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特許6129679電力系統安定化システム、及び電力系統安定化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129679
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】電力系統安定化システム、及び電力系統安定化方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/24 20060101AFI20170508BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   H02J3/24
   H02J3/00 170
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-163478(P2013-163478)
(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2015-33294(P2015-33294A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】神山 幸一
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰典
(72)【発明者】
【氏名】石原 祐二
(72)【発明者】
【氏名】山田 利之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良助
(72)【発明者】
【氏名】青山 昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匡美
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−170221(JP,A)
【文献】 特開2003−299263(JP,A)
【文献】 特開平07−322502(JP,A)
【文献】 特開平06−070469(JP,A)
【文献】 特開2000−333360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H3/26−3/30
H02J3/00−5/00、
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気所の送電線に設置された遮断器の開閉情報および変流器の電流値に基づいて、前記送電線で当該電気所と繋がる電気所のうち、当該電気所に隣接する電気所で発生した隣接電気所母線事故を検出する事故検出端末装置と、
前記隣接電気所母線事故の検出情報に基づいて母線事故の発生箇所を特定し、特定した発生箇所に基づいて、制御対象を決定する中央制御装置と、
を備える電力系統安定化システム。
【請求項2】
当該電気所に設置された遮断器の「入」情報及び変流器の「電流無し」情報に基づいて、前記隣接電気所母線事故を検出する隣接電気所母線事故検出部を備える請求項1に記載の電力系統安定化システム。
【請求項3】
電力系統内の2か所の電気所で前記隣接電気所母線事故を検出し、前記2か所の電気所いずれにも隣接する電気所において母線事故が発生したと特定する母線事故発生箇所特定部を備える請求項1または請求項2に記載の電力系統安定化システム。
【請求項4】
当該事故検出端末装置の故障を検出する故障検出部と、
当該事故検出端末装置と中央制御装置との間の伝送不良を検出する伝送不良検出部と、
設置された電気所に設けられた保護リレーの作動情報に基づいて、当該電気所で発生した母線事故を検出する母線事故検出部と、
を備え、
前記故障検出部による故障及び前記伝送不良検出部による伝送不良が検出されない場合には、
前記母線事故検出部で検出した母線事故に基づいて、電力系統内の母線事故の発生箇所を特定する母線事故発生箇所特定部を備える請求項1乃至3の何れか1項に記載の電力系統安定化システム。
【請求項5】
送電線L1に流れる電流を遮断する遮断器と、送電線L1に流れる電流を検出する変流器と、
送電線L2に流れる電流を遮断する遮断器と、送電線L2に流れる電流を検出する変流器と、
前記送電線L1に流れる電流を遮断する遮断器の「入」情報及び送電線L1に流れる「電流無し」情報に基づいて、隣接電気所母線事故を検出する隣接電気所母線事故検出部L1と、
前記送電線L2に流れる電流を遮断する遮断器の「入」情報及び送電線L2に流れる「電流無し」情報に基づいて、隣接電気所母線事故を検出する隣接電気所母線事故検出部L2と、
を備える請求項1乃至4の何れか1項に記載の電力系統安定化システム。
【請求項6】
前記母線は、2組の母線Xと母線Yとからなり、
隣接電気所母線事故検出部L1では、隣接電気所の母線X、母線Yのうちいずれかで発生した隣接電気所母線事故の検出を行い、
隣接電気所母線事故検出部L2では、前記隣接電気所母線事故検出部L1で検出を行わない母線で発生した隣接電気所母線事故の検出を行う請求項5に記載の電力系統安定化システム。
【請求項7】
前記隣接電気所母線事故検出部L1で検出した隣接電気所母線事故と、前記隣接電気所母線事故検出部L2で検出した隣接電気所母線事故に基づいて、
電力系統内の母線事故の発生箇所と共に、その母線事故が片母線事故か両母線事故かの特定をする母線事故発生箇所特定部を備える請求項6に記載の電力系統安定化システム。
【請求項8】
各電気所からの隣接電気所母線事故の運用の設定を行う運用設定部を設け、
前記運用設定部において隣接電気所母線事故の運用の除外設定した電気所と、隣接電気所母線事故を検出した電気所と、に隣接する電気所において、母線事故が発生したと特定する母線事故発生箇所特定部を備える請求項1乃至6の何れか1項に記載の電力系統安定化システム。
【請求項9】
電気所の送電線に設置された遮断器の開閉情報および変流器の電流値に基づいて、前記送電線で当該電気所と繋がる電気所のうち、当該電気所に隣接する電気所で発生した隣接電気所母線事故を検出する検出ステップと、
