【実施例1】
【0014】
本実施例が適用される沸騰水型原子力プラントの概略構造を、
図1を用いて説明する。沸騰水型原子力プラント1は、原子炉2及び原子炉格納容器3(以下、PCVと略す)を備えている。PCVは、原子炉建屋4内に設置されて、上端部に原子炉格納容器上蓋5(以下、PCVトップヘッドと略す)が取り付けられて密封されている。PCVは、内部に形成されたドライウェル6、及び冷却水が充填された圧力抑制プールが内部に形成された圧力抑制室7を有する。ドライウェルに連絡されるベント通路8の一端が、圧力抑制室内の圧力抑制プールの冷却水中に浸漬されている。PCVトップヘッドの真上に複数に分割された放射線遮へい体であるシールドプラグ9が配置され、これらのシールドプラグが、原子炉建屋の運転床10(以下、オペフロと略す)に設置されている。
【0015】
原子炉建屋には、PCVが内部に設置されており、このPCVの上部には、原子炉停止時に原子炉圧力容器のふたを開けて燃料を取り出し、隣接する使用済み燃料プールへ移す際に通すプールであって、放射線の遮へい等のために水を張るための原子炉ウェル11が設けれている。さらに、この原子炉ウェルを挟み込むように、ドライヤ・セパレータプール12(以下、DSPと略す)及び使用済みの燃料を一時的に保管する使用済燃料貯蔵プール13(以下、SFPと略す)が設けられている。DSPは定期検査時に蒸気乾燥器や気水分離器といった炉内構造物を仮置きする場所として使われる。
【0016】
原子炉は、原子炉圧力容器上蓋14(以下、RPVトップヘッドと略す)が取り付けられて構成される原子炉圧力容器15(以下、RPVと略す)、核燃料物質を含む複数の燃料集合体が装荷された炉心16、蒸気乾燥器17及び気水分離器18を備えている。炉心、蒸気乾燥器及び気水分離器はRPV内に配置される。RPV内に設置された炉心シュラウド19が、炉心を取り囲んでいる。炉心内に装荷された各燃料集合体は、下端部が炉心支持板20によって支持され、上端部が上部格子板21によって保持される。気水分離器は炉心の上端部に位置する上部格子板よりも上方に配置され、蒸気乾燥器が気水分離器の上方に配置される。
【0017】
RPV内には緊急時に炉心を冷却する為の炉心スプレイ系スパージャが設けられている。炉心スプレイ系スパージャは、炉心スプレイライン22およびスパージャノズル(図示せず)より構成されており、PCVの外部から冷却水を注入可能なように構成されている。炉心スプレイ系23(以下、CS系と略す)は,高圧炉心スプレイ系と,低圧炉心スプレイ系の2系統の配管から構成されている。それぞれの系統には、炉心スプレイ系ポンプを介して、緊急時に炉心を冷却するための冷却水が注入される。なお、CS系注水配管の途中の2箇所にはバルブが設けられている。
【0018】
複数の制御棒案内管24が炉心の下方に配置され、複数の制御棒案内管を含むサポートシリンダが形成されている。炉心内の燃料集合体間に出し入れされて原子炉出力を制御する制御棒が、各制御棒案内管内に配置されている。複数の制御棒駆動機構ハウジング25が、RPVの下鏡に取り付けられている。制御棒駆動機構(図示せず)が、それぞれの制御棒駆動機構ハウジング内に設置され、制御棒案内管内の制御棒と連結されている。RPV内に設置された蒸気乾燥器、気水分離器、炉心シュラウド、上部格子板、炉心支持板、サポートシリンダ、制御棒案内管、炉心シュラウド下部胴は、炉内構造物である。
【0019】
RPVは、PCV内の底部に設けられたコンクリートマット26上に設けられた筒状のペデスタル27上に据え付けられている。筒状のγ線遮蔽体が、ペデスタルの上端に設置され、RPVを取り囲んでいる。
【0020】
炉心溶融が生じた場合の燃料デブリの形態の概要について
