(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
濾過槽に、水平方向に延びる原水管から原水を流入せしめる原水の流入口と、フィルタで原水を濾過した後の濾過水を水平方向に延びる濾過水管へ流出する濾過水の流出口とを設けた濾過装置において、濾過槽の内部空間をフィルタにより複数の区画室に区画し、該複数の区画室を上記原水の流入口に連通する流入室と濾過水の流出口に連通する流出室として交互に配置し、流入室内にフィルタに接面して集水口が形成された逆洗集水管を該フィルタの面上を移動可能に配し、逆洗集水管と接続し濾過槽外に延出する逆洗排水管を備え、逆洗集水管は、流出室側からフィルタを通過して流入する逆洗水を上記集水口から受け入れ、逆洗水により流入室側のフィルタ面に捕捉された付着物をフィルタ面から剥離せしめ、剥離した付着物を逆洗水と共に上記集水口から受け入れ、逆洗排水として濾過槽外に排出する逆洗排水管へ接続されており、濾過槽と原水管そして濾過水管は、下方から原水管、濾過槽、濾過水管の順に位置しており、複数の濾過槽が原水管そして濾過水管に対して並列に接続されており、逆洗集水管はフィルタの面に接して上下方向に延びており上下方向に対して直角方向に移動可能となっていることを特徴とする濾過装置。
複数の濾過槽のそれぞれに、原水の流入口にそして濾過水の流出口に開閉自在なバルブが設けられていることとする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載の濾過装置。
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載の濾過装置と、該濾過装置により濾過された海水中に殺菌剤を供給する殺菌剤供給装置と、海水を取水し該濾過装置を経てバラストタンクに海水を送水するポンプとを備えることを特徴とするバラスト水処理装置。
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載の濾過装置と、該濾過装置により濾過された海水に紫外線を照射する紫外線照射装置と、海水を取水し該濾過装置を経てバラストタンクに海水を送水するポンプとを備えることを特徴とするバラスト水処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に従来技術として開示された上述の濾過装置は、逆洗のために装置の運転を一時中断することなく、連続して濾過を行いつつ、逆洗もできる。しかしながら、上記濾過装置では、タンクの上半部にて濾過面が大気に開放されているので、下半部への原水の送水圧を増大させることにより濾過の処理水量を増加させる、ということができない。処理水量を増加させるには、濾過面積を大きくさせねばならず、濾過装置が大型化し、コストの増加、必要な設置面積の増加という問題が生ずる。
【0007】
また、上記濾過装置では、タンクの上半部が大気中にあり、濾過には寄与していない。この点でも、この濾過装置は、必要処理水量を確保するのに、大型化せざるを得なくなり、コストの増加、設置面積の増加という問題を生ずる。
【0008】
本発明は、かかる事態に鑑み、大量の濾過処理が可能で、装置の設置面積が小さくコンパクトであり、濾過面の付着物を効果的に逆洗除去できる濾過装置を提供することを課題とする。
【0009】
一方、空荷または積荷が少ない状態の船舶は、プロペラ没水深度の確保、空荷時における安全航行の確保の必要性から、出港前にバラストタンクにバラスト水の注水を行う。逆に港内で積荷をする場合には、バラスト水の排出を行う。
【0010】
環境の異なる荷積み港と荷下し港との間を往復する船舶によりバラスト水の注排水が行われると、バラスト水に含まれる微生物の差異により沿岸生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。そこで、船舶から排出されるバラスト水に含まれるプランクトンや細菌の数を厳しく制限するバラスト水の処理基準が定められており、この基準に適合するために、上記濾過装置を有していて、バラストタンクに注水する海水中のプランクトンや細菌を除去すると共に、細菌を殺滅するバラスト水処理装置が開発されている。かかるバラスト水処理装置を船舶の機関室に設置する場合に、機関室内に十分な広さの設置スペースを確保することが困難であるので、バラスト水処理装置をコンパクトにすることが求められている。
【0011】
そこで、本発明は、設置面積が小さくコンパクトであるバラスト水処理装置を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題は、本発明によると、次の濾過装置そしてバラスト水処理装置によりそれぞれ解決される。
【0013】
<濾過装置>
本発明に係る濾過装置は、濾過槽に、水平方向に延びる原水管から原水を流入せしめる原水の流入口と、フィルタで原水を濾過した後の濾過水を水平方向に延びる濾過水管へ流出する濾過水の流出口とを設けている。
【0014】
かかる濾過装置において、本発明では、濾過槽の内部空間をフィルタにより複数の区画室に区画し、該複数の区画室を上記原水の流入口に連通する流入室と濾過水の流出口に連通する流出室として交互に配置し、流入室内にフィルタに接面して集水口が形成された逆洗集水管を該フィルタの面上を移動可能に配し、逆洗集水管と接続し濾過槽外に延出する逆洗排水管を備え、逆洗集水管は、流出室側からフィルタを通過して流入する逆洗水を上記集水口から受け入れ、逆洗水により流入室側のフィルタ面に捕捉された付着物をフィルタ面から剥離せしめ、剥離した付着物を逆洗水と共に上記集水口から受け入れ、逆洗排水として濾過槽外に排出する逆洗排
