特許第6129782号(P6129782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129782
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】加熱機器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   A47J27/00 103R
   A47J27/00 103N
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-98764(P2014-98764)
(22)【出願日】2014年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-213655(P2015-213655A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】野間 雄太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】濱中 貴大
【審査官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−237043(JP,A)
【文献】 特開2003−011742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品を配設した外装体と、
前記外装体に、前記発熱部品より上方に形成され、内部に液晶パネルを含む電子部品が収容されるとともに、密閉または実質的に密閉された電子部品収容部と、
前記電子部品収容部に形成された乾燥剤配置部と、
前記乾燥剤配置部に配置され、前記電子部品収容部内の水分を吸着する乾燥剤と、
前記乾燥剤配置部の底と前記乾燥剤との間に形成された断熱部と
を備え
前記乾燥剤配置部の底から所定間隔をあけて前記乾燥剤を配置する保持部を設け、前記断熱部として断熱空間を形成し、
前記乾燥剤配置部は、前記電子部品収容部の底から下向きに窪む凹部からなることを特徴とする加熱機器。
【請求項2】
前記保持部は、前記乾燥剤配置部の壁から突出するように設けられることを特徴とする請求項に記載の加熱機器。
【請求項3】
発熱部品を配設した外装体と、
前記外装体に、前記発熱部品より上方に形成され、内部に電子部品が収容されるとともに、密閉または実質的に密閉された電子部品収容部と、
前記電子部品収容部に形成された乾燥剤配置部と、
前記乾燥剤配置部に配置され、前記電子部品収容部内の水分を吸着する乾燥剤と、
前記乾燥剤配置部の底と前記乾燥剤との間に形成された断熱部と
を備え、
前記乾燥剤配置部の底に当接させることにより該底から所定間隔をあけて前記乾燥剤を配置する保持部を該乾燥剤の下面に一体的に突出するように設け、前記断熱部として断熱空間を形成したことを特徴とする加熱機器。
【請求項4】
発熱部品を配設した外装体と、
前記外装体に、前記発熱部品より上方に形成され、内部に電子部品が収容されるとともに、密閉または実質的に密閉された電子部品収容部と、
前記電子部品収容部に形成された乾燥剤配置部と、
前記乾燥剤配置部に配置され、前記電子部品収容部内の水分を吸着する乾燥剤と、
前記乾燥剤配置部の底と前記乾燥剤との間に形成された断熱部と
を備え、
前記乾燥剤配置部の底から所定間隔をあけて前記乾燥剤を配置する保持部を設け、前記断熱部として断熱空間を形成し、
前記保持部は、前記乾燥剤を配置する枠部と、枠部から突出する脚部とを備える別部品
であることを特徴とする加熱機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等の電子部品を備える加熱機器に関する。
【背景技術】
【0002】
炊飯器等の加熱機器は、機器本体または蓋体に操作パネル部が形成されている。操作パネル部は、入力手段である複数のスイッチと、操作状態や機器の動作状態を表示する液晶パネルとを備える。スイッチおよび液晶パネル等の電子部品は表示基板に実装され、この表示基板が機器本体または蓋体の外装体内に形成した電子部品収容部に配設されている。
【0003】