図1を用いて説明する。非常用冷却設備の機能が喪失しRPV内に冷却水が注入されない場合、核燃料の崩壊熱により、燃料集合体内の燃料ペレットおよび被覆管が溶融することが考えられる。この溶融した核燃料は、もともと存在していた位置28、RPVの炉底部29、又は、PCVの底部であるコンクリートマット上30に存在すると推定されている。場合によっては、もともと存在していた位置には殆ど残っておらず、RPVの炉底部、又は、PCVの底部であるコンクリートマット上に相当数が存在していると推定される(非特許文献2)。
【0021】
本実施例では、このような原子力プラントから燃料デブリを搬出することが出来る方法を提供するものである。なお、本実施例では燃料デブリが、もともと存在していた位置、RPVの炉底部、及び、PCVの底部であるコンクリートマット上に存在する場合を想定して説明するが、このような状態の原子力プラントに限定されるものではない。また、廃炉といった作業にも適用可能である。
【0022】
図2にシールボックス装置31の設置工程を示す(ステップ1)。シールボックス装置を高圧炉心スプレイ系又は低圧炉心スプレイ系のどちらか一方のCS系配管23へ接続する。高圧炉心スプレイ系、低圧炉心スプレイ系のどちらの配管へ接続しても構わない。シールボックス装置の接続が完了したら、シールボックス装置より、CS配管内移動装置32を投入する。
【0023】
図3にCS配管内移動装置の挿入工程を示す(ステップ2)。CS配管内移動装置は、管の先端部にカメラ、センサ、切断装置等を備えた構成であり、医療分野で使用されている内視鏡と似た構造をもつものである(詳細は図示せず)。CS配管内移動装置の先端がRPV内部にまで到達したら、CS配管内移動装置に設けられた切断装置を用いてRPV内に設けられている炉心スプレイ系スパージャに穿孔を行なう。その後、炉心スプレイ系スパージャに設けられた孔33を通じて、CS配管内移動装置に設けられたカメラやセンサを用いてRPV内部の状況を確認する。
【0024】
図4に炉心への遮蔽鉄粉34を投入してRPVからの漏洩水を減少させる又は止水する工程を示す(ステップ3)。CS配管内移動装置にはホース35が設けられており、このホースを利用してシールボックス装置から炉心内部に、遮蔽鉄粉を直接注入する。核燃料が溶融したRPVの炉底部では、複数の穴や亀裂が生じているものと推定される。この状態ではRPV内へ注水を行なっても、穴や亀裂を通じて注水した水が漏洩するため、RPV内を冠水状態にする事は難しいと考えられる。そこで、
図4に示すように、炉心に遮蔽鉄粉を注入することで、これら穴や亀裂を塞ぎ、RPVからの漏洩水を減少又は止水することが可能となる。また、遮蔽鉄粉を注入することで、放射線の遮蔽効果も有するため、作業環境の線量低減効果も有する。注入する材料としては遮蔽鉄粉以外を用いても良く、B4C(ボロンカーバイド)等が挙げられる。炉心内に遮蔽鉄粉を注入すると、RPV内部の水位が上昇する。ここで、予めRPV内部にのみ水張りを行うことで、RPV底部に溶融した燃料デブリからの放射線の影響を減少させることが可能となるため、結果的に原子炉建屋のオペレーションフロアでの線量を減らすことが可能となり、燃料の取り出し作業の効率化が図れる。また、必要最小部分のみを水張りするため作業効率も高い。
【0025】
