(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129779
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】加飾体
(51)【国際特許分類】
B44F 1/04 20060101AFI20170508BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20170508BHJP
B32B 3/26 20060101ALI20170508BHJP
B44C 3/02 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
B44F1/04
B32B27/00 E
B32B27/00 N
B32B3/26 Z
B44C3/02 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-91872(P2014-91872)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-208918(P2015-208918A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年11月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】細川 英寿
【審査官】
青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−005390(JP,A)
【文献】
特開2012−245735(JP,A)
【文献】
特開2009−083138(JP,A)
【文献】
特開2008−018631(JP,A)
【文献】
米国特許第06568817(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44F 1/04
B32B 3/26
B32B 27/00
B44C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射する反射膜と、
前記反射膜の表側に設けられ、かつ、光を透過すると共に、接着性を有する透過膜と、
前記反射膜の裏側に設けられると共に、前記反射膜が接着され、表面に形成された凹凸に沿って前記反射膜が形成されて前記反射膜の表面に凹凸が形成されると共に前記反射膜の凸部周面の位置が前記反射膜の凸部頂面及び凹部底面の位置に比し肉厚を小さくされて前記反射膜の表側に前記透過膜が設けられる際に前記透過膜が前記反射膜の凸部周面の位置を透過可能にされる接着膜と、
前記反射膜、前記透過膜及び前記接着膜によって被覆されて加飾された本体部材と、
を備えた加飾体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部材が加飾された加飾体に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の軟質ポリ塩化ビニル積層体では、アルミニウム蒸着層の表側にオーバーコート層が設けられると共に、アルミニウム蒸着層の裏側に接着剤層が設けられている。
【0003】
ところで、この軟質ポリ塩化ビニル積層体では、アルミニウム蒸着層の表側にオーバーコート層を塗布する際に、オーバーコート層がアルミニウム蒸着層を透過不能にされている。
【0004】
ここで、このような軟質ポリ塩化ビニル積層体では、アルミニウム蒸着層の接着剤層への接着強度を向上できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−297219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、反射膜の接着膜への接着強度を向上できる加飾体を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の加飾体は、光を反射
する反射膜と、前記反射膜の表側に設けられ、かつ、光を透過すると共に、接着性を有
する透過膜と、前記反射膜の裏側に設けられ
ると共に、前記反射膜が接着され
、表面に形成された凹凸に沿って前記反射膜が形成されて前記反射膜の表面に凹凸が形成されると共に前記反射膜の凸部周面の位置が前記反射膜の凸部頂面及び凹部底面の位置に比し肉厚を小さくされて前記反射膜の表側に前記透過膜が設けられる際に前記透過膜が前記反射膜の凸部周面の位置を透過可能にされる接着膜と、前記反射膜、前記透過膜及び前記接着膜によって被覆されて加飾された本体部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の加飾体では、反射膜の表側に透過膜が設けられており、透過膜が光を透過すると共に、反射膜が光を反射する。また、反射膜の裏側に接着膜が設けられており、反射膜が接着膜に接着されている。さらに、反射膜、透過膜及び接着膜によって本体部材が被覆されて、本体部材が加飾されている。