電子部品収容部内には、組立時に工場内の水分(湿気)を含む空気が入ることを否めない。また、電気部品を実装する表示基板からも若干の水分が滲出することがある。電子部品収容部内の水分は、昇温により気化すると、液晶パネルの表示面を曇らせることがある。そのため、電子部品収容部内には、水分を吸着するための乾燥剤が配設されている。しかしながら、外装体内には、通電により昇温する発熱部品が搭載されている。この発熱部品により乾燥剤が加熱されると、吸着していた水分を放出し、結局液晶パネルを曇らせてしまう。
【0004】
特許文献1には、蓋体に電子部品収容部を配設するとともに、電子部品収容部に熱が伝導されるように蓋ヒータを配設した炊飯器が記載されている。また、電子部品収容部には、内部と外部とを連通する連通路部材が配設されている。この炊飯器は、蓋ヒータの熱で乾燥剤を加熱し、吸着している水分を電子部品収容部内に放出する。そして、連通路部材を通して電子部品収容部の外部に水分を放出することにより、乾燥剤の吸着性能を再生する。
【0005】
しかしながら、特許文献1の炊飯器は、加熱により乾燥剤から放出させた水分によって、液晶パネルを曇らせる可能性がある。また、加熱後に電子部品収容部内が自然冷却されると外部の空気が流入する。その空気は炊飯器周辺の空気であり、炊飯により多くの水分(蒸気)を含んでいるため、電子部品収容部内の総水分量が増える可能性がある。なお、電子部品収容部中の水分の影響は液晶パネルに限らず、表示基板に実装した全ての電子部品(素子)に及ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−75484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、乾燥剤に吸着させた水分の放出を抑制できる加熱機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の加熱機器は、発熱部品を配設した外装体と、前記外装体に、前記発熱部品より上方に形成され、内部に電子部品が収容されるとともに、密閉または実質的に密閉された電子部品収容部と、前記電子部品収容部に形成された乾燥剤配置部と、前記乾燥剤配置部に配置され、前記電子部品収容部内の水分を吸着する乾燥剤と、前記乾燥剤配置部の底と前記乾燥剤との間に形成された断熱部とを備える。発熱部品とは、ヒータは勿論、駆動部材であるソレノイド等、通電により発熱する部品を意味する。電子部品収容部内の水分とは、空気中に浮遊する水分および吸着剤に接触する水の両方を含む。
【0009】
この加熱機器は、製造時に入った空気に含まれる水分や、電子部品を実装する基板に含まれていた水分が、乾燥剤配置部に配設した乾燥剤によって吸着される。そして、乾燥剤配置部の底と乾燥剤との間に断熱部が設けられているため、電子部品収容部の底が発熱部品によって昇温されても、乾燥剤が昇温することを抑制できる。よって、乾燥剤が昇温することにより吸着した水分が電子部品収容部内に放出されることを抑制できる。
【0010】
前記乾燥剤配置部の底から所定間隔をあけて前記乾燥剤を配置する保持部を設け、前記断熱部として断熱空間を形成することが好ましい。このようにすれば、製造コストまたは製品コストの増大を最小限に抑えつつ、乾燥剤から水分が放出されることを抑制できる。
【0011】
具体的には、前記保持部は、前記乾燥剤配置部の壁から突出する突部である。または、前記保持部は、前記乾燥剤から突出する突部である。または、前記保持部は、前記乾燥剤を配置する枠部と、枠部から突出する脚部とを備える別部品である。これらのようにすれば、乾燥剤配置部の底と乾燥剤との間に確実に断熱空間を形成できる。
【0012】
または、前記断熱部として断熱部材を配設してもよい。このようにすれば、希望の断熱性能を得ることができるため、乾燥剤から水分が放出されることを抑制できる。
【0013】
なお、加熱機器は、内鍋と、前記内鍋を加熱する前記発熱部品である加熱手段とを有する機器本体と、前記機器本体に開閉可能に配設された蓋体とを備え、前記外装体である前記蓋体に前記電子部品収容部を形成している。
【発明の効果】
【0014】
本発明の加熱機器では、製造時に入った空気に含まれる水分や、電子部品を実装する基板に含まれていた水分が、乾燥剤によって吸着される。そして、乾燥剤と乾燥剤配置部の底との間には断熱部が設けられているため、乾燥剤が昇温することを抑制でき、乾燥剤が吸着した水分が昇温により放出されることを抑制できる。よって、電子部品収容部内の液晶パネルを曇らせたり、表示基板に実装した電子部品に影響が及ぶことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の加熱機器である炊飯器を示す部分断面図。