図5に原子炉建屋のオペフロへ開閉式遮蔽壁36を設置する工程を示す(ステップ4)。開閉式遮蔽壁は2分割可能なスライド式の遮蔽壁37を有しており、このスライド式の遮蔽壁を移動させることで、原子炉建屋におけるオペフロ下部の空間とオペフロ上部の空間とを隔離状態又は貫通状態とすることが可能となる。また、遮蔽壁37は原子炉ウェル上とDSP上に別々に設けられており、すなわち2セット分が存在する。この遮蔽壁は、鉄製の板で構成することも可能だが、この場合には放射線を遮蔽するのに十分な厚さの板が必要となるため、原子炉建屋への重量負担が大きくなることが想定される。このような場合には、内部を空洞として、遮蔽効果を有する水又はホウ酸水を注入可能なように遮蔽壁を構成してもよい。このような構成とした場合には、作業ごとに必要な遮蔽能力を有する最適量の水又はホウ酸水を注入することで、必要以上に重量物を原子炉建屋に設ける必要がなくなるため、原子炉建屋への重量負担低減が図れる。遮蔽壁にはボーリング装置の穿孔機を挿入するためのボーリング用加工孔38が設けられており、通常時は遮蔽プラグで塞がれている。
【0026】
図6に第1ハウス39の設置工程を示す(ステップ5)。第1ハウス内には横行台車40および走行台車41を有するクレーン装置42が設けられており、第1ハウス内を水平面内で自由に移動可能なように構成されている。また、第1ハウスの側面43及び天井面44には装置や部品等を出し入れ可能な扉が設けられている(図示せず)。この扉は密閉構造を有しており、第1ハウスの内部空間と外部空間とを隔離可能なように構成されている。なお、第1ハウスは別に設けられたクレーン装置等によって設置される(図示せず)。
【0027】
図7にシールドプラグ(上段、中段)の取り外しの工程を示す(ステップ6)。開閉式遮蔽壁の遮蔽壁をスライドして開き、第1ハウス内のクレーンによって上段シールプラグ、及び中段シールプラグを取り外す。取外したシールドプラグは、第1ハウスに設けた扉から搬出される。下段シールプラグは原子炉建屋内のオペフロ下部空間のバウンダリを保つためにこの時点では取外さずに残しておく。また、上段及び中段シールドプラグの取外しが終了したら、遮蔽壁をスライドして閉じる。
【0028】
図8に下段シールプラグへの穿孔工程を示す(ステップ7)。第1ハウス内に設けられたボーリング装置45を用いて下段シールドプラグに穿孔を行なう。開閉式遮蔽壁の遮蔽壁には、ボーリング装置の穿孔機46が挿入可能なようにボーリング用加工孔が設けられている。ボーリング用加工孔は通常時(ボーリング加工を行なわない場合)は遮蔽プラグが取り付けられており、遮蔽壁によるバウンダリの構築には問題が無い。穿孔機46により下段シールドプラグに穿孔を行なう。
【0029】
図9にシールドプラグ下面の除染工程について示す(ステップ8)。下段シールドプラグに設けた孔から除染装置47の先端部を挿入して、シールドプラグ下面の除染を行なう。炉心の溶融の際に、放射性物質がRPV及びPCVの外部へ放出されている可能性もある。このため下段シールドプラグの下面にも放射性物質が付着している可能性があるため、除染を行なう。また、PCVトップヘッドの表面及び原子炉ウェル内面も除染を行なっても良い。除染には、高圧水による高圧洗浄装置や放射性物質を吸着するフィルム(例えば、空洞を持った繊維状の物質で構成されており、この空洞内部に放射性物質を取り込ませるフィルムや、粘着性を有するフィルム等)を使用する。除染が完了したら、次の工程へ進む。
【0030】
図10に下段シールドプラグ取り外し工程を示す(ステップ9)。開閉式遮蔽壁の遮蔽壁をスライドして開き、第1ハウス内のクレーン装置42を利用して下段シールドプラグを取り外す。なお、遮蔽壁を開いても、PCVトップヘッドの表面及び原子炉ウェル内面は除染がされているので、放射性物質が飛散することは防止されている。下段シールドプラグを取外したら、開閉式遮蔽壁の遮蔽壁を再び閉じる。
【0031】
図11にPCVトップヘッドへの穿孔工程を示す(ステップ10)。第1ハウス内に設けられたボーリング装置45を用いて、PCVトップヘッドに穿孔を行い、さらに、PCVのトップヘッド内面の除染を行う(ステップ11)。この時に、RPVトップヘッドの表面を同時に除染しても良い。
【0032】
