特許第6129743号(P6129743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129743アームバンド及びそのアームバンドを操作する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129743
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】アームバンド及びそのアームバンドを操作する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/145 20060101AFI20170508BHJP
   A61B 5/15 20060101ALI20170508BHJP
   A61B 5/022 20060101ALN20170508BHJP
   A61B 5/05 20060101ALN20170508BHJP
【FI】
   A61B5/14 310
   A61B5/14ZDM
   !A61B5/02 631A
   !A61B5/05 Z
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-540287(P2013-540287)
(86)(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公表番号】特表2013-543777(P2013-543777A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】EP2011069033
(87)【国際公開番号】WO2012069281
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年10月28日
(31)【優先権主張番号】10192472.8
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513127984
【氏名又は名称】エッシー−イーデー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EESY−ID GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】513127995
【氏名又は名称】フリードリヒ−アレクサンダー−ウニベルシタット アーリンゲン−ニュルンベルク
【氏名又は名称原語表記】FRIEDRICH−ALEXANDER−UNIVERSITAT ERLANGEN−NURNBERG
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ゲオルク
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−233284(JP,A)
【文献】 特表2009−514619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームバンド(100、200、300)であって、
腕の1の血管内の血液の血球数パラメータを検出する検出装置(101、201、301)であり、広帯域信号を前記血管に注入する伝送器(601、1101)を有する検出装置(101、201、301)と、
前記腕の前記アームバンドの規定の接触圧を調整する調整装置(103、203、303)と、を含み、
前記調整装置(103、203、303)は、少なくとも前記検出装置(101、201、301)による前記血球数パラメータの検出中、前記規定の接触圧に前記アームバンドの前記接触圧を調整するよう構成される、アームバンド。
【請求項2】
前記調整装置(203、303)には、前記腕上の前記アームバンド(200、300)の最新の接触圧を測定するセンサ装置(205、305)及び前記測定された最新の接触圧に応じて前記規定の接触圧を調整する制御装置(207、307)がある、請求項に記載のアームバンド。
【請求項3】
前記センサ装置(205、305)は、前記アームバンド(200、300)の内側(209、309)に構成される、請求項に記載のアームバンド。
【請求項4】
前記アームバンド(100、200、300)は膨張式アームバンドとして構成される、請求項1又は2に記載のアームバンド。
【請求項5】
前記調整装置(303)には、前記規定の接触圧を調整するために前記アームバンド(300)を膨張させるよう構成される空気ポンプ(311)がある、請求項1〜のいずれか1項に記載のアームバンド。
【請求項6】
前記調整装置(303)は、前記腕上の前記アームバンド(300)の最新の接触圧を測定するセンサ装置(305)、測定された前記最新の接触圧に応じて制御信号を提供する制御装置(307)及び前記アームバンド(300)を膨張させる、提供された前記制御信号により制御される空気ポンプ(311)を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のアームバンド。
【請求項7】
前記検出装置(401)は、少なくとも1つの高周波信号を前記血管に注入するよう構成される電極(403、405)を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のアームバンド。
【請求項8】
前記調整装置(103、203、303)は、前記腕上の前記電極(403、405)の前記接触圧を前記規定の接触圧に調整するよう構成される、請求項に記載のアームバンド。
【請求項9】
前記調整装置(103、203、303)は、前記検出装置(101、201、301)による前記血球数パラメータの検出中、前記アームバンド(100、200、300)の前記接触力を前記腕に均一に分散させるよう構成される、請求項1〜のいずれか1項に記載のアームバンド。
【請求項10】
前記調整装置(103、203、303)は、前記検出装置(101、201、301)による前記血球数パラメータの検出中、前記アームバンド(100、200、300)が均一に接触できるように構成される、請求項1〜のいずれか1項に記載のアームバンド。
【請求項11】
前記調整装置(103、203、303)は、前記検出装置(101、201、301)による前記血球数パラメータの検出中、前記アームバンド(100、200、300)の前記接触圧を一定に維持するよう構成される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のアームバンド。
【請求項12】
