(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一側面の前記基端部と前記羽根の回転中心とを結ぶ線に対して、前記一側面の前記突出面よりも先端側が回転方向第2側に配置された請求項1又は請求項2に記載の遠心ポンプ用のインペラ。
前記羽根の回転中心に対して対向する一対の前記羽根が複数形成され、当該一対の前記羽根における前記一側面の先端同士を結ぶ線に対して前記一側面が回転方向第1側へ膨らんだ請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の遠心ポンプ用のインペラ。
前記アウトレットは、車両のフロントウィンドシールドガラス用のフロントノズルに接続される第1アウトレットと、車両のリヤウィンドシールドガラス用のリヤノズルに接続される第2アウトレットと、を含んで構成され、
前記インペラが回転方向第1側へ回転されることで、前記液体が前記第1アウトレット側へ吐出される請求項8に記載の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプ。
前記羽根が回転方向第1側へ回転する際の、前記羽根の前記一側面の前記基端部側における羽根回転速度ベクトルU1と、前記羽根の前記基端部における接線方向の前記液体の相対速度ベクトルX1とのなす角が鋭角である前記インペラを備えた、請求項8又は請求項9に記載の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプ。
前記第1アウトレット及び前記第2アウトレットにそれぞれ接続された第1導入口及び第2導入口から導入される液体の圧力差に基づいて第1吐出部及び第2吐出部のいずれか一方から前記液体を吐出するバルブ装置を備え、
前記ポンプ室は、前記第1アウトレット側における前記ポンプ室の内周壁と前記インペラとの間隔が、前記第2アウトレット側における前記ポンプ室の内周壁と前記インペラとの間隔よりも広く設定された渦巻室を有する請求項9又は請求項9を引用する請求項10〜請求項13の何れか1項に記載の、車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプ。
前記第1アウトレット及び前記第2アウトレットは、前記ポンプ室の径方向外側に向けて延出するように形成されていると共に、前記第1アウトレット及び前記第2アウトレットは、前記モータの軸方向から見て並列し、かつ隣り合って配置されている請求項9又は請求項9を引用する請求項10〜請求項14の何れか1項に記載の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプ。
前記ポンプ室の内周壁における前記第1アウトレットと前記第2アウトレットとの間の部位と前記インペラとの間隔が、前記第2アウトレット側における前記ポンプ室の内周壁と前記インペラとの間隔よりも狭く設定されている請求項9又は請求項9を引用する請求項10〜請求項15の何れか1項に記載の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、遠心ポンプを備えた車両用ウォッシャ装置では、使用される洗浄液がメタノールからエタノールへと変更されている。つまり、メタノールよりも高粘度のエタノールが洗浄液として使用されている。このため、例えば、低温時に洗浄液の粘度が高くなることで、遠心ポンプの羽根車(インペラ)による吐出圧が低下する可能性がある。
【0007】
また、近年、車両のフロントウィンドシールドガラスの傾斜角度が小さく設定される(すなわち、フロントウィンドシールドガラスの倒れ角度が大きく設定される)傾向にあると共に、フロントウィンドシールドガラスへ洗浄液を噴射するノズルには、所謂拡散式のノズルが用いられる傾向にある。このため、例えば低温時に車両が高速で走行した場合に、フロントウィンドシールドガラスに対するノズルから噴射される洗浄液の着水点が走行風によって下方へ下がってしまう恐れがある。
【0008】
さらに、フロントガラスに向けて噴射された洗浄液は、リヤガラスに向けて噴射された洗浄液と比べて車両の走行に伴う気流の影響を受け易い。従って、フロントガラスの所望の位置に洗浄液を着水させるためには、洗浄液を高圧で噴射させる必要がある。これに対して、リヤガラスへ洗浄液を噴射させる際の噴射圧力は、フロントガラスへ洗浄液を噴射させる際の噴射圧力のように高圧である必要がない。
【0009】
また、寒冷地等の低温環境においては、洗浄液の粘度が高粘度となることが考えられる。この場合においても、フロントガラスに付着した融雪剤等の除去を行うために、フロントガラスへの洗浄液の噴射を確保する必要がある。換言すると、高粘度の洗浄液をフロントガラスに噴射するために、ポンプ室からフロントガラス側に圧送される洗浄液の圧力をより高めておく必要がある。
【0010】
一方、洗浄液を貯留するウォッシャタンクがエンジンルーム内に配置されている(一般的には、車体の前部に配置されている)場合、このウォッシャタンクからリヤガラスまでの配管の長さが、ウォッシャタンクからフロントガラスまでの配管の長さよりも長くなる。そのため、配管の途中が折れ曲がること等により該配管内を流れる洗浄液がせき止められると、配管の内圧が高まり、ウォッシャタンクとリヤガラスとの間に設けられた配管の接続部が外れることが考えられる。換言すると、ウォッシャタンクとリヤガラスとの間の配管内の内圧は、前記接続部が外れない程度に低圧であることが好ましい。
【0011】
本発明は、上記事実を考慮し、低温時における吐出圧の低下を抑制できる遠心ポンプ用のインペラ及び車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプを提供する。
【0012】
また、本発明は、ポンプ室からフロントガラス側に圧送される液体(洗浄液)の圧力を高くすると共に、ポンプ室からリヤガラス側に圧送される液体(洗浄液)の圧力を低くすることができる車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の遠心ポンプ用のインペラは、モータの回転軸に一体回転可能に軸支されるボスと、前記ボスから前記ボスの径方向外側へ延設され、回転されることで液体を先端側へ吐出する複数の羽根と、を備え、前記羽根は、回転方向第1側の面を構成
し前記羽根の回転軸方向から見て一円弧の曲面により構成された一側面
と、前記羽根の回転方向第2側の面を構成する他側面と、を含み、前記一側面の前記ボス側の基端部と前記羽根の回転中心とを結ぶ線に対して前記基端部から回転方向第1側へ突出された突出面を含んで
おり、
互いに隣接する一方の前記羽根の前記一側面と、他方の前記羽根の前記他側面とが、前記ボスにおいて曲面により構成された接続面で接続されている。
【0014】
上記構成の遠心ポンプ用のインペラによれば、ボスと羽根とが一体に形成されており、羽根がボスからボスの径方向外側へ延設されている。そして、ボスは、モータの回転軸に一体回転可能に軸支されるようになっており、これにより、羽根が回転されることで、羽根間の液体が羽根の基端部側(入口側)から羽根の先端側(出口側)へ吐出される。
【0015】