図12にPCVトップヘッド5の取り外しの工程を示す(ステップ12)。開閉式遮蔽壁の遮蔽壁をスライドして開き、その後、PCV本体と接続しているPCVトップヘッドのボルト48を取外す。なお、遮蔽壁を開いても、PCVトップヘッドの内面及びRPVトップヘッドの表面は除染がされているので、放射性物質が飛散することは防止されている。PCVトップヘッドを第1ハウス内のクレーン装置によって第1ハウス内へ移動させて、開閉式遮蔽壁の遮蔽壁を再び閉じる。第1ハウスの扉を通じてPCVトップヘッドを外部へ搬出する。次に、RPV表面に設けられているRPV保温材(図示せず)を除染し、RPV保温材も取り外す(ステップ13)。
【0033】
図13にDSPゲート49の取り外し、開閉遮蔽壁50取り付け工程を示す(ステップ14)。原子炉建屋には原子炉ウェルとDSPを隔離するためのDSPゲートが設けられている。DSPゲートを取外し、その後、DSPゲートが設けられていた部分に開閉遮蔽壁を設置する。垂直に設けられた開閉遮蔽壁はスライド機構51が設けられており、このスライド機構によって、遮蔽壁を開閉することが可能となっている。
【0034】
図14に第2ハウス52の設置工程を示す(ステップ15)。DSP内に第2ハウスを設置する。第2ハウスには、第1ハウスと同様に側面及び天井面に装置や部品等を出し入れ可能な扉が設けられている(図示せず)。
【0035】
図15に第3ハウス53の設置及び作業員待機・操作室54の設置工程を示す(ステップ16)。第2ハウスの上部に、横行台車および走行台車を有するクレーン装置42が設けられた第3ハウスを設置する。第3ハウスにも側面及び天井面には装置や部品等を出し入れ可能なように扉が設けられている(図示せず)。また、作業員待機・操作室も設置する。
【0036】
図16にクレーン装置の設置工程を示す(ステップ17)。第3ハウスの設置が完了したら、第2ハウスのクレーン装置を延長して、第2ハウス及び原子炉ウェル内を移動可能となるように横行台車40および走行台車41を有するクレーン装置を設置する。垂直に設けられた開閉遮蔽壁には適宜、クレーンの桁を逃がすように溝が設けられる。また、原子炉ウェル内にはRPV内部の炉内構造物を搬出する際に除染を実施するための除染装置56が設置される。
【0037】
図17にRPVトップヘッドへの穿孔工程を示す(ステップ18)。第1ハウス内に設けられたボーリング装置45によって、RPVトップヘッド14に孔を設ける。この作業の際には、原子炉ウェルと第1ハウスを隔離する遮蔽壁及び原子炉ウェルと第2ハウスを隔離する遮蔽壁は閉じられた状態である。その後、
図18に示すようにRPVトップヘッドの内面の除染を実施する(ステップ19)。除染後に、RPVヘッドのボルト57を取り外し、RPVトップヘッドを第2ハウスから延長して設置したクレーン装置によって第2ハウス内へと移動させる(ステップ20)。
【0038】
図19にRPVフランジ面に開閉遮蔽装置55を設置する工程を示す(ステップ21)。RPVフランジ面に開閉遮蔽装置を設置する。開閉遮蔽装置は装置のインストール・搬出の際には開くことが可能である。
【0039】
図20に第2ハウス内でのPCVトップヘッドの細断、収納工程を示す(ステップ22)。第2ハウス内へ移動されたPCVトップヘッドは、第2ハウス内に設けられた細断装置58によって細断が実施され、細断されたPCVトップヘッドはPCVトップヘッド収納容器59へ収納される。
【0040】
図21にPCVトップヘッド収納容器の搬出工程を示す(ステップ23)。第2ハウス52内にてPCVトップヘッド収納容器の除染を行い、次に、第2ハウスの天井面に設けられた扉を開いて、PCVトップヘッド収納容器を第3ハウス53へ移動する。PCVトップヘッド収納容器を第3ハウス内へ移動させたら、第2ハウスの天井面に設けられた扉を閉じて、第3ハウスにて再度PCVトップヘッド収納容器の除染を行い、最後に、第3ハウスの天井面に設けられた扉からRPVトップヘッド収納容器を外部へ搬出する。
