特許第6129761号(P6129761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129761車両用エアバッグのガスガイドおよびエアバッグ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129761
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】車両用エアバッグのガスガイドおよびエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2346 20110101AFI20170508BHJP
   B60R 21/232 20110101ALI20170508BHJP
【FI】
   B60R21/2346
   B60R21/232
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-22142(P2014-22142)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-147528(P2015-147528A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀典
(72)【発明者】
【氏名】尾野 秀峰
(72)【発明者】
【氏名】峯村 章
【審査官】 柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−112163(JP,A)
【文献】 特開2001−171468(JP,A)
【文献】 特開2012−086721(JP,A)
【文献】 特表2008−510654(JP,A)
【文献】 特開2003−146174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用エアバッグのクッションとは独立して基布を接合することによって中空状に形成され、該クッションの上部中央付近に取り付けられて円筒形のインフレータから噴出するガスを該クッション内に案内するガスガイドであって、
前記インフレータが挿し込まれる開口部と、
当該ガスガイドが前記クッションに取り付けられたとき、前記開口部から斜め下方へ直線的に延びて該クッションの上縁から該クッション内に進入した状態となって、内部に前記インフレータが配置されるインフレータ配置部と、
前記インフレータ配置部の先から車両前後方向に延びたガス案内部と、
前記ガス案内部と前記インフレータ配置部とが成す鋭角側の縁に沿って該インフレータ配置部の縁と該ガス案内部の縁とを曲線的に縫製する第1曲線縫製部と、
前記第1曲線縫製部、前記インフレータ配置部および前記ガス案内部各々の一部を該インフレータ配置部および該ガス案内部の外側から覆う第1補強布と、
前記第1補強布を前記インフレータ配置および前記ガス案内部に前記第1曲線縫製部に沿って曲線的に縫製されて設けられた第2曲線縫製部と、
を有し、
前記第1補強布は、前記インフレータ配置部を短手方向に一周する帯形状を有し、該インフレータ配置部のうち前記鋭角側の縁に沿った前記第1曲線縫製部を含む限られた範囲のみを覆っていることを特徴とする車両用エアバッグのガスガイド。
【請求項2】
前記第2曲線縫製部は、前記第1曲線縫製部よりも当該ガスガイドの内側に設けられることを特徴とする請求項に記載の車両用エアバッグのガスガイド。
【請求項3】
袋状に構成され、巻回または折り畳まれることで細長な収納形態となって車体側壁の上部に搭載されるクッションと、
円筒型であって先端側に前記クッションに供給されるガスが噴出するガス噴出部を有するインフレータと、
請求項1または2に記載のガスガイドと、
を備えることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項4】
前記クッションは、乗員を保護する複数のチャンバと、非膨張領域として直線または曲線的に形成されて該複数のチャンバを区画するシーム部と、を有し、
当該エアバッグ装置はさらに、
前記シーム部の先端に重ねられる第2補強布と、
前記第2補強布を前記チャンバに対して、前記シーム部の先端を包囲するように曲線的に縫製する第3曲線縫製部と、
