(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直線状に延在するフレームに複数の電機子コイルを備える固定子及びレールを固定してなる固定側モジュールと、複数の磁極を有する可動子及び前記レールに嵌合するレールガイドを備えてリニアモータ駆動によって前記レールに沿って移動可能に配されるスライダとを備え、前記スライダの位置がそのスライダに設けられた磁気スケールと、前記固定側モジュールに設けられた磁気センサとによって検出されるリニアコンベアであって、
前記磁気スケールは、前記レールの延在方向に沿って延びて多数の磁極を有するプラスチック磁石と、該プラスチック磁石に宛がわれたバックヨークとを備えるとともに、前記プラスチック磁石は前記バックヨークに対して一部が固定され、その固定部以外は前記バックヨークに対して前記磁気スケールの延在方向に沿って相対変位可能とされている、リニアコンベア。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上記磁気式のリニアスケールを備えるリニアコンベアにおいて、スライダのメンテナンスや保管等のため、スライダがモジュールから取り外され、リニアコンベアの稼働場所とは環境温度が異なる倉庫等に別途移されることがある。倉庫等に移されたスライダでは、環境温度の変化によって磁気スケールが熱膨張によって伸長することがある。この場合、仮に磁気スケールに用いられた磁石がプラスチック磁石であると、当該プラスチック磁石とバックヨークとの間の線膨張係数の差が大きいことによって、磁気スケールに反りが生じたり、バックヨークに対するプラスチック磁石の位置ずれが生じたりすることがある。このようなプラスチック磁石の反りや位置ずれが生じると、各スライダにおいて検出位置にずれが生じ、スライダ間の位置検出誤差が拡大する。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みて創作されたものであって、スライダの軽量化を図りながらスライダ間の位置検出誤差が低減されたリニアコンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、直線状に延在するフレームに複数の電機子コイルを備える固定子及びレールを固定してなる固定側モジュールと、複数の磁極を有する可動子及び前記レールに嵌合するレールガイドを備えてリニアモータ駆動によって前記レールに沿って移動可能に配されるスライダとを備え、前記スライダの位置がそのスライダに設けられた磁気スケールと、前記固定側モジュールに設けられた磁気センサとによって検出されるリニアコンベアであって、前記磁気スケールは、前記レールの延在方向に沿って延びて多数の磁極を有するプラスチック磁石と、該プラスチック磁石に宛がわれたバックヨークとを備えるとともに、前記プラスチック磁石は前記バックヨークに対して一部が固定され、その固定部以外は前記バックヨークに対して前記磁気スケールの延在方向に沿って相対変位可能とされているところに特徴を有する。
【0009】
上記のリニアコンベアでは、磁気スケールから生じる磁束を磁気センサが検出することによって、レールに沿って配されたスライダの位置が検出される。そして、磁気スケールにおいて磁石としてプラスチック磁石が用いられた構成とされている。このため、ネオジム磁石等の合金系磁石を用いる場合と比べて磁気スケール及びその磁気スケールが設けられたスライダの軽量化を図ることができる。
【0010】
そして、環境温度等の変化によってスライダの磁気スケールが熱膨張すると、磁気スケールのプラスチック磁石における固定部以外の部位がバックヨークに対して磁気スケールの延在方向に沿って相対変位しながら伸長する。一方、環境温度等の変化によって磁気スケールが収縮すると、磁気スケールのプラスチック磁石における固定部以外の部位がバックヨークに対して磁気スケールの延在方向に沿って相対変位しながら収縮する。このとき膨張時と収縮時の環境温度の変化量が略等しければ(スライダが常温環境下から高温環境下に移され、その後に常温環境下に戻された場合等)、膨張時と収縮時の各々においてプラスチック磁石が固定部を基準として略等しい変形量で変形する。その結果、プラスチック磁石が固定部を基準としてバックヨークに対して膨張前の相対位置まで戻ることとなる。このため、膨張及び収縮後にプラスチック磁石がバックヨークに対して位置ずれすることを抑えることができ、スライダ間の位置検出誤差を低減することができる。以上のように、上記のリニアコンベアでは、スライダの軽量化を図るとともにスライダ間の位置検出誤差を低減することができる。
【0011】
前記バックヨークは、前記スライダに取り付けて固定するための取付部を備え、前記プラスチック磁石は前記バックヨークを介してスライダに対して固定されてもよい。