前記規定の接触圧を提供するための記憶媒体をさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のアームバンド。
【請求項13】
少なくとも1つの前記血球数パラメータは、前記血液中のグルコース濃度、乳酸塩濃度又は酸素濃度を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のアームバンド。
【請求項14】
請求項1に記載のアームバンドを操作する方法(501)であって、
広帯域信号を前記血管に注入して前記血球数パラメータを、検出装置により検出する工程と、
前記腕上の前記アームバンドの規定の接触圧を、調整装置により調整する工程(503)と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1の血管内を流れる血液中の血液成分、例えば糖の濃度を検出するための分野に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、1の血液成分の濃度等の血球数パラメータを同定するために侵襲的に血液を採取しうる。そして、血球数パラメータは、採取した血液を用いて標準化試験紙により同定できるが、その電気抵抗値は血液成分、例えば血糖値に依存する。例えば、試験紙の電気抵抗値を検出するための直流抵抗測定を行う血糖測定機器を用いて電気抵抗値を各々検出できる。抵抗値は、血糖濃度と抵抗値のそれ自体が公知の関係に基づき、血糖濃度に変換されうる。検出精度を高めるため、各試験紙は、較正データ、例えば基準抵抗値又は対応するコードと共に提供されることにより試験紙の特性のばらつきが補正されうる。しかし、侵襲的な手法の欠点は、血液を採取しなければならず、そのため患者を傷つけることである。さらに、例えば日内変動曲線を測定するために血液成分の濃度を持続的に検出することは困難である。その上、食物摂取と、例えば血糖増加までの時間的遅延を侵襲的手法で正確に検出することはできない。また、血中血糖濃度が低い場合は特に、患者にインスリンを投与する時間を正確に同定できない。
【0003】
例えば、血液中の物質濃度又は物質組成等の血球数パラメータを同定するための非侵襲的方法としてマイクロ波分光法を用いうる。血球数パラメータを検出するマイクロ波分光法は、血液が潅流する組織にマイクロ波信号を注入させ、注入したマイクロ波エネルギーの周波数依存性の吸収を検出することに基づく
非特許文献1は、マイクロ波を用いた血球数パラメータ同定の多電極構成を記載する。多電極構成には電極間隔が異なる複数個の電極対が含まれ、これにより異なるマイクロ波信号が侵入(Eindringtiefe)しうる。血球数パラメータの検出は、インピーダンス測定、つまり1ポート測定により行われ、インピーダンスミスマッチのために誤差が生じうる。侵入が異なると、場合により毛細血管と静脈の血液を区別できず、測定結果が歪曲されうる。一般に、静脈血の血球数パラメータの測定は毛細血管血液の血球数パラメータの測定よりも正確であるが、これは例えば、毛細血管血液中の血糖の変化が静脈血に比べて遅いためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Andreas Caduff et al., “Non-invasive glucose monitoring in patients with Type 1 diabetes: A multi-sensor system combining sensors for dielectric and optical characterization of skin”, Biosensors and Bioelectronics 24 (2009) 2778-2784
【非特許文献2】Buford Randal Jean et al., “A microwave frequency sensor for noninvasive blood-glucose measurement”, SAS 2008 -IEEE Sensors Applications Symposium, Atlanta, GA, February 12-14, 2008
【非特許文献3】M. McClung, “Calibration methodology for a microwave non-invasive glucose sensor”, Master Thesis, Baylor University, Mai 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献2及び非特許文献3は、さらに、血糖濃度の同定のための電極構成を記載する。本文献では、血液の誘電特性が血糖値に依存することを用いる。マイクロ波センサに親指を押しつけると、共振器の離調により親指の比誘電率の変化が測定される。しかし、親指の接触圧により血液が移動するために正確な測定結果が得られない。さらに、測定を持続することができない。また、血糖含有量同定のための測定データの評価は各患者に依存するため、他の患者に対する再現性がない。そして、当該方法ではマイクロ波電力の侵入を制御できず、毛細血管と静脈の血液を区別できない。さらに、比誘電率の変化は1ポート測定に基づいて行われ、ミスマッチの影響を受けやすい。
【0006】
本発明の目的は、侵襲的同定ではない、血管を循環する血液中の血球数パラメータ、特に血糖値を、マイクロ波を用いて測定する効率的な概念の提供である。
【0007】
本目的は独立請求項の特徴により達成される。有利な発展形が従属請求項の主題である。
【0008】
本発明は、検出装置を備えるアームバンドが所定又は規定の接触圧で測定中に腕に押し付けられていれば、検出装置を備えるアームバンドによる血球数パラメータの測定又は検出が再現性のある方法で提供されうるという発見に基づく。規定の接触圧を提供するため、アームバンドは検出装置及び調整装置を備える。調整装置は、少なくとも検出装置による血球数パラメータの検出中に、所定又は規定の接触圧を設定しうるように構成される。
【0009】
検出装置及び調整装置を備えるアームバンドは、患者の腕、特に手首に装着されるよう構成される。
【0010】
特に、手首のこの場所は患者の自由な動きを妨げない。さらに、患者の当該箇所は従来の血圧測定器具用で既に確立されている。手首にアームバンドを装着する他の利点は、通常はこの位置で脈拍があり、皮膚が薄く、誤差原因が軽減されうることである。さらに、血球数パラメータの検出中にアームバンドを圧迫すると、検出装置が調節したマイクロ波の技術的設定を変化させる空隙が発生するのが妨げられる。規定の接触圧でアームバンドを圧迫することにより、アームバンドを各患者の骨格に適合させうる。