を備えることを特徴とする請求項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレータからのガスを車両用エアバッグのクッション内に案内するガスガイドおよびこのガスガイドを備えるエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両にはエアバッグがほぼ標準装備されている。エアバッグは、車両衝突などの緊急時に作動する安全装置であって、ガス圧で膨張展開して乗員を受け止めて保護する。エアバッグには、設置箇所や用途に応じて様々な種類がある。例えば、前後方向からの衝突から乗員を守るために、ステアリングの中央にはフロントエアバッグが設けられている。また、側面衝突やそれに続いて起こるロールオーバ(横転)から乗員を守るために、壁部の天井付近にはサイドウィンドウに沿って膨張展開するカーテンエアバッグが設けられ、座席の側部には乗員のすぐ脇へ膨張展開するサイドエアバッグが設けられている。
【0003】
エアバッグには、ガスの供給源としてインフレータと呼ばれるガス発生装置が備えられている。インフレータにも、エアバッグの種類やその設置箇所に応じて様々な種類がある。例えば、フロントエアバッグにはディスク型(円板型)のインフレータが主に用いられていて、カーテンエアバッグやサイドエアバッグにはシリンダ型(筒型)のインフレータが主に用いられている。
【0004】
エアバッグによって乗員を的確に拘束するために、エアバッグのクッションの膨張展開を素早く完了させる必要がある。そのため、クッションには内部の各所にガスが効率よく行き届くよう工夫がなされている。例えば特許文献1に記載されているカーテンエアバッグでは、クッションのインフレータが取り付けられる位置にインナチューブ(ガスガイド)が設置されていて、このガスガイドを利用して車両前後にガスを効率よく導くことを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−86721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のガスガイドは、補強布を配置することでエアバッグの耐久性を向上させている。しかし、よりガスの漏れにくい構成やより耐久性の高い構成、さらにはより簡潔で低廉な構成を実現するなどの点で、エアバッグのさらなる性能向上が求められている。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、簡潔な構造であってガスの漏洩防止および耐久性向上を図った車両用エアバッグのガスガイドおよびこのガスガイドを備えたエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用エアバッグのガスガイドの代表的な構成は、基布を接合することによって中空状に形成され、円筒形のインフレータから噴出するガスを車両用エアバッグのクッション内に案内するガスガイドであって、インフレータが挿し込まれる開口部と、開口部から斜め下方へ直線的に延びてクッションの上縁からクッション内に進入する、内部にインフレータが配置されるインフレータ配置部と、インフレータ配置部の先から車両前後方向に延びたガス案内部と、ガス案内部とインフレータ配置部とが成す鋭角に沿ってインフレータ配置部の縁とガス案内部の縁とを曲線的に縫製する第1曲線縫製部と、少なくとも第1曲線縫製部とインフレータ配置部の一部とを覆う第1補強布と、第1補強布を第1曲線縫製部に沿ってインフレータ配置部およびガス案内部に曲線的に縫製する第2曲線縫製部と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成では、インフレータのガス圧による負荷が特に集中しやすいインフレータ配置部とガス案内部との間の角部分において、まず第1曲線縫製部によって曲線的な輪郭を形成している。そして、第1補強布を重ねて第1曲線縫製部に沿った第2曲線縫製部で縫製することで、インフレータ配置部とガス配置部との間の領域の耐久性を高めている。特に、第1補強布は、ガスガイドの全体に対して少なくとも第1曲線縫製部を覆うことのできる程度の限られたサイズで対応可能である。したがって、簡潔で低廉な構成でありつつも、耐久性が高くガスの漏洩防止を図ることもできるガスガイドを提供することが可能になる。
【0010】
上記の第1補強布は、インフレータ配置部を短手方向に一周する帯形状を有してもよい。この帯形状の第1補強布であれば、限られたサイズでガスガイドの耐久性を向上させることが可能になり、コストアップを抑えることができる。
【0011】