水管へ接続されており、濾過槽と原水管そして濾過水管は、下方から原水管、濾過槽、濾過水管の順に位置しており、複数の濾過槽が原水管そして濾過水管に対して並列に接続されており、逆洗集水管はフィルタの面に接して上下方向に延びており上下方向に対して直角方向に移動可能となっていることを特徴としている。
【0015】
本発明において、濾過槽は上下方向で原水管と濾過水管との間にあって、原水管、濾過槽、濾過水管が一つの鉛直線上に位置しているようにすることも、また、原水管は濾過槽の下部側方、そして濾過水管が上部側方にそれぞれ位置しているようにすることもできる。
【0016】
さらに、本発明において、複数の濾過槽のそれぞれに、原水の流入口にそして濾過水の流出口に開閉自在なバルブが設けられていることが好ましい。
【0017】
<バラスト水処理装置>
本発明によるバラスト水処理装置は、既述した本発明の濾過装置と、該濾過装置により濾過された海水中に殺菌剤を供給する殺菌剤供給装置と、海水を取水し該濾過装置を経てバラストタンクに海水を送水するポンプとを備えることを特徴としている。
【0018】
また、本発明によるバラスト水処理装置は、既述した本発明の濾過装置と、該濾過装置により濾過された海水に紫外線を照射する紫外線照射装置と、海水を取水し該濾過装置を経てバラストタンクに海水を送水するポンプとを備えることを特徴とすることもできる。
【0019】
このような構成の本発明の濾過装置そして該濾過装置を備えたバラスト水処理装置にあっては、流入室における流入側圧力と流出室における流出側圧力との圧力差により原水はフィルタで不純物が濾過された後、濾過水として流出される。この濾過はすべての流入室でフィルタの全面にて行われる。このような濾過がなされるとともに、流出室における流出側圧力とこれよりも低い集水口における圧力との圧力差により、流出室側からフィルタを通過して逆洗水が集水口に流入する。この逆洗水により流入室側のフィルタ面に捕捉された付着物が剥離され、集水口から逆洗集水管に送られて逆洗が行われる。
【0020】
流出室内の濾過水の一部が逆洗水としてフィルタを通過し逆洗集水管の集水口へ流入するので、濾過により付着したフィルタ面上の付着物はフィルタの流出室側から流入するこの逆洗水によりフィルタ面から剥離されて上記集水口へ逆洗水と共に集水され、逆洗排水として逆洗排水管を介し濾過槽外に排出される。上記集水口が接面しているフィルタ面の部分は該フィルタ面の一部であるが、逆洗集水管の集水口を移動させることでフィルタ面の全面にて上記付着物が剥離除去される。
【0021】
また、このように濾過そして逆洗が行われる濾過装置は、下方から原水管、濾過槽、濾過水管の順に位置するように配置されて、船床に配設されている原水管が要する床面積内で設置されるので、設置面積が小さくてすみ、また、既存の原水管の設置位置を何ら変更することなく、濾過槽そして濾過水管を追加工事により配設できる。さらには、このように、下方から原水管、濾過槽、濾過水管の順に位置しているので、原水は下方から上方へ向け流れることとなり、濾過槽へ流入した原水により濾過水が上方へ押し上げられるようにして排水されるので、濾過槽内での流路に淀み領域が生じにくくなり、円滑な濾過がなされる。
【発明の効果】
【0022】
このような本発明によると、濾過槽の流入室内でフィルタ面に接面して集水口を有する逆洗排水集水管を設け、流出室における圧力よりも低い圧力でこの逆洗排水集水管の集水口による集水を行うことで、逆洗排水集水管の集水口が位置する極く狭い範囲を除いてほぼフィルタの全面で濾過を行いつつ、同時に逆洗を行うことができ、濾過処理効果を向上させ、ひいては、装置の小型化を可能とする、という効果を得る。さらに、これに加え、原水管、濾過槽、濾過水管を下方から順次配置し、複数の濾過槽が原水管そして濾過水管に対して並列に接続されており、濾過槽は上下方向で原水管と濾過水管との間にあって、原水管、濾過槽、濾過水管が一つの鉛直線上に位置しているように、または、原水管が濾過槽の下部側方、そして濾過水管が上部側方にそれぞれ位置しているようにしたので、船床上での設置床面積が小さくてすむと共に、既存の原水管に対して容易に追加工事により濾過槽そして濾過水管を配設することで、装置のコンパクト化を確保しつつ濾過機能を向上させることができ、さらには、濾過槽内では原水が下方から流入し濾過水を押し上げるので、槽内に淀み領域が生じにくく、円滑な濾過が行われる、という効果も得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1(A)は、本発明の一実施形態に係る濾過装置10のフィルタを内蔵する濾過槽と原水管及び濾過水管との配置関係と濾過槽内の原理構造を示す斜視図、
図1(B)は濾過槽と原水管及び濾過水管との配置関係についての変形例を示す側面図であり、
図2は、
図1(A)に示された濾過装置10の正面断面図である。
【0026】
図1(A)において、符号1は海水等の原水を水平方向に送水する原水管であり、その上方に濾過水管2が該原水管1と平行に配置されその下流側で上記原水管1に合流接続されている。上記原水管1と濾過水管2との間の空間には、濾過槽20が、原水管1、濾過槽20、濾過水管2が一つの鉛直線上に位置しているように、また、複数の(図示の例では二つ)の濾過槽20が、並列をなして位置しており、該濾過槽20の流入側となる下部に設けられた原水の流入口27Aが上記原水管1に接続され、流出側となる上部に設けられた濾過水の流出口28Aが上記濾過水管2に接続されている。かくして、本実施形態の濾過装置10は、濾過槽20に設けられたかかる流入口27Aと流出口28Aを備え、該濾過槽20の内部に原水の濾過のための後述のフィルタそしてフィルタの逆洗のための逆洗集水管を有していることで、構成されている。
