(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2つの前記貫通穴の各々は、前記対向部の面直方向に前記ヒータケースを見たときの前記ヒータケースの外形線上の互いに異なる一点から、前記外形線に囲まれる形状の重心へ向かう方向において、長尺に形成された長穴であり、それぞれ対応する前記支持部を前記方向にガイド可能である請求項1に記載の気相成長装置。
前記対向部の面直方向に前記ヒータおよび前記ヒータケースを見たとき、前記ヒータケースの外形形状と前記ヒータの外形形状とは、互いに相似形であり、且つ、前記ヒータケースの外形形状における重心と前記ヒータの外形形状における重心が一致している請求項1乃至6の何れか一項に記載の気相成長装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0013】
図1は実施形態に係る気相成長装置100の正面断面図である。
図2はサセプタ30の平面図である。
図3はヒータ10及びヒータケース80を示す平面図である。
図4(a)および(b)はヒータケース80を示す図であり、このうち
図4(a)は平面図、
図4(b)は正面図である。
図5(a)および(b)は支持部120によりヒータケース80を支持している箇所を示す断面図であり、このうち
図5(a)はヒータケース80の半径方向に対して直交する方向において切断した構造を示し、
図5(b)はヒータケース80の半径方向において切断した構造を示す。
図6は棒状電極41がヒータケース80を貫通している箇所を示す断面図であり、ヒータケース80の半径方向において切断した構造を示す。
【0014】
本実施形態に係る気相成長装置100は、基板50の少なくとも一方の面に気相成長により堆積物を形成可能なように基板50を支持する盤状のサセプタ30と、サセプタ30の一方の面に対して対向する位置に配置され、サセプタ30を加熱するヒータ10と、ヒータ10を覆うヒータケース80と、ヒータケース80を支持する複数の支持部120と、を備える。ヒータケース80は、ヒータ10と対向して配置された面状の対向部(例えば底板部81)を有し、対向部には、複数の支持部120の各々と対応する貫通穴84が形成されている。複数の支持部120は、それぞれ対応する貫通穴84を貫通しているとともに、対向部における貫通穴84の周囲縁部を支持している。貫通穴84の各々は、対向部の面直方向にヒータケース80を見たときのヒータケース80の外形線上の一点(例えば
図4(a)に示す点P1、P2、P3)から、この外形線に囲まれる形状の重心G(
図4(a))へ向かう方向へと、支持部120が相対的に移動することを許容する形状に形成されている。以下、詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る気相成長装置100は、チャンバ110と、チャンバ110内において基板50(
図2)を保持するサセプタ30と、サセプタ30を支持する回転軸部60と、を有する。
【0016】
図2に示すように、サセプタ30は、例えば円盤状に形成され、チャンバ110内において水平に配置されている。サセプタ30の上面には、基板50を位置決め状態で保持する基板載置用ポケット31が形成されている。基板載置用ポケット31には、サセプタ30に対して平行に、基板50を載置できるようになっている。
【0017】
図1に示すように、回転軸部60は、例えばサセプタ30と一体的に形成され、サセプタ30の下面より下方に突出し、且つ、チャンバ110の底板よりも下方に突出している。つまり、回転軸部60は、その軸方向が上下方向となる状態で配置されている。回転軸部60は、図示しないモータ等の回転駆動部により軸周りに回転させられるようになっている。回転軸部60が軸周りに回転するのに伴い、サセプタ30が水平面内において回転する。
【0018】
気相成長装置100は、更に、チャンバ110内に原料ガスを供給する原料ガス供給配管111、112と、チャンバ110内に設けられたガス分散部材113と、チャンバ110からの排気を行う排気管114と、を有している。ガス分散部材113には、多数のガス導出口113aが形成されている。ガス分散部材113は、サセプタ30の上方に配置され、サセプタ30の上面と対向している。
【0019】
ヒータ10は、サセプタ30の下方に配置され、サセプタ30の下面と対向(例えばサセプタ30に対して平行に対向)している。ヒータ10は、例えば、二次元的に屈曲する線状のパターンからなるプレート形状に形成された、平板ヒータである(