【0011】
検出装置及び調整装置を備えるアームバンドを用いて、血球数パラメータを持続的に監視しうる。上記のように当該血球数パラメータの例は血糖濃度である。血糖濃度を持続的監視できれば、食事の摂取と血糖の上昇の間の遅延時間を同定しうる。さらに、患者の日課変動に極めて迅速に反応しうる。特に、高血糖又は低血糖になると、警告が迅速に起動されうる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1態様では、腕の血管内の血液の血球数パラメータを検出する検出装置及び腕上のアームバンドの規定の接触圧を調整する調整装置があるアームバンドが供される。
【0013】
1の実施形態では、調整装置は、少なくとも検出装置による血球数パラメータの検出中、規定の接触圧にアームバンドの接触圧を調整するよう構成される。
【0014】
1の実施形態では、調整装置には、腕上のアームバンドの最新の接触圧を測定するセンサ装置及び測定された最新の接触圧に応じて規定の接触圧を調整する制御装置がある。
【0015】
1の実施形態では、センサ装置はアームバンドの内側に構成される。
【0016】
1の実施形態では、アームバンドは膨張式アームバンドとして構成される。
【0017】
1の実施形態では、調整装置には、規定の接触圧を調整するためにアームバンドを膨張させるよう構成される空気ポンプがある。
【0018】
1の実施形態では、調整装置は、腕上のアームバンドの最新の接触圧を測定するセンサ装置、測定された最新の接触圧に応じて制御信号を提供する制御装置及びアームバンドを膨張させる、提供された制御信号により制御される空気ポンプを含む。
【0019】
1の実施形態では、検出装置は、少なくとも1つの高周波信号を血管に注入するよう構成される電極を含む。
【0020】
1の実施形態では、調整装置は、腕上の電極の接触圧を規定の接触圧に調整するよう構成される。
【0021】
1の実施形態では、調整装置は、検出装置による血球数パラメータの検出中、アームバンドの接触力を腕に均一に分散させるように構成される。
【0022】
1の実施形態では、調整装置は、検出装置による血球数パラメータの検出中、アームバンドが均一に接触できるように構成される。
【0023】
1の実施形態では、調整装置は、検出装置による血球数パラメータの検出中、アームバンドの接触圧を一定に維持するよう構成される。
【0024】
1の実施形態では、アームバンドは、規定の接触圧を提供するための記憶媒体をさらに含む。
【0025】
有利には、記憶媒体に保存された規定の接触圧が調整されうる。異なる患者ごとに異なる接触圧を予め規定しうる。
【0026】
1の実施形態では、少なくとも1つの血球数パラメータは、前記血中のグルコース濃度、乳酸塩濃度又は酸素濃度を含む。
【0027】
1の実施形態では、検出装置は伝送器、受信器、損失検出器及びプロセッサを含む。伝送器は第1周波数の第1伝送信号及び第2周波数の第2伝送信号を血管内に注入するよう構成される。受信器は、第1周波数による第1受信信号を、第2周波数による第2受信信号を受信するよう構成される。損失検出器は、第1伝送信号及び第1受信信号に基づいて第1損失変数を同定するよう構成される。損失検出器はさらに、第2伝送信号及び第2受信信号に基づいて第2損失変数を同定するよう構成される。プロセッサは、損失変数がより大きい周波数に応じた血液成分の緩和時間定数(τ)を測定するよう構成される。
【0028】
特に、プロセッサは、第1損失変数が第2損失変数よりも小さくない場合、第1周波数に応じて血液成分の緩和時間定数(τ)を定めるか又は第2損失変数が第1損失変数よりも小さくない場合、第2周波数に応じて血液成分の緩和時間定数(τ)を同定するよう構成される。
【0029】
1の実施形態では、検出装置は、第1周波数の第1伝送信号及び第2周波数の第2伝送信号を血管内に注入するよう構成される伝送器と、第1周波数による第1受信信号を、第2周波数による第2受信信号を受信するよう構成される受信器と、第1の伝送信号及び第1周波数による第1受信信号に基づいて第1損失変数を同定し、第2の伝送信号及び第2周波数による第2受信信号に基づいて第2損失変数を同定するよう構成される損失検出器と、第1の基準損失変数に対する第1の損失変数の第1の周波数シフトを同定し、第2の基準損失変数に対する第2の損失変数の第2の周波数シフトを同定し、第1の周波数シフト及び第2の周波数シフトに基づいて血球数パラメータを同定するよう構成構成されるプロセッサを含む。
【0030】
第1基準損失変数及び第2基準損失変数は、例えば、実験又は測定に基づき予め同定されうる。例えば、第1損失変数及び第2損失変数が吸収線である場合、第1基準損失変数及び第2基準損失変数は、例えばある濃度の血液成分、例えば血糖含有基準水溶液による吸収線であってよい。
【0031】
1の実施形態では、本発明は、血管内の血液の血球数パラメータを検出する検出装置に関し、少なくとも1つの伝送信号を発信するための多数の伝送アンテナ付き伝送器、少なくとも1つの受信信号を受信するための多数の受信アンテナ付き受信器、多数の伝送アンテナのうちの1つの伝送アンテナ、多数の受信アンテナのうちの1つの受信アンテナを含む第1検出構成を選択し、多数の伝送アンテナのうちの1つの伝送アンテナと多数の受信アンテナのうち1つの受信アンテナを含む第2検出構成を選択するよう構成されるプロセッサ、伝送信号を発信するために第1検出構成が選択された場合、伝送信号及び受信信号に基づいて第1損失変数を検出するように構成され、伝送信号を発信するために第2検出構成が選択された場合は、伝送信号及び受信信号に基づいて第2損失変数を検出するよう構成される損失検出器があり、プロセッサは、血球数パラメータを検出するために損失変数がより低い検出構成を選択するよう構成される。
【0032】
好ましくは、各検出構成を選択すると血管が励起され、伝送信号は、例えば血管方向へ発信される。伝送信号が受信形態である受信信号に基づき、また伝送信号に基づき、例えば、伝送アンテナ及び受信アンテナを含むアンテナ対を、最小の注入損失と結合される検出構成として選択しうる。注入損失は、例えば、上記損失変数、例えば吸収線又は減衰の比較に基づいて検出されうる。
【0033】
本発明の1態様では、腕の血管内の血液の血球数パラメータを検出する検出装置を備えるアームバンドを操作する方法が供され、腕上のアームバンドの規定の接触圧が調整される。
【0034】