ここで、羽根の回転方向第1側の面が一側面とされている。そして、一側面は突出面を含んで構成されており、突出面は、一側面の基端部と羽根の回転中心とを結ぶ線に対して当該基端部から回転方向第1側へ突出されている。このため、羽根が回転方向第1側へ回転する際の一側面の基端部側(入口側)における羽根回転速度(円周速度)ベクトルと、前記一側面の基端部側(入口側)における絶対速度ベクトル(羽根に対する流れ方向の相対速度ベクトルと羽根回転速度ベクトルとの合成ベクトル)と、の成す角度(流入角度)が小さくなるように設定できる。これにより、羽根の基端部側(入口側)における角運動量が大きくなる。
【0016】
そして、インペラに作用する負荷トルクは、羽根の先端側(出口側)における角運動量と、羽根の基端部側(入口側)における角運動量と、の差となるため、羽根の基端部側(入口側)における角運動量が大きくなることで、遠心ポンプ用インペラに作用する負荷トルクが小さくなる。その結果、例えば低温時に液体の粘度が高くなっても、羽根の回転数の低下が抑制される。
【0017】
そして、インペラによる吐出圧は羽根の回転数の2乗に比例する。このため、低温時における羽根の回転数の低下が抑制されることで、低温時におけるインペラによる吐出圧の低下を抑制できる。
また、上記構成の遠心ポンプ用のインペラによれば、羽根が回転方向第1側へ回転される際に、隣接する羽根の羽根間の液体を一側面に沿ってボスの径方向外側へスムースに流すことができる。すなわち、羽根が回転方向第1側へ回転する際には、羽根間における一側面側の液体が、一側面に沿ってボスの径方向外側へ流れる。また、隣接する羽根の他側面と一側面とが、即ち隣接する羽根の羽根間がボスにおいて曲面により構成された接続面によって接続されている。このため、羽根間におけるボス近傍の液体が接続面に沿って一側面の基端部側へスムースに流れて、当該液体が一側面に沿ってボスの径方向外側へスムースに流れる。これにより、羽根間の液体を一側面に沿ってボスの径方向外側へスムースに流すことができる。
【0018】
また、本発明の遠心ポンプ用のインペラは、前記羽根の回転軸方向から見て前記一側面が回転方向第1側へ凸となる曲面により構成されている。
【0019】
上記構成の遠心ポンプ用のインペラによれば、例えば低温時に液体の粘度が高くなっても、遠心ポンプ用インペラによる吐出圧の低下を一層抑制できる。
【0020】
また、本発明の遠心ポンプ用のインペラは、前記一側面の前記基端部と前記羽根の回転中心とを結ぶ線に対して、前記一側面の前記突出面よりも先端側が回転方向第2側に配置されている。
【0021】
上記構成の遠心ポンプ用のインペラによれば、一側面の基端部と羽根の回転中心とを結ぶ線に対して、一側面の突出面よりも先端側が回転方向第2側に配置されているため、羽根の先端側(出口側)における角運動量と、羽根の根元側(入口側)における角運動量と、の差が一層小さくなるように設定できる。これにより、遠心ポンプ用インペラに作用する負荷トルクをより一層小さくできる。その結果、低温時に液体の粘度が高くなっても、遠心ポンプ用インペラによる吐出圧の低下を効果的に抑制できる。
【0022】
また、本発明の遠心ポンプ用のインペラは、前記羽根の回転中心に対して対向する一対の前記羽根が複数形成され、当該一対の前記羽根における前記一側面の先端同士を結ぶ線に対して前記一側面が回転方向第1側へ膨らんでいる。
【0023】
上記構成の遠心ポンプ用のインペラによれば、羽根の回転中心に対して対向する一対の羽根が複数形成されている。そして、この一対の羽根における一側面の先端同士を結ぶ線に対して一側面が回転方向第1側へ膨らんでいる。このため、遠心ポンプ用インペラにおいて根元から回転方向第1側へ突出された突出面を含む一側面を有する羽根でありながらもバランスよく配置することができ、ひいては遠心ポンプ用インペラの回転バランスを良好にできる。
【0024】
また、本発明の遠心ポンプ用のインペラは、前記羽根の先端部における外周面の幅寸法が、前記羽根の延設方向中間部の幅寸法に比べて大きく設定されている。
【0025】
上記構成の遠心ポンプ用のインペラによれば、羽根の先端部における外周面の幅寸法が、羽根の延設方向中間部の幅寸法に比べて大きく設定されているため、羽根が回転する際の羽根の外周面外側における液体の流速を速くできる。これにより、低温時において遠心ポンプ用インペラによって吐出された液体の流速の低下を抑制して、当該液体を良好に流すことができる。
【0028】
また、本発明の遠心ポンプ用のインペラは、前記羽根の回転方向第2側の面を構成する他側面が、前記羽根の回転軸方向から見て前記一側面と同心円を成す一円弧の曲面により構成されている。
【0029】
上記構成の遠心ポンプ用のインペラによれば、羽根の回転方向第2側の面を構成する他側面が、羽根の回転軸方向から見て一側面と同心円を成す一円弧の曲面により構成されている。これにより、羽根の幅寸法を一定に保つことができる。したがって、遠心ポンプ用インペラを良好に成形できる。
【0032】
また、本発明の遠心ポンプ用のインペラは、前記羽根の回転軸方向から見た前記羽根の断面形状が一定に形成されている。
【0033】
上記構成の遠心ポンプ用のインペラによれば、羽根の回転軸方向から見た羽根の断面形状が一定に形成されているため、例えば、遠心ポンプ用インペラが適用される遠心ポンプの仕様(例えば、回転方向が逆向きである場合など)に応じて、遠心ポンプ用インペラの表面と裏面とを逆に配置して遠心ポンプ用インペラを使用できる。
【0034】
また、本発明の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプは、ポンプ本体のモータ収容部に収容されたモータと、ウォッシャタンク内と連通された前記ポンプ本体のポンプ室に収容されると共に、前記モータの前記回転軸に一体回転可能に軸支され、回転されることで前記ウォッシャタンク内の液体を前記ポンプ本体のアウトレットへ吐出する上記の遠心ポンプ用のインペラと、を備えている。
【0035】
上記構成の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプによれば、ポンプ本体のモータ収容部にモータが収容されている。また、遠心ポンプ用のインペラが、ポンプ本体のポンプ室に収容されると共に、モータの回転軸に一体回転可能に軸支されている。そして、遠心ポンプ用インペラが回転されることで、ウォッシャタンク内の液体(洗浄液)がポンプ本体のアウトレットへ吐出される。これにより、低温時にウォッシャタンク内の液体(洗浄液)の粘度が高くなっても、遠心ポンプ用インペラによる吐出圧の低下を抑制して、当該液体(洗浄液)をアウトレット側へ良好に吐出することができる。
【0036】
また、本発明の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプは、前記アウトレットは、車両のフロントウィンドシールドガラス用のフロントノズルに接続される第1アウトレットと、車両のリヤウィンドシールドガラス用のリヤノズルに接続される第2アウトレットと、を含んで構成され、前記遠心ポンプ用インペラが回転方向第1側へ回転されることで、前記液体が前記第1アウトレット側へ吐出される。
【0037】
