(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電磁誘導によるコイル相互間の磁気結合を利用して負荷に電力を供給する方法として、例えば非接触給電が挙げられる。その原理は、複数のコイルを、空間を介して磁気的に結合することによっていわばトランスを形成し、前記コイル間の電磁誘導を利用して電力を授受するものである。
例えば、電力供給源に相当する一次側コイルを給電線としてレール状に配置し、二次側コイル及び受電回路を一体化して移動体を構成すると共に、一次側コイルと二次側コイルとを対向させることにより、前記給電線に沿って移動する移動体に非接触給電することが可能である。
【0003】
ここで、
図8は、特許文献1に記載された非接触給電装置を示している。
図8において、高周波電源100の両端には、コイルとしての一次側給電線110が接続されている。一次側給電線110には受電コイル120が磁気的に結合しており、一次側給電線110と受電コイル120とは一種のトランスを構成している。
受電コイル120の両端は、共振コンデンサC
rを介して全波整流回路10の一対の交流端子に接続されている。なお、受電コイル120と共振コンデンサC
rとは、直列共振回路を構成している。
【0004】
全波整流回路10は、ダイオードD
u,D
v,D
x,D
yをブリッジ接続して構成されている。全波整流回路10の一対の直流端子には、全波整流回路10の直流出力電圧が基準電圧値に等しくなるように制御する定電圧制御回路20が接続されている。この定電圧制御回路20は、例えば、リアクトルL
1、ダイオードD
1、平滑コンデンサC
0及び半導体スイッチSW
1からなる昇圧チョッパ回路により構成されており、平滑コンデンサC
0の両端には負荷Rが接続されている。
なお、
図8では、半導体スイッチSW
1をスイッチングするための制御装置を省略してある。
【0005】
図8の従来技術では、高周波電源100により一次側給電線110に高周波電流を流し、受電コイル120を介して供給された高周波電力を全波整流回路10に入力して直流電力に変換している。
一般に、この種の非接触給電装置では、一次側給電線110と受電コイル120との間のギャップ長の変化や両者の位置ズレにより、受電コイル120に誘起される電圧が変化し、これによって全波整流回路10の直流出力電圧が変動する。また、負荷Rの特性も、全波整流回路10の直流出力電圧が変動する原因となる。従って、
図8では、全波整流回路10の直流出力電圧を定電圧制御回路20によって一定値に制御している。
【0006】
非接触給電装置では、コイルを介して供給される電流の周波数が高いほど、電力伝送を行うために必要な励磁インダクタンスは小さくてよく、コイルやその周辺に配置するコアを小型化できる。しかし、高周波電源装置や受電回路を構成する電力変換器では、回路を流れる電流の周波数が高いほど半導体スイッチのスイッチング損失が増大して給電効率が低下するため、非接触給電される電力の周波数は数[kHz]〜数十[kHz]に設定するのが一般的である。
【0007】
図8に示した非接触給電装置、特に、共振コンデンサC
rの後段の受電回路には、以下の問題点がある。
(1)受電回路が全波整流回路10及び定電圧制御回路20によって構成されているため、回路全体が大型化し、設置スペースの増大やコストの増加を招く。
(2)全波整流回路10のダイオードD
u,D
v,D
x,D
yに加え、定電圧制御回路20のリアクトルL
1、半導体スイッチSW
1、ダイオードD
1でも損失が発生するため、これらの損失が給電効率の低下要因となっている。
【0008】
上記の問題点を解決する従来技術として、特許文献2に記載された非接触給電装置及びその制御方法が発明者らによって既に提案されている。
図9は、特許文献2に記載された非接触給電装置を示している。
図9において、310は受電回路である。この受電回路310は、ブリッジ接続された半導体スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yと、各スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yにそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD
u,D
x,D
v,D
yと、下アームのスイッチQ
x,Q
yにそれぞれ並列に接続されたコンデンサC
x,C
yと、これらの素子からなるブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサC
0と、を備えている。ブリッジ回路の交流端子間には、共振コンデンサC
rと受電コイル120との直列回路が接続され、平滑コンデンサC
0の両端には負荷Rが接続されている。
【0009】
200は、半導体スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yをスイッチングするための駆動信号を生成する制御装置である。この制御装置200は、電流検出手段CTにより検出した受電コイル120の電流iと受電回路310の直流端子間電圧(直流出力電圧)V
oとに基づいて、前記駆動信号を生成する。
【0010】