【0027】
濾過槽20の槽本体は正面(
図1(A)にて原水管1そして濾過水管2の軸線を含む面と平行な面)が長方形形状の直方体外形をなし、前壁(正面と平行で紙面手前側の壁)21、底板22、上板23、右側壁24、左側壁25そして後壁(正面と平行で紙面奥側の壁)26を有している。したがって、
図1(A)で左方に位置している濾過槽20では、紙面に平行で手前側の前壁21は、図示が省略されている。
【0028】
濾過槽20内には、
図2に見られるように、複数のフィルタ11(11a,11b,11c,11d)が鉛直方向に立設され、水平方向に並列に配設されている。フィルタとして、メッシュクロスフィルタ、ウェッジワイヤフィルタ、メンブレンフィルタ等が使用可能であり、濾過対象に対して適切な目開きのものを用いる。該フィルタ11は流入側端(下側端)と流出側端(上側端)で異なる隣接フィルタ同士をそれぞれ連結する流入側連結壁12、そして流出側連結壁13により一体化されている。フィルタ11が縦面をなし、流入側連結壁12そして流出側連結壁13とが横面をなすように断面が矩形波状を呈している。すべてのフィルタ11はその前縁(
図2にて紙面に直角方向で手前に位置する縁)と後縁とが、あるいは該前縁と後縁とを支持するフレームが濾過槽の前壁21と後壁26とにそれぞれ連結されている。かかる上記フィルタ11そして流入側連結壁12そして流出側連結壁13により、フィルタ11に面する空間は、流入側に開口する流入室14と、流出側に開放される流出室15とに、交互に形成される。したがって、該流入室14そして流出室15は前方と後方では上記前壁21と後壁26によりそれぞれ閉塞されている。そして複数の流入側連結壁12のうち左端に位置する流入側連結壁12が濾過槽20の左側壁25と、そして右端に位置する流入側連結壁12が右側壁24と連結されている。その結果、流入室14は流入側にのみ、そして流出室15は流出側にのみ開放されることとなる。
【0029】
濾過槽20内では、流入側連結壁12よりも下方となる流入側の空間が流入室14に連通する流入空間27を形成し、そして流出側連結壁13よりも上方の流出側の空間が流出室15に連通する流出空間28を形成している。流入空間27は、底板22に形成された原水の流入口27Aを経て、原水管1から原水の流入を可能としており、流出空間28は、上板23に形成された濾過水の流出口28Aを経て、濾過水管2への濾過水の流出を可能としている。原水管1には原水の流入口27Aに接続する原水分岐管1Aが設けられており、濾過水管2には濾過水の流出口28Aに接続する濾過水分岐管2Aが設けられている。濾過水管2はその下流端(
図1(A)にて右端)の屈曲接続部2Bで原水管1に接続されている。原水管1には、右側に位置する濾過槽20に接続された原水分岐管1Aの位置と上記屈曲接続部2Bの位置との間の位置に、原水を濾過装置10に送水するように、又は原水を濾過装置10に送らずにそのまま下流側に送水するように、選択的に切り替える原水管ダンパ19が設けられている。また、原水分岐管1Aには原水の流入口27Aと原水管1との間の位置に流入バルブ16が設けられ、濾過水分岐管2Aには濾過水の流出口28Aと濾過水管2との間の位置に流出バルブ17が設けられている。
【0030】
図1(A)そして
図2に見られるように、不純物を含む原水が原水管1から送水され原水流入口27Aを経て供給され、流入空間27を上方に向け矢印A方向に流れ、各流入室14に分かれて流入する。この原水は各流入室14でフィルタ11により濾過されて流出室15へ至り、濾過水として上記矢印Aの上向き流により押し上げられて各流出室15から流出空間28へ矢印B方向に流出し、濾過水の流出口28Aから槽外へ流出され、濾過水管2に送られる。図では、原水の流れを白矢印で、濾過水の流れを黒矢印で示している。
【0031】
かくして、
図1(A)及び
図2の濾過装置10においては、不純物としての固形物を含む原水は原水の流入口27Aから槽内へ流入し、流入空間27を充満して各流入室14へ連続的に流れ込むが、その際、さらに詳述すると、原水はフィルタ11(11a、11b、11c、11d)にて固形物が捕捉されながら該フィルタ11を矢印h方向に透過し、濾過されて濾過水として流出室15へ至る。そして、その後、濾過水は流出空間28を通り濾過水流出口28Aから流出される。このように濾過装置10により、原水中の固形物が捕捉され原水が濾過される。
【0032】
このような濾過装置10は、さらに、
図2に見られるように、流入室14内に、フィルタ11の逆洗のために、フィルタ11に接面して逆洗集水管30が配設されている。
【0033】
この逆洗集水管30自体は、逆洗集水管30の端部斜視図である
図6(A)と断面図である
図6(B)に示されているごとく、該逆洗集水管30の長手方向での端部が閉じられた半円筒管状をなしていて、フィルタ11に接面する側面は平坦板をなし、この平坦板に窓状の集水口31が該逆洗集水管30のほぼ全長にわたり形成されている。逆洗集水管30は、
図3に見られるように、その長手方向で中央部に、前後方向(