図3参照)。この線状のパターンは、所定の幅を有している。ヒータ10のパターンの形状は特に限定されない。
図3には、ヒータ10が、第1部分11、第2部分12及び第3部分13の3つのパターンからなる例を示している。これら第1部分11、第2部分12及び第3部分13に対し、それぞれ個別に電流が印加されるようになっている。平面視におけるヒータ10の外形形状は、サセプタ30と同様に円形となっている(
図3、
図2参照)。
【0020】
第1部分11、第2部分12及び第3部分13の各々の両端部には、第1部分11、第2部分12及び第3部分13の両端部をそれぞれ後述する棒状電極41に固定するための止着部材15を挿通させる固定穴19がそれぞれ形成されている。
【0021】
ヒータ10の下方には、ヒータ10から放射される熱をサセプタ30側に反射する反射板20が配置されている。平面視における反射板20の外形形状は、ヒータ10と同様に円形となっている。
【0022】
図4(a)および(b)に示すように、ヒータケース80は、ヒータ10と対向して配置された板状の底板部81と、外周壁部82と、内周壁部83と、を有している。底板部81は、例えば、ドーナツ状の平面形状に形成されている。外周壁部82は、円筒状に形成され、底板部81の外周端より上方に起立している。内周壁部83は、外周壁部82と同心の円筒状に形成され、底板部81の内周端より上方に起立している。底板部81、外周壁部82および内周壁部83によって、ドーナツ状の平面形状で、且つ、上向きに開口した受け皿形状のヒータケース80が構成されている。ヒータケース80は、サセプタ30の下方に配置されている。ヒータケース80は、ヒータ10および反射板20を収容しており、加熱効率を向上する機能を担う。ヒータケース80は、例えば、金属により構成されている。
【0023】
底板部81の中心の開口、及び、内周壁部83の内側の領域は、回転軸挿通穴83aを構成しており、該回転軸挿通穴83aに回転軸部60が挿通されている。
【0024】
図4(a)に示すように、ヒータケース80の底板部81には、複数の貫通穴84と、複数の電極挿通穴85と、が形成されている。貫通穴84は、それぞれ対応する支持部120(後述)の上端部を貫通させるものである。電極挿通穴85は、それぞれ対応する棒状電極41(後述)を挿通させるものである。
【0025】
ここで、
図3に示すように、ヒータ10およびヒータケース80を平面視したとき(つまり、底板部81の面直方向にヒータ10およびヒータケース80を見たとき)、ヒータケース80の外形形状とヒータ10の外形形状とは、実質的に互いに相似形であり、且つ、ヒータケース80の外形形状における重心とヒータ10の外形形状における重心が互いに一致している。
【0026】
更に、
図2に示すように、サセプタ30およびヒータ10を平面視したとき(つまり、底板部81の面直方向にサセプタ30およびヒータ10を見たとき)、サセプタ30の外形形状とヒータ10の外形形状とは、実質的に互いに等しいか又は互いに相似形であり、且つ、サセプタ30の外形形状における重心とヒータ10の外形形状における重心とが互いに一致している。
【0027】
図5(a)および(b)に示すように、支持部120は、例えば、柱状の本体部121と、それぞれ絶縁材料からなる絶縁部材(絶縁部)122および絶縁部材125と、固定ネジ(固定部)130と、を有している。
【0028】
本体部121は、例えば、チャンバ110の底板より支持されて、該底板上に立設されている(
図1参照)。本体部121の上端面は、例えば平坦に形成され、水平に配置されている。
【0029】
絶縁部材122は、円板状に形成され、本体部121の平坦な上端面に載置されている。絶縁部材122は、ヒータケース80の底板部81の下面における貫通穴84の周囲縁部を支持している。
【0030】
絶縁部材125は、第2絶縁部123および第3絶縁部124を有している。すなわち、第2絶縁部123と第3絶縁部124とは、互いに一体形成されている。第2絶縁部123は、底板部81を挟んで絶縁部材122とは反対側に配置されている。第3絶縁部124は、第2絶縁部123と絶縁部材122との間に挟まれているとともに、貫通穴84を貫通して配置されている。
【0031】
固定ネジ130は、本体部121に螺入される軸部131と、軸部131の一端に形成された頭部132とを有する雄ネジである。
【0032】
絶縁部材122は、平板なワッシャ形状に形成され、該絶縁部材122には、軸部131を挿通させる挿通穴122aが形成されている。
【0033】