前記隣接電気所母線事故に基づいて母線事故の発生箇所を特定する特定ステップと、
特定した発生箇所に基づいて、制御対象を決定する制御ステップと、
を含む電力系統安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力系統安定化システム、及び電力系統安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に落雷などの事故が発生した場合、事故除去リレーシステムによって高速かつ最小範囲での事故除去が行われ、系統への影響は最小限に抑えられる。
【0003】
しかし、事故除去リレーシステムの動作にもかかわらず、遮断器不動作などによる事故除去時間の遅延、広範囲な事故遮断、ルート断事故などの重大事故の発生などに起因して事故除去後の系統構成が大幅に変化したりする場合には、潮流急変、大幅な需給アンバランスなどを引き起こし、系統の異常現象が発生する場合がある。
【0004】
これを放置すると、発生した異常現象が電力系統全体へ波及して大停電に拡大する恐れがあるため、このような異常現象の発生を未然に防止したり、系統全体への波及拡大を防止したりする事故波及防止リレーシステムがある。
【0005】
事故波及防止リレーシステムは、通称、電力系統安定化システムあるいは電力系統安定化装置と呼ばれ、対象とする電力系統における異常現象(脱調現象、周波数異常、電圧異常、過負荷)に応じてそれを防止する制御を行う。
【0006】
電力系統安定化システムは中央制御装置と事故検出端末装置と制御端末装置で構成されることが多い。事故検出端末装置は変電所など、制御端末装置は発電所などにそれぞれ設置されることが多い。また、中央制御装置は他の装置との通信が可能な箇所に設置され、事故検出端末装置や制御端末装置と同じ場所に設置されることもある。さらには、中央制御装置に事故検出端末装置や制御端末装置の機能を含めて構成することもある。
【0007】
母線事故時には、事故検出端末装置は母線保護リレーから動作情報を入力して事故を検出し、中央制御装置へ母線事故情報を送信する。その後、発電所に設置された制御端末装置は中央制御装置から制御指令を受信して発電機遮断等の制御を行う。
【0008】
また、事故検出端末装置では母線保護リレーから入力した母線X事故、母線Y事故の動作信号より両母線事故または片母線事故の判定を行い、母線事故情報を中央制御装置に出力する。従来の中央制御装置の制御対象決定ロジックでは、中央制御装置は、事故が発生した母線の変電所等に設置された事故検出端末装置から受信した母線事故情報を制御テーブルに記録された制御内容と照合して制御対象を決定し、制御端末装置に制御指令を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−56069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
母線事故が生じると母線保護リレーが作動し、事故母線が遮断される。電力系統安定化システムは母線保護リレーの動作情報を用いて変電所に設置されている事故検出端末装置で母線事故を検出し、電力系統の安定度維持に必要な制御を行う。しかし、従来の電力系統安定化システムでは事故検出端末装置の不良が発生した場合や、事故検出端末装置と中央制御装置との間で伝送不良が発生した場合、当該変電所での母線事故検出ができないという問題点があった。
【0011】
本発明の実施形態の目的は、母線事故が発生した変電所に設置された事故検出端末装置や事故検出端末装置と中央制御装置との間の伝送が不良であっても母線事故を検出して制御を行える電力系統安定化システム、及び電力系統安定化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る電力系統安定化システムは、以下の構成を備える。
(a)電気所の送電線に設置された遮断器の開閉情報および変流器の電流値に基づいて、前記送電線で当該電気所と繋がる電気所のうち、当該電気所に隣接する電気所で発生した母線事故を検出する事故検出端末装置。
(b)前記隣接電気所母線事故の検出情報に基づいて母線事故の発生箇所を特定し、特定した発生箇所に基づいて、制御対象を決定する中央制御装置。
【0013】
また、電力系統安定化方法も本発明の実施形態の一態様である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の中央制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態の事故検出端末装置の構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態の母線事故種別判定部での母線事故の種別判定方法を示すブロック図である。
図5】第1の実施形態の隣接変電所母線事故判定部での隣接変電所母線事故の判定方法を示すブロック図である。
図6】第1の実施形態において母線事故が発生した場合の各変電所における遮断器の状態と、送電線L1,L2に流れる電流を示した図である。
図7】第1の実施形態の中央制御装置4において、母線事故の発生箇所の特定の手順を示すフローチャートである。
図8】第2の実施形態に係る電力系統安定化システムを示すブロック図である。
図9】第2の実施形態の母線事故発生箇所特定部において、事故発生箇所の判定方法を示すブロック図である。
図10】第2の実施形態の中央制御装置4において、母線事故の発生箇所の特定の手順を示すフローチャートである。
図11】第3の実施形態に係る電力系統安定化システムを示すブロック図である。
図12】第3の実施形態に係る事故検出端末装置2の構成を示すブロック図である。
図13】第3の実施形態の母線事故発生箇所特定部において、事故発生箇所の判定方法を示すブロック図である。
図14】第3の実施形態において、隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)と、事故種別の関係を示す相関関係を示す図である。
図15】第3の実施形態のケース1のパターンを示す図である。
図16】第3の実施形態のケース5のパターンを示す図である。