この非接触給電装置において、半導体スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yを制御することにより、ブリッジ回路の交流端子間電圧vは、直流端子間電圧V
oを波高値とする正負電圧に制御される。一次側給電線110から受電回路310への給電電力は、受電コイル120の電流iと交流端子間電圧vとの積であり、制御装置200が、直流端子間電圧V
oに基づいて半導体スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号の位相を調整することで、給電電力の制御、すなわち直流端子間電圧V
oの一定制御が可能となる。また、受電回路310をスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
y及びダイオードD
u,D
x,D
v,D
yからなるブリッジ回路によって構成することで、負荷Rが回生負荷の場合でも電力を一定に保つ動作が可能である。
【0011】
この非接触給電装置によれば、
図8のように定電圧制御回路20を用いることなく、半導体スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号の位相制御により直流端子間電圧V
oを一定に制御することができる。また、受電回路310をブリッジ回路及び平滑コンデンサC
0のみによって構成可能であるため、回路構成の簡略化、小型化、低コスト化を図ることができると共に、構成部品数を少なくして損失を低減し、高効率で安定した非接触給電が可能である。加えて、コンデンサC
x,C
yの充放電作用により、いわゆるソフトスイッチングを行わせ、スイッチング損失を低減して更なる高効率化を可能にしている。
【0012】
しかし、特許文献2に記載された従来技術では、受電コイル120の電流iが交流端子間電圧vの基本波成分に対して進み位相となるため、受電回路310の入力力率が低下するという問題があり、これが装置全体の損失の増加を招き、更なる小型化を阻む要因となっている。
そこで、出願人は、特願2013−071432号として、受電回路の入力力率を改善した非接触給電装置(以下、第1の先願発明という)を既に提案している。
【0013】
図10は、第1の先願発明の回路図である。
図10において、受電回路320は、ブリッジ接続された半導体スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yと、各スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yにそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD
u,D
x,D
v,D
yと、これらの素子からなるブリッジ回路の一対の直流端子間に接続された平滑コンデンサC
0と、を備えている。ブリッジ回路の一対の交流端子間には、共振コンデンサC
rと受電コイル120との直列回路が接続され、平滑コンデンサC
0の両端には負荷Rが接続されている。なお、100は高周波電源、110は一次側給電線である。
一方、制御装置200は、直流端子間電圧V
oと、電流検出手段CTにより検出した受電コイル120の電流iとに基づいて、スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号を生成し、出力する。図示されていないが、直流端子間電圧V
oは直流電圧検出器等の周知の電圧検出手段により検出される。
【0014】
次に、
図10において、受電コイル120から負荷Rに電力を供給する場合の動作を説明する。
図11は、受電コイル120の電流i、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’、並びにスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号を示しており、スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yは、電流iに同期した一定周波数にてスイッチング動作する。
図11において、ZCP’は電流iのゼロクロス点を示す。以下に、
図11の各期間(1)〜(4)における動作を説明する。
【0015】
(1)期間(1)(スイッチQ
u,Q
yをオン):電流iは、受電コイル120→共振コンデンサC
r→ダイオードD
u→平滑コンデンサC
0→ダイオードD
y→受電コイル120の経路で流れ、交流端子間電圧vは直流端子間電圧V
oを波高値とする正電圧となる。この期間では、電流iにより平滑コンデンサC
0が充電される。
(2)期間(2)(スイッチQ
x,Q
yをオン):電流iは、受電コイル120→共振コンデンサC
r→スイッチQ
x→ダイオードD
y→受電コイル120の経路で流れ、交流端子間電圧vは零電圧となる。
(3)期間(3)(スイッチQ
u,Q
vをオン):電流iは、共振コンデンサC
r→受電コイル120→ダイオードD
v→スイッチQ
u→共振コンデンサCの経路で流れ、交流端子間電圧vは零電圧となる。
(4)期間(4)(スイッチQ
x,Q
vをオン):電流iは、共振コンデンサC
r→受電コイル120→ダイオードD
v→平滑コンデンサC
0→ダイオードD