【0011】
ここで、反射膜の肉厚が変化されると共に、透過膜が接着性を有しており、反射膜の表側に透過膜が設けられる際に透過膜が反射膜を透過可能にされている。このため、透過膜が反射膜のみならず接着膜にも接着でき、反射膜の接着膜への接着強度を向上できる。
【0012】
また、反射膜の表面に凹凸が形成されている。このため、反射膜によってホログラム性能を発揮可能にできる。
【0013】
さらに、接着膜の表面に形成された凹凸に沿って反射膜が形成されている。このため、反射膜の表面に容易に凹凸を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る加飾体を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る加飾体の主要部(
図1の領域Aの部分)を示す拡大模式断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る加飾体のシルバー膜を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、本発明の実施形態に係る加飾体10が断面図にて示されている。
【0016】
本実施形態に係る加飾体10は、例えば、車両のステアリングホイールにされている。
図1に示す如く、加飾体10には、本体部材としての例えば樹脂製の素材12が設けられており、素材12の少なくとも一部(例えばステアリングホイールの外周部(リム部)の少なくとも一部)の表面(外周面)は、層状の加飾部14によって被覆されている。
【0017】
加飾部14には、基礎膜としての膜状のプライマー16が設けられており、プライマー16は、素材12の表面を被覆している。プライマー16は、素材12の表面に塗布されて設けられており、プライマー16は、固化されて、素材12の表面に接着かつ密着されている。
【0018】
加飾部14には、下地膜としての膜状のベースコート18が設けられており、ベースコート18は、プライマー16の表面を被覆している。ベースコート18は、プライマー16の表面に塗布されて設けられており、ベースコート18は、固化されて、プライマー16の表面に接着かつ密着されている。これにより、ベースコート18の塗膜性能(接着強度及び密着度)がプライマー16によって向上されている。ベースコート18は、有色にされて、光を透過不能にされており、ベースコート18は、加飾部14の下地の色を構成している。
【0019】
図1及び
図2に示す如く、加飾部14には、接着膜としての膜状のグラビアインキ膜20が設けられており、グラビアインキ膜20は、ベースコート18の表面を被覆している。グラビアインキ膜20は、ベースコート18の表面に転写されて設けられており、グラビアインキ膜20は、ベースコート18の表面に接着かつ密着されている。これにより、グラビアインキ膜20の塗膜性能(接着強度及び密着度)がベースコート18によって向上されている。
【0020】
グラビアインキ膜20の表面には、断面略矩形状の凸部20Aが複数形成されており、凸部20A間には、断面略矩形状の凹部20Bが形成されている。凸部20Aの頂面と凹部20Bの底面とは、平行に配置されており、凸部20Aの周面(凹部20Bの周面)は、凸部20Aの頂面及び凹部20Bの底面に対し、傾斜された状態(垂直に配置された状態でもよい)で起立されている。グラビアインキ膜20の最大肉厚(凸部20Aの頂面の位置の最大肉厚)は、例えば1ミクロンにされており、グラビアインキ膜20は、光を透過可能にされている。
【0021】
加飾部14には、反射膜(蒸着膜)としての膜状のシルバー膜22(
図3参照)が設けられており、シルバー膜22は、グラビアインキ膜20の表面を被覆している。グラビアインキ膜20は、シルバー膜22の裏面に印刷されており、シルバー膜22は、グラビアインキ膜20の表面に接着かつ密着されている。これにより、シルバー膜22の塗膜性能(接着強度及び密着度)がグラビアインキ膜20によって向上されると共に、シルバー膜22の形状がグラビアインキ膜20によって保護されている。
【0022】
シルバー膜22は、グラビアインキ膜20の表面に沿って設けられており、シルバー膜22の表面には、グラビアインキ膜20表面の凸部20A及び凹部20Bに対応して、それぞれ外周断面略U字状の凸部22A及び凹部22Bが形成されている。シルバー膜22は、凸部22Aの周面(凹部22Bの周面)の位置において、凸部22Aの頂面及び凹部22Bの底面の位置に比し、肉厚を小さくされており(凸部22Aの周面(凹部22Bの周面)の位置では少なくとも一部においてシルバー膜22が設けられなくてもよい)、シルバー膜22の最大肉厚(凸部22Aの頂面及び凹部22Bの底面の位置の最大肉厚)は、例えば200オングストローム以下(例えば150±50オングストローム)にされている。シルバー膜22は、アルミニウム顔料(アルミニウム粒)によって構成されており、シルバー膜22は、少なくとも凸部22Aの頂面及び凹部22Bの底面の位置において光を反射可能にされると共に、凸部22Aの周面(凹部22Bの周面)の位置の少なくとも一部において光を透過可能にされている。