【0012】
プラスチック磁石の一部にビス孔等が設けられることでプラスチック磁石がスライダに固定される構成とされていると、プラスチック磁石において当該ビス孔等が設けられた部位とその他の部位との間で膨張時及び収縮時の変形量に差が生じることとなる。この場合、膨張及び収縮後にプラスチック磁石の一部がバックヨークに対して膨張前の相対位置まで戻らない虞がある。上記の構成によると、プラスチック磁石とスライダとの間にバックヨークが介在する形で当該バックヨークがスライダに対して固定されるため、プラスチック磁石にビス孔等を設ける必要がなく、膨張及び収縮後にプラスチック磁石がバックヨークに対して位置ずれすることを効果的に抑えることができる。
【0013】
磁気スケールにおいて、前記バックヨークと前記プラスチック磁石とが両者を一括して括る樹脂製のバンド部材によって一体化され、前記バンド部材は、前記プラスチック磁石に対して相対変位不能に固着されるとともに、前記バックヨークに対して前記磁気スケールの延在方向に沿って相対変位可能とされていてもよい。
【0014】
この構成によると、バンド部材がプラスチック磁石に対してバックヨークの延在方向に沿って相対変位不能に固着されることで、プラスチック磁石が環境温度の変化等により膨張又は収縮した場合、バンド部材がプラスチック磁石と共に略等しい変形量で変形する。一方、バンド部材がバックヨークに対してバックヨークの延在方向に沿って相対変位可能とされていることで、プラスチック磁石が環境温度の変化等により膨張又は収縮した場合、バンド部材がバックヨークに対して相対変位しながら変形する。このように上記バンド部材を用いることで、膨張及び収縮後にプラスチック磁石がバックヨークに対して位置ずれすることを抑えることが可能な具体的な構成を実現することができ、スライダ間の位置検出誤差を低減することができる。なお、この構成では、上記固定部において、プラスチック磁石がバックヨークに対して直接固定されていてもよいし、プラスチック磁石がバンド部材を介してバックヨークに対して固定されていてもよい。
【0015】
また、プラスチック磁石のベースとなる樹脂材料は、バックヨークに対して良好な接着性を得られないことが多い。これに対し、上記のリニアコンベアでは、樹脂製のバンド部材によってプラスチック磁石とバックヨークとが一括して括られているため、接着剤等を用いることなくバックヨークとプラスチック磁石とが一体化された磁気スケールを実現することができる。
【0016】
前記固定部は、前記プラスチック磁石の前記磁気スケールの延在方向における中央に設けられていることが好ましい。
【0017】
固定部が仮にプラスチック磁石の磁気スケールの延在方向における中央よりも端部側に偏った位置に設けられているとすると、固定部を挟む一方側と他方側との間で膨張時及び収縮時におけるプラスチック磁石の変化量が異なるものとなる。上記の構成によると、固定部がプラスチック磁石の磁気スケールの延在方向における中央に設けられているため、固定部の両側において膨張時及び収縮時におけるプラスチック磁石の変化量が略等しいものとなる。このため、プラスチック磁石の膨張及び収縮後に、プラスチック磁石をバックヨークに対して膨張前の相対位置まで高い精度で戻すことができる。その結果、スライダ間の位置検出誤差を一層低減することができる。
【0018】
前記スライダに該スライダへの搭載物の位置決めを行うための位置決め部が設けられ、前記磁気スケールにおける前記固定部は前記位置決め部と重なる位置に設けられていてもよい。
【0019】
スライダにおいて搭載物の位置決めを行うための上記位置決め部はスライダに対して良好な位置精度で設けられている。上記の構成によると、このように良好な位置決め精度で設けられた位置決め部と重なる位置に固定部が位置するように磁気スケールが取り付けられることで、磁気スケールの取り付け精度を高めることができる。これにより、スライダ間の位置検出誤差を一層低減することができる。
【0020】
前記バンド部材は前記プラスチック磁石と前記バックヨークとを成形型内に装着して行うインサート成形によって成形され、前記バックヨークには前記インサート成形時に樹脂が進入して前記固定部を形成する切欠部が設けられていてもよい。
【0021】
この構成によると、インサート成形時に樹脂が固定部における切欠部に進入することで切欠部内が樹脂で埋まるため、固定部においてバックヨークがバンド部材に対して固着される。これにより、プラスチック磁石が固定部においてバンド部材を介してバックヨークに対して固定されるための具体的な構成を実現することができる。
【0022】
前記バンド部材は前記プラスチック磁石と前記バックヨークとを成形型内に装着して行うインサート成形によって成形され、前記プラスチック磁石には突出部が間欠的に形成され、前記インサート成形時に前記突出部を包むようにして複数の前記バンド部材が形成されていてもよい。