他の典型的な実施形態は、添付の図面を参照して説明される。以下に詳細を示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】アームバンドの概略ブロック図である。
図2】アームバンドの典型的な実施形態の一部の概略ブロック図である。
図3】アームバンドの一部の概略ブロック図である。
図4】検出装置の電極の構成の概略ブロック図である。
図5】アームバンドを操作するための方法の概略フロー図である。
図6】検出装置の概略ブロック図である。
図7】周波数に依存する実数の比誘電率ε’及び複素誘電率ε”を示す図である。
図8】緩和時間定数(τ)と血糖値の関係を示す図である。
図9】通信装置を備える検出装置の概略ブロック図である。
図10】血管内血液の血球数パラメータを検出する方法の概略フロー図である。
図11】検出装置のブロック図である。
図12】人間の前腕の断面のモデルを示す。
図13A】アンテナを示す。
図13B】アンテナを示す。
図13C】アンテナを示す。
図13D】アンテナを示す。
図14A】電気的ダイポールアンテナを示す。
図14B】励起構成を示す。
図15A】励起構成を示す。
図15B】励起構成を示す。
図16A】ループアンテナを示す。
図16B】励起構成を示す。
図17】励起構成を示す。
図18】励起構成を示す。
図19】励起構成を示す。
図20】励起構成を示す。
図21】検出装置のブロック図である。
図22】吸収極大の周波数シフトを示す。
図23】伝送挙動を示す。
図24】周波数シフトを示す。
図25】血球数パラメータを検出する方法の図である。
図26】検出装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、検出装置101及び調整装置103を備えるアームバンド100の典型的な実施形態のブロック図である。検出装置101は腕の血管の血液の血球数パラメータを検出するよう構成される。検出される血球数パラメータの例は血糖値である。
【0037】
調整装置103は、腕上のアームバンド100の規定の接触圧を設定するよう構成される。アームバンド100に所定の接触圧を設定すると、調整装置103には、検出装置101による血球数パラメータの再現性ある検出が保証される。このため、調整装置103は、特に、検出装置101により血球数パラメータが検出される場合、アームバンド100の接触圧を規定の接触圧に設定するよう構成される。
【0038】
特に、アームバンド100は、膨張式アームバンド100として構成される。ここで、調整装置103には特に、所定の接触圧を設定するためにアームバンド100を膨張させるために構成される空気ポンプがある。
【0039】
詳細には、検出装置101は、特に、少なくとも高周波信号を血管に注入するために構成される電極を含む。高周波信号は血球数パラメータを検出するパラメータを提供するために構成される。当該パラメータの例は、血球数パラメータの緩和時間定数τにより形成される。ここで、調整装置103は、より詳細には腕上の電極の接触圧を、所定の接触圧に設定するよう設計される。
【0040】
さらに、調整装置103は、検出装置101により血球数パラメータが検出される場合、アームバンド100の接触力を腕に均一に分散させるように構成される。さらに、調整装置103は、好ましくは検出装置101により血球数パラメータが検出される間、アームバンド100が均一に接触することを保証しうる方法で構成される。
【0041】
図2は、アームバンド200の典型的な実施形態の一部分のブロック図である。アームバンド200には検出装置201及び調整装置203がある。検出装置201及び調整装置203は、少なくとも図1の検出装置101及び調整装置103のように構成される。さらに、図2の調整装置203にはセンサ装置205及び制御装置207がある。センサ装置205は、腕上のアームバンド200の最新の接触圧を測定するよう構成される。測定された最新の接触圧に応じて、制御装置207が腕に対して所定の接触圧を設定する。
【0042】
図3は、アームバンド300の他の典型的な実施形態の一部のブロック図である。アームバンド300には検出装置301及び調整装置303がある。調整装置303はセンサ装置305、制御装置307及び空気ポンプ311を有する。センサ装置305は腕上のアームバンド300の最新の接触圧を測定する。制御装置307は、測定された最新の接触圧に応じて制御信号を提供する。提供された制御信号を用いて、アームバンド300を膨張させる空気ポンプ311が制御される。
【0043】
図4は、腕の血管内の血液の血球数パラメータを検出する検出装置の電極403、405の構成400の概略ブロック図である。
【0044】
一般性を制限せず、構成400は、2つの電極403及び405のみを示す。特に、構成400は検出装置の一部であり、例えば、5cm×2cmの典型的な寸法のプレートとして構成される。例えば電極403、405には5mm×5mmの基礎領域がある。例として、電極403、405の間の距離は1〜2cmである。これより、十分強力な伝送に十分な強度が付与され、それにより十分に深い身体内侵入が保証される。
【0045】
図5は、検出装置を備えるアームバンドを操作する方法の概略フロー図である。
【0046】
工程501では、アームバンドは、腕の血管内の血液の血球数パラメータを検出する検出装置を備える。例えば、検出装置は図1、2、又は3の典型的な実施形態の1つより構成される。
【0047】
工程503では、腕上のアームバンドの所定の接触圧が設定される。故に、検出装置による血球数パラメータの再現性ある検出が保証される。
【0048】
図6は、例えば、血糖値やグルコース濃度等の血球数パラメータを検出する検出装置600のブロック図である。検出装置600は、第1周波数の第1伝送信号及び第2周波数の第2伝送信号を図6に概略的に示す血管603に注入するよう構成される伝送器601を含む。例えば第1伝送信号及び第2伝送信号は共に広帯域信号をもたらしうる。伝送器601は、第1伝送信号と第2伝送信号を、例えば周波数掃引により順に発信するよう構成されうる。このため、伝送器601には、例えばダイポールアンテナとして構成されうる、1つ以上の伝送アンテナがある。
【0049】
検出装置600は、第1周波数による第1受信信号を受信し、第2周波数による第2受信信号を受信するよう構成されうる受信器605をさらに含む。このため、受信器605には1つ以上の受信アンテナがある。
【0050】
さらに、検出装置600には、例えば伝送器601及び受信器605に取り付けられ、第1伝送信号及び第1受信信号に基づき第1損失変数を、さらに第2伝送信号及び第2受信信号に基づき第2損失変数を測定するために提供される損失検出器607がある。