図17】第3の実施形態のケース6のパターンを示す図である。
図18】第3の実施形態のケース8のパターンを示す図である。
図19】第4の実施形態に係る電力系統安定化システムを示すブロック図である。
図20】第4の実施形態の中央制御装置の構成を示すブロック図である。
図21】第4の実施形態の母線事故発生箇所特定部において、事故発生箇所の判定方法を示すブロック図である。
図22】第4の実施形態の中央制御装置4において、母線事故の発生箇所の特定の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
本実施形態に係る電力系統安定化システムについて、図1を参照しつつ、詳細に説明する。本実施形態の電力系統安定化システムでは、電力系統1において事故が発生した場合に事故波及防止のために、複数の変電所に事故検出端末装置2が配置される。この事故検出端末装置2は、電力系統1内の隣接する変電所にそれぞれ設置され、電力系統1の母線3において事故が発生した際に、母線事故が発生した変電所に隣接する変電所に設置された事故検出端末装置2が観測した遮断器CBの開閉情報と変流器CTの電流値に基づいて電力系統1内の母線事故を検出する。隣接する変電所とは、該当する2つの変電所間に、他の電気所が設置されず、該当する2つの変電所間を送電線で接続する変電所である。
【0016】
(全体構成)
図1は、本実施形態に係る電力系統安定化システムを示すブロック図である。図1に示すように、電力系統1は、発電機Gで発電した電力を母線3a,3b,3cを介して送電する。この母線3は電力系統1に複数存在し、母線3間は送電線L1,L2により接続されている。送電線L1,L2の接続部分には、母線3を有する変電所Ass、変電所Bss、変電所Cssが設けられる。このうち、変電所Assと変電所Bss、及び、変電所Bssと変電所Cssは、隣接する変電所であり、変電所Assと変電所Cssは、隣接する変電所ではない。
【0017】
各変電所には、事故検出端末装置2a,2b,2cが設置される。事故検出端末装置2a,2b,2cは、変電所に設けられた母線保護リレー21と、遮断器CBと、変流器CTと接続される。事故検出端末装置2a,2b,2cには、母線保護リレー21の作動情報、遮断器CBの開閉情報、変流器CTにおける電流値が入力する。各変電所に設けられた事故検出端末装置2a,2b,2cは、母線保護リレー21の作動情報に基づいて、当該変電所における母線事故を検出する。また、遮断器CB及び変流器CTは、変電所内の送電線L1,L2に配置され、事故検出端末装置2a,2b,2cは、変電所の遮断器CBの開閉情報及び変流器CTの電流値により、隣接する変電所の母線事故である隣接変電所母線事故を検出する。検出結果は、母線事故情報、または、隣接変電所母線事故情報として中央制御装置4に対して出力する。
【0018】
例えば、変電所Bssの母線3bにおいて、事故が発生した場合には、変電所Bssの事故検出端末装置2bでは、当該変電所に配置された母線保護リレー21の作動情報に基づいて、母線事故を検出する。また、変電所Bssに隣接する変電所Ass及び変電所Cssでは、それぞれの変電所の遮断器CBの開閉情報及び変流器CTの電流値より、事故検出端末装置2a,2cは隣接変電所母線事故を検出する。中央制御装置4では、変電所Bssからの母線事故情報、または、変電所Ass及び変電所Cssからの隣接変電所母線事故情報に基づいて変電所Bssにおける母線事故を検出する。
【0019】
(事故検出端末装置2)
図3は、各変電所に設置される事故端末検出装置2の構成を示すブロック図である。事故端末検出装置2は、設置される変電所内の母線保護リレー21の情報に基づいて変電所における母線事故を検出する。また、事故端末検出装置2は、設置される変電所内の遮断器CBの開閉情報および変流器CTの電流値より、隣接する変電所における母線事故の検出を行う。事故検出端末装置2は、母線事故検出部22、隣接変電所母線事故検出部23、信号出力部24を備える。
【0020】
母線事故検出部22は、事故端末検出装置2が設置される変電所の母線3に発生した母線事故を検出する。母線事故検出部22は、変電所に設置された母線保護リレー21と接続され、この母線保護リレー21の作動情報に基づいて、母線事故の検出を行う。通常母線3は、2つの母線3X,3Yとからなり、母線事故検出部22は、各母線における事故母線をそれぞれ検出し、それにより、片母線事故か両母線事故かの母線事故種別の判定を行う。母線事故検出部22は、事故母線検出部25と、母線事故種別判定部26を備える。
【0021】
事故母線検出部25は、事故母線の検出を行う。事故母線検出部25は、母線Xと母線Yを保護する母線保護リレー21と接続される。母線事故が発生した際に、母線保護リレー21の作動情報により、母線Xの事故であるか、母線Yの事故であるかを検出する。検出結果は、母線事故種別判定部26に出力される。
【0022】
母線事故種別判定部26は、図4に示すように、事故母線検出部25からの情報に基づいて、発生した母線事故の種別の判定を行う。事故母線検出部25から母線Xの事故情報と母線Yの事故情報が入力した場合には、両母線事故と判定し、母線Xの事故情報または母線Yの事故情報のいずれか片方が入力した場合には、片母線事故と判定する。判定結果は、信号出力部24に対して出力される。
【0023】
隣接変電所母線事故検出部23は、遮断器CBの開閉情報および変流器CTの電流値に基づいて、隣接する変電所の母線事故の検出を行う。隣接変電所母線事故検出部23は、遮断器情報検出部27と、電流検出部28と、隣接変電所母線事故判定部29を備える。遮断器情報検出部27及び電流検出部28は、当該事故端末検出装置2が設置される変電所に設置された遮断器CB及び変流器CTと接続され、これらの情報に基づいて、隣接変電所における母線事故を検出する。
【0024】
遮断器情報検出部27は、当該変電所における遮断器CBの入/切状態を監視し、遮断器CBが「入」状態か「切」状態かを検出する。電流検出部28は、当該変電所の送電線L1,L2における電流を計測し、送電線L1,L2に流れる電流が0となる「電流無し」を検出する。なお,「電流無し」とは電流が予め設定された値より小さい状態のことをいう。遮断器情報検出部27及び電流検出部28における検出方法は、種々の方法が利用できる。