上記の第2曲線縫製部は、第1曲線縫製部よりも当該ガスガイドの内側に設けられてもよい。この構成により、第1曲線縫製部への負荷の集中を好適に防ぎ、第1曲線縫製部付近における破断やガス漏洩を防止することが可能になる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかるエアバッグ装置の代表的な構成は、袋状に構成され、巻回または折り畳まれることで細長な収納形態となって車体側壁の上部に搭載されるクッションと、円筒型であって先端側にクッションに供給されるガスが噴出するガス噴出部を有するインフレータと、上述のいずれかのガスガイドと、を備えることを特徴とする。
【0013】
上述した車両用エアバッグのガスガイドに関する技術的思想に対する構成要素やその説明は、当該エアバッグ装置にも適用可能である。
【0014】
上記のクッションは、乗員を保護する複数のチャンバと、非膨張領域として直線または曲線的に形成されて複数のチャンバを区画するシーム部と、を有し、当該エアバッグ装置はさらに、シーム部の先端に重ねられる第2補強布と、第2補強布をチャンバに対して、シーム部の先端を包囲するように曲線的に縫製する第3曲線縫製部と、を備えてもよい。この構成であれば、シーム部の先端を覆う程度の限られたサイズの第2補強布であっても、第3曲線縫製部によってシーム部の先端を守り、クッションの耐久性を効率よく向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡潔な構造であってガスの漏洩防止および耐久性向上を図った車両用エアバッグのガスガイドおよびこのガスガイドを備えたエアバッグ装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による車両用エアバッグ装置の実施形態としてカーテンエアバッグを例示した図である。
図2図1(b)のクッションを単独で例示した図である。
図3図2(c)のガスガイドを各方向から例示した図である。
図4図3(a)のガスガイドを広げた展開図である。
図5図2(a)のクッションの変形例を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(車両用のエアバッグ装置)
図1は、本発明による車両用エアバッグ装置の実施形態としてカーテンエアバッグ100を例示した図である。図1(a)は車両室内を車幅方向の車内側から見た図であって、カーテンエアバッグ100のクッション102の収納形態を例示している。クッション102は緊急時に膨張展開して乗員を保護する部位であって、図1(b)ではこのクッション102の膨張展開時を例示している。なお、本願において「上」と表現する場合は注目箇所から見て車両天井方向を示し、「下」と表現する場合は注目箇所から見て車両床方向を示す。
【0019】
図1(a)に例示するように、クッション102は、巻回されて車両前後に長尺なロール状の収納形態となって、車体の側壁の上部(ルーフサイドレール104)に搭載される。通常、ルーフサイドレール104はルーフトリム(図示省略)で覆われている。すなわちクッション部材102は、ルーフサイドレール104とルーフトリムとの間の空間に収納されていて、乗員のいる車室内からは視認不能である。よって本文中に「車室内からクッション部材102を見る」なる説明があっても、本来車室内から視認不能なクッション部材102を、ルーフトリムを図示省略して可視化していることに留意されたい。なお、クッション102の収納形態は、折り畳みによっても実現することができる。
【0020】
カーテンエアバッグ100はガス発生装置であるインフレータ106をクッション102の上部に備えていて、クッション102はインフレータ106から供給されるガスの圧力によって膨張して乗員を拘束する。本実施形態で採用しているインフレータ106は、シリンダ型(円筒型)のものである。現在普及しているインフレータには、ガス発生剤が充填されていてこれを燃焼させてガスを発生させるタイプや、圧縮ガスが充填されていて熱を発生させることなくガスを供給するタイプ、さらにはガス発生剤と圧縮ガスとを両方備えたタイプのものなどがある。インフレータ106としては、いずれのタイプを利用してもよい。
【0021】
図1(a)の状態において、車両108に側面衝突時やロールオーバ(横転)等が発生すると、まず車両108に備えられたセンサ(図示省略)が衝撃を感知し、これに起因してインフレータ106へ信号が発信される。この信号を受けることでインフレータ106は作動し、ガスをクッション102へ供給する。クッション102は、インフレータ106からのガスを受給すると、図1(b)に例示するように、車体の側壁(図1(a)のサイドウィンドウ110等)に沿うように下方へ向かって膨張展開し、乗員の保護を行う。