上記構成の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプによれば、アウトレットが第1アウトレットと第2アウトレットと、を含んで構成されている。第1アウトレットは、車両のフロントウィンドシールドガラス用のフロントノズルに接続され、第2アウトレットは、車両のリヤウィンドシールドガラス用のリヤノズルに接続される。そして、遠心ポンプ用インペラが回転方向第1側へ回転されることで、ウォッシャタンク内の液体(洗浄液)が第1アウトレット側へ吐出される。これにより、例えば低温時にウォッシャタンク内の液体(洗浄液)の粘度が高くなっても、フロントウィンドシールドガラスに対するフロントノズルから噴射される液体(洗浄液)の着水点が下がることを抑制できる。特に、低温時に車両が高速で走行する場合におけるフロントノズルから噴射される液体(洗浄液)の下がりを有効に抑制できる。
【0038】
また、本発明の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプは、前記羽根が回転方向第1側へ回転する際の、前記羽根の前記一側面の前記基端部側における羽根回転速度ベクトルU1と、前記羽根の前記基端部における接線方向の前記液体の相対速度ベクトルX1とのなす角が鋭角である前記インペラを備えている。
【0039】
上記構成の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプによれば、低温時における羽根の回転数の低下が抑制されることで、低温時におけるインペラによる吐出圧の低下を抑制できる。
【0040】
また、本発明の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプは、前記液体は、前記インペラの回転中心と同心の、前記ポンプ室の中央部に形成された連通孔から流入して、前記インペラの外周部へと流れる。
【0041】
また、本発明の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプは、前記インペラの前記ボスは、外周が前記連通孔の開口径より小径である。
【0042】
また、本発明の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプは、前記羽根の前記基端部は、前記連通孔の内周側に位置する。
【0043】
上記構成の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプによれば、液体(洗浄液)をポンプ室からアウトレット側へ良好に吐出することができる。
【0044】
また、本発明の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプは、前記第1アウトレット及び前記第2アウトレットにそれぞれ接続された第1導入口及び第2導入口から導入される液体の圧力差に基づいて第1吐出部及び第2吐出部のいずれか一方から前記液体を吐出するバルブ装置を備え、前記ポンプ室は、前記第1アウトレット側における前記ポンプ室の内周壁と前記インペラとの間隔が、前記第2アウトレット側における前記ポンプ室の内周壁と前記インペラとの間隔よりも広く設定された渦巻室を有する。
【0045】
上記構成の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプによれば、モータに所定の電圧が印加されることによって上記の構成のインペラが渦巻室の渦巻方向に回転すると、液体がポンプ本体の導入口からポンプ室内に導入される。
【0046】
また、ポンプ室は、第1アウトレット側におけるポンプ室の内周壁とインペラとの間隔が、第2アウトレット側におけるポンプ室の内周壁とインペラとの間隔よりも広く設定された渦巻室を有している。そのため、インペラが渦巻室の回転方向第1側(渦巻方向)に回転すると、第1アウトレット側におけるポンプ室の内周壁とインペラとの間の液体の圧力が、第2アウトレット側におけるポンプ室の内周壁とインペラとの間の液体の圧力よりも高くなる。その結果、第1アウトレット側におけるポンプ室の内周壁とインペラとの間の液体が、第1アウトレットからバルブ装置を介して吐出される。
【0047】
また、本発明では、モータに前記所定の電圧とは極性が反対の電圧が印加されることによってインペラが渦巻室の回転方向第2側(渦巻方向と反対方向)に回転すると、第2アウトレット側におけるポンプ室の内周壁とインペラとの間の液体の圧力が、第1アウトレット側におけるポンプ室の内周壁とインペラとの間の液体の圧力よりも高くなる。その結果、第2アウトレット側におけるポンプ室の内周壁とインペラとの間の液体が、第2アウトレットからバルブ装置を介して吐出される。
【0048】
以上説明した遠心ポンプの第1吐出口を車両のフロントガラス側に設けられた噴射ノズルに通じる配管に接続すると共に、第2吐出口を車両のリヤガラス側に設けられた噴射ノズルに通じる配管に接続することによって、本発明では、ポンプ室からフロントガラス側に圧送される洗浄液の圧力を高くすると共に、ポンプ室からリヤガラス側に圧送される洗浄液の圧力を低くすることができる。
【0049】
また、本発明の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプは、前記第1アウトレット及び前記第2アウトレットは、前記ポンプ室の径方向外側に向けて延出するように形成されていると共に、前記第1アウトレット及び前記第2アウトレットは、前記モータの軸方向から見て並列し、かつ隣り合って配置されている。
【0050】
上記構成の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプによれば、上記のように第1アウトレット及び第2アウトレットが配設されている。そのため、ポンプ室内に設けられた渦巻室の周方向角度範囲を大きく設定することができる。その結果、第1吐出口から吐出される液体の圧力と第2吐出口から吐出される液体の圧力との圧力差をより一層大きくすることができる。また、本態様では、第1アウトレット及び第2アウトレットにバルブ装置を同時に接続することができる。
【0051】
また、本発明の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプは、前記ポンプ室の内周壁における前記第1アウトレットと前記第2アウトレットとの間の部位と前記インペラとの間隔が、前記第2アウトレット側における前記ポンプ室の内周壁と前記インペラとの間隔よりも狭く設定されている。
【0052】
上記構成の車両用ウォッシャ装置の遠心ポンプによれば、ポンプ室の内周壁とインペラとの間の間隔が上記のように設定されている。そのため、ポンプ室の内周壁における第1アウトレットと第2アウトレットとの間の部位とインペラとの間を通じて、液体が第1アウトレット側から第2アウトレット側へ流通することが抑制される。その結果、本発明では、第1アウトレット側の液体の圧力の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本実施の形態に係る車両用ウォッシャ装置10の遠心ポンプ(ウォッシャポンプ)12について説明して、次いで遠心ポンプ12に用いられる遠心ポンプ用インペラ(以下、インペラと称する)80について説明する。