【0023】
この構成によると、インサート成形時に樹脂が突出部を包み込むことで突出部の周りが樹脂で埋まるため、各突出部が設けられた部位においてプラスチック磁石がバンド部材に対して固着される。これにより、プラスチック磁石がバンド部材に対して固定されるための具体的な構成を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本明細書で開示される技術によれば、スライダの軽量化を図るとともにスライダ間の停止位置誤差が低減されたリニアコンベアを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(リニアコンベアの全体構成)
図面を参照して実施形態を説明する。実施形態では、リニアモータ駆動によって駆動するリニアコンベア1について例示する。なお、各図面の一部にはX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で共通した方向となるように描かれている。このうちX軸方向はリニアコンベア1の搬送方向と一致し、Z軸方向は上下方向と一致する。
【0027】
図1に示すように、リニアコンベア1は基台2上に設置され、X軸方向に沿って延在する2つの直線搬送部4A,4Bが上下二段に配置されている。各直線搬送部4A,4Bには複数のスライダ10が装着され、X軸方向に沿って移動可能である。各直線搬送部4A,4Bの両端側には、一対のスライダ昇降装置6A,6Bが設けられている。
【0028】
2つの直線搬送部4A,4Bは、互いに等しい長さで延在しており、上下方向において重なるように配置されている。一方の直線搬送部4A(4B)に沿って移動されてその一端に達したスライダ10は、スライダ昇降装置6A(6B)に載せられ、他方の直線搬送部4B(4A)の一端へと昇降される。そしてスライダ10は、進行方向が反転され、他方の直線搬送部4B(4A)を移動する。即ちリニアコンベア1では、2つの直線搬送部4A,4Bと一対のスライダ昇降装置6A,6Bとによって循環するスライダ10の搬送経路が構成されている。
【0029】
このような構成とされたリニアコンベア1では、上記搬送経路上の所定の部品供給位置においてスライダ10が停止され、部品の供給やネジ締め、シーリング等の作業が実施される。
【0030】
(固定側モジュールの構成)
各直線搬送部4A,4Bは、それぞれ搬送方向にわたって連結された4台の固定側モジュール20からなる。各固定側モジュール20は、
図2に示すように、スライダ10の移動方向(X軸方向)に沿って配されたレール22と、フレーム24と、リニアモータの固定子26とを備えている。
【0031】
図2及び
図3に示すように、フレーム24はアルミニウム合金の押出成形品を所定長さに切断したもので、スライダ10の移動方向に沿って左右に延びる細長い台座状をなしている。フレーム24は、基台2上に設置される設置部24Aと、設置部24Aにおける前後方向略中央から上方に立ち上がる立ち上がり部24Bと、立ち上がり部24Bの上端に設けられたレール固定部24Cと、から構成される。設置部24Aは、基台2上に設置できるように基台2の板面に対して平行な平板状とされている。立ち上がり部24Bは、設置部24Aに対して略垂直に立ち上がるとともにその板面が前後方向(Y軸方向)に向けられた姿勢の2枚の平板状部材からなっている。レール固定部24Cは、設置部24Aと平行に配されるとともに当該設置部24Aよりも前後方向寸法が短い板状部材とされている。
【0032】
レール固定部24C上には、左右方向に沿って延在する上記レール22と上記固定子26とが前後方向に隣接した形で配置されている。レール22と固定子26の延在する長さ(搬送方向寸法)は互いに等しいものとなっている。レール22と固定子26は、いずれもレール固定部24Cに対して強固に固定されており、これにより、フレーム24に対するレール22と固定子26の位置関係が良好な精度で確保されている。
【0033】
レール22は、端面が矩形状とされた細長い略角柱状をなしている。レール22にはその前後両側面にわずかに窪んだ窪み部22Aが設けられており、この窪み部22Aに後述するスライダ10のレールガイド13のガイド溝13Aが嵌合するようになっている。レール22は、当該レール22上に配されたスライダ10のガイド溝13Aと嵌合されることで、スライダ10をレール22及び固定子26に沿ってガイドするガイド部材として機能する。
【0034】