【0022】
図2は、図1(b)のクッション102を単独で例示した図である。図2(a)は、図1(b)のクッションの拡大図である。クッション102は、カーテンエアバッグ用であって、車室内の側面に沿って拡がることのできる大きな形状となっている。クッション102は、その表面を構成する2枚の基布を重ねて縫製や接着することや、OPW(One-Piece Woven)を用いての紡織などによって袋状に形成されている。
【0023】
クッション102の膨張領域は、乗員が接触し得る位置などを考慮して、複数の小部屋(チャンバ)に区画されている。例えば図1(b)に例示するように、車両前側には、前部座席112の乗員を保護することを目的としてチャンバ114、116等が設けられている。また、車両後側には、後部座席118の乗員を保護するチャンバ120、121等が設けられている。これら各チャンバは、線状の非膨張領域であるシーム部122等によって区画されている。
【0024】
車両への取付部位として、クッション102の上縁123にはタブ124が複数設けられている。タブ124は帯状であって、ボルトや専用のブラケットなどを使用して、ルーフサイドレール104に取り付けられる。また、クッション102の前端には、紐状のストラップ126が設けられている。ストラップ126は、クッション102とフロントピラー105とをつなぐ部材であって、クッション102の膨張展開時の揺動を抑えて展開挙動を安定させ、加えてクッション102に車両前後方向への張力を与える働きを有している。
【0025】
インフレータ106は、クッション102の上部中央付近のインフレータ取付部130に取り付けられている。図2(b)は、図2(a)のインフレータ取付部130の拡大図である。インフレータ取付部130は、クッション102の上縁123から突出している。インフレータ106は、先端側にガスが噴出するガス噴出部132を有していて、この先端側からインフレータ取付部130に挿し込まれる。
【0026】
ガス噴出部132には、インフレータ106の先端付近に設けられた噴出孔131と、管状のガス導入パイプ135が含まれている。噴出孔131は小径の複数の孔であって、インフレータ106内部からガスが噴出する。ガス導入パイプ135は、湾曲した管状の金属の部材であって、インフレータ106の先端側に取り付けられ、噴出孔131から噴出するガスを所定の方向へ導く。本実施形態のガス導入パイプ135は、斜めに配置されたインフレータ106の先端から下方へ向かって湾曲していて、クッション102内の上部にて車両前後に延びるダクト136に対して車両前後に偏らせることなくガスを導く。
【0027】
インフレータ106の後端には車両側と電気的に接続するコネクタ133が設けられていて、インフレータ106はこのコネクタ133を露出した状態でインフレータ取付部130の外側からバンド等が巻きつけられて取り付けられる。
【0028】
インフレータ取付部130の内側には、インフレータ取付部130とは独立したガスガイド134が設置されている。図2(c)は、図2(b)のインフレータ取付部130付近の分解図である。図2(c)に例示するガスガイド134は、インフレータ106から噴出するガスを、クッション102の上部にて車両前後に延びているダクト136へ案内する部材である。インフレータ106は、インフレータ取付部130の内部にてこのガスガイド134に挿入される。カーテンエアバッグ100では、ガスガイド134からダクト136の車両前後方向へとガスを流すことで、ガスを上述した車両前後の各チャンバへ効率よく分配している。
【0029】
図3は、図2(c)のガスガイド134を各方向から例示した図である。図3(a)は、図2(c)のガスガイド134の拡大図である。本実施形態では、ガスガイド134の構成を工夫することでガスの漏洩防止および耐久性向上を図っていて、これによってクッション102の効率よくスムーズな膨張展開を達成している。以下、ガスガイド134の構成について詳しく説明する。
【0030】
ガスガイド134は、基布を縫製することによって中空状(管)に形成されていている。ガスガイド134は、大きく分けて、インフレータ106が内部に配置されるインフレータ配置部138と、インフレータ配置部138からガスを車両前後方向へ導くガス案内部140を含んで、構成されている。
【0031】