【0025】
隣接変電所母線事故判定部29は、隣接変電所母線事故が発生したか否かの判定を行う。隣接変電所母線事故判定部29は、図5に示すように、遮断器CB「入」状態と「電流無し」との両方を検出した場合には、隣接変電所において母線事故が発生したと判定する。判定結果は、信号出力部24に対して出力される。
【0026】
信号出力部24は、母線事故検出部22で検出した母線事故に基づく母線事故情報、及び、隣接変電所母線事故検出部23で検出した隣接変電所母線事故に基づく隣接変電所母線事故情報を中央制御装置4に対して出力する。信号出力部24は、中央制御装置4と通信ネットワークまたは通信回線を介して接続する。
【0027】
(中央制御装置4)
中央制御装置4は、事故検出端末装置2の信号出力部24から出力した母線事故情報及び隣接変電所母線事故情報に基づいて、電力系統1内で発生した母線事故の発生箇所の特定を行い、特定した発生箇所に基づいて制御対象を決定する。制御対象は、発電機Gなどであり,中央制御装置4は、制御を行う制御端末装置5に対して制御指令の出力を行う。中央制御装置4は通信ネットワークまたは通信回線を介して、制御端末装置5と接続する。図2は、中央制御装置4の構成を示すブロック図である。中央制御装置4は、図2に示すように、母線事故発生箇所特定部41、制御対象決定部42、制御テーブル43とを備える。
【0028】
母線事故発生箇所特定部41は、受信した隣接変電所母線事故情報に基づいて、電力系統1内の、どの母線で事故が発生したかを特定する。特定方法としては、電力系統内の2つの変電所で隣接する変電所の母線事故を検出し、その2つの変電所のいずれにも隣接する変電所がある場合には、隣接する変電所の母線事故を検出した2つの変電所と隣接する変電所において母線事故が発生したとする。隣接変電所の母線事故の検出は、変電所より隣接変電所母線事故情報を受信することで行う。すなわち、母線事故発生箇所特定部41では、変電所Assからの隣接変電所母線事故情報と、変電所Cssからの隣接変電所母線事故情報とを受信した場合には、変電所Assと変電所Cssのそれぞれに隣接する変電所である変電所Bssで母線事故が発生したと特定する。特定した箇所は、制御対象決定部42に対して出力される。
【0029】
制御対象決定部42では、事故母線事故情報に基づく母線事故発生箇所、または、隣接変電所母線事故情報に基づき特定した母線事故発生箇所と、制御テーブル43に記憶してある母線事故のパターンと制御対象の対応関係を照合して制御対象を決定する。決定した制御対象を制御する制御端末装置5に対し制御指令を送信する。このような、中央制御装置4は、たとえば、事故検出端末装置2若しくは制御端末装置5と同じ場所に設置される場合もある。
【0030】
制御端末装置5は、たとえば、図1に示すように、発電機Gが接続された発電所の遮断器CB、電流計測器、電圧計測器等に接続されている。これにより、制御端末装置5は、中央制御装置4から受信した制御指令に基づいて、遮断器CBへ遮断指令を出力し、発電機Gの解列等の制御を行うことができる。このような制御端末装置5は、発電所に設置されることが多い。
【0031】
(作用)
本実施形態の構成を有する電力系統安定化システムでは、各変電所に設置された事故検出端末装置2a,2b,2cからの隣接変電所母線事故に基づいて電力系統1に発生した母線事故の検出を行う。
【0032】
図6は、変電所Bssにおいて、母線事故が発生した場合の各変電所における遮断器CBの状態と、送電線L1,L2に流れる電流を示した図である。また、図7は、中央制御装置4において、監視する電力系統1において変電所Bssの母線3bにおいて事故が発生した場合の母線事故の発生箇所の特定の手順を示すフローチャートである。
【0033】
初めに、変電所Bssの母線3bにおいて、母線Xおよび母線Yにまたがる事故すなわち両母線事故が発生したとする(S101)。この場合、図6に示すように、変電所Bssでは、母線事故の発生に伴い、母線3bと接続する送電線L1,L2に設置させた遮断器CBが切状態となる。一方、変電所Assの送電線に設置された遮断器CBは、変電所Assでは事故が発生していないので、入状態のままである。同様に、変電所Cssの送電線に設置された遮断器CBは、入状態である(S102)。
【0034】
この時、変電所Bssで遮断器CBが切状態となると、送電線L1,L2には電流が流れなくなる。変電所Assの送電線L1,L2で検出される電流は0となり、「電流無し」となる。同様に、変電所Cssの送電線L1で検出される電流は0となり、「電流無し」となる(S103)。
【0035】
変電所Assに設置された事故検出端末装置2aの隣接変電所母線事故検出部23では、変電所Assの遮断器CBが「入」状態、且つ「電流無し」より、隣接変電所母線事故を検出し、その情報を中央制御装置4に対して出力する。同様に、変電所Cssに設置された事故検出端末装置2cの隣接変電所母線事故検出部23では、変電所Cssの遮断器CBが「入」状態、且つ「電流無し」より、隣接変電所母線事故を検出し、その情報を中央制御装置4に対して出力する(S104)。
【0036】
次に、中央制御装置4では、2つの変電所Ass,Cssから隣接変電所母線事故情報が入力した場合には、母線事故発生箇所特定部41において、その2つの変電所Ass,Cssに隣接する変電所である変電所Bssにおいて、母線事故が発生したと特定する(S105)。
【0037】
(効果)
本実施形態の電力系統安定化システムでは、母線事故が発生した変電所に隣接する変電所に設置された事故検出端末装置2からの情報に基づいて、母線事故の検出を行う。そして、検出した母線事故の発生箇所に応じて、制御を行う。
【0038】
そのため、母線事故が発生した変電所に設置された事故検出端末装置2の不具合や、事故検出端末装置2と中央制御装置4の間に伝送不良が生じた場合においても、電力系統1内で発生した母線事故を検出することができる。