図3では横方向)に槽外に向け延びる逆洗排水管33が接続されており、上記集水口31で集水される逆洗排水を槽外へ排出するようになっている。上記逆洗排水管33は、上記前後方向に延びる主管部33hと、該主管部33hから分枝して各逆洗集水管30に接続されている枝管部33vとを有していて、各逆洗管30にてそれぞれの集水口31で集水された逆洗排水は各枝管部33vから主管部33hへ集められて槽外へ排出される形態をなしている。
【0034】
かかる逆洗集水管30を有している濾過装置10では、後述する手段により集水口31における圧力を流出室15における流出側圧力より低くすることにより、その圧力差により、逆洗水が流出室15側から矢印k方向にフィルタ11を通過して集水口31に流入する(
図2参照)。この逆洗水により流入室14側のフィルタ面に捕捉された不純物としての付着物Fが剥離され、集水口31から逆洗集水管30に送られて逆洗が行われる(
図6参照)。
【0035】
逆洗の際には、流出室15内の濾過水の一部が逆洗水としてフィルタ11を通過し逆洗集水管30の集水口31へ流入する。濾過により付着したフィルタ面上の付着物Fはフィルタ11の流出室15側から流入するこの逆洗水によりフィルタ面から剥離されて上記集水口31へ逆洗水と共に集水され、逆洗排水として逆洗排水管33を介し濾過槽外に排出される。上記集水口31が接面しているフィルタ面の部分は該フィルタ面の一部であるが、逆洗集水管30の集水口31を矢印C方向に移動させることでフィルタ面の全面にて上記付着物Fを剥離除去する。
【0036】
本実施形態では、好ましい形態として、
図6(A)、
図6(B)に示されているごとく、逆洗集水管30は、集水口31の周縁に、ブラシ32が植設されている。該ブラシ32は、逆洗集水管30の矢印C方向(
図2参照)への移動によりフィルタ11の面を摺接して、原水に含まれていた固形物であり濾過によりフィルタに付着した付着物Fを掻き取る動作を行う。また、該ブラシ32は、フィルタ11の面に付着した付着物Fに密接して移動され、付着物Fと集水口31との間に隙間が生じることを防ぐ。その結果、流出室15側の圧力と集水口31の圧力との圧力差を確保でき、逆洗水が矢印k方向にフィルタ11を透過して付着物Fを確実にフィルタ11の面から剥離し逆洗することができる。ブラシの代わりにゴムブレードのような弾性体ブレードを用いてもよい。
【0037】
次に、上述の逆洗集水管30のフィルタ11に対する配置構造について説明する。
【0038】
図3は、フィルタと逆洗集水管の配置構造を示す斜視図であり、
図4は、濾過装置10の
図2におけるI-I断面矢視図である。
図5は、濾過装置10の
図2におけるII-II断面矢視図であり、
図5(A)は逆洗時、
図5(B)は逆洗停止時を示している。
【0039】
左右で対向する一対のフィルタ11(例えば11aと11b)の間に形成される流入室14内には、
図3、
図5(A)、
図5(B)に見られるように、流入室14の左側に配置されたフィルタ11a(一部を省略して図示している)の右面に摺接して二つの逆洗集水管30a1と30a2が並列に配設されている。左側のフィルタ11aに接面する該逆洗集水管30a1と30a2の左面は、既述のように、平坦板に窓状の集水口31が逆洗集水管30のほぼ全長にわたり形成されている。一方、流入室14の右側に配置されたフィルタ11bの左面に摺接して二つの逆洗集水管30b1と30b2が並列に配設されている。逆洗集水管30b1と30b2のフィルタ11bに接面する右面は、上記左面における場合と同様に、平坦板に窓状の集水口31が逆洗集水管30のほぼ全長にわたり形成されている。左側のフィルタ11aに接面する二つの逆洗集水管30a1,30a2と右側のフィルタ11bに接面する二つの逆洗集水管30b1,30b2は、前後方向(
図3にて矢印c方向)で同位置にあり、左右方向で対向している。上記逆洗集水管30a1と30a2との間隔、及び逆洗集水管30b1と30b2との間隔は、フィルタ11の前後方向(
図4の左右方向)の長さの略半分になる位置に配設されている。
【0040】
上述の左側の逆洗集水管30a1,30a2そして右側の逆洗集水管30b1,30b2は、既述のごとく、
図3、
図5(A)、
図5(B)に見られるように、逆洗集水管30a1と30b1とが逆洗排水管33の枝管部33v1により連結され、逆洗集水管30a2と30b2とが逆洗排水管33の枝管部33v2により連結され、枝管部33v1と枝管部33v2とが主管部33hにより連結されている。かくのごとく逆洗集水管30a1、30a2、30b1及び30b2とが一体に構成されているので、一つの駆動装置(図示せず)により、複数の逆洗集水管30を同時に二つのフィルタ面に沿って矢印C方向に移動させ、逆洗することができる。
【0041】
また、一つのフィルタに対して少なくとも二つの逆洗集水管を、前後方向で間隔を設けて並列に配設することにより、逆洗集水管を移動させる長さを短くすることができるので、逆洗集水管を移動させる駆動機構をコンパクトにすることができる。
【0042】
逆洗集水管30には、
図2,3,4に見られるように、その長手方向となる上下方向での中央部に逆洗排水管33が接続されており、該逆洗排
水管33によって逆洗排水を槽外へ排出するようになっている。逆洗排水管33は、濾過槽20に形成された前壁21の孔部でシール性を有するようにして該孔部から外部へ引き出される形態とすることが好ましい。あるいは、逆洗排水管33は、
図4に見られるようにシール性をもつと共に逆洗排水管33を鞘管37に挿入する構造として前壁21から外部へ引き出す形態としてもよい。