まず、インフレータ配置部138の上端には開口部142が設けられていて、インフレータ106はこの開口部142からインフレータ配置部138の内部に挿入される。インフレータ配置部138は、開口部142から連続して車両前側の斜め下方へ直線的に延びている。図2(b)に例示したクッション102内に設置した状態のガスガイド134において、インフレータ配置部138はクッション102の上縁付近からクッション102内に進入した状態となる。なお、ガスガイド132は、開口部142を車両前方に設け、インフレータ配置部138が車両後側の斜め下方へと延びる構成としてもよい。
【0032】
図3(a)に例示するガス案内部142は、インフレータ配置部138の先から連続して車両前後方向のそれぞれに延びている。ガス案内部142の車両前方の一端には前側開口部144が設けられていて、車両後方の他端には後側開口部146が設けられている。前側開口部144および後側開口部146はそれぞれ、ダクト136(図2(b)参照)の車両前方側および車両後方側へとガスを供給する。
【0033】
ガスガイド134には、部分的に第1補強布148が備えられて補強されている。本実施形態における第1補強布148は、インフレータ配置部138およびガス案内部140の全体を覆うわけではなく、これら各部の限られた範囲のみを外側から覆って補強している。例えば、インフレータ配置部138およびガス案内部140は、図3(b)の図3(a)のA−A断面図に例示するように、基布が二重になっている。そして、図3(c)(図3(a)のB−B断面図)に例示するように、第1補強布148は、インフレータ配置部138等を外側から覆って設置されている。図3(d)は図3(a)のC−C断面図であるが、第1補強布148は、第1曲線縫製部152付近の限定的な範囲のみに設けられている。
【0034】
第1補強布148の構成について詳しく説明する。図3(a)に例示する本実施形態のガスガイド134では、ガス案内部140に対してインフレータ配置部138が斜めに接続していて、これらの間の鋭角側の縁150が湾曲している。そして、この湾曲した縁150に沿って、第1曲線縫製部152が設けられている。第1曲線縫製部152は、インフレータ配置部138の縁とガス案内部140の縁とを曲線的につなぐよう縫製されている。
【0035】
第1補強布148は、少なくとも第1曲線縫製部152とインフレータ配置部138の一部とを覆って、インフレータ配置部138の短手方向に一周するように配置されている。そして第1補強布148は、第2曲線縫製部154によってインフレータ配置部138およびガス案内部140に縫製される。第2曲線縫製部154は、第1曲線縫製部152に沿った曲線的な縫製ラインである。第2曲線縫製部154は、第1曲線縫製部152よりも内側に設けられていて、第1曲線縫製部152にかかり得るガス圧による負荷を分散する役割を担っている。この構成によって、本実施形態のガスガイド134では、第1曲線縫製部152への負荷の集中を好適に防ぎ、第1曲線縫製部152付近における破断やガス漏洩を防止することが可能になる。
【0036】
図4は、図3(a)のガスガイド134を広げた展開図である。ガスガイド134の主要部分は、一体の基布156から形成される。図4に例示するように、第1補強布148は、ガスガイド134の基布156のうち、インフレータ配置部138とガス案内部140との間の湾曲した縁の一方から他方へわたるように、限られた範囲のみを覆って配置されている。
【0037】
図4の基布156から図3(a)のガスガイド134を形成するにあたって、本実施形態では、第1曲線縫製部152(図3(a)参照)の縫製に先だって、第1補強布148を両側の第2曲線縫製部154a、154bによって基布156に縫い付ける。図4に例示するように、第1補強布148は、インフレータ配置部138とガス案内部140との間の湾曲した縁150の一方(縁150a)から他方(縁150b)にわたる帯形状となっている。そして第1補強布148を設置した後、基布156に中央折線158を形成する。中央折線158は、インフレータ配置部138からガス案内部140にかけて互いの中央を折って形成される折り目である。中央折線158は、図3(a)の完成後のガスガイド134においてガスガイド134の車両前側の傾斜した縁となる。
【0038】
中央折線158を中心にして基布を矢印方向へ折り返した後、基布156の両側のインフレータ配置部138からガス案内部140にかけての縁(縁150を含む)を重ねて縫製する。これによって、図3(a)に例示した、湾曲した縁150付近に第1曲線縫製部152が形成される。また、ガス案内部140の下部にも縫製を施す。これによって、図3(a)のガスガイド134が形成される。なお、各部分の縁は、縫製以外にも接着や熱溶着等の手段によっても接合可能である。