【0051】
検出装置600には、損失検出器607に取り付けられ、損失変数が大きい周波数に応じて血球数パラメータの緩和定数τを同定するために提供されるプロセッサ609がある。
【0052】
例えば、プロセッサ609は、第1損失変数が第2損失変数より大きい場合は第1周波数に応じて血球数パラメータの緩和時間係数を同定する。これに応じて、プロセッサ609は、第2損失変数が第1損失変数より大きい場合、第2周波数に応じて血球数パラメータの緩和時間定数(τ)を同定する。
【0053】
図6に示す検出装置600は、例えば静脈等の血管、皮膚層及び静脈周囲脂肪組織を誘電体導波管とみなしうるという知見を用いる。人間の前腕の構造は、Netter, F.N., Atlas der Anatomie, Thieme-Verlag, 2006に記載がある。これより、人間の前腕の断面は、筋肉組織で囲まれた2本の骨で構成される。筋肉組織の周囲には表在静脈が分布する。骨、筋肉組織及び静脈は脂肪組織に覆われ、さらに皮膚上層部に覆われる。表在静脈は皮膚上層部の比較的近傍に分布し、脂肪組織により皮膚上層部から隔てられる。
【0054】
例えば、図6に示す伝送器601及び受信器605が皮膚上層部に設置される場合、伝送器601は、静脈、脂肪組織及び皮膚層で形成される誘電体導波管システムに横電気(TE)波又は横磁気(TM)波を注入するために用いられる。ここで、皮膚層及び脂肪組織は薄膜導波路となることが理解される。
【0055】
上記のとおり、損失検出器607は、第1伝送信号及び第1受信信号に基づき第1損失変数を測定し、第2伝送信号及び第2受信信号に基づき第2損失変数を測定するよう構成される。他の伝送信号と受信信号を組合わせて用いる場合、損失検出器607はこれに応じて他の損失変数を測定する。
【0056】
特に、損失検出器607は、2ポート測定により損失変数を測定するよう構成される。例えば、損失検出器607はネットワーク分析器又はパワー検出器を含む。
【0057】
さらに、損失検出器607は、損失変数を測定するため、前方伝送係数S21及び入力反射係数S11を各場合に同定するよう構成される。
【0058】
ここで、損失検出器は、各損失変数Plossを以下の式を用いて計算する:
【0059】
【数1】
【0060】
特に、損失検出器607は、各損失変数を同定するために複素誘電率ε”を定めるよう構成される。
【0061】
このため、図7に、周波数fに依存する実数の比誘電率ε’及び複素誘電率ε”を示す。
【0062】
ここで、図7は、複素誘電率ε”により表される損失が、実部ε’が高レベルから低レベルへ移動する周波数範囲で上昇することを示す。この損失の上昇は分光学では吸収線ともいう。この場合に使用できる作用は、過剰な損失(ε”の極大参照)が糖含有量の濃度に伴い変動する周波数である。
【0063】
例えば、人体は80%の水で構成される。水は、例えば19GHz及び50GHzに吸収線がある。その離調が測定され、糖含有量に対して示される。ε”の共振周波数の離調は、図7に示すようにε’のプラトー部の変化として検出が容易である。特に、有利には、注入に変化があってもε”の極大の周波数は変化しない。その結果、ε”を収集して糖濃度を同定するのは、ε’又はその変化のレベルを観察することよりも極めて誤差が小さい。
【0064】
図7では多数の物質の当該曲線が重ねられるため、虚数の比誘電率ε”の測定により各物質が特定の吸収極大に特定されて物質を容易に分離できる。しかし、実際の比誘電率ε’は、関連する全物質の実際の全ての比誘電率ε’の和しか測定できない。
【0065】
上記のとおり、プロセッサ609は損失変数が大きいか又は最大の周波数に応じて血球数パラメータの緩和定数τを同定するよう構成される。さらに、プロセッサ609は、同定された緩和時間定数に応じて血中グルコース濃度等の血球数パラメータを測定するよう構成される。
【0066】
図8は、緩和時間定数(τ)と血中グルコース濃度C/molL‐1の関係を示す。ここで、図8内の引用符号801が示す領域は血糖の限界範囲を示す。
【0067】
さらに、プロセッサ609は、特に、以下の式:
【0068】
【数2】
【0069】
(式中、fは測定した損失変数が最大となる周波数を示す)
に基づいて緩和時間定数(τ)を計算するよう構成される。
【0070】
有利には、プロセッサ609は、複素誘電率ε”の虚部が最大となる周波数を同定するよう構成され、同定された周波数に応じて緩和時間定数(τ)を測定する。プロセッサ609は当該同定された周波数を用いてグルコース濃度等の血球数パラメータを同定する。
【0071】
図9は、検出装置900の概略ブロック図である。検出装置900には、アームバンド901、アームバンド901を備えるセンサアレイ903、マイクロプロセッサ905、伝送信号を生成するマイクロ波回路907及び通信装置909がある。
【0072】
センサアレイ403には例えば、マイクロ波センサ、温度センサ及び水分センサがある。
【0073】
マイクロプロセッサ405は例えば、図6のプロセッサ609のように構成される。
【0074】
通信装置909は、検出装置900に他の通信装置911の通信回線を提供するように構成される。通信装置909は例えばブルートゥースインターフェースを含む。他の通信装置911は例えば、移動無線装置、スマートフォン又はGPS使用装置である。
【0075】
図10は、例えば、血管内の血中グルコース濃度等の血球数パラメータを検出する方法の典型的な実施形態の概略フロー図である。
【0076】
工程1001では、第1周波数の第1伝送信号及び第2周波数の第2伝送信号が血管に注入される。
【0077】
工程1003では、第1周波数による第1受信信号が受信され、第2周波数による第2受信信号が受信される。
【0078】
工程1005では、第1伝送信号及び第1受信信号に基づき第1損失変数を測定する。
【0079】
工程1007では、第2伝送信号及び第2受信信号に基づき第2損失変数を測定する。
【0080】
工程1009では、血球数パラメータの緩和時間定数は損失変数がより大きい周波数に応じて同定される。例えば、血中グルコース濃度は、測定された緩和時間定数に応じて同定されうる。
【0081】
図11は、例えば、血糖濃度等の血球数パラメータを検出する検出装置1100のブロック図である。検出装置1100は、第1周波数の第1伝送信号及び第2周波数の第2伝送信号を図11に概略的に示す血管1103に注入するよう構成される伝送器1101を含む。例えば、第1伝送信号及び第2伝送信号は共に広帯域信号をもたらしうる。伝送器1101は、第1伝送信号と第2伝送信号を、例えば周波数掃引により順に発信するよう構成されうる。このため、伝送器1101には、例えば、ダイポールアンテナ又はフレームアンテナ又はパッチアンテナとして構成されうる、1つ以上の伝送アンテナがある。