【0056】
図2に示されるように、車両用ウォッシャ装置10は車両24に適用されている。また、車両用ウォッシャ装置10は、車両24のエンジンルームR内に配設されたウォッシャタンク14を備えており、このウォッシャタンク14に遠心ポンプ12が、上下方向を車両24の上下方向と一致させた状態で組付けられている。また、車両用ウォッシャ装置10は、車両24のフロントウィンドシールドガラス26洗浄用のフロントノズル16と、車両24のリヤウィンドシールドガラス28洗浄用のリヤノズル18と、を備えている。フロントノズル16及びリヤノズル18は、それぞれホース20,22を介して、遠心ポンプ12に接続されている。
【0057】
図3に示されるように、遠心ポンプ12は、ポンプ本体30と、バルブ装置70と、を含んで構成されている。また、ポンプ本体30は、ハウジング32と、モータ38と、インペラ80と、を含んで構成されている。
【0058】
ハウジング32は、樹脂材により構成されると共に、モータ38の回転軸40の軸方向を上下方向(
図3の矢印G及び矢印H参照)にした略円筒形状に形成されている。そして、ハウジング32は、モータ収容部34と、インレット50と、ポンプ室54と、アウトレットとしての第1アウトレット60と、アウトレットとしての第2アウトレット62(
図4参照)と、を含んで構成されている。モータ収容部34は、ハウジング32の上側部分(
図3の矢印G方向側の部分)を構成すると共に、上側へ開放された略有底円筒形状に形成されている。このモータ収容部34の底壁部分は、区画壁36とされており、後述するインレット50内とモータ収容部34内とが区画壁36によって区画されている。そして、モータ収容部34内にモータ38が収容されており、モータ38の回転軸40が、区画壁36を貫通して区画壁36から下側へ突出されている。また、モータ38の回転軸40の先端部分は、断面略D字形状に形成されている。なお、回転軸40が貫通する区画壁36の軸孔部分にはシール部材が配置されて、ポンプ室54側からモータ収容部34内への洗浄液の浸入が防止されている。
【0059】
一方、モータ収容部34の開口部には、コネクタキャップ42が固定されており、これにより、モータ収容部34の開口部が閉塞されている。このコネクタキャップ42には、コネクタ部44が一体に形成されており、このコネクタ部44に車両24側の外部コネクタ(図示省略)が接続されることにより、モータ38に電流が供給されるようになっている。
【0060】
インレット50は、モータ収容部34の下側に配置されている。このインレット50は、略円筒形状に形成されると共に、軸方向をモータ38の回転軸40と直交する方向にして配置され、ハウジング32の径方向外側へ突出されている。また、インレット50の内部空間は吸入孔52とされており、吸入孔52はモータ収容部34の下側まで延びている。そして、インレット50がウォッシャタンク14内に挿入された状態で、ハウジング32がウォッシャタンク14に組付けられている。
【0061】
ポンプ室54は、ハウジング32の下端部において、インレット50よりも下側に配置されると共に、下側へ開放されている。そして、ハウジング32の下端部の開口部には、キャップ56が固定されており、これにより、ポンプ室54がキャップ56によって塞がれている。また、ポンプ室54とインレット50の吸入孔52との間には、連通孔58が形成されており、連通孔58は、モータ38の回転軸40と同軸上に、円形を成して配置されると共に、ポンプ室54内とインレット50内(吸入孔52)とをポンプ室54の中心部において連通している。そして、前述したモータ38の回転軸40がインレット50内及び連通孔58を介してポンプ室54まで延びており、回転軸40の先端部がポンプ室54内に配置されている。さらに、ポンプ室54内には、後述するインペラ80が収容されており、インペラ80は回転軸40の先端部に一体回転可能に組付けられている。
【0062】
図4に示されるように、第1アウトレット60及び第2アウトレット62は、ハウジング32の下端部に配置されている。この第1アウトレット60及び第2アウトレット62は、それぞれ略円筒形状に形成されると共に、互いに平行に配置されて、ハウジング32の下端部からインレット50とは反対側の径方向外側へ突出されている。そして、第1アウトレット60及び第2アウトレット62の内部は、それぞれ第1吐出通路60A及び第2吐出通路62Aとされており、第1吐出通路60A及び第2吐出通路62Aはポンプ室54内と連通されている。
【0063】
さらに、ポンプ室54は、第1アウトレット60側におけるポンプ室54の内周壁44Aとインペラ80との間隔D1が、第2アウトレット62側におけるポンプ室54の内周壁44Bとインペラ80との間隔D2よりも広く設定された渦巻室46を有している。この渦巻室46は、該渦巻室46の渦巻方向(矢印A方向)に沿って、ポンプ室54の内周壁44A,44Bとインペラ80との間隔が次第に広くなるように形成されている。さらに、ポンプ室54の内周壁における第1アウトレット60と第2アウトレット62との間の部位44Cとインペラ80との間隔D3が、第2アウトレット62側におけるポンプ室54の内周壁44Bとインペラ80との間隔D2よりも狭く設定されている。
【0065】
バルブ装置70は、
図4に示されるように、第1アウトレット60及び第2アウトレット62に嵌着されたバルブハウジング71を備えており、このバルブハウジング71は、第1分割ハウジング72と第2分割ハウジング74とを含んで構成されている。また、第1分割ハウジング72と第2分割ハウジング74との間には、ゴム材等の弾性部材により構成された弁体76が組付けられている。そして、第1分割ハウジング72及び第2分割ハウジング74の内部がそれぞれ第1バルブ室72A及び第2バルブ室74Aとされており、第1バルブ室72A及び第2バルブ室74Aが弁体76により区画されている。また、第1バルブ室72A及び第2バルブ室74Aは、それぞれ第1吐出通路60A及び第2吐出通路62Aに連通されている。
【0066】
また、第1分割ハウジング72及び第2分割ハウジング74の側壁には、それぞれ略円筒形状の第1吐出部72B及び第2吐出部74Bが一体に形成されている。この第1吐出部72B及び第2吐出部74Bは、第1分割ハウジング72及び第2分割ハウジング74の側壁から互いに同一軸上で離間する方向へそれぞれ突出されると共に、該側壁から第1バルブ室72A内及び第2バルブ室74A内へそれぞれ侵入して弁体76の手前まで延びて弁体76と対向している。さらに、図示は省略するが、前述したフロントノズル16が第1吐出部72Bにホース20を介して接続されており、前述したリヤノズル18が第2吐出部74Bにホース22を介して接続されている。
【0067】
以下、バルブ装置70について詳細に説明する。第1及び第2分割ハウジング72,74は、本体部162A,162Bと、外延部164A,164Bと、第1及び第2導入口としての第1及び第2流入筒部166A,166Bと、第1及び第2内延筒部168A,168Bと、第1及び第2吐出部72B,74Bとを備えている。
【0068】