【0041】
図22に第4ハウス60の設置工程を示す(ステップ24)。SFPの上部へ第4ハウスを設置する。なお第4ハウスにも、横行台車及び走行台車を有するクレーンと、側面及び天井面には、装置や機器を搬出入可能な扉が設けられている。
【0042】
図23に蒸気乾燥器17の取り外し工程を示す(ステップ25)。蒸気乾燥器をRPVより取外し、原子炉ウェルの位置へ移動させる。この位置において蒸気乾燥器の除染を実施する。その後、開閉式遮蔽壁の遮蔽壁をスライドして開いて、除染後の蒸気乾燥器を、第1ハウス内へ移動させる。蒸気乾燥器を、第1ハウス内へ移動させたら、遮蔽壁をスライドして閉じ、第1ハウス内へ移動された蒸気乾燥器を第4ハウスを経由して、最終的にSFPへ保管する(
図24)。次に、気水分離器の取り外し工程を示す(ステップ26)。気水分離器18もRPVから取外し、原子炉ウェルの位置で除染を実施して、第4ハウスを経由してSFPへ保管する(
図25)。
【0043】
図26に炉心スプレイ系スパージャ61、炉心スプレイライン22の撤去工程を示す(ステップ27)。炉心スプレイ系スパージャ、炉心スプレイラインを撤去する。
【0044】
図27に遮蔽付加工装置62の設置工程を示す(ステップ28)。遮蔽付加工装置を第1ハウス内へ搬入する。その後、遮蔽壁を開いて、遮蔽付加工装置を原子炉ウェルへ搬入して、遮蔽壁を閉じたら、炉内構造物、燃料集合体へ着座するまで遮蔽付加工装置を下降させて、遮蔽付加工装置に設けられているクランプ機構63によって、遮蔽付加工装置をRPV内へ固定する。
【0045】
図28に燃料デブリの取り出し工程について示す(ステップ29)。溶融した燃料デブリは固まりのまま存在すると想定される。従って、燃料デブリを遮蔽付加工装置の切断装置64を用いて破砕する。切断装置としては、カッターやアブレイシブウォータージェット(以下、AWJと略す)を利用する。破砕した燃料デブリは原子炉内へ注入した遮蔽鉄粉と分離してから、破砕燃料・遮蔽粉末回収分離装置65によって、原子炉ウェル内に設けられたキャスク66へ収納する。破砕した燃料デブリを収納したキャスクは、原子炉ウェルにて除染して、第2ハウスへ移動して、ここで再度除染を実施して、第3ハウスへ移動して、ここでさらに除染を実施して、外部へと搬出する。ステップ29での燃料取り出し作業が完了するとRPV内部は空洞となる。
【0046】
図29にRPV炉底部の穿孔工程について示す(ステップ30)。遮蔽付加工装置62をRPVの下鏡面の上部にまで移動して、RPVの下鏡面に穿孔を行なう。開閉遮蔽装置を開き、原子炉ウェルに移動したクレーン装置によって遮蔽付加工装置をRPVの下鏡面の上部にまで移動することで遮蔽付加工装置を移動させる。
【0047】
図30にペデスタルの内部調査工程を示す(ステップ31)。適宜、遮蔽付加工装置を取外して、先端にカメラやセンサを取り付けた管の形状をした調査装置67を用いることで、RPVの下部であるペデスタルの内部調査を行なう。
【0048】
図31にペデスタル開口部68の閉止工程を示す(ステップ32)。ペデスタルに設けられている開口部にコンクリート69を注入して開口部を閉止する。これは、RPVの下鏡面に設けた孔70より装置を挿入して行なう。その後、
図32に示すように遮蔽用の遮蔽粉末71(鉄粉等)を注入して、ペデスタル内部へ水張りを行なう(ステップ33)。ペデスタル開口部が塞がれているため、ペデスタル内部の水位が上昇する。
【0049】
図33に遮蔽付加工装置62の設置工程を示す(ステップ34)。遮蔽付加工装置を下鏡面上部位置まで下降させて、RPV内へクランプさせ固定する。遮蔽付加工装置の切断装置により、RPVの下鏡面を削除する。