【0082】
検出装置1100は、第1周波数による第1受信信号を受信し、第2周波数による第2受信信号を受信するよう構成されうる受信器1105をさらに含む。このため、受信器1105には1つ以上の受信アンテナがある。
【0083】
検出装置1100は、伝送器1101及び受信器1105に取り付けられ、第1伝送信号及び第1受信信号に基づき第1損失変数を、さらに第2伝送信号及び第2受信信号に基づき第2損失変数を測定するために提供される損失検出器1107をさらに含む。
【0084】
検出装置は、損失検出器1107に取り付けられ、第1基準損失変数に対する第1損失変数の第1周波数シフト及び第2基準損失変数に対する第2損失変数の第2周波数シフトを測定するために提供されるプロセッサ1109をさらに含む。プロセッサ1109は2つの周波数シフトに基づき血球数パラメータを測定するようにさらに構成されうる。
【0085】
検出装置1100には、さらに、例えば、プロセッサ1109及び場合によっては損失検出器1107にアクセスされうる記憶媒体1111がある。例えば、第1及び第2基準損失変数又は複数の基準損失変数が記憶媒体1111に保存される。例えば、基準損失変数は、血液成分、例えば血糖含有水溶液の吸収又は吸収線であってよい。周波数シフトに基づいて検出された損失変数は、例えば、血糖の濃度等の血球数パラメータを周波数シフトに基づいて同定するように、周波数シフト後の吸収又は吸収線であってよい。
【0086】
図11に示す検出装置1100は、例えば人間の前腕の血管、皮膚の層及び血管周囲の脂肪組織を、誘電体導波管システムとみなしうるという知見を用いる。例えば、図11に示す伝送器1101及び受信器1105が皮膚の上部層上に設置されると、伝送器1101は、例えば横電気(TE)波又は横磁気(TM)波を、血管、脂肪組織及び皮膚の層により形成される誘電体導波管システムに結合するため用いられる。ここで、皮膚の層及び脂肪組織は薄膜導波路となることが理解される。
【0087】
例えば、材料の複素誘電率の同定に用いられるように、マイクロ波測定ヘッドが用いられると、皮膚、脂肪組織及び静脈からなる物質の混合物を特徴付けられる。
【0088】
血球数パラメータを検出するのに実質的に静脈血のみを検出することは有利である。このため、伝送器1101は、電磁波形態の伝送信号を血管に直接注入するよう構成されうる。伝送器1101及び受信器1105は、電磁波を血管に注入し、電磁波を血管から注出するため、各々注入損失が最少になる伝送アンテナ及び受信アンテナを選択しうるように、各々複数のアンテナがありうる。
【0089】
図12A〜Cは、例えば、現場シミュレーション又は誘電体導波管システムのモデル化に用いうる、人間の前腕、例えば手首の断面の簡略化モデルを示す。図12Aに示すように、このモデルは皮膚の層1201、血管1203及び血管1203周囲の脂肪組織1205を含む。図12Aに示すモデルは、図12Bに示す誘電体導波管を含む誘電体導波管システム及び図12Cに示す電気的薄膜導波路を形成する。
【0090】
図12Bに示す誘電体導波管は、血管1203及び血管周囲の脂肪組織1205を含む。対照的に、図12Cの誘電体薄膜導波路は皮膚の層1201及び脂肪組織1205を含む。分散性が異なる、つまり周波数依存性の各複素誘電率の様態を、皮膚の層1201、脂肪組織1205及び血管1203各々に構成する。ここで、最上層の血管1203を誘電体導波管と解釈でき、その内部では、周波数に応じて、異なるモード又は波の種類、例えばTE波、TM波、TEM波又はHE波が伝搬しうる。誘電体導波管内の導波管機構に加えて、皮膚上部層1201により形成される、図12Cに示す薄膜導波路の形態の他の導波管機構も存在する。
【0091】
伝送器1101の伝送アンテナ及び受信器1105の受信アンテナは、好ましくは、専用の方式で血管1203内にマイクロ波電力を注入させ、そのマイクロ波電力を、例えば数cm離れて再度注出する方法で構成されうる。ここで、血管1203は面積測定に機能するため集中要素でなく分布要素として考えるべきである。損失変数は好ましくは2ポート測定に基づき測定される。ここで、検出装置を手首に装着する場合は特に、図12Cの薄膜導波路内の薄膜導波路モードの励起を回避するべく、図12Bの誘電体導波管で主要モードを励起できるため、そのため、血球数パラメータをより正確に検出できる。
【0092】
誘電体導波管システム内の第1モードを励起させるため、伝送信号の選択された周波数に応じて、異なるモードが優位でありうることを考慮しうる。静脈1203内に場が集中する好ましいモード系は、皮膚の層1201内に場が集中するモード系である。図12Bの誘電体導波管の誘電特性により、特定モードでは、静脈の進行方向である縦方向の成分Elongitudinal、Hlongitudinalの伝播方向は、静脈進行に対して横方向である横方向の成分Etransverse、transverseより強いことが示される。従って、血管1203内へマイクロ波電力を最大に注入しうるモードが、好ましくは検出すべき周波数範囲で励起される。
【0093】
図13A〜Dは、典型的な方式のあるアンテナを示し、当該アンテナは伝送アンテナ、すなわち励起手段又は受信アンテナとして用いられる。
【0094】
図13Aに示すアンテナ1301は、第1アンテナ部1303及び第2アンテナ部1305を備える電気的ダイポールとして構成される。アンテナ部1303及び1305は間隔があり、例えば、血管1307の拡張に対して横方向に構成される。アンテナ1301は、供給ライン1308で励起されうる。このように配列された電気的ダイポールは、例えば、血管の拡張又は血流方向を横断する電界Etangentialを生成しうる。
【0095】
図13Bは、フレームアンテナであってよいアンテナ1309を示す。例えば、フレームアンテナは四角形又は円形でありうる。図13Bに示した血管1307に対するフレームアンテナ1309の構成では、例えば、血管1307の拡張又は血流方向を横断する向きの磁場Htangentialが励起され、アンテナ1309は供給ライン1310により励起されうる。
【0096】