固定子26は、レール22と同様に端面が矩形状とされた細長い略角柱状をなしている。固定子26には、その延在方向に沿って並んで配置された複数の電機子コイル25が当該固定子26に埋め込まれた形で固定されている。リニアコンベア1では、複数の電機子コイル25に供給される電流が制御され、これにより、固定側モジュール20に取り付けられたスライダ10がリニアモータ駆動によってレール22及び固定子26に沿って移動するようになっている。
【0035】
固定側モジュール20の前方側には、立ち上がり部24Bの前面を覆う形で複数のセンサ基板30が配されている。各センサ基板30は、搬送方向に沿って並列配置され、その板面が前後方向に向けられた姿勢で立ち上がり部24Bに固定されている。これらのセンサ基板30は、後述するスライダ10の磁気スケール40A,40B,40Cとの間で当該スライダ10の位置を検出するためのリニアスケールを構成する。
【0036】
各センサ基板30には、
図3に示すように、上下方向に所定の間隔で並んで配置された3つの磁気センサ(センサの一例)31A,31B,31Cが設けられている。これらの磁気センサ31A,31B,31Cは、後述するスライダ10の磁気スケール40A,40B,40Cを検出可能なホール素子やMR素子等からなり、各センサ基板30において共通した位置に配置されている。各磁気センサ31A,31B,31Cは、固定側モジュール20にスライダ10が取り付けられた状態において、スライダ10の各磁気スケール40A,40B,40Cと対向する位置に設けられている。
【0037】
本実施形態では、これらの磁気センサ31A,31B,31Cのうち、最も上方に配置された磁気センサ31A(以下、検出センサ31Aと称する)が、スライダ10の位置を検出するためのセンサとして利用される。検出センサ31Aが対向するスライダ10の磁気スケール40Aを検出することで、スライダ10の位置を検出するための所定の信号がセンサ基板30から出力されるようになっている。
【0038】
また、固定側モジュール20の前方側には、
図2及び
図3に示すように、立ち上がり部24Bの前面を覆うプレート部材32が配されている。このプレート部材32は、設置部24Aに立設され、当該設置部24A及び立ち上がり部24Bに固定されている。プレート部材32は、上下方向に沿ってセンサ基板30の板面と平行に延びる第1プレート部32Aと、当該第1プレート部32Aの下端から前方にわずかに膨らんで下方に延びる第2プレート部32Bと、から構成される。プレート部材32は、例えば固定側モジュール20にスライダ10を取り付ける際にスライダ10が各センサ基板30と干渉しないように保護するための保護部材として機能する。
【0039】
センサ基板30の前方側であってプレート部材32の第2プレート部32Bと同じ高さの位置には、電機子コイル25への電力供給用とセンサ基板30用のコネクタ27とが上下方向に並んだ形でそれぞれ設けられている。また、第2プレート部32Bにおいてこれらのコネクタ27と重なる位置は開口しており、前方に露出した状態となっている。これにより、コネクタ27は接続先のコネクタと接続可能となっている。
【0040】
(スライダの構成)
続いて直線搬送部4A,4Bに沿ってレール22上を移動するスライダ10の構成について説明する。以下では、X軸方向をスライダ10の左右方向とし、Y軸方向をスライダ10の前後方向とし、Z軸方向をスライダ10の上下方向として説明する。スライダ10は、
図4に示すように、側面視略L字状をなしており、固定側モジュール20に取り付けられた際にレール22及び固定子26上に配置される長方形状の上板部11と、フレーム24の前方側面に対向配置される長方形状の側板部12と、により構成される。
【0041】
上板部11の表面には、
図5に示すように、スライダ10上に搭載されて搬送される部品を取り付けるための複数の取り付け孔11Aが設けられている。また、上板部11の搬送方向における略中央位置には、その前後側に、スライダ10に搭載される部品の位置決めを行うための位置決め部11Cがそれぞれ設けられている。
【0042】
上板部11の裏面には、
図6に示すように、搬送方向に沿って延在する2つのレールガイド13がそれぞれ配置されている。各レールガイド13には、下方に開口するとともに当該レールガイド13の延在方向、即ち搬送方向に沿って溝状に延びるガイド溝13Aが形成されている。このガイド溝13Aにレール22が挿入されると、ガイド溝13Aに沿って配置された多数のボールがレール22に接して転動する。
【0043】
また、上板部11の裏面には、可動子カバー14によって覆われた複数の永久磁石15(
図4参照)が当該上板部11の長辺方向に沿って並んで配置されており、これらの複数の永久磁石15によって可動子16の複数の磁極が構成されている。可動子カバー14は、
図3に示すように、上板部11に対してボルト締めによって固定されており、複数の永久磁石15を覆う部分が当該上板部11の板面方向に沿って平行な平坦面とされている。なお、