図2】蓋体を開いた状態を示す斜視図。
図3】蓋体の分解斜視図。
図4】蓋体の外側部材の分解斜視図。
図5】電子部品収容部の拡大断面図。
図6】第2実施形態の電子部品収容部の拡大断面図。
図7】第3実施形態の電子部品収容部の拡大断面図。
図8】第4実施形態の電子部品収容部の拡大断面図。
図9】第4実施形態の乾燥剤および保持部材を示す分解斜視図。
図10】第5実施形態の電子部品収容部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1および図2は、本発明の実施形態の加熱機器である炊飯器10を示す。図2に示すように、炊飯器10は、炊飯する飯米および炊飯した米飯を収容する内鍋11と、内鍋11を着脱可能に収容する炊飯器本体(機器本体)12と、炊飯器本体12に開閉可能に配設した蓋体17とを備える。また、炊飯器10には、液晶パネル39を配設するパネル収容部(電子部品収容部)42が蓋体17に形成されている。本発明は、製造時に侵入している水分(以下「既存水分」という。)を吸着していた乾燥剤59から再び水分が放出されることによって、液晶パネル39や窓部48が曇ることや、電子部品に不都合が生じることを抑制する。
【0018】
炊飯器10は、炊飯器本体12内および蓋体17内に配設した加熱手段によって内鍋11を加熱して、予熱、昇温、沸騰維持、むらし等の各工程を有する炊飯処理を実行し、内鍋11にセットした飯米を炊飯して米飯を炊き上げる。また、所定温度に維持するように加熱手段を制御する保温処理を実行し、炊き上げた米飯を保温する。
【0019】
炊飯器本体12は、有底筒状の胴体13と、胴体13の上端開口を覆う肩体14とを有する本体外装体を備える。肩体14の背面側には、蓋体17を回動可能に装着するためのヒンジ接続部15が設けられている。肩体14の正面側には、蓋体17を閉塞状態に維持するための係止孔16が設けられている。肩体14の中央には開口部が設けられ、この開口部の下側に内鍋11を着脱可能に収容する収容部(図示せず)が形成されている。胴体13の内部である収容部の外側に、内鍋11を加熱する第1加熱手段である誘導加熱コイル70が配設されている。
【0020】
蓋体17は、炊飯器本体12のヒンジ接続部15に回動可能に取り付けられ、内鍋11の上端開口を含む炊飯器本体12の上部全体を開放可能に閉塞する。図2および図3に示すように、蓋体17は、閉塞状態で内鍋11の側に位置する内側部材18と、内側部材18の上部外側を覆う外側部材19とを有する蓋外装体を備える。内側部材18には金属製の補強部材20が配設され、この補強部材20の背面側に炊飯器本体12のヒンジ接続部15に接続するためのヒンジ軸21が配設されている。
【0021】
図2および図3に示すように、内側部材18の補強部材20の正面側にはロック部材22が回動可能に配設されている。このロック部材22には、内側部材18を貫通して炊飯器本体12側に突出し、係止孔16に係脱可能に係止する係止爪部23が形成されている。また、図1および図4に示すように、外側部材19には、ロック部材22を回動操作するための操作部材24が配設されている。
【0022】
図1および図2に示すように、内側部材18の下側には、内鍋11の上端開口を密閉する内蓋25が着脱可能に取り付けられている。また、内側部材18には、内蓋25の上部に位置するようにヒータカバー71が配設され、その上面に第2加熱手段である蓋ヒータ72が配設されている。また、図1および図4に示すように、外側部材19の背面側には蒸気口ユニット26が着脱可能に取り付けられる。
【0023】
蓋体17には、内鍋11内の蒸気を外部に排出するための排気通路が、内蓋25から蒸気口ユニット26にかけて連通するように設けられている。排気通路の入口は、内蓋25に設けたボール弁(図示せず)である。排気通路の出口は、蒸気口ユニット26に形成した排気口27である。また、内蓋25とヒータカバー71との間には空隙が設けられ、この空隙が排気通路の一部を構成する。なお、図3中符号28は、内蓋25とヒータカバー71との間の空隙と蒸気口ユニット26とを連通させるための連通口である。
【0024】