本体部162A,162Bは、略有底筒形状に形成されており、その内部は、それぞれ第1及び第2バルブ室72A,74Aとして形成されている。外延部164A,164Bは、本体部162A,162Bの開口側の周縁部から径方向外側に延設されており、この外延部164A,164Bの図示しない嵌合部が嵌合固定されることにより、第1及び第2分割ハウジング72,74は、互いに組み付けられている。
【0069】
第1及び第2流入筒部166A,166Bは、本体部162A,162Bにおける外延部164A,164Bよりも底部側から径方向外側に突出して形成されている。そして、この第1及び第2流入筒部166A,166Bが第1及び第2アウトレット60,62に嵌着されることで、バルブ装置70は、ポンプ本体30に固定されている。また、本体部162A,162Bの外周部には、第1及び第2アウトレット60,62の各出口にそれぞれ接続された第1及び第2流入口174A,174Bが開口されている。
【0070】
第1及び第2内延筒部168A,168Bは、本体部162A,162Bの底部中央から本体部162A,162Bの内側に突出して形成されており、第1及び第2吐出部72B,74Bは、本体部162A,162Bの底部中央から本体部162A,162Bの外側に突出して形成されている。第1内延筒部168Aと第1吐出部72B、第2内延筒部168Bと第2吐出部74Bはそれぞれ同軸上に形成され、さらに、第1内延筒部168Aと第2内延筒部168Bも同軸上に形成され先端部が互いに離間して対向している。また、第1及び第2吐出部72B,74Bの先端側の開口は、第1及び第2吐出口176A,176Bとして形成されている。
【0071】
弁体76は、例えば、ゴム材などの弾性材料により形成されており、略円盤形状に形成されている。弁体76は、環状の外周縁部178と、外周縁部178の内側に形成された環状で外周縁部178よりも薄肉の薄肉部180と、薄肉部180の内側に形成された円盤状で薄肉部180よりも厚肉の弁本体部182とを一体に有している。
【0072】
そして、この弁体76は、外周縁部178が外延部164A,164Bにて狭持されることで第1及び第2分割ハウジング72、74に組み付けられている。また、第1及び第2分割ハウジング72、74に弁体76が組み付けられた状態では、この弁体76によって第1バルブ室72Aと第2バルブ室74Aとが区画されている。また、弁本体部182は、第1内延筒部168Aの先端部と第2内延筒部168Bの先端部との間に位置されており、薄肉部180によって第1内延筒部168Aの先端部と第2内延筒部168Bの先端部とに接触可能に弾性支持されている。
【0073】
そして、インペラ80が回転方向第1側(渦巻方向、
図4等に示す矢印A方向側)へ回転されると、第1バルブ室72A内及と第2バルブ室74A内との圧力差により弁体76が第2吐出部74B側に押し付けられて第2吐出部74Bを閉鎖して、ウォッシャタンク14内の洗浄液が第1吐出部72Bを介してフロントノズル16へ圧送されるようになっている。一方、インペラ80が回転方向第2側(渦巻方向と反対方向、
図4等に示す矢印B方向側)へ回転されると、第1バルブ室72A内及と第2バルブ室74A内との圧力差により弁体76が第1吐出部72B側に押し付けられて第1吐出部72Bを閉鎖して、ウォッシャタンク14内の洗浄液が第2吐出部74Bを介してリヤノズル18へ圧送されるようになっている。なお、
図4では、インペラ80のハッチングは省略されている。
【0075】
インペラ80は、樹脂材により構成されると共に、ハウジング32のポンプ室54内に配置されている。そして、
図1及び
図5に示されるように、インペラ80は、モータ38の回転軸40に組付けられるボス82(架空円C1の内側部分)と、ポンプ室54内の洗浄液を第1アウトレット60側又は第2アウトレット62側へ吐出すための複数(本実施の形態では6枚)の羽根86と、を含んで構成されている。
【0076】
ボス82は、インペラ80の中央部に位置して、略円筒状に形成されている(
図1の2点鎖線を参照)。ボス82は架空円C1であらわされる外周部分の直径が、連通孔58の開口径よりも小径である。このボス82の中央部には、モータ38の回転軸40に対応した略D字形状の組付孔84が貫通形成されており、組付孔84内に回転軸40が挿入されている。これにより、ボス82が連通孔58の略真下に配置されると共に、インペラ80が回転軸40と一体に回転されるようになっている。なお、インペラ80は回転軸40と一体回転するが、軸方向には移動可能となっている。
【0077】
羽根86は、ボス82の外周面に一体に形成されると共に、ボス82から径方向外側へ延設されている。これにより、インペラ80が回転されることで、ウォッシャタンク14の洗浄液が、連通孔58を介して羽根86の根元側(入口側)に流入されて、羽根86の先端側(出口側)へ吐出されるようになっている。
【0078】
また、羽根86は、羽根86の回転方向第1側の面を構成する一側面88と、羽根86の回転方向第2側の面を構成する他側面90とを含んで構成されている。
図1に示されるように、一側面88は、インペラ80の回転軸(回転軸40)の軸方向から見て回転方向第1側へ凸となる一円弧の曲面で構成されており、一側面88のボス側の基端部である、根元88Aとボス82とが、回転軸40の軸方向から見て一側面88とは互いに反対方向の弧をなす円弧状の接続面92によって接続されている。具体的には、
図1において2点鎖線で示される架空円C1がボス82の外形とされており、この架空円C1に接続面92の一端が外接すると共に、接続面92の他端が一側面88の根元88Aと接している。これにより、一側面88の根元88Aは、一側面88と接続面92との交点とされている。そして、一側面88は、インペラ80の回転中心Cと一側面88の根元88Aとを結ぶ基準線L1に対して、根元88Aから回転方向第1側へ一旦膨らむように延びると共に、基準線L1と交差して、一側面88の先端88Bが、基準線L1に対して回転方向第2側に配置されている。これにより、一側面88における基準線L1に対して根元88Aから回転方向第1側へ膨らむように突出された部分が、突出面89とされている。なお、接続面92の円弧の半径は一側面88の円弧の半径よりも小さく設定(本実施の形態では約1/5に設定)されている。
【0079】
他側面90は、回転軸40の軸方向から見て回転方向第2側へ開放された一円弧の曲面で構成されている。そして、他側面90と一致する架空円C3は、一側面88と一致する架空円C2と同心円を成している。これにより、羽根86の延設方向中間部(羽根86の根元部分及び先端部分を除く部分)の幅寸法W1が、羽根86の延設方向に沿って一定に設定されている。
【0080】
また、回転軸40の軸方向から見て、他側面90と一致する架空円C3は、ボス82の外形とされた架空円C1と外接している。さらに、他側面90の回転方向第2側に配置された接続面92が、架空円C3と架空円C1との接点において、架空円C3に接している。すなわち、隣接する各羽根86の他側面90と一側面88とがボス82において接続面92によって滑らかに接続されている。より詳しくは、互いに隣接する一方の羽根86の他側面90と他方の羽根86の一側面88とが、ボス82の外周部において両羽根86間で接続面92によって滑らかに接続されている。