x→共振コンデンサCの経路で流れ、交流端子間電圧vは、直流端子間電圧V
oを波高値とする負電圧となる。この期間では、電流iにより平滑コンデンサC
0が充電される。
これ以降は、期間(1)のスイッチングモードに遷移し、同様の動作が繰り返される。
【0016】
図11から明らかなように、制御装置200が半導体スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yをスイッチング制御することで、交流端子間電圧vは、受電コイル120を流れる電流iの一方のゼロクロス点ZCP’の前後の期間αだけ零電圧となり、その他の期間は直流端子間電圧V
oを波高値とする正負電圧となるように制御される。一次側給電線110から受電回路320への給電電力は電流iと電圧vとの積であり、制御装置200が、直流端子間電圧V
oの検出値に基づいてスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号を調整することで、給電電力の制御、すなわち直流端子間電圧V
oの一定制御が可能になる。
このとき、
図11に示すように、電流iと交流端子間電圧vの基本波成分v’との位相差は0°になるので、受電回路320の入力力率を1にすることができる。
【0017】
ここで、第1の先願発明によれば、受電コイル120及び共振コンデンサC
rによる共振周波数が電源周波数と完全に一致している場合には受電回路320の入力力率が1となるが、共振周波数が電源周波数からずれると、受電回路320の入力力率は低下する。その理由を、以下に説明する。
【0018】
図12は、受電コイル120及び共振コンデンサC
rによる共振周波数が電源周波数からずれている場合の、受電回路320の入力側等価回路を示している。
図12では、受電コイル120に誘起される電圧v
inを交流電源として表してあり、また、符号400は、受電回路320及び負荷Rに相当するインピーダンスを示している。但し、一般的に、負荷Rに対してその他のインピーダンスは無視できるため、符号400は負荷Rに相当する純抵抗とみなすことができる。
更に、
図13は受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧v
in、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形、並びにスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号を示している。
【0019】
図12に示すように、受電コイル120のインダクタンスをL[H]、共振コンデンサC
rのキャパシタンスを部品の符号と同様にC
r[F]とし、更に、電源周波数をf
s[Hz]とした場合、インダクタンスLと共振コンデンサC
rとの合成インダクタンスL
s[H]は数式1により定義される。
【数1】
【0020】
一方、受電コイル120及び共振コンデンサC
rからなる共振回路の共振周波数は、数式2によって表される。
【数2】
従って、f
c=f
sのときL
s=0,f
c≠f
sのときL
s≠0となる。
また、
図11に示した制御方法によれば、v’の位相はiと一致している。このため、受電コイル120の電流iがIsinωtと表されるとき、v’はV’sinωtと表すことができる。
【0021】
これに対し、v
inは、
図12によりvの基本波成分v’とv
Lとの和によって表され、数式3のようになる。
【数3】
L
s=0の場合にはv
in=V’sinωtとなり、v
inとi(=Isinωt)との位相差θは0になって受電回路320の入力力率は1となる。しかし、L
s≠0の場合には、
図13に示すようにv
inとiとは位相差θを持つため、入力力率は低下することとなる。
【0022】
そこで、L
s≠0、すなわち受電コイル及び共振コンデンサからなる共振回路の共振周波数が電源周波数と一致していない場合にも受電回路の入力力率を向上させることを目的として、出願人は、特願2013−123810号に係る非接触給電装置(以下、第2の先願発明という)を既に提案している。
第2の先願発明の回路構成は
図10と同様であり、以下では、第2の先願発明による力率改善作用について説明する。
【0023】
図14は、
図10の受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧v
in、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形と、スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号を示している。
また、
図15はこのときの受電回路320の入力側等価回路であり、符号400は受電回路320及び負荷Rに相当するインピーダンスである。但し、一般的に、負荷Rに対してその他のインピーダンスは無視できるため、符号400は負荷Rに相当する純抵抗とみなすことができる。なお、401はv’の容量性リアクタンス成分を示している。
【0024】