図3に示すように、内側部材18の上側中央には、内蓋25に配設した開閉弁であるボール弁および調圧弁を収容する弁収容部29A,29Bが設けられている。また、弁収容部29A,29Bの正面側には、ボール弁および調圧弁の駆動部材であるソレノイド30A,30Bが配設されている。ソレノイド30A,30Bの駆動によりボール弁および調圧弁を閉弁し、排気通路の入口を開放可能に閉塞することにより、内鍋11内を大気圧より高い圧力に昇圧可能とする。
【0025】
図3および図4に示すように、外側部材19は、内側部材18の上部全体を覆うカバー本体31と、カバー本体31の上面に固定される装飾パネル32を備える。カバー本体31には、内側部材18をネジ止めして固定するための第1ネジ止め部33と、装飾パネル32をネジ止めして固定するための第2ネジ止め部34とが設けられている。また、操作部材24を配設するために、カバー本体31には操作部材配設部35が設けられ、装飾パネル32には露出孔36が設けられている。また、蒸気口ユニット26を着脱可能に配設するために、カバー本体31には配設凹部37が設けられ、装飾パネル32には露出用の切欠部38が設けられている。
【0026】
カバー本体31には、操作部材24と蒸気口ユニット26の間に、液晶パネル39、スイッチ40および制御用の電子部品(素子)を実装した操作基板41を配設するパネル収容部42が形成されている。また、装飾パネル32には、パネル収容部42の上端開口を密閉する操作パネル部47が設けられている。
【0027】
パネル収容部42は、平面視矩形状をなすように下向きに窪む凹部からなる。このパネル収容部42は、発熱部品である蓋ヒータ72およびソレノイド30A,30Bよりも上方に位置し、これらの発熱部品によって発生した熱がパネル収容部42の内部に伝わる。パネル収容部42の底42aには、所定間隔をあけて操作基板41を配置するための配設リブ43が設けられている。また、操作基板41の上面に係止して固定するためのフック状の固定部44が設けられている。そして、パネル収容部42の上端開口の外周部には、シール部材45を配設するシール部材配設溝46が設けられている。
【0028】
操作パネル部47には、液晶パネル39の表示部に対応する開口部が設けられ、この開口部が透明樹脂板からなる窓部48が設けられている。また、窓部48の外周部には、操作基板41の各スイッチ40に対応する操作部49が設けられている。操作パネル部47の内面側外周部には、シール部材配設溝46内に配置される凸部50が設けられている。装飾パネル32をカバー本体31に組み付けることにより、凸部50がシール部材配設部内のシール部材45に圧接され、パネル収容部42内が密閉される。
【0029】
パネル収容部42には、背面側の一方隅部に配線口51が設けられている。この配線口51の周囲には、係止部52とネジ止め部53とが設けられている。配設口には、操作基板41を電気的に接続するためのフラットケーブル54が挿通され、遮蔽部材55によって気密に閉塞される。この遮蔽部材55は、係止部52に係止される係止段部56と、ネジ止め部53に対応するネジ挿通部57とを備える。遮蔽部材55を配置してネジ止めすることにより、フラットケーブル54を圧接し、パネル収容部42内への気体の流通を阻止している。なお、配線口51、フラットケーブル54および遮蔽部材55の間の隙間が大きく気体が流通可能な場合には、シール部材を配設することにより密閉される。
【0030】
パネル収容部42内には、フラットケーブル54と一緒に圧抜きチューブ58が配線口51から導入されている。この圧抜きチューブ58は、密閉したパネル収容部42が昇温し、パネル収容部42内の空気が熱膨張した際の圧(空気)を外部へ逃がす。圧抜きチューブ58は、パネル収容部42内と外部との気体の対流が生じない内径に設定される。また、熱膨張によりパネル収容部42内の気体(以下「既存気体」という。)を外部へ逃がす際に、圧抜きチューブ58の先端からは既存気体が流出しない全長に設定される。よって、本実施形態のパネル収容部42は、外部から流体が侵入しない、実質的な密閉状態に閉塞される。
【0031】
このように密閉されたパネル収容部42の内部には、組立時に水分(湿気)を含む工場内の空気が入り込んでいる。また、パネル収容部42の内部では、スイッチ40および素子を実装した操作基板41からも若干の水分が滲出することがある。これらの既存水分を吸着するために、パネル収容部42には、図4および図5に示すように、配線口51と反対側の側部に、乾燥剤59を配置する乾燥剤配置部60が設けられている。
【0032】