【0081】
さらに、羽根86の先端部における外周面94は、インペラ80の回転中心Cを中心点とした架空円C4の一部と一致されており、これにより、羽根86の外周面94における幅寸法W2が、羽根86の延設方向中間部における幅寸法W1よりも大きく設定されている。
【0082】
また、羽根86は、インペラ80の回転方向において所定間隔毎(本実施の形態では60°毎)に配置されており、インペラ80の回転中心Cに対して対向する一対の羽根86を1組として3組で形成されている。そして、対向する一対の羽根86における一側面88の先端88B同士を結ぶ線L2に対して、一側面88全体が回転方向第1側へ膨らむ(突出される)ように配置されている。さらに、インペラ80は、インペラ80の厚み方向(回転軸40の軸方向)において、同一断面形状になるように形成されている(
図5参照)。
【0083】
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0084】
上記のように構成された車両用ウォッシャ装置10の遠心ポンプ12では、インペラ80が回転方向第1側(A方向)へ回転されると、インレット50から連通孔58を介して洗浄液がポンプ室54の中央部に吸入され、ポンプ室54内の洗浄液がインペラ80の羽根86の根元側(入口側)から羽根86の先端側(出口側)へ吐出されて、第1アウトレット60の第1吐出通路60Aからバルブ装置70へと流出される。そして、当該洗浄液は、バルブ装置70の第1吐出部72B及びホース20を介してフロントノズル16へ圧送されて、フロントノズル16からフロントウィンドシールドガラス26へ向けて噴射される。
【0085】
一方、インペラ80が回転方向第2側(B方向)へ回転されると、インレット50から連通孔58を介して洗浄液がポンプ室54の中央部に吸入され、ポンプ室54内の洗浄液がインペラ80の羽根86の根元側(入口側)から羽根86の先端側(出口側)へ吐出されて、第2アウトレット62の第2吐出通路62Aからバルブ装置70へと流出される。そして、当該洗浄液は、バルブ装置70の第2吐出部74B及びホース22を介してリヤノズル18へ圧送されて、リヤノズル18からリヤウィンドシールドガラス28へ向けて噴射される。
【0086】
ここで、インペラ80における羽根86の回転方向第1側の面が一側面88とされている。そして、一側面88は突出面89を含んで構成されており、突出面89は、一側面88のボス側の基端部である、根元88Aと羽根86の回転中心Cとを結ぶ基準線L1に対して根元88Aから回転方向第1側へ膨らむように突出されている。このため、
図6に示されるように、羽根86が回転方向第1側(A方向)へ回転する際の一側面88の根元88A側(入口側)における羽根回転速度ベクトルU1(羽根86の根元88Aにおける円周方向の速度ベクトル)と、洗浄液の絶対速度ベクトルV1(羽根回転速度ベクトルU1と、洗浄液の羽根86に対する流れ方向(一側面88の根元88Aにおける接線方向)の相対速度ベクトルX1と、の合成ベクトル)と、の成す角度(流入角度)α1が小さくなるように設定できる。これにより、羽根86の根元側(入口側)における角運動量が大きくなる。
【0087】
そして、インペラ80に作用する負荷トルクは、羽根86の先端側(出口側)における角運動量と、羽根86の根元88A側(入口側)における角運動量と、の差となる。このため、羽根86の根元88A側(入口側)における角運動量が大きくなることで、インペラ80に作用する負荷トルクが小さくなる。その結果、例えば低温時に洗浄液の粘度が高くなっても、羽根86の回転数の低下が抑制される。
【0088】
そして、インペラ80による吐出圧は羽根86の回転数の2乗に比例する。このため、低温時における羽根86の回転数の低下が抑制されることで、低温時におけるインペラ80による吐出圧の低下を抑制できる。以上により、低温時に洗浄液の粘度が高くなっても、フロントウィンドシールドガラス26に対するフロントノズル16から噴射される洗浄液の着水点が下がることを抑制できる。特に、低温時に車両24が高速で走行する場合における洗浄液の着水点の下がりを有効に抑制できる。
【0089】
また、回転軸40の軸方向から見て一側面88が回転方向第1側(A方向)へ凸となる一円弧の曲面で構成されている。すなわち、羽根86の先端部分における一側面88が、ボス82の径方向外側へ向かうに従い回転方向第2側へ向かうように滑らかに湾曲されている。このため、羽根86が回転方向第1側(A方向)へ回転する際の一側面88の先端88B側(出口側)における羽根回転速度ベクトルU2(羽根86の先端88Bにおける円周方向の速度ベクトル)と、洗浄液の絶対速度ベクトルV2(羽根回転速度ベクトルU2と、洗浄液の羽根86に対する流れ方向(一側面88の先端88Bにおける接線方向)の相対速度ベクトルX2と、の合成ベクトル)と、の成す角度(流出角度)α2(
図6参照)が大きくなるように設定できる。これにより、羽根86の先端側(出口側)における角運動量が小さくなる。そして、上述したように、インペラ80に作用する負荷トルクは、羽根86の先端側(出口側)における角運動量と、羽根86の根元側(入口側)における角運動量と、の差となる。これにより、インペラ80に作用する負荷トルクが一層小さくなる。したがって、低温時に洗浄液の粘度が高くなっても、羽根86の回転数の低下が一層抑制されるため、インペラ80による吐出圧の低下を一層抑制できる。
【0090】
以上説明したインペラ80による吐出圧の低下の抑制を示すデータを、比較例のインペラと比較して
図7A、7Bにおいて示す。なお、比較例のインペラにおける羽根は、ボスの径方向外側へ放射線状かつ直線状に延びている。
【0091】
そして、
図7Aに示されるグラフでは、横軸が温度(℃)(雰囲気温度)とされており、縦軸がインペラに作用する負荷トルク(mN・m)とされている。また、比較例のインペラに作用する負荷トルクが三角印で示されており、本実施の形態のインペラ80に作用する負荷トルクが丸印で示されている。この図に示されるように、各温度において、本実施の形態のインペラ80に作用する負荷トルクが、比較例のインペラ80に作用する負荷トルクに対して低くなっていることが解る。これにより、低温時に洗浄液の粘度が高くなっても、インペラ80における羽根86の回転数の低下が、比較例のインペラと比べて抑制される。さらに、実施の形態のインペラ80は、低温時における温度変化に対する負荷トルクの変化量も比較例に対して小さくなっている。
【0092】
その結果、
図7Bに示されるように、低温時に洗浄液の粘度が高くなっても、インペラ80による吐出圧が、比較例のインペラによる吐出圧に比べて高くなる。なお、
図7Bに示されるグラフでは、横軸が温度(℃)(雰囲気温度)とされており、縦軸がインペラによる吐出圧(kPa)とされている。また、比較例のインペラの吐出圧が三角印で示されており、本実施の形態のインペラ80の吐出圧が丸印で示されている。以上により、低温時に洗浄液の粘度が高くなっても、インペラ80による吐出圧の低下を抑制できる。さらに、実施の形態のインペラ80は、低温時における温度変化に対する吐出圧の変化量も比較例に対して小さくなっている。