図4では上板部11から可動子カバー14が取り外されて永久磁石15が露出している状態を、
図3では上板部11に可動子カバー14が固定された状態を、それぞれ示している。
【0044】
上板部11の前後方向両端部のうち側板部12が延びる側とは反対側の端部は、下方側に屈曲してわずかに延びる屈曲部11Bとされている(
図3参照)。そして、上記の可動子16及び可動子カバー14は屈曲部11Bの内側に配された形となっている。この屈曲部11Bによって、可動子16及び可動子カバー14の後方側が保護されている。
【0045】
側板部12には、
図3、
図4、
図6、及び
図7に示すように、その裏面に上下方向に並んだ形で配置された3つの磁気スケール40A,40B,40Cが設けられている。各磁気スケール40A,40B,40Cは、スライダ10の左右方向に沿って延在しており、側板部12に固定されたスケールカバー18によって覆われている。なお、
図4、
図6、
図7では側板部12からスケールカバー18が取り外された状態を、
図3では側板部12にスケールカバー18が取り付けられた状態を、それぞれ示している。
【0046】
各磁気スケール40A,40B,40Cは、固定側モジュール20にスライダ10が取り付けられた状態において、センサ基板30の各磁気センサ31A,31B,31Cと対向する位置に設けられている。これらの磁気スケール40A,40B,40Cのうち、最も上方に配置された磁気スケール40Aが、スライダ10の位置を検出するためのリニアスケールとされる。固定側モジュール20の磁気センサ31Aが対向する磁気スケール40Aを検出することで、スライダ10の位置を検出するための所定の信号がセンサ基板30から出力されるようになっている。
【0047】
上記のような構成とされたスライダ10は、当該スライダ10の上板部11と固定側モジュール20のレール固定部24Cとが平行となるような姿勢(
図3参照)で、レールガイド13のガイド溝13Aを固定側モジュール20のレール22と嵌合させることで、固定側モジュール20に取り付けることができる。固定側モジュール20に取り付けられたスライダ10は、ガイド溝13Aと嵌合されたレール22上を摺動することで、固定側モジュール20上を左右方向、即ち直線搬送部4A,4Bの延在方向に沿って移動する。
【0048】
(磁気スケールの構成)
続いてスライダ10の位置を検出するために利用される磁気スケール40Aの構成について詳しく説明する。なお以下では、X軸方向を磁気スケール40Aの左右方向(スライダ10の移動方向)とし、Y軸方向を磁気スケール40Aの前後方向とし、Z軸方向を磁気スケール40Aの上下方向として説明する。磁気スケール40Aがスライダ10に取り付けられた状態における磁気スケール40Aの上下方向、左右方向、前後方向は、スライダ10の上下方向、左右方向、前後方向とそれぞれ一致する。磁気スケール40Aは、
図8及び
図9に示すように、バックヨーク42と、バックヨーク42に宛がわれるプラスチック磁石44と、バックヨーク42とプラスチック磁石44との両者を一括して括ることで一体化する複数のバンド部材46A,46Bと、から構成される。
【0049】
プラスチック磁石44は、バックヨーク42と同様に左右方向に延在する板状部材とされており、バックヨーク42の一方の板面に宛がわれている。プラスチック磁石44の上下方向寸法はバックヨーク42の上下方向寸法よりわずかに短いものとされており、プラスチック磁石44は、上下方向においてバックヨーク42の板面内に収まるように配されている。一方、プラスチック磁石44の左右方向寸法はバックヨーク42の左右方向寸法より短いものとされており、プラスチック磁石44は、バックヨーク42の左右方向両端がプラスチック磁石44からはみ出るように配されている。
【0050】
バックヨーク42の左右方向両端には、
図8及び
図9に示すように、スライダ10の側板部12に対して取り付けられて固定される取付部43が設けられている。バックヨーク42において取付部43と対応する部位には、当該バックヨーク42を貫通する取付孔42Aがそれぞれ設けられている。この取付孔42AにビスS(
図6参照)が挿通され、バックヨーク42がスライダ10の側板部12にビス留めされることで、バックヨーク42が側板部12に対して取り付けられている。なお、取付孔42Aは良好な位置精度で設けられており、位置決めピン(不図示)を備えた位置決め冶具(不図示)を使用することが可能となっている。バックヨーク42は、この位置決めピンによりピン留めされることで、スライダ10の側板部12に対して良好な位置精度で固定されている。
【0051】
