場合、
図9に示すような半田からなる金属膜SDは形成されない。また、先めっき法を適用した半導体装置の場合、ダイパッド10およびリード4の表面(上面および下面)全体に、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)からなる表面金属膜が形成される。
【0121】
また、上記した各変形例の構成を組み合わせて適用することができる。