【0093】
さらに、本実施の形態のインペラ80では、基準線L1に対して、一側面88の突出面89よりも先端88B側が回転方向第2側(B方向)に配置されている。このため、羽根86の先端88B側(出口側)における角運動量と、羽根86の根元88A側(入口側)における角運動量と、の差を一層小さく設定でき、ひいてはインペラ80に作用する負荷トルクをより一層小さくできる。その結果、低温時に洗浄液の粘度が高くなっても、インペラ80による吐出圧の低下を効果的に抑制できる。
【0094】
また、羽根86の回転中心Cに対して対向して配置される一対の羽根86(これを1組とする)が複数(本実施の形態では等角度間隔で3組)形成されており、この一対の羽根86における一側面88の先端88B同士を結ぶ線L2に対して一側面88全体が回転方向第1側(A方向)へ膨らんでいる。このため、インペラ80において根元88Aから回転方向第1側(A方向)へ突出された突出面89を含む一側面88を有する羽根でありながらもバランスよく配置することができ、ひいてはインペラ80の回転バランスを良好にできる。
【0095】
さらに、羽根86の先端部における外周面94の幅寸法W2が、羽根の延設方向中間部の幅寸法W1に比べて大きく設定されている。そして、羽根86が回転方向第1側(A方向)へ回転される際に羽根86の外周面94の外側における洗浄液(
図4において2点鎖線で示される領域D参照)には、洗浄液の粘性によって外周面94から回転方向第1側へ向かう方向の力が作用する。これにより、例えば羽根86の外周面94における幅寸法W2が、羽根の延設方向中間部における幅寸法W1と同じに設定される場合と比較して、羽根86の外周面94の外側における洗浄液の流速を速くできる。その結果、低温時においてインペラ80によって吐出された洗浄液の流速の低下を抑制して、当該洗浄液を良好に第1アウトレット60側へ流すことができる。
【0096】
また、上述したように、回転軸40の軸方向から見て、一側面88が一円弧の曲面で構成されている。このため、一側面88が根元88Aから先端88Bに亘って同じ曲率で延びている。これにより、インペラ80が回転方向第1側(A方向)へ回転されて洗浄液が一側面88に沿ってボス82の径方向外側へ流れる際に、洗浄液に対する一側面88の急激な変化が抑制されているので、洗浄液を一側面88に沿って滑らかに流すことができる。
【0097】
さらに、羽根86の回転方向第2側の面を構成する他側面90が、回転軸40の軸方向から見て一側面88と同心円を成す一円弧の曲面により構成されている。これにより、羽根86の延設方向中間部における幅寸法W1を一定に保つことができる。したがって、インペラ80を樹脂成形などで形成する場合、肉厚が一定であるため硬化時のヒケなどによる変形を防止して精度よく良好に成形できる。
【0098】
また、隣接する羽根86の他側面90と一側面88とが、ボス82において曲面により構成された接続面92で接続されている。これにより、インペラ80が回転方向第1側(A方向)へ回転される際に隣接する羽根86の羽根間の洗浄液を一側面88に沿ってボス82の径方向外側へスムースに流すことができる。すなわち、羽根86が回転方向第1側(A方向)へ回転する際には、羽根86間における一側面88側の洗浄液は、一側面88に沿ってボスの径方向外側へ流れる(
図6の矢印E参照)。また、隣接する羽根86の他側面90と一側面88とが、接続面92によって接続されているため、羽根86間におけるボス82近傍の洗浄液が接続面92に沿って一側面88の根元88A側へスムースに流れて、洗浄液が一側面88に沿ってボス82の径方向外側へスムースに流れる。これにより、羽根86間の洗浄液を一側面88に沿ってボス82の径方向外側へスムースに流すことができる。
【0099】
さらに、回転軸40の軸方向から見た羽根86の断面形状が一定に形成されている。このため、例えば、インペラ80が適用される遠心ポンプ(ウォッシャポンプ)12の仕様に応じて、インペラ80の表面と裏面とを逆にしてインペラ80を使用できる。
【0100】
ここで、本実施形態では、ポンプ室54の外周部に第1アウトレット60及び第2アウトレット62が設けられていると共に、第1アウトレット60側におけるポンプ室54の内周壁44Aとインペラ80との間隔D1が、第2アウトレット62側におけるポンプ室54の内周壁44Bとインペラ80との間隔D2よりも広く設定されている。そのため、インペラ80が渦巻室46の回転方向第1側(渦巻方向、矢印A方向)に回転すると、第1アウトレット60側におけるポンプ室54の内周壁44Aとインペラ80との間の洗浄液の圧力が、第2アウトレット62側におけるポンプ室54の内周壁44Bとインペラ80との間の洗浄液の圧力よりも高くなる。すると、バルブ装置70の弁本体部182は、第2内延筒部168Bの先端部に接触する(弁本体部182によって第2内延筒部168Bの先端部が閉止される)。その結果、第1アウトレット60側におけるポンプ室54の内周壁44Aとインペラ80との間の洗浄液が、バルブ装置70の第1流入筒部166A、第1内延筒部168A及び第1吐出部72Bを介して第1吐出口176Aから吐出される。
【0101】
また、本実施形態では、インペラ80が渦巻室46の回転方向第2側((矢印B方向)に回転すると、第2アウトレット62側におけるポンプ室54の内周壁44Bとインペラ80との間の洗浄液の圧力が、第1アウトレット60側におけるポンプ室54の内周壁44Aとインペラ80との間の洗浄液の圧力よりも高くなる。すると、バルブ装置70の弁本体部182は、第1内延筒部168Aの先端部に接触する(弁本体部182によって第1内延筒部168Aの先端部が閉止される)。その結果、第2アウトレット62側におけるポンプ室54の内周壁44Bとインペラ80との間の洗浄液が、バルブ装置70の第2流入筒部166B、第2内延筒部168B及び第2吐出部74Bを介して第2吐出口176Bから吐出される。
【0102】
ここで、本実施形態では、インペラ80は、先端88Bが根元88Aよりも渦巻室46の回転方向第2側(矢印B方向)に配置された羽根86を有している。そのため、
図8Aに示されるように、インペラ80を渦巻室46の回転方向第2側(矢印B方向)に回転させた場合の回転負荷(符号F2で示されている)は、インペラ80を渦巻室46の回転方向第1側(渦巻方向、矢印A方向)に回転させた場合の回転負荷(符号F1で示されている)よりも大きくなる。換言すると、インペラ80を渦巻室46の回転方向第2側(矢印B方向)に回転させた際の回転数が、インペラ80を渦巻室46の回転方向第1側(渦巻方向、矢印A方向)に回転させた際の回転数よりも減少する。その結果、
図8Bに示されるように、同一のモータ38及びインペラ80を用いているにもかかわらず、回転方向を切り替えただけで第2アウトレット62から吐出される洗浄液の吐出圧力(符号P2で示されている)が第1アウトレット60から吐出される洗浄液の吐出圧力(符号P1で示されている)よりも低くなる。
【0103】