図4の例については、後述する。
【0043】
図2において、逆洗集水管30は流入室14内にて上下方向に延びた状態でフィルタ11に接面し、該逆洗集水管30の上下方向中央部に逆洗排水管33が接続されている。かかる逆洗集水管30は、
図2では対向する二つのフィルタ11間に形成された一つの流入室14に対してのみ図示されているが、すべての流入室に対して配設されている。
【0044】
原水を流入室14に送水し、濾過水を流出室15から流出するポンプの作動により、流出室15内では圧力p1を有している(
図2参照)。一方、逆洗排水管33の排出口は槽外で大気開放されているので、逆洗集水管30の集水口31における圧力p2(
図6参照)は、流出室15内の圧力p1よりも低くなり、
図2に見られるように、流出室15内の濾過水の一部がフィルタ11を矢印k方向に透過して、逆洗水として集水口31から逆洗集水管30へ集水される。すなわち、フィルタ11の流入室14側の面に付着した付着物(原水中の不純物としての固形物)が、流出室15からフィルタ11を透過する逆洗水によってフィルタ面から剥離されて上記逆洗集水管30の集水口31へ送られる。このように逆洗を行う上記逆洗集水管30は、
図3,4,5(A),5(B)にて矢印C方向、すなわち逆洗集水管30の長手方向に対して直角な方向に、駆動手段(図示せず)により移動されるので、その移動中に、逆洗集水管30のブラシ32がフィルタ11上の付着物を掻き取り、該付着物は掻き取られた直後に、上述のように、上記集水口31へ吸い込まれる。かくして、逆洗集水管30を移動させながら逆洗することによって、フィルタ11はその全面で付着物が除去される。
【0045】
次に、上述の逆洗排水管33についての変形例を
図4にもとづき説明する。
図4は、
図2におけるI-I断面矢視図である。
図4において、逆洗集水管30b1、30b2に接続された逆洗排水管33は、逆洗集水管30の長手方向(上下方向)に対して直角でフィルタ11の面に平行な方向(前後方向)に延びる直管として形成されている。逆洗排水管33は、槽外へ延出していて槽外で二つのシール部材35,36によってシール状態で摺動自在に支持されている。一方のシール部材35は濾過槽20の前壁21に取り付けられた筒体34内で支持されており、他方のシール部材36は鞘管37の内壁で支持されている。該鞘管37は複数の他の逆洗排水管33をシール部材36を介して支持しており、該鞘管37は、該鞘管37からの逆洗排水を集める逆洗排水集合管38に接続されている。該逆洗排水集合管38は、一般的にはその排出口が大気開放されていて、系外に逆洗排水が排出される。流入室14へ流入する原水の圧力が低い場合には、流出室15内の圧力p1と逆洗集水管30の集水口31における圧力p2との圧力差が確保できないため、流出室15側からフィルタ11を透過して逆洗集水管30の集水口31に流入する逆洗水が十分に得られない。このような場合には、
図4に見られるように、該逆洗排水集合管38に集水ポンプなどの吸引装置39を接続し、上記圧力差を確保できるようにする。つまり、逆洗排水集合管38は、流入室14へ流入する原水の圧力が高く流出室15内の圧力p1が十分に高い場合は、その排出口を大気開放とし、原水の圧力が低くて流出室15内の圧力p1が十分に高くならない場合は、吸引装置39を設け、逆洗排水を集水する集水口における圧力p2が流出室15内の圧力p1に対してp2<p1の関係を確保する。
【0046】
逆洗排水管33は、既述のごとく、図示しない駆動手段に接続されていて、その長手方向に矢印C方向で往復駆動されるので、逆洗排水管33に接続されている逆洗集水管30も同方向に移動してフィルタ11の全面で逆洗を行うこととなる。
【0047】
図3,4,5(A),5(B)の形態では、既述のように、一つのフィルタに対して二つの逆洗集水管を、間隔を設けて並列に配設することにより、逆洗集水管を移動させる長さを短くして、逆洗集水管を移動させる駆動機構をコンパクトにすることができるが、一つのフィルタに対して、一つの逆洗集水管を配設するようにしてもよい。
【0048】
既述の
図3,4に示された例では、一つの流入室14において対向する二つのフィルタ11に対しそれぞれ逆洗集水管30を設け、一つの逆洗排水管33に連結し一体構造として、駆動手段により逆洗集水管30を同時に往復駆動させることにより、逆洗排水管や駆動手段の構造を簡単にすることとしたが、さらに、複数の流入室14のフィルタ11に対し設けた複数の逆洗集水管30を、一つの逆洗排水管33に連結し一体構造とし、駆動手段により逆洗集水管30を同時に往復駆動させるようにしてもよい。このようにすることにより、逆洗排水管や駆動手段の構造をさらに簡単にすることができる。
【0049】
図2,3,4,5(A),5(B)の形態では、逆洗集水管30の長さ方向(上下方向)の中央部に逆洗排水管33を接続しているが、逆洗排水管33の接続位置はこれに限らず、逆洗集水管30の流入側端部(図にて下端部)、流出側端部(図にて上端部)でもよいことは言うまでもない。
【0050】
逆洗集水管30の集水口31は窓状の開口であるが、開口の形状を逆洗排水管33との接続部付近すなわち
図3では、逆洗集水管30の長手方向中央部では幅広に、そしてこの接続部から離れた位置(すなわち
図3では、上記長手方向での端部)では幅狭にすることにより開口の大きさに変化をもたせて、フィルタの何れの位置においても集水圧を一定となるようにして、どこで付着した付着物も、もれなく集水することができるようになる。