プラスチック磁石44は、ベースとなるPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の中に磁粉を混入させることで形成されており、バックヨーク42に宛がわれた側とは反対側の面を磁極面としてその延在方向に沿って多極着磁されている。磁気スケール40Aは、側板部12とプラスチック磁石44との間にバックヨーク42が介在する形で当該側板部12に取り付けられる。このため、固定側モジュール20にスライダ10が取り付けられると、プラスチック磁石44の磁極面が固定側モジュール20に取り付けられたセンサ基板30の磁気センサ31Aと対向した状態となる。
【0052】
バンド部材46A,46Bは、樹脂製とされ、磁気スケール40Aの左右方向に沿って互いに略等間隔で離間した形で7つ配されている。各バンド部材46A,46Bは、バックヨーク42のプラスチック磁石44が宛がわれた面とは反対側の面(前面)を周り込んでプラスチック磁石44を上下方向から挟み込む形状をなし、各々がバックヨーク42とプラスチック磁石44の両者を一括して括るものとされる。
【0053】
各バンド部材46A,46Bのうち左右方向における略中央に配されたバンド部材46Bを除く6つのバンド部材46Aは、それぞれプラスチック磁石44をその上下から挟み込む形で当該プラスチック磁石44のみに固着されており、バックヨーク42に対しては固着されていない。このため、プラスチック磁石44のうちこれら6つのバンド部材46Aに挟み込まれた部分は、当該バンド部材46Aと共に左右方向(磁気スケール40Aの延在方向)に沿ってバックヨーク42に対して相対変位可能となっている。
【0054】
一方、各バンド部材46A,46Bのうち左右方向における略中央に配されたバンド部材46Bは、プラスチック磁石44とバックヨーク42の両方に固着されている。このため、プラスチック磁石44のうちこのバンド部材46Bに挟み込まれた部分は、左右方向(磁気スケール40Aの延在方向)に沿ってバックヨーク42に対して相対変位不能となっている。なお以下では、プラスチック磁石44の部分のうちこのバンド部材46Bに挟み込まれた部分(相対変位不能とされた部分)を固定部44Aと称する。磁気スケール40Aがスライダ10に取り付けられる際には、この固定部44Aが左右方向においてスライダ10の位置決め部11Cと重なるような配置で当該磁気スケール40Aが取り付けられる。
【0055】
バックヨーク42及びプラスチック磁石44に対する各バンド部材46A,46Bの取付態様について具体的に説明する。
図14及び
図15に示すように、プラスチック磁石44の上下両側面においてバンド部材46A,46Bによって挟み込まれる部分には、左右方向(磁気スケール40Aの延在方向)に延びる微小突条(突出部の一例)44Bが間欠的に形成されている。これらの微小突条44Bは、前後方向においてバックヨーク42寄りの位置に形成されている。
【0056】
一方、
図13及び
図14に示すように、バックヨーク42の上下両側面における左右方向の略中央位置、即ちプラスチック磁石44の固定部44Aが宛がわれる部分には、正面視において円弧状に切り欠かれた切欠部42Bがそれぞれ形成されている。この切欠部42Bは、バックヨーク42を前後方向に貫通する形で形成されている。プラスチック磁石44の固定部44Aに固着されるバンド部材46Bでは、上記切欠部42Bと対応する部分が当該切欠部42B内に進入する形で突出する凸部46B1とされている(
図17参照)。
【0057】
ところで、各バンド部材46A,46Bは、上記のような構成とされたプラスチック磁石44とバックヨーク42とを成形型内に装着して行うインサート成形によって成形される。インサート成形時には、プラスチック磁石44の各微小突条44Bを包みようにして各バンド部材46A,46Bがそれぞれ形成される。これにより、各微小突条44Bの左右方向両側がバンド部材46A,46Bを形成する樹脂によって埋められるため(
図16参照)、各バンド部材46A,46Bはプラスチック磁石44に対して左右方向に相対変位不能に固着されることとなる。
【0058】
また、左右方向の略中央に配されるバンド部材46Bのインサート成形時には、バックヨーク42の切欠部42Bに当該バンド部材46Bを形成する樹脂が進入する。これにより切欠部42Bは、切欠部42Bに進入した樹脂によって埋められる。切欠部42Bに進入した樹脂はバンド部材46Bの上記凸部46B1となり(
図17参照)、当該バンド部材46Bはバックヨーク42に対して左右方向に相対変位不能に固着されることとなる。
【0059】
このようにして形成された各バンド部材46A,46Bによって、プラスチック磁石44とバックヨーク42との両者が一括して括られて一体化される。プラスチック磁石44の固定部44Aではプラスチック磁石44とバックヨーク42との両者がバンド部材46Bによって左右方向に相対変位不能に固着されるのに対し、プラスチック磁石44の固定部44Aを除く部位では、プラスチック磁石44のみがバンド部材46Aによって左右方向に相対変位不能に固着される。