以上説明した遠心ポンプ12の第1吐出部72Bを車両のフロントガラス側に設けられたフロントノズル16に通じる配管に接続すると共に、第2吐出部74Bを車両のリヤガラス側に設けられたリヤノズル18に通じる配管に接続することによって、本実施形態では、同一のモータ38及びインペラ80を用いてポンプ室54からフロントガラス側に圧送される洗浄液の圧力を高くすると共に、ポンプ室54からリヤガラス側に圧送される洗浄液の圧力を低くすることができる。その結果、車両の走行に伴う気流の影響を受け易いフロントガラスには、洗浄液を高圧で噴射することができると共に、気流の影響を受け難いリヤガラスには、洗浄液を低圧で噴射することができる。また、リヤガラス側に圧送される洗浄液の圧力を低くすることによって、遠心ポンプ12とリヤガラス側に設けられた噴射ノズルとの間に設けられた配管の接続が外れることを防止できる
【0104】
また、
図4に示されるように、本実施形態では、第1アウトレット60及び第2アウトレット62が、インペラ80の径方向外側かつポンプ室54の径方向外側に向けて延出するように形成されていると共に、第1アウトレット60及び第2アウトレット62が、モータ38の回転軸40の軸方向から見て並列し、かつ隣り合って配置されている。そのため、ポンプ室54内に設けられた渦巻室46の周方向角度範囲を大きく設定することができる。その結果、第1吐出部72Bから吐出される液体の圧力と第2吐出部74Bから吐出される液体の圧力との圧力差をより一層大きくすることができる。また、本実施形態では、第1アウトレット60及び第2アウトレット62にバルブ装置70の第1流入筒部166A及び第2流入筒部166Bを同時に接続することができる。
【0105】
さらに、本実施形態では、ポンプ室54の内周壁における第1アウトレット60と第2アウトレット62との間の部位44Cとインペラ80との間隔D3が、第2アウトレット62側におけるポンプ室54の内周壁44Bとインペラ80との間隔D2よりも狭く設定されている。そのため、ポンプ室54の内周壁における部位44Cとインペラ80との間を通じて、洗浄液が第1アウトレット60側から第2アウトレット62側へ流通することが抑制される。その結果、本実施形態では、第1アウトレット60側の洗浄液の圧力の低下を抑制することができる。また、インペラ80が回転方向第1側(渦巻方向、矢印A方向)及び回転方向第2側(渦巻方向と反対方向、矢印B方向)の何れに回転する場合も第1アウトレット60側と第2アウトレット60側の洗浄液の圧力は正の圧力となる。しかし、上述のように洗浄液が第1アウトレット60側から第2アウトレット62側へ流通すること、及び洗浄液が第2アウトレット62側から第1アウトレット60側へ流通することを抑制することによって、第1アウトレット60側と第2アウトレット62側の洗浄液の圧力差を大きくできるので、バルブ装置70の迅速な切替え応答性を得ることができる。
【0106】
なお、本実施形態では、ポンプ室54の内周壁における部位44Cとインペラ80との間隔D3が、第2アウトレット62側におけるポンプ室54の内周壁44Bとインペラ80との間隔D2よりも狭く設定されている好ましい例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの間隔は第1アウトレット60側の洗浄液の圧力及び第2アウトレット62側の洗浄液の圧力のバランス等を考慮して適宜設定すればよい。
【0107】
また、本実施形態では、第1アウトレット60及び第2アウトレット62が、インペラ80の径方向外側かつポンプ室54の径方向外側に向けて延出するように形成されていると共に、第1アウトレット60及び第2アウトレット62が、モータ38の回転軸40の軸方向から見て並列し、かつ隣り合って配置されている好ましい例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。この第1アウトレット60及び第2アウトレット62をポンプ本体30のどの部位に設けるかについては、使用するバルブ装置に応じて適宜設定すればよい。
【0108】
さらに、本実施形態では、遠心ポンプ12のインレット50を貯留タンクに形成された開口にグロメット等を介して挿入接続した例について説明したが、本発明はこれに限定されず、ポンプ本体の大部分を貯留タンク内に挿入してポンプ室を貯留タンク内に配置した、所謂インタンク式のウォッシャポンプに本発明を適用することもできる。
【0109】
また、本実施の形態では、回転軸40の軸方向から見て一側面88が一円弧に形成されているが、一側面88の形状はこれに限らない。例えば、回転軸40の軸方向から見て、一側面88を2円弧以上の多円弧により構成された曲面としてもよい。すなわち、回転軸40の軸方向から見て、羽根86の回転方向第1側(A方向)へ凸となる曲面によって一側面88を構成してもよい。例えば、根元88A側(入口側)の流入角度α1を小さくすべく半径の小さな円弧として突出面89を形成し、羽根86の先端88B側(出口側)に行くに従い半径の大きな円弧として流出角度α2を大きくなるようにして、多円弧がそれぞれ羽根86の回転方向第1側へ凸となる3つの曲面によって一側面88を構成するように構成しても良い。
【0110】
また、本実施の形態では、回転軸40の軸方向から見て、他側面90が一円弧の凹状の曲面に形成されているが、他側面90の形状はこれに限らない。例えば、回転軸40の軸方向から見て、他側面90を2円弧又はそれより多い多円弧により構成された凹状の曲面としてもよい。
【0111】
さらに、一側面88の根元88Aと羽根86の回転中心Cとを結ぶ基準線L1に対して、一側面88の先端88Bが回転方向第2側に配置されている。これに替えて、基準線L1に対して、一側面88の先端88Bを回転方向第1側に配置してもよい。この場合には、一側面88の全体が突出面89とされる。
【0112】
また、羽根86の外周面94における幅寸法W2が、羽根の延設方向中間部における幅寸法W1に比べて大きく設定されている。これに替えて、羽根86の外周面94における幅寸法W2を、羽根の延設方向中間部における幅寸法W1と同じになるように構成してもよい。
【0113】
さらに、本実施の形態では、インペラ80が6枚の羽根86によって構成されているが、インペラ80における羽根86の枚数はこれに限らない。例えば、インペラ80における羽根86を3枚で構成して、当該羽根86がインペラ80の回転方向において等間隔に配置されるように構成してもよい。
【0114】
また、本実施の形態では、遠心ポンプ12は、第1アウトレット60及び第2アウトレット62を含んで構成されている。すなわち、遠心ポンプ12は、モータ38の回転方向を切替えることによりインペラの80の回転方向を切替えて洗浄液を第1アウトレット60または第2アウトレット62から択一的に吐出させる、所謂ダブルアウトレットポンプとして構成されている。これに替えて、遠心ポンプ12における第2アウトレット62を省略し、インペラ80を回転方向第1側(A方向)にのみに回転させるようにして、遠心ポンプ12を所謂シングルアウトレットポンプとして構成してもよい。この場合には、バルブ装置70を省略して、ホース20を第1アウトレット60に直接接続するように構成してもよい。
【0115】
さらに、本実施の形態では、インペラ80が車両用ウォッシャ装置10の遠心ポンプ12に適用されているが、インペラ80を車両24のヘッドランプクリーナ装置の遠心ポンプに適用してもよい。