【0050】
図34にPCV底部のコンクリートマット上にある溶融燃料の取り出し工程を示す(ステップ35)。PCV底部のコンクリートマット上にある溶融燃料を遮蔽付加工装置の切断装置64により破砕して、遮蔽鉄粉と分離してキャスク内へ収納する。破砕燃料が収納されたキャスク66は、原子炉ウェル、第2ハウス、第3ハウスを経由し、各ハウス内では除染が実施されて、最終的に外部へ搬出される。これにより、原子力プラント内で溶融した燃料の取り出しが完了する。
【0051】
本実施例においては、原子炉ウエル部内の圧
力、第1作業ハウス内の圧力、第2ハウス内の圧力、第3ハウス内の圧力を適宜調整している。圧力を調整することにより、放射性物質の漏洩を最小限にとどめることが可能となる。また、各ハウス内には空気を入れ替えられる換気装置や窒素ガスを注入する窒素注入装置(図示せず)を有している。これにより、放射性物質の飛散を防止できる。
【0052】
以上、説明したように本実施例によれば、沸騰水型原子炉プラントにおける燃料デブリを、気中環境下でも、原子炉建屋の高さを高くするための大掛かりな設置作業を要せず、短期間で搬出することが可能な工法を提供することが可能となる。
【実施例3】
【0061】
本発明の他の実施例3である、沸騰水型原子力プラントに適用した燃料デブリの搬出方法を、
図39から
図42を用いて説明する。本実施例では、実施例1及び2における開閉式遮蔽壁を変更したものである。実施例1及び2でのステップ4ではオペフロと同一面内に設けられた開閉式遮蔽壁を設置したが、本実施例では、開閉式遮蔽壁に下駄76を設けて、更に、開閉式遮蔽壁の下面には予めクレーン装置80を設けている点が異なる。なお、本実施例では実施例1及び2と異なる部分のみ説明を行い、実施例1及び2と同様の工程に関しては説明を省略する。
【0062】
図39に原子炉建屋のオペフロへ開閉式遮蔽壁77を設置する工程を示す(ステップ3−1)。開閉式遮蔽壁は2分割可能なスライド式の遮蔽壁を有しており、このスライド式の遮蔽壁を移動させることで、原子炉建屋におけるオペフロ下部の空間とオペフロ上部の空間とを隔離状態又は貫通状態とすることが可能となる。また開閉式遮蔽壁の側面には下駄76を設けてあり、オペフロ面内よりも上部にこの遮蔽壁が設置される。なお、DSPとオペフロ上部の空間を隔離する、開閉式遮蔽壁77は、オペフロと同一面内に構成されている。遮蔽壁は、鉄製の板で構成することも可能だが、この場合には放射線を遮蔽するのに十分な厚さの板が必要となるため、原子炉建屋への重量負担が大きくなることが想定される。このような場合には、内部を空洞として、遮蔽効果を有する水又はホウ酸水を注入可能なように構成してもよい。このような構成とした場合には、作業ごとに必要な遮蔽性能を有する最適量の水又はホウ酸水を注入することで、必要以上に重量物を原子炉建屋に設ける必要がなくなるため、原子炉建屋への重量負担低減が図れる。遮蔽壁にはボーリング装置の穿孔機を挿入するためのボーリング用加工孔が設けられており、通常時は遮蔽プラグで塞がれている。また、開閉式遮蔽壁の下部には予め横行台車及び走行台車を有するクレーン装置が設けてある。
【0063】
図40に第1ハウス78の設置工程を示す(ステップ3−2)。第1ハウス内には横行台車および走行台車を有するクレーン装置79が設けられており、第1ハウス内を水平面内で自由に移動可能なように構成されている。また、第1ハウスの側面及び天井面には装置や部品等を出し入れ可能なように扉が設けられている(図示せず)。この扉は密閉構造を有しており、第1ハウスの内部空間と外部空間とを隔離可能に構成されている。なお、第1ハウスは別に設けられたクレーン装置によって設置される(図示せず)。なお、本実施例では開閉式遮蔽壁に下駄76を設けているため、その分の原子炉建屋の高さが必要になる。その後、シールドプラグ9(上段、中段)の取り外しを行なう(ステップ3−3)。