また、絶縁部材125にも、軸部131を挿通させる挿通穴125aが形成されている。なお、第3絶縁部124は、例えば円筒状に形成されている。また、第2絶縁部123は、円筒状の部分と、該円筒状の部分の下端部に連接された円板状の部分と、を有している。この円板状の部分の下面には、第3絶縁部124が連接されている。第2絶縁部123における円板状の部分よりも、第3絶縁部124の方が小径に形成されている。更に、絶縁部材125の第2絶縁部123には、頭部132を収容する座繰り部125bが形成されている。
【0034】
挿通穴125aおよび挿通穴122aを通して、軸部131が本体部121に螺入されることにより、固定ネジ130は、絶縁部材122および絶縁部材125を一括して本体部121に対して固定している。すなわち、固定ネジ130は、絶縁部(絶縁部材122)、第2絶縁部123及び第3絶縁部124を一括して本体部121に対して固定している。
【0035】
第3絶縁部124は、第2絶縁部123と絶縁部(絶縁部材122)との間隔を底板部81の厚みよりも大きい間隔に維持させるスペーサを兼ねている。このため、第2絶縁部123が底板部81の上面に接してしまうことが抑制されている。
【0036】
ここで、ヒータケース80を支持する支持部120の数は任意の複数個とすることができる。例えば、
図4(a)に示すように、底板部81には3つの貫通穴84が形成されており、貫通穴84と対応する数の支持部120、すなわち合計3つの支持部120によってヒータケース80が支持されている。各84は、底板部81の周方向において互いに異なる位置に配置されている。貫通穴84は、例えば、底板部81の周方向において等角度間隔(120度間隔)で配置されている。
【0037】
上記のように、貫通穴84の各々は、底板部81の面直方向にヒータケース80を見たときのヒータケース80の外形線上の一点(例えば
図4(a)に示す点P1、P2、P3)から、この外形線に囲まれる形状の重心G(
図4(a))へ向かう方向へと、支持部120が相対的に移動することを許容する形状に形成されている。すなわち、支持部120が
図5(b)における左方向へと貫通穴84に対して相対的に移動することが許容されるように、貫通穴84の形状が設定されている。よって、ヒータケース80がその重心Gから外方に向けて放射状に熱膨張した場合に、各支持部120は、貫通穴84内においてヒータケース80に対して相対移動することができる。これにより、ヒータケース80が熱膨張した場合にヒータケース80及びそれを支持する支持部120に作用する応力を抑制することができる。なお、重心Gは、ヒータケース80の外形形状が円形や矩形状の場合は、当該外形形状の中心と一致する。
【0038】
より具体的には、例えば、少なくとも2つの貫通穴84の各々は、底板部81の面直方向にヒータケース80を見たときのヒータケース80の外形線上の互いに異なる一点から、この外形線に囲まれる形状の重心Gへ向かう方向において、長尺に形成された長穴であり、それぞれ対応する支持部120を当該方向にガイド可能となっている。すなわち、少なくとも2つの貫通穴84の長手方向における寸法は、支持部120の第3絶縁部124の外径よりも十分に大きく設定されているが(
図5(b)参照、各貫通穴84の短手方向における寸法は、第3絶縁部124の外径よりも若干大きい程度に設定されている(
図5(a)参照)。
【0039】
本実施形態の場合、複数の貫通穴84の各々が、底板部81の面直方向にヒータケース80を見たときのヒータケース80の外形線上の互いに異なる一点から、この外形線に囲まれる形状の重心Gへ向かう方向において、長尺に形成された長穴であり、それぞれ対応する支持部120を当該方向にガイド可能となっている。
図4(a)に示す3つの貫通穴84のうち、貫通穴84aは、点P1から重心Gへ向かう方向において長尺な長穴であり、貫通穴84bは、点P2から重心Gへ向かう方向において長尺な長孔であり、貫通穴84cは、点P3から重心Gへ向かう方向において長尺な長孔である。
【0040】
図1に示すように、気相成長装置100は、更に、ヒータ10に電力を供給する電力供給部70と、棒状電極41と、を有する。電力供給部70は、棒状電極41を介してヒータ10へ電力を供給する。ヒータ10は、電力供給部70から供給される電力によって発熱する(ジュール熱を発生する)。具体的には、例えば、電力供給部70は、ヒータ10に対して電流を印加し、ヒータ10を発熱させる。ヒータ10が発熱することによって、サセプタ30及びサセプタ30上の基板50を加熱することができる。
【0041】
棒状電極41は、例えば、以下に説明するようにヒータ10を支持している。
