特許第6129708号(P6129708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129708
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   F04B39/00 107A
   F04B39/00 107J
   F04B39/00 104D
   F04B39/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-206897(P2013-206897)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-71953(P2015-71953A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】池田 英明
(72)【発明者】
【氏名】小林 永敏
(72)【発明者】
【氏名】貞方 康輔
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−091374(JP,A)
【文献】 実開昭64−015782(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダとの間に圧縮室を形成するリテーナと前記リテーナに接続されたコネクティングロッドとを有し、前記シリンダ内を揺動しつつ往復動し、流体を圧縮するピストンと、
前記リテーナに装着され、前記シリンダと前記ピストンとの間をシールするリップリングとを備え、
前記リテーナの前記圧縮室側の面の揺動方向における径非揺動方向における前記リテーナの径よりも小さく
前記リテーナの前記圧縮室側の面の非搖動方向における径は前記コネクティングロッド側の非揺動方向における径よりも大きいことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記リテーナの前記圧縮室側の面の搖動方向における径は前記コネクティングロッド側の揺動方向における径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記リテーナの側面はテーパ形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮機。
【請求項4】
シリンダと、
前記シリンダとの間に圧縮室を形成するリテーナと前記リテーナに接続されたコネクティングロッドとを有し、前記シリンダ内を揺動しつつ往復動し、流体を圧縮するピストンと、
前記リテーナに装着され、前記シリンダと前記ピストンとの間をシールするリップリングとを備え、
前記リテーナの前記圧縮室側の面の揺動方向における径を非揺動方向における前記リテーナの径よりも小さく、
前記リテーナの前記圧縮室側の面と前記リップリングとの間のクリアランスは揺動方向のほうが非揺動方向よりも大きいことを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術として特許文献1がある。特許文献1には、リップリングの挟持部よりの面をストレート面に形成し、リップリングのリップ部の先端よりの面を次第に縮径するテーパ面に形成したリップリングを有するエアコンプレッサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭64−15782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の往復動圧縮機では、揺動方向に関係なく、リップリングの全周にテーパ面を形成し、リップリングに係る応力を低減させ、寿命向上を図っていた。しかし、非揺動方向についてリテーナとリップリングとの隙間が大きくなるため、再膨張・再圧縮する空気の容積が大きくなり、圧縮効率が向上を図れなかった。
【0005】
そこで、本発明は、圧縮効率の向上とリップリングの寿命向上とを両立した圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリンダと、前記シリンダとの間に圧縮室を形成するリテーナと前記リテーナに接続されたコネクティングロッドとを有し、前記シリンダ内を揺動しつつ往復動し、流体を圧縮するピストンと、前記リテーナに装着され、前記シリンダと前記ピストンとの間をシールするリップリングとを備え、前記リテーナの前記圧縮室側の面の揺動方向における径は非揺動方向における前記リテーナの径よりも小さくすることを特徴とする圧縮機を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧縮効率の向上とリップリングの寿命向上とを両立した圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る圧縮機の圧縮部の断面図(上死点・揺動方向)
図2】本発明の実施例に係る圧縮機の圧縮部の断面図(搖動時・搖動方向)
図3】本発明の実施例に係る圧縮機の圧縮部の断面図(上死点・非揺動方向)
図4】本発明の実施例に係る圧縮機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る圧縮機の実施例を、図1図4を用いて説明する。
【0010】
図4を用いて本実施例に係る圧縮機の全体構成について説明する。
【0011】
本実施例に係る圧縮機は、ケーシング1内に圧縮機を駆動するモータの回転軸2が設けられている。モータの回転軸2は軸受4によって偏心軸3に接続され、モータによる回転軸2の回転運動が偏心軸3の偏心運動に変換される。軸受4には、偏心時のバランスをとるための錘5が設けられている。
【0012】