図13Cは、第1アンテナ部1313及び第2アンテナ部1315を備える電気的ダイポールを形成するアンテナ1311を示す。アンテナ部1313及び1315は間隔があり、図13Cに示す供給ライン1317を用いて励起される。アンテナ1311により形成される電気的ダイポールは、アンテナ部1313及び1315が血管1307の拡張に平行になるように、血管1307の拡張に対して構成される。この結果、血管の拡張方向に電界成分Elongitudinalがある電界が励起される。
【0097】
図13Dは、例えばパッチアンテナとしてループアンテナを形成する、フレームが四角形又は円形で形成されうるフレームアンテナ1319を示す。フレームアンテナ1319は供給ライン1320を用いて励起され、図13Dに示すように、磁場が血管1307の拡張方向に成分Hlongitudinalがあるように、血管1307の拡張又は血流方向に対して構成される。
【0098】
例えば、測定される各周波数範囲は、検出されるべきスペクトル線、すなわち吸収線により測定される。例えば、物質の特徴的な吸収線若しく水又はある濃度の血液成分を含む水溶液の吸収線に対する特定の血液成分の影響を観察しうる。
【0099】
図13A〜Dに示すアンテナは、電気的ダイポール又は磁気フレームアンテナのいずれかである。さらに、パッチアンテナを用いうる。電気的ダイポールは、主として電気的ダイポールの軸に電界を生成する。当該軸は、図13Aに示すように、血管1307、例えば血流方向の接線方向に構成されるか又は図13Cに示すように、血管1307の方向、例えば血流方向であってよい。場が主に磁場を生成すると、フレームアンテナが励起手段として適用されうる。表面が拡がったフレームを構成するフレームアンテナの表面ベクトルが、血流方向である血管1307を横断する方向である場合、図13Bに示すように磁場も血管307を横断する方向である。対照的に、表面ベクトルが血管1307の方向の場合、例えば図13Bに示すように磁場も血管1307の方向である。図13A〜Dに示す励起手段を選択すると、例えば、波の種類等の主要な励起モードが得られる。
【0100】
図14Aは、伝送アンテナ又は受信アンテナとして適用されうる電気的ダイポールアンテナ1401を示す。電気的ダイポールアンテナ1401は、基板1408内に設置されて供給ライン1407により励起されうるダイポールアンテナ部1403及び1405を含む。ダイポールアンテナ1401は、伝送アンテナ又は受信アンテナとして適用されうる。
【0101】
図14Bは、皮膚の層1415の下の血管1413の進行方向の伝送器の伝送アンテナ1409及び受信器の受信アンテナ1411の励起構成を示す。伝送アンテナ1409及び受信アンテナ1411は、例えば図14Aの電気的ダイポールアンテナである。図14Bの構成では、血流方向等の血管1413の進行方向に電界成分がある電界が生成される。
【0102】
図15Aは、皮膚の層1507の下側に位置する血管1505の進行方向、すなわち血流方向を横断する、伝送器の伝送アンテナ1501及び受信器の受信アンテナ1503を含む励起構成を示す。伝送アンテナ1501及び受信アンテナ1503は、例えば、図14Aに示す電気的ダイポールアンテナにより形成されうる。図15Bでは、ダイポールアンテナ部1403及び1405の構成が血流方向に対してより詳細に記載される。
【0103】
図16Aは、環状フレーム1603及び環状フレーム1603を励起するための供給ライン1605を備えるループアンテナ1601を示す。ループアンテナ1601は、例えば、伝送アンテナとして又は受信アンテナに適用しうる。環状フレーム1603及び供給ライン1605は基板内に構成されうる。
【0104】
図16Bは、図16Aに示すループアンテナとして形成されうる、伝送器の伝送アンテナ1607及び受信器の受信アンテナ1609による励起構成を示す。ループアンテナ1607、1609は、例えば、環状フレーム1603が血管1611上に構成され、供給ライン1605が血流方向である血管1611の進行方向を横断する方向であるように構成される。この結果、血管1611の進行を横断する方向の磁場成分がある磁場Hが伝送器側に生成される。
【0105】
図17は、血管1705に対する伝送器の伝送アンテナ1701及び受信器の受信アンテナ1703の励起構成を示す。例えば、伝送アンテナ1701及び受信アンテナ1703は、図16Aに示す形状であるループアンテナであってよい。例えば、これらは、環状フレーム1603が各々血管1705の上に構成され、供給ライン1605が血管1705と互い違いに構成される。この結果、血管1705の進行に垂直な方向の場の成分Hが生成され、当該場の成分は、環状フレーム1603により垂直方向に適用される広がった表面を示す。
【0106】
図18は、例えば図16Aに示すループアンテナの形状を示す伝送器の伝送アンテナ1801の励起構成を示す。伝送アンテナ1801は、例えばフレーム1603により垂直方向に適用される広がった表面が血管1803の拡張の方向になるよう、血管1803に対して構成される。当該構成は例えば血管1803の屈曲部で実施しうる。この結果、血管1803の進行方向の磁場成分Hが生成される。
【0107】
図19は、例えば図16Aに示す形状のループアンテナであり、基板1901、例えばポリマー基板内に構成されうる伝送アンテナ1601の励起構成を示す。伝送アンテナ1601は、環状フレーム1603により垂直方向に適用される広がった表面が血管1903の進行方向を向くように血管1903上に構成される。この結果、場の成分Hが血流方向である血管1903の進行方向になる磁場が生成される。
【0108】
図20は、パッチアンテナ表面2003及び供給ライン2005を備えるパッチアンテナでよい伝送アンテナ2001の励起構成を示す。パッチアンテナ表面2003は、例えば、血管2007より上に構成され、その結果、電界成分Eが血流方向である血管2007の進行方向を向く電界が生成される。
【0109】
1の実施形態では、損失検出器1107は、例えばスカラー又はベクトル測定又はパワー測定を実施するよう構成される。損失変数の測定のため、単純な分光計測が実施されてよく、当該測定では測定パラメータS21の絶対値が検出される。
【0110】
例えば、│S21│は図21に示す検出装置を用いて測定されうる。検出装置は、同調発振器であってよい伝送信号生成器2101を備える伝送器を含む。伝送信号生成器2101の出力は伝送アンテナ2103に接続される。検出装置はさらに受信アンテナ2105を備える受信器を含み、その出力は損失検出器2107に接続される。例えば、損失検出器はパワー検出器を含んでよい。図21に示すように、伝送アンテナ2103及び受信アンテナ2105は血管2109より上に構成される。伝送器は伝送器1101に、受信器は受信器1105の機能に、損失検出器2107は損失検出器1107に、対応しうる。