【0042】
例えば、
図1に示すように、チャンバ110内に電流を導入するための複数の金属棒90が、チャンバ110の下方から、チャンバ110の底板を突き抜けて、チャンバ110内に導入されている。各金属棒90は、チャンバ110の底板に固定されている。各金属棒90は、各棒状電極41とそれぞれ対応しており、金属棒90には、電力供給部70から電力が供給される。なお、チャンバ110の底板と金属棒90との間には、図示しない絶縁部材が介装されており、チャンバ110と金属棒90とは相互に絶縁されている。更に、チャンバ110と金属棒90との間は真空気密状態に保たれている。
【0043】
金属棒90は、金属等の導電体により構成された連結部材89をチャンバ110の内部において支持している。連結部材89と金属棒90とは相互に導通している。金属棒90と連結部材89とは、例えば、螺子を用いた締結により相互に固定されている。連結部材89は、ヒータケース80の下方に位置している。
【0044】
棒状電極41は、連結部材89から上方に突出するように連結部材89に固定され、上下方向に延在している。連結部材89と棒状電極41とは、例えば、螺子を用いた締結により相互に固定されている。これにより、金属棒90、連結部材89及び棒状電極41は、一体の導体として組み立てられている。
【0045】
例えば、
図6に示すように、棒状電極41の下端部は、連結部材89を上下に貫通している。また、棒状電極41の外面には、雄ネジが形成されており、連結部材89の下側及び上側の各々において、棒状電極41に対してナット88が螺合している。これらナット88を互いに近づく方向に締結することにより、棒状電極41が連結部材89に対して固定されている。
【0046】
棒状電極41の上端面は平坦且つ水平に配置されている。そして、棒状電極41の上端面にヒータ10の端部(上記の固定穴19が形成されている部分)が載置されている。
【0047】
棒状電極41の上端面には、雌ネジなどの止着穴41aが形成されている。雄ネジなどの止着部材15を、固定穴19を通して止着穴41aに止着(例えば螺入)することにより、ヒータ10が棒状電極41に固定されている。例えば、
図3に示すように、ヒータ10は、例えば、第1部分11、第2部分12及び第3部分13の3つのゾーンに分割され、第1部分11、第2部分12及び第3部分13の各々の両端部に、それぞれ固定穴19が形成されている。そして、各固定穴19に対応して、別個の棒状電極41が配置され、第1部分11、第2部分12及び第3部分13の各々の両端部が、それぞれ棒状電極41に固定されている。こうして、ヒータ10を構成する第1部分11、第2部分12及び第3部分13は、棒状電極41によって支持されている。
【0048】
ここで、
図6に示すように、棒状電極41の下部はヒータケース80の底板部81の下側から、底板部81の電極挿通穴85を通して、底板部81の上方へ突出している。上記のように棒状電極41の外面には雄ネジが形成されており、ヒータケース80の底板部81の下側及び上側の各々において、棒状電極41に対してナット87が螺合している。これらナット87の間には、例えば一対の絶縁部材86が挟み込まれている。絶縁部材86には、挿通穴86aが形成され、該挿通穴86aに棒状電極41が挿通されている。絶縁部材86は、例えば、円筒状などの筒状に形成された筒状部86cと、該筒状部86cよりも大径に形成され且つ該筒状部86cの一端部に連接されたフランジ部86bと、を有している。一対の絶縁部材86は、互いの筒状部86cの他端どうしが突き合わされる向きで配置されている。
図6に示すように、筒状部86cが電極挿通穴85に挿通された状態となるように、上下方向における各ナット87の位置が設定されている。これにより、ヒータケース80の底板部81と棒状電極41との間に絶縁部材86が介在し、底板部81と棒状電極41との短絡が抑制されるようになっている。
【0049】
ここで、
図6に示すように、電極挿通穴85の内径は、筒状部86cの外径よりも十分に大きく設定されている。電極挿通穴85の各々は、底板部81の面直方向にヒータケース80を見たときのヒータケース80の外形線上の一点から、この外形線に囲まれる形状の重心G(
図4(a))へ向かう方向へと、棒状電極41が相対的に移動することを許容する形状に形成されている。よって、ヒータケース80がその重心Gから外方に向けて放射状に熱膨張した場合に、各棒状電極41は、電極挿通穴85内においてヒータケース80に対して相対移動することができる。これにより、ヒータケース80が熱膨張した場合にヒータケース80及び棒状電極41に作用する応力を抑制することができるようになっている。