軸受4には、ピストン21を構成するコネクティングロッド22が接続され、偏心軸3の偏心運動がピストン21の往復運動に変換され、ピストン21はシリンダ11内を揺動しつつ往復動する。
【0013】
ピストン21はシリンダ11内に往復動可能に設けられた揺動ピストンで、揺動ピストン21は、円板状の取付フランジ22Aが設けられたコネクティングロッド22にボルト23によって締結された円板状のリテーナ24とによって構成されている。
【0014】
図1を用いて本実施例に係るピストン21について詳細に説明する。
【0015】
コネクティングロッド22の取付フランジ22Aは、中央部が凹部22Bとなっている。また、リテーナ24は、中央部が凸24Aとなっており、コネクティングロッド22の凹部22Bと嵌合する。
【0016】
リテーナ24とシリンダ11に取り付けられたシリンダヘッド12との間に圧縮室が形成され、シリンダ11内の流体が圧縮される。
【0017】
揺動ピストン21の外周側でコネクティングロッド22とリテーナ24との間に設けられたリップリング25は、樹脂材料を用いてリング状に形成されている。リップリング25は、コネクティングロッド22とリテーナ24に挟まれて、ボルト23によって締結された状態で固定されている。
【0018】
さらに、リップリング25は平板状の取付部25Aと径方向外側に突出するリップ部25Bから成り、リップ部25Bがシリンダ11の内周面に締代をもって摺接している。
【0019】
そして、リップリング25は取付部25Aとリップ部25Bとの間がL字状に折り曲げられた折曲部25Cとなっている。
【0020】
リップリング25は、リップ部25Bがシリンダ11の内周面に倣って開閉することにより、ピストン21とシリンダ11との間をシールするものである。
【0021】
ここで、本実施例に係る圧縮機の動作について説明する。
【0022】
モータによって回転軸2が回転すると、偏心軸3が偏心運動し、軸受4によって偏心軸3の偏心運動がコネクティングロッド22の往復運動に変換される。これにより、ピストン21が揺動しつつ往復動し、リテーナ24とシリンダヘッド12との間に形成された圧縮室内の流体が圧縮される。
【0023】
ピストン21が上死点から下死点に向かって動くとき、圧縮室内に流体が吸入される(吸入工程)。ピストン21は下死点から上死点に向かって動くとき、圧縮室内の流体が圧縮される(圧縮行程)。
【0024】
吸入行程では、弁板14に形成された吸入弁17が開くことにより、シリンダ11の外部から圧縮室内へ流体が吸入される。一方、弁板14に形成された吐出弁18は吸入行程では閉じている。圧縮行程では、吐出弁が開くことにより、圧縮室内の流体が外部の貯留タンクに吐出される。一方、吸入弁は圧縮行程では閉じている。
【0025】
図2、3を用いて、本実施例に係るリテーナについて詳細に説明する。
【0026】
図2に図の左右方向を揺動方向としたリテーナの断面図を示す。リテーナ24の外周の揺動方向には、図2に示すように、搖動時のリップリング25の変形に合わせて上側(圧縮室側)が下側(コネクティングロッド22側)よりも小径となるようにテーパ24Bが設けられている。
【0027】
図3に、図の左右方向を非揺動方向としたリテーナの断面図を示す。リテーナ24の外周の非揺動方向には、図3に示すように、上側(圧縮室側)が下側(コネクティングロッド22側)よりもが大径となるようにテーパ24Cが設けられている。
【0028】
さらに、このリテーナ24の外周のテーパ形状は、搖動方向から非揺動方向に向かって搖動時のリップリング25の変形に合わせて滑らかにつながって構成されている。
【0029】
リテーナ24の上面(圧縮室側の面)は、非揺動方向を長径、揺動方向を短径とした楕円となっている。また、リテーナ24の下面は、ほぼ揺動方向の径と非揺動方向の径とが等しい円形状となっている。これにより、リップリングを固定するリテーナ24の下面からリップリング25に過度な応力がかからないようにしつつ、リップリング25を脱落しないように固定することができる。
【0030】
また、リップリング25とリテーナ24の上面(圧縮室側の面)との間のクリアランスは揺動方向のほうが非揺動方向よりも大きくなっている。
【0031】
本実施例では、リテーナ24の上面(圧縮室側の面)は揺動方向の径が非揺動方向の径よりも小さい楕円形状となっている。
【0032】
本実施例では、揺動方向において、リテーナ24の上面の径が小さくなっているため、揺動時において、リテーナ24とシリンダ11との間にリップリング25が挟まれることによってリップリング25に生じる応力を低減できる。これにより、リップリングの寿命を向上させることができる。
【0033】
さらに、本実施例では、非揺動方向において、リテーナ24の上面の径が大きくなっているため、リップリング25とリテーナ24との隙間が小さくなり、再膨張・再圧縮を繰り返す容積を小さくできるため、圧縮効率向上(吐出空気量を増加)が可能となる。
【0034】
さらに、本実施例では、リップリング25ではなく、リテーナ24の径を変えたことにより、リテーナ24の下面からリップリング25に過度な応力がかからないようにしつつ、リップリング25を脱落しないように固定することができる。
【0035】
以上より、本実施例では、圧縮効率の向上とリップリングの寿命向上とを両立することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ケーシング
2 軸
3 偏心軸
4 軸受
5 錘
11 シリンダ
12 シリンダヘッド
14 弁板
17 吸入弁
18 吐出弁
21 揺動ピストン
22 コネクティングロッド
24 リテーナ
24B テーパ
24C テーパ
25 リップリング
図1
図2
図3
図4