【0064】
その後、下段シールプラグへの穿孔工程を実施する(ステップ3−4)。第1ハウス内に設けられたボーリング装置を用いて下段シールドプラグに孔を設ける。開閉式遮蔽壁の遮蔽壁には、ボーリング装置の穿孔機が挿入可能なようにボーリング用加工孔が設けられている。ボーリング用加工孔は通常時(ボーリング加工を行なわない場合)は遮蔽プラグが取り付けられており、遮蔽壁によるバウンダリの構築には問題が無い。穿孔機により下段シールドプラグに穿孔を行なう。
【0065】
次に、シールドプラグ下面の除染工程について示す(ステップ3−5)。下段シールドプラグに設けた孔から除染装置の先端部を挿入して、シールドプラグ下面の除染を行なう。炉心の溶融の際に、放射性物質がRPV及びPCVの外部へ放出されている可能性もある。このため下段シールドプラグの下面にも放射性物質が付着している可能性があるため、除染を行なう。また、PCVトップヘッドの表面及び原子炉ウェル内面も除染を行なっても良い。除染には、高圧水による高圧洗浄装置や放射性物質を吸着するフィルム(例えば、空洞を持った繊維状の物質で構成されており、この空洞内部に放射性物質を取り込ませるフィルムや、粘着性を有するフィルム等)を使用する。除染が完了したら、次の工程である下段シールドプラグの取り出し工程を実施する(ステップ3−6)。
【0066】
図41に開閉式遮蔽壁の下駄76を取り外す工程を示す(ステップ3−7)。開閉式遮蔽壁の下駄を取り外すと、開閉式遮蔽壁はオペフロと同一平面内となる。遮蔽壁の下部に設けたクレーン装置80は原子炉ウェル11内に存在することとなる。
【0067】
図42に第2ハウス81の設置工程を示す(ステップ3−7)。DSP内に第2ハウスを設置する。第2ハウスには、第1ハウスと同様に横行台車および走行台車を有するクレーン装置82が設けられており、第2ハウスの側面及び天井面には装置や部品等を出し入れ可能な扉が設けられている(図示せず)。実施例1においては第3ハウスの設置工程の後に、クレーン設置工程(ステップ17)を有していたが、本実施例においては、予めクレーン装置が開閉式遮蔽壁の下部に設けられているためクレーンの設置工程が省略可能となる。
【0068】
以上、説明したように本実施例によれば、実施例1での効果の他に、クレーン装置の設置工程が不要となるため、燃料デブリ搬出工程短縮効果が得られる。
【実施例4】
【0069】
本発明の他の実施例4である、沸騰水型原子力プラントに適用した燃料デブリの搬出方法を、
図43から
図58を用いて説明する。本実施例では、第1ハウス内に、さらに伸縮ハウス83を設けた点が実施例1から3と異なる。なお、本実施例では実施例1から3と異なる部分のみ説明を行い、実施例1から3と同様の工程に関しては説明を省略する。
【0070】
図43に伸縮ハウス83の設置工程を示す(ステップ4−1)。開閉式遮蔽壁36の上部へ伸縮ハウスを設置する。さらに伸縮ハウスの設置後に第1ハウス39を設置する。伸縮ハウスの側壁は複数の部材84で構成されており、伸縮可能に構成されている。
【0071】
図44にPCVトップヘッド切断工程を示す(ステップ4−2)。伸縮ハウスをPCVトップヘッドの上面部まで下降させる。その後、伸縮ハウスに設けられている、クレーン装置85によってPCVトップヘッドを吊上げる。PCVトップヘッドを吊上げた状態にて伸縮ハウスに設けられている切断ヘッド86によりPCVトップヘッドを切断する。なお、遮蔽壁37は開いた状態である。
【0072】