乾燥剤59は、乾燥剤配置部60内に配置され、パネル収容部42内の空気中に浮遊する水分および凝結した水を吸着する。乾燥剤59は、多孔質で非晶質の物質を成形した錠剤型乾燥剤(例えばシブレット)であり、所定厚さの円板状に形成されている。この乾燥剤59は、水分を物理的に吸着することが可能であり、昇温により吸着した水分を放出する特性を有する。なお、円板状に成形した乾燥剤59に限らず、袋に詰め込んだ散薬(粒)状乾燥剤および液状乾燥剤を用いてもよい。要するに、製造時に混入する空気中の水分量、および、操作基板41から滲出する水分量を想定し、吸着可能な容量の乾燥剤59であればよい。
【0033】
乾燥剤配置部60は、パネル収容部42の底42aから平面視円形状をなすように下向きに窪む一対の凹部からなる。この乾燥剤配置部60の底壁61と乾燥剤59との間には、断熱空間(断熱部)64が設けられている。具体的には、乾燥剤配置部60には、底壁61から側壁62にかけてパネル収容部42側に突出し、乾燥剤59を底壁61から所定間隔をあけて配置する階段状の保持部63が設けられている。この保持部63上に乾燥剤59を配置することにより、乾燥剤配置部60の底壁61と乾燥剤59との間に、所定間隔の隙間からなる断熱空間64が形成される。
【0034】
本実施形態のパネル収容部42の底42aは、背面側から正面側に向けて下向きに傾斜している。また、乾燥剤配置部60の底壁61は、蓋体17を閉塞した状態で水平に延びるように形成されている。また、パネル収容部42は、弁収容部29A,29Bが位置する背面側が、高温蒸気の流動により昇温し易く、正面側が昇温し難い。そのため、保持部63は、形成される断熱空間64の間隔が、背面側が広く正面側が狭くなるように、背面側から正面側に向けて傾斜して設けられている。
【0035】
このようにした炊飯器10では、製造時にパネル収容部42内に侵入した既存水分は、乾燥剤配置部60に配設した乾燥剤59によって吸着できる。また、内外への気体の対流が生じないようにパネル収容部42を密閉して形成しているため、外部から水分を含む空気が侵入することを防止できる。そのため、乾燥剤59が飽和状態になり、水分を吸着できない状態になることを抑制できる。また、乾燥剤配置部60の底壁61と乾燥剤59との間に断熱空間64を設けているため、動作時に発熱部品の熱が乾燥剤配置部60の底壁61に伝わっても、乾燥剤59が昇温されることを抑制できる。よって、乾燥剤59が吸着していた水分が再びパネル収容部42内に放出されることを抑制できる。
【0036】
その結果、窓部48やパネル収容部42内に配設した液晶パネル39を曇らせたり、表示基板に実装した全ての電子部品(素子)に悪影響が及ぶことを抑制できる。また、乾燥剤配置部60の壁61,62から突出する保持部63を設けることにより、乾燥剤配置部60の底壁61と乾燥剤59との間に断熱空間64を形成しているため、製造コストまたは製品コストの増大を最小限に抑えつつ、乾燥剤59から水分が放出されることを抑制できる。
【0037】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態の炊飯器10のパネル収容部42を示す。この第2実施形態では、一対の乾燥剤59,59を配置する乾燥剤配置部60を8字形状をなす1個の空間で形成するとともに、断熱空間64を形成するための保持部63を側壁62から中心に向けて放射状に突出する複数の突片により構成した点で、第1実施形態と相違する。このように、断熱空間64を形成するための保持部63の形態は希望に応じて変更が可能である。そして、この第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0038】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態の炊飯器10のパネル収容部42を示す。この第3実施形態では、断熱空間64を形成するための保持部63を乾燥剤59に一体的に設けた点で、第1実施形態と相違する。第3実施形態の乾燥剤59は、平面視円形状をなし、その一面から円錐状をなすように突出する保持部63が設けられている。保持部63が乾燥剤配置部60の底壁61側に位置するように配置することで、底壁61と乾燥剤59との間に所定間隔の断熱空間64を形成することができる。そして、このように構成した第3実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0039】
(第4実施形態)