【0111】
しかし、導波管内の損失である損失変数を測定する場合の精度は、測定パラメータS11の絶対値をさらに検出することでより向上しうる。例えば、損失変数は以下の式:
【0112】
【数1】
【0113】
(式中、Plossは各損失変数を表し、S11は入力反射係数を、S21は前方伝送係数を示す)
に基づいて測定される。
【0114】
血糖濃度等の血球数パラメータを検出するため、例えば糖含有水溶液の吸収線の周波数シフトを検査できる。例えば、図22は、第1血糖濃度での吸収極大2201の周波数シフトを、第1血糖濃度よりも高い第2血糖濃度の吸収極大2203の周波数シフトと比較したものを示す。ここで、約6GHzの伝送が損失変数として例示的に検出された。
【0115】
吸収極大の周波数シフトは、例えば血糖値等の血球数パラメータの指標とみなしうる。糖含有水溶液の多量の吸収による周波数シフトを観察して、測定の信頼性をより高めうる。
【0116】
図23は、手首の静脈血の広帯域伝送挙動の例示である。ここで、プロファイル2301及び2303は、異なる血糖濃度の吸収線の異なる周波数を示す。血糖値等の血球数パラメータを検出するため、吸収A、B、C、D、E、F及びGの具体的な周波数シフトを検出しうる。例えば、血糖値に応じた周波数の高低、例えば各周波数の吸収極大及び/又は吸収極小について、2〜12GHzの範囲での周波数シフトを観察しうる。
【0117】
図24は、直径6mm及び3.4mmの血管の、図23に示す吸収A、B、C、D、E、F及びGの周波数シフトを例示する。血糖値の変化に関する吸収が、正及び負両方向において周波数シフトがあることを確認しうる。従って複数の吸収又は吸収線の検出は、血糖値等の血球数パラメータをより正確に検出しうる。
【0118】
図25は、血管内血液の血球数パラメータを検出する方法のダイアグラムを示す。当該方法は、第1周波数の第1伝送信号の血管への注入2501、第2周波数の第2伝送信号の血管への注入2503、第1受信信号の第1周波数の受信2505、第2受信信号の第2周波数の受信2507、第1周波数の第1伝送信号及び第1受信信号に基づく第1損失変数の測定2509、第2周波数における第2伝送信号及び第2受信信号に基づく第2損失変数の測定2511、第1基準損失変数に対する第1損失変数の第1周波数シフトの同定2513、第2基準損失変数に対する第2損失変数の第2周波数シフトの同定2515及び第1周波数シフト及び第2周波数シフトに基づく血球数パラメータの同定2517を含む。
【0119】
例えば、図25に示す方法は、図11に示す検出装置で実施されうる。
【0120】
図26は伝送器2601を備える検出装置を示し、当該検出装置には、例えば、同調発振器2602及び複数の伝送アンテナ2603がある。この検出装置は、例えばパワー検出器がありうる損失検出器2605をさらに含む。さらに、複数の受信アンテナ2607を備える受信器2606が提供される。
【0121】
同調発振器2602の1つの出力は切り替え式で、例えば切り替えマトリックス2609により、例えば連続又はいかなる順序の組み合わせにも切り替え可能な各アンテナ入力に接続されうる。同様に、複数の受信アンテナ2607の受信アンテナの各出力は、切り替えマトリックス2611を用いて損失検出器2605に接続されうる。
【0122】
例えば切り替えマトリックス2611及び切り替えマトリックス2609により伝送アンテナ及び受信アンテナを含む対を選択しうるが、これにより、マイクロ波信号を図26に概略的に示す血管2613に最適に注入しうる。切り替えマトリックス2609及び2611により、例えば、伝送信号の発信に用いられる第1伝送アンテナ2615から開始して、連続的にアンテナ対が選択される。切り替えマトリックス2609、2611はトランジスタスイッチ等のスイッチがあってよい。
【0123】
受信側では、切り替えマトリックス2611により、例えば、対応する受信信号を受信する受信アンテナ2617から開始し、順次対応する受信アンテナが選択され、伝送信号及び受信信号に基づいて損失変数が検出される。次の工程では、例えば受信アンテナ2619が選択され、損失変数は伝送信号及び受信アンテナ2619により受信された受信信号に基づいて損失検出器を用いて再度検出される。この後、例えば、受信アンテナ2621が選択され、伝送信号及び受信信号に基づき損失変数がさらに検出される。次の工程では、受信アンテナ2623が選択され、伝送信号及び受信アンテナ2623により受信された受信信号に基づき損失変数がさらに測定される。次の工程では、切り替えマトリックス2609が、例えば伝送アンテナをさらに選択でき、上記工程が繰り返されうる。測定された損失変数の比較により、例えば最小損失変数が選択される。図26の例示では、例えば、伝送アンテナ2615及び受信アンテナ2621による検出構成は注入損失が最少となるが、これはアンテナ2615、2621が血管のすぐ上に位置しているためであり、血管2613へ最適な方法で信号を注入しうることが予想される。例えば、選択された検出構成は血球数パラメータの検出に用いられる。上記選択工程は、いかなる順序で実施されてもよい。つまり、伝送アンテナ2615に関して例えば受信アンテナ2607の全て又はいくつかが試験されうる。
【0124】
伝送アンテナ2603又は受信アンテナ2607は、その場所及び/又は優位な方法で励起されるべき場の成分が異なってよい。ここで、切り替えマトリックス2609及び2611は、最適な励起の種類、例えばループアンテナ、電気的ダイポールアンテナ、パッチアンテナ、又は励起場所が各々選択された周波数に関して選択されうることを保証する。
【0125】
例えば、図26に示す検出装置は膨張式アームバンドと一体化されうる。コントロールパラメータの検出による損失変数検出の間に、皮膚を空気にあて、発汗しないようアームバンドを換気しうる。測定間隔は変動しうる。例えば、10分間隔で測定を実施しうる。しかし場合によって、より頻繁に測定を実施でき、測定頻度は摂食時間により同定しうる。
【0126】
皮膚に位置し、各々電極プレートにより形成されうる伝送又は受信アンテナは、特に測定間の休止期で滑落することがあり、図26に示す複数の励起手段の選定は、血管2613上の励起手段の選択を保証しうる。故に、血管2613へマイクロ波エネルギーを最大注入しうる励起手段は、各切り替えマトリックス2609及び2611を用いて選択されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26