【0039】
また、本実施形態の電力系統安定化システムでは、隣接変電所の母線事故を、遮断器CBの開閉情報と、送電線に流れる電流に基づいて検出する。遮断器CBの「切」情報を条件に入れているため、送電線事故と区別することが可能である。
【0040】
さらに、本実施形態では、変電所に設置された母線保護リレー21を用いて母線事故検出部22により、当該変電所の母線3での事故を検出するように構成したが、母線事故検出部22自体を設けることなく、隣接変電所母線事故情報のみに基づいて、電力系統1内の母線事故を検出するようにしても良い。
【0041】
また、本実施形態では、3つの変電所が連なる電力系統を用いて説明したが、変電所に限られず、開閉所、発電所、変換所等あらゆる電気所でも同様である。
【0042】
また、本実施形態では、隣接する変電所での母線事故を隣接変電所母線事故として検出を行ったが、隣接する電気所の種類に合わせて、隣接電気所母線事故として検出できる。その際、電気所の種類に応じて、隣接開閉所母線事故、隣接発電所母線事故、隣接変換所母線事故とすることもできる。
【0043】
[第2の実施形態]
本実施形態の電力系統安定化システムは、母線事故が発生した変電所に設置された事故検出端末装置2の故障、及び、事故検出端末装置2からの伝送不良を監視する。母線事故が発生した変電所の事故検出端末装置2が正常に作動し、且つ、その事故検出端末装置2から正常に伝送が行われる場合には、事故が発生した変電所に設けられた事故検出端末装置2からの母線事故情報に基づいて、電力系統1内の母線事故を検出する。
【0044】
(構成)
本実施形態に係る電力系統安定化システムについて、図8を参照しつつ、詳細に説明する。図8に示すように、本実施形態の電力系統安定化システムは、第1の実施形態の中央制御装置4に、各変電所に設置された事故検出端末装置2が故障であるかを検出する故障検出部44、及び、各事故検出端末装置2から中央制御装置4に対する情報の伝送の不良を検出する伝送不良検出部45を更に備えるものである。
【0045】
故障検出部44は、各変電所に設置された事故検出端末装置2の故障を検出する。検出方法は、各変電所に設置された事故検出端末装置2から装置情報を送信させ、その情報に基づいて装置故障を検出したり、中央制御装置4から通信網を介して各変電所の事故検出端末装置2と接続し、故障を検出しても良い。
【0046】
伝送不良検出部45は、各変電所に設置された事故検出端末装置2からの伝送不良を検出する。検出方法は、各変電所に設置された事故検出端末装置2との通信が途絶えたことを中央制御装置4の監視機能で検出,あるいは,事故検出端末装置2の監視機能で検出した伝送不良を信号を事故検出端末装置2から送信させて検出する。また、中央制御装置4から通信網を介して各変電所の事故検出端末装置2に対して信号を出力し、その信号の伝送状態により、伝送不良を検出しても良い。
【0047】
中央制御装置4は、母線事故情報、隣接変電所母線事故情報、母線事故が発生した変電所に設置された事故検出端末装置2の故障及び伝送不良に基づいて、電力系統1内で発生した母線事故の発生箇所の特定を行い、その箇所に応じて制御端末装置5に対して制御指令の出力を行う。
【0048】
母線事故発生箇所特定部41は、受信した隣接変電所母線事故情報に基づいて、電力系統1内の、どの母線3で事故が発生したかを特定するが、特定した母線事故の発生箇所の情報を制御対象決定部42に出力する条件として、図9に示すように、母線事故が発生した変電所に設置された事故検出端末装置2の故障、及び、事故検出端末装置2からの伝送不良を加える。例えば、変電所Bssにおいて、母線事故が発生した場合に、母線事故発生箇所特定部41は、変電所Ass、Cssからの隣接変電所母線事故情報に基づいて、母線事故の発生箇所を変電所Bssと特定する。この情報を、出力する条件として、変電所Bssの事故検出端末装置2bの故障、または、変電所Bssの事故検出端末装置2bにおける伝送不良のいずれかを加える。
【0049】
(作用)
本実施形態の構成を有する電力系統安定化システムでは、母線事故が発生した場合において、母線事故が発生した変電所に設置した事故検出端末装置2の故障、及び、その事故検出端末装置2からの伝送不良を考慮し、隣接変電所母線事故情報に基づく制御指令の出力を行う。
【0050】
図10は、中央制御装置4において、監視する電力系統1において変電所Bssの母線3bにおいて事故が発生した場合の検出の手順を示すフローチャートである。
【0051】
初めに、変電所Bssの母線3bにおいて、事故が発生したとする(S201)。故障検出部44は、変電所Bssの事故検出端末装置2bに故障の有無を検出する(S202)。故障が無い場合(S202のN)には、伝送不良検出部45は、変電所Bssの事故検出端末装置2bの伝送不良の有無を検出する(S203)。伝送不良が無い場合(S203のN)には、中央制御装置4は、変電所Bssからの母線事故情報に基づいて、母線事故の発生箇所を特定する(S204)。
【0052】
一方、変電所Bssの事故検出端末装置2bに故障があった場合(S202のY)または、変電所Bssの事故検出端末装置2bに伝送不良があった場合(S203のY)は、隣接する2つ変電所である変電所Ass,変電所Cssからの隣接変電所母線事故情報に基づいて、変電所Bssにおいて、母線事故が発生したとする(S205〜208)。
【0053】
(効果)
本実施形態の電力系統安定化システムでは、母線事故が発生した変電所に設置した事故検出端末装置2が正常に母線事故を検出し、その情報を中央制御装置4に伝送できる場合には、母線事故が発生した変電所からの母線事故情報に基づいて制御を行う。
【0054】
これにより、隣接変電所母線事故情報による不要な応動を抑えることができると共に、必要な場合には、隣接変電所母線事故情報に基づいた制御を行うことができるので、電力系統1内で発生した母線事故を正確に検出することができる。
【0055】
[第3の実施形態]
本実施形態に係る電力系統安定化システムについて、図11,12を参照しつつ、詳細に説明する。本実施形態は、第1の実施形態の事故検出端末装置2において、変電所の送電線ごとに隣接変電所母線事故検出部23(L1)(L2)を設けるものである。