図8は第4実施形態の炊飯器10のパネル収容部42を示す。この第4実施形態では、断熱空間64を形成するための保持部を乾燥剤59および乾燥剤配置部60とは別体の保持部材65とした点で、第1実施形態と相違する。図9に示すように、保持部材65は、乾燥剤59を配置する有底筒状の枠部66を備える。枠部66は平面視円形状をなし、その底には周方向に所定間隔(90度)をあけて脚部67が突設されている。例えば、枠部66内に円板状の乾燥剤59を配置し、保持部材65を乾燥剤配置部60に配置することで、パネル収容部42の底壁61と乾燥剤59との間に所定間隔の断熱空間64を形成することができる。そして、このように構成した第4実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0040】
(第5実施形態)
図10は第5実施形態の炊飯器10のパネル収容部42を示す。この第4実施形態では、断熱空間64の代わりに断熱部材68を乾燥剤配置部60の底壁61に敷設した点で、第1実施形態と相違する。断熱部材68は、例えば乾燥剤59と同様の円板状に形成した発泡ウレタンからなる。なお、発泡ウレタンの代わりにグラスウールや真空断熱パネルを用いてもよく、希望の断熱性能が得られる断熱部材68であれば適用可能である。このようにした第5実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、希望の断熱性能を得ることができるため、乾燥剤59に吸着していた水分が再び放出されることを抑制できる。
【0041】
なお、本発明の加熱機器は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、乾燥剤配置部60の底壁61と乾燥剤59との間に形成する断熱部として、第1から第4実施形態では断熱空間64を形成し、第5実施形態では断熱部材68を配設したが、断熱空間64および断熱部材68の両方を組み合わせて構成してもよい。また、蓋体17内において発熱部品の熱の影響が無い常温領域まで乾燥剤配置部60を延設し、熱交換作用により乾燥剤配置部60を冷却できるようにしてもよい。また、保持部63,65は、第1から第4実施形態のように乾燥剤59を載置する構成に限らず、外側部材19の側から吊り下げるように保持する構成としてもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、電子部品収容部であるパネル収容部42を、内外への気体の対流が生じない密閉状態に形成したが、多少の気体の対流が可能な実質的密閉状態に形成してもよい。また、前記実施形態では、電子部品収容部であるパネル収容部42を蓋体17に形成したが、炊飯器本体12に形成してもよい。炊飯器本体12に形成する場合でも、乾燥剤配置部60の底と乾燥剤59との間に断熱部を形成することにより、同様の作用および効果を得ることができる。
【0044】
また、前記実施形態では、操作パネル部47のパネル収容部42を例に挙げて説明したが、本体12または蓋体17の外装体内において、水分を嫌う電子部品を収容する電子部品収容部であれば適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。また、前記実施形態では、本発明の加熱機器として炊飯器10を例に挙げて説明したが、電磁調理器、電気ポットおよび加湿器などの加熱機器であればいずれでも適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…炊飯器(加熱機器)
11…内鍋
12…炊飯器本体(機器本体)
13…胴体(本体外装体)
14…肩体(本体外装体)
17…蓋体
18…内側部材(蓋外装体)
19…外側部材(蓋外装体)
30A,30B…ソレノイド(発熱部品)
31…カバー本体
32…装飾パネル
39…液晶パネル(電子部品)
40…スイッチ(電子部品)
41…操作基板
42…パネル収容部(電子部品収容部)
42a…底
45…シール部材
47…操作パネル部
59…乾燥剤
60…乾燥剤配置部
61…底壁(壁)
62…側壁(壁)
63…保持部
64…断熱空間(断熱部)
65…保持部材(保持部)
66…枠部
67…脚部
68…断熱部材(断熱部)
70…誘導加熱コイル(発熱部品)
72…蓋ヒータ(発熱部品)
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9
図10