【0039】
上記ガスガイド134(図3(a)参照)は、インフレータ106のガス圧の負荷が特に集中しやすいインフレータ配置部138とガス案内部140との間の角部分において、まず第1曲線縫製部152によって曲線的な輪郭を形成し、さらに第1補強布148を重ねて第2曲線縫製部154を縫製している。特に第2曲線縫製部154が、第1曲線縫製部152よりも内側に設けられていて、第1曲線縫製部152にガス圧による負荷を集中させることなく分散させている。これによって、第1曲線縫製部152付近における破断やガス漏洩を防止することが可能になる。
【0040】
また第1補強布148は、ガスガイド134の全体に対して少なくとも第1曲線縫製部152を覆うことのできる程度の限られたサイズで対応可能である。本実施形態では、第1補強布148は、インフレータ配置部138を短手方向に一周する帯形状となっている。このような第1補強布148であれば、限られたサイズでガスガイド134の耐久性を向上させることが可能になり、コストアップも抑えることができる。したがって本実施形態のガスガイド134は、簡潔で低廉な構成でありつつも、耐久性が高くガスの漏洩防止を図ることが可能になっている。
【0041】
(クッションの変形例)
図5は、図2(a)のクッション102の変形例を例示した図である。図5(a)のクッション200は、シーム部202、204の先端に第2補強布206、208を備えている点で、図2(a)のクッション102と異なっている。
【0042】
シーム部202、204は各チャンバを区画する直線または曲線的に形成された非膨張領域である。第2補強布206、208は、シーム部202、204の先端を覆う程度のサイズの円形の布として実現されている。図5(b)は、図5(a)の第2補強布206、208付近の拡大図である。第2補強布206、208はシーム部202、204の先端に重ねられ、第3曲線縫製部210、212によってチャンバに縫製される。第3曲線縫製部210、212は、シーム部202、204の先端を包囲するように曲線的に縫製されている。このクッション200では、シーム部202、204の先端を覆う程度の限られた形状の第2補強布206、208であっても、第3曲線縫製部210、212によってシーム部202、204の先端をガス圧による負荷の集中から守り、クッション200の耐久性を効率よく向上させている。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0044】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0045】
また、上記実施形態においては本発明にかかるエアバッグ装置を自動車が備えるカーテンエアバッグに適用した例を説明した。しかし、カーテンエアバッグ以外の他の種類のエアバッグ、例えばサイドエアバッグや歩行者保護用のエアバッグなどとして実現することもできる。また、それらエアバッグ装置は自動車以外の航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、インフレータからのガスを車両用エアバッグのクッション内に案内するガスガイドおよびこのガスガイドを備えるエアバッグ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
100…カーテンエアバッグ、102…クッション、104…ルーフサイドレール、105…フロントピラー、106…インフレータ、108…車両、110…サイドウィンドウ、112…前部座席、114、116…車両前側のチャンバ、118…後部座席、120、121…車両後側のチャンバ、122…シーム部、123…クッションの上縁、124…タブ、126…ストラップ、130…インフレータ取付部、131…噴出孔、132…ガス噴出部、133…コネクタ、134…ガスガイド、135…ガス導入パイプ、136…クッションのダクト、138…インフレータ配置部、140…ガス案内部、142…開口部、144…前側開口部、146…後側開口部、148…第1補強布、150…湾曲した縁、150a…湾曲した縁の一方、150b…湾曲した縁の他方、152…第1曲線縫製部、154…第2曲線縫製部、154a…一方の第2曲線縫製部、154b…他方の第2曲線縫製部、156…基布、158…中央折線、200…変形例のクッション、202、204…シーム部、206、208…第2補強布、210、212 …第3曲線縫製部
図1
図2
図3
図4
図5