図45にPCVトップヘッド取り出し工程を示す(ステップ4−3)。伸縮ハウスを上昇させて、切断したトップヘッドを第1ハウス内へ移動させる。その後、開閉式遮蔽壁の遮蔽壁をスライドして閉じる。その後、伸縮ハウス内の空気を置換する。
【0073】
図46に第2ハウス87の設置工程を示す(ステップ4−4)。第2ハウス内に横行台車および走行台車を有するクレーン装置88が設けられており、側面及び天井面には装置や部品等を出し入れ可能な扉が設けられている第2ハウスを設置する。
【0074】
図47に切断したPCVトップヘッドを第2ハウスへ移動する工程を示す(ステップ4−5)。伸縮ハウス83を上昇させて、下部の空間より、切断したPCVトップヘッドを第2ハウスへ移動する。第2ハウス内ではロボット除染装置89を用いて除染を実施して、PCVトップヘッドを外部へ搬出する。
【0075】
次に、伸縮ハウスの先端部へ機器を設置する(ステップ4−6)。伸縮ハウス先端内部に切断ヘッド90を設置する。
【0076】
図48にRPVトップヘッド取り出し工程を示す(ステップ4−7)。開閉式遮蔽壁の遮蔽壁をスライドして開いて、伸縮ハウスをRPVトップヘッド上部まで下降させて、その後、RPVトップヘッドの切断を行なう。なお、RPVトップヘッドが落下しないように、予め、RPVトップヘッドはクレーン装置に吊り下げられた状態としてある。次に、RPVトップヘッドを取り出す(ステップ4−8)。伸縮ハウスを上昇させて、切断したRPVトップヘッドを第1ハウス内へ移動させる。その後、開閉式遮蔽壁の遮蔽壁をスライドして閉じる。その後、伸縮ハウス内の空気を置換する。
【0077】
図49にRPVトップヘッドの細断工程を示す(ステップ4−9)。伸縮ハウスを上昇させて、別途設けた切断ロボット91によりRPVトップヘッドの細断を実施する。細断されたRPVトップヘッドは第1ハウス内へ移動させる(ステップ4−10)。
図50は切断した下部のRPVトップヘッド92の移動の工程を示し、
図51には切断した上部のRPVトップヘッド93の移動の工程を示す。
【0078】
次に、伸縮ハウスへの機器の設置を行なう(ステップ4−11)。伸縮ハウスへ、切断ヘッド94、マニピュレータ95、グラップル96を設置する。その後、
図52に示すように、PCVトップヘッドの残部97を切断し、回収する(ステップ4−12)。
【0079】
図53に蒸気乾燥器17の搬出工程を示す(ステップ4−13)。伸縮ハウスを上昇させて、内部に複数に分割可能な蒸気乾燥器収納容器98を設置する。その後、
図54に示すように開閉式遮蔽壁の遮蔽壁をスライドして開いて、蒸気乾燥器収納容器をPCVフランジ面に着座させて、蒸気乾燥器を蒸気乾燥器収納容器に吊り込む。その後、
図55に示すように蒸気乾燥器収納容器を第1ハウス内へ引き上げて、除染、伸縮ハウス内の空気を置換する。
【0080】
図56に伸縮ハウス83を第2ハウスへ移動する工程を示す(ステップ4−14)。伸縮ハウスを第1ハウスから第2ハウスへ移動させる。その後、DSP上に設けられている扉を開いて、DSPへ蒸気乾燥器収納容器を吊り下ろして、蒸気乾燥器収納容器をDSP内へ置く。気水分離器に関しても上記と同様の手順にてDSPへと移動する(ステップ4−15)。
図57には蒸気乾燥器収納容器及び気水分離器収納容器99をDSPへ移動させた様子を示した。
【0081】
図58に伸縮ハウス内へ遮蔽付加工装置100を設置する工程を示す(ステップ4−16)。伸縮ハウス内へ遮蔽付加工装置を設置して、その後、蒸気乾燥器、気水分離器が取り除かれたRPV内へインストールする。この後、デブリ燃料を取り出すが、この工程は実施例1から3までの工程と同様なため説明は省略する。
【0082】
以上、説明したように本実施例によれば、実施例1での効果に加えて、伸縮ハウスを用いているため、放射性物質の飛散をより低減させることが可能となる。