【0056】
(構成)
図11は、本実施形態に係る電力系統安定化システムを示すブロック図である。各変電所の母線は、母線Xと母線Yの2つの母線からなる。たとえば、各変電所では、母線Xと送電線L1とを接続し、母線Yと送電線L2を接続した状態で運用を行なう。この送電線L1とL2は、各変電所間を接続する。変電所では、送電線L1と送電線L2のそれぞれに遮断器CB及び変流器CTを備える。また、変電所が2つの変電所と隣接する場合には、それぞれの送電線L1と送電線L2に遮断器CB及び変流器CTを備える。例えば、変電所Assと変電所Cssと隣接する変電所Bssの場合に、変電所Assと接続する送電線L1と、変電所Cssと接続する送電線L1とに遮断器CB及び変流器CTが設置され、同様に、変電所Assと接続する送電線L2と、変電所Cssと接続する送電線L2とに遮断器CB及び変流器CTが設置される。
【0057】
(事故検出端末装置2)
図12は、本実施形態の事故検出端末装置2の構成を示すブロック図である。本実施形態の事故検出端末装置2は、母線事故検出部22、事故情報送信部24に加えて、送電線L1及び送電線L2毎に、隣接変電所母線事故検出部23を備える。
【0058】
隣接変電所母線事故検出部23(L1)は、送電線L1に設置される遮断器CB及び変流器CTの情報に基づいて、送電線L1が接続する隣接変電所の母線Xの母線事故を検出する。検出結果は、送電線L1に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)として出力される。
【0059】
隣接変電所母線事故検出部23(L2)は、送電線L2に設置されて遮断器CB及び変流器CTの情報に基づいて、送電線L2が接続する隣接変電所の母線Yの母線事故を検出する。検出結果は、送電線L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L2)として出力される。
【0060】
中央制御装置4は、図13に示すように、母線事故情報及び隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)に基づいて、電力系統内で発生した母線事故の発生箇所の特定及び種別の特定を行う。その箇所及び種別に応じて制御機器端末に対して制御指令の出力を行う。母線事故の種別とは、母線3が母線X及び母線Yの2つの母線により構成させる場合に、母線X及び母線Yのいずれの母線、または、母線X及び母線Yの両方の母線で事故が起きたかを示す種別である。母線Xまたは母線Yのいずれか片方の母線で事故が発生した場合には「片母線事故」とする。母線X及び母線Yの両方の母線で事故が発生した場合には「両母線事故」とする。
【0061】
(作用)
図14は、変電所Bssの母線で母線事故が発生した際に、その母線事故の種類と、変電所Ass及び変電所Cssで検出した送電線L1,L2に設置された遮断器CBの開閉情報及び変流器CTの電流値に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)との相関関係の例を示す図である。
【0062】
ケース1は、変電所Assの送電線L1,L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)、及び、変電所Cssの送電線L1,L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)はいずれも検出されない場合で、図15に示すように、変電所Bssで母線事故の発生は検出されない。
【0063】
ケース2は、変電所Assの送電線L1に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)のみが検出される。このケースでは、変電所Cssの送電線L1に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)が検出されていない。この場合は、2つの隣接した変電所において、隣接変電所母線事故情報が検出された場合に該当しないため、変電所Bssで母線事故の発生は検出されない。
【0064】
ケース3は、変電所Assの送電線L1,L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)が検出される。このケースでは、変電所Cssの送電線L1,L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)が検出されていない。この場合は、2つの隣接した変電所において、隣接変電所母線事故情報が検出された場合に該当しないため、変電所Bssで母線事故の発生は検出されない。
【0065】
ケース4は、変電所Assの送電線L1,L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)が検出される。このケースでは、変電所Cssの送電線L1に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)が検出される。この場合は、2つの隣接した変電所において、隣接変電所母線事故情報(L1)が検出された場合に該当し、送電線L1が接続する母線事故が発生したと判定し、片母線事故として検出する。
【0066】
ケース5は、変電所Assの送電線L1,L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)が検出される。このケースでは、変電所Cssの送電線L1,L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)が検出される。この場合は、2つの隣接した変電所において、隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)が検出された場合に該当し、図16に示すように、送電線L1,送電線L2が接続する母線事故が共に発生したと判定し、両母線事故として検出する。