【0023】
加飾部14には、透過膜としての膜状の中間クリア24が設けられており、中間クリア24は、シルバー膜22の表面を被覆して、シルバー膜22を保護している。中間クリア24は、シルバー膜22の表面に塗布されて設けられており、中間クリア24は、固化されて、シルバー膜22の表面に接着かつ密着されている。中間クリア24の最大肉厚は、例えば20ミクロンにされており、中間クリア24は、有色透明にされて、光を透過可能にされている。
【0024】
図1に示す如く、加飾部14には、膜状の模様膜26が設けられており、模様膜26は、中間クリア24の表面を被覆している。模様膜26は、中間クリア24の表面に印刷(転写)されて設けられており、模様膜26は、中間クリア24の表面に接着かつ密着されている。これにより、模様膜26の塗膜性能(接着強度及び密着度)が中間クリア24によって向上されている。模様膜26には、所定の模様(例えば木目模様又は竹調模様)が形成されており、模様膜26は、加飾部14の模様を構成している。模様膜26の最大肉厚は、例えば2ミクロン以上3ミクロン以下にされており、模様膜26は、少なくとも一部において、光を透過可能にされている。
【0025】
加飾部14には、表面膜としての膜状のトップコート28が設けられており、トップコート28は、模様膜26の表面を被覆して模様膜26を保護すると共に、加飾体10の表面を構成している。トップコート28は、模様膜26の表面に塗布されて設けられており、トップコート28は、固化されて、模様膜26の表面に接着かつ密着されている。トップコート28の最大肉厚は、例えば15ミクロンにされており、トップコート28は、透明にされて、光を透過可能にされている。
【0027】
以上の構成の加飾体10では、加飾部14において、グラビアインキ膜20、シルバー膜22の一部、中間クリア24、模様膜26の少なくとも一部及びトップコート28が光を透過可能にされており、ベースコート18が加飾部14の下地の色を構成すると共に、模様膜26が加飾部14の模様を構成している。さらに、シルバー膜22が光を反射することで、加飾部14(特に模様膜26の模様)の輝度が高くされている。しかも、中間クリア24が有色透明にされることで、加飾部14の輝度及び色目の少なくとも一方が調整されている。これにより、加飾体10(素材12)が加飾部14によって加飾されている。
【0028】
ここで、シルバー膜22が、凸部22Aの周面(凹部22Bの周面)の位置において、凸部22Aの頂面及び凹部22Bの底面の位置に比し、肉厚を小さくされている(凸部22Aの周面(凹部22Bの周面)の位置では少なくとも一部においてシルバー膜22が設けられなくてもよい)。
【0029】
このため、シルバー膜22の表面に中間クリア24が塗布される際には、中間クリア24が、シルバー膜22の凸部22A周面(凹部22B周面)の位置の少なくとも一部及びグラビアインキ膜20を透過されて、ベースコート18に浸透されることで、中間クリア24が固化によりシルバー膜22のみならずグラビアインキ膜20及びベースコート18にも接着される。これにより、グラビアインキ膜20がベースコート18に効果的に接着かつ密着でき、しかも、シルバー膜22がグラビアインキ膜20に効果的に接着かつ密着できると共にベースコート18に効果的に接着でき、グラビアインキ膜20及びシルバー膜22の塗膜性能(接着強度及び密着度)を効果的に向上できる。
【0030】
また、シルバー膜22の表面に凸部22A及び凹部22Bが形成されている。このため、加飾部14がシルバー膜22によってホログラム性能を発揮でき、加飾部14が模様膜26の模様に重ねられたホログラムを表示できる(模様膜26の模様の間からホログラムを表示できてもよい)。
【0031】
しかも、グラビアインキ膜20の表面の凸部20A及び凹部20Bに沿って、シルバー膜22の表面に凸部22A及び凹部22Bが形成されている。このため、シルバー膜22の表面に容易に凸部22A及び凹部22Bを形成できる。
【0032】
なお、本実施形態では、グラビアインキ膜20が光を透過可能にした。しかしながら、グラビアインキ膜20が光を透過不能にしてもよい。
【0033】
さらに、本実施形態では、加飾部14にプライマー16及びベースコート18を設けた。しかしながら、特に素材12によっては、加飾部14にプライマー16及びベースコート18の少なくとも一方を設けなくてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、加飾体10をステアリングホイールにした。しかしながら、加飾体10をステアリングホイール以外のもの(例えば車両の車室の内装体)にしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 加飾体
12 素材(本体部材)
20 グラビアインキ膜(接着膜)
22 シルバー膜(反射膜)
24 中間クリア(透過膜)