第2の先願発明では、受電回路320の入力力率を改善するために、vの波高値が零となる期間の中点が電流iの一周期内の一方のゼロクロス点ZCPから補償期間(角度)βだけずれるように、制御装置200がスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yに駆動信号を与える。これにより、交流端子間電圧vは、前記中点の前後の期間(それぞれαとする)は零電圧、その他の期間は直流端子間電圧V
oを波高値とする正負電圧になり、iのゼロクロス点ZCPを中心として非対称な波形となる。よって、v’の位相はiの位相とずれる。ここで、
図15に示したv’の容量性リアクタンス成分401による電圧降下がL
sにおける電圧降下v
Lを補償するように期間βを与えると、回路のインピーダンスは見かけ上、純抵抗のみとなる。よって、iとv
inとの位相が一致するため、受電回路320の入力力率を1にすることができる。
【0025】
次に、入力力率を1にするための期間βの求め方を説明する。まず、v’は、フーリエ級数展開により数式4のように表される。
【数4】
図14より、数式4におけるa
1,b
1はそれぞれ数式5,6のように求められる。
【数5】
【数6】
【0026】
一方、
図15より、v’は数式7のように表すこともできる。
【数7】
入力力率を1にするとき、iとv
inとの位相は一致するため、i
in(ωt)=I
insin(ωt)と考えると、v
in(ωt)=V
insin(ωt)となる。従って、数式7は数式8のように表すことができる。
【数8】
【0027】
V
L=ωL
sIとおくと、数式4〜6,8より、数式9,10が成り立つ。
【数9】
【数10】
【0028】
従って、入力力率を1にするときのβ及びαは、それぞれ数式11,12により求められる。
【数11】
【数12】
【0029】
すなわち、電源周波数と共振周波数とが一致せずにL
s≠0である場合にも、制御装置200が数式11,12によるα,βを用いて演算した駆動信号によりスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yを駆動すれば、受電回路320の入力力率を1に制御することができる。
なお、配線インダクタンスが大きい場合など、他のインピーダンスの影響が大きく、
図15における符号400を純抵抗と見なせない場合には、符号400に含まれるリアクタンス分も補償するように期間βを与えることで、入力力率を1とすることができる。
また、vの波形が
図14と同じであれば、スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号を例えば
図16のようにした場合でも、数式11,12のα,βを適用してスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yを駆動すれば、受電回路320の入力力率を1にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態を示す給電装置の回路図であり、請求項1〜3に係る発明が適用されるものである。なお、本発明は、非接触型、接触型の給電装置の何れにも適用可能であるが、以下の各実施形態では、本発明を非接触給電装置に適用した場合について説明する。
【0038】
図1に示す非接触給電装置は、
図10と同様に構成されている。すなわち、受電回路320は、ブリッジ接続された半導体スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yと、各スイッチにそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD
u,D
x,D
v,D
yと、これらの素子からなるブリッジ回路の直流端子間に接続された平滑コンデンサC
0と、を備えている。ブリッジ回路の交流端子間には、共振コンデンサC
rと受電コイル120との直列回路が接続され、平滑コンデンサC
0の両端には負荷Rが接続されている。なお、100は高周波電源、110は一次側給電線である。
一方、制御装置200は、直流端子間電圧V
oと、電流検出手段CTにより検出した受電コイル120の電流iとに基づいて、スイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号を生成し、出力する。
【0039】
次に、この給電装置の制御方法を説明する。
図2は、
図1の給電装置の制御ブロック図であり、後述する補償期間(角度)φを演算するためのものである。また、
図3は、請求項1に相当する第1実施例を適用した場合の、受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧v
in、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形、並びにスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号を示している。
以下、
図2,
図3に基づいて第1実施例を説明する。
【0040】
まず、
図2に示す制御ブロックにおいて、正弦波の入力信号sin(2πf
1t)を一周期分与える。その周波数f
1は電源周波数f
sよりも十分に小さい値とし、例えばf
sの1/10程度とする。この制御ブロックの出力を、
図3における電流iのゼロクロス点ZCPを基準とした補償期間φ(前述した第2の先願発明における補償期間βに相当する)とすると、期間φは入力信号sin(2πf