【0050】
次に、気相成長装置100の各構成要素の材料の例を説明する。ヒータ10は、電力の供給(例えば電流の印加)によってジュール熱を発生するものであれば、材質は問わない。ただし、より高温での気相成長を実現する上で、ヒータ10は、タングステン(W)などの高融点金属や、輻射率が高いグラファイト又は炭化ケイ素などにより構成することが好ましい。ヒータケース80は、例えば、モリブデン(Mo)により構成されている。棒状電極41は、例えば、タングステンにより構成されている。絶縁部材122、絶縁部材125および絶縁部材86は、例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si
3N
4)またはアルミナ(Al
2O
3)などにより構成されている。
【0051】
以上において、ヒータ10、反射板20、ヒータケース80、電力供給部70、棒状電極41、連結部材89及び金属棒90等により、本実施形態に係る気相成長用加熱装置150が構成されている。
すなわち、気相成長用加熱装置150は、ヒータ10と、ヒータ10を覆うヒータケース80と、ヒータケース80を支持する複数の支持部120と、を備えている。ヒータケース80は、ヒータ10と対向して配置された面状の対向部(例えば底板部81)を有し、対向部には、複数の支持部120の各々と対応する貫通穴84が形成されている。複数の支持部120は、それぞれ対応する貫通穴84を貫通しているとともに、対向部における貫通穴84の周囲縁部を支持している。貫通穴84の各々は、対向部の面直方向にヒータケース80を見たときのヒータケース80の外形線上の一点から、この外形線に囲まれる形状の重心Gへ向かう方向へと、支持部120が相対的に移動することを許容する形状に形成されている。
【0053】
気相成長装置100を用いて気相成長を行うには、サセプタ30の基板載置用ポケット31に基板50をセットし、サセプタ30を水平面内で回転させるとともに、ヒータ10によりサセプタ30及び基板50を加熱しながら、原料ガス供給配管111、112からそれぞれ原料ガスをチャンバ110内に導入する。チャンバ110内に導入された原料ガスは、ガス分散部材113により均一に分散されて、サセプタ30上の基板50の上面に供給される。その結果、基板50上にエピタキシャル層等の堆積物が成長する(成膜される)。具体的には、例えば、窒化ガリウム(GaN)等のIIIV族化合物薄膜を基板50上に形成することができる。
【0054】
電力供給部70は、金属棒90に対して電流を供給する。この電流は、金属棒90、連結部材89及び棒状電極41をこの順に通して、ヒータ10の第1部分11、第2部分12及び第3部分13の各々に導入される。
【0055】
ここで、加熱前の状態では、例えば、
図5(b)に示すように、支持部120は、貫通穴84の長手方向における一端側(ヒータケース80の周縁部側)に位置している。気相成長を行う際の加熱により、ヒータケース80は、例えば、その重心Gから外方に向けて放射状に熱膨張する。これにより、支持部120は、
図5(b)における左方向へと、ヒータケース80に対して相対的に移動する。この際、絶縁部材122の上面は、底板部81の下面に対して摺動する。ここで、支持部120とヒータケース80とが互いに干渉してしまうことが抑制されるため、ヒータケース80が熱膨張した場合においてヒータケース80及び支持部120に作用する応力を抑制することができる。
【0056】
また、第2絶縁部123と絶縁部材122との間隔は、底板部81の厚みよりも大きい間隔に維持されている。よって、絶縁部材122の上面と底板部81の下面との摩擦力の増大が抑制され、絶縁部材122の上面が底板部81の下面に対してスムーズに摺動することができる。
【0057】
また、棒状電極41についても、加熱前の状態では、例えば、
図6に示すように、電極挿通穴85に対して偏心した位置(ヒータケース80の周縁部側)に位置している。気相成長を行う際の加熱によりヒータケース80が熱膨張すると、棒状電極41は、
図6における左方向へと、ヒータケース80に対して相対的に移動する。ここで、棒状電極41(およびその周囲に設けられた絶縁部材86)とヒータケース80とが互いに干渉してしまうことが抑制されるため、ヒータケース80が熱膨張した場合においてヒータケース80及び棒状電極41に作用する応力を抑制することができる。
【0058】