【0051】
さらに、本実施形態において、逆洗時と逆洗停止時とを、逆洗排
水管にバルブを設けることなく、簡単に切り替えられるようにすることもできる。この切り替えを行うことを目的として、
図4,5(A),5(B)の形態では、フィルタ11は、該フィルタ11の前方端部と前後方向中央部とに、逆洗水を透過させない閉鎖部40a1,40a2、40b1,40b2が形成されている。該閉鎖部は逆洗水を透過させないように、フィルタの開き目を封ずるように封止材を塗布し硬化させて形成できるし、蓋材で覆うようにしても形成できる。こうすると、逆洗時には、
図5(A)に示すように、逆洗集水管30を閉鎖部40a1,40a2、40b1,40b2の位置以外でフィルタ面上を移動させ、逆洗水を矢印k方向にフィルタを透過させてフィルタの付着物を逆洗する。逆洗集水管30が接していないフィルタ面では原水を矢印h方向にフィルタを透過させ濾過を行う。次に、逆洗停止時には、
図5(B)に示すように、逆洗集水管を閉鎖部40a1,40a2、40b1,40b2の位置に留め、フィルタにて逆洗水を透過させずに逆洗を停止し、閉鎖部以外の部分で原水を矢印h方向にフィルタを透過させ濾過を行う。このように、フィルタに逆洗水を透過させない閉鎖部を設け、逆洗停止時には逆洗集水管を閉鎖部の位置に留め
るようにすることにより、逆洗排水の通水を閉止させるので、逆洗停止用のバルブを逆洗排水管に設ける必要がなくなり、その分、部品点数が減ると共に、逆洗排水管をコンパクトにでき、装置費用を廉価にできる。特に、複数の流入室のそれぞれに逆洗集水管を設け、逆洗排水管を多数設ける場合には、設備が簡略にでき装置費用を廉価にできる効果が高い。
【0052】
さらに、
図4の形態では、濾過槽20の後壁26のフィルタ11位置に相当する位置に窓部41が形成されており、その周囲縁に形成されたフランジ部42に蓋部材43が取り外し自在に設けられている。上記窓部41はフィルタ11の取出しに十分な大きさとなっており、濾過装置の運転停止時に、蓋部材43を外すことにより、上記窓部41を通してフィルタ11の交換が可能となっている。
【0053】
図1(A)の形態では、既述のように、濾過装置10は原水管1の直上方に設けられている。かかる濾過装置10を用いて原水を濾過する場合には、原水管ダンパ19を閉めると共に、流入バルブ16と流出バルブ17を開け、原水管1から原水を濾過装置10に流入させ濾過を行う。濾過装置10を原水管1の直上方に設けることにより、濾過装置を設置する船床上のスペースが少なく設置床面積を最小限にできる。また、濾過装置10を原水管1の直上方に配設したことにより、原水は上方に向って流入する結果、濾過装置10の上部に生成される濾過水を流入原水の圧力によって上方に押し上げて流出させるので、濾過槽内に淀み部分が生じにくく、円滑な濾過がなされる。
【0054】
このような
図1(A)の実施形態では、濾過装置10はその濾過槽20が上下方向で原水管1と濾過水管2との間にあって、原水管1、濾過槽20、濾過水管2が下方から順に一つの鉛直線上に位置していることとしたが、本発明では、このような配置に限定されず、
図1(B)に示されるごとく、原水管1は濾過槽20の下部側方、そして濾過水管2が上部側方にそれぞれ位置していることとしてもよい。
【0055】
要は、原水管1、濾過槽20、濾過水管2が一つの鉛直線上に位置していなくとも、互いに側方にずれていても、下方から順に位置していればよい。
【0056】
本発明の濾過装置により、濾過装置をコンパクトにできる具体例を、以下に示す。本発明の
図1(A)、
図2に示す濾過装置では原水送水ポンプ(図示せず)により原水管内の原水を加圧して濾過装置に対して上方に向け送水し、フィルタ面の流入側と流出側の圧力差を1.0m水柱程度と大きくできる。フィルタを透過する水の流速は圧力差の1/2乗に比例するので、本発明の濾過装置では、流出側が大気圧に開放されているが故に流入側の圧力を大きくできない、特許文献1として説明した従来技術に比べて数倍の流速で、かつ淀みを伴わない流れで濾過することができ、処理水量を大幅に増大できる。
【0057】
また、本発明の濾過装置と同じ水量を処理する上記従来技術の濾過装置に比べて、本発明の濾過装置は、フィルタ面積を20%程度に減少でき、濾過装置をコンパクトにできる。さらに、原水を加圧して上方に向けて送水するため、流出室におけるフィルタの流出側の圧力と、流入室の逆洗集水管の集水口の圧力との圧力差を十分な大きさに確保でき、流出側の流れを押し上げるようにして流出させるので、淀みがなく、フィルタの濾過付着物を確実そして容易に逆洗洗浄できる。
【0058】
また、本発明によれば、原水管、濾過槽、濾過水管を下方から順に位置せしめると共に、流入室内でフィルタ面に接面して集水口を有する逆洗集水管を設け、この逆洗集水管の集水口における圧力を流出室における流出側圧力よりも低い圧力として、この逆洗集水管の集水口による逆洗水の集水して逆洗を行うことができ、また、逆洗集水管の集水口が位置する極く狭い範囲を除いてほぼフィルタの全面で濾過を行うことができるので、濾過処理効果を向上させるのみならず、濾過装置自体の小型化そして船床上での濾過装置の設置面積を小さくすることを可能とする。
【0059】
次に、本発明の他の実施形態として、逆洗用として、逆洗集水管のみならず、フィルタを挟んで逆洗集水管と対向して位置する逆洗給水管を設け、そして該逆洗給水管へ逆洗水を送水する逆洗送水管を有している濾過装置について
図7そして
図8にもとづき説明する。
【0060】