【0060】
ところで、バックヨーク42は、鉄やステンレス等の金属製とされるため、プラスチック磁石44との間で線膨張係数の差が大きい。このため、磁気スケール40Aが常温環境下から高温環境下に移された場合、熱膨張によってプラスチック磁石44がバックヨーク42よりもその延在方向(左右方向)に大きく伸長し、プラスチック磁石44がバックヨーク42に対して左右方向に相対変位する虞がある。これにより、プラスチック磁石44が常温環境下におけるバックヨーク42に対する当初の位置からずれてしまう虞がある。
【0061】
これに対し本実施形態の磁気スケール40Aは、上記のような構成とされているため、例えば常温環境下から高温環境下に移された場合、プラスチック磁石44の固定部44Aを除く部位がバックヨーク42に対して左右方向に相対変位し、プラスチック磁石44の固定部44Aはバックヨーク42に対して左右方向に相対変位せず、その場に留まることとなる。そして、磁気スケール40Aが高温環境下から常温環境下に戻されると、プラスチック磁石44の固定部44Aを除く部位が、固定部44Aを基準としてバックヨーク42よりも大きく収縮し、バックヨーク42に対して左右方向に相対変位する。その結果、プラスチック磁石44の固定部44Aを除く部位は、バックヨーク42に対する当初の位置に戻ることとなる。
【0062】
即ち本実施形態の磁気スケール40Aは、高温環境下に移された場合であってもその後に常温環境下に戻されることで、プラスチック磁石44とバックヨーク42との間の相対位置が当初の位置に戻される。このため、プラスチック磁石44とバックヨーク42との間の相対位置が変化することに起因して、スライダ10間における検出センサ31Aによる磁気スケール40Aの検出誤差、換言すればスライダ10間の位置検出誤差が生じることを防止ないし抑制することができる。
【0063】
(実施形態の効果)
以上のように実施形態のリニアコンベア1では、磁気スケール40Aから生じる磁束を検出センサ31Aが検出することによって、レール22に沿って配されたスライダ10の位置が検出される。そして、磁気スケール40Aにおいて磁石としてプラスチック磁石44が用いられた構成とされている。このため、ネオジム磁石等の磁石を用いる場合と比べて磁気スケール40A及びその磁気スケール40Aが設けられたスライダ10の軽量化を図ることができる。
【0064】
また、実施形態のリニアコンベア1では、環境温度等の変化によってスライダ10の磁気スケール40Aが熱膨張すると、磁気スケール40Aのプラスチック磁石44における固定部44A以外の部位がバックヨーク42に対して磁気スケール40Aの延在方向(X軸方向)に沿って相対変位しながら伸長する。一方、環境温度等の変化によって磁気スケール40Aが収縮すると、磁気スケール40Aのプラスチック磁石44における固定部44A以外の部位がバックヨーク42に対して磁気スケール40Aの延在方向に沿って相対変位しながら収縮する。このとき膨張時と収縮時の環境温度の変化量が略等しければ、膨張時と収縮時の各々においてプラスチック磁石44が固定部44Aを基準として略等しい変形量で変形する。その結果、プラスチック磁石44が固定部44Aを基準としてバックヨーク42に対して膨張前の相対位置まで戻ることとなる。このため、膨張及び収縮後にプラスチック磁石44がバックヨーク42に対して位置ずれすることを抑えることができ、スライダ10間の位置検出誤差を低減することができる。このように、実施形態のリニアコンベア1では、スライダ10の軽量化を図るとともにスライダ10間の位置検出誤差を低減することができる。
【0065】
また実施形態では、バックヨーク42の左右方向両端に、スライダ10に取り付けられて固定される取付部43が設けられている。そして、プラスチック磁石44はバックヨーク42を介してスライダ10に対して固定されている。ここで、プラスチック磁石44の一部にビス孔等が設けられることでプラスチック磁石44がスライダ10に固定される構成とされていると、プラスチック磁石44において当該ビス孔等が設けられた部位とその他の部位との間で膨張時及び収縮時の変形量に差が生じることとなる。この場合、膨張及び収縮後にプラスチック磁石44の一部がバックヨーク42に対して膨張前の相対位置まで戻らない虞がある。これに対し、本実施形態の構成によると、プラスチック磁石44とスライダ10との間にバックヨーク42が介在する形で当該バックヨーク42がスライダ10の側板部12に対して固定されるため、プラスチック磁石44にビス孔等を設ける必要がなく、膨張及び収縮後にプラスチック磁石44がバックヨーク42に対して位置ずれすることを効果的に抑えることができる。