1t)と同じ周波数f
1で変化する。このとき、入力信号の変化に伴って
図3の期間αも変化するが、受電回路320の入力力率が悪い時はαが長くなり、入力力率が良い時はαが短くなる。その理由を、以下に説明する。
【0041】
まず、
図3における期間αに相当する期間(電圧vが零電圧となる期間)iiでは、スイッチQ
x,Q
yがオン、スイッチQ
u,Q
vがオフし、電流iは受電コイル120→共振コンデンサC
r→スイッチQ
x→ダイオードD
y→受電コイル120の経路で流れ、受電コイル120にエネルギーが蓄積されると共に、交流端子間電圧vは零電圧となる。同じく期間αに相当する期間vでは、スイッチQ
u,Q
vがオン、スイッチQ
x,Q
yがオフし、電流iは受電コイル120→ダイオードD
v→スイッチQ
u→共振コンデンサC
r→受電コイル120の経路で流れ、受電コイル120にエネルギーが蓄積されると共に、交流端子間電圧vは零電圧となる。
【0042】
上記の期間ii,v以外の期間i,iii,iv,viでは、受電コイル120に蓄積されたエネルギーが放出されて平滑コンデンサC
0が充電される。
すなわち、期間i,iiiでは、スイッチQ
u,Q
yがオン、スイッチQ
x,Q
vがオフし、電流iは受電コイル120→共振コンデンサC
r→ダイオードD
u→平滑コンデンサC
0→ダイオードD
y→受電コイル120の経路で流れて平滑コンデンサC
0が充電され、交流端子間電圧vは直流端子間電圧V
oを波高値とする正電圧となる。
また、期間iv,viでは、スイッチQ
x,Q
vがオン、スイッチQ
u,Q
yがオフし、電流iは受電コイル120→ダイオードD
v→平滑コンデンサC
0→ダイオードD
x→共振コンデンサC
r→受電コイル120の経路で流れて平滑コンデンサC
0が充電され、交流端子間電圧vは直流端子間電圧V
oを波高値とする負電圧となる。
【0043】
ここで、受電コイル120へのエネルギー蓄積期間である期間αが長いほど、受電コイル120に蓄積されるエネルギーは多くなり、結果として電流iは大きくなるので、期間αが長い方が電流iは大きくなると言える。一方、受電回路320の入力力率が悪い時は入力電流が大きくなり、入力力率が良い時は入力電流が小さくなる。
このため、受電回路320の入力力率が悪い時はαが長くなり、入力力率が良い時はαが短くなる。
【0044】
そこで、
図3において電圧vが零電圧となる期間αの変化量(微分値)が負である時は入力信号sin(2πf
1t)の変化量(微分値)を積算し、期間αの変化量が正である時は「0」を積算するように、
図2の制御ブロックを構成する。
図2において、11はsin(2πf
1t)を微分する微分手段、12は期間αを微分する微分手段である。また、13は比較手段であり、微分手段12の出力(端子Aの入力)と「0」(端子Bの入力)との比較結果に応じた出力Qにより切替手段14を動作させる。切替手段14の切替先は、微分手段11の出力(端子Tの入力)と「0」(端子Fの入力)であり、期間αの変化量が負の時は比較手段13の出力Qによって端子T側に切り替わり、期間αの変化量が正の時は端子F側に切り替わる。また、15は切替手段14の出力を積算する積算(積分)手段であり、16は積算手段15の出力から入力周波数(f
1)成分をカットするローパスフィルタ手段である。
そして、加算手段17により入力信号sin(2πf
1t)とローパスフィルタ手段16の出力とが加算され、その加算結果が補償期間φとして出力される。
【0045】
仮に、期間αの変化量が正である時はαが大きくなっているため、入力力率は悪くなっている。従って、この時の補償期間φは力率改善に不適であるため、無視する(積算手段15が「0」を積算する)。これに対し、期間αの変化量が負である時はαが小さくなっているため、入力力率は改善している。従って、この時の補償期間φは力率改善に有効であるため、積算手段15は、切替手段14の端子Tを介して微分手段11の出力を積算する。
【0046】
上記の処理により、入力信号sin(2πf
1t)の一周期が終了した時、出力には入力信号sin(2πf
1t)の変化量の積算値、すなわち期間αが最も短くなる時(入力力率が最も良い時)の補償期間φが残る。
従って、制御装置200は、
図3の電流iの各ゼロクロス点ZCPから上記の補償期間φだけずらした点を中心にして、前後に等しい期間だけ交流端子間電圧vが直流端子間電圧V
oを波高値とする正負電圧となり、その他の期間αは交流端子間電圧vが零電圧となるようにスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yを駆動することで、受電回路320の入力力率を改善することができる。
【0047】
次に、請求項2に相当する第2実施例を説明する。
図4は、
図1の非接触給電回路に第2実施例を適用した場合の、受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧v
in、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形、並びにスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号を示している。