図7は、本実施形態に係る濾過装置10の正面断面図、
図8は
図7におけるIII-III断面矢視図である。なお、この
図7、
図8に示される濾過装置10は、
図2、
図5(A)、
図5(B)に示された前実施形態の濾過装置10に逆洗給水管41、逆洗送水管43を追加した形態をなしている点で特徴があり、それ以外で
図2、
図5(A)、
図5(B)と共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図7そして
図8に示される本実施形態にあっては、流出室15内に、フィルタ11に接面して給水口(図示せず)が形成された逆洗給水管41を、フィルタ11を挟んで、逆洗集水管30と対向する位置で、フィルタの面上を移動可能に設けると共に、濾過槽20外から入り上記逆洗給水管41に接続する逆洗送水管43を設けている。逆洗送水管43は濾過槽20外から逆洗水を逆洗給水管41に送水し、逆洗給水管41は、上記給水口から逆洗水を流出室側15から流入室14側へ矢印k方向にフィルタ11を通過して流入せしめる。さらに、逆洗給水管41は、流入室14側で流入する逆洗水を受け入れる逆洗集水管30の移動に同期して矢印E方向に移動し、常時、逆洗集水管30と対向する位置を維持している。
【0062】
この逆洗給水管41自体は、逆洗集水管30と類似の形状をなし、その長手方向での端部が閉じられた半円筒管状をなしていて、フィルタ11に接面する面は平坦板に窓状の給水口が該逆洗給水管41のほぼ全長にわたり形成されている。逆洗給水管41はその長手方向中央部に逆洗送水管43が接続されており、濾過槽20外から逆洗水を受け入れるようになっている。この逆洗送水管43には送水ポンプ等(図示せず)により加圧された逆洗水が送水される。
【0063】
このような逆洗給水管41を設けることとした本実施形態では、逆洗水を逆洗給水管41により流出室15側からフィルタ11を通過して流入室14側へ流入せしめ、逆洗集水管30の集水口31で逆洗水を受け入れるようにすることで、逆洗水により流入室15側のフィルタ面に捕捉された付着物をフィルタ面から剥離せしめ、剥離した付着物を排出して、さらに確実に逆洗することができる。
【0064】
すなわち、逆洗給水管を用いずに流出室側の圧力として流出室の濾過水の圧力を用いる場合に比べて、本実施形態のように逆洗給水管により給水口から逆洗水を給水する場合の方が、流出室側の圧力と集水口の圧力との圧力差を大きくでき、付着物をフィルタ面から剥離することを容易に行うことができ、十分に逆洗することができる。
【0065】
図8に示される形態にあっては、濾過槽20内で最も左側に位置する流出室15では、右側位置に配置されたフィルタ11aの左面に摺接して逆洗給水管41a1と41a2が並列に配設されている。逆洗給水管41a1と41a2がフィルタ11aに接面する右面には、平坦板に窓状の給水口が逆洗給水管41のほぼ全長にわたり形成されている。逆洗給水管41a1と41a2との間隔は、フィルタ11の前後方向(
図8では上下方向)の長さの略半分になるように設定されている。
【0066】
同様に、中央に位置する流出室15では、左側のフィルタ11bに対して接面するように逆洗給水管41b1と41b2とが並列に配設され、右側のフィルタ11cに対しては逆洗給水管41c1と41c2とが並列に配設され、濾過槽20内で最も右側に位置する流出室15では、左側に配置されたフィルタ11dの右面に接面して逆洗給水管41d1と41d2とが並列に配設されている。
【0067】
かかる形態にあっては、フィルタを挟んで、逆洗給水管と逆洗集水管とを、前後方向(矢印E方向)での同一位置にて互いに対向状態を保つように、同期させて上記前後方向に移動させる。
【0068】
上記給水口と集水口が接面しているフィルタ面の部分は該フィルタ面の一部であるが、逆洗給水管の給水口と逆洗集水管の集水口を矢印E方向に移動させることにより、フィルタ面の全面にて上記付着物を剥離除去するようになる。
【0069】
また、一つのフィルタに対して少なくとも二つの逆洗給水管を、間隔を設けて並列に配設することにより、逆洗給水管の移動距離を短くすることができるため、逆洗給水管を移動させる駆動機構をコンパクトにすることができる。
【0070】
また、一つの流出室において対向する二つのフィルタのそれぞれに逆洗給水管を設け、それぞれの逆洗給水管を連結して一体に構成するようにすると、一つの駆動装置により、対向する二つのフィルタの逆洗給水管を同時にフィルタ面に沿って移動させ、逆洗することができる。
【0071】
次に、本発明の他の実施形態として、既述の濾過装置を有するバラスト水処理装置について、
図9にもとづき説明する。
【0072】
図9は、本実施形態に係るバラスト水処理装置50の概要構成図である。なお、
図9にて符号60は該バラスト水処理装置50を備える船舶、61は該船舶60の機関室、そして70はバラストタンク、さらに、80は海を示している。
【0073】
図9にて、バラスト水処理装置50は、海水取入ライン51と、海80から海水を該海水取入ライン51に取り入れるための海水取水口52と、該海水取入ライン51の途中に取り付けられたポンプ53と、このポンプ53の吐出側に取り付けられた濾過装置10と、この濾過装置10に取り付けられ濾過済みのバラスト水を該濾過装置10からバラストランク70に送るバラスト水送水ライン56と、バラスト水送水ライン56の途中に取り付けられたインジェクタ55と、このインジェクタ55に殺菌剤を供給する殺菌剤供給装置54と、濾過装置10に取り付けられ該濾過装置10から逆洗水を排水するための逆洗排水管57と、逆洗