【0067】
ケース6は、変電所Assの送電線L1に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)が検出される。このケースでは、変電所Cssの送電線L1に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)が検出される。この場合は、2つの隣接した変電所において、隣接変電所母線事故情報(L1)が検出された場合に該当し、図17に示すように、送電線L1が接続する母線事故が発生したと判定し、片母線事故として検出する。
【0068】
ケース7は、変電所Assの送電線L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L2)が検出される。このケースでは、変電所Cssの送電線L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L2)が検出される。この場合は、2つの隣接した変電所において、隣接変電所母線事故情報(L2)が検出された場合に該当し、送電線L2が接続する母線事故が発生したと判定し、片母線事故として検出する。
【0069】
ケース8は、変電所Assの送電線L1に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)が検出される。このケースでは、変電所Cssの送電線L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L2)が検出される。この場合は、2つの隣接した変電所において、隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)が検出された場合に該当し、図18に示すように、送電線L1,L2のいずれかが接続する母線事故が発生したと判定し、片母線事故として検出する。なお,各変電所の母線と送電線の接続状態を事故検出端末装置から中央制御装置へ送信し,Bssにおいて送電線L1と送電線2Lが同じ母線に接続していることを条件に加えた上で,片母線事故として検出することも可能である。
【0070】
ケース9は、変電所Assの送電線L2に基づく隣接変電所母線事故情報(L2)が検出される。このケースでは、変電所Cssの送電線L1に基づく隣接変電所母線事故情報(L1)が検出される。この場合は、2つの隣接した変電所において、隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)が検出された場合に該当し、送電線L1,L2のいずれかが接続する母線事故が発生したと判定し、片母線事故として検出する。なお,各変電所の母線と送電線の接続状態を事故検出端末装置から中央制御装置へ送信し,Bssにおいて送電線L1と送電線2Lが同じ母線に接続していることを条件に加えた上で,片母線事故として検出することも可能である。
【0071】
(効果)
本実施形態の電力系統安定化システムでは、事故検出端末装置からの送電線L1,L2の隣接変電所母線事故情報(L1)(L2)に基づいて電力系統に発生した母線事故の検出を行うことにより、母線事故の発生箇所だけでなく、発生した母線事故の種別を特定することができる。これにより、母線事故の種別に合わせた制御が可能となるため、過剰制御を防止し、電力系統における適正な制御を実現することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態では、隣接する変電所で母線Xを送電線L1と接続させ、母線Yを送電線L2と接続させるとしたが、隣接する変電所で母線Xを送電線L2と接続させ、母線Yを送電線L1と接続させても良い。つまり、母線と接続する送電線の組み合わせは限定されない。さらに、1つの母線に対して、1つの送電線が接続する場合だけでなく、1つの母線に対して2つの送電線が接続される場合にも対応できる。例えば、隣接変電所で母線Xに対して送電線L1と送電線L2とが接続する場合に、変電所内の送電線L1と送電線L2とにそれぞれ設置された遮断器CBと変流器CTの情報に基づいて、隣接する変電所の母線Xの片母線事故を両母線事故として検出しても良い。
【0073】
[第4の実施形態]
本実施形態に係る電力系統安定化システムについて、図19を参照しつつ、詳細に説明する。本実施形態は、送電線L1,L2の端部に設けられ隣接する変電所が1つのみの変電所で発生した母線事故を、隣接する1つの変電所から出力される隣接変電所母線事故情報のみで検出を行う。例えば、図19に示すように、変電所Dssに設けられた事故検出端末装置2dからの隣接変電所母線事故情報に基づいて、変電所Essにおいて発生した母線事故の検出を行う。
【0074】
(構成)
本実施形態は、図20に示すように、第1の実施形態の中央制御装置4に、各変電所に設置された事故検出端末装置2から伝送される隣接変電所母線事故情報を使用するか、除外するかの運用設定を設定する運用設定部46を備える。運用設定部46は、各変電所に設置された事故検出端末装置2ごとに、伝送される隣接変電所母線事故情報を「使用」するか「除外」するかの運用設定を行う。
【0075】
運用設定部46において、「使用」と設定された場合には、その変電所からの隣接変電所母線事故情報に基づいて、母線事故の検出を行う。「除外」と設定した場合には、除外と設定した変電所に配置された事故検出端末装置2から、隣接変電所母線事故情報が送信されているものとする。
【0076】
中央制御装置4は、図21に示すように、母線事故情報、隣接変電所母線事故情報、及び、運用設定に基づいて、電力系統1内で発生した母線事故の発生箇所の特定を行い、その箇所に応じて制御端末装置5に対して制御指令の出力を行う。
【0077】