【0066】
また実施形態では、磁気スケール40Aにおいて、バックヨーク42とプラスチック磁石44とが両者を一括して括る樹脂製のバンド部材46A,46Bによって一体化されている。そして、バンド部材46A,46Bは、プラスチック磁石44に対して相対変位不能に固着されるとともに、固定部44Aに取り付けられたバンド部材46Bを除く6つのバンド部材46Aはバックヨーク42に対して磁気スケール40Aの延在方向に沿って相対変位可能とされている。このような構成とされていることで、プラスチック磁石44が環境温度の変化等により膨張又は収縮した場合、バンド部材46A,46Bがプラスチック磁石44と共に略等しい変形量で変形する一方で、バンド部材46Bがバックヨーク42に対して相対変位しながら変形する。このようにバンド部材46A,46Bを用いることで、膨張及び収縮後にプラスチック磁石44がバックヨーク42に対して位置ずれすることを抑えることが可能な具体的な構成を実現することができ、スライダ10間の位置検出誤差を低減することができる。
【0067】
また、プラスチック磁石44のベースとなる樹脂材料であるPPSは、バックヨーク42に対して良好な接着性を得ることが難しい。これに対し実施形態では、樹脂製のバンド部材によってプラスチック磁石44とバックヨーク42とが一括して括られているため、接着剤等を用いることなくバックヨーク42とプラスチック磁石44とが一体化された磁気スケール40Aを実現することができる。
【0068】
また実施形態では、固定部44Aが、プラスチック磁石44の磁気スケール40Aの延在方向(X軸方向)における中央に設けられている。ここで、固定部44Aが仮にプラスチック磁石44の磁気スケール40Aの延在方向における中央よりも端部側に偏った位置に設けられているとすると、固定部44Aを挟む一方側と他方側との間で膨張時及び収縮時におけるプラスチック磁石44の変化量が異なるものとなる。これに対し本実施形態では、固定部44Aがプラスチック磁石44の磁気スケール40Aの延在方向における中央に設けられているため、固定部44Aを挟む一方側と他方側において膨張時及び収縮時におけるプラスチック磁石44の変化量が略等しいものとなる。このため、プラスチック磁石44の膨張及び収縮後に、プラスチック磁石44をバックヨーク42に対して膨張前の相対位置まで高い精度で戻らせることができる。その結果、スライダ10間の位置検出誤差を一層低減することができる。
【0069】
また実施形態では、スライダ10に当該スライダ10への搭載物の位置決めを行うための位置決め部11Cが良好な位置決め精度で設けられている。そして、このように良好な位置決め精度で設けられた位置決め部11Cと重なる位置に固定部44Aが位置するように磁気スケール40Aが取り付けられる。このように磁気スケール40Aが取り付けられることで、本実施形態では磁気スケール40Aの取り付け精度を高めることができる。これにより、スライダ10間の位置検出誤差を一層低減することができる。
【0070】
なお実施形態では、磁気スケール40Aの磁石としてプラスチック磁石44を用いるため、ネオジム磁石等を用いる従来の構成と比べて部材コストを大幅に低減することができる。
【0071】
(他の実施形態)
本発明は上記既述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記の実施形態では、バックヨークとプラスチック磁石とがバンド部材によって一体化された構成を例示したが、バックヨークとプラスチック磁石とがバンド部材以外の部材によって組み付けられた構成であってもよい。
【0072】
(2)上記の実施形態では、プラスチック磁石の固定部が磁気スケールの延在方向における略中央に設けられた構成を例示したが、プラスチック磁石の固定部が磁気スケールの延在方向における略中央以外の部位に設けられた構成であってもよい。
【0073】
(3)上記の実施形態では、プラスチック磁石の上下両側面においてバンド部材によって挟み込まれる部分に突出部の一例として微小突条が形成された構成を例示したが、突出部の形状は限定されない。突出部は、バンド部材によって包まれることでプラスチック磁石がバンド部材に対して固着されるような形状であればよい。
【0074】
(4)上記の実施形態では、固定部において、バックヨークの上下両側面に切欠部が設けられ、バンド部材の切欠部と対応する位置に凸部が設けられた構成を例示したが、固定部の構成はこれらに限定されない。例えば、バックヨーク側に凸部が設けられ、バンド部材側にこの凸部と嵌合する切欠部が設けられた構成であってもよい。
【0075】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。