以上のような実施形態によれば、複数の支持部120は、それぞれ対応する貫通穴84を貫通しているとともに、底板部81における貫通穴84の周囲縁部を支持している。そして、貫通穴84の各々は、ヒータケース80の外形線上の一点から、この外形線に囲まれる形状の重心Gへ向かう方向へと、支持部120が相対的に移動することを許容する形状に形成されている。よって、ヒータケース80がその重心Gから外方に向けて熱膨張した場合に、各支持部120は、貫通穴84内においてヒータケース80に対して相対移動することができる。これにより、ヒータケース80が熱膨張した場合にヒータケース80及びそれを支持する支持部120に作用する応力を抑制することができる。
【0059】
また、少なくとも2つの貫通穴84の各々は、底板部81の面直方向にヒータケース80を見たときのヒータケース80の外形線上の互いに異なる一点から、この外形線に囲まれる形状の重心Gへ向かう方向において、長尺に形成された長穴であり、それぞれ対応する支持部120を当該方向にガイド可能である。よって、ヒータケース80が熱膨張することによりヒータケース80に対する支持部120の位置がずれた場合にも、ヒータケース80の重心Gの位置が変化しないようにして、支持部120によってヒータケース80を支持することができる。
【0060】
また、ヒータケース80は金属からなり、支持部120は、絶縁材料からなりヒータケース80を支持する絶縁部材122を有するので、支持部120とヒータケース80との短絡を抑制することができる。これにより、ヒータケース80から支持部120へのリーク電流の発生を抑制することができる。
【0061】
また、支持部120は、柱状の本体部121と、底板部81を挟んで絶縁部材122とは反対側に配置された第2絶縁部123と、第2絶縁部123と絶縁部材122との間に挟まれているとともに、貫通穴84を貫通して配置されている第3絶縁部124と、絶縁部材122、第2絶縁部123及び第3絶縁部124を本体部121に対して固定する固定ネジ130と、を有し、第3絶縁部124は、第2絶縁部123と絶縁部材122との間隔を底板部81の厚みよりも大きい間隔に維持させるスペーサを兼ねている。よって、絶縁部材122と底板部81との摩擦力の増大が抑制されるので、ヒータケース80が熱膨張する際に、絶縁部材122が底板部81に対してスムーズに摺動することができる。
【0062】
また、第2絶縁部123と第3絶縁部124とは互いに一体形成されているので、気相成長装置100の部品点数を低減することができる。
【0063】
また、絶縁部材122、第2絶縁部123及び第3絶縁部124を本体部121に対して固定する固定部は、本体部121に螺入される軸部131と、軸部131の一端に形成された頭部132とを有する固定ネジ(雄ネジ)130であり、絶縁部材122は平板なワッシャ形状に形成され、第2絶縁部123には、頭部132を収容する座繰り部125bが形成されている。よって、絶縁部材122、第2絶縁部123及び第3絶縁部124を固定ネジ130により本体部121に対して容易且つ安定的に固定することができる。
【0064】
なお、上記においては、ヒータケース80が底板部81の他に、外周壁部82および内周壁部83を有しており、ヒータ10がヒータケース80に収容されている例を説明したが、ヒータケース80の形状はこの例に限らない。例えば、ヒータケース80は、底板部81のみからなり、ヒータ10をサセプタ30とは反対側において覆っているだけの構造であっても良い。
【0065】
また、上記においては、気相成長装置100が1枚(1段)のヒータ10を有する例を説明したが、この例に限らず、気相成長装置100は複数枚(複数段)のヒータ10を有していても良い。
【0066】
また、上記においては、ヒータ10が平板ヒータである例を説明したが、ヒータ10は、コイル形状に形成されたコイルヒータであっても良い。
【0067】
また、上記においては、底板部81の面直方向に見たときのヒータ10の形状が円形である例を説明したが、ヒータ10は他の形状であっても良い。同様に、上記においては、底板部81の面直方向に見たときのヒータケース80の形状が円形である例を説明したが、ヒータケース80は他の形状であっても良い。
【0068】
また、上記においては、サセプタ30により保持された状態の基板50の上面に対して原料ガスをダウンフローで供給する場合に、ヒータ10がサセプタ30の下方に配置されている例を説明したが、ヒータ10とサセプタ30との位置関係は、この例に限らない。例えば、ヒータ10をサセプタの上方に配置し、且つ、サセプタにより保持された状態の基板の下面に対して原料ガスをアップフローで供給するようにしても良い。