母線事故発生箇所特定部41は、受信した隣接変電所母線事故情報に基づいて、電力系統1内の、どの母線3で事故が発生したかを特定する。その際、ある変電所の運用が除外設定されていた場合には、その変電所から隣接変電所母線事故情報が受信されているとする。そして、運用が除外設定した変電所と、隣接変電所母線事故を検出した変電所とに隣接する変電所において母線事故が発生したと特定する。例えば、変電所Ass〜Essが設置される電力系統では、運用設定部46において、変電所Ass〜Essの運用設定を「使用」と設定する。変電所Essは、変電所Dssのみに隣接するが、変電所Essに隣接する仮想の変電所Fssが、電力系統1に設けられるとし、変電所Fssの運用設定を「除外」と設定する。母線事故発生箇所特定部41では、変電所Essにおいて、母線事故が発生した場合には、変電所Dssと変電所Fssの隣接変電所母線事故情報に基づいて、変電所Essで母線事故が発生したと特定する。
【0078】
(作用)
本実施形態の構成を有する電力系統安定化システムでは、送電線L1,L2の端部に設けられ隣接する変電所が1つのみの変電所においても、隣接する変電所からの隣接変電所母線事故情報に基づいて、母線事故を検出する。
【0079】
図22は、送電線の端部に設けられる変電所Essにおいて、母線事故が発生した場合に、変電所Dssの事故検出端末装置2dから出力される隣接変電所母線事故情報に基づいて、母線事故を検出する場合のフローチャートである。
【0080】
中央制御装置4では、どの変電所からの隣接変電所母線事故情報を使用するかの運用設定を予め行う(S401)。変電所Essが変電所Dssのみと隣接する場合、変電所Dssの隣接変電所母線事故情報を「使用」と設定する。さらに、仮想の変電所Fssの隣接変電所母線事故情報を「除外」と設定する。変電所Fssとは、実際には存在しないが、変電所Dssと共に変電所Essに隣接する変電所である。
【0081】
設定後、変電所Essの母線において、両母線事故が発生したとする(S402)。変電所Essでは、母線3の事故の発生に伴い、母線Xと接続する送電線L1,L2に設置させた遮断器CBが切状態となる。一方、変電所Dssの送電線L1,L2に設置された遮断器CBは、変電所Dssの母線では事故が発生していないので、入状態である(S403)。この時、変電所Essで遮断器CTが切状態となると、送電線L1,L2には電流が流れなくなる。そのため、変電所Dssの送電線L1,L2で検出される電流は「電流無し」となる(S404)。
【0082】
変電所Dssに設置された事故検出端末装置2dでは、変電所Dssの遮断器CBが「入」状態、且つ「電流無し」より、隣接変電所母線事故を検出し、その情報を中央制御装置4に対して出力する(S405)。
【0083】
中央制御装置4では、変電所Dssからの隣接変電所母線事故情報と、設定した運用情報に基づいて、変電所Essにおける母線事故を検出する(S406)。
【0084】
(効果)
本実施形態の電力系統安定化システムでは、末端の変電所においても隣接する変電所で検出する隣接変電所母線事故情報に基づいて、母線事故の検出を行うことが可能となる。
【0085】
本実施形態では、電力系統において隣接する変電所が1つの変電所で発生した母線事故を、その隣接する変電所に設けられた事故検出端末装置2からの隣接変電所母線事故情報に基づいて検出を行った。しかしながら、例えば、隣接する変電所が複数ある場合にでも、隣接する変電所が1つの変電所からの隣接変電所母線事故情報に基づいて検出することができる。すなわち、変電所Dssに事故検出端末装置2が設置されない場合に、運用設定部46において、変電所Dssの運用設定を「除外」と設定する。この場合において、変電所Bssからの隣接変電所母線事故情報が入力した場合には、母線事故発生箇所特定部41は、変電所Dssからも隣接変電所母線事故情報を受信したとし、変電所Cssにおいて母線事故が発生したと特定する。
【0086】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、本実施形態では、隣接変電所母線事故を検出するために、送電線に流れる電流0を条件としたが、変電所に設置された遮断器CBの開閉情報と変流器CTの電流情報を利用するならば、他の条件も利用することができる。一例としては、各変電所に設けた送電線の有効電力を計測し、その有効電力が0と遮断器CBが「入」状態の場合に、隣接変電所母線事故を検出とすることができる。有効電力は当該送電線の電流と当該送電線が接続する母線の電圧を用いて演算できる。
【0087】
また、変電所の信号出力部24と中央制御装置4及び制御端末装置5と中央制御装置4とが通信ネットワークまたは通信回線を利用して接続するとしたが、接続方法としては、特に限定しない。通信ネットワーク、通信回線は、情報のやりとりが可能な伝送路を広く含む。伝送路としては、有線若しくは無線のあらゆる伝送媒体を適用可能であり、どのようなLANやWANを経由するか若しくは経由しないかは問わない。たとえば、電力線搬送(PLC方式)なども適用可能である。通信プロトコルについても、現在又は将来において利用可能なあらゆるものを適用可能である。現在の標準的なインターネットプロトコル(IP4)でも、次世代のプロトコルIP6でも、独自のプロトコルであってもよい。
【0088】
また、本実施形態では、電力系統内に電気所として変電所同士が隣接したが、隣接する電気所の種類は、変電所同士のように同一でなくても良い。すなわち、変電所が開閉所と発電所とに隣接している場合には、変電所の母線で発生した母線事故を、変電所に隣接する開閉所、及び発電所に設けた事故検出端末装置で検出することも可能である。
【0089】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 電力系統
2,2a〜2e 事故検出端末装置
21 母線保護リレー
22 母線事故検出部
23 隣接変電所母線事故検出部
24 信号出力部
25 事故母線検出部
26 母線事故種別判定部
27 遮断器情報検出部
28 電流検出部
29 隣接変電所母線事故判定部
3 母線
4 中央制御装置
41 母線事故発生箇所特定部
42 制御対象決定部
43 制御テーブル
44 故障検出部
45 伝送不良検出部
46 運用設定部
5 制御端末装置
Ass〜Fss 変電所
CB 遮断器
CT 変流器
G 発電機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22