排水管57の末端に設けられた逆洗排水放流口58とを備えている。
【0074】
このように構成されたバラスト水処理装置50を用いて、バラスト水の積込み時に細菌類やプランクトンの死滅処理を行うバラスト水の処理方法について説明する。
【0075】
<バラスト水の取水及び排水>
バラスト水の積込み時には、ポンプ53を稼動して海水取水口52から海水取入ライン51を介し海水を船内に取り入れ、この海水を濾過装置10に供給して濾過装置10のフィルタで濾過しプランクトンを除去する。濾過装置10で濾過された海水に殺菌剤供給装置54によりインジェクタ55から殺菌剤を供給し、濾過された海水中の細菌を殺菌剤により死滅させる。
【0076】
プランクトンの除去と細菌の死滅の処理が終わったバラスト水を、バラスト水送水ライン56を介してバラストタンク70に送る。バラストタンク70は、処理後のバラスト水を貯留する。濾過装置10から逆洗水が、逆洗排水管57を介して逆洗排水放流口58から海に放流される。上記バラストタンク70内の処理済みのバラスト水は、バラスト水を排出する場所で海に排出される。
【0077】
<海水の濾過>
取水された海水は濾過装置10で濾過されてからバラストタンク70へ送られる。上記
濾過装置10は、海水取入ライン51から原水として海水を受け入れ、バラスト水送水ライン56に濾過した海水を排出してバラストタンク70へ送る。濾過装置10と殺菌剤供給装置54は、船舶60の機関室61内に設置されている。濾過装置10を、海水取入ライン51及びバラスト水送水ライン56を構成する送水配管の上方位置に設置されていて、濾過装置10は船床上での設置面積を濾過装置10のために追加的に拡張することなく小さくでき、設置スペースに制約の多い機関室内に濾過装置10を容易に設置することができる。
【0078】
<バラスト水の殺菌処理>
バラスト水処理装置50は、濾過装置10により海水を濾過して海水中のプランクトンなど水生生物を捕捉して除去し、濾過されプランクトンなどを除去した海水中に殺菌剤を供給して、細菌を死滅処理して、バラスト水処理基準を充足する水質とした後に、この処理済みの海水を、バラストタンク70へバラスト水として供給する。ポンプ53は、海水を取水して濾過装置10へ供給し、濾過装置10での濾過後の海水をバラストタンク70に送水し、バラストタンク70内に貯留する。バラストタンク70内に貯留されるバラスト水には、殺菌剤供給装置54で供給された殺菌剤が、適切な濃度で残存することが好ましい。これにより、バラストタンク70内に貯留中に細菌類やプランクトンの再成長を抑制することができる。
【0079】
<濾過装置の逆洗>
一方、濾過装置10で捕捉されたプランクトン等は、濾過装置10のフィルタを逆洗することによりフィルタから除去され、逆洗
排水管57、逆洗排水放流口58を介して海に戻される。海に戻しても同一の海域なので生態系に悪影響はない。つまり、バラスト水を積み込む際に処理をしているので、濾過装置10の逆洗水をそのまま放流できる。
【0080】
このような構成を備えた本実施形態のバラスト水処理装置によると、海中から海水をバラストタンクに注水するときに、海水中のプランクトンを除去し、細菌類を死滅して、有害生物を含まないバラスト水を供給することができる。そして、バラストタンクからバラスト水を海中に排水するときに、バラスト水は有害生物を含まないため、外来生物や伝染性の病原菌の移動を抑制することができ、環境への悪影響を及ぼさない。
【0081】
また、このようなバラスト水処理装置において、濾過装置を用いて海水中のプランクトン等比較的大型の水生生物を捕捉して除去することにより、殺菌剤により死滅させる生物の量を著しく低減できるので、濾過することなく海水へ殺菌剤を供給するだけの場合に比べて殺菌剤の供給量を大幅に低減できる。供給する殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、二酸化塩素、シアヌル酸塩、過酸化水素、オゾン、過酢酸、またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
【0082】
上述したように、本実施形態では、濾過装置を小型にできるので、バラスト水処理装置をコンパクトにでき、設置スペースに制約の多い船舶の機関室内にバラスト水処理装置を配設することが容易にできる。
【0083】
なお、上述した例でのバラスト処理装置では、細菌を死滅させるために殺菌剤供給装置を設け、殺菌剤を海水中に供給するようにしているが、殺菌剤供給装置の代わりに、濾過装置で濾過された海水に紫外線を照射し細菌を死滅させる紫外線照射装置(紫外線ランプ)をバラスト水送水ラインに設けてもよい。
【0084】
このように本発明に係るバラスト水処理装置によれば、海水を濾過して水生生物を捕捉する濾過装置と、海水中の細菌類を死滅させる殺菌剤を濾過された海水中に供給する殺菌剤供給装置と、海水を取水し濾過装置を経てバラストタンクに海水を送水するポンプとを備えることにより、従来方法の方法では達成が難しかったバラスト水処理基準を、安価で確実に達成する処理が可能となり、外来生物や伝染性の病原菌の移動を抑制することが可能となる。さらに、バラスト水処理装置をコンパクトにでき、設置スペースに制約の多い船舶の機関室内にバラスト水処理装置を配設することが容易にできる。
【0085】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。