電流iの経路の詳述は省略するが、
図4における期間αを構成する期間(電圧vが零電圧となる期間)I,III,IV,VIは、受電コイル120、共振コンデンサC
r、何れかのスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yまたはダイオードD
u,D
x,D
v,D
yを経由する経路となり、このときは受電コイル120にエネルギーが蓄積される。一方、上記期間I,III,IV,VI以外の期間II,Vでは、受電コイル120に蓄積されたエネルギーが放出されて平滑コンデンサC
0が充電される。
【0048】
この第2実施例でも、第1実施例と同様に、受電コイル120へのエネルギー蓄積期間であるαが長いほど多くのエネルギーが蓄積されるため、電流iは大きくなる。一方、受電回路320の入力力率が悪い時は入力電流が大きくなり、入力力率が良い時は入力電流が小さくなる。このため、受電回路320の入力力率が悪い時はαが長くなり、入力力率が良い時はαが短くなる。
よって、交流端子間電圧vを
図4のように制御する場合でも、
図2に示した制御ブロックを用いて補償期間φを求め、
図4の電流iの各ゼロクロス点ZCPから補償期間φだけずらした点を中心にして、前後に等しい期間(前後にα/2ずつの期間)だけ交流端子間電圧vが零電圧となり、その他の期間は交流端子間電圧vが直流端子間電圧V
oを波高値とする正負電圧となるように制御装置200がスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yを駆動することで、受電回路320の入力力率を改善することができる。
【0049】
次に、請求項3に相当する第3実施例を説明する。
図5は、
図1の非接触給電回路に第3実施例を適用した場合の、受電コイル120を流れる電流i、受電コイル120の誘起電圧v
in、ブリッジ回路の交流端子間電圧v及びその基本波成分v’の動作波形、並びにスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yの駆動信号を示している。
電流iの経路の詳述は省略するが、
図5における期間αを構成する期間(電圧vが零電圧となる期間)(2),(3)は、受電コイル120、共振コンデンサC
r、何れかのスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yまたはダイオードD
u,D
x,D
v,D
yを経由する経路となり、このときは受電コイル120にエネルギーが蓄積される。一方、上記期間(2),(3)以外の期間(1),(4)では、受電コイル120に蓄積されたエネルギーが放出されて平滑コンデンサC
0が充電される。
【0050】
この第3実施例でも、第1,第2実施例と同様に、受電コイル120へのエネルギー蓄積期間であるαが長いほど多くのエネルギーが蓄積されるため、電流iは大きくなる。一方、受電回路320の入力力率が悪い時は入力電流が大きくなり、入力力率が良い時は入力電流が小さくなる。このため、受電回路320の入力力率が悪い時はαが長くなり、入力力率が良い時はαが短くなる。
よって、交流端子間電圧vを
図5のように制御する場合でも、
図2に示した制御ブロックを用いて補償期間φを求め、
図5における電流iのゼロクロス点ZCPから補償期間φだけずらした点を中心にして、前後に等しい期間(前後にαずつの期間)だけ交流端子間電圧vが零電圧となり、その他の期間は交流端子間電圧vが直流端子間電圧V
oを波高値とする正負電圧となるように制御装置200がスイッチQ
u,Q
x,Q
v,Q
yを駆動することで、受電回路320の入力力率を改善することができる。
【0051】
次に、
図6は、各実施例により求めた補償期間φを用いて実際に位相を制御する方法としてPLL制御を用いた場合の制御ブロック図であり、
図7はその動作波形を示す図である。
図6において、21は交流端子間電圧の基本波成分v’の位相を検出する位相検出手段、22は基本波成分v’の位相から45°を減算する減算手段、23は減算手段22の出力と補償期間(角度)φとを加算する加算手段、24は加算手段23の出力に対して比例・積分演算を行うPI調節手段、25はPI調節手段24の出力を電源周波数f
sの逆数(1/f
s)から減算する減算手段であり、減算手段25の出力が、ブリッジ回路をPWM制御する際のキャリア周
期T
carrierとなっている。また、
図7は、基本波成分v’の波形、及び、PWMキャリアの波形(φ≠0の場合、φ=0の場合)を示している。
この例では、交流端子間電圧の基本波成分v’を基準としてPLL制御及び補償期間φの計算を行っており、PWMキャリアの一周期に1回、例えばPWMキャリアが山になる時点で1回だけキャリア周
期T
carrierの演算を行い、その際に
図2の制御ブロックにより求めた補償期間φを適用することで、受電回路320の入力力率を改善するようなスイッチの駆動信号を生成することができる。
【0052】
なお、上記の説明では、
図1の非接触給電回路を対象にした場合を説明したが、本発明は、例えば
図1において上アームのスイッチQ
u,Q
vを有しない受電回路等、請求項記載の範囲内での様々な受電回路に対しても適用可能である。